(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074158
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F27B 9/32 20060101AFI20220510BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20220510BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20220510BHJP
F27B 9/36 20060101ALI20220510BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F27B9/32
F27D7/02 Z
F27D7/06 B
F27B9/36
F27D1/00 U
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027893
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2020085598の分割
【原出願日】2020-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】青海 元
(57)【要約】
【課題】被処理物に対してより高温で熱処理を行うことができ、且つ、被処理物が配置される空間のガスの成分を所望の値により確実に保つことのできる熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置1は、断熱体9と、密封体13と、を有している。断熱体9は、被処理物100を熱処理するための熱処理空間10を取り囲んでいる。密封体13は、断熱体9の周囲を気密的に覆うことで、ガスの通過を規制する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を熱処理するための熱処理空間を取り囲む断熱体と、
前記断熱体の周囲を気密的に覆うことでガスの通過を規制するための密封体と、を備えていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記密封体は、複数の部材を組み合わせて形成されていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理装置であって、
複数の前記部材の少なくとも2つは、シール材を介して接続されていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の熱処理装置であって、
前記密封体で囲まれた空間にパージガスを供給するための、パージガス供給部をさらに備えていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の熱処理装置であって、
前記断熱体と前記密封体との間に、前記パージガスの層を形成するためのパージガス層形成空間が形成されていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の熱処理装置であって、
前記パージガス層形成空間は、少なくとも、前記熱処理空間の上方、および、水平方向における前記熱処理空間の側方に形成されていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項7】
請求項4~請求項6の何れか1項に記載の熱処理装置であって、
前記熱処理空間内の前記被処理物を加熱するためのヒータをさらに有し、
前記ヒータは、前記熱処理空間に配置される発熱部と、前記熱処理空間の外部に配置される端子部と、を有し、
前記パージガス供給部は、前記端子部に向けて前記パージガスを供給可能であることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の熱処理装置であって、
前記断熱体は、多孔質材料を用いて形成されていることを特徴とする、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属などの被処理物に熱処理が行われることがある(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、熱処理炉内に耐火断熱レンガを配置する構成が開示されている。耐火断熱レンガ内には、バーナーなどの熱源が配置されている。バーナーは、耐火断熱レンガ内の空間を加熱する。この熱によって、被処理物が加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱処理時の熱処理炉内の空間の温度が、たとえば1100℃を超える高温の場合、金属製の熱処理炉であれば、熱間時における当該熱処理炉の強度が不足し易い。このため、金属に代えて、上述した耐火断熱レンガが熱処理炉を構成する部材として用いられる。このようなレンガであれば、熱処理時において熱処理炉の過度の強度低下を招くことを抑制できる。
【0005】
しかしながら、レンガであれば、緻密性が高められたレンガを用いても、気密性を十分に確保できない場合がある。このため、レンガ内の空隙を通してガスが熱処理炉の内部と外部とを通過してしまう。よって、熱処理炉内におけるガスの成分を所望の値に保つことが難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、被処理物に対してより高温で熱処理を行うことができ、且つ、被処理物が配置される空間のガスの成分を所望の値により確実に保つことのできる熱処理装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、被処理物を熱処理するための熱処理空間を取り囲む断熱体と、前記断熱体の周囲を気密的に覆うことでガスの通過を規制するための密封体と、を備えている。
【0008】
この構成によると、密封体は、断熱体を介して熱処理空間と向かい合うこととなる。このため、被処理物の熱処理時において、熱処理空間内の熱は、断熱材を介して密封体に伝わる。よって、熱処理空間内の高熱が密封体に伝わることを抑制できる。このため、密封体の温度上昇が抑制されるので、密封体は、耐熱性をそれほど要求されず、強度および気密性に優れた材質で形成されることが可能である。これにより、熱処理空間への不要なガスの進入を、十分な強度を有する密封体によってより確実に抑制できる。よって、熱処理空間のガスの成分を所望の値に、より確実に保つことができる。また、密封体の内側に断熱体が配置されるので、断熱体は、密閉性が低くてもよい。よって、断熱体は、密閉性についての制限を受けることなく、より高い耐熱性を有する材料で形成されることができる。以上の次第で、被処理物に対してより高温で熱処理を行うことができ、且つ、被処理物が配置される熱処理空間のガスの成分を所望の値に、より確実に保つことのできる熱処理装置を提供することができる。
【0009】
(2)好ましくは、前記密封体は、複数の部材を組み合わせて形成されている。
【0010】
この構成によると、密封体の形状の自由度をより高くできる。また、密封体の組立および解体をより容易に行うことができる。
【0011】
(3)より好ましくは、複数の前記部材の少なくとも2つは、シール材を介して接続されている。
【0012】
この構成によると、密封体における複数の部材の接続部において、気密性を確保することが重要となる。そして、複数の部材をシール材を介して接続することで、複数の部材間の気密性を、より容易に、且つ、より確実に確保できる。しかも、前述したように、密封体の使用温度は比較的低くて済む。よって、シール材の材質を、耐熱性の制限を比較的受けずに設定することができる。
【0013】
(4)好ましくは、前記熱処理装置は、前記密封体で囲まれた空間にパージガスを供給するための、パージガス供給部をさらに備えている。
【0014】
この構成によると、被処理物の熱処理時において、熱処理空間内で生じた不要なガスは、パージガスによって除去され得る。これにより、熱処理空間内の雰囲気を、より清浄な状態に維持することができる。
【0015】
(5)より好ましくは、前記熱処理装置において、前記断熱体と前記密封体との間に、前記パージガスの層を形成するためのパージガス層形成空間が形成されている。
【0016】
この構成によると、パージガス層形成空間が形成されることで、パージガスを、より広い範囲に均等に供給することができる。これにより、密封体内の雰囲気を、より清浄な状態に維持することができる。
【0017】
(6)より好ましくは、前記パージガス層形成空間は、少なくとも前記熱処理空間の上方、および、水平方向における前記熱処理空間の側方に形成されている。
【0018】
この構成によると、パージガス層形成空間は、断熱体の周囲を取り囲むように配置される。これにより、熱処理空間の周囲において、より多くのパージガス層形成空間を形成することができる。
【0019】
(7)好ましくは、前記熱処理装置は、前記熱処理空間内の前記被処理物を加熱するためのヒータをさらに有し、前記ヒータは、前記熱処理空間に配置される発熱部と、前記熱処理空間の外部に配置される端子部と、を有し、前記パージガス供給部は、前記端子部に向けて前記パージガスを供給可能である。
【0020】
この構成によると、端子部を冷却するための冷却用ガスとしてパージガスを利用することができる。これにより、端子部を高熱から保護するための専用のクーラが不要となり、熱処理装置の構成をより簡素にできる。
【0021】
(8)好ましくは、前記断熱体は、多孔質材料を用いて形成されている。
【0022】
この構成によると、耐熱性の高い材料を焼結することなどにより、より耐熱性の高い断熱体を実現できる。また、パージガスを用いて断熱体の内側の熱処理空間をパージする場合に、断熱体の気孔を通してパージガスを熱処理空間に供給できる。これにより、より短時間でパージ(ガス置換)を完了することができる。また、多孔質の断熱体であれば、比較的蓄熱量が小さい。よって、熱処理空間の加熱時に、断熱体もより迅速に昇温できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、被処理物に対してより高温で熱処理を行うことができ、且つ、被処理物が配置される空間のガスの成分を所望の値により確実に保つことのできる熱処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱処理装置の模式的な側面図であり、一部を省略して示している。
【
図2】熱処理装置の主要部における、進行方向と直交する断面図である。
【
図3】
図2に示す熱処理装置における密封体の下部の周辺の拡大図である。
【
図4】
図2に示す熱処理装置の密封体のうち上部の周辺の拡大図である。
【
図5】
図2に示す熱処理装置のうち上下方向における中間部の周辺の拡大図であり、密封体の上部の周辺部分を示している。
【
図6】
図2に示す熱処理装置のうち上下方向における中間部の周辺の拡大図であり、
図5に示す部分の下方側部分を示している。
【
図7】
図2に示す熱処理装置のうち上下方向における中間部の周辺の拡大図であり、
図6に示す部分の下方側部分を示している。
【
図8】熱処理装置の動作の一例を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、熱処理装置として広く適用することができる。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1の模式的な側面図であり、一部を省略して示している。
図2は、熱処理装置1の主要部における、進行方向X1と直交する断面図である。なお、本実施形態では、
図2の断面図における上下および左右を、単に「上下」、「左右」として説明する。
図3は、
図2に示す熱処理装置1における密封体13の下部47の周辺の拡大図である。
図4は、
図2に示す熱処理装置1の密封体13のうちの上部48の周辺の拡大図である。
図5は、
図2に示す熱処理装置1のうち上下方向における中間部の周辺の拡大図であり、密封体13の上部48の周辺部分を示している。
図6は、
図2に示す熱処理装置1のうち上下方向における中間部の周辺の拡大図であり、
図5に示す部分の下方側部分を示している。
図7は、
図2に示す熱処理装置1のうち上下方向における中間部の周辺の拡大図であり、
図6に示す部分の下方側部分を示している。
【0027】
図1および
図2を参照して、熱処理装置1は、被処理物100を熱処理するために設けられている。この熱処理として、焼入処理、浸炭処理、焼戻処理、窒化処理、焼鈍処理、その他の熱処理を例示することができる。本実施形態では、熱処理装置1が、ベルト式連続浸炭焼入炉である場合を例に説明する。また、本実施形態では、被処理物100は、金属部品である。熱処理装置1は、複数の被処理物100を、連続的に浸炭処理するように構成されている。本実施形態では、被処理物100を1100℃程度まで加熱するように構成されている。
【0028】
熱処理装置1は、搬送装置2と、処理室ユニット3と、を有している。
【0029】
搬送装置2は、被処理物100を進行方向X1に沿って処理室ユニット3の外部から処理室ユニット3内に搬送し、さらに、当該被処理物100を処理室ユニット3の外部に搬送するために設けられている。
【0030】
搬送装置2は、無端状のベルト4と、複数のローラ5と、を有している。
【0031】
ベルト4は、たとえば、メッシュベルトであり、可撓性を有している。このベルト4の各部は、処理室ユニット3の内部と外部とを循環するようにローラ5によって駆動される。ローラ5は、ベルト4のたとえば内周面に接触しており、ベルト4を支持している。ローラ5は、たとえば、4つ設けられている。ローラ5が回転することにより、ベルト4は、複数のローラ5の周囲を回転する。
【0032】
上記の構成を有する搬送装置2によって搬送される被処理物100は、処理室ユニット3において、加熱処理を施される。処理室ユニット3は、当該処理室ユニット3の入口3aおよび出口3bが開放された構成を有している。処理室ユニット3の右側に温度センサ18が配置され、且つ、処理室ユニット3の左側には温度センサ18が配置されていない点以外、処理室ユニット3は、略左右対称に形成されている。
【0033】
処理室ユニット3は、入口3aと、入口側排気管7と、出口3bと、出口側排気管8と、断熱体9と、熱処理空間10と、ベース部材11と、ヒータユニット12と、密封体13と、パージガス層形成空間14と、パージガス供給部15と、熱処理用ガス供給部16と、サンプリング管17と、温度センサ18と、を有している。
【0034】
入口3aは、ベルト4および被処理物100が処理室ユニット3の熱処理空間10に導入される部分として形成されている。本実施形態では、入口3aは、
図1における処理室ユニット3の左端に形成されている。入口3aの近傍には、入口側排気管7が配置されている。
【0035】
入口側排気管7は、処理室ユニット3の密封体13内に存在するガスを当該密封体13(熱処理空間10)の外部に排出するために配置されている。この入口側排気管7は、密封体13のたとえば上端部に接続されており、図示しないダクトなどに向けて、密封体13の内側のガスを排出可能である。入口側排気管7の一端(下端)は、熱処理空間10に接続されている。これにより、断熱体9内のガス(空気)および熱処理空間10内のガスは、入口側排気管7を通して密封体13の外部に排出されることが可能である。
【0036】
出口3bは、ベルト4および被処理物100が処理室ユニット3の熱処理空間10から出される部分として形成されている。本実施形態では、出口3bは、
図1における処理室ユニット3の右端に形成されている。出口3bの近傍には、出口側排気管8が配置されている。
【0037】
出口側排気管8は、処理室ユニット3の密封体13内に存在するガスを当該密封体13(熱処理空間10)の外部に排出するために配置されている。この出口側排気管8は、密封体13のたとえば上端部に接続されており、図示しないダクトなどに向けて、密封体13の内側のガスを排出可能である。出口側排気管8の一端(下端)は、熱処理空間10に接続されている。これにより、断熱体9内のガス(空気)および熱処理空間10内のガスは、出口側排気管8を通して密封体13の外部に排出されることが可能である。上記の構成により、入口側排気管7と出口側排気管8とが協働して、密封体13(熱処理空間10)内のガスを排出する。進行方向X1から見て、密封体13は、断熱体9を取り囲んでいる。
【0038】
断熱体9は、被処理物100を熱処理するための熱処理空間10を取り囲むように配置されている。この断熱体9は、入口3aおよび出口3bに開放された熱処理空間10を形成するとともに、熱処理空間10と、熱処理空間10の外側の空間との間において、熱の伝達を遮断する。本実施形態では、断熱体9は、複数の断熱部材を用いて形成されている。また、本実施形態では、断熱体9は、多孔質材料を用いて形成されており、ファイバー状の材料を含んで構成される。断熱体9の構成として、たとえば、アルミナ(Al2O3)およびシリカ(SiO2)を所定の割合で配合し、且つ、所定のバインダーを用いて固形状とした構成を例示することができる。すなわち、断熱体9は、たとえばセラミックファイバーを用いて形成される。断熱体9をセラミックファイバーで形成した場合、断熱体9を緻密レンガで形成した場合と比べて、断熱体9の内部のガスの外部に放出し易くできる。さらに、熱処理装置1の製造コストをより低減できる。
【0039】
断熱体9の耐熱温度(許容使用温度)は、たとえば、1200℃~1500℃程度である。上記のように、断熱体9は、気孔を有しており、パージガス層形成空間14内のガスは、断熱体9を通って熱処理空間10へ到達可能である。なお、本実施形態では、断熱体9が多孔質材料を用いて形成される形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。たとえば、断熱体9は、緻密体(実質的に気孔率がゼロである材料)によって形成されていてもよい。
【0040】
断熱体9は、下側断熱材21と、上側断熱材22と、右側断熱材23と、左側断熱材24と、を有している。
【0041】
各断熱材21~24は、たとえば、直方体のブロック状に形成されており、所定の大きさを有している。
【0042】
下側断熱材21は、熱処理空間10の下側に熱処理空間10からの熱が伝わることを抑制するために設けられている。下側断熱材21は、断熱体9の下部の一部を形成している。下側断熱材21の左右両側方には、右側断熱材23および左側断熱材24が配置されている。下側断熱材21は、右側断熱材23の下部および左側断熱材24の下部に挟まれている。
【0043】
右側断熱材23は、熱処理空間10の右側に向けて熱処理空間10からの熱が伝わることを抑制するために設けられている。右側断熱材23は、垂直に延びるように配置されている。
【0044】
右側断熱材23の内側面は、ベルト4と左右に向かい合うように配置されている。一方、右側断熱材23の外側面は、密封体13と左右に向かい合うように配置されている。右側断熱材23と左右対称に左側断熱材24が配置されている。
【0045】
左側断熱材24は、熱処理空間10の左側に向けて熱処理空間10からの熱が伝わることを抑制するために設けられている。以下、左側断熱材24の詳細な説明は省略する。右側断熱材23および左側断熱材24は、協働して上側断熱材22を支持している。
【0046】
上側断熱材22は、熱処理空間10の上側に向けて熱処理空間10からの熱が伝わることを抑制するために設けられている。上側断熱材22は、右側断熱材23の上部および左側断熱材24の上部に挟まれている。
【0047】
上記の構成により、下側断熱材21、右側断熱材23、左側断熱材24、および、上側断熱材22によって囲まれた空間としての熱処理空間10が形成されている。熱処理空間10は、進行方向X1と直交する断面において、たとえば矩形状の空間を形成しており、ベルト4の上部4aにおける当該ベルト4の進行方向X1に沿って延びている。この熱処理空間10内には、ベース部材11が配置されている。
【0048】
ベース部材11は、熱処理空間10内においてベルト4を受けるために設けられている。ベース部材11は、熱処理空間10の床としての下側断熱材21の上部に支持されており、ベルト4を支持している。これにより、ベルト4は、被処理物100を支持した状態で、ベース部材11に受けられる。熱処理空間10内は、ヒータユニット12によって加熱される。
【0049】
ヒータユニット12は、熱処理空間10内の雰囲気(熱処理空間10内のガス)および被処理物100を加熱するために設けられている。ヒータユニット12は、1箇所または進行方向X1に沿って複数箇所に配置される。
図2では、1つのヒータユニット12が示されている。
【0050】
本実施形態では、ヒータユニット12は、上下に離隔して配置された複数のヒータとしての上側ヒータ26および下側ヒータ27を含んでいる。本実施形態では、上側ヒータ26および下側ヒータ27は、たとえば、電熱ヒータである。
【0051】
上側ヒータ26は、熱処理空間10内の上部において熱処理空間10内のガスおよび被処理物100を加熱するために設けられている。上側ヒータ26は、断熱体9を左右に貫通するように配置されている。
【0052】
上側ヒータ26は、左右に延びる細長い棒状に形成されたヒータ本体31と、電線32,33と、ガイド部材34,35と、を有している。
【0053】
ヒータ本体31は、左右両端の端子部31a,31bと、中間部31c,31dと、発熱部31eと、を有している。左右方向に沿って、端子部31a、中間部31c、発熱部31e、中間部31d、端子部31bの順に配置されている。
【0054】
端子部31a,31bは、ヒータ本体31の両端部に配置されている。端子部31a,31bは、中間部31c,31d内を通る導電部材(図示せず)を介して、発熱部31eに電気的に接続されている。端子部31a,31bは、熱処理空間10の外部に配置されている。端子部31aは、パージガス層形成空間14の後述する右側空間53に配置されており、端子部31bは、パージガス層形成空間14の後述する左側空間54に配置されている。端子部31a,31bに挟まれるようにして、中間部31c,31dが配置されている。
【0055】
中間部31c,31dは、断熱体9に支持される部分として設けられた、発熱しない部分である。中間部31c,31dは、対応する右側断熱材23の上部および左側断熱材24の上部を貫通している。
【0056】
中間部31c,31dには、環状の固定部材36が嵌合されている。これら一対の固定部材36は、左側断熱材24および右側断熱材23を挟むように配置されている。これにより、ヒータ本体31は、断熱体9に対する変位を規制された状態で、断熱体9に保持されている。中間部31c,31dの間に発熱部31eが配置されている。
【0057】
発熱部31eは、たとえば、電熱線を有しており、端子部31a,31bを通して外部電源(図示せず)から与えられた電力によって発熱するように構成されている。発熱部31eは、熱処理空間10の上部に配置されている。
【0058】
発熱部31eに電力を供給するための電線32,33の一端は、対応する端子部31a,31bに固定されている。これらの電線32,33は、対応する右側空間53および左側空間54に配置されている。電線32,33は、対応するガイド部材34,35を介して、外部電源に電気的に接続されている。
【0059】
ガイド部材34,35は、密封体13を貫通する軸状部分として設けられている。ガイド部材34,35は、密封体13の後述する第1右側板61および第1左側板71を貫通しており、且つ、側板61,71のうち貫通している箇所の縁部との間を気密的にシールするシール構造を有している。ガイド部材34,35は、導電体(金属)を用いて形成され対応する側板61,71を貫通するボルト34a,35aを有している。これらのボルト34a,35aは、対応する電線32,33の他端と接続されており、且つ、密封体13で囲まれた空間の外側において、外部電源に電気的に接続されている。上記の構成を有する上側ヒータ26の下方に、下側ヒータ27が配置されている。
【0060】
下側ヒータ27は、熱処理空間10内の下部において熱処理空間10内のガスおよび被処理物100を加熱するために設けられている。
【0061】
下側ヒータ27は、ヒータ本体41と、電線42,43と、ガイド部材44,45と、を有している。本実施形態では、下側ヒータ27は、上側ヒータ26と上下対称に配置されている。
【0062】
下側ヒータ27のヒータ本体41は、左右両端の端子部41a,41b、中間部41c,41d、および、発熱部41eを有しており、上側ヒータ26のヒータ本体31と同じ構成を有している。下側ヒータ27のヒータ本体41の中間部41c,41dは、対応する右側断熱材23および左側断熱材24に支持されている。中間部41c,41dは、固定部材46によって断熱体9に固定されている。
【0063】
下側ヒータ27の端子部41aは、熱処理空間10の外側において、パージガス層形成空間14の右側空間53に配置されており、端子部41bは、パージガス層形成空間14の左側空間54に配置されている。下側ヒータ27の発熱部41eは、端子部41a,41b、電線42,43、および、ガイド部材44,45を通して外部電源(図示せず)から与えられた電力によって発熱するように構成されており、熱処理空間10の下部に配置されている。
【0064】
電線42,43は、対応する右側空間53および左側空間54に配置されている。電線42,43の一端は、対応するガイド部材44,45に接続されている。電線42,43は、対応するガイド部材44,45を介して、外部電源(図示せず)に電気的に接続されている。
【0065】
ガイド部材44,45は、ガイド部材34,35と同じ構成を有している。ガイド部材44,45は、密封体13の後述する第5右側板65および第5左側板75を貫通しており、且つ、側板65,75のうち貫通している箇所の縁部との間を気密的にシールするシール構造を有している。ガイド部材44,45は、導電体(金属)を用いて形成され対応する側板65,75を貫通するボルト44a,45aを有している。これらのボルト44a,45aは、対応する電線42,43と接続されており、且つ、密封体13で囲まれた空間の外側において、外部電源に電気的に接続されている。
【0066】
密封体13は、進行方向X1から見て、断熱体9の周囲を気密的に覆うことで、熱処理空間10から排出されるガスの通過、および、密封体13の外部から密封体13の内部へ向かうガスの通過を規制するために設けられている。なお、密封体13は、入口3aおよび出口3bのそれぞれにおいて熱処理空間10は塞がないように構成されており、熱処理空間10に対するベルト4および被処理物100の搬入および搬出が可能とされている。密封体13は、進行方向X1に延びる筒状に形成されており、
図2に示す断面図において、断熱体9の周囲を取り囲んでいる。すなわち、密封体13は、断熱体9の下方、上方、右方、および、左方に配置されている。本実施形態では、密封体13は、複数の金属部材を組み合わせて形成されている。
【0067】
また、密封体13と断熱体9は、協働して、パージガス層形成空間14を形成している。パージガス層形成空間14は、断熱体9と密封体13との間にパージガスの層を形成するために設けられている。パージガスは、不活性ガスであり、本実施形態では、窒素ガスである。パージガス層形成空間14は、熱処理空間10の上方、下方、および、水平方向における熱処理空間の側方(右方および左方)に配置されている。
【0068】
そして、パージガス層形成空間14、すなわち、密封体13で囲まれた空間にパージガスを供給するための、パージガス供給部15が設けられている。パージガス供給部15が設けられていることにより、パージガスを、パージガス層形成空間14から断熱体9を通して熱処理空間10へ供給できる。そして、断熱体9内のガス(空気)および熱処理空間10内のガスを、パージガスとともに熱処理装置1の外部に排出させることができる。以下、密封体13、パージガス層形成空間14、および、パージガス供給部15について、より具体的に説明する。
【0069】
密封体13は、下部47と、上部48と、右側部49と、左側部50と、を有している。
【0070】
パージガス層形成空間14は、下側空間51と、上側空間52と、右側空間53と、左側空間54と、を有している。
【0071】
パージガス供給部15は、下側供給部55と、上側供給部56と、右側供給部57と、左側供給部58と、を有している。
【0072】
図1~
図3を参照して、密封体13の下部47は、断熱体9を支持するとともに、下側空間51を形成する部分として設けられている。下部47は、左右に細長い矩形状の部分として儲けられている。
【0073】
密封体13の下部47は、複数の板部材としての第1板部47aと、第2板部47bと、中間梁47cと、を用いて形成されている。
【0074】
第1板部47a、および、中間梁47cは、SUS材などの金属板に曲げ加工を施して形成されている。なお、密封体13を構成する金属部材は、本実施形態では、SUS材(ステンレス材)によって形成されている。第2板部47bは、平らな金属板を用いて形成されている。第1板部47aと第2板部47bとが向かい合わされた状態で配置され、これら第1板部47aと第2板部47bとの間に中間梁47cが配置されている。第1板部47aは、上下の向きが逆さにされたU字状に形成されている。
【0075】
第1板部47aは、上部47dと、左右一対の側部47e,47fと、左右一対の台座部47g、47hと、を有している。
【0076】
上部47dは、第2板部47bと平行に(水平に)延びている。上部47dは、下側断熱材21、右側断熱材23、左側断熱材24、右側部49および左側部50を支持している。上部47dの左右両端部から、側部47e,47fが下方に延びている。台座部47g,47hは、側部47e,47fの下端部においてベース部材11から遠ざかる方向に水平に延びている。台座部47g,47hは、図示しないベース部材に、ボルトなどの固定部材を用いて固定されている。上記の構成を有する第1板部47aの上部47dの下方に、第2板部47bが配置されている。
【0077】
第2板部47bは、第1板部47aの側部47e,47fに挟まれるように配置されている。左右方向における第2板部47bの両端部は、第1板部47aの側部47e,47fに溶接などを用いて固定されており、当該側部47e,47fと気密的に接続されている。そして、左右方向における第1板部47aの中央部に、中間梁47cが配置されている。
【0078】
中間梁47cは、進行方向X1から見て、たとえば、U字状に形成された梁部材であり、進行方向X1に延びている。中間梁47cは、第1板部47aの下面に溶接などを用いて気密的に接続され、且つ、第2板部47bの上面に溶接などを用いて気密的に接続されている。上記の構成により、密封体13の下部47に、第1板部47a、および、第2板部47bによって下側空間51が形成されている。
【0079】
下側空間51は、断熱体9の下側断熱材21と密封体13の第2板部47bとの間にパージガスの層を形成するために設けられている。下側空間51は、熱処理空間10から断熱体9を通して断熱体9の下方に到達した熱が密封体13の外部に向かうことを抑制するために設けられている。下側空間51は、中間梁47cを挟んで左右に分かれて配置されている。下側空間51は、水平方向に扁平な空間であり、上下の長さが、左右の長さよりも短く、且つ、進行方向X1の長さよりも短い。
【0080】
下側空間51のうち、中間梁47cの右側の領域は、第1板部47aの右側の側部47eから中間梁47cにかけて延びている。また、下側空間51のうち中間梁47cの左側の領域は、第1板部47aの左側の側部47fから中間梁47cにかけて延びている。下側空間51は、進行方向X1の両端部において、入口側排気管7および出口側排気管8に接続されている。これにより、各下側空間51内のガスは、入口側排気管7および出口側排気管8の何れかから、密封体13の外部に排出される。下側空間51は、パージガス供給部15の左右一対の下側供給部55,55からのパージガスによって、パージ(ガス置換)が行われる。
【0081】
各下側供給部55は、下側空間51のうち中間梁47cの対応する右側領域および左側領域に接続されたガス供給管として設けられている。すなわち、右側の下側供給部55は、中間梁47cの右側に配置されており、左側の下側供給部55は、中間梁47cの左側に配置されている。各下側供給部55は、密封体13の第2板部47bを貫通するように配置されている。各下側供給部55と第2板部47bとの間の部分は、溶接などによって互いに気密的に接続されている。各下側供給部55は、タンクなどのパージガス供給源(図示せず)に接続されており、パージガスを、下側空間51の対応する領域に供給する。
【0082】
下側空間51に供給されたパージガスは、入口側排気管7または出口側排気管8から密封体13の外部に排出される。下側空間51の上方に、パージガス層形成空間14の上側空間52が配置されている。上側空間52は、密封体13の上部48と、右側部49と、左側部50と、断熱体9の上側断熱材22と、右側断熱材23と、左側断熱材24と、を用いて形成されている。
【0083】
図1、
図2および
図4を参照して、密封体13の上部48は、断熱体9を上方から覆うともに、上側空間52を形成する部分として設けられている。
【0084】
密封体13の上部48は、本実施形態では、平板状の金属板である。上部48は、上側断熱材22、右側断熱材23および左側断熱材24と上下に向かい合うように配置されており、これら上側断熱材22、右側断熱材23および左側断熱材24を上方から覆っている。上側断熱材22、右側断熱材23および左側断熱材24と、上部48とは、上下方向に所定の間隔を隔てて離隔している。上部48の左右両端部は、密封体13の右側部49および左側部50によって支持されている。
【0085】
密封体13の右側部49は、右側断熱材23、上側断熱材22、左側断熱材24、密封体13の左側部50、および、密封体13の上部48と協働して上側空間52を形成するとともに、右側断熱材23と協働して右側空間53を形成するために設けられている。同様に、密封体13の左側部50は、左側断熱材24、上側断熱材22、右側断熱材23、密封体13の右側部49、および、密封体13の上部48と協働して上側空間52を形成するとともに、左側断熱材24と協働して左側空間54を形成するために設けられている。
【0086】
密封体13の右側部49は、上下に並ぶ複数の板部材としての第1~第6右側板61~66と、右側仕切梁67と、を有している。また、密封体13の左側部50は、上下に並ぶ複数の板部材としての第1~第6左側板71~76と、左側仕切梁77と、を有している。
【0087】
第1~第6右側板61~66、右側仕切梁67、第1~第6左側板71~76、および、左側仕切梁77は、それぞれ、金属板を用いて形成されている。
【0088】
第1右側板61および第1左側板71は、それぞれ、上部48の対応する右端部および左端部の下方に配置され、進行方向X1から見てL字状に形成されている。第1右側板61および第1左側板71は、上部48に隣接し鉛直に延びる鉛直部61a,71aと、水平に延びる下端部61b,71bと、を有している。
【0089】
第1右側板61の鉛直部61aは、L字状の金属製の連結部材81およびガスケットなどのシール材82を用いて、上部48の右端部と気密的に接続されている。より具体的には、連結部材81のうち上部48と平行に並ぶ部分が、シール材82を介して上部48の右端部の下面に受けられており、連結部材81と上部48との間が気密的に接続されている。そして、上部48の右端部の貫通孔と、連結部材81のうち上部48と平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材83が、上部48と連結部材81とを互いに固定している。さらに、連結部材81のうち第1右側板61の鉛直部61aと平行に並ぶ部分は、第1右側板61の外側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0090】
上記と同様に、第1左側板71は、L字状の金属製の連結部材101およびガスケットなどのシール材102を用いて、上部48の左端部と気密的に接続されている。より具体的には、連結部材101のうち上部48と平行に並ぶ部分が、シール材102を介して上部48の左端部の下面に受けられており、連結部材101と上部48との間が気密的に接続されている。そして、上部48の左端部の貫通孔と、連結部材101のうち上部48と平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材103が、上部48と連結部材101とを互いに固定している。さらに、連結部材101のうち第1左側板71と平行に並ぶ部分は、第1左側板71の外側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0091】
第1右側板61の鉛直部61aの下端部と右側断熱材23cとの間には、右側仕切梁67が配置されている。右側仕切梁67は、進行方向X1に沿って延びる梁部材であり、本実施形態では、板部材に曲げ加工を施すことで、U字状に形成されている。右側仕切梁67は、第1右側板61の内側面に溶接などによって気密的に接続されており、この第1右側板61に支持されている。また、右側仕切梁67は、右側断熱材23の外側面に接触しており、右側仕切梁67と右側断熱材23との間が塞がれている。
【0092】
上記と同様の構成により、第1左側板71の鉛直部71aの下端部と左側断熱材24との間には、左側仕切梁77が配置されている。左側仕切梁77は、進行方向X1に沿って延びる梁部材であり、本実施形態では、板部材に曲げ加工を施すことで、U字状に形成されている。左側仕切梁77は、第1左側板71の内側面に溶接などによって気密的に接続されており、この第1左側板71に支持されている。また、左側仕切梁77は、左側断熱材24の外側面に接触しており、左側仕切梁77と左側断熱材24cとの間が塞がれている。
【0093】
上記の構成により、処理室ユニット3の上部に上側空間52が形成されている。上側空間52は、上部48、第1右側板61、右側仕切壁67、右側断熱材23、上側断熱材22、左側断熱材24、左側仕切壁77、および、第1左側板71によって形成されている。
【0094】
上側空間52は、断熱体9の上側断熱材22、右側断熱材23、および、左側断熱材24と、密封体13との間にパージガスの層を形成するために設けられている。上側空間52は、パージガスを断熱体9の上方側から断熱体9を通して熱処理空間10へ供給するために設けられている。また、上側空間52は、熱処理空間10から断熱体9を通して断熱体9の上方に到達した熱が密封体13の外部に向かうことを抑制するために設けられている。進行方向X1から見て、上側空間52は、本実施形態では、上下逆向きのU字状の空間である。
【0095】
このような構成により、上側空間52は、上部48と断熱材22~24との間、第1右側板61と右側断熱材23との間、および、第1左側板71と左側断熱材24との間に位置している。上側空間52内のガスは、断熱体9および熱処理空間10を通して、入口側排気管7および出口側排気管8の何れかから、密封体13の外部に排出される。上側空間52は、パージガス供給部15の左右一対の上側供給部56からのパージガスによって、パージ(ガス置換)が行われる。
【0096】
各上側供給部56は、上側空間52に接続されたガス供給管として設けられている。各上側供給部56は、上部48の右端部および左端部に配置されている。このように、上側空間52において、左右に離隔した箇所に複数の上側供給部56が設けられていることにより、上側空間52内において、より均等にパージガスが供給される。各上側供給部56は、密封体13の上部48を貫通するように配置されている。各上側供給部56と上部48との間の部分は、溶接などによって互いに気密的に接続されている。各上側供給部56は、タンクなどのパージガス供給源(図示せず)に接続されており、パージガスを、上側空間52に供給する。
【0097】
上記の構成を有する上側空間52の右下側に、第1右側板61の下端部61bが配置されている。第1右側板61の下端部61bは、前述したように、水平に延びており、第1右側板61の鉛直部61aの下端において、断熱体9から遠ざかる方向(右側)に延びている。第1右側板61の下端部61bには、前述したように、上側ヒータ26のガイド部材34が接続されている。このガイド部材34は、第1右側板61の下端部61bを上下に貫通している。第1右側板61の下端部61bは、L字状の金属製の連結部材84およびガスケットなどのシール材85を介して第2右側板62に接続されている。
【0098】
図2および
図5を参照して、より具体的には、連結部材84のうち第2右側板62と平行に並ぶ部分が、シール材85を介して第2右側板62の内側面に受けられており、連結部材84と第2右側板62との間が気密的に接続されている。そして、第2右側板62の上端部の貫通孔と、連結部材84のうち第2右側板62と平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材86が、第2右側板62と連結部材84とを互いに固定している。さらに、連結部材84のうち第1右側板61の下端部61bと平行に並ぶ部分は、第1右側板61の下側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0099】
第2右側板62は、鉛直に延びる部材であり、右側断熱材23と左右に向かい合って配置されている。また、第2右側板62は、第1右側板61の位置および第3右側板63の位置から右側(断熱体9から遠い側の位置)に配置されている。そして、第2右側板62と右側断熱材23との間に、上側ヒータ26の一部(ガイド部材34の一部および上側ヒータ26の端子部41a)を収容するための空間(右側空間53の一部)が形成されている。また、第2右側板62は、上側ヒータ26の端子部41aと左右に向かい合うように配置されている。第2右側板62の下端部は、L字状の金属製の連結部材87およびガスケットなどのシール材88を介して第3右側板63に接続されている。
【0100】
より具体的には、連結部材87のうち第2右側板62と平行に並ぶ部分が、シール材88を介して第2右側板62の内側面に受けられており、連結部材87と第2右側板62との間が気密的に接続されている。そして、第2右側板62の下端部の貫通孔と、連結部材87のうち第2右側板62と平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材89が、第2右側板62と連結部材87とを互いに固定している。さらに、連結部材87のうち第3右側板63の上端部63aと平行に並ぶ部分は、第3右側板63の上側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0101】
図2、
図5および
図6を参照して、第3右側板63は、進行方向X1から見てU字状に形成された部分であり、右側断熱材23および熱処理空間10内の被処理物100と左右に向かい合うように配置されている。第3右側板63は、上端部63aと、鉛直部63bと、下端部63cと、を有している。第3右側板63の上端部63aは、水平に延びており、第1右側板61の下端部61bと上下に向かい合っている。第3右側板63のうち、左右方向における熱処理空間10側の端部に、第3右側板63の鉛直部63bが配置されている。
【0102】
第3右側板63の鉛直部63bは、第1右側板61の鉛直部61aと上下に並んで配置されている。そして、第3右側板63の下端部63cは、第3右側板63の鉛直部63bの下端において、断熱体9から遠ざかる方向に向けて水平に延びている。第3右側板63の下端部63cは、L字状の金属製の連結部材90およびガスケットなどのシール材91を介して第4右側板64に接続されている。
【0103】
より具体的には、連結部材90のうち第4右側板64と平行に並ぶ部分が、シール材91を介して第4右側板64の内側面に受けられており、連結部材90と第4右側板64との間が気密的に接続されている。そして、第4右側板64の上端部の貫通孔と、連結部材90のうち第4右側板64と平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材92が、第4右側板64と連結部材90とを互いに固定している。さらに、連結部材90のうち第3右側板63の下端部63cと平行に並ぶ部分は、第3右側板63の下側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0104】
図2および
図7を参照して、第4右側板64は、鉛直に延びる部材であり、右側断熱材23と左右に向かい合って配置されている。また、第4右側板64は、第1右側板61の位置および第3右側板63の位置から右側(断熱体9から遠い側の位置)に配置されており、第2右側板62と上下に並んでいる。これにより、右側断熱材23と第4右側板64との間に、下側ヒータ27の一部(ガイド部材44の一部および端子部41aの一部)を収容するための空間が形成されている。第4右側板64の下端部は、L字状の金属製の連結部材93およびガスケットなどのシール材94を介して第5右側板65に接続されている。
【0105】
より具体的には、連結部材93のうち第4右側板64と平行に並ぶ部分が、シール材94を介して第4右側板64の内側面に受けられており、連結部材93と第4右側板64との間が気密的に接続されている。そして、第4右側板64の下端部の貫通孔と、連結部材93のうち第4右側板64と平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材95が、第4右側板64と連結部材93とを互いに固定している。さらに、連結部材93のうち第5右側板65の上端部65aと平行に並ぶ部分は、この上端部65aの上側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0106】
第5右側板65は、進行方向X1から見てL字状に形成された部材であり、第3右側板63の下方に配置されている。また、第5右側板65は、右側断熱材23と左右に並ぶように配置されている。第5右側板65は、上端部65aと、鉛直部65bとを有している。第5右側板65の上端部65aは、水平に延びている。第5右側板65の上端部65aには、前述したように、下側ヒータ27のガイド部材44が接続されている。このガイド部材44は、第5右側板65の上端部65aを上下に貫通している。第5右側板65の鉛直部65bは、鉛直に延びており、L字状の金属製の連結部材96およびガスケットなどのシール材97を介して第6右側板66に接続されている。
【0107】
より具体的には、連結部材96のうち第6右側板66の上端部66aと平行に並ぶ部分が、シール材97を介してこの上端部66aの上側面に受けられており、連結部材96と第6右側板66とが気密的に接続されている。そして、第6右側板66の上端部66aの貫通孔と、連結部材96のうち第6右側板66の上端部66aと平行に並ぶ部分に形成された雌ねじ部とを貫通するねじ部材98が、第6右側板66と連結部材96とを互いに固定している。さらに、連結部材96のうち第5右側板65の鉛直部65bと平行に並ぶ部分は、第5右側板65の鉛直部65bの外側面に溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0108】
図2、
図3、および、
図7を参照して、第6右側板66は、進行方向X1から見てU字状に形成された部分であり、右側断熱材23の下部と左右に向かい合うように配置されている。第6右側板66は、上端部66aと、鉛直部66bと、下端部66cと、を有している。第6右側板66の上端部66aは、水平に延びており、前述したように、連結部材96に接続されている。第6右側板66の鉛直部66bは、右側断熱材23の外側面に接触している。第6右側板66の下端部66cは、第6右側板66の鉛直部66bの下端部において、断熱体9から遠ざかるように水平に延びている。この第6右側板66の下端部66cは、密封体13の下部47における第1板部47aの上部47dに溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0109】
上記の構成により、密封体13の右側部49および右側断熱材23を用いて右側空間53が形成されている。より具体的には、右側部49の右側仕切梁67と、第1~6右側板61~66と、右側断熱材23とによって囲まれた空間が、右側空間53として規定されている。
【0110】
図2、および、
図4~
図7を参照して、右側空間53は、パージガスの層を形成するために設けられている。右側空間53は、パージガスを断熱体9の右方側から断熱体9を通して熱処理空間10へ供給するために設けられている。また、右側空間53は、熱処理空間10から断熱体9を通して断熱体9の右方に到達した熱が密封体13の外部に向かうことを抑制するために設けられている。本実施形態では、右側空間53は、上側ヒータ26および下側ヒータ27の配置されている領域が右側に突出し、且つ、上側ヒータ26および下側ヒータ27間の空間が上記の領域と比べて左右方向に薄くされた空間である。また、右側空間53は、当該右側空間53に収容された上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31a,41a、電線32,42、および、ガイド部材34,44を冷却するための空間として設けられている。右側空間53内のガスは、断熱体9および熱処理空間10を通して、入口側排気管7および出口側排気管8の何れかから、密封体13の外部に排出される。
【0111】
右側空間53は、パージガス供給部15の上下一対の右側供給部57からのパージガスによって、パージ(ガス置換)が行われる。
【0112】
各右側供給部57は、右側空間53に接続されたガス供給管として設けられている。各右側供給部57は、第3右側板63の対応する上端部63aおよび下端部63cにそれぞれ配置されている。このように、右側空間53において、細長い領域を挟んで上下に離隔した幅広領域のそれぞれに右側供給部57が設けられていることにより、右側空間53内において、より均等にパージガスが供給される。各右側供給部57は、第3右側板63の対応する上端部63aおよび下端部63cを貫通するように配置されている。各右側供給部57のうち第3右側板63を貫通する部分の外周面と第3右側板63との間は、溶接などによって互いに気密的に接続されている。各右側供給部57は、タンクなどのパージガス供給源(図示せず)に接続されており、パージガスを、右側空間53に供給する。右側空間53に供給されたパージガスは、上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31a,41a、電線32,42、および、ガイド部材34,44に当てられ、これらの部材を冷却する。そして、右側空間53に供給されたパージガスは、断熱体9および熱処理空間10を通して、入口側排気管7または出口側排気管8から密封体13の外部に排出される。
【0113】
本実施形態では、上記の構成を有する密封体13の右側部49、パージガス層形成空間14の右側空間53、および、パージガス供給部15の右側供給部57と左右対称な構成として、密封体13の左側部50、パージガス層形成空間14の左側空間54、および、パージガス供給部15の左側供給部58が設けられている。以下では、左側部50、左側空間54、および、左側供給部58について、右側部49、右側空間53、および、右側供給部57と左右対称な構成については、説明を省略する場合がある。
【0114】
前述したように、密封体13の左側部50は、複数の板部材としての第1~第6左側板71~76と、左側仕切梁77と、を有している。
【0115】
そして、上側空間52の左下側に、第1左側板71の下端部71bが配置されている。第1左側板71の下端部71bには、前述したように、上側ヒータ26のガイド部材35が接続されている。このガイド部材35は、第1左側板71の下端部71bを上下に貫通している。第1左側板71の下端部71bは、L字状の金属製の連結部材104およびガスケットなどのシール材105を介して第2左側板72に接続されている。連結部材104には、固定用のねじ部材106が取り付けられている。
【0116】
第1左側板71と第2左側板72とを接続する構成は、第1右側板61と第2右側板62とを接続する構成と左右対称な構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0117】
第2左側板72は、鉛直に延びる部材であり、左側断熱材24と左右に向かい合って配置されている。また、第2左側板72は、第1左側板71の位置および第3左側板73の位置から右側(断熱体9から遠い側の位置)に配置されている。これにより、第2左側板72と左側断熱材24との間に、上側ヒータ26の一部(ガイド部材35の一部および端子部31b)を収容するための空間が形成されている。また、第2左側板72は、上側ヒータ26の端子部31bと左右に向かい合うように配置されている。第2左側板72の下端部は、L字状の金属製の連結部材107およびガスケットなどのシール材108を介して第3右側板63に接続されている。連結部材107には、固定用のねじ部材109が取り付けられている。
【0118】
第2左側板72と第3左側板73とを接続する構成は、第2右側板62と第3右側板63とを接続する構成と左右対称な構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0119】
第3左側板73は、進行方向X1から見てU字状に形成された部分であり、左側断熱材24および熱処理空間10内の被処理物100と左右に向かい合うように配置されている。第3左側板73は、上端部73aと、鉛直部73bと、下端部73cと、を有している。第3左側板73の上端部73aは、水平に延びており、第1左側板71の下端部71bと上下に向かい合っている。第3左側板73のうち、熱処理空間10側の端部に、第3左側板73の鉛直部73bが配置されている。
【0120】
第3左側板73の下端部73cは、L字状の金属製の連結部材110およびガスケットなどのシール材111を介して第4左側板74に接続されている。連結部材110には、固定用のねじ部材112が取り付けられている。
【0121】
第3左側板73と第4左側板74とを接続する構成は、第3右側板63と第4右側板64とを接続する構成と左右対称な構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0122】
第4左側板74は、鉛直に延びる部材であり、左側断熱材24と左右に向かい合って配置されている。また、第4左側板74は、第1左側板71の位置および第3左側板73の位置から左側(断熱体9から遠い側の位置)に配置されており、第2左側板72と上下に並んでいる。これにより、第3左側板73と第5左側板75との間に、下側ヒータ27の一部(ガイド部材45の一部および下側ヒータ27の端子部41b)を収容するための空間が形成されている。また、第4左側板74は、下側ヒータ27の端子部41bと左右に向かい合うように配置されている。第4左側板74の下端部は、L字状の金属製の連結部材113およびガスケットなどのシール材114を介して第5左側板75に接続されている。連結部材113には、固定用のねじ部材115が取り付けられている。
【0123】
第4左側板74と第5左側板75とを接続する構成は、第4右側板64と第5右側板65とを接続する構成と左右対称な構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0124】
第5左側板75は、進行方向X1から見てL字状に形成された部材であり、第3左側板73の下方に配置されている。また、第5左側板75は、左側断熱材24と左右に並ぶように配置されている。第5左側板75は、上端部75aと、鉛直部75bとを有している。第5左側板75の上端部75aには、前述したように、下側ヒータ27のガイド部材45が接続されている。このガイド部材45は、第5左側板75の上端部75aを上下に貫通している。第5左側板75の鉛直部75bは、鉛直に延びており、L字状の金属製の連結部材116およびガスケットなどのシール材117を介して第6左側板76に接続されている。連結部材116には、固定用のねじ部材118が取り付けられている。
【0125】
第5左側板75と第6左側板76とを接続する構成は、第5右側板65と第6右側板66とを接続する構成と左右対称な構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0126】
図2、
図3、および、
図7を参照して、第6左側板76は、進行方向X1から見てU字状に形成された部分であり、左側断熱材24の下部と左右に向かい合うように配置されている。第6左側板76は、上端部76aと、鉛直部76bと、下端部76cと、を有している。第6左側板76の上端部76aは、水平に延びており、前述したように、連結部材116に接続されている。第6左側板76の鉛直部76bは、左側断熱材24の外側面に接触している。第6左側板76の下端部76cは、密封体13の下部47の第1板部47aの上部47dに溶接などを用いて気密的に接続されている。
【0127】
上記の構成により、密封体13の左側部50および左側断熱材24を用いて左側空間54が形成されている。より具体的には、左側部50の左側仕切梁77と、第1~6左側板71~76と、左側断熱材24とによって囲まれた空間が、左側空間54として規定されている。
【0128】
図2、および、
図4~
図7を参照して、左側空間54は、パージガスの層を形成するために設けられている。左側空間54は、パージガスを断熱体9の左方側から断熱体9を通して熱処理空間10へ供給するために設けられている。また、左側空間54は、熱処理空間10から断熱体9を通して断熱体9の左方に到達した熱が密封体13の外部に向かうことを抑制するために設けられている。左側空間54は、本実施形態では、上側ヒータ26および下側ヒータ27の配置されている領域が左側に突出し、且つ、上側ヒータ26および下側ヒータ27間の空間が上記の領域と比べて左右方向に薄くされた空間である。また、左側空間54は、当該左側空間54に収容された上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31b,41b、電線33,43、および、ガイド部材35,45を冷却するための空間として設けられている。左側空間54内のガスは、断熱体9および熱処理空間10を通して、入口側排気管7および出口側排気管8の何れかから、密封体13の外部に排出される。
【0129】
左側空間54は、パージガス供給部15の上下一対の左側供給部58からのパージガスによって、パージ(ガス置換)が行われる。
【0130】
各左側供給部58は、左側空間54に接続されたガス供給管として設けられている。各左側供給部58は、第3左側板73の上端部73aおよび下端部73cにそれぞれ配置されている。このように、左側空間54において、細長い領域を挟んで上下に離隔した幅広領域のそれぞれに左側供給部58が設けられていることにより、左側空間54内において、より均等にパージガスが供給される。各左側供給部58は、第3左側板73の対応する上端部73aおよび下端部73cを貫通するように配置されている。各左側供給部58のうち第3左側板73を貫通する部分の外周部と第3左側板73とは、溶接などによって互いに気密的に接続されている。各左側供給部58は、タンクなどのパージガス供給源(図示せず)に接続されており、パージガスを、左側空間54に供給する。左側空間54に供給されたパージガスは、上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31b,41b、電線33,43、および、ガイド部材35,45に当てられ、これらの部材を冷却する。そして、左側空間54に供給されたパージガスは、断熱体9および熱処理空間10を通して、入口側排気管7または出口側排気管8から密封体13の外部に排出される。
【0131】
以上の構成により、パージガス供給部15の右側供給部57および左側供給部58は、上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31a,31b,41a,41bに向けてパージガスを供給可能である。また、進行方向X1から見て、密封体13の下部47、上部48、右側部49および左側部50は、密封体13の周囲を気密的に(隙間無く)取り囲んでいる。
【0132】
密封体13および断熱体9には、熱処理用ガス供給部16が貫通している。熱処理用ガス供給部16は、熱処理空間10内に向けて、被処理物100の熱処理に用いられるガスとしての熱処理用ガスを供給するために設けられている。本実施形態では、熱処理用ガスは、不活性ガスとしての窒素ガスと、水素ガスと、WETガスと、が混合されたガスである。窒素ガスは、パージガス供給部15から供給されるパージガスと成分が同じガスである。WETガスは、水蒸気を所定の割合含有している。熱処理用ガス供給部16は、本実施形態では、左右一対の熱処理用ガス供給部16が設けられている。
【0133】
各熱処理用ガス供給部16は、上下に延びる配管として設けられている。各熱処理用ガス供給部16の上端部は、別の配管などを介して、タンクなどの熱処理用ガス供給源(図示せず)に接続されている。各熱処理用ガス供給部16の上部16aは、密封体13の上部48を貫通している。各熱処理用ガス供給部16の上部16aの外周部と上部48との接続部は、溶接などを用いて気密的に接続されている。各熱処理用ガス供給部16の中間部は、パージガス層形成空間14の上側空間52を上下に貫通し、さらに、上側断熱材22を上下に貫通している。各熱処理用ガス供給部16の下部16bには、複数のノズル孔が形成されている。上記の構成により、熱処理用ガス供給源からの熱処理用ガスは、各熱処理用ガス供給部16を通して、熱処理空間10に供給される。各熱処理用ガス供給部16に隣接して、サンプリング管17が配置されている。
【0134】
サンプリング管17は、熱処理空間10内のガスをサンプルとして密封体13の外部に取り出すために設けられている。サンプリング管17の上端部は、別の配管などを介して、ガス検出装置(図示せず)に接続されている。サンプリング管17の上部17aは、密封体13の上部48を貫通している。サンプリング管17の上部17aの外周部と上部48との接続部は、溶接などを用いて気密的に接続されている。サンプリング管17の中間部は、パージガス層形成空間14の上側空間52を上下に貫通し、さらに、上側断熱材22を上下に貫通している。サンプリング管17の下部17bは、熱処理空間10に開口している。上記の構成により、熱処理空間10内のガスは、サンプリング管17を通して、密封体13の外部に設置されたガス検出装置に供給される。
【0135】
図2および
図6を参照して、また、熱処理空間10内の温度を計測するための温度センサ18が、配置されている。温度センサ18は、本実施形態では、細長い形状に形成されており、横向きに寝かされた姿勢に配置されている。温度センサ18は、基端部18aと、基端部18aから延びる軸部18bと、を有している。基端部18aは、密封体13の右側方(密封体13の外部)に配置されている。一方、軸部18bの大部分は、密封体13の内部に配置されている。
【0136】
より具体的には、軸部18bの基端側部分は、密封体13の第3右側板63の鉛直部63bを貫通している。軸部18bの外周部と第3右側板63とは、シール構造などを用いて気密的に接続されている。軸部18bの中間部は、パージガス層形成空間14の右側空間53を左右に貫通し、さらに右側断熱材23を左右に貫通している。軸部18bの先端部は、熱処理空間10に配置されている。上記の構成により、熱処理空間10内の雰囲気温度は、温度センサ18によって検出される。
【0137】
図1を参照して、上記の構成を有する熱処理装置1には、制御装置80が設けられている。制御装置80は、熱処理装置1における熱処理動作の制御処理を行うために設けられている。制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータ、または、PLC(Programmable Logic Controller)などを用いて形成されている。制御装置80は、ヒータ26,27による加熱動作のオン/オフ、パージガス供給部15によるパージガスの供給のオン/オフ、熱処理用ガス供給部16における熱処理用ガスの各成分ガスの供給のオン/オフ、および、搬送装置2の動作のオン/オフなどを制御する。
【0138】
以上が、熱処理装置1の概略構成である。次に、熱処理装置1における熱処理動作の一例を説明する。なお、熱処理装置1における熱処理動作の制御処理は、制御装置80によって行われてもよいし、作業員が熱処理装置1を手動操作することで行われてもよい。
【0139】
図8は、熱処理装置1の動作の一例を説明するためのタイムチャートである。なお、
図8を参照して説明する場合、
図8以外の図も適宜参照する。
図8を参照して、熱処理装置1は、昇温動作(タイミングT1~T3)と、熱処理動作(タイミングT3~T6)と、降温動作(タイミングT6~T8)と、を行う。
【0140】
昇温動作(タイミングT1~T3)において、まず、上側ヒータ26および下側ヒータ27へ電力が供給されることで、上側ヒータ26および下側ヒータ27の発熱部31e,41eが発熱を開始する(タイミングT1)。また、パージガス供給部15の右側供給部57、左側供給部58、上側供給部56、および、下側供給部55からパージガス層形成空間14の対応する右側空間53、左側空間54、上側空間52、および、下側空間51へ、パージガスの供給が開始される(タイミングT1)。
【0141】
さらに、熱処理用ガス供給部16から、熱処理用ガスのうち窒素ガスの供給が開始される(タイミングT1)。すなわち、パージガスの成分と同じ成分の不活性ガスが、熱処理用ガス供給部16から熱処理空間10へ供給される。この際、熱処理用ガスのうち水素ガスおよびWETガスの供給は、まだ開始されない。上記の動作により、上側ヒータ26および下側ヒータ27による熱処理空間10の昇温動作と、パージガス層形成空間14におけるパージ動作と、熱処理空間10への窒素ガス(パージガス)の供給動作と、が同時に開始される。
【0142】
タイミングT1から所定時間経過後、パージガス層形成空間14におけるパージ(酸素排出)動作が完了する(タイミングT2)。このタイミングで、パージガス層形成空間14のうち上側空間52および下側空間51へのパージガスの供給動作が停止される。一方、パージガス層形成空間14の右側空間53および左側空間54へのパージガスの供給は、継続される。これにより、上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31a,31b,41a,41bへ、常温に近い温度のパージガスが供給され続けることとなり、端子部31a,31b,41a,41bの冷却動作が継続される。
【0143】
そして、上側ヒータ26および下側ヒータ27による熱処理空間10の加熱動作の開始(タイミングT1)から所定時間経過後、熱処理空間10内の温度が、被処理物100の熱処理に適した温度となる(タイミングT3)。このタイミングで、熱処理用ガス供給部16は、窒素ガスに加えて、水素ガスおよびWETガスを熱処理空間10に供給する。すなわち、熱処理用ガス供給部16は、熱処理空間10への熱処理用ガスの供給を開始する。これにより、熱処理動作(タイミングT3~T6)が開始される。
【0144】
そして、熱処理空間10への熱処理用ガスの供給が開始されてから所定時間が経過すると、熱処理空間10における熱処理用ガスの濃度が、被処理物100の熱処理に必要な値に達する。その後の所定のタイミングにおいて、搬送装置2が、被処理物100を熱処理空間10に搬入する(タイミングT4)。これにより、被処理物100への加熱が実行される。すなわち、熱処理装置1は、上側ヒータ26および下側ヒータ27による熱処理空間10の加熱動作、パージガス層形成空間14の右側空間53および左側空間54へのパージガスの供給動作、熱処理空間10への熱処理用ガスの供給動作、および、搬送装置2による被処理物100の搬送動作が行われている状態で、被処理物100に熱処理動作を行う。
【0145】
そして、タイミングT4から所定時間が経過し、被処理物100に十分な処理が行われると、被処理物100は、搬送装置2によって熱処理空間10の外部へ搬出され、被処理物100への加熱処理が終了する(タイミングT5)。このとき、熱処理用ガス供給部16から熱処理空間10への、熱処理用ガスの供給が停止される。ただし、熱処理用ガス供給部16から熱処理空間10への窒素ガスの供給は継続されることで、熱処理空間10のパージが行われる。このとき、熱処理用ガスのうち水素ガスおよびWETガスの供給が停止される。
【0146】
そして、被処理物100が熱処理空間10から搬出された後、所定時間経過の後に、上側ヒータ26および下側ヒータ27への電力供給が停止されることで、上側ヒータ26および下側ヒータ27による加熱動作が停止される(タイミングT6)。すなわち、熱処理動作(タイミングT3~T6)が完了する。
【0147】
次に、降温動作(タイミングT6~T8)が行われる。すなわち、パージガス供給部15は、パージガス層形成空間14のうちの右側空間53および左側空間54に加えて、下側空間51および上側空間52へのパージガスの供給を開始する(タイミングT6)。これにより、パージガス供給部15は、パージガス層形成空間14全体へパージガスを供給する。このとき、熱処理用ガス供給部16は、熱処理空間10への窒素ガス(パージガス)の供給を継続している。これにより、熱処理空間10、断熱体9、および、パージガス層形成空間14内の空気および残留ガス(水素ガスおよびWETガスなど)は、熱処理空間10から、入口側排気管7または出口側排気管8を通して、熱処理装置1の外部に排出される。これにより、密封体13内の雰囲気を乾燥雰囲気にすることができる。よって、密封体13内における結露の発生を抑制できる。
【0148】
そして、熱処理装置1の密封体13内のパージ動作が完了すると、パージガス供給部15および熱処理用ガス供給部16からのパージガスの供給が停止される(タイミングT7)。その後、所定時間経過の後、自然冷却によって、熱処理空間10内の温度が所定の温度(たとえば、常温)まで低下する(タイミングT8)。これにより、降温動作が完了する。
【0149】
以上の次第で、熱処理装置1によると、密封体13は、断熱体9を介して熱処理空間10と向かい合うこととなる。このため、被処理物100の熱処理時において、熱処理空間10内の熱は、断熱体9を介して密封体13に伝わる。よって、熱処理空間10内の高熱が密封体13に伝わることを抑制できる。このため、密封体13の温度上昇が抑制されるので、密封体13は、耐熱性をそれほど要求されず、強度および気密性に優れた材質で形成されることが可能である。これにより、熱処理空間10への不要なガスの進入を、十分な強度を有する密封体13によってより確実に抑制できる。よって、熱処理空間10のガスの成分を所望の値に、より確実に保つことができる。また、密封体13の内側に断熱体9が配置されるので、断熱体9は、密閉性が低くてもよい。よって、断熱体9は、密閉性についての制限を受けることなく、より高い耐熱性を有する材料で形成されることができる。以上の次第で、被処理物100に対してより高温で熱処理を行うことができ、且つ、被処理物100が配置される熱処理空間10のガスの成分を所望の値(低酸素状態)に、より確実に保つことのできる熱処理装置1を提供することができる。
【0150】
また、熱処理装置1によると、密封体13は、複数の金属部材(下部47、上部48、右側部49、および、左側部50)を組み合わせて形成されている。この構成によると、密封体13を一体成形品とした場合と比べて、密封体13の形状の自由度をより高くできる。また、密封体13の組立および解体をより容易に行うことができる。
【0151】
また、熱処理装置1によると、密封体13を構成する複数の部材(48,61~66,71~76)は、シール材82,85,88,91,94,97,102,105,108,111,114,117を介して接続されている。この構成によると、密封体13における複数の部材(48,61~66,71~76)同士の接続部において、気密性を確保することが重要となる。そして、複数の部材(48,61~66,71~76)をシール材82,85,88,91,94,97,102,105,108,111,114,117を介して接続することで、複数の部材(48,61~66,71~76)間の気密性を、より容易に、且つ、より確実に確保できる。しかも、密封体13の使用温度は、比較的低くて済む。よって、シール材82,85,88,91,94,97,102,105,108,111,114,117の材質を、耐熱性の制限を比較的受けずに設定することができる。
【0152】
また、熱処理装置1によると、パージガス供給部15が設けられていることにより、被処理物100の熱処理時において、熱処理空間10内で生じた不要なガスは、パージガスによって除去される。これにより、熱処理空間10内の雰囲気を、より清浄な状態に維持することができる。
【0153】
また、熱処理装置1によると、断熱体9と密封体13との間にパージガス層形成空間14の上側空間52、右側空間53、および、左側空間54が形成されている。この構成によると、パージガス層形成空間14の上側空間52、右側空間53、および、左側空間54が形成されることで、パージガスを、より広い範囲に均等に供給することができる。これにより、密封体13内の雰囲気を、より清浄な状態に維持することができる。
【0154】
また、熱処理装置1によると、パージガス層形成空間14の上側空間52、右側空間53、および、左側空間54は、熱処理空間10の上方、および、熱処理空間10の左右両側方に形成されている。この構成によると、パージガス層形成空間14の上側空間52、右側空間53、および、左側空間54は、断熱体9の周囲を取り囲むように配置される。これにより、熱処理空間10の周囲において、より多くのパージガス層形成空間を形成することができる。
【0155】
また、熱処理装置1によると、パージガス供給部15は、上側ヒータ26および下側ヒータ27の端子部31a,31b,41a,41bに向けてパージガスを供給可能である。この構成によると、端子部31a,31b,41a,41bを冷却するための冷却用ガスとしてパージガスを利用することができる。これにより、端子部31a,31b,41a,41bを高熱から保護するための専用のクーラが不要となり、熱処理装置1の構成をより簡素にできる。
【0156】
また、熱処理装置1によると、断熱体9は、多孔質材料を用いて形成されている。この構成によると、耐熱性の高い材料を焼結することなどにより、より耐熱性の高い断熱体9を実現できる。また、パージガスを用いて断熱体9の内側の熱処理空間10をパージする際に、断熱体9の気孔を通してパージガスを熱処理空間10に供給できる。これにより、より短時間でパージ(ガス置換)を完了することができる。また、多孔質の断熱体9であれば、比較的蓄熱量が小さい。よって、熱処理空間10の加熱時に、断熱体9もより迅速に昇温できる。
【0157】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0158】
(1)上述の実施形態において、断熱体9がセラミックファイバーである形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、断熱体9は、他の断熱材料を用いて形成されてもよい。
【0159】
(2)また、密封体13が金属を用いて形成される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、密封体13は、金属以外の緻密体材料を用いて形成されてもよい。
【0160】
(3)以上、本発明の構成の一例について具体的に説明した。しかしながら、本発明は、断熱体と密封体とを有していればよく、他の構成についての有無は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、熱処理装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 熱処理装置
9 断熱体
10 熱処理空間
13 密封体
14 パージガス層形成空間
15 パージガス供給部
26,27 ヒータ
31a,31b,41a,41b 端子部
31e,41e 発熱部
82,85,88,91,94,97,102,105,108,111,114,117 シール材
100 被処理物
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を熱処理するための熱処理空間を取り囲む断熱体と、
前記断熱体の周囲を前記断熱体からは一部離隔しつつ気密的に覆うことでガスの通過を規制するための密封体と、
前記断熱体と前記密封体との間にパージガスの層を形成するためのパージガス層形成空間と、
前記パージガス層形成空間にパージガスを供給するための、パージガス供給部と、
前記熱処理空間内の前記被処理物を加熱するためのヒータと、
を備え、
前記パージガス層形成空間は、前記断熱体からの幅が狭い領域と、前記幅が狭い領域よりも前記断熱体からの幅が広い領域と、を有し、
前記幅が広い領域は、前記ヒータが配置されている領域に形成されており、
前記幅が狭い領域は、前記ヒータが配置されている領域以外に形成されており、
前記ヒータは、前記熱処理空間に配置された発熱部と、前記幅が広い領域に配置された端子部と、を有し、
前記パージガス供給部は、前記幅が広い領域のうち前記ヒータが配置されている領域に開口されて前記パージガスを供給することを特徴とする、熱処理装置。
【請求項2】
前記パージガス層形成空間は、前記断熱体の下方に形成された下側空間と、前記断熱体の上方に形成された上側空間と、前記熱処理空間内における前記被処理物の搬送方向に直交する断面において、前記断熱体の右側方に形成された右側空間と、前記断熱体の左側方に形成された左側空間と、を含み、
前記断面において、前記右側空間および前記左側空間は、それぞれ、前記断熱体からの幅が狭い領域と、前記幅が狭い領域よりも前記断熱体からの幅が広い領域と、を有し、
前記ヒータは、左右方向に沿って配置されて前記端子部が左右一対設けられ、当該ヒータの右側の前記端子部が前記右側空間における断熱体からの幅が広い領域に配置されるとともに、当該ヒータの左側の前記端子部が前記左側空間における断熱体からの幅が広い領域に配置され、
前記パージガス供給部は、前記右側空間における前記幅が広い領域のうち前記ヒータの右側の前記端子部が配置されている領域に開口されて前記パージガスを供給する右側供給部と、前記左側空間における前記幅が広い領域のうち前記ヒータの左側の前記端子部が配置されている領域に開口されて前記パージガスを供給する左側供給部と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記ヒータとして、前記熱処理空間内の前記被処理物を加熱するための上側ヒータおよび前記上側ヒータの下方に配置された下側ヒータが設けられ、
前記幅が広い領域は、前記上側ヒータが配置されている領域、および、前記下側ヒータが配置されている領域にそれぞれ形成されており、
前記幅が狭い領域は、前記上側ヒータが配置されている領域と前記下側ヒータが配置されている領域との間に形成されており、
各前記ヒータは、前記熱処理空間に配置された発熱部と、前記右側空間および前記左側
空間の前記幅が広い領域に配置された一対の端子部と、を有し、
前記パージガス供給部は、前記右側空間における前記幅が広い領域のうち前記上側ヒータが配置されている領域と前記下側ヒータが配置されている領域のそれぞれに開口されて前記パージガスを供給する上下一対の右側供給部と、前記左側空間における前記幅が広い領域のうち前記上側ヒータが配置されている領域と前記下側ヒータが配置されている領域のそれぞれに開口されて前記パージガスを供給する上下一対の左側供給部と、を有し、
前記一対の右側供給部の開口部それぞれにおける前記断熱体からの距離は、前記幅が狭い領域の前記幅よりも大きく、
前記一対の左側供給部の開口部それぞれにおける前記断熱体からの距離は、前記幅が狭い領域の前記幅よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記密封体は、複数の部材を組み合わせて形成されており、
前記幅が広い領域が形成されている箇所における前記密封体は、シール材を介して接続された部材を含んでおり、
前記幅が広い領域が形成されている箇所における前記密封体は、前記シール材を介して前記密封体の他の部材に結合された側板を含み、
前記側板は、前記端子部と向かい合うように配置されており、且つ、ねじ部材を用いて前記他の部材としての前記幅が狭い領域に配置された側板に着脱可能に取り付けられている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の熱処理装置。