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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074179
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電圧検出線および電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/50 20210101AFI20220511BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220511BHJP
   H01M 50/543 20210101ALN20220511BHJP
【FI】
H01M2/20 Z
H01M2/20 A
H01M2/10 M
H01M10/48 P
H01M2/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019061146
(22)【出願日】2019-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
(72)【発明者】
【氏名】三原 弘幸
【テーマコード(参考)】
5H030
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
5H040AA07
5H040AA19
5H040AA20
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC34
5H040DD03
5H040DD04
5H040DD10
5H040DD24
5H040DD26
5H040JJ06
5H040NN01
5H040NN05
5H043AA03
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA11
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA05
5H043DA04
5H043DA05
5H043DA09
5H043FA04
5H043FA32
5H043FA36
5H043HA23F
5H043JA01F
5H043JA13F
5H043JA15F
5H043JA22F
5H043KA08F
5H043KA09F
5H043KA44F
5H043KA45F
5H043LA22F
5H043LA31F
(57)【要約】
【課題】電圧検出線とバスバーとの接続信頼性の低下を抑制する。
【解決手段】電圧検出線6は、導線34を有する検出線本体28と、導線34とアルミニウムで構成されて電池の出力端子に電気的に接続されるバスバー10とを電気的に接続するタブ端子部30であって、少なくともバスバー10に接合される第1接合部30aがアルミニウムで構成されるタブ端子部30と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電圧を検出するための電圧検出線であって、
導線を有する検出線本体と、
前記導線とアルミニウムで構成されて前記電池の出力端子に電気的に接続されるバスバーとを電気的に接続するタブ端子部であって、少なくとも前記バスバーに接合される第1接合部がアルミニウムで構成されるタブ端子部と、
を備えることを特徴とする電圧検出線。
【請求項2】
前記検出線本体は、複数の前記導線と、複数の前記導線を支持する絶縁フィルムと、を有するフレキシブルプリント配線基板である請求項1に記載の電圧検出線。
【請求項3】
前記タブ端子部は、表面にめっき層を有するかまたはめっき層を有しないアルミニウムで全体が構成される請求項1または2に記載の電圧検出線。
【請求項4】
前記タブ端子部は、前記導線に接合される第2接合部の少なくとも一部を構成する銅と、前記第1接合部を構成するアルミニウムとのクラッド材である請求項1または2に記載の電圧検出線。
【請求項5】
前記タブ端子部は、板状であり、
前記第1接合部は、タブ端子部の板厚方向に凹む凹部を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電圧検出線。
【請求項6】
複数の電池と、
アルミニウムで構成されて前記複数の電池を電気的に接続するバスバーと、
前記バスバーに接合されて前記複数の電池の電圧を検出する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電圧検出線と、
を備えることを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出線および電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池モジュールが知られている。電池モジュールにおいて、隣り合う電池はバスバーを介して電気的に接続されていた。また、例えば特許文献1に開示されるように、各バスバーには電圧検出線が取り付けられ、各電池間の電圧が検出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池モジュールの普及にともなって、電池モジュールの低コスト化や軽量化が求められるようになってきた。このため、電池モジュールの低コスト化や軽量化につながる各部材の設計変更が検討されている。一方で、電池モジュールの安全性を確保するために、各電池間の電圧を精度よく検出することが求められる。したがって、各部材の設計変更がなされても、電圧検出線とバスバーとの接続信頼性は維持する必要がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧検出線とバスバーとの接続信頼性の低下を抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電圧検出線である。この電圧検出線は、電池の電圧を検出するための電圧検出線であって、導線を有する検出線本体と、導線とアルミニウムで構成されて電池の出力端子に電気的に接続されるバスバーとを電気的に接続するタブ端子部であって、少なくともバスバーに接合される第1接合部がアルミニウムで構成されるタブ端子部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様は、電池モジュールである。この電池モジュールは、複数の電池と、アルミニウムで構成されて複数の電池を電気的に接続するバスバーと、バスバーに接合されて複数の電池の電圧を検出する上記態様の電圧検出線と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧検出線とバスバーとの接続信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電池モジュールの平面図である。
図2】電池積層体の一部の構造を示す斜視図である。
図3】電池モジュールにおけるバスバーを含む領域を拡大して示す平面図である。
図4】変形例1に係る電池モジュールにおけるバスバーを含む領域を拡大して示す平面図である。
図5図5(A)は、変形例2に係る電池モジュールが備えるタブ端子部を模式的に示す平面図である。図5(B)は、図5(A)のA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る電池モジュールの平面図である。図2は、電池積層体の一部の構造を示す斜視図である。なお、図1では、電池積層体について一部の電池のみを破線で図示している。
【0013】
電池モジュール1は、電池積層体2と、ダクトプレート4と、電圧検出線6と、を備える。電池積層体2は、積層された複数の電池8と、各電池8を電気的に接続する複数のバスバー10と、を有する。各電池8は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。電池8は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶12を有する。外装缶12の一面には略長方形状の開口(図示せず)が設けられ、この開口を介して外装缶12に電極体や電解液等が収容される。外装缶12の開口には、外装缶12を封止する封口板14が設けられる。
【0014】
封口板14には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子16が設けられ、他端寄りに負極の出力端子16が設けられる。一対の出力端子16はそれぞれ、電極体を構成する正極板、負極板と電気的に接続される。以下では適宜、正極の出力端子16を正極端子16aと称し、負極の出力端子16を負極端子16bと称する。また、出力端子16の極性を区別する必要がない場合、正極端子16aと負極端子16bとをまとめて出力端子16と称する。外装缶12、封口板14および出力端子16は導電体であり、例えば金属製である。封口板14と外装缶12の開口とは、例えばレーザ溶接により接合される。各出力端子16は、封口板14に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される。各出力端子16と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材(図示せず)が介在する。
【0015】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板14を電池8の上面、封口板14と対向する外装缶12の底面を電池8の下面とする。また、電池8は、上面および下面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池8が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。また、主表面は、上面および下面の長辺と接続される長側面である。上面、下面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池8の側面とする。この側面は、上面および下面の短辺と接続される一対の短側面である。
【0016】
また、便宜上、電池積層体2において電池8の上面側の面を電池積層体2の上面とし、電池8の下面側の面を電池積層体2の下面とし、電池8の側面側の面を電池積層体2の側面とする。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、下面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0017】
封口板14には、一対の出力端子16の間に弁部18が設けられる。弁部18は、安全弁とも呼ばれ、各電池8が電池内部のガスを噴出するための機構である。弁部18は、外装缶12の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。弁部18は、例えば封口板14の一部に設けられる、他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、外装缶12の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで開弁される。各電池8の弁部18は、後述するガスダクト20に接続され、電池内部のガスは弁部18からガスダクト20に排出される。
【0018】
また、各電池8は、絶縁フィルム(図示せず)を有する。絶縁フィルムは、例えば筒状のシュリンクチューブであり、外装缶12を内部に通した後に加熱される。これにより、絶縁フィルムは収縮し、外装缶12の2つの主表面、2つの側面および底面を被覆する。絶縁フィルムにより、隣り合う電池8間、あるいは電池8とエンドプレートや拘束部材との間の短絡を抑制することができる。
【0019】
複数の電池8は、隣り合う電池8の主表面同士が対向するようにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池8の積層には、複数の電池8を水平に並べることも含まれる。本実施の形態では、電池8は水平に積層されている。したがって、電池8の積層方向Xは、水平に延びる方向である。以下では適宜、水平で且つ積層方向Xに垂直な方向を水平方向Yとし、積層方向Xおよび水平方向Yに対し垂直な方向を鉛直方向Zとする。
【0020】
また、各電池8は、出力端子16が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態の各電池8は、出力端子16が鉛直方向上方を向くように配置される。また、各電池8は、隣接する電池8を直列に接続する場合、一方の電池8の正極端子16aと他方の電池8の負極端子16bとが隣り合うように積層される。また、隣接する電池8を並列に接続する場合、一方の電池8の正極端子16aと他方の電池8の正極端子16aとが隣り合うように積層される。
【0021】
バスバー10は、おおよそ帯状の金属部材である。本実施の形態のバスバー10は、全体がアルミニウム(Al)で構成される。バスバー10は、一端側が一方の電池8の出力端子16に、他端側が他方の電池8の出力端子16に、それぞれ電気的に接続される。バスバー10と出力端子16とは、例えばレーザ溶接や超音波接合により接合される。なお、バスバー10は、隣接する複数個の電池8における同極性の出力端子16どうしを並列接続して電池ブロックを形成し、さらに電池ブロックどうしを直列接続する場合もある。また、積層方向Xにおける最外側の電池8の出力端子16には、外部接続端子22が取り付けられる。外部接続端子22は、外部負荷(図示せず)に接続される。
【0022】
電池積層体2は、複数のセル間セパレータ(図示せず)を有する。セル間セパレータは、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂シートからなる。セル間セパレータを構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。セル間セパレータは、隣接する2つの電池8の間に配置されて、当該2つの電池8間を電気的に絶縁する。
【0023】
電池積層体2は、一対のエンドプレート(図示せず)で挟まれる。一対のエンドプレートは、電池8の積層方向Xにおける電池積層体2の両端に配置される。一対のエンドプレートは、積層方向Xにおける両端に位置する電池8と、外端セパレータ(図示せず)を介して隣り合う。外端セパレータは、セル間セパレータと同じ樹脂材料で構成することができる。各エンドプレートは、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属で構成される金属板である。エンドプレートと電池8との間に外端セパレータが介在することで、両者が絶縁される。
【0024】
電池積層体2と一対のエンドプレートとは、一対の拘束部材(図示せず)によって拘束される。一対の拘束部材は、バインドバーとも呼ばれ、電池8の積層方向Xに長い長尺状の部材である。一対の拘束部材は、水平方向Yに配列される。一対の拘束部材は、金属製であり、例えば鉄やステンレス鋼からなる。
【0025】
複数の電池8と複数のセル間セパレータとが交互に配列され、これらが外端セパレータを介して一対のエンドプレートで積層方向Xに挟まれる。この状態で、各拘束部材の積層方向Xにおける両端部と一対のエンドプレートとがねじ止め等により固定されることで、複数の電池8が積層方向Xにおいて締め付けられて拘束される。これにより、各電池8は、積層方向Xにおいて位置決めされる。セパレータ、エンドプレートおよび拘束部材は、公知の構造を有するため、図示および詳細な説明を省略する。
【0026】
電池積層体2の上面には、ダクトプレート4が載置される。ダクトプレート4は、電池積層体2の上面、つまり各電池8の弁部18が配置される面を覆う板状の部材である。ダクトプレート4は、ベース板24と、複数の開口部26と、ガスダクト20と、を有する。ベース板24は、電池積層体2の上面に沿って拡がる。複数の開口部26およびガスダクト20は、ベース板24に設けられる。
【0027】
複数の開口部26は、各電池8の出力端子16に対応する位置に設けられ、出力端子16を露出させる。各開口部26には、バスバー10が載置される。複数のバスバー10は、ダクトプレート4によって支持される。したがって、ダクトプレート4は、いわゆるバスバープレートとしても機能する。
【0028】
ガスダクト20は、各電池8から噴出するガスが流れ込む流路である。ベース板24は、各電池8の弁部18に対応する位置に、弁部18を露出させる複数の開口(図示せず)を有する。ガスダクト20は、電池8の積層方向Xに延びて、鉛直方向Zで各弁部18と重なる。各弁部18は、ベース板24に設けられた開口を介してガスダクト20に連通される。
【0029】
本実施の形態のダクトプレート4は、ガスダクト20における各弁部18と対向する天面を除いてポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の樹脂で構成される。ガスダクト20の天面は、鉄やアルミニウム等の金属板で構成される。
【0030】
また、ダクトプレート4には、電圧検出線6が載置される。したがって、ダクトプレート4は、電圧検出線6を支持する支持プレートとしても機能する。電圧検出線6は、各電池8の電圧を検出するための部材である。電圧検出線6は、検出線本体28と、複数のタブ端子部30と、を備える。
【0031】
検出線本体28は、一端側がコネクタ32に接続され、他端側が複数に分岐して各バスバー10まで延在する。検出線本体28は、各バスバー10に対応付けられた複数の導線34(図3参照)を有する。各導線34は、一端がコネクタ32に接続され、他端が対応するバスバー10の近傍まで延在する。タブ端子部30は、各導線34の端部と各バスバー10とを電気的に接続する。これにより、各バスバー10とコネクタ32とが電気的に接続される。また、一部の導線34は、外部接続端子22とコネクタ32とを電気的に接続する。コネクタ32は、外部の電池ECU(図示せず)等に接続される。電池ECUは、各電池8の電圧等の検知、各電池8の充放電等を制御する。
【0032】
図3は、電池モジュール1におけるバスバー10を含む領域を拡大して示す平面図である。図3は、図1における破線領域Rの拡大図であり、電池8の図示を省略している。上述の通り電圧検出線6は、検出線本体28と、タブ端子部30と、を備える。本実施の形態の検出線本体28は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)で構成され、複数の導線34と、複数の導線34を支持する絶縁フィルム36と、を有する。
【0033】
導線34は、コネクタ32と各バスバー10または外部接続端子22とを電気的に接続するための導体である。導線34は、例えばアルミニウムとは異なる金属を構成材料として含む。導線34は、アルミニウムと異なる金属のみで構成されてもよいし、当該金属と樹脂等との混合物であってもよい。また、一例としての導線34は、アルミニウムを含まない。本実施の形態の導線34は、銅(Cu)で構成される。絶縁フィルム36は、例えばポリイミドやポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂で構成される。例えば検出線本体28は、絶縁フィルム36の表面に金属箔を接着した後、金属箔をエッチングして配線パターン、すなわち導線34を形成することで得られる。また、導線34を構成する材料をインクジェット等により絶縁フィルム36に塗布することで、絶縁フィルム36上に導線34を形成することもできる。各導線34は、バスバー10の近傍に配置される端部に、タブ端子部30が接合されるランド部34aを有する。
【0034】
タブ端子部30は、細幅の板状、言い換えれば帯状の金属部材であり、導線34とバスバー10とを電気的に接続する。タブ端子部30の一端はバスバー10に接合される第1接合部30aを構成し、タブ端子部30の他端は導線34のランド部34aに接合される第2接合部30bを構成する。第1接合部30aは、バスバー10上に載置され、例えばレーザ溶接や超音波接合によってバスバー10に接合される。第1接合部30aは、バスバー10における積層方向Xの略中央部に接合される。あるいは第1接合部30aは、バスバー10における2つの電池8をまたぐ領域に接合される。これにより、各電池8の膨張収縮にともなう第1接合部30aおよびバスバー10の接合部の変位量を小さくすることができる。このため、タブ端子部30とバスバー10との接続状態をより安定的に維持することができる。第2接合部30bは、例えばはんだ付けによってランド部34aに接合される。
【0035】
タブ端子部30は、少なくとも第1接合部30aがアルミニウムで構成される。本実施の形態のタブ端子部30は、第1接合部30aおよび第2接合部30bを含む全体がアルミニウムで構成される。したがって、第1接合部30aおよびバスバー10は、ともにアルミニウムで構成される。このため、第1接合部30aとバスバー10との接合は同種金属どうしの接合となる。よって、レーザ溶接や超音波接合により簡単且つ信頼性の高い接合が可能である。
【0036】
一方、導線34はアルミニウム以外の金属、本実施の形態では銅で構成され、第2接合部30bはアルミニウムで構成される。したがって、第2接合部30bとランド部34aとの接合は異種金属どうしの接合となる。このため、第2接合部30bとランド部34aとは、例えば公知の異種金属接合用の特殊はんだを用いたはんだ付けによって接合される。
【0037】
好ましくは、負極端子16bは銅とアルミニウムのクラッド材で構成される。そして、銅の部分が電極体に電気的に接続される。また、アルミニウムの部分がバスバー10に接合される。これにより、負極端子16bとバスバー10との接合は同種金属接合となるため、レーザ溶接や超音波接合により簡単且つ信頼性の高い接合が可能である。なお、一般に正極端子16aは、全体がアルミニウムで構成される。したがって、正極端子16aとバスバー10との接合も同種金属接合となる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係る電圧検出線6は、導線34を有する検出線本体28と、導線34とアルミニウムで構成されて出力端子16に電気的に接続されるバスバー10とを電気的に接続するタブ端子部30であって、少なくともバスバー10に接合される第1接合部30aがアルミニウムで構成されるタブ端子部30と、を備える。また、本実施の形態に係る電池モジュール1は、複数の電池8と、アルミニウムで構成されて複数の電池8を電気的に接続するバスバー10と、バスバー10に接合されて複数の電池8の電圧を検出する電圧検出線6と、を備える。
【0039】
一般に正極端子はアルミニウムで、負極端子は銅で、それぞれ構成されている。このため、従来のバスバーは、各出力端子との接合が同種金属接合となるように、アルミニウムと銅のクラッド材で構成されていた。また、一般に電圧検出線の導線は銅で構成される。このため、導線とバスバーとを接続するタブ端子部は銅製とし、バスバーの銅部分にレーザ溶接等で接合していた。なお、導線とタブ端子部とは、かしめ固定、はんだ付け、溶接等で固定していた。
【0040】
このような構成において電池モジュールの低コスト化や軽量化を図る方法としては、アルミニウムと銅のクラッド材で構成されるバスバーをアルミニウムのみで構成することが考えられる。バスバーは熱容量を確保する必要性から、タブ端子部や電池の出力端子等に比べて容積が大きい。このような容積の大きい部材へのクラッド材の使用は、電池モジュール1の重量やコストに大きく影響する。このため、銅に比べて比重が小さいアルミニウムのみでバスバーを構成することで、電池モジュール1の軽量化を図ることができる。また、バスバーをクラッド材からアルミニウム単体に変更することで、電池モジュール1の低コスト化を図ることができる。
【0041】
しかしながら、バスバーをアルミニウムのみで構成すると、銅製のタブ端子部との接合が異種金属接合になってしまう。異種金属接合では、タブ端子部とバスバーとの接合条件が厳しくなり、両者の接続信頼性が低下し得る。また、タブ端子部とバスバーとをねじ等で締結する方法を採れば接合条件の問題は解消し得るが、この場合は電池モジュールの組み立て工程が煩雑になり、また組み立て工程の自動化の妨げとなる。これは電池モジュール1の低コスト化の妨げとなるため望ましくない。
【0042】
これに対し、本実施の形態では、タブ端子部30における少なくともバスバー10に接合される第1接合部30aがアルミニウムで構成される。これにより、アルミニウム製のバスバー10とタブ端子部30とを同種金属接合により接合することができる。この結果、アルミニウムのみで構成されるバスバー10の採用により電池モジュール1の低コスト化および軽量化を図りながら、バスバー10とタブ端子部30との接続信頼性を維持することができる。よって、本実施の形態の電圧検出線6によれば、バスバー10の設計変更がなされても電池モジュール1の安全性を確保することができる。また、本実施の形態の電池モジュール1によれば、電池モジュール1の安全性を確保しながら、低コスト化および軽量化を図ることができる。
【0043】
また、本実施の形態の検出線本体28は、複数の導線34と、これを支持する絶縁フィルム36と、を有するフレキシブルプリント配線基板で構成される。これにより、電線と、この電線にかしめ固定されたタブ端子と、で構成される従来の電圧検出線を用いる場合に比べて、電池モジュール1の小型化や軽量化、低コスト化を図ることができる。また、フレキシブルプリント配線基板は、扁平な構造を有するため機械によるハンドリングが容易である。このため、電圧検出線6の組み付け工程の自動化を図ることができる。また、フレキシブルプリント配線基板であれば、タブ端子部30の姿勢を揃えることが容易である。このため、タブ端子部30およびバスバー10の溶接工程の簡略化や、より確実な溶接が可能となる。
【0044】
また、本実施の形態では、負極端子16bが銅とアルミニウムのクラッド材で構成され、銅の部分が電極体に、アルミニウムの部分がバスバー10にそれぞれ接続される。これにより、負極端子16bとバスバー10との接合は同種金属接合となるため、レーザ溶接や超音波接合により簡単且つ信頼性の高い接合が可能となる。この結果、隣り合う電池8どうしの接続信頼性を高めることができる。負極端子16bは、バスバー10に比べて容積が小さいため、負極端子16bをクラッド材としても、クラッド材のバスバーを用いる場合に比べて電池モジュール1の低コスト化や軽量化が可能である。
【0045】
なお、バスバー10とタブ端子部30とをレーザ溶接する場合、バスバー10側には電池8が存在するため、レーザ光はタブ端子部30側から照射される。したがって、アルミ製のバスバー10に対して従来の銅製タブ端子部を溶接する場合、レーザ光は銅側から照射されることになる。銅側からレーザ光が照射されると、下層に位置するアルミニウムに比べて銅が優先的に溶融し、続いてアルミニウムが溶融する。そして、溶融した銅とアルミニウムとが混ざり合うことで、両者が接合される。この場合、混ざり合う溶融金属において銅がアルミニウムよりも多くなる。
【0046】
一方、バスバー10と負極端子16bとをレーザ溶接する場合、負極端子16b側には外装缶12が存在するため、レーザ光はバスバー10側から照射される。したがって、アルミ製のバスバー10を従来の銅製の負極端子に溶接する場合、レーザ光はアルミニウム側から照射されることになる。アルミニウム側からレーザ光が照射されると、下層に位置する銅に比べてアルミニウムが優先的に溶融し、続いて銅が溶融する。この場合、混ざり合う溶融金属においてアルミニウムが銅よりも多くなる。
【0047】
本発明者らは、混ざり合う溶融金属において銅がアルミニウムよりも多い場合、アルミニウムが銅よりも多い場合に比べて、接合強度が低下することを認識するに至った。もちろん、同種金属接合によれば、いずれの異種金属接合よりも高い接合強度を得ることができる。したがって、タブ端子部30の少なくとも第1接合部30aをアルミニウムで構成することは、電池8の電圧を精度よく検出する上で非常に重要である。
【0048】
また、本実施の形態のタブ端子部30は、全体がアルミニウムで構成される。これにより、電池モジュール1をより低コスト化および軽量化することができる。なお、タブ端子部30の全体がアルミニウムで構成される場合、第2接合部30bは、銅製のランド部34aとは異種金属となる。このため、第2接合部30bとランド部34aとは、好ましくは異種金属接合用の特殊はんだを用いてはんだ付けされる。
【0049】
なお、タブ端子部30とランド部34aとの接続は、タブ端子部30がランド部34a上に載置された状態で行われる。したがって、両者をレーザ溶接する場合、タブ端子部30側からレーザ光が照射される。つまり、アルミニウム側からレーザ光が照射される。この場合、上述の通り銅側からレーザ光を照射する溶接に比べれば高い接合強度が得られる。よって、得られる接合強度が要求される強度を満たす場合には、タブ端子部30とランド部34aとをレーザ溶接により接合してもよい。
【0050】
本実施の形態のタブ端子部30は、表面にめっき層を有しないが、特にこの構成に限定されず、タブ端子部30の表面にニッケル等で構成されるめっき層を設けてもよい。この場合、導線34のランド部34aにもめっき層を設けることで、異種金属接合用の特殊はんだ付けではなく、通常のはんだ付けでタブ端子部30と導線34とを接合することができる。また、アルミニウムと銅とのイオン化傾向の違いに起因する腐食、すなわち電食の発生を抑制することができる。なお、樹脂材料等のポッティングによって電食を抑制してもよい。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0052】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る電池モジュール1におけるバスバー10を含む領域を拡大して示す平面図である。実施の形態のタブ端子部30は、全体がアルミニウムで構成されている。一方、本変形例のタブ端子部30は、導線34に接合される第2接合部30bを構成する銅と、バスバー10に接合される第1接合部30aを構成するアルミニウムとのクラッド材で構成される。これにより、導線34と第2接合部30bとの接合は銅どうしの同種金属接合となり、バスバー10と第1接合部30aとの接合はアルミニウムどうしの同種金属接合となる。よって、レーザ溶接や超音波接合により簡単且つ信頼性の高い接合が可能となる。また、タブ端子部30は、バスバー10に比べれば容積が小さいため、タブ端子部30をクラッド材としても、クラッド材のバスバーを用いる場合に比べて電池モジュール1の低コスト化や軽量化が可能である。なお、ランド部34aと第2接合部30bとは、通常のはんだ付けで接合してもよい。また、第2接合部30bを構成する銅の部分は、表面にめっき層を有していてもよいし、めっき層を有していなくてもよい。つまり、第2接合部30bは、少なくとも一部が銅で構成される。当該銅の部分がめっき層を有する場合、例えば、当該銅の部分にニッケルめっき層およびスズめっき層がこの順に積層される。これにより、銅の腐食を抑制することができる。
【0053】
(変形例2)
図5(A)は、変形例2に係る電池モジュール1が備えるタブ端子部30を模式的に示す平面図である。図5(B)は、図5(A)のA-A線に沿った断面図である。本変形例のタブ端子部30における第1接合部30aは、タブ端子部30の板厚方向に凹む凹部38を有する。第1接合部30aをアルミニウムで構成すると、銅で構成する場合に比べて第1接合部30aの剛性が低下し得る。したがって、第1接合部30aの剛性の低下を抑制するために、第1接合部30aの板厚を厚くすることが考えられる。
【0054】
しかしながら、第1接合部30aの板厚を厚くすると、第1接合部30aとバスバー10との接合条件を変更する必要が生じ得る。これに対し、第1接合部30aに凹部38を設け、凹部38の底面を溶接部として用いることで、つまり凹部38の底面にレーザ光を照射することで、第1接合部30aの剛性の低下を抑制しながら、接合条件の変更を回避することができる。なお、タブ端子部30全体の板厚を厚くしながら、第1接合部30aと第2接合部30bとの両方に凹部38を設けてもよい。
【0055】
(その他)
電池モジュール1が備える電池8の数は特に限定されない。エンドプレートと拘束部材との締結構造を含む、電池モジュール1の各部の構造は特に限定されない。電池8は、円筒状等であってもよい。
【0056】
なお、実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
アルミニウムで構成されて複数の電池8を電気的に接続するバスバー10と、
バスバー10に接続され、複数の電池8の電圧を検出する電圧検出線6と、
を備える電圧検出構造。
【符号の説明】
【0057】
1 電池モジュール、 6 電圧検出線、 8 電池、 10 バスバー、 16 出力端子、 28 検出線本体、 30 タブ端子部、 30a 第1接合部、 30b 第2接合部、 34 導線、 36 絶縁フィルム、 38 凹部。
図1
図2
図3
図4
図5