(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007417
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】身飾品の製造方法及び身飾品
(51)【国際特許分類】
A44C 25/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A44C25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110372
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】318004497
【氏名又は名称】白石 聖
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】白石 徹
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA23
3B114AA25
3B114JA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐久性や美観性に優れるばかりでなく、豊穣や縁起物といった福の意味が込められた身飾品の製造方法及び身飾品を提供する。
【解決手段】動物の角を所定の大きさの小片に切断する切断工程S10と、切断工程後、小片の軸方向に、装飾部材を入れるための穴をあける穴あけ工程S20と、穴の内部のみを、装飾部材の大きさよりも大きく広げて空間部を得る切削工程S40と、小片の側面に、空間部と貫通させるように装飾穴を形成する装飾穴形成工程S50と、50℃~100℃の液体に所定時間浸漬させる浸漬工程S60と、浸漬工程後に、穴あけ工程S20であけられた穴から装飾部材を入れる装飾部材挿入工程S70と、装飾部材挿入工程後に、乾燥させる乾燥工程S80と、乾燥工程後に、磨く研磨工程S90とを有し、穴あけ工程S20であけられる穴の直径は、装飾部材の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の角を用いて作成する身飾品の製造方法であって、
前記動物の角を所定の大きさの小片に切断する切断工程と、
前記切断工程後、前記小片の軸方向に、装飾部材を入れるための穴をあける穴あけ工程と、
前記穴の内部のみを、前記装飾部材の大きさよりも大きく広げて空間部を得る切削工程と、
前記小片の側面に、前記空間部と貫通させるように装飾穴を形成する装飾穴形成工程と、
50℃~100℃の液体に所定時間浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程後に、前記穴あけ工程であけられた前記穴から前記装飾部材を入れる装飾部材挿入工程と、
前記装飾部材挿入工程後に、乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程後に、磨く研磨工程とを有し、
前記穴あけ工程であけられる前記穴の直径は、前記装飾部材の大きさよりも小さいことを特徴とする身飾品の製造方法。
【請求項2】
前記動物は、鹿であることを特徴とする請求項1に記載の身飾品の製造方法。
【請求項3】
前記穴の直径は、前記装飾部材の大きさよりも1mm~1.5mm小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の身飾品の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程は、天日干しであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の身飾品の製造方法。
【請求項5】
前記液体は、水であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の身飾品の製造方法。
【請求項6】
前記装飾部材は、天然石であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の身飾品の製造方法。
【請求項7】
動物の角を用いた身飾品であって、
前記身飾品の軸方向にあけられた穴と、
前記身飾品の内部に有する空間部と、
前記空間部に入る装飾部材と、
前記空間部と貫通させるように側面に形成された装飾穴と、を備え、
前記穴の直径は、前記装飾部材の大きさよりも小さいことを特徴とする身飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の角を用いて作成する身飾品の製造方法及び身飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な形状・素材の身飾品や装飾品が存在する。
【0003】
例えば特許文献1では、消しゴムにより構成された装飾体が示されている。
【0004】
また、特許文献2では、糸を多重に束ねた糸束の先端を刈込んで形成した動物の頭部に目と耳と手足を設け、頭部に棒体の先端部を差し込み固定した固着部を形成したことを特徴とする装飾品が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】新案登録第3208663号公報
【特許文献2】新案登録第3216158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献に係る装飾体等は、装飾体等の破損を防止するものであったり、花かご、花束、花輪(リース)などに刺して使用する装飾品であって華やかさを演出するものであり、その耐久性や美観性以外に意味をなすものではない。
【0007】
そこで、本発明は耐久性や美観性に優れるばかりでなく、豊穣や縁起物といった福の意味が込められた身飾品の製造方法及び身飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る身飾品の製造方法は、動物の角を用いて作成する身飾品の製造方法であって、前記動物の角を所定の大きさの小片に切断する切断工程と、前記切断工程後、前記小片の軸方向に、装飾部材を入れるための穴をあける穴あけ工程と、前記穴の内部のみを、前記装飾部材の大きさよりも大きく広げて空間部を得る切削工程と、前記小片の側面に、前記空間部と貫通させるように装飾穴を形成する装飾穴形成工程と、50℃~100℃の液体に所定時間浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程後に、前記穴あけ工程であけられた前記穴から前記装飾部材を入れる装飾部材挿入工程と、前記装飾部材挿入工程後に、乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後に、磨く研磨工程とを有し、前記穴あけ工程であけられる前記穴の直径は、前記装飾部材の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、耐久性や美観性に優れるばかりでなく、豊穣や縁起物といった福の意味が込められた身飾品の製造方法を提供することができる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記動物は、鹿としても良い。
【0011】
このようにすれば、耐久性や美観性に優れ、豊穣や縁起物といった福、難除けのお守りの意味も込め、さらに丈夫な身飾品を提供することができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記穴の直径は、前記装飾部材の大きさよりも1mm~1.5mm小さいこととしても良い。
【0013】
このようにすれば、浸漬工程で浸漬させた後に、装飾部材を入れることが比較的容易になる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記乾燥工程は、天日干しとしても良い。
【0015】
このようにすれば、乾燥時に身飾品が割れるのを防止することができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記液体は水としても良い。
【0017】
このようにすれば、安価でかつ取り扱いが容易に浸漬工程を行うことができる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記装飾部材は、天然石としても良い。
【0019】
このようにすれば、さらに耐久性や美観性及び福の意味が込められた身飾品を提供することができる。
【0020】
本発明の一態様では、動物の角を用いた身飾品であって、前記身飾品の軸方向にあけられた穴と、前記身飾品の内部に有する空間部と、前記空間部に入る装飾部材と、前記空間部と貫通させるように側面に形成された装飾穴と、を備え、前記穴の直径は、前記装飾部材の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、耐久性や美観性に優れるばかりでなく、豊穣や縁起物といった福の意味が込められた身飾品を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、耐久性や美観性に優れるばかりでなく、豊穣や縁起物といった福の意味が込められた身飾品の製造方法及び身飾品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る身飾品の斜視図である。
【
図2】
図2(A)は本発明の一実施形態に係る身飾品の正面図であり、
図2(B)は本発明の一実施形態に係る身飾品の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る身飾品の製造方法に係る工程図である。
【
図4】
図4は、動物の角を所定の大きさの小片に切断する様子を模式的に示した図である。
【
図5】
図5は、切断された小片の軸方向に穴をあけた様子を模式的に示した図である。
【
図6】
図6は、小片を整形し、装飾穴を形成した様子を模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、小片の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0025】
<1.身飾品>
最初に身飾品100について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る身飾品100は、穴10、空間部20、装飾部材30、装飾穴40とを備える。
【0026】
穴10は、
図1及び
図2(A)に示すように身飾品100の軸方向Gにあけられている。また、空間部20は、
図2(B)に示すように、身飾品100の内部に有する。装飾部材30は、上記空間部20に入るものである。装飾穴40は、空間部20と貫通させるように側面に形成されている。よって、
図1及び
図2(A)に示すように、装飾穴から空間部20及び空間部20に存在する装飾部材30が視認できる。
【0027】
図2(B)に示すように、穴10の直径Aは、装飾部材30の大きさBよりも小さいことが特徴である。このようにすれば、装飾部材30が穴10から出ることがない。なお装飾部材30の大きさBは、外寸を指す。また、身飾品100は、所定の形状に整形されていることが好ましい。
【0028】
以下に本発明の一実施形態に係る身飾品100の製造方法について説明する。
【0029】
<2.身飾品100の製造方法>
本発明の一実施形態に係る身飾品100の製造方法は、
図3に示すように、少なくとも、切断工程S10、穴あけ工程S20、切削工程S40、装飾穴形成工程S50、浸漬工程S60、装飾部材挿入工程S70、乾燥工程S80、研磨工程S90とを有する。以下に工程ごとに説明する。
【0030】
切断工程S10は、
図4に示すように、動物の角50を所定の大きさに切断する。例えば
図4の点線のように切断する。大きさは、1.5cm未満、1.5cm~3.5cm、3.5cmより大きくしてもよい。切断方法は、公知の方法で切断される。
【0031】
また、動物の角50は、鹿であることが好ましい。このようにすれば、耐久性や美観性に優れ、豊穣や縁起物といった福、難除けのお守りの意味も込め、さらに丈夫な身飾品とすることができる。鹿の角である場合には、小片の大きさは、1.5cm~3.5cmとすることが好ましい。
【0032】
穴あけ工程S20は、切断工程S10後に行われ、
図5に示すように、小片55の軸方向Gに、装飾部材30を入れるための穴10をあける。穴あけ工程S20であけられる穴10は、ドリルなどの公知の方法で穴あけされる。
図7に示すように、穴あけ工程S20であけられる穴10の直径Aは、装飾部材30の大きさBよりも小さい。つまり、A<Bとなる。穴あけ工程であけられる前記穴の直径は、装飾部材の大きさよりも小さいことであるが、小片55(身飾品)の乾燥状態で、装飾部材30が空間部20からでない大きさとする。
【0033】
また、穴10の直径Aは、装飾部材30の大きさBよりも1mm~1.5mm小さいことが好ましい。このようにすれば、後述する浸漬工程S60で浸漬させた後に、装飾部材30を入れることが比較的容易になる。穴10の形状は、円形、四角形、三角形等とすることができる。
【0034】
穴あけ工程S20後又は、切削工程S40後に小片55を所定の形状に整形する整形工程S30を有してもよい。小片55を様々な形状に整形すれば、より美観性に優れる。整形は、
図1や
図6に示すように、より曲面を設けてもよく、逆に角ばらせてもよい。所望する最終的なデザインの形状に応じて整形すればよい。
【0035】
切削工程S40は、
図7に示すように、穴の内部21のみを、装飾部材20の大きさよりも大きく広げて空間部20を得る。広げるのは、穴の内部21のみであって、入口の穴10の大きさはそのままとする。
【0036】
装飾穴形成工程S50は、
図6及び
図7に示すように、小片55の側面に、空間部20と貫通させるように装飾穴40を形成する。装飾穴は
図6に示すように、ハート型、長円型としてもよく、そのほか、円型、楕円型、三角型、星型、花型としてもよい。装飾穴形成工程S50を行うと空間部20や装飾部材30が視認できる。
【0037】
なお、工程順としては、穴あけ工程S20→切削工程S40→装飾穴形成工程S50の順で行ってもよい。また、穴あけ工程S20→装飾穴形成工程S50→切削工程S40の順で行ってもよい。
【0038】
浸漬工程S60は、50℃~100℃の液体に所定時間浸漬させる。また、液体は水であることが好ましい。このようにすれば、安価でかつ取り扱いが容易に浸漬工程S60を行うことができる。また、沸騰させながら浸漬させることが好ましい。浸漬時間は、30分~180分、好ましくは、60分~120分が好ましい。浸漬工程S60により、動物の角の小片55を膨潤させる。
【0039】
装飾部材挿入工程S70は、浸漬工程S60後に行われ、穴あけ工程S20であけられた穴10から装飾部材30を入れる。上記浸漬工程S60で動物の角の小片55を膨潤させているので、穴10の直径が装飾部材30の大きさよりも小さくても、装飾部材30は穴10から空間部20へと入れることができる。なお、装飾部材30を入れる場合は、ゴムハンマーなどで叩いて入れることが好ましい。なお、装飾部材挿入工程S70は、浸漬工程S60後30分以内に行うことが好ましい。装飾部材30は、空間部20に1個、
図7に示すように2個としてもよく、それ以上としてもよい。
【0040】
装飾部材30は、天然石であることが好ましい。このようにすれば、さらに耐久性や美観性及び福の意味が込められた身飾品を提供することができる。天然石の種類は、数多く存在し、アメジスト、アクアマリン、エメラルド、ガーネット、クォーツ、琥珀、サファイア、パール、水晶、トパーズ、ダイヤモンド、ラピスラズリ、ルビー等が挙げられる。それらは、パワーストーンとも呼ばれる。
【0041】
また、装飾部材30の形状は、球状、三角錐、三角柱、立方体、直方体等とすることができる。
【0042】
乾燥工程S80は、装飾部材挿入工程S70後に行われ、小片55を乾燥させる。乾燥時間は、1時間~5時間、好ましくは2~4時間が好ましい。
【0043】
また、乾燥工程S80は、天日干しであることが好ましい。このようにすれば、乾燥時に身飾品100が割れるのを防止することができる。
【0044】
研磨工程S90は、乾燥工程S80後に行われ、小片55を磨く。磨く方法は公知の方法にて行われる。艶出しも行ってもよい。
【0045】
上記を経て、本発明の一実施形態に係る身飾品100が完成される。
【0046】
また、
図1に示すように身飾品100にストラップや鈴をさらに取り付けてもよい。
【0047】
以上より本発明の一実施形態に係る身飾品100によれば、耐久性や美観性に優れるばかりでなく、豊穣や縁起物といった福の意味が込められた身飾品を提供することができる。
【0048】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0049】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、身飾品の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 穴、20 空間部、21 穴の内部、30 装飾部材、50 動物の角、55 (動物の角を切断した)小片、100 身飾品、G 身飾品(小片)の軸方向、
S10 切断工程、S20 穴あけ工程、S30 整形工程、S40 切削工程、S50 装飾穴形成工程、S60 浸漬工程、S70 装飾部材挿入工程、S80 乾燥工程、S90 研磨工程