(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074212
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】圧力センサー
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20220511BHJP
G01L 9/14 20060101ALI20220511BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01L1/00 F
G01L9/14
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184070
(22)【出願日】2020-11-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月27日 株式会社KRIのウェブサイトに公開。 公開のウェブページ:http://www.kri-inc.jp/tech/1274515_11451.html
(71)【出願人】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】荒木 圭一
(72)【発明者】
【氏名】出口 朋枝
【テーマコード(参考)】
2F051
2F055
【Fターム(参考)】
2F051AA21
2F051AB05
2F055BB19
2F055CC12
2F055DD19
2F055EE27
2F055FF11
2F055GG11
(57)【要約】
【課題】
圧力の検出、特に、流体の微弱な圧力変化の検出が可能で、流れの方向の検出も可能な圧力センサーの提供。
【解決手段】
本発明の圧力センサーは、感圧体と磁気センサーを含む圧力センサーであって、前記圧力センサーは前記感圧体を面上に立設させて前記感圧体の周囲に3個以上の前記磁気センサーを設置し、前記感圧体は細長い形状の弾性体で一定方向に磁力線を有することを特徴とし、感圧体に圧力が加わった際の変形を磁気センサーが磁場の変化として感知することにより、圧力の変化及び方向を検出する。また、前記圧力センサーをシート上にマトリクス状に複数配置することにより圧力分布センサーにすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧体と磁気センサーを含む圧力センサーであって、前記圧力センサーは前記感圧体を面上に立設させて前記感圧体の周囲に3個以上の前記磁気センサーを設置し、前記感圧体は細長い形状の弾性体で一定方向に磁力線を有することを特徴とする圧力センサー。
【請求項2】
前記感圧体が設置された面と同一面上又は一定の隙間を隔てた面上に3個以上の前記磁気センサーが設置されたことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー
【請求項3】
前記磁気センサーが、ホール素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力センサー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の圧力センサーをマトリクス状に複数配置したことを特徴とする圧力分布センサー。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の圧力センサー又は請求項4に記載の圧力分布センサーを具備したことを特徴とする電子機器の操作パネルの操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流や液流の圧力の計測と、流れの方向検出機能を有する圧力センサ-及び本圧力センサーをマトリクス状に複数配置した圧力分布センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元面内の圧力分布センサーで、気流のような微弱な圧力変化の検出が可能なものとしては、例えば特許文献1のように、可撓性のシートを切り抜き加工し、片持ち梁型の圧力センサーを複数配置、片持ち梁支持部に形成した歪ゲージによって圧力を検出する圧力分布センサーがある。しかしながら、片持ち梁型の構造では、流れの方向を検出することができない。
一方、非特許文献1では、基板上に直立させた人工毛で気流の方向を感知するエアフローセンサーが報告されている。本センサーは、風圧を受けて人工毛が傾くと、人工毛の足元において3方向に設置したイオノゲルの導電チャンネルの一つが人工毛の土台部の足によって圧縮される構造になっており、圧縮によるイオノゲルチャンネルの導電性変化から、風圧の強さと気流の方向を検出する。イオノゲルはイオン液体を含んだゲルであり、抵抗値の測定には交流電圧を印加する必要がある。従って検出回路が複雑になるというデメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proceedings of 2019 2nd IEEE International Conference on Soft Robotics (Robosoft) p.611-616(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、圧力の検出、特に、流体の微弱な圧力変化の検出が可能で、流れの方向の検出も可能な圧力センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者は鋭意検討した結果、以下の圧力センサー等を発明することができた。すなわち、本発明は以下の技術的構成を有する圧力センサー等である。
【0007】
〔1〕 感圧体と磁気センサーを含む圧力センサーであって、前記圧力センサーは前記感圧体を面上に立設させて前記感圧体の周囲に3個以上の前記磁気センサーを設置し、前記感圧体は細長い形状の弾性体で一定方向に磁力線を有することを特徴とする圧力センサー。
〔2〕 前記感圧体が設置された面と同一面上又は一定の隙間を隔てた面上に3個以上の前記磁気センサーが設置されたことを特徴とする前記〔1〕に記載の圧力センサー
〔3〕 前記磁気センサーが、ホール素子であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の圧力センサー。
〔4〕 前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の圧力センサーをマトリクス状に複数配置したことを特徴とする圧力分布センサー。
〔5〕 前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の圧力センサー又は前記〔4〕に記載の圧力分布センサーを具備したことを特徴とする電子機器の操作パネルの操作装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧力センサーおよび圧力分布センサーは、着磁した磁性体を含有した弾性体よりなる細長い形状の感圧体の、外力による傾きを、感圧体の周囲に配置した磁気センサーが磁場の変化を通して検出するため、感圧体と磁気センサーが物理的に接触している必要が無い。従って、
図1(b)に示した様に、感圧体と磁気センサーを別の基板上に設置して、各基板間に空間が存在しても、磁場強度の変化が検出可能な範囲であれば動作可能である。この特徴を活かして、例えば液体の流れの検出の際に、感圧体だけを液中に沈め、磁気センサーは器壁の外に設置することが可能である。
図4(a)は反応容器の内壁に感圧体を張り付け反応容器の外部に磁気センサーを設置している。また
図4(b)では、配管の内壁に感圧体を張り付けている。このようにすることで、磁気センサーなどの電気部品が液体に触れることなく使用することができる。また、基材をフレキシブルな材料にすることにより、曲面へ装着することが可能である。例えばロボットの皮膚に用いれば、触覚や気流や水流の検知機能を付与することができる。
【0009】
さらに、本センサーはパソコン、スマートフォン等の電子機器の操作パネルの非接触操作にも応用が可能である。
圧力分布センサーは、気体の圧力変化(例えば息の吹きかけ)の位置の検出も可能なので、非接触のタッチセンサーとしての応用が可能である。従って、手を使わずにパソコンのカーソル移動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)本発明による圧力センサーの立体図である(b)感圧体と磁気センサ-を異なる基板上に設置した圧力センサーの立体図である。
【
図2】感圧体が変形した際の磁場ベクトルの変化と磁気センサー出力の変化を示した概念図である。
【
図3】感圧体の周囲に4つの磁気センサーを設置した場合の磁気センサー出力を示す概念図である。(a)磁気センサー3の方向に力を加えた場合、(b)磁気センサー3と4の中間の方向に力を加えた場合
【
図4】感圧体と磁気センサ-を異なる基板上に設置し、液中に感圧体だけを設置して液体の流速や流れの方向をモニターするイメージを示した図である。(a)は反応容器内の攪拌モニター(b)は配管内の液体の流速と流れの方向のモニターのイメージを示している。
【
図5】磁気センサーの出力電圧の読み取り方法を示す図である。
【
図6】実施例1で作製した体毛型センサーの構造及び寸法を示す図である。
【
図7】実施例1~3で作製した体毛型センサーの評価データ。
【
図8】実施例1で作製した体毛型センサーの評価データ。
【
図9】実施例1で作製した体毛型センサーの評価データ。
【
図10】感圧体の中心線からすべての方向を向いた磁力線を発生する感圧体の着磁に使用する磁気回路を示した図である。
【
図11】感圧体を磁気回路中央の穴に挿入して着磁する方法を示した図である。
【
図12】圧力センサーを用いた非接触ユーザーインターフェイスのイメージを示した図である。
【
図13】圧力分布センサーを用いた非接触ユーザーインターフェイスのイメージを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の圧力センサーは、感圧体と磁気センサーを含む圧力センサーであって、前記圧力センサーは前記感圧体を面上に立設させて前記感圧体の周囲に3個以上の前記磁気センサーを設置し、前記感圧体は細長い形状の弾性体で一定方向に磁力線を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に用いる感圧体は、一定方向に磁力線を有する弾性力のある自立する細長い形状のものであればよく、太さが一定であっても、テーパー加工されていてもよく、複雑な形状になっていればなんであってもよい。棒状、針状が一般的であるが、流体の圧力(風圧、水圧等)を受ける面積を広げるために先端部の面積を広くしてもよく、羽根状のものを張り出させてもよい。また、チューブのように中が中空になった細長形状体であってもよい。
前記感圧体の一例を示すと、磁性体エラストマーが好ましいが弾力性のある磁気を帯びた針金であってもよい。
【0013】
前記磁性体エラストマーは、磁性体フィラーを含んだエラストマーであり、磁性体フィラーとしてはネオジム、フェライト、サマリウムコバルト、サマリウム-鉄-窒素などが用いられる。一方エラストマーにはシリコーンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ポリアミド、ポリエチレンなどが用いられる。
【0014】
前記感圧体の磁力線の放射方向は、細長い形状の感圧体の長手方向に対して一定の方向を向いた磁力線であれば良く、長手方向に対して並行の磁力線であっても、一定の角度を持った磁力線であっても良いが、長手方向に直交する磁力線が好ましい。そして、長手方向に直交する磁力線でも、特定の方向を向いた磁力線よりも感圧体の中心線からすべての方向を向いた磁力線が最も好ましい。
感圧体の中心線からすべての方向を向いた磁力線は、最も磁気センサーに対して垂直方向に磁場が入射しやすいためセンサーの高感度化に有利である。
【0015】
細長形状の長手方向に対して直交するすべての方向に向かって磁力線が放射されるように着磁するためには、
図10に示す様に、ラジアル配向された磁気回路を用いる方法が挙げられる。
本発明の実施例で用いる感圧体は、細長形状の長手方向に対して直交するすべての方向に向かって磁力線が放射されるように、ラジアル配向された磁気回路(
図10)を用いて着磁処理を行った。
具体的には製作した磁性体エラストマーを、リング形状磁気回路のリング中心部に配置し、周方向から磁場印加を行うことにより着磁した(
図11)
【0016】
本発明の圧力センサーは、前記感圧体の周囲に3個以上の磁気センサーを配設してある。
前記磁気センサーは、3個以上必要であるが、好ましくは4個以上であり、センサー数が多くなるほど圧力センサーの精度を上げることができるが、通常4個あれば十分である。
【0017】
前記磁気センサーは、前記感圧体の長手方向(磁力線の方向)に対する各センサーの3次元の位置関係が決められればどのように配設しても良いが、前記感圧体の長手方向に対して等しい角度で等しい距離になるように配設するのが好ましい。
より具合的には、前記感圧体が設置された面と同一面上又は一定の隙間を隔てた面上に3個以上の前記磁気センサーが設置することが好ましい。前記面は、平面に限らず円周面のような起伏のない曲面であってもよい。
【0018】
前記感圧体を立設する面は、基板であることが好ましい。
前記基板は、可撓性の有無にかかわらず用いることができる。例示すると樹脂、ガラス、セラミック、金属等様々な素材を用いることができる。その中でも、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、テトラフルオロエチレンなどの樹脂シートやガラス基板などを用いるのが適している。基板の形状は、特に制限はないが、通常は、シート状、平板状である。
【0019】
前記磁気センサーは、ホール素子である。ホール素子は電子部品として市販されているものを用いても良いし、ホール素子に適した半導体を用いて作製することも可能である。ホール素子に適した半導体としては、InSb、InAs、GaAsなどが挙げられる。
【0020】
以下に、本発明による1つの実施例である圧力センサーについて、
図1を用いて説明する。
図1(a)に示す様に、圧力センサー10は、基板1上に設置した感圧体3と、感圧体の周囲に設置した磁気センサー2とにより構成される。また、別の形態として、
図1(b)に示す様に、基板4上に設置した感圧体3と、基板1上に設置した磁気センサー2と、基板4と基板1の間に設置するスペーサー5により構成される圧力センサー11がある。圧力の加わった方向を検出するためには、磁気センサーは3個或いは4個必要である。
【0021】
図1(b)の応用例を示したのが
図4である。
図4(a)は反応容器の内壁に感圧体を張り付け反応容器の外部に磁気センサーを設置している。また
図4(b)では、配管の内壁に感圧体を張り付けている。このようにすることで、感圧体だけを液中に沈め、磁気センサーは器壁の外に設置することが可能であり、磁気センサーなどの電気部品が液体に触れることなく使用することができる。
【0022】
次に、圧力検出の原理について、
図2を用いて説明する。感圧体は、一定方向に磁力線を有する弾性体(磁性体を含むエラストマー)であるため、圧力が加わることにより先端部が曲がる。感圧体の変形により磁力線の方向が
図2中に示した概念図の様に変化する。一方、感圧体の周囲に設置した磁気センサーは、ホール素子であり、素子面に対して垂直方向の磁場強度に対応した電圧を出力する。従って、感圧体の先端部が磁気センサーに接近する方向に曲がる場合は、磁気センサーの出力電圧は増加し、逆に感圧体の先端部が磁気センサーから遠のく方向に曲がる場合は、磁気センサーの出力電圧は減少する。このように、各磁気センサーの出力電圧の変化から、感圧体から磁気センサー方向への圧力変化の大きさを検知できる。
【0023】
次に、本圧力センサーに圧力の加わった方向を検知する仕組みについて
図3を用いて説明する。
図3(a)は、磁気センサー3の方向に圧力が加わった場合の各磁気センサーの出力電圧の変化を示している。この場合、感圧体の先端部が磁気センサー3に接近するため、磁気センサー3の出力電圧が増加する。逆に磁気センサー1からは感圧体の先端部は離れていくため出力電圧は減少する。一方、磁気センサー4,1については、感圧体先端部との距離に変化が無いため出力電圧にも変化が無い。
図3(b)は、磁気センサー3と4の中間の方向に圧力が加わった場合であるが、この場合は磁気センサー3と4は感圧体の先端部と接近するため出力電圧が同等に増加し、磁気センサー1と2は感圧体の先端部から離れていくため出力電圧が同等に減少する。このように、各磁気センサーの出力電圧の変化から、圧力の方向を検知できる。
【0024】
磁気センサーの出力電圧の読み取り方法について、
図5を用いて説明する。磁気センサーはホール素子である。ホール素子の動作原理について
図5(a)を用いて説明する。図中2の十字型の物体がホール素子であり、InSb,InAs,GaAs等の高移動度の半導体結晶と電極によって構成される。外部電源22を用いてX軸方向に電流を流し、Z軸方向に磁場を加えると、電流を担っているキャリア粒子にはローレンツ力が加わり進行方向が曲げられる。これによりY軸方向に電位差V
Hが発生する。これがホール電圧である。ホール電圧は以下の式(1)で表される。
V
H=R
HIB/D (1)
【0025】
ここでR
Hはホール定数、Iは電流、Bは磁束密度、Dは試料の厚さである。この式からホール電圧V
Hは磁束密度Bに比例することが分かる。
市販されているホール素子はこれにアンプ等を組み込んだデバイスである。
図5(b)に実施例1で使用したホール素子(テキサスインスツルメンツ社製DRV5053)と、外部回路との接続の形態を示す。外部電源VCCを接続し、図中21の方向に磁場を加えると磁場強度に応じた電圧がV
OUT端子から出力される。V
OUT端子の出力電圧は、磁場強度が0のとき1.0V、N極の磁極が接近した際は+23mV/mTの比例定数で電圧が増加する。一方S極の磁極が接近した際は-23mV/mTの比例定数で電圧が低下する(テキサスインスツルメンツ社製DRV5053スペックシートより)。V
OUT端子はマイコンのADコンバーター端子やデータロガー、デジタルマルチメーターに接続して電圧を読み取ることができる。
【0026】
次に、圧力分布センサーについて説明する。
圧力分布センサーは、圧力センサー10或いは11を同一基板上に複数配置して圧力分布センサーとして使用することができる。圧力分布センサーの構造と使用法について
図7を用いて説明する。
図7は、圧力センサー10を4個×4個=16個配置した圧力分布センサーの回路図である。縦に4本の列導電体VS1~VS4と、横に4本の行導電体VG1~VG4を有しており、交点にはトランジスタが設置されている。行導電体はトランジスタのゲート電極に接続され、列導電体は同じくトランジスタのソース電極に接続されている。さらにドレイン電極が体毛型センサー内の磁気センサーのV
CC端子に接続されている。こうすることで、交点の位置の体毛型センサーだけを動作させることが可能である。体毛型センサーの4個の磁気センサーのV
OUT端子はデータ読み取りライン1~4にそれぞれ接続されており、同時に4つの磁気センサーの出力電圧を読み取ることができる。
【0027】
本発明の圧力センサーは、感圧体に加わる力の方向及び強さを検知することが可能であり、物体との接触の際に受ける力や流体から受ける圧力と、その方向を検出するセンサーとして利用できる。また、圧力分布センサーは、感圧体に加わる力の方向及び強さに加えて、力が加わる位置の検出及び圧力分布の検出が可能である。
本発明の圧力センサー及び圧力分布センサーは、感圧体に力が加われば何でも検出可能であるが、特に、感圧体に流体を接触させて流体の流れの方向、強さを検知するのに適している。前記流体は、気流、水流等の液体流、粉体流等である。
【0028】
本発明の圧力センサー及び圧力分布センサーは、電子機器の操作パネルの操作装置として利用できる。
電子機器の操作パネルとして、タッチパネルがデジタル情報機器を中心に多方面で採用されており、例えば、スマートフォン、パソコン、ゲーム機、携帯情報端末、カーナビ、テレビドアホン、デジタルオーディオプレイヤー、コピー機、ファクス、銀行など金融機関のATM、駅やレストランなどの券売機、コンビニの情報端末などがある。これらの電子機器の操作パネルとして、本発明の圧力センサー及び圧力分布センサーを利用することができる。
【0029】
本発明の圧力センサーの利用の一例として電子機器の操作パネルでパネルに表示されるカーソルの移動操作がある。操作画面上のカーソルの移動は従来、十字キーやジョイスティック、タッチパッドなどの接触式ユーザーインターフェイスが用いられてきたが、本発明の圧力センサーを用いれば、気流の方向、強さを圧力センサーが検知し、非接触でカーソルを移動させることができる。さらに、本発明圧力分布センサーは、位置の検知ができるため気流を当てる位置を移動させて、気流の移動方向を検知し、電子機器表示画面上のカーソルを移動させるカーソルの移動方法に用いることができる。
【0030】
気流を生じさせる手段は、どのような手段でも良いが、例示すると、掌、団扇などの板状物、扇等動かす、息を吹きかける、スプレー、空気入れ、注射器等からの噴射などを用いることができる。また、気流でなくても流体であれば液流でもよい。
【0031】
圧力センサー単体を用いたユーザーインターフェイスは、画面のスクロールや、ATMや券売機のような単純な操作に有効である。一方、圧力センサーを複数配置した圧力分布センサーを用いたユーザーインターフェイスは、力が加わる位置の検出ができるため画面上の任意の位置にカーソルを移動させたり、パソコン上での描画といった正確で複雑な操作が必要な場合に有効であり、非接触の操作パネルとしてタッチパネルと同様の機能を発揮することができる。
【0032】
本発明の圧力センサー及び圧力分布センサーは、非接触での操作が可能であり、この特徴を活かして、不特定多数のユーザーが操作する機器(ATMや券売機など)の操作や、医療現場、調理場、工事現場など電子機器に手を触れて操作するのが困難な環境向けのユーザーインターフェイスに適している。
【0033】
以下に、本発明の圧力センサーおよび圧力分布センサーの非接触の特徴を生かした応用例を例示する。
図12は、圧力センサーをスマートフォンやパソコン、ゲーム機などの電子機器の操作に用いる応用例を示している。
図13は、本圧力分布センサーをスマートフォンや、パソコン、ゲーム機などの電子機器の操作に用いる応用例のイメージを示したものである。
このようなユーザーインターフェイスを備えたパソコンなどの機器が実現すれば、手が自由に動かせない状況での又は手が不自由な利用者による機器(例えばパソコン)操作が人間の息を吹きかけることによってできるようになる。
【0034】
次に、その他の圧力分布センサーの利用方法を示す。
圧力分布センサーは、圧力分布に加えて流体の流れの方向を観測することができるので、例えば液中に浸漬して液体の流れの方向の分布を観測できる。またフレキシブルな基材上に形成可能なため、曲面への装着に適している。例えばロボットの皮膚に用いれば、触覚や気流や水流の検知機能を付与することができる。
【0035】
本発明の圧力センサーは感圧体の設計により単なる圧力センサーにとどまらず、様々なセンシングに応用できるのである。例えば、感圧体が物体との接触の際に受ける力や音波、静電気、特定の化学物質と相互作用する化学センサーやバイオセンサーへの応用の可能性もある。
【実施例0036】
本発明について、実施例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
1.圧力センサーの作成
実施例に用いた圧力センサーは以下のように作成した。
【0038】
(感圧体の作製)
〔感圧体1〕
ネオジム粉末(マグネクエンチ製 MQP15-7、粒子径5μm)24g、ウレタン樹脂(株式会社エクシール人肌のゲル)6g(硬化剤濃度5%)を混合した。これを型に流し込み、80℃オーブンで2時間硬化させた。型はマイクロピペット用チップを流用した。
〔感圧体2〕
硬化剤濃度が7.5%である以外は感圧体1と同条件である。
〔感圧体3〕
硬化剤濃度が10%である以外は感圧体1と同条件である。
【0039】
感圧体1~3における磁性体エラストマーの組成を以下の表1にまとめて示す。
【表1】
【0040】
(着磁工程)
実施例で用いる感圧体は、細長形状の長手方向に対して直交する方向に向かって磁力線が放射されるように、ラジアル配向された磁気回路(
図10)を用いて着磁処理を行った。
具体的には製作した磁性体エラストマーを、リング形状磁気回路のリング中心部に配置し、周方向から磁場印加を行うことにより着磁した(
図11)。
このときの着磁時間は1分、印加磁界は3Tである。
このようにして着磁した感圧体を型から取出し、カッターを用いて先端から15mmの位置で切断した。
【0041】
(感圧体の設置)
着磁した磁性体エラストマーをガラス基板(5cm□、厚さ0.5mm)の中央部に接着剤(アロンアルファ)を用いて接着固定した。
【0042】
(磁気センサーの設置)
ユニバーサル基板(株式会社秋月電子通商製、材質:FR-4)にホール素子(テキサスインスツルメンツ社製DRV5053、感度:-23mV/mT Typ)×4個を正方形の頂点の位置に、同一対角線上の素子の間を12.5mm程度離して、半田付けにより固定した。
【0043】
(積層)
磁気センサーを設置したユニバーサル基板において、シリコーンゴム(10mm□t5mm)を
図6(a)に示すように5cm四方の頂点に設置し、その上に感圧体を設置した
図6(b)に記載のガラス基板を積層し、
図1(b)に記載の基板分離タイプの圧力センサーを作製した。
【0044】
2.圧力センサーの圧力検知特性の評価
前記で作製した圧力センサー3種類(感圧体1~3)を用いて圧力検知特性の評価を行った。
【0045】
(評価方法)
感圧体に対して、4個の磁気センサーのうちの特定のセンサーの方向に、デジタルフォースゲージで圧力を加えた。この際に感圧体に加わった力と、磁気センサーの出力電圧を記録した。デジタルフォースゲージのアタッチメント形状は山型を用い、アタッチメント先端を感圧体の先端から5mmの位置に接触するようにデジタルフォースゲージの高さを調整した。デジタルフォースゲージを水平移動させて感圧体に加圧する際の力の大きさを調整することで、様々な力を加えた際の出力電圧が得られる。
【0046】
(評価結果)
感圧体1~3を用いて体毛型センサーと圧力検知特性を評価した結果を加えた力とV
OUTの関係として
図8に示す。この結果から、柔らかい感圧体(感圧体1)ほど微弱な力に対して高感度になることが分かる。
【0047】
(圧力の働いた方向の検知特性評価)
感圧体1の圧力センサーを用いて
図9上部の平面図に示した方向に力を加えた際の四角囲みの番号1~4で示す各センサーの出力電圧を記録した。
図9(a)は番号3の磁気センサーの方向に、
図9(b)では番号3と番号4の磁気センサーの中間の方向に力を加えた。結果は
図9下部のグラフに示すが、
図3を用いて説明した前記説明と同じ傾向を示した。この結果より、本センサーを用いて圧力の方向が検知可能であることが確認できた。