(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074113
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】分割電極を有するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021177377
(22)【出願日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】17/086,164
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジャスティン・ヘレラ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK36
4C160KK38
4C160KK57
4C160KK63
4C160KL03
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】医療装置を提供すること。
【解決手段】医療装置は、体腔内への挿入のために構成された、挿入管を含むプローブを含む。バルーンは、挿入管に遠位に接続され、挿入管を通ってバルーンへと流入する流体によって体腔内にて膨張させられる。電極は、バルーンの表面上の異なるそれぞれの位置に配設され、体腔内の組織と接触するように構成され、それぞれの電極は、異なるそれぞれの面積を有する少なくとも2つのセグメントを含む複数のセグメントに分割されている。電気信号発生器は、電極と接触した組織をアブレーションするのに十分な振幅で、各電極の複数のセグメントに、並行して同時に高周波(RF)信号を印加する。感知回路は、電極の他のセグメントとは別個かつ独立して、各電極の複数のセグメントのうちの少なくとも1つから電気生理学的信号を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
プローブであって、
患者の体腔への挿入用に構成された挿入管、
バルーンであって、前記挿入管に遠位に接続され、前記挿入管を通って前記バルーンに流入する流体で、前記体腔内にて膨張するように構成されている、バルーン、及び
前記バルーンの表面上の異なるそれぞれの位置に配設され、前記体腔内の組織に接触するように構成されている複数の電極であって、それぞれの電極が、異なるそれぞれの面積を有する少なくとも2つのセグメントを含む複数のセグメントに分割されている、複数の電極、を含む、プローブと、
前記電極によって接触された前記組織をアブレーションするのに十分な振幅で、各電極の前記複数のセグメントに、並行して同時に高周波(RF)信号を印加するように構成されている電気信号発生器と、
各電極の前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つから、前記電極のその他のセグメントとは別個かつ独立して電気生理学的信号を取得するように構成されている、感知回路と、を備える、医療装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つのセグメントは、それぞれの第1の面積及び第2の面積を有する第1のセグメント及び第2のセグメントを含み、前記第1の面積が前記第2の面積の少なくとも2倍である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の面積は、前記第2の面積の少なくとも4倍である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記バルーンは、前記第1のセグメントを通過するが前記第2のセグメントを通過しない1つ以上の灌注開口部を備え、前記流体が、前記灌注開口部を通って前記バルーンから流出して、少なくとも前記第1のセグメントと接触した前記組織を灌注する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
各電極が、少なくとも1つの長手方向隔離線によって前記セグメントに分割されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
各電極が、少なくとも1つの横方向隔離線によって前記セグメントに分割されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
医療装置であって、
プローブであって、
患者の体腔への挿入用に構成された挿入管と、
長手方向軸を有する拡張可能な部材であって、前記挿入管に遠位に接続され、器官内にて前記長手方向軸を中心に拡張されるように構成されている、拡張可能な部材と、を含む、プローブと、
前記長手方向軸を中心として放射状に配設された複数の電極であって、前記複数の電極のそれぞれの電極が、それぞれの可撓性回路基板上に配設され、各電極が複数のセグメントに分割され、前記複数のセグメントが、ほぼ等しい表面積を有する少なくとも2つのより大きい電極セグメント、及び、前記2つのより大きい電極セグメントのそれぞれの、約4分の1の表面積をそれぞれが有する2つのより小さい電極セグメントを含み、前記より大きい電極セグメント及び前記より小さい電極セグメントが互いに絶縁されて別個の電極を画定する、複数の電極と、を含む、医療装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つのより大きい電極セグメントが、4つのより大きい電極セグメントを含む、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記4つのより大きい電極セグメント及び前記2つのより小さい電極セグメントが、単一の可撓性電極基板上に配設されている、請求項8に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療装置に関し、特に、生体組織のアブレーション及び感知のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波アブレーション(RFA)は、高周波(RF)交流(例えば、350~500kHzの周波数範囲)から発生した熱を使用して、心臓又は他の機能不全組織の電気伝導路の一部をアブレーションする医療処置である。アブレーションは、カテーテルなどのプローブを組織内に挿入し、プローブの先端の電極にRF電流を印加することによって行われる。プローブはまた、診断目的のために電気生理学的信号を取得するために使用されてもよい。
【0003】
米国特許出願公開第2015/0119877号は、体腔内の組織に処置を提供するための方法、システム、及び装置を記載している。システムは、支持シャフト、支持シャフトの遠位部分と連結された拡張部材、及び様々なサイズで体腔に係合するように構成された拡張部材の円周よりも小さい拡張部材の周りに巻かれたアブレーション構造を含み得る。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0029500号は、患者の腎動脈にアクセスするのに十分な長さを有する可撓性シャフトを含むカテーテルを記載している。シャフトの遠位端にある処置要素は、腎動脈内での展開用に寸法決めされる。処置要素は、腎動脈内の位置決めを維持するように構成された径方向に膨張可能な構造を含む。
【0005】
米国特許第10,653,480号は、可撓性回路電極アセンブリを有する電気生理学的カテーテルを構築する方法を記載している。方法は、基板と、第1の導電層と、第2の導電層と、を有する、可撓性回路を提供することを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に記載される本発明の実施形態は、アブレーション及び感知のための改善されたプローブ、並びにそれらの製造及び操作のための方法を提供する。
【0007】
したがって、本発明の実施形態に従って、プローブを含む医療装置を提供する。プローブは、患者の体腔への挿入用に構成された挿入管、バルーンであって、挿入管に遠位に接続され、挿入管を通ってバルーン内に流入する流体で、体腔内にて膨張するように構成されている、バルーン、及びバルーンの表面上の異なるそれぞれの位置に配設され、体腔内の組織と接触するように構成されている複数の電極、を含む。それぞれの電極は、異なるそれぞれの面積を有する少なくとも2つのセグメントを含む複数のセグメントに分割される。医療装置はまた、電極によって接触された組織をアブレーションするのに十分な振幅で、各電極の複数のセグメントに、並行して同時に高周波(RF)信号を印加するように構成されている電気信号発生器も含む。感知回路は、各電極の複数のセグメントのうちの少なくとも1つから、電極のその他のセグメントとは別個かつ独立して電気生理学的信号を取得するように構成されている。
【0008】
開示される実施形態では、少なくとも2つのセグメントは、それぞれの第1の面積及び第2の面積を有する第1のセグメント及び第2のセグメントを含み、第1の面積が第2の面積の少なくとも2倍である。
【0009】
更なる実施形態では、第1の面積は、第2の面積の少なくとも4倍である。
【0010】
いっそう更なる実施形態では、バルーンは、第1のセグメントを通過するが第2のセグメントを通過しない1つ以上の灌注開口部を含み、流体が、灌注開口部を通ってバルーンから流出して、少なくとも第1のセグメントにより接触された組織を灌注する。
【0011】
開示される実施形態では、各電極は、少なくとも1つの長手方向隔離線によってセグメントに分割されている。追加的に又は代替的に、各電極は、少なくとも1つの横方向隔離線によってセグメントに分割されている。
【0012】
更に、本発明の一実施形態によれば、医療処置及び診断のための方法も提供される。この方法は、患者の体腔への挿入用のプローブを設けることを含み、プローブは、挿入管、挿入管に遠位に接続されたバルーン、及びバルーンの表面上の異なるそれぞれの位置に配設された複数の電極を含み、それぞれの電極は、異なるそれぞれの面積を有する少なくとも2つのセグメントを含む複数のセグメントに分割されている。この方法は、膨張したバルーンの表面上の電極のうちの1つ以上が体腔内の組織に接触するように、挿入管を通ってバルーンに流入する流体で体腔内のバルーンを膨張させることを更に含む。高周波(RF)信号は、電極と接触した組織をアブレーションするのに十分な振幅で、電極のうちの1つ以上の複数のセグメントに、並行して同時に印加される。電気生理学的信号は、電極のうちの1つ以上のそれぞれの複数のセグメントのうちの少なくとも1つから、電極のその他のセグメントとは別個かつ独立して取得される。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるRFA処置の過程における医療装置20の概略的な絵画図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、アブレーションと信号取得を組み合わせたカテーテルの遠位端部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
高周波アブレーション(RFA)処置では、典型的には350~500kHzの周波数を有する交流電流が対象の組織を通して駆動される。電流は、組織と接触して配置されたカテーテルの電極を介して組織内に運ばれる。これらの電極はまた、それらが接触している組織から電気生理学的信号を取得することによって、診断目的で使用されてもよい。
【0016】
いくつかのRFA処置は、遠位端に位置するバルーンと、バルーンの表面に配列された電極とを有するバルーンカテーテルを使用する。バルーンを体腔内で膨張させ、電極をアブレーションされるべき組織に接触させる。過剰な電流密度による電極への損傷及び組織への損傷を回避するため、バルーン上の電極は典型的には大きく、例えば約5mm2である。
【0017】
身体内の組織をアブレーションするために、例えば心臓の左心房において、小径のバルーンを使用することができる。例えば、15mm未満の直径を有する小径のバルーンを使用することができる。バルーン自体のサイズの小ささにもかかわらず、電極は、損傷されることなくRFA電流を伝達することができるのに十分な大きさである。この場合、この電極のサイズは、これらが診断のために効果的に使用されることを妨げるが、それは、各電極が組織の比較的大きな面積から信号を取得し、任意の所与の時点で、この面積は典型的には複数の信号を生成するためである。バルーンは、信号取得のための別個の電極を有することができるが、この解決策は、バルーンの小さいサイズから非実用的であり得る。
【0018】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、セグメント化された電極を有するバルーンを有するプローブを提供することによってこの問題に対処する。電気信号発生器は、電極により接触された組織をアブレーションするのに十分な振幅で、各電極の複数のセグメントに並行して同時にRF信号を印加する。一方、感知回路は、各電極のセグメントのうちの少なくとも1つから、他のセグメントとは別個かつ独立して電気生理学的信号を取得することができる。したがって、電極は、RFA電流を安全に送達するのに十分な有効面積を有し、一方で信号が精密な空間分解能で獲得されることを可能にする。
【0019】
開示される実施形態では、プローブは、患者の体腔に挿入するための挿入管、及び挿入管の遠位端に接続され、挿入管を通ってバルーン内に流入する流体で膨張可能なバルーンを備える。バルーンの表面は、体腔内で組織と接触するための複数の電極を有し、各電極は、不均等な面積のセグメントに分割されている。
【0020】
電気信号発生器は、電極により接触された組織をアブレーションするのに十分な振幅で、各電極のセグメントに並行して同時に高周波(RF)信号を印加する。RFAのために、セグメント、特により大きいセグメントを並行に接続することにより、RF電流による電極への損傷を回避するために、十分大きな表面積が確保される。
【0021】
感知回路は、各電極の別個のセグメントから別個の独立した電気生理学的信号を取得する。特により小さいセグメントから信号を取得することにより、各セグメントは組織の小さい局所面積からその信号を確実に取得することができる。
【0022】
更なる実施形態では、灌注開口部は、RFAに利用されるより大きなセグメントを通過し、その結果、流体が灌注開口部を通ってバルーンから流出して、より大きなセグメントにより接触された組織を灌注することができる。しかしながら、より小さいセグメントは、主に信号取得のために利用され、ほとんどの少量のアブレーション電流を送達するために、灌注開口部を有さなくてもよい。
【0023】
システムの説明
図1が、本発明の一実施形態によるRFA処置の過程における医療装置20の概略の絵画図である。医師22が、アブレーションカテーテル26(カテーテルの更なる詳細は、以下で説明される)を使用して対象24についてRFA処置を行う。医師22は、RF電流を放出することと同時に、又は交互にのいずれかで、対象24の組織から電気生理学的信号を取得するためのアブレーションカテーテル26を更に利用する。現在の図及び後続の図に示される実施形態は、心腔27のRFA処置の例を指す。別の実施形態においては、RFA処置及び電気生理学的信号の取得を、本明細書を検討することによって当業者にとって明らかになるとおり、心臓27のみならず、他の臓器及び組織においても実行することができる。
【0024】
差し込み
図36に示されるように、アブレーションカテーテル26は、シャフト28及び遠位アセンブリ30を備え、シャフトは、遠位アセンブリを心腔27に挿入するための挿入管として機能する。遠位アセンブリ30は、複数のアブレーション電極34を有するバルーン32を備え、電極は、
図2に示すように、非均等面積を有するセグメントに分割されている。遠位アセンブリ30及びシャフト28の一部は、差し込み
図38にも示されている。
【0025】
医療装置20は、プロセッサ42、感知回路43、及び電気信号発生器44を更に備え、典型的にはコンソール46内に存在する。プロセッサ、感知回路、及び信号発生器はそれぞれ、1つ以上の回路構成要素を備えることができる。カテーテル26は、ポート又はソケットなどの電気的インターフェース48を介してコンソール46に接続される。RF信号は、信号発生器44から遠位アセンブリ30に搬送され、電気生理学的信号は、インターフェース48及びカテーテル26を通って延びる電気ワイヤ(図示せず)を介して、遠位アセンブリから感知回路43に搬送される。
【0026】
プロセッサ42は、アブレーション処置の前、及び/又は処置中に、医師22から(又は他の操作者)、処置のためのセットアップパラメータを受信する。例えば、キーボード、マウス、又はタッチスクリーン(図示せず)などの1つ以上の適切な入力装置を使用して、医師22は、電極34のセグメントのいくつか又はすべてに適用されるRFA信号の電気的及び時間的パラメータを画定する。プロセッサ42は、RFAを実行するために、信号発生器44に適切な制御信号を渡す。プロセッサ42はまた、
図2に更に詳述されるように、電極34の特定のセグメントから電気生理学的信号を取得するように感知回路43に指示する。
【0027】
プロセッサ42を、任意の適切な追跡技術を使用して、RFA処置の最中及び電気生理学的信号取得中に電極34のそれぞれの位置を追跡するように更に構成することができる。例えば、遠位アセンブリ30が、1つ以上の電磁位置センサ(図示せず)を備えることができ、電磁位置センサは、1つ以上の磁場発生器50が発生させる外部磁場の存在下で、センサの位置によって変化する信号を出力する。これらの信号に基づいて、プロセッサ42は、電極34の位置を確認することができる。磁場発生器50は、ケーブル52及びインターフェース54を介してコンソール46に接続される。代替的に、各電極34について、プロセッサ42は、電極と、様々な異なる場所対象24の体表面上の、電極と複数の外部電極56との間でそれぞれのインピーダンスを確認し、次いで、これらのインピーダンス間の比率を計算することができ、これらの比率は、電極の場所を示す。更にもう1つの代替形態として、プロセッサは、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第8,456,182号に記載されているように、電磁気による追跡と、インピーダンスに基づく追跡を両方とも使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、プロセッサ42は、対象の身体構造の関連の画像60を、例えば遠位アセンブリ30の現在の位置及び向きを示すように注釈を付けて、表示画面58上に表示する。代替的に又は追加的に、プロセッサ42は、電極34を通して取得された電気生理学的信号のマップを画面58上に表示してもよい。
【0029】
プロセッサ42、感知回路43、及び電気信号発生器44は、典型的には、アナログ素子及びデジタル素子の両方を含んでもよい。したがって、感知回路43は、カテーテル26からアナログ電気生理学的信号を受信し、それらをプロセッサ42に渡すためのデジタル形式に変換するための、それぞれのアナログデジタル変換器(ADC)を有する複数の入力を含んでもよい。電気信号発生器44は、典型的には、アブレーション用のRF信号を生成するためのRFアナログ回路、並びにプロセッサ42からデジタル制御信号を受信するためのデジタルアナログ変換器(DAC)を備える。
【0030】
代替的には、プロセッサ42がアナログ信号を送信及び/又は受信するように構成されているならば、電気生理学的信号及び/又は制御信号は、アナログ形態でそれぞれプロセッサ42と感知回路43と電気信号発生器44との間を通過してもよい。
【0031】
更に、プロセッサ42は、典型的には、受信された電気生理学的信号から所与の周波数で信号を抽出するためのデジタルフィルタを備える。
【0032】
典型的には、本明細書に記載されるプロセッサ42の機能性は、少なくとも部分的にソフトウェアに実装される。例えば、プロセッサ42は、少なくとも中央演算処理ユニット及びランダムアクセスメモリ(RAM)を含むプログラム済みデジタルコンピューティングデバイスを含み得る。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、CPUによる実行及び処理のためにRAMに読み込まれる。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でプロセッサにダウンロード可能である。代替的に又は追加的に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気、光学、又は電子メモリなどの非一時的有形媒体上に提供及び/又は記憶され得る。このようなプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された機械又は専用コンピュータを生じる。
【0033】
RFA処置の開始時に、医師22は、カテーテル26を、バルーン32が畳み込まれた構成で、対象24の血管系を介してシース62を通して心臓27内に挿入する。カテーテルが出た後にのみ、シースは、シャフト28を通ってバルーン内に流入する流体で、その意図された機能形状に膨張されたバルーンである。この機能形状が、差し込み
図36及び
図38に示されている。畳まれた状態のバルーン32を収容することにより、シース62は、バルーンが目標位置へともたらされるときの血管の外傷を最小限に抑える役割も果たす。医師22は、カテーテルの近位端の付近のマニピュレータ64及び/又はシース62からの偏向を使用してカテーテルを操作することによって、カテーテル26を対象24の心臓27内の目標位置へと誘導する。医師22は、遠位アセンブリ30を、心臓27の心筋組織などの組織に接触させる。次に、医師22及びプロセッサ42の制御下で、電気信号発生器44は、RFA信号を生成し、これは、電極34のセグメントと平行にカテーテル26を通って運ばれる。
【0034】
単極RFAでは、アブレーション信号の電流がアブレーション電極34と外部電極又は「リターンパッチ」66との間を流れ、リターンパッチは、対象24、典型的には対象の胴体の皮膚と発生器44との間で外部的に結合されている。双極RFアブレーションでは、信号の電流は、アブレーション電極34の対の間を流れる。
【0035】
プロセッサ42は、RFAと同時に、又はそれと交互のいずれかで、対象24の組織から電極34の選択されたセグメントによって別個に及び独立して受信された電気生理学的信号を取得する。電気生理学的信号は、カテーテル26を通して電極34からプロセッサ42に搬送される。
【0036】
図1に例示される特定のタイプのアブレーション処置にもかかわらず、本発明の原理は、任意の好適なタイプの多チャネルアブレーション処置に適用され得る。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態による、カテーテル26の遠位端部の概略面図である。
【0038】
上述したように、カテーテル26は、シャフト28(ここに示される部分のみを有する)及び遠位アセンブリ30を備える。遠位アセンブリ30は、バルーン32と、バルーンの表面上の異なるそれぞれの位置にある電極34とを備える。バルーン32は、シャフト28の遠位端102の長手方向軸104と一致する極性軸線106を有する。複数の可撓性回路基板105は、長手方向軸104を中心として拡張可能部材上に配設される。各基板105に電極34が設けられている。図示のように、各基板105向けに、複数の電極部材(個別に34として指定)が存在する。電極34のそれぞれは、長手方向隔離線108及び横方向隔離線110(「長手方向」及び「横方向」は、極性軸線106を参照して画定される)に沿ってセグメント114に分割される。例えば、差し込み
図112でより詳細に示される電極34a(電極34の1つ)は、6つのセグメント114a、114b、114c、114d、114e及び114fに分割される。セグメントのうちの4つ114a~114dは、同じ(又はほぼ同じ)面積を有し、一方、セグメント114e及び114fはセグメント114a~114dよりも小さく、各々は、例えば、セグメント114a~114dのそれぞれの面積の約4分の1(1/4)である面積を有する。各セグメント114(すなわち、114a、114b、114c又は114d)はシャフト28を通過してコンソール46に至る、それぞれのワイヤ又は電気トレース(図示せず)などの他の導体に個別に接続されている。したがって、上で説明したように、感知回路43及び電気信号発生器44が、感知及びアブレーションの目的で、セグメントを個別に又は並列にアドレス指定することを可能にする。すなわち、より大きい電極セグメント116a、116b、116c、116d及びより小さい電極セグメント116e及び116fのそれぞれは、拡張可能な部材上で互いに電気的に絶縁されている。
【0039】
電極34aは、それぞれがそれぞれのセグメント114a、114b、114c、及び114dを通過する灌注開口部116a、116b、116c、及び116dを含み、流体がバルーン32から流出して、それぞれのセグメントにより接触された組織及びその近くの組織を灌注するための経路を提供する。しかしながら、2つのより小さいセグメント114e及び114fは、典型的には、灌注開口部を有さず、例えば開口部116c及び116dによって灌注されてもよい。代替的な実施形態では、より小さいセグメントもまた、同様に灌注開口部を有してもよい。
【0040】
他の実施形態では、各電極34のセグメントの数は、6つ以上であってもよい。追加的に又は代替的に、より大きいセグメント及びより小さいセグメントの面積間の比率は、4:1(より大きいセグメントがより小さいセグメントの約4倍であることを示す数字「4」)とは異なってもよいが、典型的には少なくとも2:1であり、灌注開口部の数は、より大きいセグメント向けのものとは異なっていてもよい。更に、
図2は、長手方向及び横方向の線108及び110に沿ってセグメントに分割された電極34を示しているが、この分割は長手方向線のみによって、又は横方向の線のみによって実施されてもよい。分割線はまた、例えば、横方向の線110に対して90度ではない角度などの異なる幾何学的形状を有してもよい。
【0041】
電極34aを使用するアブレーションの目的のために、プロセッサ42は、信号発生器44に、電極により接触された組織をアブレーションするのに十分な振幅でRF信号を印加するように命令する。RF信号は、セグメント114a~114fの全て又はいくつかに対して並行して同時に印加され、電極34aに損傷を与えることなく、RF電流が通過するのに十分大きい導電面積を提供する。
【0042】
電極34aを使用して電気生理学的信号を取得する目的で、プロセッサ42は、感知回路43をセグメント114a~114fのうちの1つ以上に、例えば、より小さいセグメント114e~114fに接続する。したがって、電気生理学的信号が取得される導電面積は、信号が組織の広い面積にわたって平均化されるのを防ぐために十分に小さい。電気生理学的信号は、複数のセグメント、並びに複数の異なる電極と同時に、この方法で取得されてもよい。
【0043】
上記の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は、本明細書の上に具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書において上に記載された種々の特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形形態及び修正を含む。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
プローブであって、
患者の体腔への挿入用に構成された挿入管、
バルーンであって、前記挿入管に遠位に接続され、前記挿入管を通って前記バルーンに流入する流体で、前記体腔内にて膨張するように構成されている、バルーン、及び
前記バルーンの表面上の異なるそれぞれの位置に配設され、前記体腔内の組織に接触するように構成されている複数の電極であって、それぞれの電極が、異なるそれぞれの面積を有する少なくとも2つのセグメントを含む複数のセグメントに分割されている、複数の電極、を含む、プローブと、
前記電極によって接触された前記組織をアブレーションするのに十分な振幅で、各電極の前記複数のセグメントに、並行して同時に高周波(RF)信号を印加するように構成されている電気信号発生器と、
各電極の前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つから、前記電極のその他のセグメントとは別個かつ独立して電気生理学的信号を取得するように構成されている、感知回路と、を備える、医療装置。
(2) 前記少なくとも2つのセグメントは、それぞれの第1の面積及び第2の面積を有する第1のセグメント及び第2のセグメントを含み、前記第1の面積が前記第2の面積の少なくとも2倍である、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記第1の面積は、前記第2の面積の少なくとも4倍である、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記バルーンは、前記第1のセグメントを通過するが前記第2のセグメントを通過しない1つ以上の灌注開口部を備え、前記流体が、前記灌注開口部を通って前記バルーンから流出して、少なくとも前記第1のセグメントと接触した前記組織を灌注する、実施態様2に記載の装置。
(5) 各電極が、少なくとも1つの長手方向隔離線によって前記セグメントに分割されている、実施態様1に記載の装置。
【0045】
(6) 各電極が、少なくとも1つの横方向隔離線(latitudinal isolation line)によって前記セグメントに分割されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 医療処置及び診断のための方法であって、
患者の体腔への挿入用のプローブを設けることであって、前記プローブが、
挿入管、
前記挿入管に遠位に接続されたバルーン、及び
前記バルーンの表面上の異なるそれぞれの位置に配設された複数の電極であって、それぞれの電極が、異なるそれぞれの面積を有する少なくとも2つのセグメントを含む複数のセグメントに分割されている、複数の電極、を含む、ことと、
膨張した前記バルーンの前記表面上の前記電極のうちの1つ以上が前記体腔内の組織に接触するように、前記挿入管を通って前記バルーンに流入する流体で前記体腔内の前記バルーンを膨張させることと、
前記電極と接触した前記組織をアブレーションするのに十分な振幅で、前記電極のうちの前記1つ以上の前記複数のセグメントに、並行して同時に高周波(RF)信号を印加することと、
前記電極のうちの前記1つ以上のそれぞれの前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つから、前記電極のその他のセグメントとは別個かつ独立して電気生理学的信号を取得することと、を含む、方法。
(8) 前記少なくとも2つのセグメントが、それぞれの第1の面積及び第2の面積を有する第1のセグメント及び第2のセグメントを含み、前記第1の面積が前記第2の面積の少なくとも2倍である、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記第1の面積は、前記第2の面積の少なくとも4倍である、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記第1のセグメントを通過するが前記第2のセグメントを通過しない1つ以上の灌注開口部を前記プローブに設けることと、前記灌注開口部を通って前記バルーンから流出する流体によって、前記第1のセグメントと接触した前記組織を灌注することと、を含む、実施態様8に記載の方法。
【0046】
(11) 各電極が、少なくとも1つの長手方向隔離線によって前記セグメントに分割される、実施態様7に記載の方法。
(12) 各電極が、少なくとも1つの横方向隔離線によって前記セグメントに分割される、実施態様7に記載の方法。
(13) 医療装置であって、
プローブであって、
患者の体腔への挿入用に構成された挿入管と、
長手方向軸を有する拡張可能な部材であって、前記挿入管に遠位に接続され、器官内にて前記長手方向軸を中心に拡張されるように構成されている、拡張可能な部材と、を含む、プローブと、
前記長手方向軸を中心として放射状に配設された複数の電極であって、前記複数の電極のそれぞれの電極が、それぞれの可撓性回路基板上に配設され、各電極が複数のセグメントに分割され、前記複数のセグメントが、ほぼ等しい表面積を有する少なくとも2つのより大きい電極セグメント、及び、前記2つのより大きい電極セグメントのそれぞれの、約4分の1の表面積をそれぞれが有する2つのより小さい電極セグメントを含み、前記より大きい電極セグメント及び前記より小さい電極セグメントが互いに絶縁されて別個の電極を画定する、複数の電極と、を含む、医療装置。
(14) 前記少なくとも2つのより大きい電極セグメントが、4つのより大きい電極セグメントを含む、実施態様13に記載の医療装置。
(15) 前記4つのより大きい電極セグメント及び前記2つのより小さい電極セグメントが、単一の可撓性電極基板上に配設されている、実施態様14に記載の医療装置。
【外国語明細書】