(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074140
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】疎水性物質の生産能が向上した組換え微生物及びその製造のための細胞膜エンジニアリング方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20220510BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20220510BHJP
C12P 23/00 20060101ALI20220510BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220510BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220510BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220510BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20220510BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P1/04 Z
C12P23/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N15/31
C12N15/52 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021179218
(22)【出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0144521
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】イ サンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ドンス
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンヨン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AH01
4B064CA19
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC03
4B065CA02
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疎水性物質の生産能が向上した組換え微生物及びその製造のための細胞膜エンジニアリング方法を提供する。
【解決手段】細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子のいずれか一つ以上の遺伝子が抑制されており;及び/又は細胞内膜小胞体関連遺伝子が過発現又は導入されており、次のいずれか一つ以上の特徴を有するようにエンジニアリングされた組換え微生物を提供する:
i)細胞膜面積の増加;ii)細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及びiii)細胞内膜小胞体形成の増加。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子のいずれか一つ以上の遺伝子が抑制されており;及び/又は
細胞内膜小胞体関連遺伝子が過発現又は導入されており、
次のいずれか一つ以上の特徴を有するようにエンジニアリングされた組換え微生物:
i)細胞膜面積の増加;
ii)細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及び
iii)細胞内膜小胞体形成の増加。
【請求項2】
前記細胞形態関連遺伝子は、細胞分裂遺伝子、細胞壁合成遺伝子及び細胞壁維持遺伝子からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
前記細胞形態関連遺伝子は、
rodZ(細胞骨格タンパク質)、ftsA(細胞分裂タンパク質)、ftsB(細胞分裂タンパク質)、ftsI(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、ftsL(細胞分裂タンパク質)、ftsQ(細胞分裂タンパク質)、ftsW(プロバブルペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、ftsZ(細胞分裂タンパク質)、minD(セプタムサイト決定タンパク質)、mrdA(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、mrdB(ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、mreB(細胞形態決定タンパク質)、mreC(細胞形態決定タンパク質)、zipA(細胞分裂タンパク質)、murE(UDP-N-acetylmuramoyl-L-alanyl-D-glutamate-2,6-diaminopimelate ligase)、pbpC(ペニシリン結合タンパク質1C)及びこれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項4】
前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子、細胞外膜タンパク質発現遺伝子、細胞膜代謝関連遺伝子からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項5】
前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、
rseA(Anti-sigma-E factor)、rseB(Sigma-E factor regulatory protein)、rffD(UDP-N-acetyl-D-mannosamine dehydrogenase)、rffC(dTDP-fucosamine acetyltransferase)、rffA(dTDP-4-amino-4,6-dideoxygalactose transaminase)、ompR(DNA-binding dual transcriptional regulator)、gmhB(D-glycero-beta-D-manno-heptose-1,7-bisphosphate 7-phosphatase)、lpxL(Lipid A biosynthesis lauroyltransferase)、lpxM(Lipid A biosynthesis myristoyltransferase)、ompA(Outer membrane protein)、ompC(Outer membrane protein)、rfaB(Lipopolysaccharide 1,6-galactosyltransferase)、rfaC(Lipopolysaccharide heptosyltransferase 1)、rfaD(ADP-L-glycero-D-manno-heptose-6-epimerase)、rfaE(Bifunctional protein HldE)、rfaG(Lipopolysaccharide core biosynthesis protein)、rfaI(Lipopolysaccharide 1,3-galactosyltransferase)、rfaJ(Lipopolysaccharide 1,2-glucosyltransferase)、rfaK(Lipopolysaccharide 1,2-N-acetylglucosaminetransferase)、rfaP(Lipopolysaccharide core heptose(I)kinase)、rfaQ(Lipopolysaccharide core heptosyltransferase)、rfaY(Lipopolysaccharide core heptose(II)kinase)、rfbA(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 1)、rffH(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 2)、wzxE(ECA polysaccharide chain length modulation protein)、及びpnp(Polyribonucleotide nucleotidyltransferase)、tolA(colicin import membrane protein)、tolB(Tol-Pal system periplasmic protein)、tolC(outer membrane protein)、tolR(biopolymer transport protein)、nlpI(lipoprotein)、nlpD(murein hydrolase activator)、ompF(outer membrane pore protein)、pal(peptidoglycan-associated outer membrane lipoprotein)、degS(serine endoprotease)、degP(serine endoprotease)、tatC(sec-independent protein translocase protein)、lpp(murein lipoprotein)及びこれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項6】
前記細胞内膜小胞体関連遺伝子は、
cav1(Caveolin-1)、cav2(Caveolin-2)、cav3(Caveolin-3)、EPN1(Epsin1)、CLINT1(EpsinR)、CLTC(clathrin heavy chain 1)、CLTCL1(clathrin heavy chain 2)、CLTA(clathrin light chain A)、CLTB(clathrin light chain B)、AP180、AP2、almgs(1,2-diacylglycerol 3-glucosyltransferase)、aldgs(1,2-diacylglycerol-3-glucose(1-2)-glucosyltransferase producing diglucosyldiacylglycerol)及びこれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項7】
細胞膜脂質合成酵素遺伝子の発現が向上したことをさらなる特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項8】
前記微生物は、
大腸菌、リゾビウム(Rhizobium)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、カンディダ(Candida)、エルウィニア(Erwinia)、エンテロバクター(Enterobacter)、パスツレラ(Pasteurella)、マンヘミア(Mannheimia)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、アグリゲイティバクター(Aggregatibacter)、キサントモナス(Xanthomonas)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、アゾトバクター(Azotobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ラルストニア(Ralstonia)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、ロドバクター(Rhodobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、バチルス(Bacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、シアノバクテリウム(Cyanobacterium)及びシクロバクテリウム(Cyclobacterium)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項9】
前記組換え微生物は、i)mrdB、rffD、rfaD及びrfaIからなる群から選ばれるいずれか一つ以上の遺伝子が抑制されており;及び/又は
ii)cav1遺伝子が導入又は過発現していることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項10】
前記組換え微生物は、疎水性物質生産用組換え微生物であることを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項11】
前記疎水性物質は、細胞膜に蓄積されることを特徴とする、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項12】
前記疎水性物質は、天然色素、抗酸化物質、抗生剤、化粧品添加物、抗癌剤、食品添加剤及び栄養補助剤からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項13】
前記疎水性物質は、アスタキサンチン、β-カロテン、ゼアキサンチン、プロビオラセイン、プロデオキシビオラセイン、デオキシビオラセイン及びビオラセインからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項14】
前記疎水性物質は、カロテノイド系色素であり、
前記組換え微生物は、rffD及びrfaD遺伝子の発現が抑制されたことを特徴とする、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項15】
前記疎水性物質は、ビオラセイン又はその類似体であり、
前記組換え微生物は、rfaI遺伝子の発現が抑制されたことを特徴とする、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項16】
前記組換え微生物は、cav1遺伝子が導入又は過発現していることを特徴とする、請求項15に記載の組換え微生物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組換え微生物を培養して疎水性物質を生成させる段階;及び
前記生成された疎水性物質を取得する段階を含む、疎水性物質の製造方法。
【請求項18】
前記培養は、流加式培養であることを特徴とする、請求項17に記載の疎水性物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性物質の生産能が向上した組換え微生物及びその製造のための細胞膜エンジニアリング方法に関し、より詳細には、細胞膜面積の増加;細胞外膜小胞体(outer membrane vesicle)形成及び分泌の増加;及び細胞内膜小胞体(inner membrane vesicle)形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有するように細胞膜がエンジニアリングされた疎水性物質生産用組換え微生物及びその製造のための細胞膜エンジニアリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的な環境問題、限定された資源の枯渇、環境にやさしいエネルギ源に対する需要により、再生産可能な生物体ベースの細胞工場構築への関心が増加している。かかる細胞工場は、細胞内の代謝回路(metabolic network)を目的代謝産物(バイオエネルギー、環境にやさしい化学物質、新薬製剤など)の生産に最適化して製造できるが、この技術過程には様々な分子生物学技術が要求されている。石油化学ベースで生産される様々な物質は、種々のカテゴリーに区分できるが、代表的な区分基準の一つが、親水性及び疎水性による区分である。疎水性物質の代表物質群には、疎水性色素(カロテノイド及びビオラセインなど)がある。色素は、食品添加剤、染料、化粧品、ペイントなどを含む産業で広範囲に使用され、我々の生活に深く関与している。摂取したり皮膚に塗ったりする形態の色素は、身体に直接的な影響を及ぼすが、健康への関心が高まりつつある現代社会において、問題の素地がある石油ベースの合成色素に比べて安全であるとされる天然色素への関心と需要が急増している。石油ベースで合成される色素は、繊維染色時に深刻な環境問題を招くとも知られている。自然に由来する天然色素は、色の他、抗癌、抗生、抗バクテリア、免疫抑制などの様々な薬学的特性も有する場合が多いので、日常生活でより有用に使用可能である。現在、石油化学に基づいて生産される色素が多く、天然色素の使用比重は低い。これは、健康問題及び環境問題などにつながっており、特に、子供のための製品に石油化学ベースの色素が広く活用されているという点で問題となっている。石油化学ベースの色素は、繊維染色過程でも深刻な水質汚染を引き起こしている。
【0003】
そのため、かかる天然色素を環境にやさしい方法で微生物細胞工場を通じて多量生産しようとする努力が続いてきており、代表として、細胞膜の面積を広めて、細胞膜上に蓄積される疎水性色素の生産量を増加させようとする試みが報告されており(T.Wu et al.,Membrane engineering-A novel strategy to enhance the production and accumulation of β-カロテン in Escherichia coli.Metab Eng 43,85-91(2017)。)、疎水性色素を細胞内の脂質に溶かして生産量を増加させようとする試みもあった(T.Ma et al.,Lipid engineering combined with systematic metabolic engineering of Saccharomyces cerevisiae for high-yield production of lycopene.Metab Eng 52,134-142(2019).)。
【0004】
このような背景技術下で、本発明者らは、疎水性物質生産用の微生物が有する固有の特性を、細胞膜エンジニアリングを通じて変形させることにより、疎水性物質の生産能を向上させようと鋭意努力した結果、天然色素であるカロテノイド及びビオラセイン類似体を生産する大腸菌における細胞形態関連遺伝子、細胞外膜小胞体関連遺伝子、又は細胞内膜小胞体関連遺伝子の抑制、導入又は過発現を通じて細胞膜をエンジニアリングする場合に、細胞膜面積の増加、細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加、及び内膜小胞体形成の増加により、親油性天然色素物質が蓄積され得る空間が拡張し、結果的に生産量が顕著に増加することを確認し、各要素のシナジー効果をテスト及び検証して本発明を完成するに至った。
【0005】
本背景技術の部分に記載された上記の情報は、単に本発明の背景に関する理解を向上させるためのものであり、よって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって既に知られた先行技術を形成する情報を含まなくてもよい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、細胞膜がエンジニアリングされて疎水性物質の生産能が向上した組換え微生物及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記組換え微生物を培養して疎水性物質を生産する方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、細胞膜がエンジニアリングされた組換え微生物ライブラリーを用いて特定の疎水性物質の生産能に優れた組換え微生物のスクリーニング方法を提供することにある。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、細胞膜面積の増加;細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及び、細胞内膜小胞体形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有するように細胞膜がエンジニアリングされた疎水性物質生産用組換え微生物を提供する。
【0010】
本発明は、また、疎水性物質生産用組換え微生物において細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子のいずれか一つ以上の遺伝子の発現を抑制させる、及び/又は細胞内膜小胞体関連遺伝子を疎水性物質生産用組換え微生物に導入又は過発現させる段階を含む、疎水性物質生産用組換え微生物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記細胞膜がエンジニアリングされた疎水性物質生産用組換え微生物を培養して疎水性物質を生産する段階;及び、生産された疎水性物質を取得する段階を含む疎水性物質の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、(a)疎水性物質生産用微生物に、細胞形態関連遺伝子の発現抑制;細胞外膜小胞体関連遺伝子の発現抑制;及び、細胞内膜小胞体関連遺伝子の導入又は過発現のいずれか一つ以上の手段を用いて細胞膜エンジニアリングを行って、疎水性物質生産用微生物のライブラリーを生成する段階;及び
(b)前記疎水性物質生産用微生物を培養して、特定の疎水性物質の生産能に優れた組換え微生物を選別する段階を含む、特定の疎水性物質の生産能が増加した細胞膜エンジニアリングされた組換え微生物のスクリーニング方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】細胞膜空間拡張のための細胞膜エンジニアリング戦略と、カロテノイド及びビオラセイン類似体生合成経路の概要図である。細胞形態は、合成sRNAシステムを用いた関連遺伝子発現抑制によって変形でき、細胞外膜小胞体も同一の方法で形成できる。一方、細胞内膜小胞体は、cav1などの外来遺伝子発現によって形成できる。曲がった矢印とT形状はそれぞれ、プロモーターと転写終結子を意味し、実線と点線はそれぞれ、単一と多重反応を表す。略語は次の通りである:G3P,glyceraldehyde3-phosphate;E4P,erythrose4-phosphate;PEP,phosphenolpyruvate;PYR,pyruvate;DXP,1-deoxy-D-xylulose 5-phosphate;SKM,shikimate;FPP,farnesyl diphosphate;GGPP,geranylgeranyl pyrophosphate;TRP,tryptophan;IPA,indole pyruvate;Sp.,spontaneous.
【0014】
【
図2】カロテノイド生産菌株の構築、及び構築された菌株の培養結果を示す図である。(A)は、pLYC、pBTC、pZEA、pATXライブラリーのプラスミド概要図である。曲がった矢印、半球、T形状はそれぞれ、プロモーター、5’UTR、転写終結子を意味する。(B)は、LYC菌株の初期スクリーニング結果を示す。目につく赤いコロニーを選別後にテストチューブで培養し、(C)優秀な菌株をさらにフラスコで培養した。(D)~(F)はそれぞれ、BTC、ZEA、ATX菌株のテストチューブ培養結果に該当する。(G)は、(F)における優秀菌株50個のサンプルに対するHPLC分析結果である。各サンプルに対してアスタキサンチン(astaxanthin)に該当するピークの面積値が、y軸に示されている。(H)、(I)、(J)はそれぞれ、テストチューブ培養から選択されたBTC、ZEA、ATX菌株のフラスコ培養結果を示す。誤差棒は、平均±標準偏差(n=3)を意味し、**P<0.01、***P<0.001、NS(not significant)P≧0.05は、両側スチューデントのt検定(two-tailed Student’s t-test)によって決定された。
【0015】
【
図3】ビオラセイン類似体生産菌株の構築、及び構築された菌株の培養結果を示す図である。(A)は、ビオラセイン類似体の生産のために構築したプラスミド概要図である。(B)は、グルコース及びグリセロールを単一炭素源として用いた時のビオラセイン生産量の比較結果であり、(C)は、グリセロールを用いたPDVIO及びPVIO菌株のプロデオキシビオラセイン及びプロビオラセイン生産結果を、(D)は、グリセロールを用いたDVIO及びVIO菌株のデオキシビオラセイン及びビオラセイン生産結果を示す。下は、大腸菌菌株から生産された(E)プロデオキシビオラセイン及び(F)プロビオラセインのLC-MSクロマトグラム及びスペクトルと、(G)波長帯範囲350~750nmのカロテノイド及びビオラセイン類似体の吸収スペクトルである。(G)グラフにおけるそれぞれのデータポイントは、3個の個別サンプルから得た値の平均値であり、これらの点を繋いで曲線グラフを示した。
【0016】
【
図4】細胞形態変形及び細胞内膜小胞体形成を用いたカロテノイド及びビオラセイン類似体の増産結果を示す図である。(A)は、大腸菌の細胞形態変形を用いた細胞膜空間拡張の機序を示し、細胞形態変形関連遺伝子の発現を抑制するsRNAの導入を用いた(B)β-カロテンと(C)デオキシビオラセインの生産結果が示されている。(D)は、大腸菌における細胞内膜小胞体形成の機序を示し、それによる(E)β-カロテンと(F)デオキシビオラセインの生産結果が示されている。下は、(G)β-カロテン生産対照群であるBTC1菌株、(H)cav1を発現させるβ-カロテン生産菌株、(I)デオキシビオラセイン生産対照群であるDVIO菌株、(J)cav1を発現させるデオキシビオラセイン生産菌株のTEM(上パネル)とSEM(下パネル)イメージである。生産グラフの誤差棒は、平均±標準偏差(n=3)を意味し、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、NS(not significant)P≧0.05は、両側スチューデントのt検定によって決定された。
【0017】
【
図5】細胞形態を変形したBTC1及びDVIO菌株の顕微鏡写真である。(A)は、BTC1菌株と、細胞形態変形に関連した遺伝子発現を抑制するsRNAが導入されたBTC1菌株の顕微鏡写真であり、(B)は、DVIO菌株と、細胞形態変形に関連した遺伝子発現を抑制するsRNAが導入されたDVIO菌株の顕微鏡写真である。細胞形態変形関連遺伝子発現を抑制するsRNAが導入された菌株から、対照群よりも大きいか短い細胞形態が観察された。各顕微鏡写真ごとに、相応する発現抑制目標遺伝子が表記されている。
【0018】
【
図6】細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加を用いたカロテノイド及びビオラセイン類似体増産結果を示す図である。(A)は、大腸菌における細胞外膜小胞体形成の機序を示し、それによる(B)β-カロテン及び(C)デオキシビオラセインの生産結果が示されている。下は、(D)rffD及びrfaD発現抑制sRNAが導入されたBTC1菌株及び(E)rfaI発現抑制sRNAが導入されたDVIO菌株のTEM(上パネル)及びSEM(下パネル)イメージと、(F)rffD及びrfaD発現抑制sRNAが導入されたBTC1菌株で形成された細胞外膜小胞体(上パネル)とrfaI発現抑制sRNAが導入されたDVIO菌株で形成された細胞外膜小胞体(下パネル)を精製して分析したSEMイメージである。(G)は、細胞内膜及び外膜小胞体を同時に形成した時のβ-カロテン生産結果であり、(H)は、細胞形態の変形と細胞内膜及び外膜小胞体の生産とを組み合わせて適用した時のデオキシビオラセイン生産結果である。その下は、(I)rffD及びrfaD発現抑制sRNAとcav1-plsBCが導入されたBTC1菌株と(J)rfaI発現抑制sRNA及びcav1が導入されたDVIO菌株のTEM(上パネル)とSEM(下パネル)イメージである。
【0019】
【
図7】細胞外膜小胞体によって培地に分泌されたカロテノイド及びビオラセイン類似体の定量結果を示す図である。(A)は、細胞外膜小胞体発現のためにsRNAが導入されたBTC1菌株培養液の上澄液から抽出したβ-カロテンを、(B)は、精製した細胞外膜小胞体から抽出したβ-カロテンを示す。ここで、OMVは、rffD及びrfaDの発現を抑制するsRNAが導入されたBTC1菌株を、IMVは、cav1及びplsBCが導入されたBTC1菌株を意味する。(C)は、細胞外膜小胞体発現のためにsRNAが導入されたDVIO菌株培養液の上澄液から抽出したデオキシビオラセインを、(D)は、精製した細胞外膜小胞体から抽出したデオキシビオラセインを示す。ここで、OMVは、rfaI発現を抑制するsRNAが導入されたDVIO菌株を、IMVは、cav1が導入されたDVIO菌株を意味する。(E)は、rfaI発現抑制sRNAが導入されたDVIOのフラスコ培養時に、水洗浄以降に残っているデオキシビオラセイン結晶体と、細胞及び細胞外膜小胞体からなる集合体の顕微鏡写真である。下は、細胞外膜小胞体を発現させる(F)β-カロテンと(G)デオキシビオラセイン生産菌株にplsBC遺伝子を過発現させたフラスコ培養結果である。次に、細胞外膜又は内膜小胞体を発現した時に、(H)ゼアキサンチン、(I)アスタキサンチン、(J)プロデオキシビオラセイン(K)プロビオラセイン、(L)ビオラセインの合計生産量(Totと表記)と分泌生産量(Secと表記)がそれぞれ、相応するグラフに示されている。誤差棒は、平均±標準偏差(n=3)を意味し、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、NS(not significant)P≧0.05は、両側スチューデントのt検定によって決定された。
【0020】
【
図8】本発明の組換え微生物を使用して流加式発酵を行う場合に、時間に従う各疎水性物質の生産量を示す図である:(a)アスタキサンチン、(b)β-カロテン、(c)ゼアキサンチン、(d)プロビオラセイン、(e)プロデオキシビオラセイン、(f)ビオラセイン、(g)デオキシビオラセイン。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特に断らない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使われるものである。
【0022】
特に断りのない限り、核酸は、左側から右側に5’→配向で、アミノ酸は、左側から右側にN末端→C末端配向で記録される。明細書中に列挙された数値範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内のそれぞれの整数又は任意の非整数分画を含む。
【0023】
現在まで、微生物の代謝回路を操作して色を帯びる天然物質を増産しようとする試みが多くあったが、細胞内に蓄積される物質の特性のため、それは、ある程度の限界点をもつ。本発明では、細胞膜を多方面でエンジニアリングし、細胞膜の面積を広めたり、細胞内に構造体を作って細胞膜を拡張させたり、或いは該当の物質を小胞体に閉じ込めて細胞外に噴出させたりすることにより、疎水性色素の生産量を画期的に増産させた。
【0024】
本発明の一実施例では、天然色素であるカロテノイド及びビオラセイン類似体(analogs)を大腸菌で生産した。カロテノイド及びビオラセイン類似体は親油性物質であって、大腸菌内で生産される時に細胞質に積もったり細胞外に形成されたりすることなく細胞膜に蓄積される。これに着眼し、細胞膜面積を増やして細胞内外に小包体が形成されるようにし、親油性天然色素物質が蓄積され得るような空間を拡張させた。まず、3種のカロテノイドと4種のビオラセイン類似体をそれぞれ生産する大腸菌菌株を構築した後に、細胞膜面積の増加及び小胞体形成の有無による生産量変化を観察した。また、全ての物質の生産において、本発明の各要素のシナジー効果をテスト及び検証した。本研究で用いた戦略は、天然色素の他にも、抗酸化物質、抗生剤、化粧品添加物、抗癌剤、食品添加剤及び栄養補助剤のような様々な個別の親油性物質を大腸菌で生産する研究に有用に適用され得る。
【0025】
本発明の一実施例では、産業上に最も多用される疎水性物質の一つである天然色素、カロテノイド(Carotenoids)及びビオラセイン(Violacein)生産菌株を構築し、疎水性物質生産能の増大のために、前記疎水性物質生産菌株がi)細胞膜面積の増加、ii)細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加、又はiii)細胞内膜小胞体形成の増加の特性を示すように細胞膜エンジニアリングを行った。生産菌株が上記の特性を有するように細胞膜をエンジニアリングするために、細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子をスクリーニングし、該当の前記細胞形態関連遺伝子、又は細胞外膜小胞体関連遺伝子をターゲッティングするsRNAを処理して当該遺伝子の発現を抑制する場合に又は細胞内膜小胞体関連遺伝子を過発現させる場合に、生産菌株の天然色素の生産能が顕著に増加することを確認し、前記遺伝子の発現抑制又は過発現を組み合わせる場合に、シナジー効果を示すことを確認した。
【0026】
本発明の実施例では、大腸菌の細胞形態関連遺伝子の抑制を用いた細胞膜面積の増加、細胞外膜小胞体関連遺伝子の抑制を用いた細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加、及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の過発現を用いた内膜小胞体形成の増加が、細胞膜に蓄積される代表的な疎水性物質である天然色素の顕著な生産能の向上につながることを確認した。一般に、疎水性物質は、疎水性を帯びる細胞膜又は小胞体の内膜及び外膜に蓄積されるので、天然色素の他、微生物を通じて生産され得る様々な疎水性物質においても、天然色素と同等レベルの生産能向上を示すことができることは明らかに理解されるであろう。
【0027】
したがって、本発明は、細胞膜面積の増加;細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及び、細胞内膜小胞体形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有するように細胞膜エンジニアリングされた疎水性物質生産用組換え微生物に関する。
【0028】
本発明の用語“細胞膜エンジニアリング”とは、従来細胞が有する細胞膜の特性を、遺伝子組換え技術などを用いて既存の特性を強化又は減少させるか、新しい特性を付与する技術を意味する。本発明において、細胞膜エンジニアリングは、遺伝子の抑制、過発現及び/又は導入を用いて行われており、細胞膜面積の増加、及び/又は細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加、及び内膜小胞体形成の増加の特性を付与しようとした。
【0029】
本発明の一実施例において、上記の特徴は、疎水性物質生産用組換え微生物に遺伝子発現の抑制、導入又は過発現を用いた細胞膜エンジニアリングを行って与えられた。
【0030】
したがって、本発明は、一観点において、細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子のいずれか一つ以上の遺伝子が抑制され;及び/又は
細胞内膜小胞体関連遺伝子が過発現又は導入されたことを特徴とする疎水性物質生産用組換え微生物に関する。
【0031】
本発明において、前記組換え微生物は、細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子のいずれか一つ以上の遺伝子が抑制されており;及び/又は
細胞内膜小胞体関連遺伝子が過発現又は導入されており、
次のいずれか一つ以上の特徴を有することを特徴とし得る:
i)細胞膜面積の増加;
ii)細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加;及び
iii)細胞内膜小胞体形成の増加。
【0032】
本発明において、前記疎水性物質は、細胞膜に蓄積されることを特徴とし得る。例えば、前記疎水性物質は、天然色素、抗酸化物質、抗生剤、化粧品添加物、抗癌剤、食品添加剤及び栄養補助剤などであり得るが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明において、前記天然色素とは、人工的に合成せずに自然から得られる色素又はその類似体のことを意味し、例えば、カロテノイド、ビオラセインなどがあり、より具体的な例にリコペン、β-カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、プロビオラセイン(PVIO)、プロデオキシビオラセイン(PDVIO)、デオキシビオラセイン(DVIO)、ビオラセイン(VIO)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0034】
前記抗酸化物質は、例えば、ケルセチン、ジヒドロケルセチン、ケンペロール、ジヒドロケンペロール、アスタキサンチン、レスベラトロール、トコフェロール、トコトリエノール、コエンザイムQ10、アピゲニンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0035】
前記化粧品添加物は、例えば、アロエシン(aloesin)、ビタミンA、セラミド、パントテネート(pantothenate)、パンテノール、ルペオール、スクアレン、ユーカリプトール、バレンセンなどがあるが、これに制限されるものではない。
前記食品添加剤は、例えば、カルミン酸、β-カロテン、リコペンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0036】
前記栄養補助剤は、例えば、シリマリン、ルテイン、ビタミン、コエンザイム-Q10、レスベラトロール、オメガ-3多価不飽和脂肪酸、ユビキノン、グルコサミン、ルテオリンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明において、好ましくは、前記疎水性物質は、アスタキサンチン、β-カロテン、ゼアキサンチン、プロビオラセイン、プロデオキシビオラセイン、デオキシビオラセイン及びビオラセインからなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0038】
本発明において、“細胞形態関連遺伝子”とは、細胞の形態を維持するのに関与する遺伝子を意味し、本発明の一実施例では、フィラメント形の組換え細胞の形態がより不規則的に又は球形になるようにして、疎水性物質が蓄積される細胞膜の面積を増加させるために、前記細胞形態関連遺伝子の発現を抑制した。本発明において、前記細胞形態関連遺伝子は、発現抑制時に細胞の形態が変形されて細胞の面積が増加するいかなる遺伝子も含まれてよく、使用される組換え微生物に応じて通常の技術者によって容易に選択されてよく、好ましくは、前記組換え微生物が先天的に含む細胞形態を形成、維持又は変形するのに必要な遺伝子の中から選択されることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明において、前記細胞形態関連遺伝子は、例えば、細胞分裂に関与する遺伝子、又は細胞骨格/細胞壁の合成又は維持に関与する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明において、細胞分裂に関与する遺伝子は、例えば、細胞分裂タンパク質(cell division protein、例えば、Ftsタンパク質など)と細胞分裂抑制タンパク質(cell division inhibitor、例えば、MinC、MinDなど)などからなる原核生物由来の細胞分裂に関与する酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において、細胞骨格/細胞壁の合成又は維持に関与する遺伝子は、例えば、ペニシリン結合タンパク質(penicillin-binding protein、PBP)、細胞形態決定タンパク質(MreB、MreCなど)、ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ(MrdA、PbpAなど)、ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ(MrdBなど)、細胞骨格タンパク質(RodZなど)などからなる原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明の一実施例において、天然色素を発現させるように組み替えられた大腸菌を製造した後、スクリーニングされた前記細胞形態関連遺伝子16種の発現を抑制して、細胞膜エンジニアリングを行った(表4)。例えば、前記組換え微生物が大腸菌である場合に、前記細胞形態関連遺伝子は、rodZ(細胞骨格タンパク質)、ftsA(細胞分裂タンパク質)、ftsB(細胞分裂タンパク質)、ftsI(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、ftsL(細胞分裂タンパク質)、ftsQ(細胞分裂タンパク質)、ftsW(プロバブルペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、ftsZ(細胞分裂タンパク質)、minD(セプタムサイト(Septum site)決定タンパク質)、mrdA(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、mrdB(ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、mreB(細胞形態決定タンパク質)、mreC(細胞形態決定タンパク質)、zipA(細胞分裂タンパク質)、murE(UDP-N-acetylmuramoyl-L-alanyl-D-glutamate--2,6-diaminopimelate ligase)、pbpC(ペニシリン結合タンパク質1C)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0043】
より好ましくは、例えば、デオキシビオラセインを生産する組換え大腸菌は、前記細胞形態関連遺伝子であるmrdB遺伝子の発現を抑制することを特徴とし得る。
【0044】
本発明において、細胞形態関連遺伝子は、使用される微生物、生産しようとする疎水性物質に応じて、本発明の実施例で抑制された大腸菌の細胞形態関連遺伝子に相応する遺伝子又は実質的に同じ機能を果たす遺伝子に適宜変更又は選択されてよい。
【0045】
本発明において、“細胞外膜小胞体関連遺伝子”とは、細胞外膜小胞体の形成又は分泌に関与する遺伝子を意味する。本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、微生物の内因性遺伝子であることを特徴とし得る。本発明の一実施例では、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子である細胞のペプチドグリカン層又は細胞外膜と内膜の連結を維持させる役割を担う遺伝子の発現を抑制し、細胞外膜小胞体を通じて細胞内に蓄積される疎水性物質を噴出させた結果、疎水性物質の生産能が顕著に向上することを確認した。本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、抑制時に、細胞の外膜小胞体の形成及び分泌を向上させ得る如何なる遺伝子も含まれてよく、使用される組換え微生物に応じて、一般的に容易に選択されてよく、好ましくは、細胞のペプチドグリカン層又は細胞外膜と内膜との連結保持に関与する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子、細胞外膜タンパク質発現遺伝子、細胞膜代謝回路関連遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明において、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子は、例えば、 リポタンパク質(lipoprotein,Lpp)、Tol-Palシステムタンパク質(TolB、Pal、TolA、TolRなど)、リポ多糖コア生合成タンパク質(lipopolysaccharide core biosynthesis protein)、リポ多糖コアヘプトシルトランスフェラーゼ、脂質A生合成ラウロイルトランスフェラーゼなどの細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持に寄与する原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明において、細胞外膜タンパク質発現遺伝子は、例えば、OmpA(outer-membrane protein A)、OmpC(outer-membrane protein C)、OmpF(outer-membrane protein F)、OprF(OmpAホモログ)、エンベロープタンパク質(RagA、RagBなど)などの細胞外膜タンパク質発現に寄与する原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明において、細胞膜代謝回路関連遺伝子は、例えば、キノロン信号(PQS)、抗シグマE因子、シグマ因子H(AlgU)、シャペロンプロテアーゼ(DegP)などの原核生物由来細胞膜代謝回路酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明の一実施例において、天然色素を発現させるように組み替えられた大腸菌を製造した後に、スクリーニングされた前記細胞外膜小胞体関連遺伝子26種の発現を抑制して細胞膜エンジニアリングを行った(表7)。例えば、前記組換え微生物が大腸菌である場合に、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、rseA(Anti-sigma-E factor)、rseB(Sigma-E factor regulatory protein)、rffD(UDP-N-acetyl-D-mannosamine dehydrogenase)、rffC(dTDP-fucosamine acetyltransferase)、rffA(dTDP-4-amino-4,6-dideoxygalactose transaminase)、ompR(DNA-binding dual transcriptional regulator)、gmhB(D-glycero-beta-D-manno-heptose-1,7-bisphosphate 7-phosphatase)、lpxL(Lipid A biosynthesis lauroyltransferase)、lpxM(Lipid A biosynthesis myristoyltransferase)、ompA(Outer membrane protein)、ompC(Outer membrane protein)、rfaB(Lipopolysaccharide 1,6-galactosyltransferase)、rfaC(Lipopolysaccharide heptosyltransferase 1)、rfaD(ADP-L-glycero-D-manno-heptose-6-epimerase)、rfaE(Bifunctional protein HldE)、rfaG(Lipopolysaccharide core biosynthesis protein)、rfaI(Lipopolysaccharide 1,3-galactosyltransferase)、rfaJ(Lipopolysaccharide 1,2-glucosyltransferase)、rfaK(Lipopolysaccharide 1,2-N-acetylglucosaminetransferase)、rfaP(Lipopolysaccharide core heptose(I)kinase)、rfaQ(Lipopolysaccharide core heptosyltransferase)、rfaY(Lipopolysaccharide core heptose(II)kinase)、rfbA(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 1)、rffH(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 2)、wzxE(ECA polysaccharide chain length modulation protein)、及びpnp(Polyribonucleotide nucleotidyltransferase)、tolA(colicin import membrane protein)、tolB(Tol-Pal system periplasmic protein)、tolC(outer membrane protein)、tolR(biopolymer transport protein)、nlpI(lipoprotein)、nlpD(murein hydrolase activator)、ompF(outer membrane pore protein)、pal(peptidoglycan-associated outer membrane lipoprotein)、degS(serine endoprotease)、degP(serine endoprotease)、tatC(sec-independent protein translocase protein)、lpp(murein lipoprotein)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0051】
例えば、カロテノイド色素であるアスタキサンチン、β-カロテン、又はゼアキサンチンを生産する組換え大腸菌は、rfaD、rffD及びrfaQから選択されるいずれか一つ以上の遺伝子の発現を抑制、より好ましくは、rffD及びrfaD遺伝子の発現を抑制することを特徴とし得る。
【0052】
他の例として、ビオラセイン、プロデオキシビオラセイン、プロビオラセイン及びデオキシビオラセインなどのようなビオラセイン及びその類似体を生産する組換え大腸菌は、rfaI又はrfaQ遺伝子の発現を抑制、より好ましくは、rfaI遺伝子の発現を抑制することを特徴とし得る。
【0053】
本発明において、細胞外膜小胞体関連遺伝子は、使用される微生物、生産しようとする疎水性物質に応じて、本発明の実施例で抑制された細胞外膜小胞体関連遺伝子に相応する遺伝子又は実質的に同一の機能を果たす遺伝子に適宜変更又は選択されてよい。
【0054】
本発明において、“細胞内膜小胞体関連遺伝子”とは、細胞内膜小胞体の形成に関与する遺伝子を意味し、本発明の一実施例では、内膜小胞体システムが存在しない原核生物である大腸菌を使用しているので、真核細胞由来の内膜小胞体システムのうち、ヒト由来カベオラ(caveola)遺伝子を導入して、内膜細胞が形成され得るように細胞膜エンジニアリングを行った。本発明において、細胞内膜小胞体関連遺伝子は、細胞内膜小胞体の形成を向上させる遺伝子であれば制限なく選択されて使用されてよい。本発明において、前記疎水性物質生産用組換え微生物が、細胞内膜小胞体システムのない微生物である場合に、細胞内膜を形成する別の真核又は原核生物由来内膜小胞体システム遺伝子が導入されることを特徴とし得る。本発明において、前記疎水性物質生産用組換え細胞が先天的に細胞内膜小胞体システムを含む場合に、前記細胞自体の細胞内膜小胞体遺伝子が過発現するか、これに併せて別の真核又は原核生物由来内膜小胞体システム遺伝子が導入されたことを特徴とし得る。
【0055】
本発明において、前記細胞内膜小胞体関連遺伝子は、真核細胞由来のカベオラシステムの遺伝子又はクラスリン-エプシン(clathrin-epsin)システムの遺伝子でよく、又は原核細胞由来のmgs-dgsシステムなどでよく、より具体的な例としては、cav1(Caveolin-1)、cav2(Caveolin-2)、cav3(Caveolin-3)、EPN1(Epsin1)、CLINT1(EpsinR)、CLTC(clathrin heavy chain 1)、CLTCL1(clathrin heavy chain 2)、CLTA(clathrin light chain A)、CLTB(clathrin light chain B)、AP180、AP2、almgs(1,2-diacylglycerol3-glucosyltransferase)、aldgs(1,2-diacylglycerol-3-glucose(1-2)-glucosyltransferase producing diglucosyldiacylglycerol)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0056】
本発明において、アスタキサンチン、β-カロテン及びゼアキサンチンのようにカロテノイド色素を生産する組換え大腸菌では、cav1遺伝子を導入又は過発現することを特徴とし得る。
【0057】
本発明において、ビオラセイン又はその類似体(プロビオラセイン、プロデオキシビオラセイン、デオキシビオラセイン)を生産する組換え大腸菌では、cav1遺伝子を導入又は過発現させることを特徴とし得る。
【0058】
本発明において、細胞内膜小胞体関連遺伝子は、使用される微生物、生産しようとする疎水性物質に応じて適宜に変更又は選択されてよい。
【0059】
本発明の一実施例において、細胞形態関連遺伝子の発現抑制、細胞外膜小胞体関連遺伝子の発現抑制、及び細胞内膜遺伝子の導入を組み合わせる場合には、シナジー効果を示し、より顕著な生産量増加を示すことを確認した。
【0060】
本発明において、前記細胞膜面積の増加;細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及び細胞内膜小胞体形成の増加の特性は、組換え微生物の種類、生産しようとする疎水性物質の種類、量、発現条件などに基づいて組み合わせられて細胞膜エンジニアリングされることを特徴とし得る。
【0061】
本発明において、細胞形態関連遺伝子の発現抑制、細胞外膜小胞体関連遺伝子の発現抑制、及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の導入又は過発現は、組換え微生物の種類、生産しようとする疎水性物質の種類、量、発現条件などに基づいて組み合わせられてよく、それぞれ関連遺伝子に属する遺伝子同士間に組み合わせられてよい。
【0062】
本発明において、前記組換え微生物は、
i)mrdB、rffD、rfaD及びrfaIからなる群から選ばれるいずれか一つ以上の遺伝子が抑制又はノックダウンされており;及び/又は
ii)cav1遺伝子が導入又は過発現していることを特徴とし得る。
【0063】
本発明の一実施例で確認したそれぞれの疎水性物質生産用組換え微生物において最も優れた生産量を示した遺伝子の抑制及び導入/過発現の組合せは、次の通りである:
アスタキサンチン:rffD及びrfaDノックダウン(OMV)
β-カロテン:rffD及びrfaDノックダウン(OMV)
ゼアキサンチン:rffD及びrfaDノックダウン(OMV)
プロビオラセイン:rfaIノックダウン及びcav1過発現(OMV及びIMV)
プロデオキシビオラセイン:rfaIノックダウン(OMV)
ビオラセイン:rfaIノックダウン及びcav1過発現(OMV及びIMV)
デオキシビオラセイン:rfaIノックダウン及びcav1過発現(OMV及びIMV)。
【0064】
したがって、本発明において、カロテノイド系色素群を生産する組換え微生物は、rfaD及びrffDを同時に発現抑制することが最も好ましいが、これに制限されるものではない。
【0065】
本発明において、ビオラセイン及びその類似体を生産する組換え微生物は、rfaIの発現を抑制し、同時にcav1遺伝子を導入又は過発現を誘導することが最も好ましいが、これに制限されるものではない。
【0066】
本発明の疎水性物質生産用組換え菌株は、細胞膜面積の増加;細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及び細胞内膜小胞体形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有することを特徴とし得る。
【0067】
本発明の一実施例では、前記細胞膜面積の増加、細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加、及び細胞内膜小胞体形成の増加によって、脂質の供給を円滑にさせるために、脂質合成酵素遺伝子であるplsBC遺伝子の発現を増幅させたが、このとき、特にカロテノイド色素の生産能向上に顕著な上昇が確認された。
【0068】
本発明において、前記疎水性物質生産用組換え微生物は、脂質合成酵素遺伝子を過発現させることを更なる特徴とし得る。
【0069】
例えば、前記微生物が大腸菌である場合に、脂質合成酵素遺伝子の過発現は、plsBC遺伝子の過発現であることを特徴とし得る。
【0070】
本発明で使われる用語“遺伝子発現抑制”とは、抑制対象遺伝子の転写又は翻訳を抑制又は調節してコードするタンパク質の発現を減少又は遮断するか、タンパク質が正しく機能しないようにし、当該遺伝子の機能を失わせることを意味する。本発明において、前記抑制は、ノックダウン(knockdown)と同じ意味で使われてもよい。本発明において、細胞膜面積の増加のために細胞形態関連遺伝子の発現が抑制されてよく、細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加のために、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子、細胞外膜タンパク質発現遺伝子、細胞膜代謝回路関連遺伝子の発現が抑制されてよい。本発明において、前記遺伝子発現の抑制は、従来公知の様々な方法によって行われてよい。例えば、制限酵素、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casなどを用いた遺伝子編集;アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide,Nature Reviews.Drug Discovery.11(2):125-40.);リボザイム(Ribozyme,Human Molecular Genetics.7(10):1649-1653);siRNA、miRNA、shRNAなどを用いたRNA干渉技術、合成調節sRNA(Na et al.,Nat Biotechnol 2013,31(2):170-174)などによって遺伝子の発現が抑制されてよいが、これに制限されるものではない。
【0071】
本発明で使われる用語、“遺伝子導入”は、目的とする遺伝子又はこれを含むベクターを標的細胞又は微生物に新しく流入させることを意味する。本発明の一実施例において、前記遺伝子導入は、天然色素生産菌株を構築するために、プラスミドベクターを用いて天然色素コーディング遺伝子を大腸菌に導入しており、内膜小胞体形成の増進のために、細胞内膜小胞体関連遺伝子をプラスミドベクターを用いて組換え微生物に導入させている。本発明において、前記遺伝子は、従来公知の様々な方法によって組換え微生物に導入されてよい。本発明において、前記導入は、ベクターを用いて微生物に導入されることが好ましいが、これに制限されるものではない。本発明において、遺伝子が宿主細胞のゲノムに直接導入され、染色体上因子として存在し得る。本発明の属する技術分野における当業者にとって、前記遺伝子を宿主細胞のゲノム染色体に挿入しても、組換えベクターを宿主細胞に導入した場合と同じ効果を有することは明らかであろう。
【0072】
本発明の用語、遺伝子の“過発現”は、遺伝子の発現が非変形微生物と比較して増加し、非変形微生物と比較してリボ核酸、タンパク質又は酵素の細胞内濃度の増加につながることを意味する。通常の技術者は、遺伝子の過発現のために、従来公知の様々な方法を制限がなく選択して行うことができる。
【0073】
過発現のための従来公知の技術は、例えば、
- 微生物において遺伝子のコピー数を増加させる;遺伝子は染色体に又は染色体外にコードされる。遺伝子が染色体上に位置する場合に、遺伝子の複数のコピーは、関連技術分野の専門家に公知された組換え方法(遺伝子代替を含む)によって染色体上に導入されてよい。遺伝子が染色体外に位置する場合に、それは細胞において複製起点及びそれによってコピー数が異なる個別の類型のプラスミドによって保有されてよい。それらのプラスミドは、プラスミドの性質によって、1~5コピー、又は約20コピー、又は最大で500コピーで微生物に存在する:緻密複製を有する低コピー数プラスミド(pSC101、RK2)、低コピー数プラスミド(pACYC、pRSF1010)又は高コピー数プラスミド(pSK bluescript II)。
- 遺伝子の高いレベルの発現につながるプロモーターを使用する;例えば、プロモーターPtrc、Ptac、Plac、又はラムダプロモーターPR及びPLが幅広く使用されてよいが、これに制限されるものではない。これらのプロモーターは、特定の化合物によって又は温度又は光のような特定の外部条件によって“誘導性”であり得る。これらのプロモーターは、相同又は異種であってよい。
- 遺伝子の特異的又は非特異的な転写リプレッサーの活性又は発現を減衰させる;
- 相応するメッセンジャーRNAを安定化させる要素(Carrier and Keasling,1999)又はタンパク質を安定化させる要素(例えば、GSTタグ、ジーイーヘルスケア(GE Healthcare))を使用する;
- 5’末端非解釈部位の(5’ untranslated region;5’UTR)配列を変更させる、などがあるが、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明において用語“ベクター(vector)”は、適宜の宿主内で遺伝子を発現させることができる適切な発現調節配列に作動可能に連結された核酸配列を含有する核酸製造物を意味する。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は簡単に潜在的ゲノム挿入物であってよい。適当な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムに関係なく複製し機能できるか、又は、一部の場合に、ゲノム自体に統合され得る。現在、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられる形態であるので、本発明の明細書において“プラスミド(plasmid)”及び“ベクター(vector)”は、時には同じ意味で使われる。ただし、本発明は、当業界に知られた又は知られるようになるのと同等な機能を有するベクターの他の形態を含む。大腸菌において使用されるタンパク質発現ベクターとしては、Novagen(米国)社のpET系列、pCDF系列、pRSF系列、pACYC系列及びpCOLA系列;Invitrogen(米国)のpBAD系列;Takara(日本)のpHCEやpCOLD;ジェノフォーカス(大韓民国)のpACE系列;カイスト(大韓民国)のpTac15K、pTrc99A、pTacCDFS、pTrcCDFS系列;広い菌株範囲で利用可能なpBBR1MCS系列などを使用することができる。枯草菌ではゲノムの特定部分に目的遺伝子を挿入してタンパク質発現を具現するか、MoBiTech(ドイツ)のpHT系列のベクター、などを使用することができる。かびや酵母においてもゲノム挿入や自家複製ベクターを用いてタンパク質発現が可能である。グロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)やアグロバクテリウムリゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)などのT-DNAシステムを用いて植物用タンパク質発現ベクターを使用することができる。哺乳動物細胞培養物発現のための典型的な発現ベクターは、例えば、pRK5(EP 307,247号)、pSV16B(WO91/08291号)及びpVL1392(Pharmingen)に基づく。
【0075】
“発現調節配列(expression control sequence)”という表現は、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコーディング配列の発現に必須なDNA配列を意味する。このような調節配列は、転写を実施するためのプロモーター、当該転写を調節するための任意のオペレーター配列、適合なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含む。例えば、原核生物に適合な調節配列は、プロモーター、任意にオペレーター配列及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーがそれに含まれる。プラスミドにおいて遺伝子の発現量に最も影響を及ぼす因子はプロモーターである。高発現用のプロモーターとしてSRαプロモーターとサイトメガロウイルス(cytomegalovirus)由来プロモーターなどが好適に使用される。
【0076】
本発明のDNA配列を発現させるために、非常に様々な発現調節配列のいずれもベクターに使用可能である。有用な発現調節配列の例には、前述したプロモーターの他にも、例えば、SV40又はアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TAC又はTRCシステム、T3及びT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコードタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセレートキナーゼ又は他のグリコール分解酵素に対するプロモーター、前記ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母アルファ-交配システムのプロモーター及び原核細胞又は真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子の発現を調節するものと知られた構成と誘導のその他の配列及びそれらの種々の組合せが含まれる。T7RNAポリメラーゼプロモーターΦは、E.coliにおいてタンパク質を発現させるのに有用に用いられ得る。
【0077】
勿論、あらゆるベクターと発現調節配列が本発明のDNA配列を発現させるのにいずれも同等に機能を発揮するわけではないということは理解すべきである。同様に、あらゆる宿主が同一発現システムに対して同一に機能を発揮するわけではない。しかし、当業者であれば、過度な実験的負担無しで、本発明の範囲を逸脱しないままで種々のベクター、発現調節配列及び宿主の中から適宜選択することができる。例えば、ベクターを選択するには宿主を考慮しなければならないが、これは、ベクターがその中で複製される必要があるためである。ベクターの複製数、複製数を調節できる能力及び当該ベクターによってコードされる他のタンパク質、例えば、抗生剤マーカーの発現も考慮しなければならない。発現調節配列を選定するにあっても、種々の因子を考慮しなければならない。例えば、配列の相対的強度、調節可能性及び本発明のDNA配列との互換性など、特に、可能性のある二次構造と関連して考慮しなければならない。単細胞宿主は、選定れたベクター、本発明のDNA配列によってコードされる産物の毒性、分泌特性、タンパク質を正確にフォールディングさせ得る能力、培養及び発酵要件、本発明DNA配列によってコードされる産物を宿主から精製することの容易性などの因子を考慮して選定される必要がある。これらの変数の範囲内で、当業者は、本発明のDNA配列を発酵又は大規模動物培養で発現させ得る各種ベクター/発現調節配列/宿主組合せを選定することができる。発現クローニングによってcDNAをクローニングしようとする時のスクリーニング法として、バインディング法(binding法)、パニング法(panning法)、フィルムエマルジョン法(film emulsion法)などが適用されてよい。
【0078】
前記ベクターにおいて、核酸は他の核酸配列と機能的関係で配置される時に“作動可能に連結(operably linked)”される。これは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)は、調節配列に結合する時に遺伝子発現を可能にする方式で連結された遺伝子及び調節配列であってよい。例えば、前配列(pre-sequence)又は分泌リーダー(leader)に対するDNAは、ポリペプチドの分泌に参加する前タンパク質として発現する場合に、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結され;プロモーター又はエンハンサーは配列の転写に影響をおよぼす場合にコーディング配列に作動可能に連結され;又は、リボソーム結合部位は配列の転写に影響を及ぼす場合にコーディング配列に作動可能に連結され;又は、リボソーム結合部位は翻訳を容易にするように配置される場合にコーディング配列に作動可能に連結される。一般に、“作動可能に連結された”とは、連結されたDNA配列が接触し、また、分泌リーダーの場合は接触し、リーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサー(enhancer)は接触する必要がない。これら配列の連結は、便利な制限酵素部位でライゲイション(連結)によって行われる。そのような部位が存在しない場合には、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)又はリンカー(linker)を使用する。
【0079】
前記組換えベクターは、形質転換又は形質感染などの方法で宿主細胞に導入されてよい。本願明細書に使われる用語“形質転換”は、DNAを宿主に導入してDNAが染色体外因子として又は染色体統合完成によって複製可能になることを意味する。本願明細書に使われる用語“形質感染”は、任意のコーディング配列が実際に発現しようがしないが、発現ベクターが宿主細胞によって受容されることを意味する。
【0080】
当業界に周知であるように、組換え細胞において形質感染遺伝子の発現レベルを高めるためには、当該遺伝子が、選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び解読発現調節配列に作動可能に連結される必要がある。好ましくは、発現調節配列及び当該遺伝子は、細菌選択マーカー及び複製起点(replication origin)を共に含んでいる一つの発現ベクター内に含まれるようになる。発現宿主が真核細胞である場合には、発現ベクターは真核発現宿主内で有用な発現マーカーをさらに含むことができる。
【0081】
本発明において、疎水性物質の生産のための微生物は、短時間で高濃度菌体培養が可能であり、遺伝子操作が容易であり、遺伝学的、生理的特徴が明らかになっている大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtillis)などのような原核細胞が広く使用されてきた。上記の原核細胞だけでなく、タンパク質の翻訳後修飾(post-translational modification)、分泌過程及び活性型の3次元構造、タンパク質の活性状態の問題点を解決するために、近年、単細胞真核細胞である酵母系列(Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、Hansenula polymorphaなど)、糸状性真菌類(filamentous fungi)、昆虫細胞(insect cells)、植物細胞、哺乳動物細胞(mammalian cells)などの高等生物に至るまで、組換えタンパク質生産の宿主細胞として用いられているので、実施例で例示された大腸菌又は組換え微生物の他に、別の宿主細胞も利用することは、当業界における通常の知識を有する者にとって容易に適用可能である。例えば、CHO細胞株、HEK細胞株などが発現のための宿主細胞として使用されてよいが、これに制限されるものではない。
【0082】
本発明において、非常に様々な微生物/宿主細胞及びベクター組合せが利用されてよい。真核宿主に適する発現ベクターには、例えば、V40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(adeno-associated virus)、サイトメガロウイルス及びレトロウイルスから由来した発現調節配列を含む。細菌宿主に使用可能な発現ベクターには、pBluescript、pGEX2T、pUCベクター、col E1、pCR1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体のようにE.coliから得られるもので例示できる細菌性プラスミド、pBBR1MCS及びそれらの誘導体のような広域宿主(broad host range)細菌性プラスミド、pET、pCDF、pRSF、pACYC、pCOLA、pBAD、pHCE、pCOLD、pACE、pTac15K、pTrc99A、pTacCDFS、pTrcCDFS及びそれらの誘導体のような細菌性プラスミド、RP4のように、より広い宿主範囲を有するプラスミド、λとλNM989のような非常に様々なファージラムダ(phage lambda)誘導体で例示できるファージDNA、及びM13とフィラメント性一本鎖のDNAファージのようなその他DNAファージが含まれる。酵母細胞に有用な発現ベクターは、2μプラスミド及びその誘導体である。昆虫細胞に有用なベクターは、pVL941である。
【0083】
本発明において、前記疎水性物質生産用組換え微生物とは、疎水性物質をコードする内因性又は外因性遺伝子を含み、疎水性物質の発現能力を有する微生物を意味する。疎水性物質をコードする遺伝子が外因性遺伝子である場合に、発現微生物又は発現細胞に導入されて生産能を有するように組み替えられた発現微生物が細胞膜エンジニアリングされたものであり得る。微生物に外因性遺伝子を導入する方法は、非制限的な例として“形質転換”、“形質導入”などの方法が様々に従来公知されており、通常の技術者によって適切な方法が選択され、疎水性物質の生産微生物を製造することができる。
【0084】
本発明において、前記組換え微生物は、好ましくは、大腸菌、リゾビウム(Rhizobium)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、カンディダ(Candida)、エルウィニア(Erwinia)、エンテロバクター(Enterobacter)、パスツレラ(Pasteurella)、マンヘミア(Mannheimia)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、アグリゲイティバクター(Aggregatibacter)、キサントモナス(Xanthomonas)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、アゾトバクター(Azotobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ラルストニア(Ralstonia)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、ロドバクター(Rhodobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、バチルス(Bacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、シアノバクテリウム(Cyanobacterium)及びシクロバクテリウム(Cyclobacterium)からなる群から選ばれることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0085】
本発明で使われる用語“内因性遺伝子”は、遺伝子が任意の遺伝子変形前に微生物に存在しているということを意味する。内因性遺伝子は、内因性調節要素に追加として又はその代替として異種配列を導入することにより、又は染色体又はプラスミド内に遺伝子の1種以上の相補的コピーを導入することにより、過剰発現し得る。内因性遺伝子は、また、それの相応するコードされたタンパク質の発現及び活性を調整するように変形されてよい。例えば、遺伝子産物を変形させるために、コーディング配列内に突然変異が導入されてもよく、又は内因性調節要素に追加として又はその代替として異種配列が導入されてもよい。内因性遺伝子の調整は、遺伝子産物の活性の上向き調節及び/又は増進を誘発してもよく、又は、代案として、内因性遺伝子産物の活性を下向き調節及び/又は低下させてもよい。
【0086】
発現を調整するさらに他の方式は、内因性遺伝子の発現を上向き又は下向き調節するために、遺伝子の内因性プロモーター(例えば、野生型プロモーター)をより強い又はより弱いプロモーターに交換することである。これらのプロモーターは、相同又は異種であってよい。適切なプロモーターを選択することは、十分に関連技術分野における通常の技術者の能力内にある。
【0087】
逆に、“外因性遺伝子”は、関連技術分野における通常の技術者に広く公知された手段によって遺伝子が微生物内に導入され、当該遺伝子が微生物から自然発生しないということを意味する。外因性遺伝子は、宿主染色体内に統合されてもよく、又は、プラスミド或いはベクターによって染色体外に発現してもよい。細胞において複製起点及びコピー数が異なる様々なプラスミドが、関連技術分野に広く公知されている。これらの遺伝子は、相同であってよい。
【0088】
本発明において、用語“相同遺伝子”は、理論上、共通の遺伝的先祖を有する遺伝子を示すものに制限されないが、遺伝的に非関連してもよいにもかかわらず、類似の機能を果たし、及び/又は類似の構造を有するタンパク質をコードするように進化した遺伝子を含む。したがって、本発明の目的上、用語“機能的相同体”は、特定の酵素的活性が定義されたアミノ酸配列の特定タンパク質のみならず、他の(非)関連した微生物からの類似な配列のタンパク質によっても提供され得るという事実に関するものである。
【0089】
公知の遺伝子に対してジェンバンク(Genbank)に与えられた参照を用いて、関連技術分野における通常の技術者は、他の有機体、バクテリア菌株、酵母、真菌、哺乳動物、植物などで同等な遺伝子を決定できる。このような定常作業は、他の微生物から由来した遺伝子との配列整列を行い、さらに他の有機体から相応する遺伝子をクローニングするための縮重性プローブを設計することによって決定される得るコンセンサス配列を使用して有利に行われる。分子生物学のこれらの定常方法は、関連技術分野における通常の技術者に広く公知されている。
【0090】
本発明は、さらに他の観点において、細胞形態関連遺伝子、及び細胞外膜小胞体関連遺伝子のいずれか一つ以上の遺伝子の抑制;及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の過発現又は導入のいずれか一つ以上の細胞膜エンジニアリングを行う段階を含む疎水性物質生産用組換え微生物の製造方法に関する。
【0091】
本発明において、前記細胞膜エンジニアリング段階は、脂質合成酵素遺伝子の発現を増加させることを追加の特徴とし得る。
【0092】
例えば、前記微生物が大腸菌である場合に、脂質合成酵素遺伝子の発現増加は、plsBC遺伝子を追加過発現させることであり得る。
【0093】
本発明において、前記方法で製造された組換え微生物は、細胞表面面積の増加;細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加;及び細胞内膜小胞体形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有することを特徴とし得る。
【0094】
本発明の方法で製造された組換え微生物は、細胞表面面積の増加;細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加;及び細胞内膜小胞体形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有することにより、組換え微生物の細胞膜に蓄積される特徴を有する疎水性物質の生産能を顕著に向上させることができる。
【0095】
本発明において、前記細胞形態関連遺伝子は、例えば、細胞分裂に関与する遺伝子、又は細胞骨格/細胞壁の合成又は維持に関与する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0096】
本発明において、細胞分裂に関与する遺伝子は、例えば、細胞分裂タンパク質(細胞分裂タンパク質、例えば、Ftsタンパク質など)と細胞分裂抑制タンパク質(cell division inhibitor、例えば、MinC、MinDなど)などからなる原核生物由来の細胞分裂に関与する酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0097】
本発明において、細胞骨格/細胞壁の合成又は維持に関与する遺伝子は、例えば、ペニシリン結合タンパク質(PBP)、細胞形態決定タンパク質(MreB、MreCなど)、ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ(MrdA、PbpAなど)、ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ(MrdBなど)、細胞骨格タンパク質(RodZなど)などからなる原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0098】
例えば、前記組換え微生物が大腸菌である場合に、前記細胞形態関連遺伝子は、rodZ(細胞骨格タンパク質)、ftsA(細胞分裂タンパク質)、ftsB(細胞分裂タンパク質)、ftsI(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、ftsL(細胞分裂タンパク質)、ftsQ(細胞分裂タンパク質)、ftsW(プロバブルペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、ftsZ(細胞分裂タンパク質)、minD(セプタムサイト決定タンパク質)、mrdA(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、mrdB(ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、mreB(細胞形態決定タンパク質)、mreC(細胞形態決定タンパク質)、zipA(細胞分裂タンパク質)、murE(UDP-N-acetylmuramoyl-L-alanyl-D-glutamate--2,6-diaminopimelate ligase)、pbpC(ペニシリン結合タンパク質1C)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。本発明において、デオキシビオラセインを生産する場合に、mrdB遺伝子の発現を抑制することが最も好ましい。
【0099】
本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、抑制時に、細胞の外膜小胞体の形成及び分泌を向上させ得るいかなる遺伝子も含まれてよく、使用される組換え微生物に応じて一般的に容易に選択されてよい。
【0100】
本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子、細胞外膜タンパク質発現遺伝子、細胞膜代謝回路関連遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0101】
本発明において、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子は、例えば、リポタンパク質(Lpp)、Tol-Palシステムタンパク質(TolB、Pal、TolA、TolRなど)、リポ多糖コア生合成タンパク質、リポ多糖コアヘプトシルトランスフェラーゼ、脂質A生合成ラウロイルトランスフェラーゼなどの細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持に寄与する原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0102】
本発明において、細胞外膜タンパク質発現遺伝子は、例えば、OmpA(outer-membrane protein A)、OmpC(outer-membrane protein C)、OmpF(outer-membrane protein F)、OprF(OmpAホモログ)、エンベロープタンパク質(RagA、RagBなど)などの細胞外膜タンパク質発現に寄与する原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0103】
本発明において、細胞膜代謝回路関連遺伝子は、例えば、キノロン信号(PQS)、抗シグマE因子、シグマ因子H(AlgU)、シャペロンプロテアーゼ(DegP)などの原核生物由来細胞膜代謝回路酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0104】
本発明の一実施例において、天然色素を発現させるように組み替えられた大腸菌を製造した後に、スクリーニングされた前記外膜小胞体関連遺伝子26種の発現を抑制して細胞膜エンジニアリングを行った(表7)。本発明において、前記組換え微生物が大腸菌である場合に、前記外膜小胞体関連遺伝子は、rseA(Anti-sigma-E factor)、rseB(Sigma-E factor regulatory protein)、rffD(UDP-N-acetyl-D-mannosamine dehydrogenase)、rffC(dTDP-fucosamine acetyltransferase)、rffA(dTDP-4-amino-4,6-dideoxygalactose transaminase)、ompR(DNA-binding dual transcriptional regulator)、gmhB(D-glycero-beta-D-manno-heptose-1,7-bisphosphate 7-phosphatase)、lpxL(Lipid A biosynthesis lauroyltransferase)、lpxM(Lipid A biosynthesis myristoyltransferase)、ompA(Outer membrane protein)、ompC(Outer membrane protein)、rfaB(Lipopolysaccharide 1,6-galactosyltransferase)、rfaC(Lipopolysaccharide heptosyltransferase 1)、rfaD(ADP-L-glycero-D-manno-heptose-6-epimerase)、rfaE(Bifunctional protein HldE)、rfaG(Lipopolysaccharide core biosynthesis protein)、rfaI(Lipopolysaccharide 1,3-galactosyltransferase)、rfaJ(Lipopolysaccharide 1,2-glucosyltransferase)、rfaK(Lipopolysaccharide 1,2-N-acetylglucosaminetransferase)、rfaP(Lipopolysaccharide core heptose(I)kinase)、rfaQ(Lipopolysaccharide core heptosyltransferase)、rfaY(Lipopolysaccharide core heptose(II)kinase)、rfbA(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 1)、rffH(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 2)、wzxE(ECA polysaccharide chain length modulation protein)、及びpnp(Polyribonucleotide nucleotidyltransferase)、tolA(colicin import membrane protein)、tolB(Tol-Pal system periplasmic protein)、tolC(outer membrane protein)、tolR(biopolymer transport protein)、nlpI(lipoprotein)、nlpD(murein hydrolase activator)、ompF(outer membrane pore protein)、pal(peptidoglycan-associated outer membrane lipoprotein)、degS(serine endoprotease)、degP(serine endoprotease)、tatC(sec-independent protein translocase protein)、lpp(murein lipoprotein)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0105】
本発明において、前記疎水性物質生産用組換え微生物が、細胞内膜小胞体システムのない微生物である場合に、細胞内膜を形成する他の真核又は原核生物由来内膜小胞体システム遺伝子が導入されることを特徴とし得る。本発明において、前記疎水性物質生産用組換え細胞が先天的に細胞内膜小胞体システムを含む場合に、前記細胞自体の細胞内膜小胞体遺伝子を過発現させるか、これに併せて他の真核又は原核生物由来内膜小胞体システム遺伝子を導入させることを特徴とし得る。本発明において、前記細胞内膜小胞体関連遺伝子は、真核細胞由来のカベオラシステムの遺伝子又はクラスリン-エプシンシステムの遺伝子でよく、又は原核細胞由来のmgs-dgsシステムなどでよく、より具体的な例としてはcav1(Caveolin-1)、cav2(Caveolin-2)、cav3(Caveolin-3)、EPN1(Epsin1)、CLINT1(EpsinR)、CLTC(clathrin heavy chain 1)、CLTCL1(clathrin heavy chain 2)、CLTA(clathrin light chain A)、CLTB(clathrin light chain B)、AP180、AP2、almgs(1,2-diacylglycerol3-glucosyltransferase)、aldgs(1,2-diacylglycerol-3-glucose(1-2)-glucosyltransferase producing diglucosyldiacylglycerol)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0106】
本発明において前記組換え微生物は、大腸菌、リゾビウム(Rhizobium)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、カンディダ(Candida)、エルウィニア(Erwinia)、エンテロバクター(Enterobacter)、パスツレラ(Pasteurella)、マンヘミア(Mannheimia)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、アグリゲイティバクター(Aggregatibacter)、キサントモナス(Xanthomonas)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、アゾトバクター(Azotobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ラルストニア(Ralstonia)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、ロドバクター(Rhodobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、バチルス(Bacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、シアノバクテリウム(Cyanobacterium)及びシクロバクテリウム(Cyclobacterium)からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0107】
本発明は、さらに他の観点において、本発明の疎水性物質生産用組換え微生物又は前記方法で製造された疎水性物質生産用組換え微生物を培養して疎水性物質を生産する段階、及び生産された疎水性物質を取得する段階を含む疎水性物質の製造方法に関する。
【0108】
本発明において、疎水性物質生産用組換え微生物を培養して疎水性物質を生産する段階は、従来公知の様々な微生物培養方法で制限なく行われてよく、菌株、生産しようとする物質などに応じて、培養培地、培養条件(温度、時間、物理的条件)などが適宜選択されて行われてよい。
【0109】
本発明の用語“培養”は、微生物を培養して、目的とする効能を導き出すことを意味し、本発明で目的とする効能は、疎水性物質の生産を意味する。前記培養は、使用される微生物に適合化し、少なくとも1種の単純炭素供給源及び必要な場合に共同基質を含有する適切な培養培地を有する培養器で一般的に行われてよい。
【0110】
本発明において、前記“培養”は、微生物培養を用いた疎水性物質の生産を意味し、“発酵”と同じ意味で使われてもよい。
【0111】
本発明において、前記組換え微生物を培養して疎水性物質を生産する段階は、流加式発酵を通じて行われることを特徴とし得る。
【0112】
本発明の用語“流加式培養”又は“流加式発酵”とは、培地を間欠的に追加供給して培養液の濃度を制御して培養/発酵させることを意味する。
【0113】
“適切な培養培地”は、炭素供給源又は炭素基質、窒素供給源、例えば、ペプトン、ブドウ糖、グリセロール、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽抽出物、ウレア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム;リン供給源、例えばリン酸一カリウム又はリン酸二カリウム;微量元素(例えば、金属塩)、例えばマグネシウム塩、コバルト塩及び/又はマンガン塩;の他に、成長因子、例えばアミノ酸及びビタミンのように、細胞の維持及び/又は成長に必須又は有益な栄養素;酵母抽出物、抗生剤なども含むことができる。本発明において、前記培養は、疎水性物質を生産するために適切な範囲の温度で培養されることを特徴とし、例えば30~40℃、好ましくは35~38℃で培養されることを特徴とし得るが、これに制限されず、宿主微生物の種、発現しようとする物質など応じて、異なる条件で培養されてもよい。
【0114】
本発明の目的は、細胞膜に蓄積される疎水性物質を、細胞膜エンジニアリングを行って細胞膜面積の増加、細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加、又は内膜小胞体形成の増加を通じて生産能を増大させることにある。本発明の実施例では、大腸菌の細胞形態関連遺伝子の抑制を用いた細胞膜面積の増加、細胞外膜小胞体関連遺伝子の抑制を用いた細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加、及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の過発現を用いた内膜小胞体形成の増加が、細胞膜に蓄積される代表的な疎水性物質である天然色素の顕著な生産能向上につながることを確認した。一般に、疎水性物質は、疎水性を帯びる細胞膜又は小胞体の内膜及び外膜に蓄積されるので、天然色素の他にも、微生物を通じて生産され得る様々な疎水性物質の生産能向上を示すことができることは明らかであろう。
【0115】
したがって、本発明の組換え微生物が生産する疎水性物質は、細胞膜に蓄積されることを特徴とし得る。例えば、前記疎水性物質は、天然色素、抗酸化物質、抗生剤、化粧品添加物、抗癌剤、食品添加剤及び栄養補助剤などであり得るが、これに制限されるものではない。
【0116】
本発明において、前記天然色素は、人工的に合成せずに自然から得られる色素又はその類似体を意味し、例えば、カロテノイド、ビオラセインなどがあり、より具体的な例にリコペン、β-カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、プロビオラセイン(PVIO)、プロデオキシビオラセイン(PDVIO)、デオキシビオラセイン(DVIO)、ビオラセイン(VIO)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0117】
前記抗酸化物質は、例えば、ケルセチン、ジヒドロケルセチン、ケンペロール、ジヒドロケンペロール、アスタキサンチン、レスベラトロール、トコフェロール、トコトリエノール、コエンザイムQ10、アピゲニンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0118】
前記化粧品添加物は、例えば、アロエシン、ビタミンA、セラミド、パントテネート、パンテノール、ルペオール、スクアレン、ユーカリプトール、バレンセンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0119】
前記食品添加剤は、例えば、カルミン酸、β-カロテン、リコペンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0120】
前記栄養補助剤は、例えば、シリマリン、ルテイン、ビタミン、コエンザイム-Q10、レスベラトロール、オメガ-3多価不飽和脂肪酸、ユビキノン、グルコサミン、ルテオリンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0121】
本発明の一実施例において、上述のように、様々な遺伝子の抑制、導入又は過発現を行って、本発明の疎水性物質生産用組換え微生物を製造し、全体的に疎水性物質の生産能が維持又は顕著に向上することを確認したが、生産しようとする疎水性物質にしたがって、最も顕著な生産能の増進効果を示す遺伝子組合せの細胞膜エンジニアリングが異なることを確認した。
【0122】
疎水性物質は、同一の疎水性を示す細胞膜に蓄積される現象を示すので、細胞膜面積の向上、細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加、内膜小胞体形成の増加のための本発明の細胞膜がエンジニアリングされた組換え微生物法は、疎水性物質の生産能の向上を示すことができる。
【0123】
したがって、本発明の細胞膜エンジニアリングを用いた疎水性物質生産用微生物は、様々な遺伝子組合せの抑制、導入、又は過発現を通じてライブラリーとして構築されてよく、前記ライブラリーを用いて特定の疎水性物質に対する優れた生産能を示す菌株をスクリーニングすることは、疎水性物質の生産能が向上した組換え菌株の選別及び開発に、費用、手続、時間の面で有用に用いられ得る。
【0124】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、疎水性物質生産用微生物に、細胞形態関連遺伝子の発現抑制;細胞外膜小胞体関連遺伝子の発現抑制;及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の導入又は過発現のいずれか一つ以上の手段を用いて細胞膜エンジニアリングを行って得た、疎水性物質生産用微生物のライブラリーに関する。
【0125】
本発明は、さらに他の観点において、
(a)疎水性物質生産用微生物に、細胞形態関連遺伝子の発現抑制;細胞外膜小胞体関連遺伝子の発現抑制;及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の導入又は過発現のいずれか一つ以上の手段を用いて細胞膜エンジニアリングを行って、疎水性物質生産用微生物のライブラリーを生成する段階;及び
(b)前記疎水性物質生産用微生物を培養して、特定の疎水性物質の生産能に優れた組換え微生物を選別する段階を含む、特定の疎水性物質の生産能が増加した細胞膜エンジニアリングされた組換え微生物のスクリーニング方法に関する。
【0126】
本発明は、疎水性物質が細胞膜に蓄積される性質を用いて、関連遺伝子群の抑制又は過発現による細胞膜エンジニアリングを通じて細胞膜面積の増加、細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加、及び/又は細胞内膜小胞体形成の増加の特性を有する疎水性物質生産用ライブラリーを生産でき、これに基づき、特定の疎水性物質の生産能が向上した組換え菌株をスクリーニングできることに特徴がある。
【0127】
本発明において、前記“疎水性物質生産用微生物のライブラリー”とは、細胞形態関連遺伝子の発現抑制;細胞外膜小胞体関連遺伝子の発現抑制、及び細胞内膜小胞体関連遺伝子の導入又は過発現が単独又は任意に組み合わせられてなされたものであり得る。
【0128】
本発明において、前記(a)段階の細胞膜エンジニアリングは、疎水性物質生産用微生物ライブラリーは脂質合成酵素遺伝子の発現を増加させることを追加の特徴とし得る。
【0129】
本発明において、前記ライブラリーは、前記細胞形態関連遺伝子単独、細胞形態関連遺伝子間の任意の組合せが抑制された組換え微生物をいずれも含むことができる。
【0130】
本発明において、前記細胞形態関連遺伝子は、細胞の形態を維持するのに関与する遺伝子であればいずれも含まれてよい。
【0131】
本発明において、前記細胞形態関連遺伝子は、発現抑制時に細胞の形態が変形されて細胞の面積が増加するいかなる遺伝子も含まれてよく、使用される組換え微生物に応じて、通常の技術者によって容易に選択されてよい。
【0132】
本発明において、前記細胞形態関連遺伝子は、例えば、細胞分裂に関与する遺伝子、又は細胞骨格/細胞壁の合成又は維持に関与する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0133】
本発明において、細胞分裂に関与する遺伝子は、例えば、細胞分裂タンパク質(細胞分裂タンパク質、例えばFtsタンパク質など)と細胞分裂抑制タンパク質(cell division inhibitor、例えば、MinC、MinDなど)などの原核生物由来の酵素群を暗号化する内因性遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0134】
本発明において、細胞骨格/細胞壁の合成又は維持に関与する遺伝子は、例えば、ペニシリン結合タンパク質(PBP)、細胞形態決定タンパク質(MreB、MreCなど)、ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ(MrdA、PbpAなど)、ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ(MrdBなど)、細胞骨格タンパク質(RodZなど)などの原核生物由来酵素群を暗号化する内因性遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0135】
本発明において、例えば、前記ライブラリーを製造するために使用される組換え微生物が大腸菌である場合に、前記細胞形態関連遺伝子は、rodZ(細胞骨格タンパク質)、ftsA(細胞分裂タンパク質)、ftsB(細胞分裂タンパク質)、ftsI(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、ftsL(細胞分裂タンパク質)、ftsQ(細胞分裂タンパク質)、ftsW(プロバブルペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、ftsZ(細胞分裂タンパク質)、minD(セプタムサイト決定タンパク質)、mrdA(ペプチドグリカンD,D-トランスペプチダーゼ)、mrdB(ペプチドグリカングリコシルトランスフェラーゼ)、mreB(細胞形態決定タンパク質)、mreC(細胞形態決定タンパク質)、zipA(細胞分裂タンパク質)、murE(UDP-N-acetylmuramoyl-L-alanyl-D-glutamate--2,6-diaminopimelate ligase)、pbpC(ペニシリン結合タンパク質1C)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0136】
本発明において、前記ライブラリーは、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子単独、細胞外膜小胞体関連遺伝子間の任意の組合せが抑制された組換え微生物をいずれも含むことができる。
【0137】
本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、細胞外膜小胞体の形成又は分泌に関与する遺伝子であればいずれも含むことができる。
【0138】
本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、細胞のペプチドグリカン層又は細胞外膜と内膜の連結を維持させる役割を担う遺伝子であることを特徴とし得る。
【0139】
本発明において、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子、細胞外膜タンパク質発現遺伝子、細胞膜代謝回路関連遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0140】
本発明において、細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子は、例えば、リポタンパク質(Lpp)、Tol-Palシステムタンパク質(TolB、Pal、TolA、TolRなど)、リポ多糖コア生合成タンパク質、リポ多糖コアヘプトシルトランスフェラーゼ、脂質A生合成ラウロイルトランスフェラーゼなどの細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持に寄与する原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0141】
本発明において、細胞外膜タンパク質発現遺伝子は、例えば、OmpA(outer-membrane protein A)、OmpC(outer-membrane protein C)、OmpF(outer-membrane protein F)、OprF(OmpAホモログ)、エンベロープタンパク質(RagA、RagBなど)などの細胞外膜タンパク質発現に寄与する原核生物由来酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0142】
本発明において、細胞膜代謝回路関連遺伝子は、例えば、キノロン信号(PQS)、抗シグマE因子、シグマ因子H(AlgU)、シャペロンプロテアーゼ(DegP)などの原核生物由来細胞膜代謝回路酵素群を暗号化する遺伝子であり得るが、これに制限されるものではない。
【0143】
本発明において、例えば、前記組換え微生物が大腸菌である場合に、前記細胞外膜小胞体関連遺伝子は、rseA(Anti-sigma-E factor)、rseB(Sigma-E factor regulatory protein)、rffD(UDP-N-acetyl-D-mannosamine dehydrogenase)、rffC(dTDP-fucosamine acetyltransferase)、rffA(dTDP-4-amino-4,6-dideoxygalactose transaminase)、ompR(DNA-binding dual transcriptional regulator)、gmhB(D-glycero-beta-D-manno-heptose-1,7-bisphosphate 7-phosphatase)、lpxL(Lipid A biosynthesis lauroyltransferase)、lpxM(Lipid A biosynthesis myristoyltransferase)、ompA(Outer membrane protein)、ompC(Outer membrane protein)、rfaB(Lipopolysaccharide 1,6-galactosyltransferase)、rfaC(Lipopolysaccharide heptosyltransferase 1)、rfaD(ADP-L-glycero-D-manno-heptose-6-epimerase)、rfaE(Bifunctional protein HldE)、rfaG(Lipopolysaccharide core biosynthesis protein)、rfaI(Lipopolysaccharide 1,3-galactosyltransferase)、rfaJ(Lipopolysaccharide 1,2-glucosyltransferase)、rfaK(Lipopolysaccharide 1,2-N-acetylglucosaminetransferase)、rfaP(Lipopolysaccharide core heptose(I)kinase)、rfaQ(Lipopolysaccharide core heptosyltransferase)、rfaY(Lipopolysaccharide core heptose(II)kinase)、rfbA(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 1)、rffH(Glucose-1-phosphate thymidylyltransferase 2)、wzxE(ECA polysaccharide chain length modulation protein)、及びpnp(Polyribonucleotide nucleotidyltransferase)、tolA(colicin import membrane protein)、tolB(Tol-Pal system periplasmic protein)、tolC(outer membrane protein)、tolR(biopolymer transport protein)、nlpI(lipoprotein)、nlpD(murein hydrolase activator)、ompF(outer membrane pore protein)、pal(peptidoglycan-associated outer membrane lipoprotein)、degS(serine endoprotease)、degP(serine endoprotease)、tatC(sec-independent protein translocase protein)、lpp(murein lipoprotein)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0144】
本発明において、前記ライブラリーは、前記細胞内膜小胞体関連遺伝子単独、細胞内膜小胞体関連遺伝子間の任意の組合せが抑制された組換え微生物をいずれも含むことができる。
【0145】
本発明において、“細胞内膜小胞体関連遺伝子”は、細胞内膜小胞体の形成に関与する遺伝子であればいずれも含むことができる。
【0146】
本発明において、細胞内膜小胞体関連遺伝子は、細胞内膜小胞体の形成を向上させる遺伝子であれば制限なく選択されて使用されてよい。本発明において、前記疎水性物質生産用組換え微生物が、細胞内膜小胞体システムのない微生物である場合に、細胞内膜を形成する他の真核又は原核生物由来内膜小胞体システム遺伝子が導入されてライブラリーを製造することを特徴とし得る。
【0147】
本発明において、前記疎水性物質生産用組換え微生物が先天的に細胞内膜小胞体システムを含む場合に、前記細胞内膜小胞体の関連遺伝子を過発現させるか、これに併せて他の真核又は原核生物由来内膜小胞体システム遺伝子を導入させることを特徴とし得る。
【0148】
本発明において、前記細胞内膜小胞体関連遺伝子は、真核細胞由来のカベオラシステムの遺伝子又はクラスリン-エプシンシステムの遺伝子でよく、又は原核細胞由来のmgs-dgsシステムなどでよく、より具体的な例としてはcav1(Caveolin-1)、cav2(Caveolin-2)、cav3(Caveolin-3)、EPN1(Epsin1)、CLINT1(EpsinR)、CLTC(clathrin heavy chain 1)、CLTCL1(clathrin heavy chain 2)、CLTA(clathrin light chain A)、CLTB(clathrin light chain B)、AP180、AP2、almgs(1,2-diacylglycerol3-glucosyltransferase)、aldgs(1,2-diacylglycerol-3-glucose(1-2)-glucosyltransferase producing diglucosyldiacylglycerol)及びこれらの組合せからなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されない。
【0149】
本発明において、前記疎水性生産用微生物のライブラリーは、細胞形態関連遺伝子、細胞外膜小胞体関連遺伝子及び細胞内膜小胞体関連遺伝子からなる群から選ばれるいずれか一つの遺伝子又はそれら遺伝子の任意の組合せが抑制、導入、又は過発現している組換え微生物を含むことを特徴とし得る。
【0150】
本発明において、前記疎水性生産用微生物のライブラリーは、単一属又は単一種の微生物を含むことができ、異なる属又は種の微生物が混合して含まれてもよい。
【0151】
本発明において、前記疎水性生産用微生物のライブラリーは、大腸菌、リゾビウム(Rhizobium)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、カンディダ(Candida)、エルウィニア(Erwinia)、エンテロバクター(Enterobacter)、パスツレラ(Pasteurella)、マンヘミア(Mannheimia)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、アグリゲイティバクター(Aggregatibacter)、キサントモナス(Xanthomonas)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、アゾトバクター(Azotobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ラルストニア(Ralstonia)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、ロドバクター(Rhodobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、バチルス(Bacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、シアノバクテリウム(Cyanobacterium)、シクロバクテリウム(Cyclobacterium)及びこれらの組合せからなる群から選ばれる微生物を含むことを特徴とし得る。
【0152】
本発明において、疎水性物質生産用微生物のライブラリーは、細胞膜面積の増加;細胞外膜小胞体形成及び分泌の増加;及び細胞内膜小胞体形成の増加のいずれか一つ以上の特徴を有することを特徴とし得る。
【実施例0153】
以下、本発明を、具体的な実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例によって限定されるものではなく、本発明のアイディア及び範囲内で様々な変形又は修正が可能であることは通常の技術者には明らかであろう。
【0154】
実施例1:天然色素生産菌株の構築
実施例1-1:カロテノイド生産菌株の構築
カロテノイドは、にじスペクトルにおいて赤色、橙色、黄色の光を担当するが、様々なカロテノイドの中でβ-カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンが代表的であり、それぞれ、橙色、黄色、赤色の光を帯びる。この3種のカロテノイドを生産する大腸菌の構築に先立ち、それらの前駆体となるリコペン生産菌株をまず構築した。大腸菌は、元来、1-デオキシ-D-キシルロース5-ホスフェート生産経路を通じてファルネシルジホスフェートを生産できるので、カロテノイド合成経路において最先頭に位置するリコペン生産のためには、crtE、crtB、crtIの3種の遺伝子の導入が必要である(
図1)。不要な前駆体が蓄積されることを防止し、代謝流れのバランスを取るために、それぞれの遺伝子の発現レベルを様々に組み合わせてスクリーニングした。発現レベルは、5’末端非解釈部位(5’ untranslated region;5’UTR)の配列を変更することによって調節した(
図2A)。5’UTR配列ライブラリー(library)は、それぞれの遺伝子に対してUTRライブラリーデザイナープログラムを用いて構築し、合計16個の5’UTR配列で構成した。16個の異なる5’UTR配列が融合されたそれぞれの遺伝子を組み合わせてpTac15Kプラスミドに導入し、pLYCライブラリーを構築した。pLYCライブラリーを構築するために、まず、pTac15Kプラスミドを[配列番号1]及び[配列番号2]のプライマーを用いてPCR増幅で線形化した。次に、crtE、crtB、crtI遺伝子を、pCar184(Choi et al.,Appl Environ Microbiol 2010,76(10):3097-3105)プラスミドにおいて、それぞれ[配列番号3]及び[配列番号4]、[配列番号5]及び[配列番号6]、[配列番号7]及び[配列番号8]プライマーでそれぞれPCR増幅した後、線形化されたpTac15kプラスミドにギブソンアセンブリーでクローニングした。
【0155】
【0156】
構築したpLYCライブラリーを、本研究陣の先行研究で開発した大腸菌WLGB-RPP菌株に導入した後、pLYCライブラリーサイズの10倍に達するコロニー(colony)の中から、特に濃い色を帯びるコロニー200個を選別し、テストチューブ培養を行った後、生産されたリコペンを抽出し、474nmにおける吸光度を比較した。そのうち、上位10個菌株に対してフラスコ培養をさらに行った。LYC79菌株において、最も多い23.90mg/Lのリコペンが生産された。
【0157】
選別したLYC79菌株に基づいてβ-カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン生産菌株も同様の方法で構築した。まず、リコペンでβ-カロテンを生産するにはcrtY遺伝子が、β-カロテンからゼアキサンチンを生産するにはcrtZが、ゼアキサンチンからアスタキサンチンを生産するにはBKTがさらに必要である。これらの各遺伝子に対して、それぞれ異なる16個の5’UTR配列で構成された5’UTRライブラリーを構築し、遺伝子の5’末端に融合した。
【0158】
pBTCライブラリーを構築するために、まず、pTrcCDFSプラスミドを[配列番号9]及び[配列番号10]プライマーを用いてPCR増幅で線形化した。pCar184プラスミドから[配列番号11]及び[配列番号12]プライマーを用いてPCR増幅したcrtYは、線形化されたpTrcCDFSにギブソンアセンブリーでクローニングした。pZEAライブラリー構築のためには、pCar184からそれぞれ[配列番号11]及び[配列番号13]、[配列番号14]及び[配列番号15]プライマーを用いてPCR増幅したcrtYとcrtZを、線形化されたpTrcCDFSにギブソンアセンブリーでクローニングした。pATXライブラリー構築のためには、pAX1(Park et al.,Metab Eng 2018,49:105-115)プラスミドから[配列番号16]及び[配列番号17]プライマーを用いてPCR増幅したtrCrBKTを、pZEAのSalI/HindIIIサイトに挿入した。
【0159】
【0160】
構築されたpBTC、pZEA、pATXライブラリーをLYC79菌株に導入し、それぞれ20、40、200個のコロニーを肉眼で選別後にテストチューブ培養した。生産されたβ-カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンはそれぞれアセトン(acetone)抽出し、473、452、475nm波長における吸光度を測定して生産濃度を比較した。このとき、アスタキサンチンは、前駆体であるカンタキサンチンとは肉眼及び吸光度測定ではその色が区分できず、吸光度測定の結果における上位50個菌株に対しては、HPLC分析をさらに行った。テストチューブ培養においてβ-カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンを最も多く生産する3個、5個、10個の菌株に対してフラスコ培養を行った。BTC1、ZEA20、ATX68菌株がそれぞれ、18.65mg/L β-カロテン、12.67mg/Lゼアキサンチン、14.49mg/Lアスタキサンチンと、最も多い生産量を示し、最終菌株として選別された(
図2)。
【0161】
1-2.ビオラセイン類似体生産菌株構築
カロテノイドに続いて、じスペクトルを完成するために、本研究陣はビオラセイン類似体を生産しようとした。ビオラセイン類似体は、ビスインドール色素に分類され、クロモバクテリウムビオラセウム(Chromobacterium violaceum)とヤンシノバクテリウムリビダム(Janthinobacterium lividum)などのようなバクテリアから生産され、抗癌効果のように様々な薬理的効能を有することが知られている。そこで、本研究陣は、4種のビオラセイン類似体であるプロデオキシビオラセイン、プロビオラセイン、デオキシビオラセイン、ビオラセインを生産できるように生合成経路を構築し(
図1、
図3A)、これより生産された物質の色を観察した(
図3G)。本研究陣が既存の研究でビオラセイン類似体の共通の前駆体であるトリプトファン過生産菌株を既に構築したので(IND5harboring pTacGEL)、当該菌株にpTacCDFSベクターベースのビオラセイン類似体生合成経路を導入したプラスミドを形質転換させ、ビオラセイン類似体生産基本菌株を作製した。
【0162】
まず、pTacCDFSプラスミドを基本ベクターとし、[配列番号18]及び[配列番号19]プライマーを用いて逆PCR反応を行ってプラスミドを線形化した。その後、vioAB遺伝子を2つの遺伝子片に分けて増幅したが、一番目の片は[配列番号20]及び[配列番号21]で、二番目の片は[配列番号22]及び[配列番号23]で増幅した。当該2つのDNA片は、先に線形化されたプラスミドとギブソンアセンブリーでクローニングされ、pTacCDFS-vioABプラスミドが作製された。同一の方法を用いてpTacCDFS-vioC、pTacCDFS-vioD、pTacCDFS-vioCD、pTacCDFS-vioEプラスミドを構築した。遺伝子vioC、vioD、vioCD及びvioEはそれぞれ、プライマー対[配列番号24]及び[配列番号25]、[配列番号26]及び[配列番号27]、[配列番号24]及び[配列番号27]、そして[配列番号28]及び[配列番号29]を用いてPCR増幅された。プロデオキシビオラセイン(PDVIO)生産のためのプラスミドpPDVIO(pTacCDFS-vioABE)は、次の通りに構築された。pTacCDFS-vioEプラスミドをテンプレートとし、[配列番号30]及び[配列番号31]プライマーを用いてvioE遺伝子片を増幅し、これをpTacCDFS-vioABプラスミドのSacIサイトに挿入した。プロビオラセイン(PVIO)、デオキシビオラセイン(DVIO)、ビオラセイン(VIO)をそれぞれ生産するためのpPVIO(pTacCDFS-vioABDE)、pDVIO(pTacCDFS-vioABCE)、pVIO(pTacCDFS-vioABCDE)プラスミドは、次の通りに構築された。各プラスミドpTacCDFS-vioC、pTacCDFS-vioD、pTacCDFS-vioCDをテンプレートとし、[配列番号32]及び[配列番号31]を共通のプライマーとして用いて各遺伝子片vioC、vioD、vioCDを増幅した。増幅された遺伝子は、pTacCDFS-vioABEプラスミドのSacIサイトに挿入され、pDVIO(pTacCDFS-vioABCE)、pPVIO(pTacCDFS-vioABDE)、pVIO(pTacCDFS-vioABCDE)プラスミドを完成した。
【0163】
【0164】
ビオラセイン生産菌株を、ブドウ糖及びグリセロールをそれぞれ炭素源として用いてフラスコ培養を行ったとき、
図3Bに示すように、グリセロールを炭素源とした場合においてより高い濃度のビオラセインが生産された。これにより、全てのビオラセイン類似体はグリセロールを炭素源として用いた。上のように構築された菌株からは、vioABCE生合成経路(BGC)を導入したときに、1.09g/Lのデオキシビオラセインが生産され、vioABCDE BGCを導入したときに、1.36g/Lのビオラセイン、0.13g/Lのデオキシビオラセインが生産された(
図3D)。vioABE BGCを導入したときにはプロデオキシビオラセインが、vioABDE BGCを導入したときにはプロビオラセインが生産されたが、標準物質の不在により定量が不可能であり、ビオラセインのHPLC矯正テーブル(calibration table)に基づいて計算された(
図3C)。
【0165】
フラスコ培養条件は、次の通りである。カロテノイド生産菌株の場合、コロニーを適切な濃度の抗生剤が添加された3mLのTB(terrific broth;リットルにつき、20gトリプトン、24g酵母抽出物、4mLグリセロール、0.017M KH2PO4、及び0.072M K2HPO4)培地に接種し、30℃で培養した。培養液のOD600が1~2になった時に、1mLの培養液を、20mLのTB培地が入っている250mL丸底フラスコで継代培養し、同様に、OD600が1~2になるまで培養を進行した。ビオラセイン類似体の場合、コロニーを、適切な濃度の抗生剤が添加された10mL LB培地に接種し、37℃で一晩培養した。その後、用意したカロテノイド及びビオラセイン類似体培養液を、3g/L酵母抽出物、20g/Lグリセロール(ビオラセイン類似体の場合、さらに3g/L(NH4)2SO4)が添加された50mLのR/2培地が入っている250mLバッフルフラスコに継代した後、30℃、200rpmで培養した。R/2培地(pH6.8)組成は、次の通りである(リットルにつき):2g(NH4)2HPO4、6.75g KH2PO4、0.85gクエン酸、0.7g MgSO4・7H2O、及び5ml TMS(trace metal solution)[5M HClのリットルにつき、10g FeSO4・7H2O、2.25g ZnSO4・7H2O、1g CuSO4・5H2O、0.5g MnSO4・5H2O、0.23g Na2B4O7・10H2O、2g CaCl2・2H2O、及び0.1g(NH4)6Mo7O24]。培養液のOD600が0.6~0.8になった時、1mMイソプロピルβ(IPTG)を添加して外来遺伝子発現を誘導した。誘導後、カロテノイドの場合は36時間、ビオラセイン類似体の場合は48時間培養した。
【0166】
培養後、次のような条件で生産量分析を行った。カロテノイドの場合、1mLの培養液を遠心分離機を用いて細胞を集めた後、上澄液を除去し、1mLのアセトンを添加して55℃、1,500rpmで激しく渦動を与えて細胞内部の物質を抽出した。遠心分離機を用いて抽出液中の細胞滓を濾別し、上澄液のカロテノイド抽出液を得ることができた。ビオラセイン類似体の場合、50μL培養液(推測される濃度範囲に応じて適切に、添加する培養液の体積を調節可能;合計体積が1mLになるように添加するDMSOの量を調節)を950μLジメチルスルホキシド(DMSO)と混ぜた後、40℃、1,500rpmで激しく渦動を与えて細胞内外部の物質を抽出した。その後、前記と同様に、遠心分離機を用いて抽出液中の細胞滓を濾別し、上澄液のビオラセイン類似体抽出液を得ることができた。各抽出液の定量分析は、HPLCを用いて行った。標準物質のないビオラセイン類似体の場合、LC-MSを用いて真偽を判別した(
図3E~
図3F)。
【0167】
実施例2.細胞形態エンジニアリングを用いたにじ色素の増産
カロテノイドは長い炭素鎖を有し、ビオラセイン類似体は疎水性の炭素輪を有するので、疎水性の特性を示す。このような特性から、カロテノイド及びビオラセイン類似体は、大腸菌内で生産されたときに、細胞外に出るよりは、細胞中に、特に細胞膜に挟まれた状態で蓄積される。したがって、細胞膜面積を拡張することによって受容限度を上げ、当該物質をより過量で生産しようとした。そのために、細胞膜関連代謝回路を担当する遺伝子の発現を抑制させようとした。標的遺伝子の発現抑制のためには、合成調節sRNA道具(Na et al.,Nat Biotechnol 2013,31(2):170-174)を用いた。発現抑制標的としては、細胞分裂と細胞形態維持に関与する16種の遺伝子を選別した(表4)。発現抑制標的遺伝子は、2つの基準によって選別されたが、第一の基準は、細胞分裂と関連した遺伝子である(ftsABILQWZ、minD、zipA)。細胞分裂を抑制すれば細胞の長さが変わると予想される(
図4A)。第二の基準は、細胞壁合成又は維持と関連した遺伝子である(rodZ、mrdAB、mreBCE、murE)が、細胞壁が大腸菌の棒形の形態を決定するので、細胞壁と関連した遺伝子を発現抑制すれば細胞の形態がより球形且つ不規則的に変わると予想される(
図4A)。本実施例では、上の2つの基準に基づき、最も効果が良いと予想される遺伝子標的を選別したが、必ずしも当該発明の範囲がこれに限定されるものではなく、上の2つの基準に該当する他の遺伝子も標的として用いられてよい。
【0168】
【0169】
大部分の標的遺伝子は必須遺伝子であったが、これは、sRNA技術の活用の必要性をよく示している。当該実験では、代表的にβ生産菌株とデオキシビオラセイン生産菌株を用いてテストし、その結果は
図4B及び
図4Cに示した。
【0170】
図4及び
図5から確認できるように、β生産菌株では、細胞膜関連遺伝子を発現抑制した時に、細胞形態の変化は観察されたが、生産量は却って減少した。これに対し、デオキシビオラセイン生産菌株では、mrdB遺伝子を発現抑制させた時に、生産量が大きく増加し、1.37g/Lに達した(25%増産)。mrdBを発現抑制させた場合に、予想通りに細胞の長さが短くなり、より球形の形態を示し、細胞膜面積が却って減少することが分かる。
【0171】
実施例3.細胞内膜小胞体形成を用いたにじ色素の増産
にじ色素の生産量をより増加させるために、本研究陣は、真核細胞システムに存在する細胞内膜小胞体を導入しようとした。これにより、細胞自体の体積はそのままにしながら同時に細胞内部の膜面積を広めることによって、膜に蓄積される物質の生産量も増加させようとした(
図4D)。導入した細胞内膜小胞体遺伝子は、真核生物の細胞内膜小胞体システムのうち特にカベオラを借用したが、カベオラは、ゴルジ体又は小胞体のシワの寄った形態を担当している。まず、pTrc99Aプラスミドにcav1、cav2、cav3遺伝子を導入した後、それぞれβとデオキシビオラセイン生産菌株に導入してフラスコ培養を行った。本実施例では、真核生物のカベオラシステムを借用したが、細胞内膜を形成する他の真核又は原核生物由来システム(真核生物のクラスリン-エプシンシステム、原核生物のmgs-dgsシステムなど)も、本発明と同じ範囲に該当する。
【0172】
各cav1[配列番号36]、cav2[配列番号37]及びcav3[配列番号38]遺伝子は、Homo sapiens由来遺伝子配列を大腸菌コドン最適化後に用いた。pTrc99A-cav1プラスミド構築のために、cav1遺伝子は、pTrc99AプラスミドのEcoRI及びBamHIサイトに挿入された。pTrc99A-cav2及びpTrc99A-cav3の構築のために、cav2及びcav3遺伝子はそれぞれ、pTrc99AプラスミドのNcoI及びBamHIサイトに挿入された。pTrc99A-cav12プラスミド(cav1,cav2の両方を保有)の構築のために、cav2遺伝子を[配列番号33]及び[配列番号34]プライマーを用いて増幅後に、pTrc99A-cav1プラスミドのBamHI及びPstIサイトに挿入した。pTrc99A-cav23及びpTrc99A-cav13の構築のために、cav3遺伝子を[配列番号35]及び[配列番号34]プライマーを用いて増幅後に、それぞれpTrc99A-cav2及びpTrc99A-cav1プラスミドのPstIサイトに挿入した。pTrc99A-cav123プラスミドの構築のために、前記増幅されたcav3遺伝子をpTrc99A-cav12プラスミドのPstIサイトに挿入した。
【0173】
【0174】
細胞内膜構造体を形成することから不足になり得る細胞膜脂質をさらに供給するために、大腸菌のplsBC遺伝子を増幅したが、そのために、まず、pTrc99A-plsBCプラスミドを構築した。したがって、plsB及びplsC遺伝子を大腸菌のゲノムDNAから、[配列番号39]及び[配列番号40]プライマーと、[配列番号41]及び[配列番号42]プライマー対をそれぞれ用いて増幅後に、pTrc99AプラスミドのPstI及びHindIIIサイトにギブソンアセンブリーを用いて挿入した。その後、構築されたプラスミドをPstI及びHindIIIの制限酵素を用いて切った後、plsBC遺伝子片を分離してpTrc99A-cav1プラスミドのPstI及びHindIIIサイトに挿入し、pTrc99A-cav1-plsBCプラスミドを構築した。
【0175】
【0176】
その結果、βとデオキシビオラセイン生産菌株の両方ともcav1遺伝子を発現した場合に、生産量がそれぞれ21.89mg/L及び1.28g/Lと最も大きく増加した。特に、デオキシビオラセイン生産菌株の場合、cav1、cav2、cav3を組合せで2個又は3個ずつ発現させた時には却って生産量が急に減少していることが分かる(
図4E及び
図4F)。TEM(各図の上段)及びSEM(各図の下段)から、対照群(
図4G及び
図4I)及びcav1過発現菌株(
図4H及び
図4J)で内膜小胞体の形成が誘導されたかどうか確認した結果、cav1過発現菌株において、細胞の形態には対照群と大差を示さないながらも内膜小包体が成功的に形成されることを確認した。
【0177】
実施例4.細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加を用いたにじ色素の増産
にじ色素の生産量をより増加させるために、本研究陣は、微生物本然の細胞外膜小胞体形成遺伝子の発現を増加させることにより、小胞体を通じて、細胞内に蓄積されるにじ色素を外に噴出させようとした(
図6A)。細胞外膜小胞体の発現のためには、特定遺伝子を発現させるのではなく、細胞のペプチドグリカン層又は細胞外膜と内膜の連結を維持させる役割を担う遺伝子の発現を抑制させることが重要であると報告されている。そこで、本研究陣は、同様にsRNAベース標的遺伝子発現抑制システムを用いて、合計26種の標的遺伝子の発現強度を抑制させようとした。選別された26種の発現抑制遺伝子標的は、次の通りである:rseA、rseB、rffD、rffC、rffA、ompR、gmhB、lpxL、ompA、ompC、rfaB、rfaC、rfaD、rfaE、rfaG、rfaI、rfaJ、rfaK、rfaP、rfaQ、rfaY、rfbA、rffH、wzxE、pnp(表7)。このとき、(1)細胞外膜/ペプチドグリカン構造維持関連遺伝子ターゲットはrfaG、rffA、rffC、rffD、rffHなどであり、(2)細胞外膜タンパク質発現に該当する遺伝子ターゲットはompR、ompCなどであり、(3)細胞膜代謝回路の抗シグマ因子(anti-sigma factor)発現に関係する遺伝子ターゲットはrseA、rseBなどである。本実施例では、上の3つの基準に基づき、最も効果が良いと予想される遺伝子標的を選別したが、必ずしも当該発明の範囲がこれに限定されるものではなく、上の3つの基準に該当する他の遺伝子も標的として用いられてよい。当該遺伝子標的を発現抑制させた時のβとデオキシビオラセイン生産量は、
図6B及び
図6Cの通りである。βの場合、rfaD、rffD、rfaQをそれぞれ発現抑制した時に、生産量がそれぞれ26.43、24.21、20.29mg/Lと有効に増加した。デオキシビオラセインの場合、特にrfaIとrfaQを発現抑制させた場合に生産量が大きく増加したが、rfaIを発現抑制させた菌株では1.74g/Lが生産された。
【0178】
rffD及びrfaD発現抑制sRNAが導入されたBTC1菌株及びrfaI発現抑制sRNAが導入されたDVIO菌株を、SEM及びTEMから観察した結果、細胞外膜小胞体の形成及び分泌が顕著に増加していることを確認した(
図6D~
図6F)。特に、rfaI発現抑制sRNAが導入されたDVIO菌株を培養したとき、フラスコ壁面に細胞外膜小胞体、デオキシビオラセイン及び細胞滓などが固まっていることを発見したが、これを顕微鏡で観察した写真は、
図7Eの通りである。
【0179】
【0180】
実施例5.細胞形態変形と小胞体形成のシナジー効果確認
現在まで得られた結果に基づき、各カテゴリー別に最も効果が良かった遺伝子操作標的の組合せによりシナジー効果をテストしようとした。
【0181】
同時多重標的遺伝子ノックダウンのためのsRNAプラスミドクローニングは、次の通りに行われた。一番目のsRNA片は、[配列番号43]及び[配列番号44]プライマーを用いてPCR増幅され、二番目のsRNA片を含んでいるプラスミドは、[配列番号45]及び[配列番号46]プライマーを用いて逆PCRにより線形化された。このように生成された2のsRNA含有片を、ギブソンアセンブリーを用いて合わせ、二重ノックダウンのためのsRNAプラスミドを完成した。sRNAを含んでいるプラスミドに大腸菌plsBCを挿入するために、pTrc99A-plsBCプラスミドをテンプレートとし、[配列番号47]及び[配列番号48]プライマーを用いてplsBC遺伝子をPCR増幅し、これをsRNA含むプラスミドのSphIサイトに挿入した。sRNAを含んでいるプラスミドにcav1遺伝子を挿入するために、pTrc99A-cav1プラスミドをテンプレートとし、[配列番号47]及び[配列番号49]プライマーを用いて、sRNAを含んでいるプラスミドのSphIサイトに挿入した。
【0182】
【0183】
まず、β生産菌株の場合、実施例2の細胞膜代謝回路関連遺伝子を発現抑制した時には生産量増加が確認されなかったので、実施例3の細胞内膜小胞体発現遺伝子(cav1)過発現と、実施例4の細胞外膜小胞体発現標的遺伝子(rfaD、rffD、rfaD)の発現抑制とを組み合わせて適用した。まず、細胞外膜小胞体発現標的遺伝子3個をそれぞれ異なるように組み合わせて発現抑制したが、rfaDとrffDを同時に発現抑制した時に、β生産量が34.2mg/Lと大きく増加した(
図6B)。当該菌株にさらに細胞内膜小胞体形成のためにcav1遺伝子を過発現させたが、生産量がむしろ減少した(
図6G)。
【0184】
デオキシビオラセイン生産菌株では、実施例2の細胞膜代謝回路標的遺伝子(mrdB)、実施例3の細胞内膜小胞体発現遺伝子(cav1)、そして実施例4の細胞外膜小胞体発現標的遺伝子(rfaI)を2個ずつ或いは3個ずつ組み合わせて発現させ、デオキシビオラセイン生産量をテストした。その結果、rfaI発現抑制cav1過発現菌株において1.9g/Lデオキシビオラセイン生産量を示し、最も多く増産した結果を示した(
図6H)。
【0185】
rffD及びrfaD発現抑制sRNA及びcav1-plsBCが導入されたBTC1菌株と、rfaI発現抑制sRNA及びcav1が導入されたDVIO菌株を、SEMとTEMで観察した結果、細胞外膜小胞体の形成及び分泌の増加と内膜小胞体形成の増加が同時に発現することを確認した(
図6I及び
図6J)。
【0186】
実施例6.他のにじ色素生産に対する細胞膜拡張戦略の適用
先の実施例で適用した戦略を、他の疎水性色素にも適用し、本発明の汎用性を示そうとした。そこで、カロテノイド代表化合物であるβ-カロテンとビオラセイン類似体代表化合物であるデオキシビオラセインの増産に最も効果的であった細胞膜エンジニアリング戦略を、それぞれのカテゴリーの残りのじ色素に適用した。β-カロテンを増産する上で、cav1及びplsBC遺伝子の同時過発現を用いた細胞内膜小胞体形成と、rffD及びrfaD遺伝子の発現抑制を用いた細胞外膜小胞体形成がそれぞれ効果的であったので、それらの戦略を、ゼアキサンチン及びアスタキサンチン生産菌株であるZEA20及びATX68に適用し、テストした。その結果、細胞内膜小胞体形成は、ゼアキサンチン生産をむしろ減少させ、アスタキサンチン生産は少量増加させた。一方、細胞外膜小胞体形成は、ゼアキサンチン及びアスタキサンチン生産を全て増加させた(それぞれ、18.38mg/L;
図7H、22.69mg/L;
図7I)。ビオラセイン類似体の場合、細胞内膜小胞体と外膜小胞体の同時発現が最も高いデオキシビオラセイン生産量につながったので、細胞内膜小胞体と外膜小胞体を個別に又は同時に発現させることによってその効果を調べようとした。そのために、(1)細胞外膜小胞体の過発現のためのrfaIノックダウン、(2)細胞内膜小胞体の過発現のためのcav1の過発現及び、(3)rfaIノックダウン及びcav1過発現、の3つの戦略をテストした。プロビオラセインとビオラセインの場合、細胞内膜小胞体と外膜小胞体を同時発現させた時に、最も高い生産量を得ることができた(それぞれ、402mg/L;
図7K、2.84g/L;
図7L)。これに対し、プロデオキシビオラセインの場合には、細胞外膜小胞体のみ発現させた時に最も高い生産量を得ることができた(341mg/L;
図7J)。このとき、プロビオラセインとプロデオキシビオラセインの場合は、商業的に販売されている試薬が得られず、HPLCと連結されたフラクションコレクター(fraction collector)を用いて当該物質を精製後に定量した。
【0187】
実施例7.にじ色素高効率生産のための流加式発酵工程開発
先の実施例で構築された組換え大腸菌菌株を用いて、6.6L発酵器で流加式発酵を行おうとした。流加式発酵は、次のような条件で行われた。カロテノイド生産菌株の場合、30g/Lブドウ糖又はグリセロール、3g/L酵母抽出物及び抗生剤が含まれた1.6L R/2培地(pH6.95)を添加した6.6L発酵器(BioFlo 320,Eppendorf)で培養された。ビオラセイン誘導体生産菌株の場合、20g/Lブドウ糖又はグリセロール、3g/L酵母抽出物、3g/L(NH4)2SO4及び抗生剤が含まれた1.95L R/2培地(pH6.8)を添加した6.6L発酵器(BioFlo 320,Eppendorf)で培養された。カロテノイド生産菌株の場合、コロニーを、適切な濃度の抗生剤が添加された3mLのTB培地に接種し、30℃で培養した。ビオラセイン類似体の場合、コロニーを、適切な濃度の抗生剤が添加された10mL LB培地に接種し、37℃で一晩培養した。その後、用意したカロテノイド及びビオラセイン類似体培養液を、3g/L酵母抽出物、20g/Lグリセロール又はブドウ糖(ビオラセイン類似体の場合、さらに3g/L(NH4)2SO4)が添加された50mLのR/2培地が入っている250mLバッフルフラスコに継代した後、30℃、200rpmで培養した。OD600が3~4になるまで培養を進行した後、発酵器に接種した。pHは28%(v/v)アンモニア水溶液を用いて6.8に維持し、温度は、30℃を維持した。溶存酸素度(DO)値は、2L/minの空気、自動で1,000r.p.m.まで調節可能な撹拌速度、そして増加する酸素流量によって40%に維持された。栄養供給は、pH-stat戦略で進行されたが、pH値が、カロテノイドの場合に7、ビオラセイン誘導体の場合に6.85を超えた時に自動でフィードが流入するように設定された。カロテノイド生産のためのフィード溶液は、1Lにつき次の成分を有する:800gグルコース又は817gグリセロール、6mL TMS及び12g MgSO4・7H2O。ビオラセイン誘導体生産のためのフィード溶液は、1Lにつき次の成分を有する:650gグルコース又は800gグリセロール、6mL TMS、85g(NH4)2SO4及び8g MgSO4・7H2O。接種後OD600値が20~30に達した時に、1mM IPTGを用いて外来タンパク質の発現が誘導された。
【0188】
各色素に関して最も優れた生産能を示した組換え大腸菌を流加式培養して得た各色素の濃度は、次の通りである:
i)アスタキサンチン生産組換え微生物ATX68(pWAS、rffD、rfaD発現抑制):322mg/L(
図8A);
ii)β-カロテン生産組換え微生物BTC1(pWAS、rffD、rfaD発現抑制):343mg/L(
図8B);
iii)ゼアキサンチン生産組換え微生物ZEA20(pWAS、rffD、rfaD発現抑制):218mg/L(
図8C);
iv)プロビオラセイン生産組換え微生物PVIO(pWAS、rfaI発現抑制及びcav1過発現):1.3g/L(
図8D);
v)プロデオキシビオラセイン生産組換え微生物PDVIO(pWAS、rfaI発現抑制):0.855g/L(
図8E);
vi)ビオラセイン生産組換え微生物VIO(pWAS、rfaI発現抑制及びcav1過発現):6.69g/Lのビオラセイン生産(1.39g/Lのデオキシビオラセインも共に生産)(
図8F);
vii)デオキシビオラセイン生産組換え微生物DVIO(pWAS、rfaI発現抑制及びcav1過発現):11.3g/L(
図8G)。
【0189】
このように、本発明で開発した大腸菌菌株を用いて7種の疎水性色素をいずれも高濃度で生産できたという点は、本発明が疎水性物質の高効率生産全般に効果的であることを示唆する。
本発明の細胞膜エンジニアリング方法は、大きく、3つの要素で構成されるが、その第一は、細胞分裂関連遺伝子の発現抑制によって細胞の形態を変形させることであり、その第二は、細胞内膜小胞体を発現させる遺伝子を導入又は過発現して細胞内膜構造を拡張させることであり、その第三は、細胞外膜小胞体を発現させるために、細胞膜代謝と関連した標的遺伝子の発現抑制によって細胞外膜小胞体を過生産することである。
これら3つの方法は、単独で使用する場合又は組み合わせる場合にシナジー効果を示し、疎水性不溶性物質を高効率で生産するのに有用である。本発明に係る疎水性物質生産能に優れた組換え微生物のスクリーニング方法によって開発されたカロテノイド又はビオラセイン類似体の高効率生産用組換え微生物は、天然色素作製微生物として有用である。また、本発明で開発した天然色素生産技術は、画期的な生産能の増加を遂げた。したがって、本発明は、産業的、医学的に有用な様々な代謝産物の効率的生産のための組換え菌株の作製及び効率的製造方法の確立に用いることができ、有用である。
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、上記の具体的記述は単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。