(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074265
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】免疫比濁法測定用試薬及び測定用キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N33/531 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184173
(22)【出願日】2020-11-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.Brij
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】巽 謙太
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 一樹
(57)【要約】
【課題】本発明は被検試料中の測定対象物を正確に測定することができる免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットによれば、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬。
【請求項2】
前記特異的結合物質が、測定対象物に特異的に結合する抗体又は抗原である、請求項1に記載の免疫比濁法測定用試薬。
【請求項3】
前記担体粒子が、セルロース粒子、ラテックス粒子、金属ナノ粒子、ゼラチン粒子のいずれかである、請求項1又は2に記載の免疫比濁法測定用試薬。
【請求項4】
前記測定用試薬が液状の場合に、前記担体粒子が0.10~0.25w/v%含まれ、前記カゼイン又はその塩が0.10~1.00w/v%含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬。
【請求項5】
さらに、糖類及び/又は界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬。
【請求項6】
前記測定対象物が、C反応性蛋白質である、請求項1~5のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬が測定用デバイスに塗布されており、測定に使用されるまで前記測定用試薬が乾燥状態に保持されていることを特徴とする、測定対象物の免疫比濁法による測定用キット。
【請求項8】
測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬が測定用デバイスに塗布されており、測定に使用されるまで前記測定用試薬が乾燥状態に保持されていることを特徴とする、測定対象物の免疫比濁法による測定用キット。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の測定用キットに塗布された測定用試薬と被検試料を混合し、前記測定用試薬に含まれる前記担体粒子と被検試料中の測定対象物の特異結合反応により生成した複合凝集物を測定することによる測定対象物の測定方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、免疫比濁法による測定対象物の測定用キットの製造方法:
1)測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬を測定用デバイスに塗布する工程;
2)前記測定用デバイスに塗布した測定用試薬を乾燥させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料中の測定対象物の免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
抗原と抗体の特異結合反応を利用した免疫学的測定方法として、酵素免疫測定法、蛍光酵素免疫測定法、免疫比濁法、免疫比ろう法、イムノクロマトグラフィー法等、多くの測定方法が知られている。
【0003】
特に免疫比濁法は操作が簡便であり、測定の自動化が可能なことから広く普及している。免疫比濁法とは、測定対象物に特異的な抗体を感作した担体粒子を反応させ、特異結合反応により生成した複合凝集物の吸光度等を測定することで、測定対象物を検出する方法である。
【0004】
しかしながら、免疫学的測定方法は非特異反応により、測定対象物を正確に測定できない問題がある。非特異反応を防止するため、種々の蛋白質、界面活性剤及び塩類等を含有させた免疫測定用試薬が提案されている。例えば、標識配位子の非特異反応を防止するために90万ダルトン以上のカゼインを用いる方法(特許文献1)、蛋白質・ポリマー・塩類、あるいはそれらの組み合わせからなる非特異反応抑制剤を利用する方法(特許文献2)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-117341号公報
【特許文献2】特開2010-127827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は被検試料中の測定対象物を正確に測定することができる免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットによれば、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下よりなる。
1.測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬。
2.前記特異的結合物質が、測定対象物に特異的に結合する抗体又は抗原である、前項1に記載の免疫比濁法測定用試薬。
3.前記担体粒子が、セルロース粒子、ラテックス粒子、金属ナノ粒子、ゼラチン粒子のいずれかである、前項1又は2に記載の免疫比濁法測定用試薬。
4.前記測定用試薬が液状の場合に、前記担体粒子が0.10~0.25w/v%含まれ、前記カゼイン又はその塩が0.10~1.00w/v%含まれる、前項1~3のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬。
5.さらに、糖類及び/又は界面活性剤を含む、前項1~4のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬。
6.前記測定対象物が、C反応性蛋白質である、前項1~5のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬。
7.前項1~6のいずれかに記載の免疫比濁法測定用試薬が測定用デバイスに塗布されており、測定に使用されるまで前記測定用試薬が乾燥状態に保持されていることを特徴とする、測定対象物の免疫比濁法による測定用キット。
8.測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬が測定用デバイスに塗布されており、測定に使用されるまで前記測定用試薬が乾燥状態に保持されていることを特徴とする、測定対象物の免疫比濁法による測定用キット。
9.前項7又は8に記載の測定用キットに塗布された測定用試薬と被検試料を混合し、前記測定用試薬に含まれる前記担体粒子と被検試料中の測定対象物の特異結合反応により生成した複合凝集物を測定することによる測定対象物の測定方法。
10.以下の工程を含む、免疫比濁法による測定対象物の測定用キットの製造方法:
1)測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬を測定用デバイスに塗布する工程;
2)前記測定用デバイスに塗布した測定用試薬を乾燥させる工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明の測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含む、測定対象物の免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットによれば、当該担体粒子の非特異反応を効率的に抑制することができ、被検試料中の測定対象物を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】濃度換算した平均値(測定値)とCRPフリー血清、CRP既知濃度(0.4、0.8、1.6、3.0mg/dL)のCRP管理検体との関係をグラフで示す図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(1)測定用試薬
本発明の「測定用試薬」は、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、カゼイン又はその塩を含有することを特徴とするものである。
【0013】
本明細書において「担体粒子」とは、免疫比濁法による測定に利用可能な担体粒子であって、測定対象物に対する特異的結合物質を感作することができれば、特に限定されない。担体粒子としては、例えばセルロース粒子、ラテックス粒子、金ナノ粒子、ゼラチン粒子、リポソーム、マイクロカプセル、又は赤血球等の粒子等が挙げられ、セルロース粒子、ラテックス粒子、金ナノ粒子、ゼラチン粒子が好ましく、特にセルロース粒子が好ましい。
【0014】
免疫比濁法による測定において、担体粒子の平均粒子径は特に限定されない。測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、被検試料中の測定対象物との特異結合反応により生成した複合凝集物の生成しやすさ、及び生成した複合体凝集物の測定の容易さ等の理由により、担体粒子の平均粒子径が、50nm~1000nmが好ましく、特に100nm ~400nmが好ましい。担体粒子は、その粒径、又は形状等が異なる2種類以上の担体粒子を使用してもよい。
【0015】
本明細書において「特異的結合物質」とは、測定対象物に対して特異結合反応を生じる物質であればよく、特に限定されない。抗原抗体反応に利用できる物質が好ましく、特に測定対象物に特異的に結合する抗体又は抗原が好ましい。測定対象物が抗原の場合には、その抗原に対応する抗体が挙げられ、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体又は一本鎖抗体(scFv)、及びこれらの抗体の断片(Fab、F(ab')2)、Fab'、Fv、sFv、dsFv等)等から適宜選択して使用することができる。また、抗体又は抗体断片に、タンパク質又は低分子化合物を結合させて誘導体を使用することもできる。抗体の由来については特に限定されないが、例えば哺乳動物(マウス、ウサギ、ラット、ヒツジ、ヤギ、若しくはウマ等)、または鳥類(ニワトリ、ウズラ、キジ、ダチョウ、若しくはアヒル等)等が挙げられる。測定対象物が抗体の場合は、その抗体に対する抗原であれば良く、例えば、上記例示した抗体に対する抗原を抗原として使用すれば良い。
【0016】
本発明における「カゼイン又はその塩」は、担体粒子の非特異反応を抑制するためのブロッキング剤として使用される。例えばαs-カゼイン、β-カゼイン及びκ-カゼイン等を挙げることができ、また、これらのカゼインに水酸化ナトリウムを付加してもよい。カゼイン又はその塩としては、カゼイン Naであることが好ましい。
【0017】
本発明の測定用試薬は、さらに糖類、界面活性剤等の添加物を加えてもよい。糖類としては、例えばスクロース、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、ラクトース、キシリトール、ガラクトース、アロース、グルコース、アルトロース等が挙げられ、特にスクロース、ソルビトール、マンニトールが好ましい。界面活性剤としては、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、例えば、CHAPS、CHAPSO、ASB-14、C7Bz0、Tween20、Briji35、I GEPAL CA-630、ジギトニン等が挙げられ、特にCHAPS、Briji35が好ましい。
【0018】
(2)測定用試薬の調製方法
本発明の測定用試薬において、測定対象物に対する特異的結合物質を担体粒子への感作は特に限定されないが、例えば以下のようにして調製することができる。担体粒子に抗体等の特異的結合物質を加え水系溶媒中で撹拌後、遠心分離により測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子を洗浄することで当該担体粒子を調製できる。
【0019】
当該結合物質が感作した担体粒子に各種の水系溶媒を加え、カゼイン又はその塩を添加することで本発明の測定用試薬を調製することができる。さらに上記添加物、特異的結合物質を加えてもよい。水系溶媒としては、例えば精製水、生理食塩水、Tris緩衝液、リン酸緩衝液等が挙げられ、水系溶媒のpHについては例えばpH 5~10が一般的である。特異的結合物質は担体粒子に感作させるだけでなく、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、被検試料中の測定対象物の特異結合反応に対する感度を調整するために測定用試薬に加えることができる。
【0020】
上記の方法で調製された液状の本発明の測定用試薬には、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子が0.10~0.50w/v%、好ましくは0.15~0.25w/v%含まれ、及びカゼイン又はその塩が0.05~5.00w/v%、好ましくは0.10~1.00w/v%含まれる。
【0021】
(3)測定用キット
本発明は、測定対象物の免疫比濁法による「測定用キット」も含まれる。当該キットは、本発明の測定用試薬が測定用デバイスに塗布、乾燥されており、測定に使用されるまで当該測定用試薬が乾燥状態に保持されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の測定用キットにおいて「測定用デバイス」とは、少なくとも被検試料を供給するための試料供給部と、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子を含有する本発明の測定用試薬が塗布されている反応部を含む。さらに試料供給部に供給された被検試料を反応部まで導入するための経路を構成要素として含むことが好ましい。当該反応部は、本発明の測定用試薬を塗布する部分として上部と下部があることが好ましく、当該測定用試薬と被検試料を混合しうる形状であればよく、例えば凹状であることが好ましい。
【0023】
(4)測定用キットの製造方法
本発明は、免疫比濁法による測定対象物の「測定用キットの製造方法」も含まれる。
本発明の測定用キットの製造方法は、本発明の測定用試薬を測定用デバイスに塗布する工程と本発明の測定用試薬を乾燥させる工程を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の「測定用キットの製造方法」において、本発明の測定用試薬を測定用デバイスの反応部に塗布することが好ましく、本発明の測定用試薬を液状状態で測定用デバイスに塗布した後に乾燥状態にさせてもよいし、乾燥状態の本発明の測定用試薬を測定用デバイスに塗布してもよい。本発明の測定用試薬を乾燥する方法としては、例えば、自然乾燥や凍結乾燥等が挙げられる。
【0025】
(5)測定方法
本発明は、「測定対象物の測定方法」も含まれる。本発明の測定方法は、本発明の測定用キットに塗布された測定用試薬と被検試料を混合し、当該測定用試薬に含まれる、測定対象物に対する特異的結合物質を感作した担体粒子と、被検試料中の測定対象物の特異結合反応により生成した複合凝集物を測定することで測定対象物を測定する方法である。
【0026】
以下、本発明の測定方法を具体的に説明する。
1)被検試料を本発明の測定用キットに含まれる測定用デバイスの試料供給部に供給すると、被検試料が、例えば測定用デバイスの経路を通って反応部に移動する。反応部には本発明の測定用試薬が塗布されているため、被検試料が本発明の測定用試薬を乾燥状態から溶解することで本発明の測定用試薬と被検試料が混合する。本発明の測定用試薬は反応部の上部のみに塗布しても、下部のみに塗布しても、また両方に塗布してもよい。
2)本発明の測定用試薬と被検試料が混合することで、本発明の測定用試薬に含まれる当該担体粒子と被検試料中の測定対象物の特異結合反応により複合凝集物が生成する。
3)前記生成した複合凝集物を含む溶液に光を照射し吸光度を測定することで、被検試料中に含まれている測定対象物を検出することができる。
【0027】
本発明の測定方法において、反応部で本発明の測定用試薬と被検試料を反応させる温度は、例えば0~50℃であり、4~40℃が好ましい。前記生成した複合凝集物を含む溶液に光を照射するときは反応部に光を照射することが好ましく、光を照射するには、例えば分光光度計等により照射することができる。
【0028】
本発明の測定方法に供するための「被検試料」は、生体から取得した検体そのものであってもよく、検体から調製されたものであってもよい。例えば、被検試料は、血液試料、体液、尿試料等が挙げられる。血液試料は、例えば、全血、血清、血漿等が挙げられる。
【0029】
本明細書において「測定対象物」とは、一般的な臨床検査等における検査対象物が挙げられ、具体的には、血液、尿、唾液、分泌液等に含まれる各種成分や、組織、便等の固形物からの抽出液等に含まれる各種成分等が挙げられる。測定対象物の例として、具体的にはCRP、アルブミン、AST、ALT、γGTP、ヘモグロビン、ヘモグロビンA1c、ミオグロビン、トランスフェリン、ラクトフェリン、シスタチンC、フェリチン、α-フェトプロテイン、癌胎児性抗原、CA19-9、前立腺特異抗原、繊維素分解産物(FDP)、ペプシノーゲンIおよびII、コラーゲンなどの蛋白質;高比重リポ蛋白質、低比重リポ蛋白質、超低比重リポ蛋白質などの脂質蛋白質;デオキシリボ核酸、リボ核酸などの核酸;アルカリ性ホスファターゼ、乳酸脱水素酵素、リパーゼ、アミラーゼなどの酵素;IgG、IgM、IgA、IgD、IgEなどの免疫グロブリン;B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヘリコバクターピロリ;性ホルモンなどのホルモン等が挙げられる。特にCRPが挙げられる。CRPとは、肺炎球菌のC多糖体と沈降反応を示す血清タンパク質であり、通常血清中に微量に存在する。血中CRP濃度の上昇は、各種炎症性疾患が生ずると急激に増加する。このため、CRPは炎症マーカーとして、感染症、炎症等の疾患の診断のために測定される。
【実施例0030】
以下、実施例及び比較例により発明を具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)カゼイン Naの非特異反応抑制評価及び正確性・同時再現性の評価
実施例1では、本発明の測定用試薬についてカゼイン Naの非特異反応抑制評価及び正確性・同時再現性の評価を確認した。
【0032】
1)抗CRP抗体感作セルロース粒子の調製
セルロース粒子への抗CRP抗体の感作は以下の様に行った。平均粒径330nmのセルロース粒子(NanoAct(登録商標)、旭化成せんい株式会社販売)を0.1w/v%と抗CRP抗体が100μg/mlの濃度になるように緩衝溶液中で撹拌後、遠心分離により抗CRP抗体感作セルロース粒子を洗浄し調製した。
【0033】
2)測定用試薬の調製
上記1)で得られた抗CRP抗体感作セルロース粒子に精製水、抗CRP抗体、カゼイン Na(Casein Na)、糖類、界面活性剤を加え測定用試薬を調製した。比較例としてカゼイン Naの替わりにBSA(ウシ血清アルブミン)又はスキムミルクを加えた測定用試薬を調製した。各測定用試薬の試薬組成を表1にまとめた。
【0034】
【0035】
3)測定用キットの作製
測定用デバイスの反応部の上部及び下部に、上記2)で作製した測定用試薬0.45μL、0.5μLを各々塗布し室温にて自然乾燥させ測定用キットを作製した。
【0036】
4)CRP管理検体の調製
rCRP(オリエンタル酵母工業株式会社販売)をCRPフリー血清(オリエンタル酵母工業株式会社販売)で希釈してCRP管理検体0.4mg/dL、0.8mg/dL、1.6mg/dL、3.0mg/dLとした。CRPフリー血清及び上記調製したCRP管理検体を測定用デバイスの試料供給部に導入して測定用試薬と混合した。
【0037】
5)吸光度の測定
CRPフリー血清及びCRP管理検体を測定用デバイスに導入して測定用試薬と混合させた後、7分間、37℃で反応させ、測定用試薬が塗布された反応部に対して波長主630nm/副810nmで測光し反応後の吸光度を測定した。CRPフリー血清、CRP管理検体についてそれぞれN=3で測定した。
【0038】
6)検量線の作成
上記4)で得られたCRPフリー血清、CRP既知濃度(0.4、0.8、1.6、3.0mg/dL)のCRP管理検体について、平均吸光度から検量線を作成した。
【0039】
その結果、比較例1(BSA)及び比較例2(スキムミルク)では、非特異反応が確認され、理想的な検量線が得られなかった。抗CRP抗体感作セルロース粒子に添加するタンパク質をカゼイン Naとし、糖類、界面活性剤の種類を変更した実施例1-1~1-4では、非特異反応は生じずにCRP 0.0-3.0mg/dLまで濃度依存的な反応がみられ、理想的な検量線を引くことができた。
【0040】
7)正確性、同時再現性の評価
被検試料としてコントロール検体1(既知濃度0.41mg/dl)、コントロール検体2(既知濃度1.04mg/dl)を用いて、上記5)と同様の手順で2濃度のコントロール検体をN=5で測定し、得られた吸光度を上記作成した検量線(実施例1-1~1-4)から濃度換算し、正確性、同時再現性を評価した。
【0041】
<正確性の評価方法>
正確性については、上記2濃度のCRPコントロール検体をN=5で測定した平均値と既知濃度を比較し、既知濃度差を算出した。なお、既知濃度±0.2mg/dL以内が正確性が高いことを意味する。
<同時再現性の評価方法>
同時再現性については、上記2濃度のCRPコントロール検体をN=5で測定し、その標準偏差(SD)を算出した。なお、標準偏差0.1mg/dL以下が同時再現性が高いことを意味する。
【0042】
【0043】
上記2濃度のコントロール検体を測定した正確性および同時再現性の測定結果を表2に示した。比較例1(BSA)、比較例2(スキムミルク)は非特異反応が生じ、正確性・同時再現性について正しく評価できなかった。カゼイン Naを添加した実施例1-1~1-4においては2濃度のコントロール検体ともに既知濃度差±0.2mg/dL以内、標準偏差0.1 mg/dL以下となり、正確性・同時再現性の規格を満たした。
【0044】
(実施例2)カゼイン Naの至適濃度の確認
実施例2では、本発明の測定用試薬についてカゼイン Naの至適濃度を確認した。
【0045】
実施例2では、抗CRP抗体感作セルロース粒子を0.2w/v%、スクロースを0.5w/v%、CHAPSを0.25w/v%、抗CRP抗体100μg/mlに特定し、カゼイン Na(Casein Na)を0.1w/v%、0.2w/v%、0.4w/v%、0.6w/v%、0.8w/v%、1.00w/v%となるように測定用試薬を調製した(表3)。測定用試薬の調製方法は実施例1に従った。
【0046】
【0047】
1)検量線の作成
表3で示した測定用試薬について上記実施例1と同様の手順でCRPフリー血清、及びCRP管理検体の各被検試料の平均吸光度から検量線を作成した。カゼイン Na全ての濃度においてCRP 0.0-3.0mg/dLで濃度依存的な反応がみられ、理想的な検量線を得る事ができた。また、上述の検量線から濃度換算した平均値(測定値)とCRPフリー血清、CRP既知濃度(0.4、0.8、1.6、3.0mg/dL)のCRP管理検体との関係をグラフで示した(
図1)。濃度換算した平均値(測定値)が既知濃度に近い値であった。
以上詳述したように、本発明の免疫比濁法測定用試薬及び測定用キットによれば、非特異反応を効率的に抑制することができることから理想的な検量線を引くことができ、かつ被検試料中の測定対象物を正確に測定することができる。