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▶ 上條 雄二の特許一覧

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  • 特開-スピーカーの位相反転機構振動板 図1
  • 特開-スピーカーの位相反転機構振動板 図2
  • 特開-スピーカーの位相反転機構振動板 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074190
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】スピーカーの位相反転機構振動板
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
H04R1/28 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184027
(22)【出願日】2020-11-03
(71)【出願人】
【識別番号】395007635
【氏名又は名称】上條 雄二
(72)【発明者】
【氏名】上條雄二
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018AD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】位相反転型スピーカーの位相反転原理を、遅延によらない振動板の機構動作によって、高音質化を実現するスピーカーキャビネットを提供する。
【解決手段】キャビネット5において、折り返す形状の位相反転用振動板の湾曲面の前方を、スピーカー設置領域分を短くし、折り返し点をスイング動作の支持部3、受動面1及び放射面2の湾曲端を接合部4として設置する。受動面1の接合部4をキャビネット上部、支持部3をキャビネット下部とし、放射面2を受動面1が囲う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲が同方向の受動面1と放射面2を折り返し形状とし、放射面2を短くした領域にスピーカー6を位置し、折り返し点にスイング動作の支持部3を設け、受動面の接合部および放射面の接合部4として、スピーカーキャビネット5に設置可能に形成したスピーカーの位相反転機構振動板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相反転型スピーカーにおける主要な位相反転原理が振動板機構による位相反転方式に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な位相反転型スピーカーは,キャビネットに設けた音の出口によって,遅延する音響動作による反共振を利用して位相反転を求める。
その他,本発明に至る従来のウエーブ状の位相反転用振動板によって、遅延を利用しない位相反転を求める。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-029881 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な位相反転型キャビネットは、音の出口の設定による、反共振周波数とされる帯域の低音増強となり、位相が180°遅れる音であることと、それ以外の周波数帯域でも、遅延する音の成分が出るため、音質向上を阻む要因となる。
【0005】
遅延する音響動作を利用しない位相反転方式を課題とした、本発明に至る従来の位相反転用振動板は,振動板自体が音速より速い位相反転機能を求めたものであるが、2つの湾曲面がウエーブ状となる全長が必要なため,スピーカーキャビネットのコンパクト化に限界があった。
【0006】
低音によるキャビネット内の空気バネとしての反発を、放射面に受けることが、最低共振周波数を高める要因となる。
【0007】
低音特性の最適化およびキャビネット内で生じる定在波の影響を抑えるための対策において、中央支持部を境とする仕切り板によって、受動面側と放射面側の独立する空気室として、適当に割り振る調整が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
スピーカーキャビネットに縦設置する、従来のウエーブ状の位相反転用振動板の図1における、受動面1と放射面2の境であるスイング動作の支持部3で、放射面を前方へ折り返す形態とすることによって,キャビネットにコンパクトに設置できる。
【0009】
受動面より、放射面を短くすることで、スピーカーを配置でき、放射面より受動面に生じる応力が勝ることにより、放射面を駆動することが可能となる。
【0010】
受動面の接合部および支持部をキャビネット上部および下部にすることで,受動面を広く設定でき、放射面を駆動するための応力を高められる。
【0011】
スピーカー背後に近い位置に受動面を広く設定できるため,スピーカーの振動と位相反転用振動板の同時振動性を向上できる。
【0012】
放射面を受動面が囲うことで、キャビネット内の低音による空気バネとしての影響や、反射波および定在波も減少できる。
【発明の効果】
【0013】
湾曲変化による振動板の応力は、接合部と支持部の間に生じる押し引きする縦粗密波(縦波)のため、同じ縦波で気体を伝わる音の伝播速度より、固体の紙断面を伝わる縦波の方が10倍に達する速さが見込まれるため、位相を180°遅らせない同時性の位相反転が可能となり、原音に対して正しい過渡特性を得やすい。
【0014】
位相反転用振動板は、折り返す形態によって,キャビネット上下サイズ以上に長くできることにより面積を大きくでき、受動面をスピーカー背後に近づける設定ができ、位相反転の同時性の向上と音量を効率良く得やすく、自然な音響放射を可能とする。
【0015】
受動面は、折り返す放射面を囲むため、キャビネット内の空気バネとしての反発が低減され,最低共振周波数に影響しにくい。
また、内部反射や定在波の影響が出にくい効果を得るため、追加的な音質調整対策が軽減でき、簡単に良好な音質設定を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に至る従来の位相反転用振動板を折り返す発想を示す斜視図aおよび側断面図b
図2】実施の形態および実施例を示す側断面図c、正面図d
図3】実施例での特性
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に至る、従来のウエーブ状の位相反転用振動板を示す図1において、斜視図aの中央支持部3で放射面2を前方へ折り返す発想に基づく、側断面図bに示すように、支持部3から下を短縮できる機構動作を可能とする。
【0018】
図2の側断面図cに示す受動面1と放射面2の折り返し位置の割合は、良好な低音特性が得られる標準として3:1とした。
振動板の湾曲は、動作が乱れず分割振動が起きにくい値として、中心角40°~45°(円の1/9~1/8)位とした。
湾曲にしたときの復元応力は、クラフト紙では月日経過とともに低下するが、設置前に円筒に巻くなどして湾曲形成すれば、支持部3への余計なストレスを回避できる。
【0019】
支持部3は、放射面2を直角に曲げた延長でも可能である。
支持部3の外面は、放射面2の外面と振動が同位相であるため、放射面として連動するが、内面にはキャビネット内の空気バネとしての反発を受けるので小面積が好ましい。
振動が集中する接合部4の部分の強度も重要である。
振動板サイドとキャビネット間隙を、接触しない最小とするが、サンドペーパーを差し込む研磨で0.25mmとし、3年経過後も未接触で、良好な支持性が可能である。
【0020】
振動板材料は,軽量で丈夫な素材の中で,一般のクラフト紙でも湾曲が維持できる強度が求められ、音響特性に好適である。
紙目(流れ目)方向を,図の上下方向にすることが伸縮を小さくでき,縦波振動の伝播速度を早めやすい。
実施可能な紙製の振動板厚みとして、高さ方向300mm:0.35mm~800mm:0.7mm位となる。
【0021】
本発明の従来の位相反転用振動板における、分割振動の対策としての、縦方向に接着する振動損失用ヒレの強度の設定により、振動板の厚み低減ができ、軽量化に有効である。
【0022】
この他、湾曲向きを反対にする設定も可能である。
また、上下対象の拡張も可能であり、上下受動面の接合部4とするところを中間に設け、放射面2および受動面1は上下に分ける短縮が設定でき、大型化でも振動板の厚みを薄くする軽量化に有効となる。
【実施例0023】
図2の側断面図cおよび正面図dはスピーカーシステムとしての実施例を示す。
スピーカーは汎用の口径10cmフルレンジを用いて、キャビネット内容積10リットルとした。
受動面1の縦寸法は300mm、放射面2の縦寸法は100mm、面積比3:1とした。
【0024】
材料については一般のクラフト紙を用いて、厚みは受動面1は0.4mm、放射面2は0.25mmとした。
スピーカー背後に近づけた受動面1を境とする、前後の空気室7と空気室8の体積比は、およそ1:4である。
【0025】
図3における出力音圧周波数特性において、位相反転用振動板の分割振動対策やキャビネット内の吸音対策は無い状態であるが、フルレンジスピーカーで通常ある中音の谷と言われる400Hz以下の低音域は、位相の乱れによる山谷が無いスムーズな特性で、放射面での良好な低音量および音質が可能である。
インピーダンス特性では、最低共振周波数としての1つの峰となり、通常の密閉型キャビネット同様な、スムーズな特性での低音増強を可能とする。
【符号の説明】
【0026】
1 受動面
2 放射面
3 支持部
4 接合部
5 キャビネット
6 スピーカー
7 前方、空気室
8 後方、空気室
図1
図2
図3