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特開2022-74218折戸の自開機構、およびそれを備える折戸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074218
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】折戸の自開機構、およびそれを備える折戸
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/14 20060101AFI20220511BHJP
   E06B 3/48 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E05F1/14 Z
E06B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184078
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000145895
【氏名又は名称】株式会社小林製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000169329
【氏名又は名称】アトムリビンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】松本 真輝
(72)【発明者】
【氏名】荒川 周也
【テーマコード(参考)】
2E015
【Fターム(参考)】
2E015AA01
2E015BA10
2E015CB01
2E015FA01
(57)【要約】
【課題】折戸を自開させることのできる自開機構、およびそれを備える折戸を提供する。
【解決手段】自開機構100を、折戸10を構成する一対の戸板12,13に取り付けられる引きばね110で構成する。引きばね110の一端を一方の戸板12に取り付ける。さらに、引きばね110の他端を他方の戸板13に取り付ける。そして、引きばね110の一端および他端の少なくとも一方をいずれかの戸板12,13に対して回動自在に取り付ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折戸を構成する一対の戸板に取り付けられる引きばねを有する自開機構であって、
前記引きばねの一端は、一方の前記戸板に取り付けられており、
前記引きばねの他端は、他方の前記戸板に取り付けられている
前記引きばねの前記一端および前記他端の少なくとも一方がいずれかの前記戸板に対して回動自在に取り付けられている
折戸の自開機構。
【請求項2】
前記引きばねの前記一端および前記他端はそれぞれ一方の前記戸板および他方の前記戸板に対して回動自在に取り付けられている
請求項1に記載の自開機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自開機構と、
折戸を構成する一対の戸板とを備える
折戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折戸を自開させる自開機構、およびそれを備える折戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、折戸に手を掛けて閉じたときに手を離すと自動的に開放するような自開可能折戸が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-116267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自開可能折戸は、上述のように「手を掛けて閉じたときに手を離すと自動的に開放する」といった、例えばトイレや通路等に用いられる特殊な動作をするものであり、例えば一般家庭の納戸等にも使用できるような折戸ではなかった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、全閉状態から折戸を開く際にある程度の開き位置まで来ると後は当該折戸を自動的に全開にすることのできる自開機構、およびそれを備える折戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の別の局面によれば、
折戸を構成する一対の戸板に取り付けられる引きばねを有する自開機構であって、
前記引きばねの一端は、一方の前記戸板に取り付けられており、
前記引きばねの他端は、他方の前記戸板に取り付けられている
前記引きばねの前記一端および前記他端の少なくとも一方がいずれかの前記戸板に対して回動自在に取り付けられている
自開機構が提供される。
【0007】
好適には、
前記引きばねの前記一端および前記他端はそれぞれ一方の前記戸板および他方の前記戸板に対して回動自在に取り付けられている。
【0008】
本発明の別の局面によれば、
上記の自開機構と、
折戸を構成する一対の戸板とを備える
折戸が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、全閉状態から折戸を開く際にある程度の開き位置まで来ると後は当該折戸を自動的に全開にすることができ、かつ、引きばねの一端および他端の少なくとも一方がいずれかの戸板に対して回動自在に取り付けられていることにより、折戸が閉じられた状態から全開の状態に至るまでに一方の戸板に対する他方の戸板の相対的な角度が変化していく際、当該変化に応じて少なくともいずれかの戸板に対する引きばねの角度も変化させることができるので、引きばねをスムーズに動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用された自開機構100を含む折戸10を示す、戸板12,13を背面から見た正面図である。
図2】本発明が適用された自開機構100を含む折戸10を示す平面図である。
図3】本発明が適用された自開機構100を含む折戸10を開いた状態示す平面図である。
図4】本発明が適用された自開機構100を含む折戸10を開いた状態示す拡大正面図である。
図5】引きばね部材102を拡大した平面図である。
図6】ベースプレート120を示す、(a)正面図、(b)底面図、(c)右側面図である。
図7】ベース122を示す、(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図である。
図8】ボビン113を構成する、(a)ボビン本体144、および(b)ボビン軸146を示す図である。
図9】引きばね保持部材104を拡大した平面図である。
図10】ジョイントプレート160を示す、(a)正面図、および(b)右側面図である。
図11】ジョイントホルダ162を構成するホルダ本体180を示す、(a)平面図、および(b)正面図である。
図12】ジョイントホルダ162を構成するジョイント取付部材182を示す、(a)平面図、および(b)正面図である。
図13】ジョイント164を示す、(a)平面図、および(b)正面図である。
図14】変形例1に係る自開機構100を含む折戸10を開いた状態示す拡大正面図である。
図15】変形例1に係る引きばね保持部材104およびクッションカバー250を拡大した平面図である。
図16】変形例1に係るカバー部252を示す、(a)平面図、(b)正面図、(c)右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(自開機構100を備える折戸10の構成)
以下、本発明が適用された自開機構100およびこれを備える折戸10について図面を用いて説明する。本実施形態にかかる折戸10は、図1から図4に示すように、少なくとも、戸枠11と、一対の戸板12,13と、レール14と、ランナー16と、ヒンジ18と、自開機構100とで構成されている。
【0012】
なお、本実施形態では、建屋内に設けられた戸枠11で構成された、納戸や倉庫の開口20を開閉する折戸10に自開機構100を適用した例を示しているが、本発明に係る自開機構100およびこれを備える折戸10の適用先はこれに限定されるものではなく、大小様々な「折戸」に適用することができる。
【0013】
戸枠11は、一対の戸板12,13が滑動しつつ回動することによって開閉される開口20を構成する部材である。
なお、戸枠11を構成する材料は、必要は強度を担保できるものであれば、金属、樹脂、木材等どのような材料でも使用することができる。
【0014】
一対の戸板12,13は、上述のように戸枠11によって構成された開口20を開閉する板材である。
【0015】
レール14は、一対の戸板12,13を取り付ける開口20の天面において、各戸板12,13共通で1つ取り付けられている。
【0016】
また、各レール14は、戸板12,13の天面に取り付けられたランナー16および当該ランナー16が走行するランナー走行面を有している。なお、レール14を構成する材料は、必要は強度を担保できるものであれば、金属、樹脂、木材等どのような材料でも使用することができる。
【0017】
両戸板12,13は、互いに隣接する側縁同士が複数のヒンジ18により、一方の戸板12に対して他方の戸板13が相対的に折れ曲がった状態にすることができる。
【0018】
本実施例の自開機構100は、引きばね部材102と、引きばね保持部材104とを備えている。
【0019】
引きばね部材102は、図4および図5に示すように、引きばね110と、ブラケット112と、ボビン113とを備えている。
【0020】
引きばね110は引き伸ばされたストロークの長さに関係なく常にほぼ一定の引き戻し力となる「定荷重ばね」である。また、この引きばね110の一端は略円柱状のボビン113に取り付けられており、引きばね110のほぼ全体が当該ボビン113に巻き付けられた状態となっている。また、引きばね110は、ボビン113およびこのボビン113が取り付けられたブラケット112を介して、一方の戸板12における他方の戸板13から遠い側の側面上方端部に取り付けられている。
【0021】
また、引きばね110の他端は、引きばね保持部材104に取り付けられている。
【0022】
ブラケット112は、ベースプレート120と、ベース122とを備えている。
【0023】
ベースプレート120は、図6に示すように、ベース板124と、第1ヒンジ部126とを有する部材であり、上述のように、ベース板124が一方の戸板12における他方の戸板13から遠い側の側面上方端部にネジ等を用いて取り付けられる。
【0024】
第1ヒンジ部126は、ベース板124から突設する部分であり、ベース122の一部(第2ヒンジ部134)が嵌め込まれる凹所128が形成されているとともに、第1ヒンジ部126(ベース板124)に対してベース122を回動可能に取り付ける軸部材130を嵌挿する第1軸部材嵌挿孔132が形成されている。
【0025】
ベース122は、図7に示すように、第2ヒンジ部134と、ボビン保持部136とを有している。
【0026】
第2ヒンジ部134は、ベースプレート120の第1ヒンジ部126に形成された凹所128に嵌め込まれる部分であり、軸部材130が嵌挿される第2軸部材嵌挿孔138が形成されている。
【0027】
ボビン保持部136は、略短冊状のベース部140と、当該ベース部140の両端からそれぞれ同じ方向に突設された一対の突設部142とで構成された、平面視が略「コ」字状の部材である。そして、一対の突設部142の間にボビン113が架設されるようになっている。
【0028】
なお、図5に示すように、ベースプレート120に対してベース122が所定の角度まで回動したときにベース122のボビン保持部136におけるベース部140の外面がベースプレート120における第1ヒンジ部126の外面に当接し、ベースプレート120に対してベース122がそれ以上回動しないように(ベース122が一方の戸板12に当接しないように)なっている。
【0029】
ボビン113は、図8に示すように、ボビン本体144と、ボビン軸146とを備えている。
【0030】
ボビン本体144は、引きばね110が巻き付けられる中央部148と、この中央部148の長手方向両端に形成されており、中央部148よりも大径である一対のフランジ部150とを有している。また、ボビン本体144における径方向中央部には、ボビン軸146が嵌挿されるボビン軸嵌挿孔152が形成されている。
【0031】
ボビン軸146は、略円筒状の部材であり、上述ようにベース122のボビン保持部136における一対の突設部142の間に架設固定されている。
【0032】
ここまで説明したように、本実施形態に係る自開機構100の引きばね部材102では、引きばね110が取り付けられるボビン113のボビン本体144がボビン軸146に対して回転可能に取り付けられているので、引きばね110の伸展・巻取りを自由に行うことができる。
【0033】
また、ボビン113を保持するベース122が軸部材130によってベースプレート120に対して回動可能に取り付けられているので、ベースプレート120および一方の戸板12に対するベース122やボビン113の角度が固定されることがなくなる。これにより、ボビン113に取り付けられた引きばね110の一端が一方の戸板12に対して回動自在になっている。
【0034】
引きばね保持部材104は、図4および図9に示すように、ジョイントプレート160と、ジョイントホルダ162と、ジョイント164とを備えている。
【0035】
ジョイントプレート160は、図10に示すように、ジョイントプレート・ベース板166と、ジョイントプレート・第1ヒンジ部168とを有する部材であり、上述のように、ジョイントプレート・ベース板166が他方の戸板13における一方の戸板12から遠い側の側面上方端部にネジ等を用いて取り付けられる。
【0036】
ジョイントプレート・第1ヒンジ部168は、ジョイントプレート・ベース板166から突設する部分であり、ジョイントホルダ162の一部(ジョイントホルダ・第2ヒンジ部186)が嵌め込まれる凹所170が形成されているとともに、ジョイントプレート・第1ヒンジ部168(ジョイントプレート160)に対してジョイントホルダ162を回動可能に取り付けるジョイント軸部材172を嵌挿する第1ジョイント軸部材嵌挿孔174が形成されている。
【0037】
ジョイントホルダ162は、ホルダ本体180と、ジョイント取付部材182とを備えている。
【0038】
ホルダ本体180は、図11に示すように、本体部184と、ジョイントホルダ・第2ヒンジ部186と、ジョイント軸188と、係合部190とを有している。
【0039】
本体部184は、その中央部に凹溝192が形成されており、正面視略「U」字状の部分となっている。
【0040】
ジョイントホルダ・第2ヒンジ部186は、本体部184から正面視側方に突設されており、ジョイントプレート160のジョイントプレート・第1ヒンジ部168に形成された凹所170に嵌め込まれる部分であり、ジョイント軸部材172が嵌挿される第2ジョイント軸部材嵌挿孔194が形成されている。
【0041】
また、ジョイントホルダ・第2ヒンジ部186の側周面には、ストッパー部196が突設されており、ジョイントプレート160に対してジョイントホルダ162が所定の角度まで回動したときに当該ストッパー部196がジョイントプレート・第1ヒンジ部168に対して外側から当接し、ジョイントプレート160に対してジョイントホルダ162がそれ以上回動しないように(ジョイントホルダ162に取り付けたジョイント164が他方の戸板13に当接しないように)なっている。
【0042】
ジョイント軸188は、本体部184の中央部に形成された凹溝192から突設された断面矩形状の部分である。
【0043】
係合部190は、本体部184の上端からさらに上方に延びる一対の部分であり、それぞれ、先端部に係合段198が形成されている。
【0044】
ジョイント取付部材182は、図12に示すように、正面視で左右方向に延びる左右部200と、当該左右部の略中央部から下方に延びる下方部202とを有している。下方部202は、その下端面に開口を有しており、ジョイント軸188の先端部が嵌挿されるジョイント軸嵌挿穴204が形成されている。
【0045】
また、左右部200の下面から上面にかけて、下方部202に左右隣接する位置に一対の係合部係合孔206がそれぞれ形成されている。
【0046】
ジョイント取付部材182におけるジョイント軸嵌挿穴204をホルダ本体180におけるジョイント軸188の先端にあてがい、さらに、係合部係合孔206に係合部190の先端をあてがった後、ホルダ本体180に向けてジョイント取付部材182を押し込んでいくと、係合部190が係合部係合孔206と係合してホルダ本体180にジョイント取付部材182が固定される。これと同時に、ジョイント軸188の先端部がジョイント軸嵌挿穴204に嵌挿されて、凹溝192がホルダ本体180とジョイント取付部材182とで囲まれた状態になる。
【0047】
ジョイント164は、図13に示すように、平板状の部材であり、引きばね110の他端部をジョイント164に取り付けるための取付部材208を嵌挿するための取付部材嵌挿孔210と、ホルダ本体180に形成されたジョイント軸188を嵌挿するためのジョイント軸嵌挿孔212とを有している。
【0048】
ここまで説明したように、引きばね110の他端が取り付けられるジョイント164を保持するジョイントホルダ162が、他方の戸板13に取り付けられるジョイントプレート160に対して回動可能に取り付けられているので、ジョイントプレート160および他方の戸板13に対するジョイント164の角度が固定されることがなくなる。これにより、ジョイント164に取り付けられた引きばね110の他端が他方の戸板13に対して回動自在になっている。
【0049】
本実施形態に係る自開機構100の引きばね保持部材104は以下のようにして組み立てられる。ジョイントプレート160に形成されたジョイントプレート・第1ヒンジ部168の凹所170にジョイントホルダ162のジョイントホルダ・第2ヒンジ部186を嵌挿した後、ジョイント軸部材172を第1ジョイント軸部材嵌挿孔および第2ジョイント軸部材嵌挿孔194に嵌挿することにより、ジョイントプレート160に対してジョイントホルダ162のホルダ本体180を回動可能に取り付ける。そして、この状態で、ジョイントプレート160のジョイントプレート・ベース板166を他方の戸板13における一方の戸板12から遠い側の側面上方端部にネジ等を用いて取り付けておく。
【0050】
然る後、引きばね110の他方端を取付部材208によってジョイント164に取り付けておき、ホルダ本体180におけるジョイント軸188を当該ジョイント164のジョイント軸嵌挿孔212に嵌挿する。
【0051】
最後に、ジョイント取付部材182をホルダ本体180に向けて押し込んでいき、ジョイント取付部材182をホルダ本体180に固定する。これにより、ジョイント軸188の先端部がジョイント軸嵌挿穴204に嵌挿されて、ジョイント164がジョイント軸188から不所望に外れることがなくなり、引きばね保持部材104が完成する。
【0052】
(自開機構100の作用)
次に上述した折戸10における自開機構100の作用について説明する。最初に、当該折戸10は閉じられた状態(両戸板12,13がそれぞれほぼ同一平面上にある状態)になっており(図1および図2参照)、自開機構100を構成する引きばね部材102と引きばね保持部材104との間の距離が最も長くなっている。したがい、引きばね110も最も長く引き伸ばされた状態になっている。この状態で戸板12,13はそれぞれの閉止位置で静止している。
【0053】
この状態から、ユーザが何れか一方の戸板12,13の表面に取り付けられた引手(図示せず)を少し引き、両戸板12,13がヒンジ18を中心にして互いに少し折れた状態にすると、引きばね110の弾性力によって引きばね部材102と引きばね保持部材104との間の距離が縮められていき、両戸板12,13の折れ角度が大きくなって自動的に全開状態となる(図3および図4参照)。本実施形態に係る自開機構100によれば、このように戸板12,13の自開機能を実現することができる。
【0054】
加えて、本実施形態に係る自開機構100では、引きばね110の一端が一方の戸板12に対して回動自在になっており、かつ、引きばね110の他端も他方の戸板13に対して回動自在になっている。これにより、折戸10が閉じられた状態から全開の状態に至るまでに一方の戸板12に対する他方の戸板13の相対的な角度が(約180°から数°まで)変化していく際、当該変化に応じて、一方の戸板12に対する引きばね110の一端の角度、および、他方の戸板13に対する引きばね110の他端の角度も変化し、引きばね110は常に一直線状態を維持できる。したがい、折戸10が閉じられた状態から全開の状態に至るまで、引きばね110をスムーズに動かすことができる。
【0055】
(変形例1)
上述した実施形態に係る折戸10および自開機構100に加えて、自開機構100を下方から見上げたときに引きばね部材102が直接見えないようにするカバー部材や、折戸10を全開にしたときに引きばね部材102と引きばね保持部材104とが互いに接触して接触音が生じたりこれら部材が破損したりするのを防止するためのクッション部材を設けてもよい。
【0056】
例えば、図14および図15には、カバー部材およびクッション部材の両方の役割を果たすクッションカバー250を示す。もちろん、カバー部材とクッション部材とを別々の部材で構成してもよい。
【0057】
このクッションカバー250は、一方の戸板12において引きばね部材102の直下方に取り付けられる部材であり、カバー部252と、クッション部254とを備えている。
【0058】
カバー部252は、図16に示すように、一方の側面が一方の戸板12の背面に取り付けられるようになっており、その中央部には天面が大きく開口したカバー部凹所256が形成されている。この変形例1では、カバー部252を引きばね部材102の直下に配設して、引きばね部材102の下半分ほどが当該カバー部凹所256内に隠れるようになっており、一方の戸板12の背面に取り付けられた引きばね部材102をユーザが見上げて直視し難いようになっており、折戸10全体としての見栄えを向上させている。
【0059】
図14および図15に戻り、カバー部252における戸板12に取り付けられる側面とは反対側の側面には、例えば、ウレタン、ゴム、エラストマ、スポンジ等の軟質素材で形成されたクッション部254が取り付けられている。このクッション部254は、折戸10を全開にしていったとき、引きばね部材102と引きばね保持部材104とが互いに接触する前に他方の戸板13の背面に当接して他方の戸板13がそれ以上一方の戸板12に近接しないようにして、引きばね部材102と引きばね保持部材104とが互いに接触するのを回避できるようになっている。
【0060】
(変形例2)
上述した実施形態や変形例1では、自開機構100を構成する引きばね110として「定荷重ばね」を使用していたが、引きばね110はこれに限定されるものではなく、例えば、単なるゼンマイばねを使用してもよい。ただし、引き伸ばされたストロークの長さに関係なく常にほぼ一定の引き戻し力(付勢力)となる「定荷重ばね」を使用するのが好適である。
【0061】
(変形例3)
また、上述した実施形態や変形例1では、戸板12,13における引きばね部材102や引きばね保持部材104の取付位置を各戸板12,13の側面上方端部にしていた。しかし、これらの取付位置は「側面上方端部」に限定されるものではなく、例えば、側面の上下方向はどの位置であってもよいし、可能であれば各戸板12,13の側面ではなく天面や底面等に取り付けてもよい。
【0062】
(変形例4)
さらに言えば、引きばね部材102や引きばね保持部材104の取付位置は、一方の戸板12における他方の戸板13から遠い側の側面上方端部や、他方の戸板13における一方の戸板12から遠い側の側面上方端部に限定されるものではなく、引きばね部材102が一方の戸板12に取り付けられており、引きばね保持部材104が他方の戸板13に取り付けられていればよい。
【0063】
(変形例5)
上述した実施形態では、引きばね110の一端および他端がそれぞれ一方の戸板12および他方の戸板13に対して回動自在に取り付けられていたが、引きばね110の一端および他端の少なくともいずれか一方が戸板12,13に対して回動自在に取り付けられていればよい。
【0064】
また、一方の戸板12および他方の戸板13に対する引きばね110の一端および他端の取付態様は、上述した実施形態のものに限定されることはなく、他の取付態様であってもよい。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
10…折戸、11…戸枠、12…戸板、13…戸板、14…レール、16…ランナー、18…ヒンジ、20…開口
100…自開機構、102…引きばね部材、104…引きばね保持部材
110…引きばね、112…ブラケット、113…ボビン
120…ベースプレート、122…ベース、124…ベース板、126…第1ヒンジ部、128…凹所、130…軸部材、132…第1軸部材嵌挿孔、134…第2ヒンジ部、136…ボビン保持部、138…第2軸部材嵌挿孔、140…ベース部、142…突設部、144…ボビン本体、146…ボビン軸、148…中央部、150…フランジ部、152…ボビン軸嵌挿孔
160…ジョイントプレート、162…ジョイントホルダ、164…ジョイント、166…ジョイントプレート・ベース板、168…ジョイントプレート・第1ヒンジ部、170…凹所、172…ジョイント軸部材、174…第1ジョイント軸部材嵌挿孔
180…ホルダ本体、182…ジョイント取付部材、184…本体部、186…ジョイントホルダ・第2ヒンジ部、188…ジョイント軸、190…係合部、192…凹溝、194…第2ジョイント軸部材嵌挿孔、196…ストッパー部、198…係合段、200…左右部、202…下方部、204…ジョイント軸嵌挿穴、206…係合部係合孔、208…取付部材、210…取付部材嵌挿孔、212…ジョイント軸嵌挿孔
250…クッションカバー、252…カバー部、254…クッション部、256…カバー部凹所
図1
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