(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074199
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】植物体の着色促進剤及び着色促進方法
(51)【国際特許分類】
A01N 37/44 20060101AFI20220511BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20220511BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20220511BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A01N37/44
A01N25/00 102
A01P21/00
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184038
(22)【出願日】2020-11-03
(71)【出願人】
【識別番号】720007316
【氏名又は名称】東京農大発i-NOVA合同会社
(72)【発明者】
【氏名】小塩 海平
(72)【発明者】
【氏名】内田 一臣
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA03
4H011AB03
4H011BB06
4H011DD03
4H011DG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理量や処理タイミングがタイトにならずに施用に係る判断が容易であり、他に影響を与えることなく着色不良を抑制することができる、植物体の着色促進剤及び着色促進方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、メチオニンを含む、植物体の着色促進剤であって、好ましくは、係る植物体の着色促進剤を植物体の果皮表面に付着させる、植物体の着色促進方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、メチオニンを含む、植物体の着色促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の植物体の着色促進剤を植物体の果皮表面に付着させる、植物体の着色促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体の着色促進剤及び着色促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、リンゴ等の果樹において、温度変化に起因して果実の着色不良が生じている。着色不良となった果実は、食味等に問題がない場合でもあって、品質が悪いとされ、商品価値が低下する。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、植物ホルモンなどの植物化学調整物質を利用して、果実の着色不良を抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術のように植物化学調整物質を用いることで、着色不良を抑制することはできるが、施用に対して効果が鋭敏に出てしまうため、処理濃度や処理時間などを厳密に管理・調整する必要があり、処理判断には、生育状況や生育環境を加味して行う必要がある。処理量やタイミングを間違えた場合、理の判断を間違えた場合、効果が出ないばかりか、異なる影響が出る可能性もあり、周囲の生態系に及ぼす影響もあり得る。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、処理量や処理タイミングがタイトにならずに施用に係る判断が容易であり、他に影響を与えることなく着色不良を抑制することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の植物体の着色促進剤は、少なくとも、メチオニンを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理量や処理タイミングがタイトにならずに施用に係る判断が容易であり、他に影響を与えることなく着色不良を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
(本着色促進剤)
本実施形態において、本着色促進剤は、植物体の果実や野菜の果皮表面の着色を促進させるものであり、例えば、メチオニンと、ビタミンCと、グリセリンと、システイン(またはヒスチジン)と、ショ糖と、プロリンと、を含む。
詳細には、本着色促進剤は、植物ホルモンのエチレンの生成促進を目的としてメチオニン、ラジカル消去を目的としてビタミンC、保湿を目的としてグリセリン、ラジカルの攻撃に対して脆弱なSH(スルフヒドリル)基:チオール基の保護を目的としたアミノ酸のシステイン(またはヒスチジン)、アントシアンの生合成促進を目的としてショ糖、ストレス緩和を目的としてプロリンを含む。
【0011】
詳細には、以下の条件で本着色促進剤が付着していることでより好適に効果を生じさせることができる。
本着色促進剤の付着部位については、果皮全体であるとより効果を高めることができる。
また、処理の時期については、果実のアントシアン合成が始まる直前から着色期までの間であるとより効果を高めることができる。
また、各成分の処理濃度は、メチオニン、システイン、ヒスチジン、プロリンとも10~1000ppm、ビタミンCとトロフェロール、グリセリンは0.01~5%、ショ糖は3~5%であるとより効果を高めることができ、1時間以上果皮に付着していることでより効果を高めることができる。
また、果皮表面の付着させる方法としては、表面散布の他に塗布でも良い。
【0012】
本着色促進剤を用いることで、着色不良が生じるような高温の環境下になって呼吸が多く行われた場合であっても、呼吸により消費された糖が着色促進剤に含まれる糖成分によって補われることで、着色に用いられる糖の転流が妨げられることなくなり、アントシアンが配糖体になって適切な着色が行われることになる。
【0013】
着色不良は、アントシアンやカロチノイドなどの合成阻害とクロロフィルの褪色阻害によると知見を得た。メチオニンを果皮に付着させることで、エチレン生成を促進することによってフェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を高めアントシアン合成を促進し、ショ糖もアントシアン合成自体を促進することが推察され、着色を促進させて着色不良を抑止することができる。
【0014】
本着色促進剤には、メチオニンと、ビタミンCと、グリセリンと、システイン(ヒスチジン)と、ショ糖と、プロリンと、を含んでいるため、植物調節物質のように鋭敏に反応を促すことはないため、処理量や処理タイミングがタイトにならずに施用に係る判断が容易であり、他に影響を与えることなく着色不良を抑制することができる。
【0015】
なお、上述した実施形態では、リンゴやブドウ、モモなどのようなアントシアンの色素ではなく、カキやトマトのようなカロチノイド系の色素の場合については、高温下でとくにリコピン形成が阻害されることを見出した。そこで、水溶性の酸化防止剤であるビタミンCの代わりに、脂溶性の酸化防止剤であるトコフェロールを使用する。
【0016】
また、上述した実施形態では、好適な例として、例えば、メチオニンと、ビタミンCと、グリセリンと、システイン(ヒスチジン)と、ショ糖と、プロリンと、を含むように構成したが、これに限られず、少なくとも、メチオニンを含むように構成すれば、着色を促進させることができ、着色不良を抑止させることができる。
【0017】
また、上述した実施形態では、本着色促進剤が着色不良を抑止することを記載したがこれに限られず、例えば、果実の果面温度が急激に高くなることによってスーパーオキシドラジカルなどが生成して細胞膜や酵素の過酸化が起こり、褐変物質の生成を伴う日焼けに対しても効果を発揮することができる。日焼けを起こすと、その周辺の着色は却って進むことがあるが、褐変が同時に進行するため、着色不良の場合よりも商品価値はなくなるため、本着色促進剤の利用が必要となる。
【0018】
また、上述した実施形態では、リンゴやブドウ、モモなどのアントシアンの色素の果樹、果物、野菜等の植物における果実やカキやトマトのようなカロチノイド系の色素の果樹、果物、野菜等の植物の場合について説明したがこれに限れない。
【0019】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0020】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、本発明は、上述した各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。