(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074085
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】人が環境を評価するのを支援するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220510BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220510BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G08B21/02
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176079
(22)【出願日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】17/084,645
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー,マッティ
(72)【発明者】
【氏名】ギンガー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイゲル,マルティン
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5E555
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA51
5C086AA52
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5E555FA00
(57)【要約】
【課題】人が環境を評価するのを支援するための方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】この方法は、環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択するステップと、セットの各エンティティの、環境内の座標および範囲を取得するステップと、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、セットの各エンティティの位置および形状を推定するステップと、セットの各エンティティの推定された位置および形状に基づき、対象区域を特定するステップと、対象区域の現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して対象区域を評価するステップと、ターゲット状態からの逸脱を、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人に通知するステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が環境を評価するのを支援するための方法であって、
前記環境内に存在する1つまたは複数のエンティティ(1、2、3)のセットを選択するステップ(S1)と、
前記セットの各エンティティ(1、2、3)の、前記環境内の座標および範囲を取得するステップ(S2)と、
それぞれの前記エンティティ(1、2、3)の前記取得された座標および範囲に基づき、前記セットの各エンティティ(1、2、3)の位置および形状を推定するステップ(S3)と、
前記セットの各エンティティ(1、2、3)の少なくとも一部分を網羅する対象区域AOIを、前記セットの各エンティティ(1、2、3)の前記推定された位置および形状に基づき特定するステップ(S4)と、
前記対象区域AOIの現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して前記対象区域AOIを評価するステップ(S5)と、
前記ターゲット状態からの前記逸脱を、前記人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、前記人に通知するステップ(S6)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記セットの各エンティティ(1、2、3)の前記推定された位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき、前記対象区域AOIを特定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加的な情報が、前記対象区域AOIの境界に追加されるべき付加的な安全区域を定義する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記付加的な安全区域が、病気に感染する危険性など、前記人にとっての危険性の確率推定に依存している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セットの1つまたは複数のエンティティ(1、2、3)のうち、前記対象区域AOIを特定するために除外すべき1つまたは複数の部分を、前記付加的な情報が定義する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
空気流、前記セットの物理的保護の存在または程度、および前記セットの位置履歴のうちの少なくとも1つを含む、前記環境の外的要因を、前記付加的な情報が定義する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記セットの前記1つまたは複数のエンティティ(1、2、3)が、
前記人、
前記人に関連する1つまたは複数の物体、および
前記人に関連する1人または複数の別の人である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記環境が、
前記人の周りの第1の環境、
前記人に関連する前記1つまたは複数の物体の周りの第2の環境、および
前記人に関連する前記1人または複数の別の人の周りの第3の環境を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記セットの前記1つまたは複数のエンティティ(1、2、3)が、1つまたは複数の物理的エンティティおよび1つまたは複数の仮想エンティティのうちの少なくとも1つである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の対象変数が、
前記対象区域AOIの境界と、前記環境内の別のエンティティなどの障害物との間の距離、
位置追跡システムの追跡区域からの、前記対象区域AOIの逸脱、および
利用可能な無線データなど1つまたは複数の特徴の区域からの、前記対象区域AOIの逸脱
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記セットを選択するステップが、前記人により手動で実施されるか、自動的に実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コヒーレント刺激が、
視覚的な刺激、
触覚的な刺激、
聴覚的な刺激、
電磁的な刺激、
化学的な刺激、および
熱的な刺激のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
人が環境を評価するのを支援するためのシステムであって、前記システム(20)が、
前記環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択するように構成された処理ユニット(23)と、
1つまたは複数のセンサを備えるセンサユニット(21)であって、前記セットの各エンティティ(1、2、3)の、前記環境内の座標および範囲を取得するように構成されたセンサユニット(21)と
を備え、
前記処理ユニット(23)が、
それぞれの前記エンティティ(1、2、3)の前記取得された座標および範囲に基づき、前記セットの各エンティティ(1、2、3)の位置および形状を推定し、
前記セットの各エンティティ(1、2、3)の少なくとも一部分を網羅している対象区域AOIを、前記セットの各エンティティ(1、2、3)の前記推定された位置および形状に基づき特定し、
前記対象区域AOIの現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して前記対象区域AOIを評価するように構成されており、
前記システムがさらに、
前記人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、前記ターゲット状態からの前記逸脱を、前記人に通知するように構成された通知ユニット(25)を備える、システム。
【請求項14】
前記通知ユニット(25)が、振動触覚アクチュエータ、圧迫アクチュエータ、光エミッタ、拡声器、電極、誘導コイル、化学エミッタ/化学薬剤、および加熱要素のうちの少なくとも1つの種類の、1つまたは複数のアクチュエータ要素(26)を備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コヒーレント刺激が、触覚と視覚のコヒーレントな刺激であり、前記通知ユニットが、
前記触覚と視覚のコヒーレントな刺激のうちの前記視覚的な刺激を出力するための、任意選択で前記人による装着が可能な、ディスプレイユニットと、
前記触覚と視覚のコヒーレントな刺激のうちの前記触覚的な刺激を出力するための、任意選択で前記人による装着が可能な、触覚アクチュエータユニットと
を備える、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサユニット(21)が、光追跡システムである、請求項13から15のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人が環境を評価するのを支援するための方法、および人が環境を評価するのを支援するためのシステムに関する。特に、本開示は、そのような方法を実施するように構成されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
潜在的な応用領域/応用分野の例は、移動、手術ロボットの制御、組立てタスク、移転、フォークリフト操作、食料品の買い出し、交通制御、社会的距離の確保などを含む。
【0003】
ヒトの感覚および認知の能力は、環境に対する自らの身体的な範囲を認識するように進化してきている。それにより、人は物体を扱うことが可能なので、道具として使用される物体も網羅するように、人の知覚能力が拡張されてきている。しかし、ヒトの感覚器官には限界があることから、たとえばそのような物体が安全に扱われるために許容される形、大きさ、および不透明度に制約が加えられる。
【0004】
車両のような大きな物体の組立て、または建設現場での仕事など、様々なタスクは物体を扱うことが必要であり、これらの物体は、かさばるものであったり、物理的、知覚的、および精神的に把持するのが困難であり得る形状を有していたりすることがある。それぞれの物体を含む、場合により複雑なタスクを実施することに加えて、物体を扱っている人は、その物体により人々、その物体自体、および他の物体が危険にさらされないようにするため、または激しく動くことが多い環境において行われる事象を妨害しないようにするために、能力を集中させなくてはならない。つまり、それぞれの物体を扱うことが原因で、人は、場合により複雑なタスクへの集中力が低下する。さらに、身体的な感覚障害により、大きいまたは複雑な形状の物体などの物体の取扱いを含むタスクを、個人が安全に実施できない場合がある。複合現実における操作またはテレプレゼンス設定(たとえば、ロボットの遠隔操作)の場合、利用可能なインターフェースからのフィードバックが不十分であるか不明瞭である(たとえば、2D画面上のシーン表示からの深度情報がない)ことにより、そのような問題が増幅してしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本開示の目的は、人が環境を評価するのを支援して、人が相互作用するエンティティを認識するのを補助し、取扱い中または相互作用中のより高い安全性、容易さ、および快適性を実現するための方法ならびにシステムを提供することである。本開示のさらなる目的は、人(ヒト)の限られた知覚能力により課されるエンティティの制約を、センサおよび処理能力を介して取得された情報を組み込むことによって拡張することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、人が環境を評価するのを支援するための方法およびシステムを提供する。
【0007】
人が環境を評価するのを支援するための、本開示による方法は、環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択するステップと、セットの各エンティティの、環境内の座標および範囲を取得するステップと、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、セットの各エンティティの位置および形状を推定するステップと、セットの各エンティティの少なくとも一部分を網羅する対象区域を、セットの各エンティティの推定された位置および形状に基づき特定するステップと、対象区域の現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して対象区域を評価するステップと、ターゲット状態からの逸脱を、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人に通知するステップとを含む。
【0008】
人が環境を評価するのを支援するための、本開示によるシステムは、処理ユニットと、センサユニットと、通知ユニットとを含む。処理ユニットは、環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択するように構成されている。センサユニットは、1つまたは複数のセンサを含んでおり、セットの各エンティティの、環境内の座標および範囲を取得するように構成されている。また、処理ユニットは、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、セットの各エンティティの位置および形状を推定し、セットの各エンティティの推定された位置および形状に基づき、対象区域を特定し、対象区域の現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して対象区域を評価するように構成されており、ここで対象区域は、セットの各エンティティの少なくとも一部分を網羅している。通信ユニットは、ターゲット状態からの逸脱を、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人に通知するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の方法の主要なステップを示す簡略フローチャートである。
【
図2】本開示の実施形態によるシステムの構成要素を示すブロック図である。
【
図3】(A)および(B)は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を示す概略図である。
【
図4】(A)、(B)、および(C)は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を示す概略図である。
【
図5】(A)および(B)は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を示す概略図である。
【
図6】本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域の変更を示す概略図である。
【
図7】本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を示す概略図である。
【
図8】人が環境を評価するのを、本開示の実施形態による方法が支援する状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、環境/空間の認識補助システムの分野に属する。本開示による方法およびシステムの潜在的な応用領域/応用分野は、人に関連する1つまたは複数のエンティティの位置および空間的配置が、(現実または仮想の)地理的制約を受けるか、環境内のエンティティの安全など、少なくとも1つのターゲットに影響を及ぼす任意の領域を含む。1つまたは複数のエンティティは、人によって制御および/または操作されてもよく、人によって運ばれてもよく、人に連結されていてもよく、人によって監視されてもよく、または他の方法で人に関連していてもよい。
【0011】
本開示の第1の態様は、人が環境を評価するのを支援するための方法を提供し、環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択するステップと、セットの各エンティティの、環境内の座標および範囲を取得するステップと、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、セットの各エンティティの位置および形状を推定するステップと、セットの各エンティティの少なくとも一部分を網羅する対象区域を、セットの各エンティティの推定された位置および形状に基づき特定するステップと、対象区域の現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して対象区域を評価するステップと、ターゲット状態からの逸脱を、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人に通知するステップとを含む。
【0012】
言い換えれば、人が環境を評価するのを支援するために、本開示は、選択されたセットの各エンティティの、環境内での推定された位置および形状に基づき、対象区域を特定し、次いで対象区域の現在の状態の、ターゲット状態からの逸脱を評価することを提案する。ターゲット状態からの逸脱は、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人に通知される。
【0013】
人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激は、人の様々な感覚系のうちの1つまたは複数の感覚系を刺激するように構成された刺激と理解される。「コヒーレント刺激」という用語は、「刺激」という用語によっても参照されてよい。「ヒト」、「人間」、および「人」という用語は、同義語として使用されてよい。人の感覚系は、(目を含む)視覚の感覚系、(耳を含む)聴覚の感覚系、(頻度、圧力、温度、および痛みを含む)触覚の感覚系、平衡の感覚系、(舌を含む)味覚の感覚系、および(鼻を含む)嗅覚の感覚系を含んでいる。したがって、人の身体を刺激することは、人の感覚系のうちの1つまたは複数を刺激することに対応する。つまり、人の身体は、人の頭部を含む人の全身として理解される。人の触覚の感覚系は、頻度の感覚系、圧力の感覚系、温度の感覚系、および痛みの感覚系を含んでいる。したがって、人は、その触覚の感覚系を介して、頻度、圧力、温度、および痛みを感知することができる。
【0014】
その結果、1つまたは複数のエンティティに対する人の認識が増大する。すなわち、1つのエンティティの現在の状態とターゲット状態との間の逸脱を評価する代わりに、選択されたセットのうちの1つまたは複数のエンティティに基づき特定された対象区域の現在の状態とターゲット状態との間の逸脱が評価される。
【0015】
たとえば、1つまたは複数のエンティティが2つのエンティティに対応し、この2つのエンティティが、人と、人に関連する物理的物体(現実の物体)とに対応する場合、たとえば人が箱を運んでいる場合には、本開示は、人または関連する箱の現在の状態を、ターゲット状態に照らして評価することを提案しない。たとえば、ターゲット状態は、それぞれのエンティティと障害物との間の許容可能な最短距離であってよく、現在の状態は、それぞれのエンティティと障害物との間の距離であってよい。それとは対照的に、本開示は、人および人に関連する物理的物体の少なくとも一部分を網羅する対象区域を特定することを提案する。その結果、人自身および関連する箱に対する人の認識が増大する。したがって、人が狭い廊下で箱を運ぶとき、かつ人も箱も廊下の側壁に接触してはならないとき、第1の態様による方法が有利である。つまり、そのような場合、対象区域は、人自身と人が運んでいる箱とを網羅してよい。箱により、人の占拠する物理的空間が拡張される。
【0016】
人自身と運ばれている箱とを網羅する対象区域が特定された結果、ターゲット状態に照らした対象区域の現在の状態の評価は、人の位置および形状と、運ばれている箱の位置および形状との両方を考慮する。したがって、第1の態様の方法は、人自身または運ばれている箱が、移動に起因して廊下の側壁にぶつかる危険性があるかどうかについて、コヒーレント刺激を介して人にフィードバックを提供することにより、人が環境を評価するのを支援する。
【0017】
人の位置および形状だけを使用して、人が環境を評価するのを支援する場合には、動きに起因して人自身が廊下の側壁にぶつかる危険性だけが特定されることになる。したがって、人が環境を評価するのを支援するために、人の現在の状態(たとえば、人と廊下の側壁などの障害物との間の距離)の、ターゲット状態(たとえば、人と廊下の側壁などの障害物との間の許容可能な最短距離)からの逸脱が、コヒーレント刺激によって通知されてよい。その結果、人は、これらのコヒーレント刺激に応じて自身の動きを適合させることができる。しかし、これは、廊下の側壁に人がぶつからないようにするのを補助するだけである。人が環境を評価するのを支援するために、人の位置および形状だけが使用される場合、人によって運ばれている箱は、なお人の動きに起因して側壁にぶつかるおそれがある。人が環境を評価するのを支援するために、運ばれている箱の位置および形状だけを使用する場合にも、同じことが言える。
【0018】
つまり、本開示は、人が環境を評価するのを支援するために、その環境に存在する1つまたは複数のエンティティの位置および形状を直接使用しないことを提案する。対照的に、本開示は、環境に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択し、そのセットの各エンティティの位置および形状に基づき共通の対象区域を特定することを提案する。対象区域は、セットの1つまたは複数のエンティティのうちの各エンティティの少なくとも一部分を網羅する。
【0019】
環境は、人の周りの環境、すなわち人が存在している環境に対応してもよい。付加的または代替的に、環境は、人が存在していない別の環境、たとえば遠くから人によって制御されている、すなわち人によって遠隔操作されているエンティティの周りの環境に対応してもよい。「遠隔操作」、「遠隔制御」、および「遠くから制御」という用語は、同義語として使用されてよい。
【0020】
エンティティの形状は、エンティティの形および大きさに対応すると理解される。つまり、エンティティの形状は、エンティティの形および大きさに依存している。それぞれのエンティティの推定された位置は、環境内での推定された位置として理解される。
【0021】
この方法による支援を受ける人は、ユーザと呼ばれてもよい。
【0022】
セットの各エンティティの座標および範囲は、光追跡システムによって取得されてよい。センサユニットの1つまたは複数のセンサを使用して、セットの各エンティティの座標および範囲が取得されてよい。1つまたは複数のセンサは、1つもしくは複数のレーダ装置、1つもしくは複数のカメラ、1つもしくは複数のライダー装置、および/または1つもしくは複数のレーザスキャナに対応してもよい。付加的または代替的に、セットの各エンティティの座標および範囲を取得するため、特に位置推定を実施するために、1つまたは複数の慣性計測装置(たとえば、慣性センサモジュール)、および/または走行距離計が使用されてもよい。環境内の人、物理的物体、または仮想物体などのエンティティの座標および範囲を取得することは、環境/空間の認識補助システムの分野において知られており、したがってこれに関してさらなる情報は提供しない。仮想環境について、仮想環境内のエンティティ(たとえば、仮想物体)の位置および形状の情報、ひいてはその座標および範囲はすでに知られており、したがって直接利用可能であってよい。「環境」および「空間」という用語は、同義語として使用されてよい。
【0023】
たとえば、エンティティの座標は、ARUCOまたはVuForiaなどの光マーカ追跡を使用して取得されてよい。たとえば、物体の範囲は、RGBDカメラ(たとえば、Kinect)によって取得され、Kinect Fusionなどの対応するアルゴリズムを使用して形状に変換されてもよい。
【0024】
基本的な光追跡システムは、対象物体に取り付けられた一意の視覚的マーカ、または対象物体の視覚的特徴(たとえば、エッジ)に対応する輝度コントラストの構成を検出するためのアルゴリズムから成っていてもよい。対象物体は、選択されたセットのうちの1つまたは複数のエンティティである。キャリブレーションされたカメラ位置を前提として、次いでこれらの検出された特徴の位置を、カメラのセンサ座標から環境座標に変換することができる。
【0025】
それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、各エンティティの位置および形状を推定する場合にも、同じことが当てはまる。つまり、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、各エンティティの位置および形状を推定することは、環境/空間の認識補助システムの分野において知られており、したがってこれに関して詳細な情報は提供しない。特に、それぞれのエンティティの位置および形状は、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、1つまたは複数のアルゴリズムを使用して推定されてよい。代替的または付加的に、それぞれのエンティティの位置および形状は、それぞれのエンティティの取得された座標および取得された範囲と、それぞれのエンティティの位置および形状との関連を提供する、たとえば1つまたは複数のルックアップテーブルに記憶されたデータを使用して、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき推定されてもよい。データは、たとえばリアルタイムで提供されてもよいし、または記憶されたデータであってもよい。
【0026】
形状情報は、分類器または形状マッチングアルゴリズム(たとえば、Shape matching: Veltkamp, Remco C. “Shape matching: Similarity measures and algorithms.” Proceedings International Conference on Shape Modeling and Applications. IEEE, 2001)を使用して、座標および範囲から抽出されてよい。タスク関連の座標フレーム、たとえばユーザ、関連物体、部屋、または別のエンティティに対する座標フレームにセンサ座標を射影することにより、位置を取得してよい。
【0027】
エンティティの追跡点のセットからの、エンティティ(人または物理的物体など)の形状推定については、様々な解決策が存在している。実施形態によれば、様々なアルゴリズムを利用可能な凸包、すなわち所与の点のセットを含む最小の凸セットが特定されてよい。さらなる実施形態によれば、これは凹包に拡張されてもよい。エンティティの形状を特定するために考慮されるべきエンティティの点を選択することは、フィルタを適用して共通運動を得ること(ゲシュタルト法則の共通運命の適用)によって行われてよい。これにより、共通運動は、環境に対する運動中の特定のエラーマージンおよび順応性の制約の範囲内で、安定した空間構成(相対位置)を維持することとして定義される。
【0028】
対象区域の特定は、1つまたは複数のアルゴリズムを使用することによって実施されてよい。付加的または代替的に、この特定は、セットの1つまたは複数のエンティティの推定された位置および形状と対象区域との関連を提供する、たとえば1つまたは複数のルックアップテーブルに記憶されたデータを使用することによって実施されてもよい。データは、リアルタイムで提供されてもよいし、または記憶されたデータであってもよい。
【0029】
対象区域は、共通ユニットとして処理されるべきすべての対象エンティティを網羅する凸包を計算するなど、個々の形状推定に関する方法と同様の方法を使用して、特定されてもよい。対象エンティティは、選択されたセットのうちの1つまたは複数のエンティティに対応している。
【0030】
対象区域は、フィードバック区域に対応していてもよく、このフィードバック区域内で、支援を受ける人が環境に関するフィードバックを受け取る。「フィードバックゾーン」という用語は、「フィードバック区域」という用語の同義語として使用されてよい。セットの各エンティティのうち、対象区域によって網羅される少なくとも一部分は、ターゲット状態からの逸脱を評価して、環境に関して人にフィードバックを提供するために使用される。
【0031】
実施形態によれば、対象区域の形状は、セットのうちの1つまたは複数のエンティティが組み合わされた形状に対応していてよい。対象区域は、セットのうちの1つまたは複数のエンティティの形状によって形成された区域より大きいか、それと等しくてよい。たとえば、選択されたセットは、3つのエンティティを含んでいてよく、これらのエンティティは、この方法による支援を受ける人と、この人に関連する物理的物体(たとえば、運ばれている箱)と、この人に関連する別の人(たとえば、箱を運んでいる人を補助している別の人)とに対応する。この場合、これら3つのエンティティを網羅する対象区域は、この人と、この人に関連する物体と、この人に関連する別の人とを含んでもよい。特に、対象区域は、人と、この人に関連する物体と、この人に関連する別の人との形状によって形成された区域より大きいか、それに等しくてよい。
【0032】
別の実施形態によれば、対象区域の形状は、セットのうちの1つまたは複数のエンティティの少なくとも一部分を組み合わせた形状に対応していてよい。対象区域は、セットのうちの1つまたは複数のエンティティの形状によって形成される区域より小さくてよい。たとえば、選択されたセットは、3つのエンティティを含んでいてもよく、これらのエンティティは、この方法による支援を受ける人と、この人に関連する第1の物理的物体(たとえば、運ばれている箱)と、この人に関連する第2の物体(たとえば、第1の物理的物体を人が運ぶのを補助する運搬要素を有しているロボット)とに対応する。この場合、対象区域は、人の一部分、つまり箱を運んでいる人の腕と、第1の物理的物体の全体と、第2の物理的物体の一部分、つまりロボットの運搬要素とを網羅してよい。したがって、対象区域の形状は、人の一部分と、第1の物理的エンティティと、第2の物理的エンティティの一部分との組合せの形状に対応していてよい。つまり、対象区域の形状は、人の腕と、人によって運ばれている箱と、人が箱を運ぶ補助するロボットの運搬要素との組合せの形状に対応していてよい。特に、対象区域は、人と、人に関連する物体(たとえば箱)と、人に関連する別の物体(たとえばロボット)との形状によって形成された区域より小さくてよい。すなわち、対象区域は、人の腕と、運ばれている箱と、ロボットの運搬要素との形状によって形成される区域に対応していてよい。
【0033】
任意選択で、対象区域は、セットの各エンティティを網羅する。代替的に、対象区域は、セットの1つまたは複数のエンティティのうちの少なくとも1つまたは複数を網羅してもよい。
【0034】
対象区域は、連続した区域に対応してよい。たとえば、この方法による支援を受ける人と、この人に関連する物理的物体(たとえば、運ばれている箱)とに対応する2つのエンティティを、選択されたセットが含んでいる場合には、人によって運ばれている箱は人と接触していることから、対象区域は、人と箱とを網羅する連続した区域であってよい。代替的に、対象区域は、連続した区域を形成しない2つ以上のサブ区域を含んでいてもよい。区域のサブ区域は、「サブ対象区域」という用語によっても参照されてよい。言い換えれば、2つ以上のサブ区域は互いに接触しておらず、空間的に互いに離間している。つまり、対象区域の2つ以上のサブ区域は、互いに素である。したがって、対象区域の2つ以上のサブ区域は、途切れた/不連続な区域を形成する。たとえば、選択されたセットが2つ以上のエンティティを含んでおり、これらのエンティティが、飛行中のドローンの集団など、空間的に互いに離間した移動中の物理的物体に対応する場合には、対象区域は2つ以上のエンティティを含んでよく、ここで対象区域は、2つ以上のエンティティのうちの1つのエンティティをそれぞれが網羅する2つ以上のサブ区域によって形成されてよい。
【0035】
特に、選択されたセットのうちの2つ以上のエンティティ間の無関係の空間(すなわち、空きスペース)は、2つ以上のエンティティを網羅する対象区域から除外されて、2つ以上のエンティティのうちの1つのエンティティをそれぞれが網羅する2つ以上のサブ区域によって形成される対象区域が、空間的に区分けされることにつながってよい。この場合、2つ以上のサブ区域は不連続な対象区域を形成し、2つ以上のサブ区域は互いに素である。対象区域は、融通性を有していてよく、動的に変化してよい。したがって、2つ以上のエンティティを網羅する2つ以上のサブ区域が、連続した対象区域を形成する(たとえば、選択されたセットの2つ以上のエンティティ間に無関係の空間がない)場合と、2つ以上のエンティティを網羅する2つ以上のサブ区域が、不連続な対象区域を形成する場合とが存在してよい。
【0036】
たとえば、飛行中の3台のドローンの場合、飛行中の3台のドローンを網羅する対象区域は3つのサブ区域を含んでいてもよく、ここで各サブ区域は、飛行中の3台のドローンのうちの異なる1台のドローンを網羅している。異なる3台のドローンが異なる方向に飛行するとき、3台のドローン間の無関係の空間(すなわち、空きスペース)は、3台のドローンを網羅する対象区域から除外されて、対象区域が空間的に区分けされることにつながってよい。その結果、3台のドローンを網羅する対象区域を形成する3つのサブ区域は、連続した区域を形成することができない。つまり、3つのサブ区域は互いに素であってよい。対象区域は、融通性を有していてよく、動的に変化してよいので、3台のドローンを網羅している3つのサブ区域が、連続した対象区域を形成する場合と、3台のドローンを網羅している3つのサブ区域が、不連続な対象区域を形成する場合とが存在してよい。
【0037】
たとえば、選択されたセットが2つのエンティティを含んでおり、これらのエンティティが、この方法による支援を受ける人と、飛行中のドローンなど、この人によって制御されている移動中の物理的物体とに対応する場合も、同じことが言える。すなわち、物理的物体が移動した結果(たとえば、ドローンが飛行した結果)、移動する物理的物体と人とが同時に近くに存在しない、すなわち接触しないことがある。その結果、人と、移動する物理的物体とを網羅する対象区域は、連続した区域を形成しない、空間的に離間した、すなわち互いに分離した2つのサブ区域を含んでいてもよい。2つのサブ区域のうちの一方は、人または人の一部分を含んでいてよく、2つのサブ区域のうちの他方のサブ区域は、移動中の物理的物体または物理的物体の一部分を含んでいてよい。
【0038】
対象区域が、互いに素の、したがって連続した区域を形成しない2つ以上のサブ区域を含み、かつ対象区域が、選択されたセットのうちの複数のエンティティを網羅している場合、対象区域の各サブ区域は、選択されたセットのうちの1つまたは複数のエンティティを含んでいてもよく、ここでサブ区域は、1つまたは複数の異なるエンティティを含んでいる。たとえば、選択されたセットのうちの複数のエンティティを網羅している対象区域は、互いに素の(連続した区域を形成しない)2つのサブ区域によって形成されてよく、ここで2つのサブ区域のうちの第1のサブ区域は、複数のエンティティのうちの1つまたは複数のエンティティを含んでいてよく、2つのサブ区域のうちの第2のサブ区域は、複数のエンティティのうちの残りのエンティティを含んでいてよい。
【0039】
したがって、対象区域は、エンティティの選択されたセットに応じて、連続した区域であってもよいし、または互いに素で、融通性を有し、2つ以上のサブ区域を含んでいてもよく、ここでサブ区域は、互いに空間的に離間していてよい。
【0040】
コヒーレント刺激の大きさ(振幅)、頻度、および/またはパターンなどの特徴は、ターゲット状態からの逸脱に依存していてよい。つまり、ターゲット状態からの逸脱が大きいほど、コヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度は大きくなってよい。
【0041】
ターゲット状態からの逸脱を通知するためにコヒーレント刺激が加えられる人の身体部位は、対象区域の現在の状態とターゲット状態との間の逸脱の、環境内での発生位置、および人に対する発生方向に依存していてよい。つまり、ターゲット状態からの逸脱が人の前方で生じた場合には、人の身体の前方側に刺激が関連するように、人の身体にコヒーレント刺激が加えられてよい。たとえば、ターゲット状態からの逸脱が人の前方で生じた場合には、コヒーレント刺激、たとえば触覚的および/または視覚的な刺激が、人の身体の前方側に加えられてよい。ターゲット状態からの逸脱が人の後方で生じた場合には、人の身体の後方側に刺激が関連するように、人の身体にコヒーレント刺激が加えられてよい。たとえば、ターゲット状態からの逸脱が人の背後で生じていることを通知するために触覚的な刺激を加える場合には、(人の触覚の感覚系を刺激して)人の身体の後方側に触覚的な刺激が加えられてよい。ターゲット状態からの逸脱が人の背後で生じていることを通知するために視覚的な刺激を加える場合には、人の背後の視覚表示の近くで逸脱が示されるように、(人の視覚の感覚系を刺激して)人の身体に視覚的な刺激が加えられてよい。ターゲット状態からの逸脱が人の片側で生じた場合には、人の身体の片側にコヒーレント刺激が加えられてよいなどということである。
【0042】
1つまたは複数の対象変数に対して対象区域を評価するステップ、およびターゲット状態からの逸脱を人に通知するステップは、任意選択で周期的に繰り返されてもよい。代替的または付加的に、これらのステップは、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として実施されてもよい。
【0043】
付加的または代替的に、セットを選択するステップを除き、第1の態様による方法のすべてのステップが、任意選択で繰り返されてもよい。実施形態によれば、これらのステップは周期的に繰り返されてよい。代替的または付加的に、セットのうちの1つまたは複数のエンティティの構成が変更されるか変化した場合に、これらのステップが繰り返されてもよい。つまり、動的な再構成が実施されてもよい。たとえば、人と、人に関連する物体、たとえば運ばれている箱とに対応した2つのエンティティを、セットが含んでいる場合には、その人が箱を運ぶ運び方が、たとえば箱を縦向きに運ぶことから、箱を斜め向きに運ぶことに変更されることがある。その結果、人に対する箱の配向がすでに変更されている箱の推定された位置および形状に基づき、対象区域が再度特定される。代替的または付加的に、上述したステップは、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として実施されてもよい。
【0044】
付加的または代替的に、対象区域を特定するステップ、対象区域を評価するステップ、およびターゲット状態からの逸脱を通知するステップは、任意選択で繰り返されてもよい。実施形態によれば、これらのステップは周期的に繰り返されてもよい。代替的または付加的に、これらのステップは、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として繰り返されてもよい。たとえば、セットは、支援を受ける人である1つのエンティティを含んでいてよく、対象区域は、この人の推定された位置および形状、ならびに対象区域の境界に加えられるべき付加的な安全区域に基づき特定されてよい。この場合、付加的な安全区域は、病気に感染する危険性など、人にとっての危険性の確率に依存していてよい。したがって、付加的な安全区域の大きさ、ひいては対象区域の大きさは、病気に感染する危険性など人にとっての危険性の確率に応じて変化してよい。つまり、上述したステップの繰り返しの各回において、人の推定された位置および形状と、人にとっての危険性の確率に応じて異なる付加的な安全区域とに基づき、対象区域が特定されてよい。
【0045】
「ボーダ」という用語は、「境界」という用語の同義語として使用されてよい。
【0046】
付加的または代替的に、第1の態様による方法のすべてのステップが、任意選択で繰り返されてもよい。実施形態によれば、この方法のステップは周期的に繰り返されてよい。代替的または付加的に、これらのステップは、この方法による支援を受ける人からのコマンドに応答して実施されてもよい。たとえば、2つのエンティティ、すなわち人と、この人によって運ばれている箱など、この人に関連する物理的物体とを、セットが最初に含んでいる場合に、別の人が同じく箱を運び始めることにより、この人を補助することがある。この場合、この人は、方法のすべてのステップの繰り返しをトリガしてよく、ここで、この人と、箱と、この人が箱を運ぶのを補助する別の人とが、今度は3つのエンティティの新しいセットとして選択される。
【0047】
実施形態によれば、セットの選択は、環境内に存在する2つ以上のエンティティのセットを選択することに対応する。特に、セットの選択は、環境内に存在する2つ以上のエンティティであって、この2つ以上のエンティティのうちの1つのエンティティが(この方法による支援を受ける)人に対応している、エンティティのセットを選択することに対応する。
【0048】
第1の態様の実装形態によれば、この方法は、セットの各エンティティの推定された位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき、対象区域を特定するステップを含んでいる。
【0049】
第1の態様の実装形態によれば、付加的な情報は、対象区域の境界に追加されるべき付加的な安全区域を定義する。代替的または付加的に、付加的な情報は、セットの1つまたは複数のエンティティのうち、対象区域を特定するために除外すべき1つまたは複数の部分を定義する。付加的または代替的に、付加的な情報は、空気流、セットの物理的保護の存在もしくは程度、および/またはセットの位置履歴など、環境の外的要因を定義する。
【0050】
特に、付加的な安全区域は、セットの各エンティティの推定された位置および形状に基づき特定される対象区域の境界に、追加されることになる。
【0051】
たとえば、セットは2つのエンティティを含んでいてよく、その一方のエンティティが人であり、他方のエンティティが、機械を修理するための工具など、人に関連する物体である。この場合、人が機械を修理中に工具により機械を破損しないようにするのを支援することに関連するのは、工具を扱っている腕および手だけであり得る。したがって、この場合、付加的な情報は、工具を扱っている腕および手を除く人の全身が、対象区域を特定するために除外されるべきであると定義する。その結果、人の腕および手、ならびに工具の推定された位置および形状だけに基づき、対象区域が決定されてよい。したがって、対象区域は、人の腕および手と工具とを網羅する。対象区域の形状は、人の腕および手と工具とが組み合わされた形状に対応していてよい。
【0052】
つまり、任意選択で、(セットのエンティティが、人と、人に関連する1つまたは複数の物体とに対応している場合には)人の一部分、および人に関連する1つまたは複数の物体の一部分が、対象区域から除外されてよい。そのような事例により、人の全身に関係しない、または1つもしくは複数の物体のそれぞれの本体全体に関係しない、人に関連する物体などのエンティティの周りの空間/区域を厳密に知覚する必要がある小さい認識領域を、認識することが可能になる。例としては、後の導入に備えて小型パイプの周りの空間/区域を知覚すること、狭い入り組んだ経路の境界を感じ取ること(たとえば、ホットワイヤーゲーム)、構造的および法的な距離までの距離を考慮して建築スケッチをすること、機械的および電気的な化合物の安全マージンを考慮して機械製図を描くことが含まれる。
【0053】
第1の態様の実装形態によれば、付加的な安全区域は、病気に感染する危険性など、人にとっての危険性の確率推定に依存する。
【0054】
第1の態様の実装形態によれば、セットの1つまたは複数のエンティティは、人、この人に関連する1つもしくは複数の物体、および/またはこの人に関連する1人または複数の別の人である。
【0055】
たとえば、セットの1つまたは複数のエンティティは、人(たとえば、社会的距離を確保して、別の人から病気が感染する危険性を低減するための付加的な安全区域により、人の形状を越えて対象区域が拡大された人)、人によって遠隔操作される1つまたは複数の物理的物体、人とこの人に関連する1つまたは複数の物理的物体(たとえば、箱を運んでいる人、買い物カートを押している人、物理的物体を引っ張っている人など)、人と、この人に関連する1つまたは複数の物理的物体と、この人に関連する1人または複数の別の人(たとえば、別の人と一緒に箱を運んでいる人)、人とこの人に関連する1人または複数の別の人(たとえば、子どもと歩いている母親、人とこの人につながるタスクを行う独立して稼働している1人または複数の別の人、移動する1人または複数の人を監視する1人または複数の別の人、1人または複数の別の人に対するこの人の位置および/または移動を同期する1人または複数の別の人)、人と1つまたは複数の仮想物体(たとえば、仮想車両を運転している人)、あるいは人と1つまたは複数の遠隔操作されている物理的物体(たとえば、人とこの人により遠隔操作されるロボット、人と、この人により遠隔操作されるロボットと、このロボットによって運ばれる物理的物体)であってよい。
【0056】
2つ以上のエンティティを含むセットのうちの1つのエンティティが、支援を受ける人に対応する場合、セットのうちの1つまたは複数の別のエンティティにより、環境内で人によって占拠される物理的空間が拡張される。環境内で人によって占拠される拡張された物理的空間は、対象区域AOIによって表されてよい。
【0057】
第1の態様の実装形態によれば、環境は、人の周りの第1の環境、この人に関連する1つもしくは複数の物体の周りの第2の環境、および/またはこの人に関連する1人または複数の別の人の周りの第3の環境を含んでいる。
【0058】
第1の環境、第2の環境、および/または第3の環境は、互いに対応していてよい。
【0059】
たとえば、選択されたセットは2つのエンティティを含んでおり、その一方のエンティティが支援を受ける人であり、他方のエンティティが、この人によって押されている買い物カートなど、この人に関連する物体である。この場合、(評価を受ける)環境、人の周りの第1の環境、およびこの人に関連する物体の周りの第2の環境は、互いに対応している。人が買い物カートを押しているのを、別の人が買い物カートを引っ張ることにより補助するなど、その人に関連する別の人である付加的な第3のエンティティを、セットが含む場合にも、同じことが言える。そのような場合には、(評価を受ける)環境、人の周りの第1の環境、この人に関連する物体の周りの第2の環境、およびこの人に関連する別の人の周りの第3の環境は、互いに対応している。
【0060】
選択されたセットが2つのエンティティを含んでおり、その一方のエンティティが支援を受ける人であり、他方のエンティティが、この人によって遠隔操作されているロボットなど、この人に関連する物体である場合には、(評価を受ける)環境は、人の周りの第1の環境と、この人に関連する物体の周りの第2の環境とを含んでいる。この場合、第1の環境と第2の環境とは、互いに対応していない。選択されたセットのうちの2つのエンティティ、すなわち人と遠隔操作されるロボットとを網羅する対象区域が、連続した区域ではない場合に、このことが当てはまる。つまり、この場合、対象区域は2つのサブ区域を含んでいてよく、この2つのサブ区域のうちの第1のサブ区域が、第1の環境に存在する人を網羅していてよく、この2つのサブ区域のうちの第2のサブ区域が、第2の環境に存在するロボットを網羅している。第1の環境と第2の環境とは互いに対応していないので、対象区域の2つのサブ区域は空間的に離間しており、したがって連続した区域を形成していない。つまり、すでに上で概説したように、(たとえば人と遠隔操作されるロボットとを網羅する)対象区域は、互いに素で融通性を有しており、エンティティの選択されたセットに応じて2つ以上のサブ区域を含んでいてもよく、ここでサブ区域は、互いに空間的に離間している。上で概説したように、2つ以上のサブ区域は、異なる環境を対象としていてよい。
【0061】
したがって、第1の態様の実装形態による方法は、人の現在の状態の、ターゲット状態からの逸脱、および人によって遠隔操作されている1つまたは複数の物体の現在の状態の、ターゲット状態からの逸脱について、(支援を受ける)人にフィードバックを提供することができる。たとえば、現在の状態は、障害物までの距離に対応し、ターゲット状態は、障害物までの最短距離に対応する。この場合、この方法を使用して、人の周りの第1の環境の障害物と人との衝突に加えて、遠隔操作されている1つまたは複数の物体の周りの第2の環境の障害物と、遠隔操作されている1つまたは複数の物体との衝突を防止することができる。つまり、人と、それに対応する第1の環境にある障害物との不要な衝突、および遠隔操作されている1つまたは複数の物体と、それに対応する第2の環境にある障害物との不要な衝突を、同時に防止することができる。
【0062】
第1の態様の実装形態によれば、セットの1つまたは複数のエンティティは、1つもしくは複数の物理的エンティティおよび/または1つもしくは複数の仮想エンティティである。
【0063】
たとえば、エンティティのセットは2つのエンティティを含んでいてよく、そのうちの1つのエンティティが(支援を受ける)人であり、第2のエンティティが、この人に関連する仮想物体であり、この仮想物体は、物理的物体の形状、ひいてはその形および大きさに似ていてもよいし、似ていなくてもよい。たとえば、仮想物体は、実際の車両に対応していてよい。したがって、この方法により、車両を操作することなく、場合により車両を破損することなく、大型車両の経路計画ができるようになる。また、この方法を使用して、パイプ、道路、およびカーペットなどの通路の設置を計画することもできる。これは、訓練の場面に関しても有利であり、実際の物体(すなわち、物理的物体)が、たとえば非常に高価であったり、壊れやすかったりする場合に、仮想物体を使用することは、これらの実際の物体を使用することに勝る利点がある。「実際の物体」および「物理的物体」という用語は、同義語として使用されてもよい。
【0064】
特に、エンティティのセットは3つのエンティティを含んでいてよい。たとえば、1つのエンティティが人であり、第2のエンティティが、車両などの実際の物体に似た仮想物体であり、第3の物体が、たとえば車両の経路を計画するために人によって動かされる車両の小型モデルなどの物理的物体である。
【0065】
第1の態様の実装形態によれば、1つまたは複数の対象変数は、対象区域の境界と、環境内の別のエンティティなどの障害物との間の距離、位置追跡システムの追跡区域からの対象区域の逸脱、および/または利用可能な無線データなどの1つまたは複数の特徴の区域からの対象区域の逸脱を含んでいる。
【0066】
現在の状態は、対象区域の境界と、環境内の別のエンティティなどの障害物との間の距離に対応してよい。ターゲット状態は、対象区域の境界と環境内の障害物との間の許容可能な最短距離に対応してよい。言い換えれば、ターゲット状態は、対象区域の境界と障害物との間の距離が、最短距離、すなわち閾値に等しいかそれより大きい状態に対応してよい。
【0067】
付加的または代替的に、ターゲット状態は、位置追跡システムの追跡区域の範囲内に対象区域がある対象区域の状態に対応してよい。追跡区域は、作業区域と呼ばれてもよい。付加的または代替的に、ターゲット状態は、利用可能な無線データなど1つまたは複数の特徴の区域内に対象区域がある対象区域の状態に対応してよい。
【0068】
第1の態様の実装形態によれば、セットの選択は、人により手動で実施される。付加的または代替的に、セットの選択は自動的に実施される。
【0069】
特に、第1の態様または任意のその実装形態による方法を実施する処理ユニットは、セットの選択を自動的に実施してよい。
【0070】
第1の態様の実装形態によれば、コヒーレント刺激は、視覚的な刺激、触覚的な刺激、聴覚的な刺激、電磁的な刺激、化学的な刺激、および/または熱的な刺激のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0071】
実施形態によれば、コヒーレント刺激は、触覚と視覚のコヒーレントな刺激である。
【0072】
第1の態様による方法を実現するために、上述した実装形態および任意選択の特徴の一部または全部が、互いに組み合わされてよい。
【0073】
本開示の第2の態様は、人が環境を評価するのを支援するためのシステムであって、処理ユニットとセンサユニットとを備えるシステムを提供する。処理ユニットは、環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットを選択するように構成されている。センサユニットは、1つまたは複数のセンサを備えている。センサユニットは、セットの各エンティティの、環境内の座標および範囲を取得するように構成されている。処理ユニットは、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、セットの各エンティティの位置および形状を推定するように構成されている。さらに、処理ユニットは、セットの各エンティティの少なくとも一部分を網羅する対象区域を、セットの各エンティティの推定された位置および形状に基づき特定するように構成されている。さらに、処理ユニットは、対象区域の現在の状態と、ターゲット状態との間の逸脱を評価するために、1つまたは複数の対象変数に関して対象区域を評価するように構成されている。システムは、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、ターゲット状態からの逸脱を人に通知するように構成されている。
【0074】
第2の態様によるシステムは、第1の態様または任意のその実装形態による方法を実施するように構成されている。
【0075】
第2の態様の実装形態によれば、通知ユニットは、振動触覚アクチュエータ、圧迫アクチュエータ、光エミッタ、拡声器、電極、誘導コイル、化学エミッタ/化学薬剤、および加熱要素のうちの少なくとも1つの種類の、1つまたは複数のアクチュエータ要素を備えている。
【0076】
特に、通知ユニットは、複数のアクチュエータ要素を備えている。複数のアクチュエータ要素は、1つもしくは複数の振動触覚アクチュエータ、1つもしくは複数の圧迫アクチュエータ、1つもしくは複数の光エミッタ、1つもしくは複数の拡声器、1つもしくは複数の電極、1つもしくは複数の誘導コイル、1つもしくは複数の化学エミッタ/化学薬剤、および/または1つもしくは複数の加熱要素に対応してもよい。
【0077】
振動触覚アクチュエータは、振動を発生させ、その振動を人の身体に加えることにより、人の身体に触覚的な刺激を与えるように構成されている。圧迫アクチュエータは、圧力を発生させ、その圧力を人の身体に加えることにより、人の身体に触覚的な刺激を与えるように構成されている。光エミッタは、可視光を発生させ、その可視光を人の身体、特に目に与えることにより、人の身体、特に目に視覚的な刺激を与えるように構成されている。拡声器は、音を発生させ、その音を人の身体、特に耳に与えることにより、人の身体、特に耳に聴覚的な刺激を与えるように構成されている。電極および/または誘導コイルはそれぞれ、人により感知可能な電磁波を発生させ、これらの電磁波を人の身体に加えることにより、人の身体に電磁的な刺激を与えるように構成されている。化学エミッタおよび/または化学薬剤は、身体により感知可能な化学プロセスを引き起こさせ、これらの化学プロセスを人の身体に与えることにより、人の身体に化学的な刺激を与えるように構成されている。加熱要素は、熱を発生させ、その熱を人の身体に加えることにより、人の身体に熱的な刺激を与えるように構成されている。
【0078】
第2の態様の実装形態によれば、コヒーレント刺激は、触覚と視覚のコヒーレントな刺激であり、通知ユニットは、触覚と視覚のコヒーレントな刺激のうちの視覚的な刺激を出力するためのディスプレイと、触覚と視覚のコヒーレントな刺激のうちの触覚的な刺激を出力するために触覚アクチュエータとを備えている。ディスプレイユニットおよび/または触覚アクチュエータユニットは、人による装着が可能であってよい。任意選択で、ディスプレイユニットは、三人称視点を示す視覚表示を行うように構成されてよい。特に、視覚的な刺激の出力先である人が観察者であるとき、これが該当してよい。代替的または付加的に、ディスプレイユニットは、一人称視点(すなわち自我視点)を示す視覚表示を行うように構成されてよい。ディスプレイユニットは、人が存在している環境、および/または少なくとも1つの(人が存在していない)別の環境を示す視覚表示を行うように構成されてよい。このような別の環境は、たとえば人によって遠隔操作されているロボットなどの物理的物体の環境であってよい。つまり、ディスプレイユニットは、複合現実またはテレプレゼンスの操作(たとえば、ロボットを遠隔操作すること)のための視覚表示を行うように構成されてよい。ディスプレイユニットは、複合現実スマート眼鏡などの複合現実ディスプレイユニットを備えていてもよいし、それに対応していてもよい。
【0079】
触覚アクチュエータユニットは、人によりその身体の周りに装着が可能なベルトおよび/またはバンド、たとえば手首に装着が可能なベルトおよび/または頭に装着が可能なヘッドバンドを備えていてもよいし、またはそれに対応していてもよく、ここでベルトまたはバンドは、ベルトすなわちバンドに沿って複数の振動触覚アクチュエータおよび/または圧迫アクチュエータを備えている。
【0080】
触覚アクチュエータユニットは、人の感覚系、特に触覚の感覚系に、触覚的な刺激を遠隔で与えるように構成されてよい。たとえば、触覚アクチュエータユニットは、1つまたは複数のエアブラスト、すなわち風を、触覚刺激として出力するように構成されてよい。任意選択で、触覚アクチュエータユニットは、超音波を使用して人の感覚系に触覚的な刺激を遠隔で与えるように構成されてよい。たとえば、触覚アクチュエータユニットは、空中超音波ハプティクスなどの空中ハプティクスのために構成されてよい。触覚アクチュエータユニットは、触覚的な刺激を出力するように構成された、クアッドコプタなどの1つまたは複数のドローンを備えていてもよいし、それに対応していてもよい。そのような1つまたは複数のドローンは、「触覚ドローン」と呼ばれてよい。
【0081】
第2の態様の実装形態によれば、センサユニットは光追跡システムである。センサユニットの1つまたは複数のセンサは、1つもしくは複数のレーダ装置、1つもしくは複数のカメラ、1つもしくは複数のライダー装置、1つもしくは複数のレーザスキャナ、および/または1つもしくは複数の慣性計測装置(たとえば、1つもしくは複数の慣性センサモジュール)に対応してもよい。
【0082】
第1の態様およびその実装形態による方法に関する上の説明は、第2の態様およびその実装形態によるシステムにも相応に有効である。
【0083】
第2の態様およびその実装形態、ならびに任意選択の特徴によるシステムは、第1の態様およびそのそれぞれの実装形態、ならびにそれぞれの任意選択の特徴による方法と同じ利点を実現する。
【0084】
第2の態様によるシステムを実現するために、上述した実装形態および任意選択の特徴の一部または全部が、互いに組み合わされてよい。
【0085】
以下では、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態を例示的に説明する。
【0086】
図1は、本発明の開示の例示的な実施形態の主要なステップを表す簡略フローチャートを示している。したがって、
図1は、第1の態様による方法のすべてのステップを示している。以下に詳細を示す。
【0087】
人が環境を評価するのを支援するための方法のステップS1において、環境内に存在する1つまたは複数のエンティティのセットが選択される。すでに上で概説したように、第1の態様の方法に関して、1つまたは複数のエンティティは、人自身、この人に関連する1つもしくは複数の物体、および/またはこの人に関連する1人もしくは複数の別の人に対応していてよい。その例を、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、
図5(A)、
図5(B)、
図6、
図7、および
図8に関して以下で例示的に説明する。
【0088】
第1のステップS1に続く次のステップS2において、ステップS1で作成されたセットの各エンティティの、環境内の座標および範囲が取得される。各エンティティの環境内の座標および範囲は、1つまたは複数のセンサを備えるセンサユニットを使用することによって取得されてよい。特に、センサユニットは光追跡システムであってよい。すでに上で概説したように、環境内に存在するエンティティの、その環境内の座標および範囲を取得することは、環境/空間の認識補助システムの分野において知られており、したがってこれに関してさらなる情報は提供しない。
【0089】
ステップS2に続く次のステップS3において、ステップS2で取得されたそれぞれのエンティティの座標および範囲に基づき、セットの各エンティティの環境内の位置および形状が推定される。特に、それぞれのエンティティの位置および形状は、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき、1つまたは複数のアルゴリズムを使用して推定されてよい。代替的または付加的に、それぞれのエンティティの位置および形状は、それぞれのエンティティの取得された座標および取得された範囲と、それぞれのエンティティの位置および形状との関連を提供する、たとえば1つまたは複数のルックアップテーブルに記憶されたデータを使用して、それぞれのエンティティの取得された座標および範囲に基づき推定されてよい。データは、リアルタイムで提供されてもよいし、または記憶されたデータであってもよい。すでに上で概説したように、環境内に存在するエンティティの、環境内の位置および形状を、エンティティの環境内の座標および範囲に基づき推定することは、環境/空間の認識補助システムの分野において知られており、したがってこれに関してさらなる情報は提供しない。
【0090】
ステップS3に続く次のステップS4において、セットの各エンティティの少なくとも一部分を網羅する対象区域が、ステップS3で推定された各エンティティの位置および形状に基づき特定される。この特定は、1つまたは複数のアルゴリズムを使用することによって実施されてよい。付加的または代替的に、セットの1つまたは複数のエンティティと対象区域との間の関連を提供する、たとえば1つまたは複数のルックアップテーブルに記憶されたデータを使用することによって、この特定が実施されてもよい。データは、リアルタイムで提供されてもよいし、または記憶されたデータであってもよい。
【0091】
任意選択で、対象区域は、セットの各エンティティを網羅するように特定されてよい。代替的に、対象区域は、セットの各エンティティの一部分を網羅するように特定されてもよい。代替的に、セットが2つ以上のエンティティを含む場合には、セットのうちの1つまたは複数のエンティティの一部分だけ、および/またはセットのうちの他方の1つまたは複数のエンティティの全体を対象区域が含むように、対象区域が特定されてもよい。
【0092】
任意選択で、ステップS4において、S3で推定された各エンティティの位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき、対象区域が特定されてよい。付加的な情報は、対象区域の境界に追加されるべき付加的な安全区域を定義してよい。付加的な安全区域は、病気に感染する危険性など、人にとっての危険性の確率推定に依存していてよい。付加的または代替的に、付加的な情報は、対象区域を特定することから除外すべき、セットの1つまたは複数のエンティティの1つまたは複数の部分を定義してもよい。付加的または代替的に、付加的な情報は、空気流、セットの物理的保護の存在もしくは程度、および/またはセットの位置履歴など、環境の外的要因を定義してもよい。
【0093】
ステップS4に続く次のステップS5において、対象区域の現在の状態の、ターゲット状態からの逸脱が、1つまたは複数の対象変数に関して対象区域を評価することによって、評価されてよい。1つまたは複数の対象変数は、対象区域の境界と、環境内の別のエンティティなどの障害物との間の距離、位置追跡システムの追跡区域からの対象区域の逸脱、および/または利用可能な無線データなどの1つまたは複数の特徴の区域からの対象区域の逸脱を含んでいてよい。
【0094】
ステップS5に続く次のステップS6において、現在の状態とターゲット状態との間の、ステップS5で評価された逸脱が、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して人に通知され、こうして環境に関するフィードバックが人に提供される。コヒーレント刺激を使用して人の身体を刺激することにより、人の様々な感覚系のうちの1つまたは複数が刺激されてよい。人の様々な感覚系のうちのどの感覚系が刺激されるかは、人の身体に加えられる刺激、したがって感覚系を刺激する刺激の種類に依存している。たとえば、視覚的および触覚的な刺激を人の身体に加える場合には、人の視覚の感覚系および触覚の感覚系が、これらの刺激によりそれぞれ刺激される。すでに上で概説したように、コヒーレント刺激は、視覚的な刺激、触覚的な刺激、聴覚的な刺激、電磁的な刺激、化学的な刺激、および/または熱的な刺激のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。ステップS6に関するさらなる情報については、第1の態様またはその任意の実装形態よる方法のそれぞれの説明が参照される。
【0095】
ステップS1~S6に関するさらなる情報については、第1の態様またはその任意の実装形態よる方法のそれぞれの説明が参照される。
【0096】
ステップS6の枠から始まりステップS5の枠で終わる矢印によって
図1に示してあるように、評価するステップS5および通知するステップS6は、任意選択で繰り返されてよい。実施形態によれば、ステップS5およびステップS6は、任意選択で周期的に繰り返されてよい。代替的または付加的に、ステップS5およびS6は、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として繰り返されてもよい。
【0097】
付加的または代替的に、ステップS6の枠から始まりステップS2の枠で終わる矢印によって
図1に示してあるように、ステップS2、S3、S4、S5、およびS6は、任意選択で繰り返されてよい。実施形態によれば、ステップS2~S6は、周期的に繰り返されてよい。代替的または付加的に、セットのうちの1つまたは複数のエンティティの構成が変更されるか変化した場合に、ステップS2~S6が繰り返されてもよい。代替的または付加的に、ステップS2~S6は、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として繰り返されてもよい。
【0098】
付加的または代替的に、ステップS6の枠から始まりステップS4の枠で終わる矢印によって
図1に示してあるように、ステップS4、S5、およびS6は、任意選択で繰り返されてよい。実施形態によれば、ステップS4~S6は、周期的に繰り返されてよい。代替的または付加的に、ステップS4~S6は、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として繰り返されてもよい。
【0099】
付加的または代替的に、ステップS6の枠から始まりステップS1の枠で終わる矢印によって
図1に示してあるように、すべてのステップ、すなわちステップS1、S2、S3、S4、S5、およびS6は、任意選択で繰り返されてよい。実施形態によれば、ステップS1~S6は、周期的に繰り返されてよい。代替的または付加的に、ステップS1~S6は、この方法による支援を受ける人からのコマンドの結果として繰り返されてもよい。
【0100】
図2は、本開示の実施形態によるシステムの構成要素を表すブロック図を示している。
【0101】
図2のシステム20は、1つまたは複数のセンサ22を有するセンサユニット21と、処理ユニット23と、任意選択の記憶ユニット24と、1つまたは複数のアクチュエータ要素26を有する通知ユニット25とを備えている。
図2には、2つのセンサ22および2つのアクチュエータ要素26が示してある。これは単に例であり、本開示を限定するものではない。
【0102】
センサユニット21は、光追跡システムであってよい。1つまたは複数のセンサ22は、1つもしくは複数のレーダ装置、1つもしくは複数のカメラ、1つもしくは複数のライダー装置、1つもしくは複数のレーザスキャナ、および/または1つもしくは複数の慣性計測装置(たとえば、1つもしくは複数の慣性センサモジュール)に対応してよい。処理ユニット23は、コントローラ、マイクロコントローラ、プロセッサ、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの要素の任意の組合せであってよい。任意選択の記憶ユニット24は、処理ユニット23によって使用可能なデータを記憶するように構成されている。「メモリ」という用語は、「記憶ユニット」という用語の同義語として使用されてよい。処理ユニット23は、任意選択の記憶ユニット24に対してデータの読出しおよび書込みを行うように構成されてよい。任意選択の記憶ユニット24は、処理ユニット23の一部であってよい。通知ユニット25の1つまたは複数のアクチュエータ要素26は、振動触覚アクチュエータ、圧迫アクチュエータ、光エミッタ、拡声器、電極、誘導コイル、化学エミッタ/化学薬剤、および加熱要素のうちの少なくとも1つの種類であってよい。処理ユニット23は、センサユニット21および通知ユニット25を制御するように構成されてよい。
【0103】
プロセッサユニット23は、
図1による方法のステップS1、S3、S4、およびS5を実施するように構成されている。つまり、プロセッサユニット23は、上述したように、第1の態様またはその任意の実装形態による方法の、セットを選択するステップ、位置および形状を推定するステップ、対象区域を特定するステップ、および対象区域を評価するステップを実施するように構成されている。
【0104】
センサユニット21は、
図1による方法のステップS2を実施するように構成されている。つまり、センサユニット21は、上述したように、第1の態様またはその任意の実装形態による方法の、各エンティティの座標および範囲を取得するステップを実施するように構成されている。通知ユニット25は、
図1による方法のステップS6を実施するように構成されている。つまり、通知ユニット25は、上述したように、第1の態様またはその任意の実装形態による方法の、ターゲット状態からの逸脱を通知するステップを実施するように構成されている。
【0105】
以下では、第1の態様またはその任意の実装形態による方法を使用する様々な状況の例を、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、
図5(A)、
図5(B)、
図6、
図7、および
図8に関して説明する。したがって、第1の態様またはその任意の実装形態による方法の説明、ならびに
図1の方法の説明は、
図3(A)、
図3(B)、
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、
図5(A)、
図5(B)、
図6、
図7、および
図8の実施形態にも相応に有効であり、したがって以下ではこれらの説明が参照される。
【0106】
図3(A)および
図3(B)は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を概略的に示している。
【0107】
図3(A)の実施形態によれば、選択されたセットは、環境内に2つのエンティティ1および2を含んでいる。2つのエンティティのうちの第1のエンティティは、支援を受ける人1に対応しており、この人が、鳥瞰的に円として概略的に示されている。第2のエンティティは、人1に関連する物理的物体2に対応しており、この物体が、鳥瞰的に四角として概略的に示されている。たとえば、物理的物体2は、人1によって運ばれているか押されている箱、人1によって押されている買い物カート、人1によって押されているベビーカー、人1によって押されている、病院もしくは介護施設の患者用ベッド、人1によって使用されている芝刈り機などであってよい。
【0108】
図3(A)に示してあるように、対象区域AOIは、人1と物理的物体2とを網羅している。つまり、対象区域AOIは、セットの各エンティティを網羅している。対象区域AOIは、人1および物理的物体2の形状によって形成される区域よりも大きい。
図3(A)の対象区域AOIの形状は、単なる例であり、本開示を限定するものではない。つまり、対象区域AOIの形は、
図3(A)に示してあるような楕円形ではなく、対象区域の形は円形、長方形など様々であってよい。付加的または代替的に、対象区域AOIの大きさは、セットの各エンティティを対象区域AOIが網羅する限り、様々であってよい。物理的物体2により、環境内で人1によって占拠される物理的空間が拡張され、ここで前記拡張された物理的空間は、対象区域AOIによって表されている。
【0109】
図3(A)から示すことができるように、この方法により環境に関するフィードバックを人が受け取るフィードバック区域は、人1のみまたは物体2のみの形状に対応するフィードバック区域に比べて、対象区域により拡大されている。その結果、人1の認識が改善される。なぜなら、環境内の障害物までの最短距離などのターゲット状態からの逸脱が、障害物までの距離など、人の現在の状態だけを比較することにより評価されるわけではないからである。対照的に、ターゲット状態からの逸脱は、対象区域AOIの現在の状態とターゲット状態とを比較することにより評価される。その結果、人が移動するとき、対象区域AOIに含まれた物理的物体が環境内の障害物に近づきすぎた場合にも、その人はフィードバックを受信する。つまり、対象区域AOIの境界とそれぞれの障害物との間の距離が、障害物までの許容可能な最短距離より短くなる場合には、ターゲット状態からの逸脱が、コヒーレント刺激を使用して通知される。対象区域AOIの境界とそれぞれの障害物との間の距離は、対象区域AOIの現在の状態の例である。障害物までの許容可能な最短距離は、ターゲット状態の例である。
【0110】
対象区域の境界と障害物との間の距離が短くなる、特に最短距離を下回るなど、ターゲット状態からの逸脱が増大すると、その結果、逸脱を通知するためのコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度が増大されてよい。
【0111】
図3(B)の実施形態は、選択されたセットが付加的なエンティティ3を含んでいる点で、
図3(A)の実施形態と異なっている。
図3(A)についての上記の説明は、
図3(B)にも相応に有効である。選択されたセットの3つのエンティティうちの第1のエンティティは、支援を受ける人1に対応しており、第2のエンティティは、人1に関連する物理的物体2に対応している。第3のエンティティは、人1に関連する別の人3に対応しており、ここで別の人3は、鳥瞰的に円として概略的に示されている。別の人3は、人1が物理的物体2を扱うのを補助する。
【0112】
図3(B)に示してあるように、対象区域AOIは、人1と、物理的物体2と、別の人3とを、すなわちセットの各エンティティを網羅している。対象区域AOIは、人1、物理的物体2、および別の人3の形状によって形成される区域よりも大きい。
図3(B)の対象区域AOIは、付加的な第3のエンティティがあるために、
図3(A)の対象区域AOIよりも大きい。
図3(B)の対象区域AOIの形状は、単なる例であり、本開示を限定するものではない。物理的物体2および別の人3により、環境内で人1によって占拠される物理的空間が拡張され、ここで前記拡張された物理的空間は、対象区域AOIによって表されている。
【0113】
図4(A)、
図4(B)、および
図4(C)は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を概略的に示している。
図4(A)、
図4(B)、および
図4(C)では、様々なエンティティが、鳥瞰的に円、四角などの幾何学的物体により、概略的に示してある。
図4(A)、
図4(B)、および
図4(C)の対象区域AOIの形状は、単なる例であり、本開示を限定するものではない。特に、
図4(A)、
図4(B)、および
図4(C)の対象区域AOIの形は、示してある形(楕円形)に比べて異なっていてよい。
【0114】
図4(A)の実施形態によれば、選択されたセットは1つのエンティティを含んでおり、これは支援を受ける人1である。人1の推定された位置および形状に基づき特定された対象区域A0は、人1を示す円1の周りに細い破線の円A0によって示されている。
【0115】
図4(A)の実施形態によれば、対象区域AOIは、人1の推定された位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき特定され、ここで付加的な情報は、対象区域A0の境界に加えられるべき付加的な安全区域を定義する。その結果、人1の推定された位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき特定された(太い点鎖線の円AOIによって示してある)対象区域AOIは、付加的な情報なしに特定された対象区域A0よりも大きい。対象区域A0と対象区域AOIとの間の付加的な区域は、付加的な安全区域に対応する。
【0116】
図4(A)に示してあるように、対象区域AOIは人1を網羅している。対象区域AOIは、付加的な安全区域が追加されていることから、人1の形状により形成される区域よりも大きい。
図4(A)の実施形態は、たとえば病気の拡大を防止するために、他の人に対して安全な距離を保つことを可能にする。
【0117】
付加的な安全区域は、人にとっての危険性、たとえば病気に感染する危険性の確率推定に依存していてよい。したがって、危険性の低い環境の区分では、付加的な安全区域は小さくてよく、したがって人1を網羅する対象区域AOIは小さくてよい。その結果、ターゲット状態が、別の人などの障害物までの最短距離に対応するか、別の人などの障害物に対象区域が接触しないことに対応する場合には、ターゲット状態からの逸脱が通知される前に、人は他の人により近くづくことができる。
【0118】
さらに、感染の確率に影響を及ぼし得る要因は、付加的な安全区域に、ひいては対象区域AOI、および人と他の人との間の許容可能な距離に、影響を与えることになる。そのような要因の例は、人と他の人との交流履歴、環境内の他の人の交流履歴、フェイスマスクなどの保護用具の利用可能性、および環境内の空気流である。
【0119】
対象区域の境界と障害物との間の距離が短くなる、特に最短距離を下回るなど、ターゲット状態からの逸脱が増大すると、その結果、逸脱を通知するためのコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度が増大されてよい。
【0120】
図4(B)によれば、選択されたセットは2つのエンティティを含んでおり、これらのエンティティは、支援を受ける人1と、この人によって扱われている箱など、人1に関連する物理的物体2とである。人1の推定された位置および形状、ならびに物理的物体2の推定された位置および形状に基づき特定された対象区域A0は、人1を示す円1の周りに細い破線の円A0によって示されている。
【0121】
図4(B)の実施形態によれば、人1の推定された位置および形状、物理的物体2の推定された位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき、対象区域AOIが特定される。付加的な情報は、対象区域AOIを特定するために除外すべき、人1および物理的物体2の1つまたは複数の部分を定義する。たとえば、対象区域は、人1の腕および手と、物理的物体2を扱うための人1の手および腕に接触している物理的物体の一部分とを網羅していてよい。その結果、人1の推定された位置および形状、物理的物体2の推定された位置および形状、ならびに付加的な情報に基づき特定された対象区域AOIは、付加的な情報なしに特定された対象区域A0よりも小さい。
【0122】
図4(B)に示してあるように、対象区域AOIは、人1の一部分と物理的物体2の一部分とを、すなわちセットの各エンティティの一部分を網羅している。人1および物理的物体2のうちの、対象区域AOIを定義するために除外すべき部分を定義する付加的な情報があることから、対象区域AOIは、人1の形状、および人1に関連する物理的物体2から成る形状によって形成される区域よりも小さい。
【0123】
図4(C)は、基本的に
図3(A)に対応している。したがって、
図4(C)を説明するために、
図3(A)の説明が参照され、以下では主に、
図4(C)の実施形態と
図3(A)の実施形態との間の違いについて検討する。
【0124】
図4(C)の実施形態は、人1に関連する物体2が、物理的物体2aと仮想物体2bとの組合せである点で、
図3(A)の実施形態と異なっている。たとえば、物体2の形状は、物理的な車両(実際の車両)の形状に対応していてよく、ここで物体2aの形状は物理的な車両の形状よりも小さく、仮想物体が、物理的物体2aの範囲を物理的な車両の範囲まで拡大させている。したがって、人1は、仮想物体2bに組み合わされた物理的物体2aを使用することにより、環境内で物理的な車両の運転をシミュレーションすることができる。つまり、対象区域AOIは、人1、物理的物体2a、および仮想物体2bのそれぞれの推定された位置および形状に基づき特定される。したがって、上述した対象区域と物理的な車両の対象区域との間に差異は存在しない。代替的に、物体2は、単なる仮想物体に対応してもよく、ここで仮想物体の形状は、物理的な車両などの物理的物体の形状に対応している。
【0125】
いずれの場合にも、人は、大型車両を操作したり、ともすればそれを破損したりすることなく、仮想物体か、物理的物体と仮想物体との組合せかに対応している物体2を使用して、この大型車両のための経路を計画することができ、ここで物体2は、この大型車両の形状、したがって形および大きさに似ている。
【0126】
図4(C)に示してあるように、対象区域AOIは、人1および物理的物体2、特に物理的物体2aと仮想物体2bとの組合せを網羅している。つまり、対象区域AOIは、セットの各エンティティを網羅している。対象区域AOIは、人1および物体2の形状によって形成される区域よりも大きい。物体2により、環境内で人1によって占拠される物理的空間が拡張され、ここで前記拡張された物理的空間は、対象区域AOIによって表されている。
【0127】
図5(A)および
図5(B)は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を概略的に示している。
図5(A)および
図5(B)では、様々なエンティティが、鳥瞰的に円、四角などの幾何学的物体により、概略的に示してある。
図5(A)および
図5(B)の対象区域の形状は、単なる例であり、本開示を限定するものではない。特に、
図5(A)および
図5(B)の対象区域の形は、示してある形(楕円形および円形)に比べて異なっていてよい。
【0128】
図5(A)の実施形態によれば、選択されたセットは、環境内に2つのエンティティ1および2を含んでいる。環境は、第1のエンティティ1の周りの第1の環境E1、および第2のエンティティ2の周りの環境E2を含んでいる。2つのエンティティのうちの第1のエンティティは、支援を受ける人1に対応しており、この人1が、鳥瞰的に円として概略的に示されている。第2のエンティティは、人1に関連する物理的物体2に対応しており、この物体2が、鳥瞰的に円として概略的に示されている。物理的物体2は、人が在している第1の環境とは異なる第2の環境E2に存在している。たとえば、物理的物体2は、人1によって遠隔操作されているロボットであってよい。したがって、コントロールセンタなどの第1の環境E1に存在する人1は、建築現場などの第2の環境E2に存在するロボット2を遠くから制御して、第2の環境E2におけるタスクを実施するためにロボット2を使用してよい。たとえば、ロボットは、人が実施するには危険すぎるタスクを実施してよい。
【0129】
この場合、人1が第1の環境E1だけではなく、第2の環境E2も認識しておくことが重要である。したがって、
図5(A)に示してあるように、対象区域AOIは、人1および物理的物体2を網羅するように、人1および物理的物体2のそれぞれの位置および形状に基づき特定される。つまり、対象区域AOIは、セットの各エンティティを網羅している。対象区域AOIは、人1および物理的物体2の形状によって形成される区域よりも大きい。対象区域AOIの大きさは、セットの各エンティティを対象区域AOIが網羅する限り、様々であってよい。
図5(A)は、互いに素の、ひいては連続した区域を形成しないサブ区域A1、A2を、対象区域AOIが含んでいる場合の例を示している。すなわち、対象区域AOIの第1のサブ区域A1は、第1の環境E1の人1を網羅し、対象区域AOIの第2のサブ区域A2は、第2の環境E2の物理的物体2を網羅している。物理的物体2により、環境E1と環境E2とを含む環境内で人1によって占拠される物理的空間が拡張される。前記拡張された物理的空間は、対象区域AOIによって表されている。
【0130】
その結果、
図5(A)の実施形態による方法は、人1の現在の状態および物理的物体2の現在の状態に関して、人1にフィードバックを提供することができる。たとえば、現在の状態は、第1の環境E1内または第2の環境E2内の対象区域AOIの境界と障害物との間の距離に対応してよい。
図5(A)に示してあるように、対象区域AOIは、第1の環境E1の境界と第2の環境E2の境界とを含んでいる。ターゲット状態は、障害物までの最短距離に対応してよい。したがって、第1の環境E1内の人1の周りの対象区域AOIの境界と、第1の環境E1内の障害物との間の距離が、最短距離よりも短くなる場合には、結果的にこれが、対象区域AOIの現在の状態とターゲット状態との間の逸脱になる。次いで、ターゲット状態からのこの逸脱が、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人1に通知される。第2の環境E2内の物理的物体2の周りの対象区域AOIの境界と、第2の環境E2内の障害物との間の距離が、最短距離よりも短くなる場合には、結果的にこれも、対象区域AOIの現在の状態とターゲット状態との間の逸脱になる。次いで、ターゲット状態からの逸脱が、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人1に通知される。
【0131】
こうして、第1の環境E1において、人1が第1の環境E1の障害物に近づきすぎた場合、または人1によって遠隔操作されている物理的物体2が、第2の環境の障害物に近づきすぎた場合に、この方法によりコヒーレント刺激を使用して、人1への警告が行われる。
【0132】
対象区域の境界と障害物との間の距離が短くなる、特に許容可能な最短距離を下回るなど、ターゲット状態からの逸脱が増大すると、その結果、逸脱を通知するためのコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度が増大されてよい。
【0133】
図5(B)の実施形態は、選択されたセットが付加的なエンティティ3を含んでいる点で、
図5(A)の実施形態とは異なっている。
図5(A)についての上の説明は、
図5(B)にも相応に有効である。選択されたセットの3つのエンティティのうちの第1のエンティティは、支援を受ける人1に対応しており、第2のエンティティは、ロボットなど、人1によって遠隔操作される物理的物体2に対応している。第3のエンティティは、人1に関連する別の物理的物体3に対応しており、ここで別の物理的物体3は、第2の環境E2に存在している。物理的物体3を扱うよう人1がロボット2を遠隔操作することから、別の物体3は、人1によって制御される。
【0134】
図5(B)に示してあるように、対象区域AOIは、人1と、物理的物体2と、別の物理的物体3とを、すなわちセットの各エンティティを網羅している。対象区域AOIは、人1、物理的物体2、および別の物体3の形状によって形成される区域よりも大きい。
図5(B)の対象区域AOIは、付加的な第3のエンティティが存在する結果、
図5(A)の対象区域よりも大きい。物理的物体2および別の物理的物体3により、環境E1と環境E2とを含む環境内で人1によって占拠される物理的空間が拡張される。この拡張された物理的空間は、対象区域AOIによって表されている。
【0135】
図6は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域の変更を概略的に示している。
【0136】
図6は、選択されたセットの1つまたは複数のエンティティの動的な再構成を、本開示の方法によって実施できることを示している。
図6に示してあるように、選択されたセットは2つのエンティティを含んでおり、これらは人1、および人1に関連する物体2、たとえば運ばれている箱などに対応している。人が箱を運ぶ運び方が、たとえば箱を縦向きに運ぶこと(
図6の左側に示す)から、箱を斜め向きに運ぶこと(
図6の右側に示す)に変更されることがある。その結果、そのような変更が行われた場合には、人1に対する物理的物体2の配向がすでに変更されている物理的物体2の推定された位置および形状に基づき、対象区域が再度特定されてよい。
【0137】
図7は、本開示の実施形態による方法によって特定された対象区域を概略的に示している。
【0138】
図7の実施形態が、
図3(A)の実施形態と異なっている点は、
図7の実施形態によれば、位置追跡システムの追跡区域などの区域4が定義されており、人1または物理的物体2が区域4から出る場合に、この方法を使用して人への通知が行われる点である。区域4は、境界5を含んでいる。
【0139】
つまり、この場合、対象区域AOIのターゲット状態は、対象区域AOIが区域4内に、または区域4の範囲内にあることに対応している。したがって、対象区域AOIが区域4内にある限り、対象区域AOIの現在の状態とターゲット状態との間に逸脱はない。しかし、対象区域AOIの一部分が区域4から出るとすぐに、これは結果的に、対象区域AOIの現在の状態とターゲット状態との間の逸脱になる。したがって、この逸脱は、人の身体を刺激するためのコヒーレント刺激を使用して、人1に通知される。
【0140】
コヒーレント刺激の大きさ(振幅)、頻度、および/またはパターンなどの特徴は、ターゲット状態からの逸脱に依存していてよい。つまり、ターゲット状態からの逸脱が大きいほど、コヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度は大きくなってよい。
【0141】
ターゲット状態からの逸脱を通知するためにコヒーレント刺激が加えられる人の身体部位は、対象区域の現在の状態とターゲット状態との間の逸脱の、環境内での発生位置、および人に対する発生方向に応じて異なってよい。つまり、ターゲット状態からの逸脱が人の前方で生じた場合には、人の身体の前方側に刺激が関連するように、人の身体にコヒーレント刺激が加えられてよい。たとえば、コヒーレント刺激、たとえば触覚的および/または視覚的な刺激が、人の身体の前方側に加えられてよい。ターゲット状態からの逸脱が人の後方で生じた場合には、人の身体の後方側に刺激が関連するように、人の身体にコヒーレント刺激が加えられてよい。たとえば、触覚的な刺激が、人の身体の後方に加えられてよい。人の背後の視覚表示の近くで逸脱が示されるように、人の身体に視覚的な刺激が加えられてよい。ターゲット状態からの逸脱が人の片側で生じる場合には、人の身体の片側にコヒーレント刺激が加えられてよいなどということになる。
【0142】
【0143】
図8は、人が環境を評価するのを、本開示の実施形態による方法が支援する状況を概略的に示している。
【0144】
図8の実施形態は、
図7の実施形態に対応しており、対象区域の現在の状態の、ターゲット状態からの逸脱が生じる状況を示している。
図7に関する上記の説明は、
図8にも有効である。
【0145】
図8では、人1と、人1に関連する物理的物体2とを網羅している対象区域AOIは示されていない。
図8に示してあるように、物理的物体は、人によって運ばれている箱であり、ここで人1は後ろ向きに移動する。区域4は、位置追跡システムの追跡区域を定義しており、ここで対象区域は、区域4内に留まらなくてはならない。つまり、対象区域が、区域4の境界5を越えるとすぐに、対象区域の現在の状態とターゲット状態との間の逸脱が生じる。
【0146】
そのような逸脱が
図8に示してある。この逸脱は、人が区域4の角を右側の「X」方向に曲がることにより生じ、この「X」は移動の目的地を示している。つまり、境界区分5aで、箱2は区域4の境界5を越える。境界区分5bでは、箱ではなく対象区域が、区域4の境界5を越える。いずれの場合も、対象区域は区域4の境界5を越え、したがってターゲット状態からの逸脱が生じる。ターゲット状態は、対象区域が区域4内に、すなわち区域4の境界5内にあることと仮定される。
【0147】
箱2が区分5aにおいて境界5を越える場合の、ターゲット状態からの逸脱は、箱2または人1ではなく対象区域が区分5bにおいて境界5を越える場合の、ターゲット状態からの逸脱に比べて大きい。したがって、箱2が境界5を越える場合の、ターゲット状態からの逸脱を通知するためのコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度は、
図8に示してあるように、第2の逸脱事例を通知するためのコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度に比べて大きい。
【0148】
さらに、
図8に示してあるように、ターゲット状態からの逸脱を通知するためにコヒーレント刺激が加えられる人の身体部位は、対象区域の現在の状態とターゲット状態との間の逸脱の、環境内での発生位置、および人に対する発生方向に依存してよい。ターゲット状態からの逸脱が、境界区分5aにおいて人の前方および左側部において生じているので、それぞれのコヒーレント刺激6a(たとえば、触覚的な刺激)は、
図8に示してあるように人1の前方左側部に加えられる。ターゲット状態からの逸脱が、境界区分5bにおいて人の後方および左側部において生じているので、それぞれのコヒーレント刺激6b(たとえば、触覚的な刺激)は、
図8に示してあるように人1の左後方側に加えられる。すでに上で概説したように、人1の前方左側部に加えられるコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度は、左後方側に加えられるコヒーレント刺激の大きさおよび/または頻度よりも大きい。つまり、人1の前方の境界区分5aにおけるターゲット状態からの逸脱は、人1の背後の境界区分5bにおけるターゲット状態からの逸脱よりも大きい。
【0149】
ターゲット状態からの逸脱を通知するために人の視覚の感覚系に視覚的な刺激を加える場合には、区域4の境界5が、人に対して表示されてよい。
図8に示してあるように、ターゲット状態からの逸脱が生じる区分において、境界5が強調されてよい。
【外国語明細書】