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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074306
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電流センサ及び電力量計
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01R15/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184245
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】311002034
【氏名又は名称】富士電機メーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晋
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】原山 滋章
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA05
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】外部磁場の影響を低減して高精度に電流を測定でき、小型化及びコストの低減を可能にした電流センサ及び電力量計を提供する。
【解決手段】被測定電流が流れる導体21と、空隙部gを介して互いに対向配置され、かつ、被測定電流により発生する磁束を集める一対の集磁コア11a,11bと、空隙部gに配置され、かつ、磁束が鎖交して誘導電圧を発生する磁気検出手段としてのコイルパターン13a,13bと、前記誘導電圧に基づいて被測定電流を算出する演算手段と、を備えた電流センサにおいて、空隙部gを構成する一対の集磁コア11a,11bの対向面からほぼ等距離の位置に、コイルパターン13a,13bを配置する。また、この電流センサ及び電圧センサによる電流・電圧検出値を用いて電力量を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流が流れる導体と、
空隙部を形成する一対の対向面を有し、かつ、前記被測定電流により発生する磁束を集める集磁コアと、
前記空隙部に配置され、かつ、前記磁束が鎖交して誘導電圧を発生する磁気検出手段と、
前記誘導電圧に基づいて前記被測定電流を算出する演算手段と、
を備えた電流センサにおいて、
前記一対の対向面からほぼ等距離の位置に前記磁気検出手段を配置したことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
被測定電流が流れる導体と、
空隙部を形成する一対の対向面を有し、かつ、前記被測定電流により発生する磁束を集める集磁コアと、
前記空隙部に配置され、かつ、前記磁束が鎖交して誘導電圧を発生する磁気検出手段と、
前記誘導電圧に基づいて前記被測定電流を算出する演算手段と、
を備えた電流センサにおいて、
前記一対の対向面からほぼ等距離の位置に、前記磁気検出手段を備えたプリント基板の板厚の中心線が位置するように前記プリント基板を配置したことを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電流センサにおいて、
前記磁気検出手段がプリント基板上のコイルパターンにより形成されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項4】
請求項3に記載した電流センサにおいて、
第1の集磁コアと第2の集磁コアとを対向させて形成した前記空隙部内に、複数の前記コイルパターンを配置して各コイルパターンを直列に接続したことを特徴とする電流センサ。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記プリント基板の板厚のほぼ中心線上に前記導体が配置されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項6】
請求項3~5の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
複数の前記コイルパターンが、単一の前記プリント基板上に形成されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項7】
請求項3~5の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
複数の前記コイルパターンが、個別の前記プリント基板上にそれぞれ形成されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項8】
請求項2~7の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記プリント基板に形成した切欠き部に前記導体を配置したことを特徴とする電流センサ。
【請求項9】
請求項2~7の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記導体に形成した貫通孔に前記プリント基板を貫通させたことを特徴とする電流センサ。
【請求項10】
請求項3~9の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記プリント基板が複数の単位基板を積層して構成され、前記単位基板の表面または裏面に前記コイルパターンが形成されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載した電流センサと、前記導体を含む複数の導体間の電圧を測定する電圧センサと、前記電流センサによる電流検出値及び前記電圧センサによる電圧検出値を用いて電力量を算出する電力量演算部と、を備えたことを特徴とする電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体に流れる電流を磁気的に測定する電流センサ、及び、この電流センサを備えた電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電流センサとしては、変流器(CT)や、集磁コアの空隙部(ギャップ部)にホール素子等の磁電変換素子またはコイルを配置したもの、同じく集磁コアの空隙部にプリント基板上のコイルパターンを配置したもの等が知られている。
これらの電流センサは被測定電流が流れる一次側回路とは電気的に分離されているため、一次側回路に悪影響を与えることなく高精度に電流を測定可能である。
【0003】
上述した電流センサのうち、特に、集磁コアの空隙部に磁気検出手段としてプリント基板上のコイルパターンを配置した電流センサは、直線性及び温度特性に優れ、部品点数が少なく製造が容易である等の特徴があり、例えば特許文献1に記載されている。
図10は、この特許文献1に記載された電流センサの概略構成図である。この電流センサは、ほぼコ字型の一対の集磁コア51a,51bの端面を、空隙部を介して突き合わせることにより全体を環状に形成し、その中央開口部に、被測定電流が流れるバー状の導体61を貫通させると共に、上記空隙部には、プリント基板52上で互いに直列接続されたコイルパターン53a,53bが配置されている。
【0004】
上記構成において、導体61に被測定電流が流れると、導体61の周辺には被測定電流の大きさに比例した磁束F1が発生し、この磁束F1は集磁コア51a,51bにより集磁される。被測定電流が周期的に変化すると磁束F1も周期的に変化し、コイルパターン53a,53bには被測定電流の大きさ及び周波数に応じた同極性の誘導電圧が発生する。この誘導電圧を積分回路71にて積分することにより、被測定電流に相当する電圧信号を得ることができる。
【0005】
なお、図10において、F2は外部磁場により発生してプリント基板52に直交する磁束であり、この磁束F2によってコイルパターン53a,53bに発生する誘導電圧は、互いに逆極性であるため相殺される。従って、積分回路71は、磁束F1により発生した誘導電圧のみに基づいて、導体61に流れる電流を高精度に測定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-210406号公報([0018]~[0021]、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10の電流センサでは、コイルパターン53a,53bが空隙部の上下方向中央位置からずれて何れかの集磁コア51a,51bの端面寄りに配置されていると、プリント基板52に平行な方向の外部磁場が存在する場合にコイルパターン53a,53bの誘導電圧が外部磁場の影響を受けるため、導体61に流れる電流を正確に測定できなくなる。
上記外部磁場の影響を低減させるには、導体61を集磁コア51a,51bの中央開口部の中心に配置し、かつ、空隙部の上下方向中央位置にコイルパターン53a,53bが位置するようにプリント基板52を配置することが望ましいが、そのような配置は導体61とプリント基板52とが干渉することになって物理的に不可能である。
【0008】
更に、図10の構造では、プリント基板52の上方に導体61が配置されているので、集磁コア51a,51bの中央開口部の大きさを、少なくともプリント基板52の厚さと導体61の直径とを加えた長さ以下にすることができず、これが集磁コア51a,51bの小型化、ひいては電流センサの小型化や低コスト化を困難にしていた。
【0009】
そこで、本発明の解決課題は、外部磁場の影響を低減して高精度に電流を測定することができると共に、コストの低減及び小型化を可能にした電流センサを提供することにあり、また、この電流センサを用いた電力量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る電流センサは、
被測定電流が流れる導体と、
空隙部を形成する一対の対向面を有し、かつ、前記被測定電流により発生する磁束を集める集磁コアと、
前記空隙部に配置され、かつ、前記磁束が鎖交して誘導電圧を発生する磁気検出手段と、
前記誘導電圧に基づいて前記被測定電流を算出する演算手段と、
を備えた電流センサにおいて、
前記一対の対向面からほぼ等距離の位置に前記磁気検出手段を配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る電流センサは、
被測定電流が流れる導体と、
空隙部を形成する一対の対向面を有し、かつ、前記被測定電流により発生する磁束を集める集磁コアと、
前記空隙部に配置され、かつ、前記磁束が鎖交して誘導電圧を発生する磁気検出手段と、
前記誘導電圧に基づいて前記被測定電流を算出する演算手段と、
を備えた電流センサにおいて、
前記一対の対向面からほぼ等距離の位置に、前記磁気検出手段を備えたプリント基板の板厚の中心線が位置するように前記プリント基板を配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る電流センサは、請求項1または2に記載した電流センサにおいて、
前記磁気検出手段がプリント基板上のコイルパターンにより形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る電流センサは、請求項3に記載した電流センサにおいて、
第1の集磁コアと第2の集磁コアとを対向させて形成した前記空隙部内に、複数の前記コイルパターンを配置して各コイルパターンを直列に接続したことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る電流センサは、請求項2~4の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記プリント基板の板厚のほぼ中心線上に前記導体が配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る電流センサは、請求項3~5の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
複数の前記コイルパターンが、単一の前記プリント基板上に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る電流センサは、請求項3~5の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
複数の前記コイルパターンが、個別の前記プリント基板上にそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る電流センサは、請求項2~7の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記プリント基板に形成した切欠き部に前記導体を配置したことを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る電流センサは、請求項2~7の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記導体に形成した貫通孔に前記プリント基板を貫通させたことを特徴とする。
【0019】
請求項10に係る電流センサは、請求項3~9の何れか1項に記載した電流センサにおいて、
前記プリント基板が複数の単位基板を積層して構成され、前記単位基板の表面または裏面に前記コイルパターンが形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11に係る電力量計は、請求項1~10の何れか1項に記載した電流センサと、前記導体を含む複数の導体間の電圧を測定する電圧センサと、前記電流センサによる電流検出値及び前記電圧センサによる電圧検出値を用いて電力量を算出する電力量算出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電流センサによれば、空隙部を形成する集磁コアの対向面からほぼ等距離の位置に、コイルパターン等の磁気検出手段を配置し、または、上記磁気検出手段を備えたプリント基板の板厚の中心線が位置するようにプリント基板を配置することにより、外部磁場の影響を低減して高精度に電流を測定することができる。また、プリント基板と導体との相対的な位置を改良することで、電流センサ及びこの電流センサを用いた電力量計の小型化ひいてはコストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る電流センサの第1実施例を示す正面図(図1(a))及び斜視図(図1(b))、並びに主要部の拡大正面図(図1(c))である。
図2図1におけるプリント基板及びコイルパターンの平面図である。
図3】本発明に係る電流センサの第2実施例を示す正面図(図3(a))及び斜視図(図3(b))である。
図4図3に示した電流センサの作用を説明するための正面図(図4(a))及び特性図(図4(b))である。
図5】本発明に係る電流センサの第3実施例を示す正面図(図5(a))及び斜視図(図5(b))である。
図6】本発明に係る電流センサの第4実施例を示す正面図(図6(a))及び斜視図(図6(b))である。
図7】本発明に係る電流センサの第5実施例を示す正面図(図7(a))及び斜視図(図7(b))である。
図8】本発明に係る電流センサの第6実施例を示す正面図(図8(a))及び第7実施例を示す正面図(図8(b))である。
図9】本発明に係る電力量計の構成図である。
図10】特許文献1に記載された電流センサの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る電流センサの第1実施例であり、図1(a)は正面図、図1(b)は斜視図、図1(c)は主要部の拡大正面図である。
図1(a),(b)において、ほぼコ字型の集磁コア11a,11bが空隙部gを介して突き合わされ、その中央開口部30の中心には、被測定電流が流れるバー状の導体21が紙面に直交する方向に貫通している。
【0024】
上記の空隙部gには、平板状のプリント基板12a,12bがそれぞれ配置され、これらの表面には、被測定電流により発生して集磁コア11a,11bを通過する磁束に鎖交するように磁気検出手段としてのコイルパターン13a,13bがそれぞれ形成されている。コイルパターン13a,13b同士は直列に接続されており、その直列回路の出力電圧は例えば前述した図10のように被測定電流を算出する演算手段としての積分回路に入力され、コイルパターン13a,13bに発生した誘起電圧に比例する電圧(言い換えれば被測定電流の大きさ)が算出されるようになっている。
なお、図2はプリント基板12a,12b上のコイルパターン13a,13bの一例を示す平面図である。これらのプリント基板12a,12bやコイルパターン13a,13bの形状は、図2に示す例に限定されないことは言うまでもない。
【0025】
図1に戻って、(c)は空隙部g近傍の拡大正面図である。
プリント基板12a上のコイルパターン13aは、集磁コア11a,11bの各端面(プリント基板12aとの対向面)11a’,11b’からほぼ等しい距離Lに配置されている。この図1(c)では、一方のプリント基板12a上のコイルパターン13aのみが示されているが、他方のプリント基板12b上のコイルパターン13bについても、集磁コア11a,11bの各端面(プリント基板12bとの対向面)からほぼ等しい距離Lに配置されている。
ここで、図1(c)に示すように、プリント基板12a,12bの板厚の中心線c上に導体21を配置すれば、図10の従来構造と比べて中央開口部30の面積を小さくすることができ、これによって集磁コア11a,11bの小型化、ひいては電流センサ全体の小型化が可能になる。
【0026】
次に、図3は電流センサの第2実施例であり、図3(a)は正面図、図3(b)は斜視図である。
この第2実施例では、第1実施例におけるほぼコ字型の集磁コア11a,11bの代わりに直線状の集磁コア11c,11dを用いている。本実施例においても、プリント基板12a,12b上のコイルパターン13a,13bは、集磁コア11c,11dの内面(プリント基板12a,12bとの対向面)からほぼ等しい距離Lに配置されている。
【0027】
図4は、上述した第2実施例を対象として、プリント基板12a,12bに平行な方向の外部磁場が作用した場合の、コイルパターン13a,13bの上下方向位置(図3(a)における距離L方向の位置)と、上記外部磁場によるコイルパターン13a,13bの誘導電圧の誤差との関係を示している。なお、図4(b)では、コイルパターン13a,13bが集磁コア11c,11dの対向面からほぼ等しい距離Lにある時の上下方向位置を0[mm]とし、その場合の誤差を0[%]としている。
【0028】
図4(b)から明らかなように、上下方向位置と誘導電圧の誤差とはほぼ比例関係にある。このため、コイルパターン13a,13bを集磁コア11c,11dの対向面からほぼ等しい距離Lに配置すれば、コイルパターン13a,13bによる誘導電圧は外部磁場に影響されることなく誤差が最も小さくなり、導体21に流れる被測定電流を正確に測定することが可能になる。
このことは、図1に示した第1実施例についても同様であり、コイルパターン13a,13bを集磁コア11a,11bの対向面からほぼ等しい距離Lに配置することにより、コイルパターン13a,13bの誘導電圧の誤差は最も小さくなる。
【0029】
次に、図5は電流センサの第3実施例を示す正面図(図5(a))及び斜視図(図5(b))である。
この第3実施例は、切欠き部12eを有するほぼコ字型の単一のプリント基板12cの両端部上面にコイルパターン13a,13bを形成し、これらのコイルパターン13a,13bを、空隙部gにおいて集磁コア11a,11bの対向面からほぼ等しい距離Lに配置したものである。この場合、被測定電流が流れる導体22は、上記切欠き部12eにおいて直角方向に屈曲するようにほぼL字型に形成されている。
【0030】
本実施例においても、コイルパターン13a,13bを集磁コア11a,11bの対向面からほぼ等しい距離Lに配置することにより、コイルパターン13a,13bの誘導電圧は外部磁場に影響されることなくその誤差は小さくなる。
上述したプリント基板12c及び導体22の構造は、図3に示した直線状の集磁コア11c,11dと組み合わせて用いることも可能である。
【0031】
次いで、図6は電流センサの第4実施例を示す正面図(図6(a))及び斜視図(図6(b))である。
この第4実施例は、導体23の一部に貫通孔23aを形成し、この貫通孔23aに貫通させた単一のプリント基板12dの両端部上面に形成したコイルパターン13a,13bを直線状の集磁コア11c,11dの対向面からほぼ等しい距離Lに配置したものである。
【0032】
本実施例においても、コイルパターン13a,13bを集磁コア11c,11dの対向面からほぼ等しい距離Lに配置することにより、コイルパターン13a,13bの誘導電圧の誤差を小さくすることができる。
上述したプリント基板12d及び導体23の構造は、図1図5に示したほぼコ字型の集磁コア11a,11bと組み合わせて用いることも可能である。
【0033】
上述した第1~第4実施例のごとく、プリント基板の板厚が導体の厚さに吸収される配置構造(図1(c)に示したように、プリント基板12a,12bの板厚の中心線c上に導体21が配置される構造)とすれば、集磁コアの中央開口部の面積や集磁コア相互の間隔を小さくすることができ、電流センサの小型化、薄型化が可能になる。
【0034】
更に、図7は電流センサの第5実施例を示す正面図(図7(a))及び斜視図(図7(b))である。
この第5実施例は、直線状の集磁コア11c,11dの間にプリント基板12dを配置すると共に、プリント基板12dと一方の集磁コア11dとの間に導体21を配置し、プリント基板12dの両端部上面に形成したコイルパターン13a,13bを集磁コア11c,11dの対向面からほぼ等しい距離Lに配置したものである。
【0035】
本実施例では、プリント基板12dと導体21との位置関係が前述した図10とほぼ同様になるが、集磁コア11c,11dを直線状に形成することで電流センサ全体を薄型化することができる。また、第1~第4実施形態と同様に、コイルパターン13a,13bと集磁コア11c,11dの対向面との距離Lをほぼ等しくすることで、コイルパターン13a,13bによる誘導電圧は外部磁場に影響されることなく誤差が小さくなる。
【0036】
第1~第5実施例ではプリント基板12a,12b,12c,12dの表面のみにコイルパターン13a,13bが形成されているが、各プリント基板の裏面にもコイルパターンを形成し、表面及び裏面のコイルパターン同士をスルーホール等により直列に接続しても良い。つまり、プリント基板12a,12b,12c,12dの表裏両面にコイルパターンを形成しても良い。
【0037】
次に、図8(a)は電流センサの第6実施例を示す正面図、図8(b)は同じく第7実施例を示す正面図である。
前述した第1~第5実施例では、単一の基板からなるプリント基板の表面にコイルパターンを形成しているが、以下に説明するように、複数の基板(以下、単位基板という)を積層して1枚のプリント基板を形成し、各単位基板の表面または裏面にコイルパターンを形成すると共に、プリント基板の板厚の中心線が集磁コアの対向面からほぼ等しい距離に位置するようにプリント基板を配置しても良い。
【0038】
すなわち、図8(a)の第6実施例は、例えば各4枚の単位基板12e’,12f’をそれぞれ積層してプリント基板12e,12fを形成し、各単位基板12e’,12f’の表面または裏面にコイルパターン13a,13bを形成した例であり、図8(b)の第7実施例は、各2枚の単位基板12g’,12h’をそれぞれ積層してプリント基板12g,12hを形成し、各単位基板12g’,12h’の表面または裏面にコイルパターン13a,13bを形成した例である。ここで、各プリント基板を構成する単位基板の積層数は上記の例に限定されず、任意である。
このように複数の単位基板を積層して1枚のプリント基板を形成し、各単位基板の表面または裏面にコイルパターンを形成する着想は、第2~第5実施例に示した集磁コアの形状、構造や集磁コアとプリント基板との位置関係に対しても適用可能である。
【0039】
図8(a)におけるプリント基板12e内の複数のコイルパターン13aはスルーホール等により直列に接続されて第1の直列コイルが形成されると共に、他方のプリント基板12f内の複数のコイルパターン13bも直列に接続されて第2の直列コイルが形成され、これら第1及び第2の直列コイルが直列に接続されている。上記構成は、図8(b)におけるプリント基板12g,12h内の複数のコイルパターン13a,13bに関しても同様である。
【0040】
また、図8(a)では、プリント基板12e,12fの板厚の中心線と集磁コア11a,11bの対向面との間の距離L’が等しく保たれ、図8(b)では、プリント基板12g,12hの板厚の中心線と集磁コア11a,11bの対向面との間の距離L’が等しく保たれている。このような構成では、複数のコイルパターン13a,13bがそれぞれ一つのコイルパターンに集約されてそのコイルパターンが集磁コア11a,11bの対向面から等距離に配置されていると考えることができ、第1~第5実施例におけるコイルパターン13a,13bの配置と等価になる。
従って、プリント基板12e,12f,12g,12hに平行な方向の外部磁場によるコイルパターン13a,13bの誘導電圧の誤差を低減して、導体21に流れる電流を正確に測定することができる。
【0041】
以上説明した第1~第7実施例では、図1図5図8のような正面ほぼコ字型の集磁コア、または、図3図6図7のような直線状の集磁コアをそれぞれ2個用い、各一対の集磁コアを対向させて空隙部を保有させているが、電流センサの構成はこれらに限定されない。
すなわち、電流センサの変形例としては、ほぼC字型やU字型の単一の集磁コア(図示せず)を用いてその端部の対向面により空隙部を形成し、この空隙部内に配置されるプリント基板上のコイルパターンと上記対向面との間の距離がほぼ等しくなるように構成しても良く、あるいは、コイルパターンが形成された一または複数の単位基板からなるプリント基板の板厚の中心線と上記対向面との間の距離がほぼ等しくなるようにプリント基板を配置しても良い。
【0042】
次に、図9は、本発明の実施形態に係る電力量計の構成図であり、第1~第7実施例のうち何れかの電流センサを、例えば本出願人による特開2020-60504号公報に記載された電力量計に適用した場合のものである。
【0043】
図9において、三相の交流電源SP(R,S,Tは各相の出力端子、Nは中性点)に接続された各相の電源線101R,101S,101Tと三相の負荷LDとの間に、本発明に係る電力量計200が接続されている。
この電力量計200は、電源線101R,101T(何れも前述した導体21~23に相当)にそれぞれ接続されてR相電流I,T相電流Iを測定する本発明に係る電流センサ100a,100bと、電源線101R,101Sの間に接続されてR相-S相間の電圧を測定する電圧センサ201aと、電源線101S,101Tの間に接続されてS相-T相間の電圧を測定する電圧センサ201bと、電流センサ100a,100b及び電圧センサ201a,201bによる電流・電圧検出値を演算処理して電力量を算出する電力量算出部202と、算出した電力量を表示出力または外部に伝送出力する出力部203と、によって構成されている。
【0044】
この電力量計200によれば、本発明に係る電流センサ100a,100bにより高精度に測定した電流と電圧センサ201a,201bが測定した電圧とに基づいて、電力量を正確に測定することが可能である。
更に、電流センサ100a,100bの小型化によって電力量計200自体の小型化が可能になる等の利点がある。
【符号の説明】
【0045】
11a,11b,11c,11d:集磁コア
11a’,11b’:端面(対向面)
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h: プリント基板
12e’,12f’,12g’,12h’:単位基板
12e:切欠き部
13a,13b:コイルパターン
21,22,23:導体
23a:貫通孔
30:中央開口部
100a,100b:電流センサ
101R,101S,101T:電源線
200:電力量計
201a,201b:電圧センサ
202:電力量算出部
203:出力部
g:空隙部
SP:交流電源
R,S,T:出力端子
N:中性点
LD:負荷
図1
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