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特開2022-74333ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074333
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/37 20060101AFI20220511BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220511BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220511BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K31/37
A61P3/10
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184285
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(71)【出願人】
【識別番号】514033770
【氏名又は名称】公立大学法人前橋工科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】向井 克之
(72)【発明者】
【氏名】薩 秀夫
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD48
4B018ME03
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG24
4B117LK06
4B117LP01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】優れたナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害活性を有する成分を特定し、新たなSGLT阻害剤を提供することである。
【解決手段】ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を有効成分とする、ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を有効成分とする、ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤。
【請求項2】
ナトリウム依存性グルコース共輸送体の阻害に使用される、請求項1に記載のナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤。
【請求項3】
糖尿病の予防又は治療に使用される、請求項1又は2に記載のナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤。
【請求項4】
ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害用の飲食品である、請求項1~3のいずれかに記載のナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤。
【請求項5】
ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害用の医薬品である、請求項1~3のいずれかに記載のナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体(SGLT)阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化、高カロリー化、車社会の発達等に起因する運動不足、高齢化等に伴って、糖尿病患者は増加の一途にある。糖尿病は、肝臓、脂肪、筋肉でのインスリン感受性の低下及び膵臓でのインスリン分泌能の低下により、生体でのインスリンの作用が不十分になり、慢性的な高血糖を呈する全身性代謝障害であり、脳卒中、虚血性心疾患等の心血管疾患の発症・進展を促進することも知られている。糖尿病は、QOLの低下を伴うだけでなく、医療経済的にも社会に多大な負担を強いており、社会問題になっている。
【0003】
一方、グルコースを体内に取り込む糖輸送体として、ナトリウム濃度依存的にグルコース能動輸送するSGLT、及びグルコースを受動輸送するグルコーストランスポーター(GLUT)が同定されている。これらの糖輸送体の内、SGLTには、SGLT1、SGLT2、及びSGLT3のサブタイプが同定されている。例えば、SGLT1は、小腸及び腎臓で発現しており、小腸では食事由来のグルコースを吸収し、腎臓では尿からグルコースを再吸収する機能を担っていることが知られている。近年、SGLT阻害剤によって、グルコースの吸収を阻害又は遅延させることにより、血糖値の上昇を抑制し、糖尿病を予防又は治療することが試みられている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-182852号公報
【特許文献2】特開2012-62308号公報
【特許文献3】特開2011-32174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糖尿病患者は、SGLT1をはじめとするSGLTに対する阻害剤の長期的な服用が必要であるため、天然に存在する成分を使用したSGLT阻害剤を食品等の形態で簡便に摂取できることが望ましいが、従来報告されているSGLT阻害剤の多くは、天然に存在しない合成化合物である。また、天然由来成分であるクロロゲン酸にはSGLT阻害活性があることが知られているが、そのSGLT阻害活性は十分とはいえない。
【0006】
そこで、本開示では、優れたSGLT阻害活性を有する成分を特定し、新たなSGLT阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体には、優れたSGLT阻害活性があり、SGLT阻害剤の有効成分として使用できることを見出した。本開示に記載の発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
本開示は、下記に掲げる態様のSGLT阻害剤を提供する。
項1. ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を有効成分とする、SGLT阻害剤。
項2. SGLTの阻害に使用される、項1に記載のSGLT阻害剤。
項3. 糖尿病の予防又は治療に使用される、項1又は2に記載のSGLT阻害剤。
項4. ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害用の飲食品である、項1~3のいずれかに記載のSGLT阻害剤。
項5. ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害用の医薬品である、項1~3のいずれかに記載のSGLT阻害剤。
【発明の効果】
【0009】
本開示のSGLT阻害剤によれば、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を有効成分として使用することにより、SGLTを効果的に阻害することができ、糖尿病等の高血糖が一因となって生じる疾患や症状の予防又は治療が可能になる。また、ペクトリナリゲニン及びその配糖体は天然に存在する成分であるので、本開示のSGLT阻害剤は、安全性が高く、飲食品、医薬品等の様々な製品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1において、ペクトリナリゲニン及びクロロゲン酸のSGLT1活性に対する作用を評価した結果を示す図である。
図2】試験例2において、ペクトリナリゲニンの濃度とSGLT1阻害活性との関係を評価した結果を示す図である。
図3】試験例3において、ペクトリナリゲニン及びペクトリナリンのSGLT1活性に対する作用を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態は、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を有効成分とするSGLT阻害剤である。以下、本開示の一実施形態であるSGLT阻害剤について詳述する。
【0012】
[有効成分]
本開示のSGLT阻害剤は、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を有効成分として使用する。
【0013】
ペクトリナリゲニンは、5,7-ジヒドロキシ-4',6-ジメトキシフラボン(IUPAC名)とも称されるフラボノイドの一種であり、ペクトリナリンのアグリコンである。
【0014】
ペクトリナリゲニンの配糖体は、ペクトリナリゲニンに糖がグリコシド結合した化合物である。本開示のSGLT阻害剤で使用されるペクトリナリゲニンの配糖体としては、例えば、ペクトリナリゲニンのA環の水酸基に糖がグリコシド結合した化合物が挙げられる。ペクトリナリゲニンの配糖体において、結合している糖の種類については、特に制限されないが、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース、アピオース等の単糖;これらの単糖1種又は2種からなる二糖;これらの単糖1種以上からなる三糖;これらの単糖1種以上からなる四糖:これらの単糖1種以上からなる五糖等が挙げられる。本開示のSGLT阻害剤の一実施態様では、ペクトリナリゲニンの配糖体の好適な例として、ペクトリナリンが挙げられる。
【0015】
本開示のSGLT阻害剤において、有効成分として、ペクトリナリゲニン及びその配糖体の中から1種の化合物を選択して使用してもよく、またこれらの中から2種以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。本開示のSGLT阻害剤の一実施態様として、使用する有効成分として、好ましくはペクトリナリゲニン及び/又はペクトリナリン、より好ましくはペクトリナリゲニンが挙げられる。
【0016】
本開示のSGLT阻害剤で使用されるペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体の由来については、特に制限されず、植物から得られたものであってもよく、また化学合成や酵素合成等によって得られたものであってもよい。
【0017】
安全性、製造コストの低減等の観点から、本開示のSGLT阻害剤の一実施形態では、植物由来のペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を使用できる。ペクトリナリゲニンの由来植物としては、例えば、キク科(Asteraceae)アザミ属(Cirsium)植物が挙げられ、具体的には、シマアザミ(Cirsium brevicaule)、オガサワラアザミ(Cirsium boninense)、オイランアザミ(Cirsium spinosum)、ハマアザミ(Cirsium maritimum)、イリオモテアザミ(C. irimtiense)、ヤクシマアザミ(C. yakushimense)等が挙げられる。これらのペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体の由来植物中でも、好ましい一態様では、シマアザミが挙げられる。
【0018】
また、本開示のSGLT阻害剤の一実施形態では、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体は、精製されたものであってもよいが、租精製品であってもよく、更に、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を含む植物抽出物の状態であってもよく、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を含む植物を蒸熱、乾燥、焙煎、細切、粉砕等の処理をしただけのものであってもよい。
【0019】
ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を含む植物抽出物は、例えば、前述するキク科アザミ属植物を抽出処理することにより得ることができる。
【0020】
キク科アザミ属植物の抽出対象部位としては、例えば、葉、茎、根、根茎、果実、種子、種皮、花等を用いることができるが、好ましい一態様では葉である。キク科アザミ属植物の抽出部位は、必要に応じて、蒸熱、乾燥、焙煎、細切、粉砕等の前処理に供していてもよい。
【0021】
抽出処理については、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよく、例えば、溶媒抽出処理、超臨界抽出処理、水蒸気蒸留処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましい一態様として溶媒抽出処理が挙げられる。
【0022】
溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を抽出可能な溶媒であることを限度として特に制限されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類等の有機溶媒、及びこれらの有機溶媒と水の混合液が挙げられる。これらの抽出溶媒は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの抽出溶媒の中でも、好ましい一態様として、エタノール、又はエタノールと水の混合溶媒が挙げられる。
【0023】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒中に抽出対象部位を浸漬又は還流させて行えばよく、当業者であれば、抽出溶媒の使用量、抽出処理時の温度、抽出処理時間等については適宜設定できる。
【0024】
溶媒抽出処理後に残渣を除去することにより、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体を含む植物抽出物が得られる。残渣の除去は、例えば、吸引濾過、フィルタープレス、シリンダープレス、デカンター、遠心分離器、濾過遠心機等を用いて行うことができる。
【0025】
得られた抽出物は、必要に応じて、更に濃縮、乾燥、水洗浄、有機溶媒洗浄、脱塩、活性炭処理、再結晶法、分配精製、カラムクロマトグラフィー、真空蒸留等の濃縮・洗浄・精製処理に供することにより、不純物類を取り除いてもよい。これらの処理は、同一処理を複数回繰り返して実施してもよく、2以上の異なる処理を組み合わせて実施してもよい。更に、得られた抽出物は、更に粉末化、顆粒化、乳化等の処理に供して、所望の形状に調整してもよい。
【0026】
本開示のSGLT阻害剤におけるペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体の含有量としては、生体内でSGLTを阻害できる有効量であることを限度として特に限定されず、用途、剤型、投与形態等に応じて適宜設定することができる。
【0027】
[その他の添加成分]
本開示のSGLT阻害剤の一実施態様では、ペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体以外に、剤型や製剤形態等に応じて、他の添加成分を含有していてもよい。添加成分の種類や含有量については、剤型や製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0028】
[剤型・製剤形態]
本開示のSGLT阻害剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよく、SGLT阻害剤の製剤形態、投与方法等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
本開示のSGLT阻害剤の適用方法としては、特に限定されないが、経口摂取、経口投与、経血管内(動脈内又は静脈内)投与、経皮投与、経腸投与、経肺投与、鼻腔内投与等のいずれであってもよいが、好ましい一態様として、経口摂取又は経口投与が挙げられる。
【0030】
本開示のSGLT阻害剤の製剤形態としては、飲食品及び医薬品が挙げられる。
【0031】
本開示のSGLT阻害剤を飲食品の製剤形態にする場合、前記有効成分を、そのままで、他の食品素材や添加成分と組み合わせて、所望の形態に調製すればよい。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に限定されないが、具体的にはカプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント;栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;団子、アイス、シャーベット、グミ、キャンディー等の嗜好品等が例示される。これらの飲食品の中でも、好ましくは、サプリメント及び飲料が挙げられる。
【0032】
本開示のSGLT阻害剤を医薬品の製剤形態にする場合、前記有効成分を、そのままで、他の添加成分と組み合わせて、又は、投与形態に応じたデリバリー技術と組み合わせて、所望の形態に調製すればよい。このような医薬品としては、具体的には、ドリンク剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、シロップ剤等の内服用医薬品;リポソーム製剤、注射剤、経腸投与剤、点滴剤、点鼻剤、注入剤、輸液剤、坐剤等が挙げられる。これらの医薬品の中でも、好ましくは内服用医薬品が挙げられる。
【0033】
本開示のSGLT阻害剤が飲食品又は内服用医薬品の製剤形態である場合、有効成分であるペクトリナリゲニン及び/又はその配糖体の含有量としては、生体内でSGLTを阻害できる有効量であることを限度として特に限定されず、剤型や製剤形態に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~100質量%、好ましくは0.1~50質量%であり、より好ましくは1~30質量%が挙げられる。
【0034】
[用途]
本開示のSGLT阻害剤は、生体内でSGLTを阻害する用途に使用される。本開示のSGLT阻害剤の阻害対象となるSGLTのサブタイプは、SGLT1、SGLT2及びSGLT3のいずれであってもよいが、好ましくはSGLT1及びSGLT2、より好ましくはSGLT1が挙げられる。
【0035】
例えば、SGLT1の阻害によって、生体内でのグルコースの吸収を阻害又は遅延できるので本開示のSGLT阻害剤の一実施態様では、SGLT1阻害の用途で、高血糖が一因となって生じる疾患や症状の予防又は治療に使用できる。
【0036】
高血糖が一因となって生じる疾患や症状としては、例えば、糖尿病(1型及び2型の双方を含む)、耐糖能異常、空腹時血糖異常、糖尿病性合併症(例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害)、高インスリン血症、高脂血症、脂質代謝異常、アテローム性動脈硬化症、高尿酸血症、痛風、肥満(例えば、メタボリックシンドロームによる肥満)等が挙げられる。これらの中でも、本開示のSGLT阻害剤は、糖尿病及び糖尿病性合併症、とりわけ2型糖尿病の予防又は治療に好適である。
【0037】
本開示のSGLT阻害剤の適用量としては、特に限定されず、製剤形態、用途、投与対象者、期待される効果等に応じて、生体内でSGLTを阻害できる有効量を適宜設定すればよい。例えば、本開示のSGLT阻害剤を経口摂取又は経口投与する場合、摂取又は投与量としては、成人一日当たり、ペクトリナリゲニンが0.01~3,000 mg程度、好ましくは0.1~1,000 mg程度が挙げられる。本開示のSGLT阻害剤は、一日当たりの量が前述の範囲となるように、1回又は数回に分けて摂取又は投与すればよい。
【0038】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【実施例0039】
以下に実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0040】
試験例1:ペクトリナリゲニンのSGLT1阻害活性の評価
2mMの2DG(2-デオキシグルコース)を含むKRH(Krebs Ringer Hepes)緩衝液に、10μMのペクトリナリゲニン又は10μMのクロロゲン酸を添加した試験液を準備した。
【0041】
24ウェルプレートの各ウェルに、2 mg/mLのG418を含むHam's/F-12培地を用いてヒトSGLT1高発現CHO細胞(CHO細胞にヒトSGLT1発現ベクターを導入した組換細胞)を2.0×105 cells/wellとなるように播種し、37℃で一晩培養した。次いで、各ウェルの培養上清を除去し、前記試験液を各ウェルに0.5 ml添加し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、ウェル中の細胞を回収して洗浄した後に、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて細胞を溶解し、更に0.1Mの塩酸を用いて中和した。得られた細胞溶解液中の2DGをGlucose Uptake-Glo Assay kit (Promega)を用いて測定した。また、コントロールとしてペクトリナリゲニン及びクロロゲン酸を含まない試験液を用いて、同様に試験を行った。コントロールにおける細胞溶解液中の2DG量に対する各試験液における細胞溶解液中の2DG量の比率を算出し、2DG取込率とした。
【0042】
結果を図1に示す。この結果、ペクトリナリゲニンは、SGLT1阻害活性が知られているクロロゲン酸よりも2DGの取込み量を低減できており、優れたSGLT1阻害活性があることが確認された。
【0043】
試験例2:ペクトリナリゲニンの濃度とSGLT1阻害活性との関係の評価
2mMの2DGを含むKRH(Krebs Ringer Hepes)緩衝液に、1.0、2.5、5.0、10.0、及び25.0μMとなるようにペクトリナリゲニンを添加した試験液を使用して、前記試験例1と同様の方法で2DG取込率を求めた。
【0044】
結果を図2に示す。この結果、ペクトリナリゲニンは、濃度依存的に2DGの取込み量を低減できており、濃度依存的にSGLT1活性を阻害できることが確認された。
【0045】
試験例3:ペクトリナリゲニン配糖体のSGLT1阻害活性の評価
2mMの2DGを含むKRH(Krebs Ringer Hepes)緩衝液に、5μMのペクトリナリゲニン又は5μMのペクトリナリンを添加した試験液を使用して、前記試験例1と同様の方法で2DG取込率を求めた。
【0046】
結果を図3に示す。この結果、ペクトリナリンでも、コントロールに比べて2DGの取込み量の低下が認められ、ペクトリナリゲニンだけでなく、その配糖体でもSGLT1阻害活性があることが確認された。
図1
図2
図3