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特開2022-74086ポリマーナノ粒子でコーティングされた熱可塑性微粒子、並びにその製造及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074086
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ポリマーナノ粒子でコーティングされた熱可塑性微粒子、並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176097
(22)【出願日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】17/086,553
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ナンシン・フー
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・ディー.・ノセラ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・フィリップ・ネルソン・ヴェレジン
(72)【発明者】
【氏名】ユリン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】レイサ・ロドリゲス・ディザ
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA32
4F070AA53
4F070AA54
4F070AB04
4F070AB09
4F070AB11
4F070AC04
4F070AC23
4F070AC92
4F070AE28
4F070BA02
4F070BA03
4F070BA07
4F070DB03
4F070DC02
4F070DC05
4F070DC07
4F070DC13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積層造形に好適な微粒子組成物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、前記熱可塑性微粒子の外面上に配置された複数のポリマーナノ粒子とを含み、前記ポリマーナノ粒子が、架橋フッ素化ポリマーを含む。前記架橋フッ素化ポリマーが、フッ素化(メタ)アクリルモノマー及びジビニル架橋剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子組成物であって、
熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、前記熱可塑性微粒子の外面上に配置された複数のポリマーナノ粒子とを含み、前記ポリマーナノ粒子が、架橋フッ素化ポリマーを含む、微粒子組成物。
【請求項2】
前記架橋フッ素化ポリマーが、フッ素化(メタ)アクリルモノマー及びジビニル架橋剤を含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項3】
前記フッ素化(メタ)アクリルモノマーが、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレートを含み、前記ジビニル架橋剤が、ジビニルベンゼンを含む、請求項2に記載の微粒子組成物。
【請求項4】
前記架橋フッ素化ポリマーが、前記フッ素化(メタ)アクリルモノマーとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを更に含む、請求項2に記載の微粒子組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性微粒子の前記外面上に配置された無機ナノ粒子を更に含み、前記無機ナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項6】
前記酸化物ナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、請求項5に記載の微粒子組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性微粒子が、前記熱可塑性ポリマーに対して測定されたとき、約0.01重量%~約10重量%のポリマーナノ粒子を含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性微粒子が、実質的に球状であり、約1μm~約1,000μmの範囲のD50を有する、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項9】
前記ポリマーナノ粒子が、約5nm~約500nmのサイズの範囲である、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項10】
方法であって、
請求項1に記載の微粒子組成物を提供することと、
粉末床に前記微粒子組成物を1層ずつ堆積させることと、
前記粉末床の一部分を加熱して、前記熱可塑性微粒子の一部分を、特定の形状を有する固結された部品に固結することと、を含む、方法。
【請求項11】
加熱が、選択的レーザ焼結によって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーナノ粒子が、前記固結された部品と会合したままになる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法によって調製された固結された部品であって、
熱可塑性微粒子の固結によって形成された熱可塑性マトリックスと、
前記熱可塑性マトリックスと混合されたポリマーナノ粒子と、を含む、固結された部品。
【請求項14】
方法であって、
熱可塑性ポリマー及びポリマーナノ粒子を、前記熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上、及び前記ポリマーナノ粒子の融点、軟化温度、又は分解温度未満の加熱温度で分散媒と組み合わせることであって、
前記熱可塑性ポリマー及び前記ポリマーナノ粒子が、前記加熱温度で、前記分散媒中で実質的に不混和性であり、前記ポリマーナノ粒子が、架橋フッ素化ポリマーを含む、組み合わせることと、
前記ポリマーナノ粒子の存在下で、前記加熱温度で前記分散媒中の液化液滴として前記熱可塑性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、
液化液滴が形成された後、前記分散媒を、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで冷却することであって、前記熱可塑性微粒子が、前記熱可塑性ポリマーと、前記熱可塑性微粒子の外面上に配置された前記ポリマーナノ粒子の少なくとも一部分と、を含む、冷却することと、
前記分散媒から前記熱可塑性微粒子を分離することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記架橋フッ素化ポリマーが、フッ素化(メタ)アクリルモノマー及びジビニル架橋剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フッ素化(メタ)アクリルモノマーが、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレートを含み、前記ジビニル架橋剤が、ジビニルベンゼンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記架橋フッ素化ポリマーが、前記フッ素化(メタ)アクリルモノマーとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
無機ナノ粒子を、前記分散媒と組み合わせることを更に含み、前記無機ナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含み、
前記無機ナノ粒子の少なくとも一部分が、前記熱可塑性微粒子の前記外面上に配置される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化物ナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性微粒子が、前記熱可塑性ポリマーに対して測定されたとき、約0.01重量%~約10重量%のポリマーナノ粒子を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
該当なし。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、積層造形に関し、より具体的には、ナノ粒子でコーティングされた粉末微粒子の固結を特徴とする積層造形プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
三次元(three-dimensional、3-D)印刷としても知られる積層造形は、急速に成長している技術分野である。積層造形は、伝統的にラピッドプロトタイピング作業に使用されてきたが、この技術は、任意の数の複雑な形状の商業部品及び工業部品(印刷物)を製造するためにますます採用されている。積層造形プロセスは、1)溶融印刷材料若しくは印刷材料への液体前駆体の流れ、又は2)印刷材料の粉末微粒子のいずれかの1層ずつの堆積によって行われる。1層ずつの堆積は、通常、製造する部品の、デジタル三次元コンピュータ支援設計モデル(「青写真」)に基づいて、正確な位置に印刷材料を堆積し固結するために、コンピュータの制御下で行われる。粉末微粒子の粉末床融合(Powder bed fusion、PBF)は、特に有益な積層造形方法である。特定の実施例では、粉末微粒子の固結は、レーザ又は電子ビームを用いて、粉末床の正確な位置を加熱し、それによって、特定の粉末微粒子を固結して、所定の形状を有する部品を形成する三次元印刷システムを使用して、1層ずつ堆積された粉末床で行われてもよい。選択的レーザ焼結(selective laser sintering、SLS)は、粉末床融合中の粉末微粒子の局所固結を促進して、所望の形状の部品を形成するのに好適なプロセスの特定の例を表す。同様に用いられ得る粒子固結のための他の局所加熱技術としては、例えば、電子ビーム溶融(electron beam melting、EBM)、結合剤噴射、マルチジェット融合(multi-jet fusion、MJF)、及び選択的熱溶融(selective heat melting、SHM)が挙げられる。
【0004】
粉末微粒子の中でも、三次元印刷に使用するのに好適なのは、熱可塑性ポリマーを含むものである。広範囲の熱可塑性ポリマーが知られているが、微粒子固結を採用する現在の三次元印刷技術での使用に適合する特性を有するものは比較的少ない。部品への微粒子固結を受けるのに好適な熱可塑性ポリマーとしては、融解開始と結晶化の開始との間に有意な差を有するものが挙げられ得、これは、微粒子固結を促進するために、対象とする加熱後の良好な構造的及び機械的一体性を促進し得る。粉末床で堆積を受けるのに好適な微粒子をすぐに形成できるかどうかも重要なポイントである。
【0005】
満足のいく印刷性能を実現するために、熱可塑性微粒子は、固体状態において良好な流動特性を維持する必要がある。流動特性は、例えば、特定のサイズの標準的なふるいを通過することができるサンプルからの熱可塑性微粒子の一部を測定することによって、及び/又は安息角を測定することによって、評価することができる。ふるい分け可能な熱可塑性微粒子の割合が高いことは、熱可塑性微粒子が凝集しておらず、実質的に個々の微粒子として存在しているということを示し得え、これは粉末流動しやすいことの特徴であり得る。対照的に、安息角の値の低さは、粉体流可能の特徴であり得る。サンプル中の粒子形状の比較的狭い粒径分布及び規則性もまた、良好な粉末流動性能を促進し得る。粉末流動を促進するためには、微粒子の微粉末が実質的に不在であることが望ましい場合もある。
【0006】
熱可塑性微粒子は、しばしば極低温粉砕又は沈殿プロセスによって商業的に得られ、これにより、不規則な粒子形状及び広い粒径分布となり得る。不規則な粒子形状及び広い粒径分布はまた、三次元印刷プロセス中に不十分な粉末流動性能、並びに広範な空隙形成をもたらし得る。粉末流動性能の不十分さは、充填剤及び流動助剤との乾式ブレンドによってある程度対処され得るが、これらの積層は、エラストマーなどのより軟質のポリマー材料を用いた場合には、粒子が凝集することにより、その効果が限定的なものとなり得る。加えて、充填剤及び流動助剤は、場合によっては、印刷された物体に組み込むことが望ましくない場合がある。
【0007】
不規則な粒子形状から生じる空隙形成は、対処することがより困難であり得る。微粒子固結中の広範な空隙形成は、同じ熱可塑性ポリマーの鋳造又は機械加工による他の方法で得られるものと比較して、印刷物の最終的な材料強度を著しく低下させる可能性がある。したがって、限られた空隙形成とともに適切な微粒子固結を促進するために、熱可塑性微粒子が液化されると、良好な流動性能が実現されることが望ましい場合がある。
【0008】
熱可塑性微粒子は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,863,646号に記載されているものなどの溶融乳化プロセスによって形成されてもよい。溶融乳化プロセスでは、熱可塑性ポリマーは、分散媒に液化された液滴として分散され、分散媒において、熱可塑性ポリマーは、ポリマーの融点又は軟化温度超で、溶解性を有さないか又は最小限の溶解性を有する。液化液滴を融点又は軟化温度未満に冷却すると、広い粒径分布は有するが、実質的に球状の熱可塑性微粒子が形成され得る。したがって、従来の溶融乳化プロセスで製造された熱可塑性微粒子は、三次元印刷プロセスには理想的に適さないままであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
溶融乳化中に形成される熱可塑性微粒子の粒径分布は、2020年6月30日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/946,622号に記載されているように、分散媒に複数のナノ粒子を組み込むことによって、著しく狭くすることができる。様々な種類のシリカナノ粒子及び他の無機ナノ粒子は、この点に関して特に望ましい場合がある。このようにして形成された熱可塑性微粒子は、微粒子表面上のナノ粒子の少なくとも部分的なコーティングを特徴とすることができ、ナノ粒子は、微粒子表面に強固に接着され、及び/又は微粒子表面に埋め込まれている。接着され/埋め込まれたナノ粒子は、コーティングされていない熱可塑性微粒子と流動助剤とを乾式ブレンドするときに得られるものよりもはるかに良好な粉末流動性能を促進し得る。ナノ粒子コーティングを上に有する熱可塑性微粒子の狭い粒径分布は、多くの場合、対処可能な量の空隙形成を伴う素早い焼結の実現を可能にし得る。広範囲の印刷物がシリカでコーティングされた熱可塑性微粒子で十分に形成され得るが、印刷された物体内にシリカ又は他の無機ナノ粒子を組み込むことが望ましくない場合があるある特定の例が存在する。例えば、過剰なシリカ又は無機ナノ粒子は、場合によっては、印刷された物体の機械的性能を損なう場合がある。ポリマーナノ粒子は、シリカ及び他の無機ナノ粒子の十分な置換であり得るが、容易に形成可能であり、溶融乳化条件と適合性があり、良好な流動性能を促進し、積層造形中の空隙形成を制限する、ポリマーナノ粒子の種類は少ない。
【0010】
本開示は、積層造形に好適な微粒子組成物を提供する。微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子の外面上に配置された複数のポリマーナノ粒子とを含み、ポリマーナノ粒子は、架橋フッ素化ポリマーを含む。
本開示はまた、微粒子組成物を使用して固結された部品を形成するための方法も提供する。方法は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子の外面上に配置された複数のポリマーナノ粒子とを含む微粒子組成物を提供することであって、ポリマーナノ粒子が架橋フッ素化ポリマーを含む、提供することと、微粒子組成物を粉末床に1層ずつ堆積させることと、粉末床の一部分を加熱して、熱可塑性微粒子の一部分を、特定の形状を有する固結された部品に固結することと、を含む。固結された部品は、熱可塑性微粒子の固結によって形成される熱可塑性マトリックスと、熱可塑性マトリックスと混合されたポリマーナノ粒子とを含み得る。
【0011】
本開示はまた、積層造形に好適な微粒子組成物を形成するための方法を提供する。方法は、熱可塑性ポリマー及びポリマーナノ粒子を、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上、及びポリマーナノ粒子の融点、軟化温度、又は分解温度未満の加熱温度で分散媒と組み合わせることであって、熱可塑性ポリマー及びポリマーナノ粒子が、加熱温度で、分散媒中で実質的に不混和性であり、ポリマーナノ粒子が、架橋フッ素化ポリマーを含む、組み合わせることと、ポリマーナノ粒子の存在下で、加熱温度で分散媒中の液化液滴として熱可塑性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、分散媒を、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性微粒子の外面上に配置されたポリマーナノ粒子の少なくとも一部分と、を含む、冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題には、その形態及び機能において、当業者が想到し、しかも本開示の利益を有するような、相当な修正、変更、組み合わせ、及び等価物を考えることができる。
【0013】
図1図1は、本開示による熱可塑性微粒子を製造するための非限定的な例示的方法のフローチャートである。
【0014】
図2図2は、実施例1に従って調製されたポリウレタン微粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【0015】
図3図3は、実施例1に従って調製されたポリウレタン微粒子の粒径分布を示すグラフである。
【0016】
図4図4は、実施例4に従って調製されたポリアミド微粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【0017】
図5図5は、実施例4に従って調製されたポリアミド微粒子の粒径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、概して、積層造形に関し、より具体的には、向上した焼結特性を有する粉末微粒子の固結を特徴とする積層造形プロセスに関する。
【0019】
上で考察されたように、熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性微粒子は、三次元印刷プロセス、特に、粉末床の指定された場所を固結して、所定の形状を有する部品を形成するために選択的レーザ焼結及び同様のプロセスを用いる三次元印刷プロセスでの使用に好適であり得る。現在市販されている熱可塑性微粒子は、不規則な形状及び/又は広範な粒径分布で得られる場合があり、これは、印刷中の不十分な流動性能及び/又は不完全な微粒子固結につながり得る。熱可塑性微粒子形成中にシリカ及び他の無機ナノ粒子を用いる溶融乳化プロセスにより、高い球形度及び狭い粒径分布を有する熱可塑性微粒子を得ることができ、これにより、改善された粉末流動性能及び微粒子固結特性を得ることができる。シリカ及び他の無機ナノ粒子は、通常、印刷された物体に好適に組み込まれ得るが、そのようなナノ粒子の組み込みが好ましくない、又は非効果的な微粒子固結につながり得るある特定の例が存在する。シリカ又は他の無機ナノ粒子を、所望の粒径範囲を形成するのに好適な量で、熱可塑性微粒子中に組み込みながら、依然として有効な微粒子固結を行うことを可能にするのに有効な小さな濃度ウインドウが存在し得る。したがって、場合によっては、シリカ又は他の無機ナノ粒子で安定化された熱可塑性粉末微粒子を固結させるときの、適切な粉末流動性能と良好な液体流動性能との間のバランスを取ることは非常に困難であり得る。
【0020】
ポリマーナノ粒子は、微粒子固結後に印刷された物体のポリマーマトリックスとより容易に適合性であり得るため、ポリマーナノ粒子は、シリカ及び他の無機ナノ粒子の好適な代替物を表し得る。しかしながら、好適に形成され、その後単離され得(例えば、ラテックスエマルションとして、続いてエマルション粒子の単離)、溶融乳化条件と適合性であり(例えば、溶融乳化分散媒に不溶性であり、用いられる溶融乳化温度に溶融又は分解しないポリマー)、微粒子固結中の空隙形成を制限するために、粉末流動を効果的に促進することができる、ポリマーナノ粒子の種類は比較的に少ない。本開示によれば、架橋フッ素化ポリマー、特に架橋フッ素化アクリルポリマーは、以下で更に詳細に論じられるように、驚くべきことにこれらの望ましい属性のすべてを満たすことができる。非フッ素化エチレン性不飽和モノマーの組み込み及び/又はポリマーナノ粒子の物理的特性の調整を促進するために架橋密度を変化させることを含む、広範囲の組成多様性は、架橋フッ素化アクリルポリマーに適応することができる。
【0021】
架橋及びフッ素化の両方は、本明細書の開示による溶融乳化条件との適合性を促進するために望ましいと考えられる。例えば、非フッ素化された架橋アクリルポリマーは、溶融乳化中に一般的に用いられる温度未満の温度で分解され得、それによって、熱可塑性微粒子の安定化を促進する能力が阻まれ得る。非架橋ポリマーは、同様に、溶融乳化中に一般的に用いられる温度で分解及び/又は融解することができる。高い熱安定性を有する様々なフッ素化ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)が知られているが、ナノ粒子形態でこれらの種類のポリマーを製造するための有効な乳化技術は、現在のところ知られているとは考えられない。
【0022】
いくつかの例では、架橋フッ素化ポリマーナノ粒子及びシリカナノ粒子又は他の無機ナノ粒子との組み合わせが、本明細書の開示において用いられてもよい。例えば、架橋フッ素化ポリマーナノ粒子は、シリカ又は無機ナノ粒子の量を、溶融乳化中に有効なままであるが、微粒子固結中に問題とならないレベルまで減少させる有効量で使用されてもよい。このようなアプローチは、本明細書で論じられるように、架橋フッ素化ポリマーナノ粒子によるシリカ又は無機ナノ粒子の完全な置換よりも費用効率が高い場合がある。しかしながら、シリカ又は他の無機ナノ粒子をポリマーナノ粒子と完全に置換することは、場合によってはより望ましい場合があることを理解されたい。
【0023】
本明細書の説明及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下の段落によって修正される場合を除き、明白かつ通常の意味を有する。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「熱可塑性ポリマー」は、特定の温度(例えば、融点、軟化点、ガラス転移温度など)を超える加熱及び冷却時に可逆的に軟化及び硬化するポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーは、エラストマー及び非エラストマー熱可塑性ポリマーの両方を包含する。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、1つ以上の有機モノマーから形成されるオリゴマー材料を指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有する粒子状物質を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「酸化物」は、金属酸化物及び非金属酸化物の両方を指す。本開示の目的のために、ケイ素は、金属であるとみなされる。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「酸化物ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有し、かつ金属酸化物又は非金属酸化物を含む、粒子状物質を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「無機ナノ粒子」は、ポリマーナノ粒子ではない任意のナノ粒子を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「会合した」は、化学結合、マトリックスとの物理的混和、又は表面への物理的接着を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「混合された」、「混和」などの関連する用語は、第2の物質中への第1の物質の溶解、又は第2の物質中への固体としての第1の物質の分散を指し、分散は均一であっても不均一であってもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「D10」は、サンプルの10%(別段の指定がない限り体積基準で)が、当該直径値未満の直径を有する粒子からなる直径を指す。本明細書で使用するとき、用語「D50」は、サンプルの50%(別段の指定がない限り体積基準で)が、当該直径値未満の直径を有する粒子からなる直径を指す。D50はまた、「平均粒径」と称されてもよい。本明細書で使用するとき、用語「D90」は、サンプルの90%(別段の指定がない限り体積基準で)が、当該直径値未満の直径を有する粒子からなる直径を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「直径スパン」、「スパン」、及び「スパンサイズ」は、粒径分布の幅の指標を提供し、(D90-D10)/D50として計算される(この場合もやはり、別段の指定がない限り、各D値は体積に基づく)。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「剪断力」は、流体中で機械的撹拌を誘導する撹拌又は類似のプロセスを指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、ナノ粒子及び熱可塑性微粒子の表面に対して用語「埋め込む」は、ナノ粒子がポリマー粒子の表面上に単に置かれ、それにより、表面と接線方向に接触する場合よりしっかりとポリマーがナノ粒子と接触するように、ナノ粒子が表面内部に少なくとも部分的に延在していることを指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「円形度」及び「球形度」は、微粒子又は複数の微粒子が完全な球体に近いかを指す。真円度を判定するには、微粒子の光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内の粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)が(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能なSYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器を使用して)計算される。微粒子の円形度はCEA/Pであり、式中、CEAは、実際の微粒子の面積(A)に相当する面積を有する円の円周である。
【0037】
本明細書で使用するとき、分散媒の粘度は、特に指定がない限り、25℃での運動粘度を指し、特に指定のない限り、ASTM D445-19に従って測定される。
【0038】
本明細書における熱可塑性ポリマーの融点は、特に指定がない限り、10℃/分の昇温速度及び冷却速度で、ASTM E794-06(2018)によって決定される。
【0039】
本明細書の熱可塑性ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特に指定がない限り、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50gのサンプルを使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定され得る。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「フッ素化」は、そこに共有結合した少なくとも1つのフッ素原子を含有するポリマー又はそのモノマー単位を指す。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「ペルフルオロ化」は、フッ素原子で置換された特定の種類のすべての利用可能な水素原子を有するポリマー又はそのモノマー単位を指す。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「架橋された」は、2つの異なるモノマー単位の間に共有結合した基を有するポリマー材料を指す。架橋は、所与のポリマー鎖(分子内)内、2つ以上の異なるポリマー鎖(分子間)の間、又はこれらの任意の組み合わせの内部であってもよい。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリルモノマー」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの誘導体形態を含むモノマーのファミリーを指す。(メタ)アクリルモノマーの好適な誘導体形態としては、エステル又はアミドが挙げられ得る。したがって、本明細書に開示される任意の特定の(メタ)アクリルモノマーについては、アクリル及びメタクリル形態の両方が明示的に開示される。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「ラテックス」、「ラテックスエマルション」、及び「ラテックス分散液」は、乳化ポリマー微粒子を含む水性エマルションと同等のものを指す。
【0045】
したがって、本開示の微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性微粒子の外面上に配置された複数のナノ粒子とを含む複数の熱可塑性微粒子を含み得る。ポリマーナノ粒子は、架橋フッ素化ポリマーを含み、その好適な例は、以下で更に詳細に論じられる。
【0046】
好適な架橋フッ素化ポリマーは、少なくとも1つのフッ素化モノマー及び少なくとも1つの架橋剤、少なくとも1つの非フッ素化モノマー及び少なくとも1つのフッ素化架橋剤、少なくとも1つのフッ素化モノマー及び少なくとも1つのフッ素化架橋剤、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。特に好適な架橋フッ素化ポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、特に(メタ)アクリルモノマー、及び2つ以上のエチレン性不飽和を有する少なくとも1つの架橋剤の重合を介して形成され得る。少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー及び少なくとも1つの架橋剤のうちの少なくとも1つは、フッ素化され得る。好適な架橋フッ素化ポリマーのより具体的な例としては、エマルション重合によって形成可能なものが挙げられ得、これは、フッ素化架橋ポリマーが、エマルションからの溶媒除去後に、ポリマーナノ粒子として容易に単離されることを可能にし得る(例えば、噴霧乾燥によって)。好適なエマルション重合反応条件は、以下により詳細に記載される。
【0047】
ポリマーナノ粒子を形成するのに好適な架橋フッ素化ポリマーのより具体的な例としては、フッ素化(メタ)アクリルモノマー、特にフッ素化(メタ)アクリルエステルモノマー、及びジビニル架橋剤が挙げられ得る。2,2,2-トリフルオロメチル(メタ)アクリレート及びジビニルベンゼンは、フッ素化(メタ)アクリルモノマーとジビニル架橋剤との例示的な対合を表す。架橋フッ素化ポリマーのいくつか又は他の例としては、これらに限定されないが、ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6トリフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ペルフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12-ヘンイコサフルオロデシル(メタ)アクリレート、2-[1’,1’,1’-フルオロ-2’-(トリフルオロメチル)-2’-ヒドロキシ)プロピル]-3-ノルボルニル(メタ)アクリレート、ペルフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-[(1’,1’,1’-トリフルオロ-2’-(トリフルオロメチル)-2’-ヒドロキシ)プロピル]-3-ノルボルニル(メタ)アクリレート、これらの任意の組み合わせなどを含む、フッ素化(メタ)アクリルモノマーが挙げられ得る。前述の(メタ)アクリルモノマーの対応するアミド形態が、場合によっては用いられ得る。
【0048】
前述のフッ素化(メタ)アクリルモノマーのうちのいずれかは、ジビニルベンゼン又は少なくとも2つのビニル基を含有する他の好適な架橋剤などのジビニル架橋剤で架橋され得る。エチレン性不飽和モノマー、特にフッ素化(メタ)アクリルモノマーの架橋を促進するのに好適な架橋剤としては、これらに限定されないが、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス(4-((メタ)アクリルオキシ/ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス(4-((メタ)アクリルオキシ/ポリエトキシ)フェニル)プロパン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、これらの任意の組み合わせなどが挙げられ得る。1,3-ブタジエン及びイソプレンなどのジエンは、場合によっては好適な架橋剤を含み得る。
【0049】
加えて、架橋剤は、好適な架橋フッ素化ポリマーを製造するためにフッ素化され得る。フッ素化架橋剤は、フッ素化ポリマー(例えば、フッ素化(メタ)アクリルモノマーなどのフッ素化モノマーを含むポリマー)又はそれ以外にはフッ素化されていないポリマーを架橋するために利用され得る。好適なフッ素化架橋剤としては、例えば、1,8-ジビニルペルフルオロオクタン、1,6-ジビニルペルフルオロヘキサン、及び1,4-ジビニルペルフルオロブタンなどのフッ素化ジビニル架橋剤が挙げられ得る。
【0050】
ジビニルベンゼンなどの少なくとも2つのビニル基を含有する架橋剤のモル比は、本明細書に開示される架橋フッ素化ポリマー中に所望の架橋密度を提供するように選択され得る。架橋密度は、例えば、ポリマーナノ粒子の融点又は分解温度を変化させるように選択され得る。非限定的な例では、ジビニル架橋剤などの架橋剤は、本明細書の開示によるポリマーナノ粒子を形成するために重合を受ける全モノマーに対して、約1mol%~約50mol%の範囲の量で存在し得る。より具体的な例では、架橋剤の量は、約1mol%~約10mol%、又は約10mol%~約25mol%、又は約25mol%~約40mol%、又は約40mol%~約50mol%の範囲であり得る。
【0051】
市販のジビニルベンゼンは、最大約30重量%のジビニルベンゼン及び最大約50重量%のエチルビニルベンゼンを含有し得る。エチルビニルベンゼンは、架橋を促進するために2つのビニル基を含有しないが、上記のフッ素化(メタ)アクリルモノマーなどのエチレン性不飽和モノマーと共重合されてもよい。したがって、本開示の特定のフッ素化架橋ポリマーは、エチルビニルベンゼンモノマーと共重合したフッ素化(メタ)アクリルモノマーを含んでもよく、フッ素化(メタ)アクリルモノマー及び/又はエチルビニルベンゼンモノマーの少なくとも一部は、ジビニルベンゼンで更に架橋される。
【0052】
したがって、フッ素化(メタ)アクリルモノマー及びジビニルベンゼン架橋剤を含む架橋フッ素化ポリマーなどの、本開示の架橋フッ素化ポリマーは、フッ素化(メタ)アクリルモノマーとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを更に含み得る。エチレン性不飽和コモノマーは、フッ素化又は非フッ素化されてもよい。エチレン性不飽和コモノマーは、いくつかの実施形態では、エチルビニルベンゼンであってもよい。
【0053】
フッ素化(メタ)アクリルモノマー及びジビニル架橋剤と共重合され得るエチレン性不飽和モノマーの他の好適な例は、ポリマーナノ粒子がエマルション重合によってそこから形成され得るという条件で、特に限定されるものとはみなされない。好適なエチレン性不飽和コモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドモノマー、アミン官能化(メタ)アクリレートモノマー、ポリエーテル官能化(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられ得る。好適なコモノマーの具体的な例としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、並びにイソボルニル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ官能化(メタ)アクリレートモノマー、並びにN-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられ得る。
【0054】
本明細書に開示される架橋フッ素化ポリマー中に存在し得る他の好適なエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1つのアミン基を含んでもよく、これは一級アミン、二級アミン、又は三級アミンであってもよい。少なくとも1つのアミン基を含むエチレン性不飽和モノマーの特に好適な例としては、例えば、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(エチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(メチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(tert-ブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2-(メチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3-(メチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2-(エチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3-(エチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、及び3-(tert-ブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。ビニルアミンはまた、場合によっては好適なコモノマーを表し得る。
【0055】
アルファオレフィンは、本明細書に開示されるポリマーナノ粒子中にコモノマーとして存在し得る別の種類のエチレン性不飽和モノマーである。本開示のポリマーナノ粒子中に存在し得る好適なアルファオレフィンとしては、これらに限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。偶数個の炭素原子を有する直鎖アルファオレフィンは、商業的な入手しやすさのために、特に好適であり得る。
【0056】
本開示のポリマーナノ粒子中に存在し得るエチレン性不飽和モノマーの更に他の例としては、例えば、スチレン又はその置換変異体、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルカノエート、又はこれらの誘導体、(メタ)アクリロニトリル及びフマロニトリルなどのニトリル、塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどのエチレン性不飽和ハロゲン化物が挙げられ、それらのいずれも上に列挙されるエチレン性不飽和モノマーのうちの1つ以上と組み合わせて存在してもよい。
【0057】
本開示のポリマーナノ粒子中にコモノマーとして存在し得るエチレン性不飽和モノマーの更に他の例としては、これらに限定されないが、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート(AAEM)、グリシジル(メタ)アクリレート、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0058】
少なくとも1つの酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーはまた、本開示のポリマーナノ粒子中にコモノマーとして存在し得る。このようなエチレン性不飽和モノマーは、側鎖カルボン酸又はスルホン酸を有し得る。例示的な例としては、これらに限定されないが、マレイン酸、マレイン酸水素メチル、マレイン酸水素エチル、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、スチレンスルホン酸、及びビニル基で誘導体化された2-アミノメチルプロパンスルホン酸が挙げられ得る。前述のモノマーのカルボン酸形態は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル等のエステル化形態などのエステル化形態で存在してもよい。他の好適なエステル化モノマーは、エステル化モノマーのアルコール由来部分にエチレン性不飽和基を含んでもよい。このようなエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸アリル、安息香酸ビニル、安息香酸アリルなどが挙げられ得る。
【0059】
前述のフッ素化(メタ)アクリルモノマー、エチレン性不飽和コモノマー、及び架橋剤のうちのいずれかを利用して、架橋フッ素化ポリマーを得るための重合は、非限定的な実施形態では、エマルション重合を介して実施され得る。好適なエマルション重合条件下で重合を行い、架橋フッ素化ポリマーを得ると、ポリマーナノ粒子は、エマルションから溶媒を除去することによって(例えば、噴霧乾燥又は蒸発によって)及び/又はエマルションからポリマーナノ粒子を除去することによって(例えば、濾過又は遠心分離によって)、少なくとも部分的に単離された形態で得ることができる。好適なエマルション重合条件は、当業者によく知られており、以下に簡単に要約される。
【0060】
好適なエマルション重合条件は、エマルション重合が行われる水性流体を特徴とし得る。本開示で使用するのに好適な水性流体は、水、又はアルコール若しくはグリコールなどの水混和性有機溶媒と混合された水を含み得る。水性流体及び得られるポリマーエマルションは、特定の用途のニーズに応じて、酸性、中性、又は塩基性であってもよい。特定のpHは、エマルションを維持又は破壊するように選択されてもよく、例えば、必要な場合、任意選択的に緩衝を伴う。エマルション重合中の好適なpH値は、約1~約7、又は約2~約6、又は約1~約6、又は約6~約7、又は約6~約8、又は約7~約8、又は約7~約14、又は約8~約14、又は約8~約12、又は約7~約9の範囲であり得る。
【0061】
水性流体は、いくつかの実施形態によると、乳化を促進するために少なくとも1つの界面活性剤を含み得る。好適な界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、双性イオン性、非イオン性、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。例示的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルエトキシレート、ポリオキサマー、脂肪酸エステル(例えば、脂肪酸グリセロールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ソルビトールエステル、脂肪酸レシチンエステルなど)、ポリエチレンオキシドソルビタン脂肪酸エステル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、及び他のセルロース誘導体などのポリマーコロイドはまた、好適な非イオン性界面活性剤を含み得る。本明細書の開示における使用に好適であり得る例示的なアニオン性界面活性剤としては、これらに限定されないが、アルキルエトキシレート硫酸塩、アルキルエトキシレートスルホン酸塩、アルキルフェノールエトキシレート硫酸塩、アルキルフェノールエトキシレートスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書の開示における使用に好適であり得る例示的な双性イオン性界面活性剤としては、様々なベタイン及びスルタインが挙げられる。少なくとも1つの界面活性剤は、全固形分に対して測定したとき、約0.2重量%~約10重量%、又は約0.2重量%~約7重量%の範囲の量で本開示のポリマーエマルション中に存在し得る。
【0062】
エチレン性不飽和モノマーのエマルション重合は、少なくとも1つのラジカル開始剤の存在下で行われ得る。少なくとも1つのラジカル開始剤は、重合されているモノマーの約0.1~約8重量パーセントで存在し得る。好適なラジカル開始剤は、エマルション中の熱条件下又は光分解条件下でラジカル重合を促進することができる場合がある。このようなラジカル開始剤としては、これらに限定されないが、過硫酸ナトリウム又は他のアルカリ金属過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、アゾ化合物(例えば、4,4-アゾビス-シアノ吉草酸及び/又はAIBN)、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム)及びアスコルビン酸などの還元剤、t-ブチル-ヒドロペルオキシドなどの酸化開始剤などを含むレドックス系、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。他の好適なラジカル開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、これらの組み合わせなどのアゾアミジン化合物が挙げられ得る。熱ラジカル重合条件は、約20℃~約90℃の範囲の温度で生じ得る。
【0063】
エマルション重合によって形成されると、ポリマーナノ粒子は、濾過、遠心分離、噴霧乾燥、これらの任意の組み合わせなどの任意の好適な技術によって回収され得る。
【0064】
追加のナノ粒子は、熱可塑性微粒子の外面上のポリマーナノ粒子、特に複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせから選択される無機ナノ粒子と組み合わせて存在してもよい。本開示での使用に好適な酸化物ナノ粒子としては、例えば、シリカナノ粒子、チタニアナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、酸化スズナノ粒子、酸化ホウ素ナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子、酸化タリウムナノ粒子、酸化タングステンナノ粒子、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。例えばアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノホウケイ酸塩などのナノ粒子として形成される混合酸化物もまた、用語「酸化物」に包含され、本明細書の開示での使用に好適であり得る。酸化物ナノ粒子は、本質的に親水性であっても疎水性であってもよく、ナノ粒子原産であってもよく、又はナノ粒子の表面処理による結果であり得る。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリル等の疎水性表面処理を有するシリカナノ粒子は、親水性表面ヒドロキシル基を適切な官能化剤と反応させることによって形成され得る。疎水性官能化酸化物ナノ粒子は、本開示の方法及び組成物において特に望ましい場合があるが、非官能化酸化物ナノ粒子又は親水性修飾酸化物ナノ粒子もまた、使用にも好適であり得る。例えば、疎水性官能化酸化物ナノ粒子は、以下で更に論じられるように、溶融乳化プロセスで分散媒として用いられる疎水性流体と特に適合し得る。
【0065】
シリカナノ粒子、特に疎水性官能化を有するヒュームドシリカナノ粒子は、多種多様な官能化シリカが、異なる種類の疎水性官能化及び広範な粒径で利用可能であるため、本明細書の開示においてポリマーナノ粒子と組み合わせて使用するのに特に好適であり得る。シラザン及びシラン疎水性官能化は、本開示での使用に適合性であるシリカナノ粒子中に存在し得る疎水性官能化の中に含まれる。ポリマーナノ粒子及びシリカナノ粒子の組み合わせは、シリカナノ粒子又はポリマーナノ粒子のみを使用するときに実現されない場合がある、熱可塑性微粒子、又はそこから形成される固結された物体に特定の特性を伝達し得る。
【0066】
疎水性官能基の導入により、シリカナノ粒子の水への適合性が、非官能化シリカナノ粒子よりも低下する可能性がある。好適な疎水性官能化は、シリカナノ粒子の表面に非共有又は共有で結合してもよい。共有結合は、例えば、シリカナノ粒子の表面上の表面ヒドロキシル基の官能化によって、行われ得る。非限定的な例では、シリカナノ粒子をヘキサメチルジシラザンで処理して、疎水性官能化の共有結合を得ることができる。ポリマーナノ粒子と組み合わせて使用可能な市販の疎水官能化シリカナノ粒子としては、これらに限定されないが、Aerosil RX50(Evonik、平均粒径=40nm)及びAerosil R812S(Evonik、平均粒径=7nm)が挙げられ得る。
【0067】
カーボンブラックは、本明細書の開示においてポリマーナノ粒子と組み合わせた熱可塑性微粒子上に存在し得る別の種類のナノ粒子である。様々な等級のカーボンブラックが、当業者によく知られており、これらのいずれも本明細書の開示での使用に好適であり得る。様々な種類の酸化物ナノ粒子はまた、いくつかの例では、本明細書の開示においてポリマーナノ粒子と組み合わせて存在し得る。
【0068】
本開示の熱可塑性微粒子上の様々な種類のナノ粒子の充填及び粒径は、広範囲にわたって変化し得る。ポリマーナノ粒子又は類似の種類のナノ粒子のナノ粒子充填は、以下に更に記載されるように、溶融乳化条件下で熱可塑性微粒子の形成を促進するために使用される分散媒中のナノ粒子濃度に依存し得る。非限定的な例では、分散媒中のナノ粒子の濃度は、熱可塑性ポリマーの重量に対して、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約2重量%、又は約0.25重量%~約1.5重量%、又は約0.2重量%~約1.0重量%、又は約0.25重量%~約1重量%、又は約0.25重量%~約0.5重量%の範囲としてもよい。前述の重量百分率は、存在し得るポリマーナノ粒子の重量百分率、又はポリマーナノ粒子と、シリカナノ粒子などの少なくとも1つの他の種類のナノ粒子との合計重量百分率を指す。ポリマーナノ粒子が別の種類のナノ粒子と組み合わせて使用される場合、ポリマーナノ粒子及び少なくとも1つの他の種類のナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子)は、重量基準で約1:99~約99:1の範囲の任意の比率で互いに組み合わせて存在してもよい。
【0069】
ナノ粒子、特にポリマーナノ粒子の粒径は、約1nm~約100nmの範囲であり得るが、約500nmまでの粒径を許容可能としてもよい。上記は、D50値を表し得る。非限定的な例では、ナノ粒子、特にポリマーナノ粒子の粒径は、約5nm~約500nm、又は約5nm~約100nm、又は約5nm~約75nm、又は約5nm~約50nm、又は約5nm~約10nm、又は約10nm~約20nm、又は約20nm~約30nm、又は約30nm~約40nm、又は約40nm~約50nm、又は約50nm~約60nmの範囲であり得る。ポリマーナノ粒子が、シリカナノ粒子などの別の種類のナノ粒子と組み合わせて存在する場合、ポリマーナノ粒子のサイズは、シリカナノ粒子などの他の種類のナノ粒子のサイズと実質的に同じであっても異なっていてもよい。組み合わせて使用される場合、ポリマーナノ粒子は、他の種類のナノ粒子よりも大きくても小さくてもよい。
【0070】
本明細書の開示での使用に好適なシリカナノ粒子及び同様の酸化物ナノ粒子は、約10m/g~約500m/g、又は約10m/g~約150m/g、又は約25m/g~約100m/g、又は約100m/g~約250m/g、又は約250m/g~約500m/gのBET表面積を有し得る。
【0071】
ポリマーナノ粒子と組み合わせて本明細書の開示での使用に好適な酸化物ナノ粒子の特定の例としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDS)、ジメチルジクロロシラン、又は他の長鎖アルキルシラン、例えば、デシルトリエトキシシラン若しくはオクチルトリエトキシシランなどが挙げられ得る。好適な酸化物ナノ粒子は、約7nm~約130nmのサイズで変化し得る。疎水処理シリカ、その粒径、及びそれらの疎水性処理の具体的な市販例としては、以下:Wacker HDK(登録商標)H13TD(16nm、PDMS)、HDK(登録商標)H13TM(16nm、HMDS)、HDK(登録商標)H13TX(16nm、HMDS/PDMS)、HDK(登録商標)H20TD(12nm、PDMS)、HDK(登録商標)H20TM(12nm、HMDS)、HDK(登録商標)H20TX(12nm、HMDS/PDMS)、HDK(登録商標)H30TD(8nm、PDMS)、HDK(登録商標)H30TM(8nm、HMDS)、HDK(登録商標)H30TX(8nm、HMDS/PDMS)、HDK(登録商標)H3004(12nm、HMDS)、HDK(登録商標)HO5TD(40nm、PDMS)、HDK(登録商標)HO5TM(40nm、HMDS)、HDK(登録商標)HO5TX(40nm、HMDS/PDMS)、Evonik R972(16nm、DDS)、RY200S(16nm、PDMS、BET表面積=200m/g)、R202(16nm、PDMS)、R974(12nm、DDS)、RY200(12nm、PDMS)、RX200(12nm、HMDS)、R8200(12nm、HMDS)、R805(12nm、アルキルシラン)、R104(12nm、アルキルシラン)、RX300(7nm、HMDS)、R812(7nm、HMDS)、R812S(7nm、HMDS、BET表面積=300m/g)、R106(7nm、アルキルシラン)、NY50(30nm、PDMS)、NAX50(30nm、HMDS)、RY50(40nm、PDMS)、及びRX50(40nm、HMDS)、Cabot TS530(8nm、HMDS)、及びShin-Etsuゾル-ゲルシリカX24-9163A(110nm、HMDS、BET表面積=25m/g)及びX24-9600 A-80(80nm、HMDS、BET=40m/g)が挙げられ得る。
【0072】
好適な酸化物ナノ粒子は、塩基又は塩基塩を含む処理を含んでもよい。このような処理された酸化物ナノ粒子、それらの粒径、及びそれらの処理の具体的な市販例としては、以下の種類のシリカナノ粒子:Wacker処理済みシリカHDK(登録商標)H13TA(16nm、PDMS-NR/NR )、HDK(登録商標)H30TA(8nm、PDMS-NR/NR )、HDK(登録商標)H2015EP(12nm、PDMS-NR/NR )、HDK(登録商標)H2050EP(10nm、PDMS-NR/NR )、HDK(登録商標)H2150VP(10nm、PDMS-NR/NR )、及びHDK(登録商標)H3050VP(8nm、PDMS-NR/NR )が挙げられる。
【0073】
処理済み及び未処理の変異体の両方を含む他の好適な酸化物ナノ粒子としては、チタン酸塩が挙げられ得る。好適なチタン酸塩としては、例えば、CaTiO、BaTiO、MgTiO、MnTiO、SrTiO及び.AlTiOが挙げられ得る。
【0074】
また、ポリマーナノ粒子と組み合わせた本明細書の開示での使用に好適であるのは、処理済み又は未処理の酸化アルミニウムである。酸化アルミニウム、それらの粒径、及びそれらの処理の具体的な市販例としては、例えば、Evonik C805(13nm、オクチルシラン)、酸化アルミニウムC(13nm、未処理)、Aeroxide Alu C 100(10nm、未処理)、Aeroxide Alu C 130(13nm、未処理)、Cabot SpectrAL 81(21nm、未処理)、及びCabot SpectrAl 100(18nm、未処理)などが挙げられる。
【0075】
ポリマーナノ粒子と組み合わせて使用するのに好適な更に他の好適な酸化物ナノ粒子としては、処理済み又は未処理の二酸化チタンが挙げられ得る。好適な市販の酸価チタンとしては、15nmの体積平均粒径を有するTayca Corp.製のJMT-150IB、15×15×40nmの粒子寸法を有するTayca Corp.製のJMT2000、約21nmの体積平均粒径を有するEvonik製のT805、約40nmの粒径を有するTayca Corporation製のSMT5103、及び約40nmの平均粒径のInabata America Corporation製のSTT-100Hが挙げられ得る。
【0076】
濁度測定に基づいて、ポリマーナノ粒子又はシリカナノ粒子などの利用可能なナノ粒子の約80~90%は、本明細書の開示による溶融乳化によって形成される熱可塑性微粒子に会合し得る。ナノ粒子の充填は熱可塑性ポリマーに対して測定されるため、熱可塑性微粒子に会合したナノ粒子の量は、熱可塑性微粒子を形成する際に使用されるナノ粒子充填の約80~90%であり得る。ナノ粒子の量が多い又はより少ない量のナノ粒子は、分散媒中でより高い又は低いナノ粒子充填量が用いられるとき、熱可塑性微粒子に会合してもよい。
【0077】
本開示の熱可塑性微粒子は、熱可塑性微粒子の外面に少なくとも部分的に埋め込まれた、ナノ粒子、特にポリマーナノ粒子を有し得る。埋め込みが発生すると、ナノ粒子構造の一部分は、外面のクレーター又は凹部内に位置してもよく、それによって、ナノ粒子を表面から除去することがより困難になる。実質的な埋め込みが生じない場合であっても、疎水性官能化シリカナノ粒子又はポリマーナノ粒子などの適切に官能化されたナノ粒子は、外面上のナノ粒子の保持を促進するために非共有結合的に(例えば、ファンデルワールスタイプの相互作用で)会合し得ることを理解されたい。
【0078】
本明細書の開示での使用に好適な熱可塑性ポリマーの例としては、これらに限定されないが、ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン-12など)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、又はポリブチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸、及び他のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene、ABS)、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン(polyaryl ether ketone、PAEK)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロック(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)を含むコポリマー、移植又は未移植熱可塑性ポリオレフィン、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/アルキル(メタ)アクリレート、官能化又は非官能化(メタ)アクリル酸ポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマー/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/カルボニルターポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、フェノール樹脂、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブロックコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。前述のうちの1つ以上を含むコポリマーもまた、本開示において使用され得る。前述のポリマーのいずれも、熱可塑性エラストマーであってもよく、結晶性「硬質」セグメント及び非晶質「軟質」セグメントを含んでもよい。
【0079】
本明細書の開示において使用するための熱可塑性ポリマーの特に好適な例としては、ナイロン-6又はナイロン-12などのポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(アリーレンスルホン)、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート又はグリコール変性変異体などのポリエステル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0080】
好適なポリアミドのより具体的な例としては、これらに限定されないが、ポリカプロアミド(ナイロン6、ポリアミド6、又はPA6)、ポリ(ヘキサメチレンスクシンアミド)(ナイロン46、ポリアミド46、又はPA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66、ポリアミド66、又はPA66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56、ポリアミド56、又はPA56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610、ポリアミド610、又はPA610)、ポリウンデカアミド(ナイロン11、ポリアミド11、又はPA11)、ポリドデカアミド(ナイロン12、ポリアミド12、又はPA12)、及びポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、ポリアミド6T、又はPA6T)、ナイロン10.10(ポリアミド10.10又はPA10.10)、ナイロン10.12(ポリアミド10.12又はPA10.12)、ナイロン10.14(ポリアミド10.14又はPA10.14)、ナイロン10.18(ポリアミド10.18又はPA10.18)、ナイロン6.10(ポリアミド6.10又はPA6.10)、ナイロン6.18(ポリアミド6.18又はPA6.18)、ナイロン6.12(ポリアミド6.12又はPA6.12)、ナイロン6.14(ポリアミド6.14又はPA6.14)、半芳香族ポリアミド等、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。コポリアミドも使用され得る。好適なコポリアミドの例としては、PA11/10.10、PA6/11、PA6.6/6、PA11/12、PA10.10/10.12、PA10.10/10.14、PA11/10.36、PA11/6.36、PA10.10/10.36等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリカーボネートエステルアミド、及びポリエーテルブロックアミド、エラストマーであってもよいものは、いずれも、本明細書の開示において使用されてもよい。
【0081】
好適なポリウレタンの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、混合ポリエーテル及びポリエステルポリウレタン等、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリウレタンとしては、イソシアネート、ポリオール、及び鎖延長剤の縮合によって調製されるエラストマー性ポリウレタンが挙げられ得、ポリオールは、ポリマー鎖に可撓性を付与し、典型的にはソフトセグメントを構成する。本開示で使用するのに好適なポリウレタンの例としては、ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ELASTOLLAN(登録商標)1190A(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)など、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
好適なポリエステルは、二酸及びジオールから形成される縮合反応生成物、又は乳酸などのヒドロキシ酸の自己縮合反応生成物である。グリコール変性ポリエチレンテレフタレート又はグリコール変性ポリブチレンテレフタレートなどのグリコール変性ポリエステルは、本明細書の開示においての使用に特に好適であり得る。グリコール変性は、ポリマー鎖の光透過性及び可撓性などの望ましい利益をもたらすことができる。
【0083】
好適な熱可塑性ポリマーは、エラストマー系又は非エラストマー系であり得る。前述の熱可塑性ポリマーの例のいくつかは、ポリマーの特定の組成に応じてエラストマー系又は非エラストマー系であり得る。例えば、エチレンとプロピレンとのコポリマーであるポリエチレンは、エラストマー系であってもよく、又はポリマー中に存在するプロピレンの量に依存しなくてもよい。
【0084】
本明細書の開示での使用に好適なエラストマー熱可塑性ポリマーは、概して、スチレンブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性加硫物(エラストマー合金とも呼ばれる)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、及び熱可塑性ポリアミド(典型的にはポリアミドを含むブロックコポリマー)の6つのクラスのうちの1つの範囲内に含まれる。エラストマー熱可塑性ポリマーの具体例は、「熱可塑性エラストマーのハンドブック」(Handbook of Thermoplastic Elastomers)第2版B.M.Walker and C.で見出すことができる。P.Rader,eds.,Van Nostrand Reinhold,New York,1988に見出すことができる。好適なエラストマー熱可塑性ポリマーの例としては、エラストマー性ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロック(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)を含むコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブロックコポリマー、及びポリアクリロニトリル)、シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。弾性スチレン系ブロックコポリマーとしては、イソプレン、イソブチレン、ブチレン、エチレン/ブチレン、エチレン-プロピレン、及びエチレン-エチレン/プロピレンの群から選択される少なくとも1つのブロックが挙げられ得る。より具体的な弾性スチレン系ブロックコポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン-プロピレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0085】
図1は、本開示による熱可塑性微粒子を製造するための非限定的な例示的方法100のフローチャートである。示されるように、熱可塑性ポリマー105、分散媒104、及びポリマーナノ粒子106は、混合物110を製造するために混合108される。任意に、シリカナノ粒子などの他のナノ粒子は、ポリマーナノ粒子106と組み合わせて存在し得る。熱可塑性ポリマー105、分散媒104、及びナノ粒子106は、混合及び/又は加熱を実施しつつ、任意の順序で混合108され得る。具体な実施例では、分散媒104は、他の構成成分と混合される前に、熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度を超えて加熱され得る。代替的に、すべての成分は、分散媒104内で一緒に混合されてから、融点又は軟化温度を超えて加熱されてもよい。ポリマーナノ粒子106は、溶融エマルション後に得られる熱可塑性微粒子の外面上に配置され得るように、加熱温度で固体として残存し得る。
【0086】
熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度を超える加熱は、溶融エマルション中の構成成分のいずれかの分解温度又は沸点未満の任意の温度であってもよい。非限定的な実施例では、熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度を約1℃~約50℃、又は約1℃~約25℃、又は約5℃~約30℃、又は約20℃~約50℃上回る温度での加熱が行われ得る。本明細書の開示において、融点は、10℃/分の昇温速度及び冷却速度でASTM E794-06(2018)によって決定され得る。熱可塑性ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特に指定がない限り、ASTM D6090-17によって決定され得る。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50gのサンプルを使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定され得る。本開示における熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度は、約50℃~約400℃の範囲であり得る。より具体的な実施例では、加熱温度は、熱可塑性ポリマー105がこの範囲内で溶融又は軟化するという条件で、約100℃~約300℃又は約200℃~約250℃の範囲であってもよい。
【0087】
次いで、混合物110は、熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度よりも高い温度で熱可塑性ポリマー105の液化液滴を製造するために十分な剪断力を適用することで処理112され、それにより溶融エマルション114を形成する。理論に制限されるものではないが、すべての他の要因が同じであれば、剪断力を増加させることは、分散媒104中の液化液滴のサイズを減少させ得ると考えられる。ある点では、剪断力の増加及び液滴の大きさの減少、及び/又はより高い剪断速度で液滴の内容物への分裂という側面での利益の減少があり得ることを理解されたい。溶融エマルション114を製造するのに好適な混合装置の例としては、押出機(例えば、連続押出機、バッチ押出機など)、撹拌反応器、ブレンダー、インラインホモジナイザーシステムを備える反応器等、及びそれから派生する装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
非限定的な例では、液化液滴は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約25μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約10μm~約150μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。固化後に形成された得られた熱可塑性微粒子は、同様のサイズ範囲内に存在し得る。すなわち、本開示の微粒子組成物及び方法における熱可塑性微粒子は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約25μm~約500μm、又は1μm~約200μm、又は1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約1μm~約200μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。粒径測定は、光学画像の分析によって、又は粒径測定のための光散乱技術を使用するMalvern Mastersizer 3000 Aero S装置の内蔵ソフトウェアを使用することによって行われ得る。
【0089】
光散乱技術については、Malvern Analytical Ltd.から入手した商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)で15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズ対照サンプルを使用することができる。サンプルは、Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して空気中に分散された乾燥粉末として分析され得る。粒径は、サイズの関数としての体積密度のプロットから機器ソフトウェアを使用して導出され得る。
【0090】
次いで、溶融エマルション114を冷却116して、液化液滴を固化状態の熱可塑性微粒子に固化させる。冷却速度は、約100℃/秒~約10℃/時間又は約10℃/秒~約10℃/時間の範囲であってもよく、これらの間の任意の冷却速度を含む。剪断は、冷却中に中断され得るか、又は冷却中に同じ速度又は異なる速度で維持され得る。次いで、冷却された混合物118を処理120して、熱可塑性微粒子122を他の構成成分124(例えば、分散媒104、過剰なポリマーナノ粒子106等)から分離することができる。熱可塑性微粒子122を更に精製するために、この段階で洗浄、濾過及び/又は同様のことを実施してもよく、熱可塑性微粒子122は、熱可塑性ポリマー105と、熱可塑性微粒子122の外面をコーティングするポリマーナノ粒子106の少なくとも一部とを含む。温度(冷却速度を含む)、熱可塑性ポリマー105の種類、及びポリマーナノ粒子106の種類及びサイズ等の非限定的な要因に応じて、ポリマーナノ粒子106は、熱可塑性微粒子122の上に配置される過程で、熱可塑性微粒子122の外面内に少なくとも部分的に埋め込まれ得る。埋め込みが起こらない場合であっても、ポリマーナノ粒子106は、熱可塑性微粒子122と強固に会合したままで、その更なる使用を容易にし得る。
【0091】
上記では、熱可塑性ポリマー105及び分散媒104は、これらの成分が、様々な処理温度(例えば、室温から、液化液滴が形成され、2つ以上の相として維持される温度まで)、これらの成分が不混和性又は実質的に不混和性(<1重量%の溶解度)であるように選択される。
【0092】
熱可塑性微粒子122を他の構成成分124から分離した後、熱可塑性微粒子122の更なる処理126が行われ得る。非限定的な例では、更なる処理126は、例えば、熱可塑性微粒子122をふるい分けすること、及び/又は熱可塑性微粒子122を他の物質とブレンドして、処理された熱可塑性微粒子128を形成することを含んでもよい。処理された熱可塑性微粒子128は、非限定的な例での積層造形などの所望の用途で使用するために配合され得る。
【0093】
熱可塑性微粒子は、約0.3g/cm~約0.8g/cm、又は約0.3g/cm~約0.6g/cm、又は約0.4g/cm~約0.7g/cm、又は約0.5g/cm~約0.6g/cm、又は約0.5g/cm~約0.8g/cmのバルク密度を有し得る。
【0094】
液化液滴を形成するのに十分な剪断力が、本開示の特定の実施例において分散媒をかき混ぜることによって適用され得る。非限定的な例では、撹拌速度は、毎分約50回転(rotations per minute、RPM)~約1500RPM、又は約250RPM~約1000RPM、又は約225RPM~約500RPM、又は約1000RPM~約2000RPMの範囲であり得る。熱可塑性ポリマーを融解している間の撹拌速度は、液化液滴が形成されると使用される撹拌速度と同じであるか又は異なり得る。液化液滴は、約30秒~約18時間以上、又は約1分~約180分、又は約1分~約60分、又は約5分~約6分、又は約5分~約30分、又は約10分~約30分、又は約30分~約60分の撹拌時間にわたって撹拌され得る。
【0095】
分散媒中の熱可塑性ポリマーの充填量(濃度)は、広範囲にわたって変化し得る。非限定的な例では、分散媒中の熱可塑性ポリマーの充填量は、分散媒の重量に対して約1重量%~約99重量%の範囲としてもよい。より具体的な例では、熱可塑性ポリマーの充填は、分散媒の重量に対して、約5重量%~約75重量%、又は約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約40重量%、又は約40重量%~約50重量%、又は約50重量%~約60重量%の範囲であってもよい。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーと分散媒とを合わせた量に対して、約5重量%~約60重量%、又は約5重量%~約25重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約20重量%~約45重量%、又は約25重量%~約50重量%、又は約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在し得る。
【0096】
本明細書の開示によるナノ粒子の存在下で熱可塑性微粒子を形成する際、ポリマーナノ粒子及び/又は他の種類のナノ粒子の少なくとも一部は、熱可塑性微粒子の外面上にコーティング又は部分コーティングとして配置され得る。コーティングは、場合によっては、外面上に実質的に均一に配置されてもよい。本明細書においてコーティングに関して使用する場合、用語「実質的に均一」は、ナノ粒子によって覆われた表面位置、特に外側表面全体の均一なコーティング厚さを指す。熱可塑性微粒子上のコーティング被覆率は、粒子の表面積の約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%の範囲としてもよい。被覆率は、SEM顕微鏡写真の画像解析によって判定され得る。
【0097】
本明細書の開示における使用に好適な分散媒としては、熱可塑性ポリマー及びポリマーナノ粒子が分散媒と実質的に不混和性であるものを含み、分散媒は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度を超える沸点を有し、分散媒は、熱可塑性ポリマーがその中で溶融又は軟化されると、実質的に球形の液化液滴を形成するのに十分な粘度を有する。好適な分散媒としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、ペルフッ素化シリコーンオイル、ポリエチレングリコール、パラフィン、液体石油ゼリー、ビソン油、タートル油、大豆油、ペルヒドロスクアレン、甘扁桃油、カロフィラム油、パーム油、パリーマ油、グレープシード油、ゴマ油、マイズ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、杏油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、オリーブ油、穀物胚芽油、ラン油のエステル、オレイン酸のエステル、ラウリン酸のエステル、ステアリン酸のエステル、脂肪酸エステル、高級脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸変性ポリシロキサン、脂肪族アルコールで変性されたポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾されたポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0098】
好適な分散媒は、約0.6g/cm~約1.5g/cmの密度を有してもよく、熱可塑性ポリマーは、約0.7g/cm~約1.7g/cmの密度を有してもよく、熱可塑性ポリマーは、分散媒の密度と同様、それよりも低い、又はそれよりも高い密度を有する。異なる粘度及び/又は密度を有する分散媒のブレンドを利用して、ブレンド構成成分の特性間の中間特性を達成することができる。
【0099】
特に好適なシリコーン油としては、ポリシロキサンが挙げられる。本明細書の開示での使用に適した例示的なシリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0100】
非限定的な例では、分散媒及び熱可塑性ポリマーは、約200℃以上の温度で加熱され得る。好適な加熱温度は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度、分散媒の沸点、及びポリマーナノ粒子の分解温度に基づいて選択され得る。液化されたポリマー液滴の形成後の冷却速度は、所望により様々であり得る。場合によっては、冷却は、加熱が中断された後、自然な(制御されていない)速度で起こる周囲環境への熱放散とともに起こり得る。他の場合では、制御された速度で冷却して(例えば、加熱温度を徐々に低下させること、及び/又はジャケット付き温度制御を使用することによって、冷却速度を増加又は減少させることが採用され得る。
【0101】
PDMSを含むポリシロキサンなどの好適な分散媒は、25℃で約1,000cSt~約150,000cSt、又は約1,000cSt~約60,000cSt、又は約40,000cSt~約100,000cSt、又は約75,000cSt~約150,000cStの粘度を有し得る。分散媒の粘度は、商業的供給元から入手され得るか、又は、所望により、当業者に既知の技術によって測定され得る。
【0102】
分散媒から熱可塑性微粒子を分離することは、様々な既知の分離技術のいずれかによって行われ得る。重力沈殿及び濾過、デカンテーション、遠心分離などのいずれかを使用して、分散媒から熱可塑性微粒子を分離し得る。次いで、熱可塑性微粒子は、分散媒が可溶性であり、熱可塑性微粒子が分離プロセスの過程で不溶性である溶媒で洗浄され得る。加えて、分散媒が可溶性であり、熱可塑性微粒子が不溶性である溶媒は、分散媒から熱可塑性微粒子を最初に分離する前に、分散媒及び熱可塑性微粒子と混合されてもよい。
【0103】
熱可塑性微粒子を洗浄するか、又は分散媒と混合するのに好適な溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及び/又はキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、n-ヘキサン、及び/又はn-オクタン)、環状炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、及び/又はシクロオクタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、及び/又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム及び/又は四塩化炭素)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はn-プロパノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン及び/又はアセトン);エステル(例えば、酢酸エチル等)、水等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。熱可塑性微粒子を洗浄した後、加熱、真空乾燥、空気乾燥、又はこれらの任意の組み合わせが行われ得る。
【0104】
本開示に従って得られる熱可塑性微粒子の少なくとも大部分は、実質的に球形の形状であってもよい。より典型的には、本開示による溶融乳化によって生成される熱可塑性微粒子の約90%以上、又は約95%以上、又は約99%以上は、実質的に球形の形状であってもよい。他の非限定的な例では、本開示の熱可塑性微粒子は、約0.90~約1.0、又は約0.93~約0.99、又は約0.95~約0.99、又は約0.97~約0.99、又は約0.98~1.0を含む、約0.9以上の球形度(円形度)を有し得る。真球度(真円度)は、Sysmex FPIA-2100 Flow Particle Image Analyzerを使用して測定され得る。真円度を判定するには、微粒子の光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内での微粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)を計算する(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能な、SYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器を使用する)。微粒子の真円度はCEA/Pであり、CEAは、実際の微粒子の面積(A)と等価な面積を有する円の円周である。
【0105】
本開示の熱可塑性微粒子は、約25°~約45°、又は約25°~約35°、又は約30°~約40°、又は約35°~約45°の安息角を有し得る。安息角の測定値は、ASTM D6393-14「カー・インデックスによるバルク・ソリッドの特性評価に関する標準試験方法」を使用するホソカワミクロン社製「粉体特性試験器」(Powder Characteristics Tester PT-R)を使用して決定され得る。
【0106】
上記の開示による分散媒から分離された熱可塑性微粒子は、意図される用途に好適な熱可塑性微粒子を作製するために更に処理されてもよい。一実施例では、熱可塑性微粒子を、熱可塑性微粒子の平均粒径よりも大きい有効なスクリーニングサイズを有するふるい又は類似の構造に通過させてもよい。例えば、三次元印刷の使用に好適な熱可塑性微粒子を処理するための例示的なスクリーニングサイズは、約150μmの実効スクリーニングサイズを有し得る。ふるい分けを参照すると、孔/スクリーンサイズは、U.S.A.Standard Sieve(ASTM E11-17)に記載されている。より大きい又はより小さい他のスクリーニングサイズは、他の用途で使用することになっている熱可塑性微粒子に、より好適であり得る。ふるい分けは、溶融乳化プロセス中に形成され得るより大きな微粒子を除去し得る、及び/又は不十分な流動特性を有し得る塊状の微粒子を除去し得る。一般に、約10μm~約250μmの範囲の実効スクリーニングサイズを有するふるいが使用され得る。
【0107】
加えて、ふるい分けされた熱可塑性微粒子を含む熱可塑性微粒子は、流動助剤、充填剤、又は意図される用途のための熱可塑性微粒子の特性を調整することを目的とする他の物質などの1つ以上の追加の成分と混合され得る。追加の構成成分と熱可塑性微粒子との混合は、乾式ブレンド技術によって実施され得る。流動助剤(例えば、カーボンブラック、グラファイト、シリカ等)及び同様の物質の好適な例は、当業者によく知られている。このような流動助剤は、溶融乳化に含まれるナノ粒子とは異なるが、これは、流動助剤は、乾式ブレンドが行われるとき、熱可塑性微粒子の表面に強固に付着しないためである。
【0108】
特定の用途では、本明細書に開示される微粒子組成物は、積層造形プロセス、特に、微粒子固結を促進するために選択的レーザ焼結又は他の粉末床融合プロセスを使用するものであってもよい。本開示の積層造形方法は、本開示の微粒子組成物(熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子の外面上に配置されたポリマーナノ粒子とを含む微粒子組成物)を提供することと、粒子状組成物層を粉末床に1層ずつ堆積させることと、粉末床の一部分を加熱して、熱可塑性微粒子の一部分を、特定の形状を有する固結された部品に固結することと、を含み得る。粉末床融合が行われると、ナノ粒子は、固結された部分と会合したままになり得る。具体的には、固結された部品は、熱可塑性微粒子の固結によって形成される熱可塑性マトリックスと、熱可塑性マトリックスと混合された少なくともポリマーナノ粒子とを含み得る。
【0109】
特定のプロセス構成では、熱可塑性微粒子の固結は、選択的レーザ焼結を用いて行われてもよい。固結された部品を形成するために選択的レーザ焼結又は他の粉末床微粒子固結プロセスを実施するための好適な条件は、特に限定されるものとは考えられない。選択的レーザ焼結を実行するのに好適なレーザとしては、連続波レーザ及びパルス波長レーザの両方が挙げられ得、熱可塑性微粒子の固結を促進するために必要なエネルギーを固結された部品に提供することができる。COレーザは、一般に、ポリマーのCOレーザ放出波長への高い吸光係数のために、添加剤製造中の熱可塑性微粒子の固結を促進するために使用される。微粒子固結を促進するように選択されたCOレーザ又は類似のレーザの動作条件は、微粒子固結が所望の程度に生じるように選択され得る。微粒子固結を促進するための標準的なレーザ設定(例えば、電力、走査速度、床温度など)は、当業者の知識に基づいて選択されてもよい。選択的レーザ焼結又は類似の微粒子固結技術を実施するための特定の条件の選択は、例えば、使用される熱可塑性ポリマーの種類、熱可塑性微粒子のサイズ及び組成、製造される印刷された物体の種類、並びに印刷された物体の目的とする使用条件などの非限定的な要因によって影響され得る。焼結条件の選択は、非限定的な例では、微粒子固結後に得られる多孔性に影響を及ぼし得る。好ましくは、微粒子圧密から得られる熱可塑性マトリックスは、約10%以下、又は約5%以下、又は約2%以下、又は約1%以下の多孔性を有し得る。
【0110】
本明細書に開示される微粒子組成物を使用して形成可能な印刷された物体の例は、特に限定されるものではなく、例えば、容器(例えば、食品用、飲料用、化粧品用、パーソナルケア組成物用、医療用等)、靴底、玩具、家具部品、装飾家庭用品、プラスチックギア、ねじ、ナット、ボルト、ケーブルタイ、医療用物品、人工装具、整形外科用インプラント、教育における学習を支援するアーチファクトの生成、手術を支援するための3D解剖学的モデル、ロボット工学、生体医学デバイス(装具学)、家庭電化製品、歯科、自動車及び航空機/航空宇宙部品、電子機器、スポーツ用品等を含み得る。
【0111】
本明細書に開示される実施形態は以下を含む。
【0112】
A.粉末微粒子を含む組成物。微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子の外面上に配置された複数のポリマーナノ粒子とを含み、ポリマーナノ粒子は、架橋フッ素化ポリマーを含む。
【0113】
B.微粒子固結によって印刷された物体を形成するための方法。方法は、Aの微粒子組成物を提供することと、微粒子組成物を粉末床に1層ずつ堆積させることと、粉末床の一部分を加熱して、熱可塑性微粒子の一部分を、特定の形状を有する固結された部品に固結することと、を含む。
【0114】
C.Bの方法によって調製された固結された部品。固結された部品は、熱可塑性微粒子の固結によって形成される熱可塑性マトリックスと、熱可塑性マトリックスと混合されたポリマーナノ粒子とを含む。D.粉末微粒子を形成する方法。方法は、熱可塑性ポリマー及びポリマーナノ粒子を、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上、及びポリマーナノ粒子の融点、軟化温度、又は分解温度未満の加熱温度で分散媒と組み合わせることであって、熱可塑性ポリマー及びポリマーナノ粒子が、加熱温度で、分散媒中で実質的に不混和性であり、ポリマーナノ粒子が、架橋フッ素化ポリマーを含む、組み合わせることと、ポリマーナノ粒子の存在下で、加熱温度で分散媒中の液化液滴として熱可塑性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、分散媒を、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性微粒子の外面上に配置されたポリマーナノ粒子の少なくとも一部分と、を含む、冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含む。
【0115】
実施形態A、B、C、及びDの各々は、以下の追加要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有してもよい。
【0116】
要素1:架橋フッ素化ポリマーが、フッ素化(メタ)アクリルモノマー及びジビニル架橋剤を含む。
【0117】
要素2:フッ素化(メタ)アクリルモノマーが、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレートを含み、ジビニル架橋剤が、ジビニルベンゼンを含む。
【0118】
要素3:架橋フッ素化ポリマーが、フッ素化(メタ)アクリルモノマーとは異なるエチレン性不飽和コモノマーを更に含む。
【0119】
要素4:微粒子組成物が、熱可塑性微粒子の外面上に配置された無機ナノ粒子を更に含み、無機ナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0120】
要素5:酸化物ナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む。
【0121】
要素6:熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーに対して測定して、約0.01重量%~約10重量%のナノ粒子を含む。
【0122】
要素7:熱可塑性微粒子が、実質的に球状であり、約1μm~約1,000μmの範囲のD50を有する。
【0123】
要素8:ポリマーナノ粒子が、約5nm~約500nmのサイズの範囲である。
【0124】
要素9:加熱が、選択的レーザ焼結によって行われる。
【0125】
要素10:ポリマーナノ粒子が、固結された部品と会合したままになる。
【0126】
要素11:ポリマーナノ粒子が、エマルション重合によって得られる。
【0127】
要素12:方法が、無機ナノ粒子を分散媒と組み合わせることを更に含み、無機ナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含み、無機ナノ粒子の少なくとも一部分が、熱可塑性微粒子の外面上に配置される。要素13:分散媒が、シリコーンオイルを含む。
【0128】
非限定的な例として、A、B、C、及びDに適用可能な例示的な組み合わせとしては、これらに限定されないが、1及び3;1~3;1及び4;1、4、及び5;1及び6;1及び7;1及び8;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;6及び7;6及び8;並びに7及び8が挙げられる。
【0129】
本開示のより良好な理解を促進するために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限するか、又は定義するために読まれるべきではない。
【実施例0130】
以下の実施例では、熱可塑性微粒子の粉末流は、ふるい分け及び安息角を通して特徴付けられた。ふるい分けは、特定の条件又は力の持続時間を有さない150μm U.S.A.標準ふるい(ASTM E11)を使用して行われた。安息角の測定は、ASTM D6393-14「カー・インデックスによるバルク・ソリッドの特性評価に関する標準試験方法」を使用するホソカワミクロン社製「粉体特性試験器」(Powder Characteristics Tester PT-R)を使用して行われた。
【0131】
熱可塑性微粒子の平均粒径測定及び粒径分布は、Malvern Mastersizer 3000 Aero S粒径分析器を使用して光散乱によって判定した。このような光散乱技術については、Malvern Analytical Ltd.から入手した商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)で15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズ対照サンプルを使用することができる。サンプルは、Mastersizer 3000 Aero S装置の乾燥粉末分散モジュールを使用して、空気中に分散された乾燥粉末として分析することができる。粒径は、サイズの関数としての体積密度のプロットから計器ソフトウェアを使用して導出することができる。
【0132】
ポリマーナノ粒子の平均粒径測定は、Nanotrac 252装置(MicroTrac,Inc.)を使用して動的光散乱によって測定した。この装置は、レーザ光散乱技術を使用し、運動中(ブラウン運動)の各粒子から生成されたドップラーシフトを受けた光が測定される。これらのシフトによって生成された信号は、粒子のサイズに比例する。信号は、装置のソフトウェアによって粒径及びサイズ分布に数学的に変換される。分析は、外部プローブを使用して、又はプローブを固定サンプルチャンバーに挿入することによって行うことができる。このような光散乱技術については、Microtracから入手したNanotrac Particle Size Analyzersのための商標名NIST Traceable Reference Materialで、15nm~150nmの範囲内の直径を有するNISTポリスチレンナノスフェア対照サンプルを使用することができる。
【0133】
以下の実施例では、重量百分率は、別段の指定がない限り、熱可塑性ポリマーに対して測定される。
【0134】
エマルション重合によるポリマーナノ粒子の形成。2LのBuchi反応器で、6.5gのCALFOAM(登録商標)SLS-30界面活性剤(30%固形分のラウリル硫酸ナトリウム、Pilot Chemical)を、816gの脱イオン水に添加した。反応混合物に窒素流を通過させ、次いで77℃まで上昇させることによって、反応器を脱酸素化した。別の1Lのガラス容器において、223.6gのトリフルオロエチルメタアクリレート(trifluoroethyl methacrylate、TFEMA)、95.8gのジビニルベンゼン(divinylbenzene、DVB)、6.5gのCALFOAM(登録商標)SLS-30界面活性剤(30%固形分)、及び416gの脱イオン水を一緒に混合することによって、モノマーエマルションを調製した。37.1gのシード量をモノマーエマルションから取り出し、77℃で2Lの反応器に汲み込んだ。次いで、34.3gの脱イオン水中の1.22gの過硫酸アンモニウムから調製された開始剤溶液を、20分にわたって、シードエマルションを含有する反応器に添加した。次いで、残りのモノマーエマルションを120分にわたって反応器に供給した。モノマーエマルションの半分を添加した後、撹拌速度を増加させた。すべてのモノマーエマルションを添加した後、反応混合物を77℃で1時間維持し、続いて、87℃まで2時間上昇させ、この温度で1時間保持して、エマルション重合後の残留モノマーを低減した。得られたラテックスエマルションは、平均粒径95nm(スプレッド:8nm~6.54μm)及び290.6℃のTGAによる融点を有する20%パーセント固形分を含有していた。ラテックスを噴霧乾燥して、その後の溶融乳化のためにフッ素化ポリマーナノ粒子を単離した。
【0135】
実施例1:1.0重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子。2LのBuchi反応器に、30,000cStの粘度を有するPDMS油を充填し、上記のように調製した1.0重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子と予混合した。次いで、ポリウレタンペレット(ELASTOLAN 1190A10、BASF)を、PDMS油に対して40重量%で添加した。反応器をNパージ下で、200rpmで10分間撹拌し、次いで3.6℃/分の速度で240℃に加熱した。温度が約225℃に達したとき、撹拌速度を500rpmまで上昇させた。溶融分散液を、温度が235℃に達した後にNを遮断して500rpmで更に30分間混合した。粒子形成が生じた後、熱いスラリーをトレイに排出し、室温まで冷却した。得られたポリウレタン微粒子をヘプタン中に4回再スラリー化し、Whatman #1 90mm濾紙上に濾過して、PDMS油を除去した。ポリウレタン微粒子は、溶媒を除去するために乾燥した後に81.8ミクロン(スパン=1.13)のD50を有していた。安息角は29.8°であった。図2は、実施例1に従って調製されたポリウレタン微粒子の走査型電子顕微鏡画像である。図3は、実施例1に従って調製されたポリウレタン微粒子の粒径分布を示すグラフである。
【0136】
SLS印刷のために、微粒子を250μmのふるいを通して更にスクリーニングした。次いで、108℃及び70%レーザ出力でSnow Whiteプリンタを使用して微粒子を印刷した。
【0137】
実施例2:1.5重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子。溶融乳化中に1.5重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。得られたポリウレタン微粒子は、溶媒を除去するために乾燥した後に42.7ミクロン(スパン=0.89)のD50を有し、150μmのふるいを通してスクリーニングした。安息角は31.0°であった。
【0138】
実施例3:0.75重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子。溶融乳化中に0.75重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。得られたポリウレタン微粒子は、溶媒を除去するために乾燥した後に約81.5ミクロン(スパン=0.79)のD50を有し、150μmのふるいを通してスクリーニングした。安息角は28.3°であった。
【0139】
実施例4:1.0重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子でコーティングされたポリアミド微粒子。2LのBuchi反応器に、40,000cStの粘度を有するPDMS油(41.5%、30,000cSt及び58.5%、60,000cStのPDMS油のブレンド)を充填し、上記のように調製した1.0重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子と予混合した。次いで、ポリアミド-12ペレット(RTP、Winona,Minnesota)を、PDMS油に対して30重量%で添加した。反応器をNパージ下で、200rpmで10分間撹拌し、次いで3.6℃/分の速度で250℃に加熱した。温度が約230℃に達したとき、撹拌速度を650rpmまで上昇させた。溶融分散液を、温度が235℃に達した後に650rpmで更に60分間混合した。次いで、加熱及びNパージを中断し、撹拌速度を50rpmに低下させた。室温まで冷却した後、スラリーをトレイ上に排出した。得られたポリアミド微粒子をヘプタン中に4回再スラリー化し、Whatman #1 90mm濾紙上に濾過して、PDMS油を除去した。ポリアミド微粒子は、溶媒を除去するために乾燥した後に約58.6ミクロン(スパン=0.983)のD50を有していた。粒子の2つのバッチを混合し、安息角測定のために250μmのふるいを通してスクリーニングした。安息角は26.2°であった。図4は、実施例4に従って調製されたポリアミド微粒子の走査型電子顕微鏡画像である。図5は、実施例4に従って調製されたポリミド微粒子の粒径分布を示すグラフである。
【0140】
次いで、Snow Whiteプリンタを使用して、粉末微粒子の混合したバッチをSLS印刷に使用した。138℃の温度設定点及び40%のレーザ出力で焼結することにより、単一層において良好な印刷性能が示された。
【0141】
実施例5:1.5重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子でコーティングされたポリアミド微粒子。溶融乳化中に1.5重量%のフッ素化ポリマーナノ粒子を使用し、PDMS油が30,000cStの粘度を有していたことを除いて、実施例4を繰り返した。得られたポリアミド微粒子は、溶媒を除去するために乾燥した後に45.1ミクロン(スパン=1.59)のD50を有し、150μmのふるいを通してスクリーニングした。安息角は27.6°であった。
【0142】
本明細書に記載されるすべての文書は、そのような実施が許可されるすべての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。したがって、本開示はそれにより限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載される組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の構成成分、又は組成物を含まなくてもよい。任意の方法は、本明細書に列挙又は開示されていないいかなる工程を欠いてもよい。同様に、用語「備える、含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義であると考えられる。方法、組成物、要素又は要素の群が移行句「備える、含む(comprising)」で先行する場合はいつでも、本発明者らがまた、組成物、要素、又は複数の要素の列挙に先行する移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」で同じ組成物又は要素の群を企図すること、及びその逆もまた同様であることは理解される。
【0143】
別途記載のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分、分子量などの特性、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、請求項の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0144】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値のすべての範囲は、広範な値の範囲内に包含されるすべての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、請求項で使用するとき、不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ以上を意味するように定義される。
【0145】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装のすべての特徴は、本出願に記載又は表示されていない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンスなど、実装によって及び随時に変化する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
【0146】
したがって、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上述の具体的な実施形態は例示的なものに過ぎず、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかである、異なるが同等の方法で本開示が修正及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示された具体的な例示的実施形態が、変更され、組み合わされ、又は修正され得、すべてのそのような変形が、本開示の範囲及び趣旨内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択の要素の不在下で実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5