(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074185
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20220511BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20220511BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C08L25/04
G03G9/087 325
G03G9/087 331
C08L33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184020
(22)【出願日】2020-11-03
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】中田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 直人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 弘匡
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 好正
【テーマコード(参考)】
2H500
4J002
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA03
2H500CA04
2H500CA06
2H500CA27
2H500EA12B
2H500EA34B
2H500EA42B
2H500EA44B
2H500EA45B
4J002AE034
4J002BC071
4J002BC07W
4J002BG042
4J002CF093
4J002CF09X
4J002GH00
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、電子写真又は静電印刷等において静電荷像を現像するために用いられるトナーの低温定着性、保存性に優れるトナー用結着樹脂、及びトナー用結着樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 第一の樹脂(A)が、ガラス転移温度-70~0℃かつ重量平均分子量10~100万のアクリル系樹脂であり、
第二の樹脂(B)が、ガラス転移温度50~100℃かつ重量平均分子量0.2~1万のスチレン系および/またはアクリル系樹脂であり、
第一の樹脂(A)と第二の樹脂(B)が複合化していることを特徴とするトナー用結着樹脂。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂(A)が、ガラス転移温度-70~0℃かつ重量平均分子量10~100万のアクリル系樹脂であり、
第二の樹脂(B)が、ガラス転移温度50~100℃かつ重量平均分子量0.2~1万のスチレン系および/またはアクリル系樹脂であり、
第一の樹脂(A)と第二の樹脂(B)が複合化していることを特徴とするトナー用結着樹脂。
【請求項2】
第一の樹脂(A)の割合が、質量比で5~30%であることを特徴とする請求項1記載のトナー用結着樹脂。
【請求項3】
ガラス転移温度45~65℃かつ重量平均分子量1~10万であることを特徴とする請求項1または2記載のトナー用結着樹脂。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー用結着樹脂を含むことを特徴とするトナー用結着樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、ポリエステルを含むことを特徴とする請求項4に記載のトナー用結着樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物に関する。更に詳しくは、使用可能な保存性を維持しつつ、優れた低温定着性を有するトナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機およびプリンター等を始めとする画像形成装置の近年における開発において、重要視されていることは省エネルギー仕様である。複写機の消費電力の約60%がトナーの定着部であることから、この電力を抑えることができれば、大きく省エネに貢献できると考えられる。この定着部分には主に熱ロールで加熱圧着する方式、例えば熱ロール定着方式を採用する機構が用いられている。この機構においては、この消費電力を削減するためには、如何にトナーを低温で定着させるか、つまりトナーの低温定着性が技術的に重要である。その一方でトナーとしては保管、輸送、および使用時の保存性も必要であり、これにより、長期保存、長期使用が可能になる。
【0003】
しかしながら、トナーに低温定着性の特性を過度に付与させると、トナーを長期間放置(保存)する際に、トナーがブロッキングを起こし易くなり、トナーの保存性が低下する問題が生じる。トナーの設計においては低温定着性と保存性とは相反する特性であり、そのバランスを考慮して設計しなければならない。
【0004】
従来、乾式トナーに用いられるトナー用結着樹脂としては、スチレン系樹脂などの付加重合系樹脂、ポリエステルやエポキシ樹脂などの縮重合系樹脂などが主に使用されている。
【0005】
スチレン系樹脂などのビニル系樹脂は、トナー合成時の粉砕性に優れ、帯電性やワックス分散性などのトナー性能に優れている為古くから使用されてきた。低温定着性と高温でも熱ロールに巻き付かない耐ホットオフセット性を両立するべく、高分子量樹脂と低分子量樹脂を組み合わせたスチレン系トナー用結着樹脂が提案されている(特許文献1、2)。しかし、より低温定着性を向上するために分子量やガラス転移温度を低下させると保存性が悪化し、更なる低温定着性と保存性の両立は困難であった。一方、ポリエステル系樹脂は、スチレン系樹脂と比較して、保存性を悪化させることなく低温定着化が可能であることから、現在のトナー用結着樹脂の主流となっている。しかしながら、更なる省エネ化の観点から、より低温定着性の優れたトナー用結着樹脂の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-316475号公報
【特許文献2】特開2001-183866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電子写真または静電印刷等において静電荷像を現像するために用いられるトナーの低温定着性、保存性に優れるトナー用結着樹脂、およびトナー用結着樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、前記課題を解決しようとする本発明の手段は、
(1)第一の樹脂(A)が、ガラス転移温度-70~0℃かつ重量平均分子量10~100万のアクリル系樹脂であり、第二の樹脂(B)が、ガラス転移温度50~100℃で重量平均分子量0.2~1万のスチレン系および/またはアクリル系樹脂であり、第一の樹脂(A)と第二の樹脂(B)が複合化していることを特徴とするトナー用結着樹脂、
(2)第一の樹脂(A)の割合が、質量比で5~30%である前記(1)に記載のトナー用結着樹脂、
(3)ガラス転移温度45~65℃かつ重量平均分子量1~10万である前記(1)または(2)に記載のトナー用結着樹脂、
(4)前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のトナー用結着樹脂を含むトナー用結着樹脂組成物、
(5)ポリエステルを含む前記(4)に記載のトナー用結着樹脂組成物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、トナー用結着樹脂として実用可能な保存性を維持しつつ、低温定着性に優れたトナー用結着樹脂、およびトナー用結着樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のトナー用結着樹脂は、ガラス転移温度(以下、「Tg」と略することがある)が-70~0℃かつ重量平均分子量(以下、「Mw」と略することがある)が10~100万の第一の樹脂(A)と、ガラス転移温度が50~100℃かつ重量平均分子量が0.2~1万の第二の樹脂(B)と、が複合化した樹脂である。
【0011】
<第一の樹脂(A)>
第一の樹脂(A)は、ガラス転移温度-70~0℃かつ重量平均分子量10~100万のアクリル系樹脂である。第一の樹脂(A)は、トナー用結着樹脂において、低温定着性に寄与するセグメントとして機能させるため、このようなガラス転移温度と重量平均分子量を有するものである必要がある。第一の樹脂(A)のガラス転移温度は低いほど低温定着性が優れるため、-10℃以下が好ましく、より好ましくは-20℃以下である。-70℃以下については、重量平均分子量が10~100万、かつアクリル系樹脂としてこの領域に達するのは実質的に作製困難である。重量平均分子量は、保存性の観点から15万以上が好ましく、より好ましくは20万以上である。重量平均分子量100万以上については、樹脂粘度が高くなりすぎる為、実質的に作製困難である。
【0012】
本発明において、第一の樹脂(A)におけるアクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸およびその誘導体モノマーを主たる構成成分として(共)重合されたビニル樹脂であり、重合に供される全モノマー成分に対し、(メタ)アクリル酸およびその誘導体モノマーを60質量%以上含むものをいう。(メタ)アクリル酸およびその誘導体モノマーを70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。
【0013】
第一の樹脂(A)の重合に供されるモノマーは、得られる第一の樹脂(A)が本発明で規定するアクリル系樹脂であれば、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2、4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル等が挙げられ、これらを一種単独または二種類以上組み合わせて用いる。好ましくは(メタ)アクリル酸誘導体であり、第一の樹脂(A)のガラス転移温度を-70~0℃にするために、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシルなどの、比較的ホモポリマーガラス転移温度の低いアクリル酸誘導体単独、またはこれらにメタクリル酸メチルなどの、比較的ホモポリマーガラス転移温度の高い(メタ)アクリル酸誘導体を適宜組み合わせて用いることが好ましい。
【0014】
第一の樹脂(A)は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を適宜選択して重合することで得られる。分子量やトナー用結着樹脂を最終的に固体で得ることを考慮すれば、溶液重合で得ることが好ましい。溶液重合に用いる溶媒としては、モノマーや樹脂を均一に溶解でき、重合を阻害しないものであれば特に限定されず、樹脂の組成や所望する分子量に応じて適宜選択する。
【0015】
<第二の樹脂(B)>
第二の樹脂(B)は、ガラス転移温度が50~100℃であり、好ましくは55~90℃、更に好ましくは60~80℃である。50℃を下回る場合は、得られるトナー用結着樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎるのを抑える為に、低温定着性に有利な第一の樹脂(A)の配合量を少なくせざるを得なくなり、低温定着性を十分に発揮できない。100℃を超える場合は、得られるトナー用結着樹脂のガラス転移温度が高くなりすぎる為、低温定着効果が十分に発揮されない。また、重量平均分子量は0.2~1万であり、好ましくは0.25~0.8万、更に好ましくは0.3~0.6万である。Mwが0.2万未満では得られるトナー用結着樹脂の強度の低下、およびガラス転移温度が低くなって保存性を維持することが困難になる。1万を超えると、得られるトナー用結着樹脂の樹脂粘度が高くなりすぎる為、低温定着性が十分に発揮されない。
【0016】
第二の樹脂(B)はスチレン系および/またはアクリル系樹脂である。本発明において、スチレン系樹脂とはスチレン類を主たる構成成分として(共)重合されたビニル樹脂であり、スチレン類モノマーを60質量%以上含むものをいう。スチレン類を70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。また、スチレン系およびアクリル系樹脂とは、スチレンアクリル系樹脂とも言われるもので、本発明においては、スチレン類および(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを主たる構成成分として(共)重合されたビニル樹脂であり、重合に供される全モノマー成分に対し、スチレン類および(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを60質量%以上含むものをいう。スチレン類および(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。なお、アクリル系樹脂は第一の樹脂(A)と同様である。
【0017】
第二の樹脂(B)の重合に供されるモノマーは、得られる第二の樹脂(B)が本発明で規定するスチレン系および/またはアクリル系樹脂であれば、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、第一の樹脂(A)で挙げられたモノマーを同様に一種単独または二種以上組み合わせて用いることができる。好ましくはスチレン、メタクリル酸メチルである。
【0018】
第二の樹脂(B)も第一の樹脂(A)の重合方法と同様にして得られる。分子量やトナー用結着樹脂を最終的に固体で得ることを考慮すれば、溶液重合や懸濁重合で得ることが好ましい。
【0019】
本発明において、ガラス転移温度とは示差走査型熱量計(DSC)で測定した値をいう。ガラス転移温度測定条件は以下のとおりである。
装置 : ティーエー・インスツルメント・ジャパン株式会社製
Discovery DSC25
試料量 : 樹脂として10mg
測定方法 : 窒素雰囲気下、150℃まで昇温し(1回目の昇温)、その温度で10分間維持した後、降温速度10℃/minで-80℃まで冷却し、その温度で10分間維持した後、昇温速度10℃/minで昇温した(2回目の昇温)。
ガラス転移温度 : 2回目の昇温で得られるDSC曲線において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線とピークの立ち上がり部分からピーク頂点での間での最大傾斜を示す接線との交点(交点1)、高温側のベースラインを低温側に延長した直線とピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点(交点2)とした時、交点1と交点2の示す温度との中間の温度をガラス転移温度とした。
【0020】
また、本発明において、重量平均分子量とはTHF可溶分をゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値をいう。分子量測定条件は以下のとおりである。
装置 : 東ソー株式会社製 HLC-8320
カラム : TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-H +
TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M
測定温度 :40℃
試料溶媒 :1.0g/Lのテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
分子量校正曲線 : 標準ポリスチレンを用いて作成
【0021】
<トナー用結着樹脂>
本発明において、複合化とは第一の樹脂(A)と第二の樹脂(B)が化学的に結合した状態をいう。また、本発明において複合化は、トナー用結着樹脂の示差走査型熱量計により測定されるガラス転移温度が、ただひとつのみ観測されることで確認できる(複合化できていない場合は混合物として、2つ以上のガラス転移温度を有する)。
【0022】
複合化の方法としては、第一の樹脂(A)と第二の樹脂(B)に各々官能基を導入し、官能基同士を反応させて複合化させる方法が挙げられる。
【0023】
官能基としては、酸基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基等が挙げられる。これらの官能基を反応し得る組み合わせで第一の樹脂(A)と第二の樹脂(B)に導入し、その後反応させて複合化を行う。
【0024】
官能基を導入する方法としては、上記で挙げた官能基を持つビニルモノマーを使用して重合する。官能基を有するビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの酸基含有モノマーおよびその無水物、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチルなどの水酸基含有モノマー、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有モノマー、アクリル酸2-イソシアネトエチル、メタクリル酸2-イソシアネトエチルなどのイソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸などの酸基含有モノマーとアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有モノマーの組み合わせであり、グリシジル基含有モノマーを第一の樹脂(A)に、酸基含有モノマーを第二の樹脂(B)に導入するのが好ましい。
【0025】
複合化された第一の樹脂(A)の割合は、トナー用結着樹脂の低温定着性と保存性のバランスを勘案して決定されるが、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。
【0026】
トナー用結着樹脂のガラス転移温度は、低温定着性と保存性のバランスを勘案して決定されるが、好ましくは45~65℃であり、より好ましくは50~60℃である。
【0027】
トナー用結着樹脂の重量平均分子量は、低温定着性と保存性のバランスを勘案して決定されるが、好ましくは1~10万であり、より好ましくは2~8万である。
【0028】
<トナー用結着樹脂組成物>
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、トナー用結着樹脂を含むほか、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トナー用結着樹脂以外の樹脂やワックス、ワックス分散剤などのその他の成分を含ませることが出来る。トナー用結着樹脂以外の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂等のビニル樹脂;ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用しても良い。ポリエステルを含むトナー用結着樹脂組成物であることが、低温定着性と保存性のバランスの観点から好ましい。
【0029】
トナー用結着樹脂組成物に用いるポリエステルは、特に限定されず、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物やエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどのアルコール成分と、テレフタル酸やイソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸などのカルボン酸成分とを公知の方法により縮合反応させたものが挙げられる。
【0030】
トナー用結着樹脂とポリエステルとの質量比は、低温定着性と保存性のバランスを勘案して決定されるが、好ましくは10/90~90/10であり、より好ましくは20/80~80/20、更に好ましくは30/70~70/30である。
【0031】
本発明のトナー用結着樹脂組成物に含有できるワックスは特に限定されないが、例えばカルバナワックス、ライスワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス類、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン(炭素数3~8)共重合体、αオレフィン重合体等の合成ワックス類等が挙げられ、1種または2種以上を併用しても良い。
【0032】
本発明のトナー用結着樹脂組成物の作製方法としては、各材料を溶融して混合し、得られた溶融混合物を冷却して固形化する方法、各材料を溶媒に溶かして混合し、その後溶剤を脱蒸留して得られた溶融樹脂を冷却して固形化する方法等が挙げられる。
【実施例0033】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。先ず、トナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物の物性評価方法について説明する。
【0034】
(1) 重量平均分子量は定義した方法により測定した。
(2) 示差走査型熱量計によるガラス転移温度の測定は定義した方法により測定した。
(3) トナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物の低温定着性の評価
トナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物の微粉砕サンプル(粒径180-500μm)をPPC用紙と離型PETフィルムに挟んだ。その後、所定温度に設定したヒートシールテスター(テスター産業製:TP-701-B ヒートシールテスター)にて2kg/cm2の圧力を0.1秒かけ、微粉砕サンプルがPPC用紙に完全に定着する温度を定着温度とし、下記基準により低温定着性の評価を行った。定着温度は150℃以下(A~C評価)を低温定着性の改善目安としている。
A:定着温度130℃以下 (非常に優れている)
B:定着温度130℃超140℃以下 (優れている)
C:定着温度140℃超150℃以下 (効果が認められる)
D:定着温度150℃超 (効果が認められない)
(4) トナー用結着樹脂およびトナー用結着樹脂組成物の保存性の評価
トナー用結着樹脂またはトナー用結着樹脂組成物の微粉砕サンプル(粒径106-180μm)5gをプラスティック容器に入れ、温度可変の恒温槽に温度55℃で24時間放置した。その後、振とう器(東京理科器械製:EYELA MULTI SHAKER MMS)にて、測定サンプルを目開き180μmメッシュにて180rpmで20秒間篩った際に、メッシュ上に残ったサンプルの残存率から下記基準により評価した。保存性は残存率10%未満(A~B評価)を実用上の基準とした。
A:残存率2.0%未満 (非常に優れている)
B:残存率2.0%以上10%未満 (良好である)
C:残存率10%以上20%未満 (許容できないレベル)
D:残存率20%以上 (全く許容できないレベル)
【0035】
(第一の樹脂A-1の合成)
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、酢酸エチル220質量部、アクリル酸ブチル99.25質量部、メタクリル酸グリシジル0.75質量部を仕込み、70℃に調整した。その後、重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を添加して撹拌し、5時間溶液重合を行った。次いで、室温まで冷却し、高分子量重合体である第一の樹脂(A-1)の樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は390,000、ガラス転移温度は-49℃であった。
【0036】
(第一の樹脂A-2の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを300質量部、アクリル酸ブチルを98質量部、メタクリル酸グリシジル2質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は120,000、ガラス転移温度は-50℃であった。
【0037】
(第一の樹脂A-3の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを70質量部、アクリル酸ブチルを99.75質量部、メタクリル酸グリシジル0.25質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は1,000,000、ガラス転移温度は-47℃であった。
【0038】
(第一の樹脂A-4の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを150質量部、アクリル酸ブチルをアクリル酸エチルに変更して99.5質量部、メタクリル酸グリシジル0.5質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は800,000、ガラス転移温度は-20℃であった。
【0039】
(第一の樹脂A-5の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを150質量部、アクリル酸ブチルをアクリル酸エチル79質量部とメタクリル酸メチル20質量部に変更、メタクリル酸グリシジル1質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は490,000、ガラス転移温度は-3℃であった。
【0040】
(第一の樹脂A-6の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを150質量部、アクリル酸ブチルをアクリル酸-2-エチルヘキシルに変更して99.5質量部、メタクリル酸グリシジル0.5質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は610,000、ガラス転移温度は-69℃であった。
【0041】
(第一の樹脂A-7の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを150質量部、アクリル酸ブチルを96質量部、メタクリル酸グリシジルをアクリル酸に変更して4質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は730,000、ガラス転移温度は-40℃であった。
【0042】
(第一の樹脂A-8の合成)
第一の樹脂A-1の合成のアクリル酸ブチルを100質量部、メタクリル酸グリシジルを0質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は420,000、ガラス転移温度は-48℃であった。
【0043】
(比較用第一の樹脂A-9の合成)
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、スチレン80質量部、アクリル酸ブチル20質量部を仕込み、更に重合開始剤として2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパネート(化薬アクゾ社製「パーカドックス12」)0.4質量部を溶解した。その後、脱イオン水200質量部と部分鹸化ポリビニルアルコール(日本合成製「ゴーセノールGH-23」)0.2質量部の混合液を添加して撹拌した。次いで、90℃まで昇温して10時間の懸濁重合を行った。その後、室温まで冷却し、十分に洗浄、脱水して、50℃で20時間の乾燥を行い、高分子量重合体(A-9)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は480,000、ガラス転移温度は65℃であった。
【0044】
(比較用第一の樹脂A-10の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルをキシレンに変更して150質量部、アクリル酸ブチルを99.75質量部、メタクリル酸グリシジルを0.25質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は50,000、ガラス転移温度は-52℃であった。
【0045】
(比較用第一の樹脂A-11の合成)
第一の樹脂A-1の合成の酢酸エチルを150質量部、アクリル酸ブチルをアクリル酸エチル69質量部とメタクリル酸メチル30質量部に変更、メタクリル酸グリシジル1質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は330,000、ガラス転移温度は8℃であった。
【0046】
【0047】
表1~2中の略号は以下の通り。
BA:アクリル酸ブチル
EA:アクリル酸エチル
2EHA:アクリル酸-2-エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
St:スチレン
GMA:メタクリル酸グリシジル
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
BGDMA:ジメタクリル酸1,3ブチレングリコール
【0048】
(第二の樹脂B-1の合成)
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、キシレン220質量部を仕込み140℃に昇温した。その後、スチレン86.5質量部、アクリル酸ブチル6質量部、アクリル酸7.5質量部からなる混合物に、重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド5質量部を溶解して5時間かけて滴下し、3時間撹拌保持した。次いで、蒸留して内温を180℃まで上昇し、2時間減圧処理を行い、低分子量重合体である第二の樹脂(B-1)を得た得られた樹脂の重量平均分子量は4,000、ガラス転移温度は72℃であった。
【0049】
(第二の樹脂B-2の合成)
第二の樹脂B-1の合成のキシレンを35質量部、スチレンを86質量部、アクリル酸ブチルを9質量部、アクリル酸を5質量部、温度を175℃、ジ-t-ブチルパーオキサイドを8質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は2,300、ガラス転移温度は53℃であった。
【0050】
(第二の樹脂B-3の合成)
第二の樹脂B-1の合成のキシレンを120質量部、スチレンを90質量部、アクリル酸ブチルを4質量部、アクリル酸をメタクリル酸に変更して6質量部、ジ-t-ブチルパーオキサイドを4質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は10,000、ガラス転移温度は97℃であった。
【0051】
(第二の樹脂B-4の合成)
第二の樹脂B-1の合成のスチレンをメタクリル酸メチルに変更した以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は3,100、ガラス転移温度は50℃であった。
【0052】
(第二の樹脂B-5の合成)
第二の樹脂B-1の合成のスチレンを94質量部、アクリル酸ブチルを5質量部、アクリル酸をメタクリル酸グリシジルに変更して1質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は4,000、ガラス転移温度は60℃であった。
【0053】
(比較用第二の樹脂B-6の合成)
第二の樹脂B-1の合成のキシレンを50質量部、スチレンを89質量部、アクリル酸ブチルを6質量部、アクリル酸を5質量部、温度を175℃、ジ-t-ブチルパーオキサイドを10質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は1,700、ガラス転移温度は54℃であった。
【0054】
(比較用第二の樹脂B-7の合成)
第二の樹脂B-1の合成のキシレンを35質量部、スチレンを83質量部、アクリル酸ブチルを12質量部、アクリル酸を5質量部、温度を175℃、ジ-t-ブチルパーオキサイドを8質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は2,300、ガラス転移温度は46℃であった。
【0055】
(比較用第二の樹脂B-8の合成)
第二の樹脂B-1の合成のキシレンを100質量部、スチレンを88質量部、アクリル酸ブチルを6質量部、アクリル酸をメタクリル酸に変更して6質量部、ジ-t-ブチルパーオキサイドを3.5質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は14,000、ガラス転移温度は96℃であった。
【0056】
(比較用第二の樹脂B-9の合成)
第二の樹脂B-1の合成のキシレンを120質量部、スチレンを93質量部、アクリル酸ブチルを1質量部、アクリル酸をメタクリル酸に変更して6質量部、ジ-t-ブチルパーオキサイドを4質量部とした以外は同様の方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は9,700、ガラス転移温度は106℃であった。
【0057】
(比較用第二の樹脂B-10の合成)
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、スチレン80質量部、アクリル酸ブチル20質量部、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール1.1質量部を仕込み、更に重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド2.5質量部を溶解した。その後、脱イオン水200質量部と部分鹸化ポリビニルアルコール(日本合成製「ゴーセノールGH-23」)0.2質量部の混合液を添加して撹拌した。次いで、130℃まで昇温して3時間の懸濁重合を行った。その後、室温まで冷却し、十分に洗浄、脱水して、50℃で20時間の乾燥を行い、低分子量重合体成分(B-10)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は15,000、ガラス転移温度は64℃であった。
【0058】
【0059】
(ポリエステルの合成)
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、BPA-PO(ビスフェノールA プロピレンオキサイド2.2mol付加物)53.5mol%、テレフタル酸20mol%、イソフタル酸18.6mol%、ドデセニル無水コハク酸7.9mol%、更に重合触媒としてテトライソプロピルチタネート0.5mmol%を仕込んだ。その後、230℃に昇温しで5時間脱水縮合反応した。更に、240℃に昇温し減圧下で5時間脱水縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(P-1)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7,000、ガラス転移温度は58℃であった。
【0060】
(トナー用結着樹脂の合成)
<実施例1>
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、キシレン100質量部、第一の樹脂(A-1)溶液64質量部(樹脂として20質量部)、第二の樹脂(B-1)80質量部を仕込み、溶解して140℃に昇温して1時間撹拌した。次いで、蒸留して内温を180℃まで昇温し、2時間減圧処理を行って複合化反応を行い、トナー用結着樹脂(C-1)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は79,000、ガラス転移温度は52℃であった。低温定着性評価における定着温度は130℃であった。
【0061】
<実施例2>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-2)溶液に変更して80質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-2)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は35,000、ガラス転移温度は47℃であった。低温定着性評価における定着温度は125℃であった。
【0062】
<実施例3>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-3)溶液に変更して34質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-3)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は59,000、ガラス転移温度は51℃であった。低温定着性評価における定着温度は130℃であった。
【0063】
<実施例4>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-4)溶液に変更して50質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-4)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は65,000、ガラス転移温度は55℃であった。低温定着性評価における定着温度は135℃であった。
【0064】
<実施例5>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-5)溶液に変更して50質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-5)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は73,000、ガラス転移温度は58℃であった。低温定着性評価における定着温度は145℃であった。
【0065】
<実施例6>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-6)溶液に変更して50質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-6)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は61,000、ガラス転移温度は48℃であった。低温定着性評価における定着温度は125℃であった。
【0066】
<実施例7>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を16質量部(樹脂として5質量部)、第二の樹脂(B-1)を95質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-7)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は12,000、ガラス転移温度は65℃であった。低温定着性評価における定着温度は145℃であった。
【0067】
<実施例8>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を96質量部(樹脂として30質量部)、第二の樹脂(B-1)を70質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-8)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は98,000、ガラス転移温度は45℃であった。低温定着性評価における定着温度は120℃であった。
【0068】
<実施例9>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を16質量部(樹脂として5質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-2)に変更して95質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-9)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は9,000、ガラス転移温度は44℃であった。低温定着性評価における定着温度は140℃であった。
【0069】
<実施例10>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液6.4質量部(樹脂として2質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-2)に変更して98質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-10)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7,000、ガラス転移温度は50℃であった。低温定着性評価における定着温度は150℃であった。
【0070】
<実施例11>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を96質量部(樹脂として30質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-3)に変更して70質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-11)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は123,000、ガラス転移温度は66℃であった。低温定着性評価における定着温度は145℃であった。
【0071】
<実施例12>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を112質量部(樹脂として35質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-3)に変更して65質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-12)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は141,000、ガラス転移温度は62℃であった。低温定着性評価における定着温度は150℃であった。
【0072】
<実施例13>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を16質量部(樹脂として5質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-4)に変更して95質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-13)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は11,000、ガラス転移温度は46℃であった。低温定着性評価における定着温度は125℃であった。
【0073】
<実施例14>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-7)溶液に変更して50質量部(樹脂として20質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-5)に変更して80質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-14)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は36,000、ガラス転移温度は53℃であった。低温定着性評価における定着温度は140℃であった。
【0074】
<比較例1>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-9)に変更して20質量部、第二の樹脂(B-1)を(B-10)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-15)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は108,000、ガラス転移温度は64℃であった。なお、(A-9)(B-10)は互いに化学的に結合できる官能基を有していないので、複合化していない。低温定着性評価における定着温度は170℃であった。
【0075】
<比較例2>
実施例1のキシレンを酢酸エチルに変更、溶解温度を50℃、減圧温度を80℃とした以外は同様の方法で行い、複合化していないトナー用結着樹脂(C-16)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は81,000、ガラス転移温度は-47℃と71℃の2ピークであった。低温定着性評価における定着温度は140℃であった。
【0076】
<比較例3>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-8)溶液とした以外は同様の方法で行い、複合化していないトナー用結着樹脂(C-17)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は66,000、ガラス転移温度は-42℃と65℃の2ピークであった。低温定着性評価における定着温度は140℃であった。
【0077】
<比較例4>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-10)溶液に変更して50質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-18)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は18,000、ガラス転移温度は43℃であった。低温定着性評価における定着温度は125℃であった。
【0078】
<比較例5>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を(A-11)溶液に変更して50質量部(樹脂として20質量部)とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-19)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は38,000、ガラス転移温度は61℃であった。低温定着性評価における定着温度は155℃であった。
【0079】
<比較例6>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を16質量部(樹脂として5質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-6)に変更して95質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-20)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は8,000、ガラス転移温度は44℃であった。低温定着性評価における定着温度は135℃であった。
【0080】
<比較例7>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を96質量部(樹脂として30質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-8)に変更して70質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-21)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は133,000、ガラス転移温度は65℃であった。低温定着性評価における定着温度は160℃であった。
【0081】
<比較例8>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を16質量部(樹脂として5質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-7)に変更して95質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-22)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は9,000、ガラス転移温度は41℃であった。低温定着性評価における定着温度は130℃であった。
【0082】
<比較例9>
実施例1の第一の樹脂(A-1)溶液を96質量部(樹脂として30質量部)、第二の樹脂(B-1)を(B-9)に変更して70質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂(C-23)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は118,000、ガラス転移温度は68℃であった。低温定着性評価における定着温度は165℃であった。
【0083】
<比較例10>
第二の樹脂(B-1)の合成で得られた第二の樹脂(B-1)を評価に使用した。低温定着性評価における定着温度は165℃であった。
【0084】
【0085】
(トナー用結着樹脂組成物の合成)
<実施例15>
攪拌棒、窒素導入管、温度計を備えたオートクレーブ反応槽中に、キシレン100質量部、ポリエステル(P-1)65質量部、トナー用結着樹脂(C-1)35質量部を仕込み、溶解して140℃に昇温して1時間撹拌した。次いで、蒸留して内温を180℃まで昇温し、2時間減圧処理を行い、トナー用結着樹脂組成物(D-1)を得た。低温定着性評価における定着温度は140℃であった。
【0086】
<実施例16>
実施例15のポリエステル(P-1)を45質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を55質量部とした以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-2)を得た。低温定着性評価における定着温度は135℃であった。
【0087】
<実施例17>
実施例15のポリエステル(P-1)を45質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を55質量部、パラフィンワックス(日本精蝋製;HNP51)5質量部を追加した以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-3)を得た。低温定着性評価における定着温度は130℃であった。
【0088】
<実施例18>
実施例15のポリエステル(P-1)を45質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を(C-8)に変更して55質量部、パラフィンワックス5質量部を追加した以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-4)を得た。低温定着性評価における定着温度は120℃であった。
【0089】
<比較例11>
実施例15のポリエステル(P-1)を100質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を0質量部、パラフィンワックス5質量部を追加した以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-5)を得た。低温定着性評価における定着温度は155℃であった。
【0090】
<比較例12>
実施例15のポリエステル(P-1)を45質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を(C-15)に変更して55質量部、パラフィンワックス5質量部を追加した以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-6)を得た。低温定着性評価における定着温度は160℃であった。
【0091】
<比較例13>
実施例15のポリエステル(P-1)を45質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を(C-17)に変更して55質量部、パラフィンワックス5質量部を追加した以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-7)を得た。低温定着性評価における定着温度は140℃であった。
【0092】
<比較例14>
実施例15のポリエステル(P-1)を45質量部、トナー用結着樹脂(C-1)を(B-1)に変更して55質量部、パラフィンワックス5質量部を追加した以外は同様の方法で行い、トナー用結着樹脂組成物(D-8)を得た。低温定着性評価における定着温度は160℃であった。
【0093】
【0094】
本発明のトナー用結着樹脂(実施例1~14)は、本発明の範囲外である比較例1~10に比べて、所望の低温定着性と保存性を両立していることがわかる。また、トナー用結着樹脂中の第一の樹脂(A)の比率が質量比で5~30%であるトナー用結着樹脂(実施例1~9、11、13、14)は、そうでないトナー用結着樹脂(実施例10、12)に比べて、低温定着性に優れていることがわかる。さらに、トナー用結着樹脂のガラス転移温度が45~65℃で重量平均分子量が1~10万であるトナー用結着樹脂(実施例1~8、13、14)は、そうでないトナー用結着樹脂(実施例9~12)に比べて、低温定着性と保存性のバランスに優れていることがわかる。
【0095】
本発明のトナー用結着樹脂とポリエステルを含むトナー用結着樹脂組成物(実施例15~18)は、ポリエステル単独(比較例11)やトナー用結着樹脂として本発明のトナー用結着樹脂を用いない場合(比較例12~14)に比べて、所望の低温定着性と保存性を両立していることがわかる。