(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074322
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20220511BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20220511BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20220511BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/343
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184269
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸孝
(72)【発明者】
【氏名】秋草 直大
(72)【発明者】
【氏名】枝村 忠孝
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5F173
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322FA01
5F136CB08
5F136DA34
5F136FA03
5F173AF03
5F173AF20
5F173AH02
5F173MC12
5F173MD16
5F173ME54
(57)【要約】
【課題】ヒートシンクによる半導体レーザ素子の冷却効率の向上が図られる半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ装置1では、ヒートシンク13の本体部41内に、供給口32側から供給された冷却用流体Rを配置領域Pに向けて導く供給路45と、供給路45によって導かれた冷却用流体Rを配置領域P下で噴出させる噴出孔46と、噴出孔46から噴出した冷却用流体Rを排出口34に向けて導く排出路48とが設けられている。噴出孔46は、配置領域Pに配置された半導体レーザ素子12の共振方向Dに沿って配置され、排出路48は、配置領域Pに配置された半導体レーザ素子12の共振方向Dと交差する方向に延在している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子を冷却するヒートシンクと、を備え、
前記ヒートシンクは、前記半導体レーザ素子が配置された配置領域を表面に有すると共に、冷却用流体が供給される供給口及び前記冷却用流体を排出する排出口が前記配置領域から離間して設けられた本体部を有し、
前記本体部内には、前記供給口側から供給された前記冷却用流体を前記配置領域に向けて導く供給路と、前記供給路によって導かれた前記冷却用流体を前記配置領域下で噴出させる噴出孔と、前記噴出孔から噴出した前記冷却用流体を前記排出口に向けて導く排出路と、が設けられ、
前記噴出孔は、前記ヒートシンクの平面視において、前記配置領域に配置された前記半導体レーザ素子の共振方向に沿って配置され、
前記排出路は、前記ヒートシンクの平面視において、前記配置領域に配置された前記半導体レーザ素子の共振方向と交差する方向に延在している半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、平面視において長辺及び短辺を有する長方形状をなしており、
前記配置領域に配置された前記半導体レーザ素子の共振方向は、前記ヒートシンクの短辺に沿って延在している請求項1記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記噴出孔は、複数の丸孔によって構成されている請求項1又は2記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記噴出孔の内壁には、金メッキが施されている請求項1~3のいずれか一項記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記供給路は、前記ヒートシンクの平面視において、前記噴出孔の配置方向に交差する方向に延在している請求項1~4のいずれか一項記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記ヒートシンクに隣接して配置されたスペーサを備え、
前記ヒートシンクと前記スペーサとの間には、前記半導体レーザ素子に電気的に接続された電極リードが配置されている請求項1~5のいずれか一項記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記配置領域に配置された前記半導体レーザ素子と並んで配置され、前記半導体レーザ素子の共振方向に延在するダミーバーを備える請求項1~6のいずれか一項記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記半導体レーザ素子は、量子カスケードレーザ素子である請求項1~7のいずれか一項記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートシンクを備えた半導体レーザ装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載されているヒートシンクは、第1の凹部が形成された上面を有する導電性の第1の平板と、第2の凹部が形成された下面及び半導体レーザ素子が搭載される上面を有する導電性の第2の平板と、第1の凹部を覆う下面、第2の凹部を覆う上面、および第1の凹部を第2の凹部に連通させる一つ以上の貫通孔を有する導電性の仕切り板とを備えている。冷媒流入口は、第1凹部及び第2の凹部の一方から延在し、当該ヒートシンクに冷媒を流入させる。冷媒流出口は、第1凹部及び第2の凹部の他方から延在し、当該ヒートシンクから冷媒を流出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような半導体レーザ装置では、ヒートシンクによる半導体レーザ素子の冷却効率の向上が重要な要素となっている。半導体レーザ素子の冷却効率の向上には、ヒートシンクにおいて冷却流体の供給口から排出口に至る一連の内部経路の構成を工夫する必要がある。半導体レーザ装置では、例えば量子カスケードレーザ素子のように、比較的長い共振器長及び比較的高い発熱量を有するレーザ素子が搭載されることも考えられる。このため、半導体レーザ素子の配置態様を考慮した上で、ヒートシンクにおける一連の内部経路の構成を検討することが重要となる。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、ヒートシンクによる半導体レーザ素子の冷却効率の向上が図られる半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子を冷却するヒートシンクと、を備え、ヒートシンクは、半導体レーザ素子が配置された配置領域を表面に有すると共に、冷却用流体が供給される供給口及び冷却用流体を排出する排出口が配置領域から離間して設けられた本体部を有し、本体部内には、供給口側から供給された冷却用流体を配置領域に向けて導く供給路と、供給路によって導かれた冷却用流体を配置領域下で噴出させる噴出孔と、噴出孔から噴出した冷却用流体を排出口に向けて導く排出路と、が設けられ、噴出孔は、ヒートシンクの平面視において、配置領域に配置された半導体レーザ素子の共振方向に沿って配置され、排出路は、ヒートシンクの平面視において、配置領域に配置された半導体レーザ素子の共振方向と交差する方向に延在している。
【0007】
この半導体レーザ装置では、配置領域に配置された半導体レーザ素子の共振方向に沿って噴出孔が配置されている。このため、半導体レーザ素子の共振器長が比較的長い場合であっても、共振器長に応じた長さで噴出孔からの冷却用流体を配置領域に向けて噴出できる。また、この半導体レーザ装置では、配置領域に配置された半導体レーザ素子の共振方向と交差する方向に排出路が延在している。これにより、配置領域から熱を受けた冷却用流体が配置領域下を流れる距離を抑えることができる。以上により、この半導体レーザ装置では、ヒートシンクによる半導体レーザ素子の冷却効率の向上が図られる。
【0008】
ヒートシンクは、平面視において長辺及び短辺を有する長方形状をなしており、配置領域に配置された半導体レーザ素子の共振方向は、ヒートシンクの短辺に沿って延在していてもよい。半導体レーザ素子の共振方向をヒートシンクの短辺に沿わせることで、ヒートシンクに対する半導体レーザ素子の配置構造を簡単化できる。また、ヒートシンクの長辺方向に比較的大きなスペースを確保することが可能となり、半導体レーザ素子の共振器長が長くなる場合でも、冷却用流体の流路を封止する封止部材などの配置スペースを容易に確保できる。
【0009】
噴出孔は、複数の丸孔によって構成されていてもよい。この場合、噴出孔から噴出する冷却用流体の圧力が十分に高められ、半導体レーザ素子の冷却効率をより向上させることができる。
【0010】
噴出孔の内壁には、金メッキが施されていてもよい。この場合、冷却用流体に起因する噴出孔の内壁のイオン化を金メッキによって抑制できる。これにより、噴出孔の経時的な拡径によって噴出孔から噴出する冷却用流体の圧力が低下してしまうことを抑制できる。
【0011】
供給路は、ヒートシンクの平面視において、噴出孔の配置方向に交差する方向に延在していてもよい。これにより、噴出孔から噴出する冷却用液体の圧力の均一化が図られる。
【0012】
ヒートシンクに隣接して配置されたスペーサを備え、ヒートシンクとスペーサとの間には、半導体レーザ素子に電気的に接続された電極リードが配置されていてもよい。この場合、電極リードを半導体レーザ素子に近接して配置できるため、立ち上がり時間の早い電流パルスを半導体レーザ素子に対して低損失で入力できる。したがって、半導体レーザ素子の短パルス動作を実現できる。
【0013】
配置領域に配置された半導体レーザ素子と並んで配置され、半導体レーザ素子の共振方向に延在するダミーバーを備えていてもよい。この場合、ヒートシンク等の姿勢の安定性を高めることができる。
【0014】
半導体レーザ素子は、量子カスケードレーザ素子であってもよい。この半導体レーザ装置の構成によれば、比較的長い共振器長及び比較的高い発熱量を有する量子カスケードレーザ素子を配置領域に配置する場合でも、ヒートシンクによる冷却を効率良く実施できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ヒートシンクによる半導体レーザ素子の冷却効率の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置を示す斜視図である。
【
図2】半導体レーザ素子及びヒートシンクを含む構造体を示す分解斜視図である。
【
図8】ヒートシンクと半導体レーザ素子との配置関係を示す要部拡大平面図である。
【
図9】ヒートシンクと半導体レーザ素子との配置関係を示す要部拡大断面図である。
【
図10】半導体レーザ素子及びヒートシンクを含む構造体の変形例を示す正面図である。
【
図11】ヒートシンクの変形例を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る半導体レーザ装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置を示す斜視図である。
図1に示すように、半導体レーザ装置1は、半導体レーザ素子12及びヒートシンク13を含む構造体11をホルダ2で支持した構成を有している。以下の説明では、半導体レーザ素子12からのレーザ光Lの出射方向をX方向、
図1の水平面内においてX方向に直交する方向をY方向、構造体11における各構成要素の積層方向をZ方向とする。Z方向からの視点は、本開示における平面視に相当する。
【0019】
ホルダ2は、底板3と、側板4と、天板5とによって構成されている。ホルダ2の形成材料としては、例えばアルミニウム、ステンレス(SUS)などが挙げられる。底板3及び天板5は、Z方向から見た場合に、X方向を短辺とし、Y方向を長辺とする長方形状をなしている。底板3には、後述する冷却用流体Rを構造体11に供給するための供給口、及び冷却用流体Rを構造体11から排出するための排出口が設けられている(底板3の供給口及び排出口は、いずれも不図示)。側板4は、矩形状をなし、底板3及び天板5における一方の長辺側の縁部同士を繋ぐように配置されている。側板4の高さは、構造体11の高さに対応しており、構造体11は、底板3及び天板5によって各構成要素の積層方向に挟持されている。
【0020】
また、側板4のY方向の長さは、底板3及び天板5の長辺の長さよりも小さくなっている。ホルダ2をX方向から見た場合、構造体11は、底板3及び天板5の一方の短辺に揃えて配置され、側板4は、底板3及び天板5の他方の短辺に揃えて配置されている。側板4の偏在により、ホルダ2には、X方向から見て構造体11の一面側の一部(半導体レーザ素子12の出射面12aを含む部分)を露出させる切欠部分6が形成されている。半導体レーザ素子12の出射面12aから出射するレーザ光Lは、この切欠部分6を通ってX方向に出射する。
【0021】
図2は、半導体レーザ素子及びヒートシンクを含む構造体を示す分解斜視図である。また、
図3は、
図2に示した構造体の正面図である。
図2及び
図3に示すように、構造体11は、半導体レーザ素子12と、上下一対のヒートシンク13,13と、上下一対のスペーサ14,14と、一対の電極リード15,15と、複数の封止部材16,22とを含んで構成されている。
【0022】
半導体レーザ素子12は、ダミーバー17と共に一対のサブマウント18,18間に挟持されている。一対のサブマウント18,18は、封止部材16と共に一対のヒートシンク13,13間に挟持されている。一対のヒートシンク13,13は、電極リード15,15及び封止部材16と共に一対のスペーサ14,14間に挟持されている。
【0023】
上側のヒートシンク13と上側のスペーサ14との間の電極リード15には、封止部材16との間の厚さの差を解消するためのスペーサ19が重ねられている。下側のヒートシンク13と下側のスペーサ14との間の電極リード15には、スペーサ19が重ねられておらず、下側のスペーサ14には、電極リード15の配置領域に対応して、封止部材16との間の厚さの差に相当する段部20が設けられている。一対のスペーサ14,14は、一対の封止部材22,22間に挟持されている。この一対の封止部材22,22は、構造体11におけるZ方向の両端の部材である。一対の封止部材22,22は、ホルダ2の底板3及び天板5に挟持されている。
【0024】
半導体レーザ素子12は、本実施形態では、量子カスケードレーザ(Quantum cascade laser:QCL)素子21を例示する。量子カスケードレーザ素子21は、活性層と、当該活性層で生成される所定波長の光に対する共振器構造とを有している。量子カスケードレーザ素子21は、共振器の共振方向に対向して設けられた一対の端面を有している。一対の端面には、それぞれ反射膜が設けられている。一方の端面の反射膜は、例えばAu膜を含んで構成され、共振器内で発振するレーザ発振光に対する反射率は、例えば40%以上99%以下となっている。他方の端面の反射膜は、例えばAu膜を含んで構成され、共振器内で発振するレーザ発振光に対する反射率は、一方の端面の反射膜における反射率よりも高くなっている。これにより、共振器内で発振するレーザ発振光は、一方の端面側からレーザ光Lとして外部に出射する。
【0025】
量子カスケードレーザ素子21の共振器長は、例えばGaAs系の半導体レーザ素子などの共振器長と比較して数倍程度長くなっている。GaAs系の半導体レーザの共振器長は、例えば0.5mm程度であるのに対し、量子カスケードレーザ素子21の共振器長は、例えば3mm程度となっている。量子カスケードレーザ素子21において、最も効率良く光出力を取り出せる動作モードは、短パルス高繰り返しの疑似CW(Quasi Continuous Wave:QCW)駆動となっている。この動作モードを実現するためには、立ち上がり時間の比較的早い電流パルスを量子カスケードレーザ素子21に対して低損失で注入することが重要となっている。
【0026】
スペーサ14は、構造体11のZ方向の長さを調整する部材である。上側のスペーサ14及び下側のスペーサ14は、例えば銅によって形成され、長方形状をなしている。上側のスペーサ14及び下側のスペーサ14は、Z方向から見た場合に、X方向を短辺とし、Y方向を長辺とする長方形状をなしている。上側のスペーサ14及び下側のスペーサ14のZ方向の厚さは、ヒートシンク13のZ方向の厚さに対して十分大きくなっている。本実施形態では、上側のスペーサ14及び下側のスペーサ14のZ方向の厚さは、上述した段部20の箇所を除いて互いに等しくなっている。上側のスペーサ14及び下側のスペーサ14のZ方向の厚さは、互いに異なっていてもよい。
【0027】
ヒートシンク13は、冷却対象である発熱体の近傍まで冷却用流体の流路が内部形成された、いわゆるマイクロチャネル方式のヒートシンクである。また、ヒートシンク13は、発熱体の直下において冷却用流体を発熱体に向けて噴流させる噴流方式のヒートシンクである。噴流方式は、水鉄砲の原理を応用した方式であり、発熱体の直下まで断面積が比較的大きい流路を用い、発熱体の直下に設けた噴出孔から発熱体に向けて冷却用流体を噴出する構成となっている。ヒートシンク13の詳細構成は、後述する。
【0028】
電極リード15は、量子カスケードレーザ素子21に駆動用信号を入力する部分であり、量子カスケードレーザ素子21に電気的に接続されている。電極リード15は、例えばサブマウント18の幅(Y方向の幅)と同程度の幅を有する薄板状をなしている。電極リード15の基端側は、X方向についてレーザ光Lの出射方向と反対の向きに構造体11から引き出されている。電極リード15の先端側は、構造体11において一対のヒートシンク13,13と一対のスペーサ14,14との間に位置しており、構造体11において電極リード15と量子カスケードレーザ素子21とが近接配置となっている。これにより、例えば50ns以下の立ち上がり時間を有する電流パルスを量子カスケードレーザ素子21に対して低損失で注入することが可能となっている。
【0029】
封止部材16は、一対のヒートシンク13,13間、及びヒートシンク13とスペーサ14との間を封止する部材である。各封止部材16は、例えばシリコーンゴムによって薄板状に形成されている。各封止部材16は、Z方向から見た場合に、X方向を短辺とし、Y方向を長辺とする長方形状をなしている。各封止部材16のZ方向の厚さは、例えば量子カスケードレーザ素子21を保持した状態での一対のサブマウント18,18のZ方向の厚さと同程度となっている。各封止部材16の長辺の長さは、スペーサ14の長辺の長さよりも小さくなっている。各封止部材16は、量子カスケードレーザ素子21及び電極リード15,15の配置部分を除いたスペースにおいて、一対のヒートシンク13,13間、及びヒートシンク13とスペーサ14との間にそれぞれ介在している。
【0030】
封止部材22は、封止部材16と同様に、例えばシリコーンゴムによって薄板状に形成されている。封止部材22は、Z方向から見た場合に、X方向を短辺とし、Y方向を長辺とする長方形状をなしている。封止部材22のZ方向の厚さは、封止部材16のZ方向の厚さと同程度となっている。Z方向から見た封止部材22の形状は、Z方向から見たスペーサ14の形状と等しくなっている。封止部材22は、下側のスペーサ14と底板3との間、及び上側のスペーサ14と天板5との間にそれぞれ介在している。
【0031】
上側のスペーサ14と天板5との間の封止部材22を除く各封止部材16,22、ヒートシンク13,13、及び下側のスペーサ14のそれぞれには、構造体11内に冷却用流体Rを供給するための供給管31(
図3参照)を形成する供給口32と、構造体11から冷却用流体Rを排出するための排出管33(
図3参照)を形成する排出口34とが設けられている。各供給口32及び各排出口34は、互いに同径の断面円形をなし、Z方向に各部材を貫通している。各供給口32と各排出口34とは、Y方向に互いに離間して配置されており、各供給口32は、Z方向から見て各排出口34よりも量子カスケードレーザ素子21側に位置している。
【0032】
構造体11において、各供給口32及び各排出口34の位置を合わせた状態で封止部材16、ヒートシンク13,13、及び下側のスペーサ14をZ方向に配置することにより、供給管31及び排出管33が形成されている。供給管31及び排出管33は、ホルダ2の底板3の供給口及び排出口と連通し、外部からの冷却用流体Rの供給及び外部への冷却用流体Rの排出が可能となっている。一対のヒートシンク13,13間、及びヒートシンク13とスペーサ14との間に封止部材16がそれぞれ介在することで、構造体11内からの冷却用流体Rの漏出防止が図られている。
【0033】
図3に示すように、供給管31を通って構造体11の内部に供給された冷却用流体Rは、一対のヒートシンク13,13の内部にそれぞれ供給される。ヒートシンク13,13の内部では、量子カスケードレーザ素子21の直下において冷却用流体Rが噴出孔46(
図8参照)から噴出し、一対のヒートシンク13,13間に位置する量子カスケードレーザ素子21を冷却する。量子カスケードレーザ素子21の冷却に用いられた冷却用流体Rは、一対のヒートシンク13の内部から排出管33を通って構造体11の外部に排出される。
【0034】
各封止部材16、一対のヒートシンク13,13、及び一対のスペーサ14,14のそれぞれには、位置決め孔35が設けられている。各位置決め孔35は、各供給口32及び各排出口34よりも小径の断面円形をなし、Z方向に各部材を貫通している。各位置決め孔35は、Y方向について各供給口32及び各排出口34の中間に位置している。各位置決め孔35にピンなどの位置決め部材を挿通させることで、各封止部材16、一対のヒートシンク13,13、及び一対のスペーサ14,14を積層する際の各部材の位置決めが容易なものとなる。
【0035】
続いて、上述したヒートシンク13の構成、及びヒートシンク13と量子カスケードレーザ素子21との配置関係について詳細に説明する。
【0036】
図4は、ヒートシンクの斜視図である。同図に示すように、ヒートシンク13は、例えば銅によって形成された薄板状の本体部41を備えている。本体部41は、Z方向から見た場合に、X方向を短辺とし、Y方向を長辺とする長方形状をなしている。本体部41における短辺の長さ及び長辺の長さは、上側のスペーサ14及び下側のスペーサ14における短辺の長さ及び長辺の長さと一致している。本体部41のZ方向の厚さは、例えば各封止部材16のZ方向の厚さと同程度となっていてもよく、各封止部材16のZ方向の厚さよりも大きくなっていてもよい。本体部41には、上述した供給口32、排出口34、及び位置決め孔35がそれぞれ設けられている。供給口32、排出口34、及び位置決め孔35は、本体部41をZ方向に貫通するように形成されている。
【0037】
本体部41のZ方向の一端面41aには、量子カスケードレーザ素子21の配置領域Pが設けられている。配置領域Pは、Z方向から見て、本体部41の一方の短辺側の縁に沿って一定の幅で設けられ、本体部41の一方の長辺側の縁から他方の長辺側の縁に向かって延在している。本体部41内には、供給口32側から供給された冷却用流体Rを配置領域Pに向けて導く供給路45と、供給路45によって導かれた冷却用流体Rを配置領域P下で噴出させる噴出孔46と、噴出孔46から噴出した冷却用流体Rを排出口34に向けて導く排出路48とが設けられている。
【0038】
本体部41内で供給路45、噴出孔46、及び排出路48を一連の流路として形成するにあたり、本体部41は、
図5~
図7に示すように、第1層42と、第2層43と、第3層44とによる3層構造となっている。第1層42~第3層44は、例えばNiメッキ及びAuメッキを銅板の表面に施した板状部材である。各層の接合には、例えばAuSnハンダが用いられている。
【0039】
第1層42は、
図5に示すように、複数の供給路45を有している。
図5の例では、4本の供給路45が供給口32に接続されている。4本の供給路45は、X方向に展開しながら供給口32から一方の短辺側に向かってY方向に延在している。これらの供給路45は、一方の短辺側に向かう途中で2分岐しており、一方の短辺側では、8本の供給路45がY方向に延在している。8本の供給路45の先端は、Z方向から見て配置領域Pと重なる位置まで延び、一方の短辺側の縁より僅かに内側で互いに揃えられている。
【0040】
第2層43は、
図6に示すように、複数の噴出孔46を有している。ここでは、複数の噴出孔46は、いずれも丸孔47によって構成され、8本の供給路45の断面積に比べて十分に小さい断面積を有している。複数の噴出孔46は、Z方向から見て8本の供給路45の先端と重なるように配置されている。
図6の例では、1本の供給路45の先端に対して2つの噴出孔46が連通しており、合計で16個の噴出孔46が一方の短辺に沿ってX方向に配列されている。噴出孔46の内壁には、全面にわたって金メッキC(
図9参照)が施されている。噴出孔46は、配置領域P下で冷却用流体Rを噴出させるものであればよく、必ずしも量子カスケードレーザ素子21の直下に位置していなくてもよい。冷却用流体Rによる冷却効果が及ぶ範囲であれば、量子カスケードレーザ素子21と噴出孔46との間に一定のずれが許容され得る。
【0041】
第3層44は、
図7に示すように、複数の排出路48を有している。
図7の例では、4本の排出路48が排出口34に接続されている。4本の排出路48は、供給口32及び位置決め孔35を回り込むようにして排出口34から一方の短辺側に向かってY方向に延在している。これらの排出路48は、一方の短辺側に向かう途中で2分岐しており、一方の短辺側では、8本の排出路48がY方向に延在している。8本の排出路48の先端は、Z方向から見て配置領域Pと重なる位置まで延び、一方の短辺側の縁より僅かに内側で互いに揃えられている。
図7の例では、1本の排出路48の先端に対して2つの噴出孔46が連通している。
【0042】
図8は、ヒートシンクと半導体レーザ素子との配置関係を示す要部拡大平面図である。また、
図9は、その要部拡大断面図である。
図8及び
図9に示すように、ヒートシンク13の本体部41における配置領域Pには、一対のサブマウント18,18に挟持された量子カスケードレーザ素子21及びダミーバー17が配置されている。
【0043】
サブマウント18は、Z方向から見た場合に、X方向を長辺とし、Y方向を短辺とする長方形状をなしている。サブマウント18の一方の短辺側の縁は、配置領域Pにおいて本体部41の一方の長辺側の縁に揃えられ、サブマウント18の一方の長辺側の縁は、配置領域Pにおいて本体部41の一方の短辺側の縁に揃えられている。本実施形態では、サブマウント18の長辺の長さは、本体部41の短辺の長さよりも小さくなっている。このため、サブマウント18は、Z方向から見た場合に、本体部41の一方の長辺側から1番目から7番目までの供給路45及び排出路48と重なった状態となっている。
【0044】
量子カスケードレーザ素子21は、レーザ光Lの出射面12aが本体部41における一方側の長辺の縁に揃うようにサブマウント18,18間に挟持されている。量子カスケードレーザ素子21は、Z方向から見た場合に、噴出孔46と重なる位置に配置されている。
図8の例では、量子カスケードレーザ素子21は、本体部41の一方の長辺側から1番目及び2番目の供給路45及び排出路48と重なっており、これらの供給路45及び排出路48に対応する4つの噴出孔46の直上に位置している。
【0045】
量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dは、レーザ光Lの出射方向と一致し、本体部41の一方の短辺に沿って延在している。したがって、Z方向から見た場合、ヒートシンク13の噴出孔46は、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dに沿って配置されている。また、Z方向から見た場合、供給路45及び排出路48は、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dと交差する方向に延在している。
図8の例では、量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dは、X方向に沿って延在しており、複数の噴出孔46は、量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dと平行にX方向に配列されている。また、供給路45及び排出路48は、量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dと直交してY方向に延在している。
【0046】
ダミーバー17は、X方向から見た場合に、量子カスケードレーザ素子21と同形状をなしており、サブマウント18,18間において量子カスケードレーザ素子21とY方向に離間して並べられている。ダミーバー17は、量子カスケードレーザ素子21の共振方向に延在している。
図8の例では、ダミーバー17は、サブマウント18の長辺の長さと等しい長さで、量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dと平行にX方向に延在している。ダミーバー17の延在方向は、複数の噴出孔46の配列方向と平行となっており、供給路45及び排出路48の延在方向と直交している。
【0047】
以上説明したように、半導体レーザ装置1では、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dに沿って噴出孔が配置されている。このため、量子カスケードレーザ素子21の共振器長が比較的長い場合であっても、共振器長に応じた長さで噴出孔46からの冷却用流体Rを配置領域Pに向けて噴出できる。また、半導体レーザ装置1では、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dと交差する方向に排出路48が延在している。これにより、配置領域Pから熱を受けた冷却用流体Rが配置領域P下を流れる距離を抑えることができる。したがって、半導体レーザ装置1では、ヒートシンク13による量子カスケードレーザ素子21の冷却効率の向上が図られる。
【0048】
本実施形態では、ヒートシンク13は、Z方向から見て長辺及び短辺を有する長方形状をなしており、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dがヒートシンク13の短辺に沿って延在している。量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dをヒートシンク13の短辺に沿わせることで、ヒートシンク13に対する量子カスケードレーザ素子21の配置構造を簡単化できる。また、ヒートシンク13の長辺方向に比較的大きなスペースを確保することが可能となり、量子カスケードレーザ素子21のように共振器長が長くなる場合でも、冷却用流体Rの流路を封止する封止部材16などの配置スペースを容易に確保できる。
【0049】
本実施形態では、噴出孔46が複数の丸孔47によって構成されている。これにより、噴出孔46から噴出する冷却用流体Rの圧力が十分に高められ、量子カスケードレーザ素子21の冷却効率をより向上させることができる。また、本実施形態では、噴出孔46の内壁に金メッキCが施されている。金メッキCを施すことで、冷却用流体Rに起因する噴出孔46の内壁のイオン化を抑制できる。これにより、噴出孔46の経時的な拡径によって噴出孔46から噴出する冷却用流体Rの圧力が低下してしまうことを抑制できる。
【0050】
本実施形態では、Z方向から見て、供給路45が噴出孔46の配置方向に交差する方向に延在している。供給路が噴出孔の配置方向に沿って延在している場合、供給路の先端側に位置する噴出孔から噴出する冷却用液体の圧力が、供給路の基端側に位置する噴出孔から噴出する冷却用液体の圧力に比べて弱まることが考えられる。供給路45が噴出孔46の配置方向に交差する方向に延在することで、噴出孔46から噴出する冷却用流体Rの圧力の均一化が図られる。
【0051】
本実施形態では、構造体11において、ヒートシンク13に隣接して配置されたスペーサ14,14が設けられている。そして、ヒートシンク13とスペーサ14との間には、量子カスケードレーザ素子21に電気的に接続された電極リード15が配置されている。このような構成によれば、電極リード15を量子カスケードレーザ素子21に近接して配置できるため、立ち上がり時間の早い電流パルスを量子カスケードレーザ素子21に対して低損失で入力できる。したがって、量子カスケードレーザ素子21の短パルス動作を実現でき、量子カスケードレーザ素子21における光出力の取出効率を高めることができる。
【0052】
本実施形態では、一対のサブマウント18,18間において、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21と並んでダミーバー17が配置されている。ダミーバー17は、量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dに延在している。このようなダミーバー17の配置により、構造体11におけるヒートシンク13やスペーサ14等の姿勢の安定性を高めることができる。
【0053】
本実施形態では、半導体レーザ素子12が量子カスケードレーザ素子21となっている。この半導体レーザ装置1の構成によれば、比較的長い共振器長及び比較的高い発熱量を有する量子カスケードレーザ素子21を配置領域Pに配置する場合でも、ヒートシンク13による冷却を効率良く実施できる。
【0054】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、半導体レーザ素子12として量子カスケードレーザ素子21を例示したが、配置領域Pに配置される半導体レーザ素子12は、例えばGaAs系の半導体レーザ素子のように、量子カスケードレーザ素子21に比べて共振器長や発熱量の小さい他の半導体レーザ素子であってもよい。半導体レーザ装置1の構成によれば、このような他の半導体レーザ素子を配置領域Pに配置する場合であっても、ヒートシンク13による冷却を効率良く実施できる。
【0055】
上記実施形態では、噴出孔46が複数の丸孔47で構成されているが、
図10に示すように、噴出孔46が長孔50によって構成されていてもよい。
図10の例では、長孔50のY方向の幅は、上述した丸孔47の直径と同程度となっている。Z方向から見た長孔50の延在方向は、配置領域Pに配置された量子カスケードレーザ素子21の共振方向Dに沿っている。また、Z方向から見た長孔50の延在方向は、供給路45及び排出路48の延在方向と直交している。このような態様においても、上記実施形態と同様に、ヒートシンク13による量子カスケードレーザ素子21の冷却効率の向上が図られる。
【0056】
上記実施形態では、供給管31を通って構造体11の内部に供給された冷却用流体Rは、一対のヒートシンク13,13の内部にそれぞれ供給されているが、
図11に示すように、一方のヒートシンク13の内部のみに冷却用流体Rが供給される態様であってもよい。
図11の例では、ヒートシンク13,13間の封止部材16、上側のヒートシンク13、上側のヒートシンク13と上側のスペーサ14との間の封止部材16には、位置決め孔35のみが設けられており、供給管31から構造体11の内部に供給された冷却用流体Rは、下側のヒートシンク13の内部にのみ供給される。このような態様においても、上記実施形態と同様に、ヒートシンク13による量子カスケードレーザ素子21の冷却効率の向上が図られる。
【符号の説明】
【0057】
1…半導体レーザ装置、12…半導体レーザ素子、13…ヒートシンク、14…スペーサ、15…電極リード、17…ダミーバー、21…量子カスケードレーザ素子、32…供給口、34…排出口、41…本体部、45…供給路、46…噴出孔、47…丸孔、48…排出路、C…金メッキ、D…共振方向、P…配置領域、R…冷却用流体。