(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074334
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20220511BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184287
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】521351719
【氏名又は名称】東京晨美光学電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【弁理士】
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】徳能 康煕
(72)【発明者】
【氏名】楊 瑞東
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087PA05
2H087PA17
2H087PB05
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA34
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低背でありながらもFナンバーが小さく、諸収差を良好に補正することのできる撮像レンズを提供する。
【解決手段】物体側から順に、正の第1レンズL1、負の第2レンズL2、第3レンズL3、正の第4レンズL4および負の第5レンズL5を配置する。第4レンズL4の像面側の面を近軸において凸面に形成するとともに、第5レンズL5の物体側の面を、変曲点を有する非球面に形成し、次の各条件式を満足すること。f/Dep<2.0、1.2<T3/T2<1.8、15<νd3<35、-1.0<R5f/R5r<-0.3。但し、fはレンズ系全体の焦点距離、Depは入射瞳の直径、T2は第2レンズL2の光軸上の厚さ、T3は第3レンズL3の光軸上の厚さ、νd3は第3レンズL3のアッべ数、R5fは第5レンズL5の物体側の面の近軸曲率半径、R5rは第5レンズL5の像面側の面の近軸曲率半径。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子上に被写体像を形成する撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズとから構成され、
前記第4レンズの像面側の面は近軸において凸面であり、
前記第5レンズの物体側の面は、変曲点を有する非球面であり、
以下の条件式(1)~(4)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
f/Dep<2.0 (1)
1.2<T3/T2<1.8 (2)
15<νd3<35 (3)
-1.0<R5f/R5r<-0.3 (4)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
Dep:前記撮像レンズの入射瞳の直径、
T2:前記第2レンズの光軸上の厚さ、
T3:前記第3レンズの光軸上の厚さ、
νd3:前記第3レンズのアッべ数、
R5f:前記第5レンズの物体側の面の近軸曲率半径、
R5r:前記第5レンズの像面側の面の近軸曲率半径、
とする。
【請求項2】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
5.0<|f3|/f<95.0 (5)
但し、
f3:前記第3レンズの焦点距離、
とする。
【請求項3】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
-5.0<f23/f<-1.5 (6)
但し、
f23:前記第2レンズおよび前記第3レンズの合成焦点距離、
とする。
【請求項4】
以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
0.2<f34/f<1.0 (7)
但し、
f34:前記第3レンズおよび前記第4レンズの合成焦点距離、
とする。
【請求項5】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
0.02<|R2r/R3f|<1.0 (8)
但し、
R2r:前記第2レンズの像面側の面の近軸曲率半径、
R3f:前記第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、
とする。
【請求項6】
以下の条件式(9)を満足することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
0.01<D12/f<0.08 (9)
但し、
D12:前記第1レンズと前記第2レンズとの間の光軸上の距離、
とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子上に被写体像を形成する撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of Things)技術の進展により、スマートフォンや携帯電話機等の携帯情報機器はもとより、ゲーム機、家電製品、自動車等の多くの製品や機器がネットワークに繋がり、これらモノの間で様々な情報の共有が行われている。IoT環境の下では、モノに内蔵されたカメラからの画像情報を利用することにより様々なサービスの提供が可能となる。ネットワークで伝達される画像情報は年々増加の一途を辿っており、当該カメラに対しては小型化と共に高い解像力が要求される。
【0003】
特許文献1に記載の撮像レンズは5枚構成であり、正の屈折力を有する第1レンズ、負の屈折力を有する第2レンズ、負の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、および負の屈折力を有する第5レンズとから構成される。当該撮像レンズは、第1レンズ、第2レンズおよび第4レンズのそれぞれの焦点距離、第1レンズの軸上厚さ、第2レンズの物体側の面の形状、第5レンズの形状に関して一定の条件を満足することにより、広角化および小型化の両立を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第110531492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の撮像レンズによれば、小型でありながらも比較的良好に諸収差を補正できる。しかしながら、撮像レンズに要求される解像度は年々高くなってきており、高解像度への対応を考慮した場合、特許文献1に記載のレンズ構成では諸収差の補正の程度が不十分である。また近年では、光量が少ない環境下での撮影や、撮影時における被写体のぶれ抑制等への観点から、撮像レンズの低Fナンバー化が強く求められている。
【0006】
本発明の目的は、低背でありながらもFナンバーが小さく、諸収差を良好に補正することのできる撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像レンズは、撮像素子上に被写体像を形成する撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズとを備える。第4レンズの像面側の面は近軸において凸面であり、第5レンズの物体側の面は、変曲点を有する非球面である。
【0008】
本発明の撮像レンズでは、正の屈折力を有する第1レンズの像面側に、負の屈折力を有する第2レンズを配置する。これにより、撮像レンズの低背化を好適に図りつつ色収差を良好に補正できる。なお、本明細書において低背とは、光学全長、すなわち第1レンズの物体側の面から像面までの光軸上の距離と撮像素子の像面の対角長との比(全長対角比)が小さいことをいう。
【0009】
第5レンズの物体側の面を、変曲点を有する非球面に形成することにより、バックフォーカスを確保しつつ画像周辺部の像面湾曲および歪曲収差を良好に補正できる。第5レンズの当該形状によればまた、撮像レンズから出射した光線の撮像素子の像面への入射角度を主光線角度(CRA:Chief Ray Angle)の範囲内に抑制しつつ近軸および周辺の諸収差を良好に補正できる。
【0010】
なお、本発明において「レンズ」とは、屈折力を有する光学要素を指すものとする。よって、光の進行方向を変えるプリズムや平板のフィルタ等の光学要素は本発明の「レンズ」に含まれず、これら光学要素は適宜、撮像レンズの前後や各レンズ間に配置することができる。
【0011】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(1)を満足することが望ましい。
f/Dep<2.0 (1)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
Dep:撮像レンズの入射瞳の直径、
とする。
【0012】
ところで、夕暮れ等の光量が少ない環境下での撮影や、撮影時における被写体のぶれ抑制等を実現するためには、撮像レンズから得られる画像を明るくする必要がある。この点、条件式(1)を満足することによって撮像レンズに取り込まれる光量が増加することから、撮像レンズを通じて明るい画像を得ることが可能となる。
【0013】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(2)を満足することが望ましい。
1.2<T3/T2<1.8 (2)
但し、
T2:第2レンズの光軸上の厚さ、
T3:第3レンズの光軸上の厚さ、
とする。
【0014】
条件式(2)を満足することにより、像面湾曲、非点収差および倍率色収差を好ましい範囲内にバランスよく良好に補正できる。
【0015】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(3)を満足することが望ましい。
15<νd3<35 (3)
但し、
νd3:第3レンズのアッべ数、
とする。
【0016】
条件式(3)を満足することにより、軸上色収差および倍率色収差を良好に補正できる。
【0017】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(4)を満足することが望ましい。
-1.0<R5f/R5r<-0.3 (4)
但し、
R5f:第5レンズの物体側の面の近軸曲率半径、
R5r:第5レンズの像面側の面の近軸曲率半径、
とする。
【0018】
条件式(4)を満足することにより、バックフォーカスを確保しつつ、非点収差、像面湾曲およびコマ収差をバランスよく良好に補正できる。
【0019】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(5)を満足することが望ましい。
5.0<|f3|/f<95.0 (5)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
f3:第3レンズの焦点距離、
とする。
【0020】
条件式(5)を満足することにより、撮像レンズの低背化を図りつつ像面湾曲および歪曲収差を良好に補正できる。
【0021】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(6)を満足することが望ましい。
-5.0<f23/f<-1.5 (6)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
f23:第2レンズおよび第3レンズの合成焦点距離、
とする。
【0022】
条件式(6)を満足することにより、バックフォーカスを確保しつつ像面湾曲、非点収差および歪曲収差を良好に補正できる。
【0023】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(7)を満足することが望ましい。
0.2<f34/f<1.0 (7)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
f34:第3レンズおよび第4レンズの合成焦点距離、
とする。
【0024】
条件式(7)を満足することにより、撮像レンズの低背化を図りつつ像面湾曲およびコマ収差を良好に補正できる。
【0025】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(8)を満足することが望ましい。
0.02<|R2r/R3f|<1.0 (8)
但し、
R2r:第2レンズの像面側の面の近軸曲率半径、
R3f:第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、
とする。
【0026】
条件式(8)を満足することにより、倍率色収差、像面湾曲およびコマ収差を好ましい範囲内にバランスよく良好に補正できる。
【0027】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(9)を満足することが望ましい。
0.01<D12/f<0.08 (9)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
D12:第1レンズと第2レンズとの間の光軸上の距離、
とする。
【0028】
条件式(9)を満足することにより、像面湾曲、非点収差およびコマ収差をバランスよく良好に補正できる。
【0029】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(10)を満足することが望ましい。
0.1<D12/D23<0.6 (10)
但し、
D12:第1レンズと第2レンズとの間の光軸上の距離、
D23:第2レンズと第3レンズとの間の光軸上の距離、
とする。
【0030】
条件式(10)を満足することにより、像面湾曲および非点収差を良好に補正できる。
【0031】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(11)を満足することが望ましい。
0.5<D34/D23<2.5 (11)
但し、
D23:第2レンズと第3レンズとの間の光軸上の距離、
D34:第3レンズと第4レンズとの間の光軸上の距離、
とする。
【0032】
条件式(11)を満足することにより、像面湾曲、非点収差および歪曲収差を好ましい範囲内にバランスよく良好に補正できる。
【0033】
上記構成の撮像レンズは次の条件式(12)を満足することが望ましい。
0.2<D34/T4<1.5 (12)
但し、
D34:第3レンズと第4レンズとの間の光軸上の距離、
T4:第4レンズの光軸上の厚さ、
とする。
【0034】
条件式(12)を満足することにより、撮像レンズの低背化を図りつつ像面湾曲および非点収差を良好に補正できる。
【0035】
上記構成の撮像レンズは、色収差をさらに良好に補正するため次の条件式(13)を満足することが望ましい。
35<νd4<85 (13)
但し、
νd4:第4レンズのアッべ数、
とする。
【0036】
上記構成の撮像レンズは、低Fナンバー化をより好適に図るため、次の条件式(14)を満足することが望ましい。
0.5<Dep/ih<0.8 (14)
但し、
Dep:撮像レンズの入射瞳の直径、
ih:撮像素子の像面の最大像高、
とする。
【0037】
本発明の撮像レンズは撮像レンズの低背化をより好適に図るためにも、次の条件式で示される全長対角比を満足することが望ましい。
TTL/(2×ih)<1.73
但し、
TTL:第1レンズの物体側の面から像面までの光軸上の距離、
ih:撮像素子の像面の最大像高、
とする。
【0038】
なお、撮像レンズと像面との間には通常、赤外線カットフィルターやカバーガラス等の挿入物が配置されることも多いが、本明細書ではこれら挿入物の光軸上の距離については空気換算長を用いる。
【0039】
本発明の撮像レンズにおいては、第1レンズから第5レンズまでの各レンズを、空気間隔を隔てて配列することが望ましい。各レンズが空気間隔を隔てて配列されることにより、本発明の撮像レンズは接合レンズを一枚も含まないレンズ構成になる。このようなレンズ構成では、撮像レンズを構成する5枚のレンズの全てをプラスチック材料から形成できるため、撮像レンズの製造コストを抑制できる。
【0040】
本発明の撮像レンズにおいては、第1レンズから第5レンズまでの各レンズの両面を非球面に形成することが望ましい。各レンズの両面を非球面に形成することにより、近軸からレンズ周辺部に亘って諸収差をより良好に補正できる。特にレンズ周辺部においては非球面による収差補正能力が高い。
【0041】
本発明の撮像レンズは画角を2ωとしたとき、75°≦2ωを満足することが望ましい。本条件式を満足することにより撮像レンズの広角化が図られ、撮像レンズの低背化とともに広角化を実現できる。
【0042】
本明細書においては、各レンズの面形状を曲率半径の符号を用いて特定する。曲率半径が正か負かは一般的な定義、すなわち光の進行方向を正として、曲率半径の中心がレンズ面からみて像面側にある場合には曲率半径を正とし、物体側にある場合には曲率半径を負とする定義に従う。よって、「曲率半径が正となる物体側の面」とは、物体側の面が凸面であることを指し、「曲率半径が負となる物体側の面」とは、物体側の面が凹面であることを指す。また、「曲率半径が正となる像面側の面」とは、像面側の面が凹面であることを指し、「曲率半径が負となる像面側の面」とは、像面側の面が凸面であることを指す。なお、本明細書での曲率半径は近軸曲率半径を指しており、レンズ断面図におけるレンズの概形にそぐわない場合がある。
【発明の効果】
【0043】
本発明の撮像レンズによれば、諸収差が良好に補正された高い解像度を有しながらもFナンバーが小さく、小型のカメラへの組込みに特に適した撮像レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】数値実施例1に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図3】数値実施例2に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図5】数値実施例3に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図7】数値実施例4に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図8】
図7に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図9】数値実施例5に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図10】
図9に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図11】数値実施例6に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図12】
図11に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図13】数値実施例7に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図14】
図13に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図15】数値実施例8に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図16】
図15に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図17】数値実施例9に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図18】
図17に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図19】数値実施例10に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図20】
図19に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図21】数値実施例11に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。
【
図22】
図21に示す撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、
図3、
図5、
図7、
図9、
図11、
図13、
図15、
図17、
図19および
図21は、本実施の形態の数値実施例1~11に係る撮像レンズの概略構成を示す断面図である。いずれの数値実施例も基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは数値実施例1の断面図を参照しながら本実施の形態に係る撮像レンズについて説明する。
【0046】
図1に示すように本実施の形態に係る撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、第3レンズL3と、正の屈折力を有する第4レンズL4と、負の屈折力を有する第5レンズL5とを備える。第1レンズL1から第5レンズL5までの各レンズは空気間隔を隔てて配列する。第5レンズL5と撮像素子の像面IMとの間にはフィルタIRを配置する。このフィルタIRは省略することも可能である。なお、本明細書においては特に言及しない限り、各レンズの屈折力とは近軸における屈折力を指すものとする。
【0047】
第1レンズL1は、物体側の面の曲率半径r2および像面側の面の曲率半径r3が共に正となる形状を有する。第1レンズL1は、近軸において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状である。第1レンズL1の形状は本数値実施例1に係る形状に限定されない。第1レンズL1の形状は、その屈折力が正となるような形状であればよい。例えば第1レンズL1の形状としては、曲率半径r2が正となり曲率半径r3が負となる形状、すなわち近軸において両凸レンズとなる形状でもよい。
【0048】
第2レンズL2は、物体側の面の曲率半径r4が負となり像面側の面の曲率半径r5(=R2r)が正となる形状を有する。第2レンズL2は、近軸において両凹レンズとなる形状である。第2レンズL2の形状は本数値実施例1に係る形状に限定されない。第2レンズL2の形状は、当該屈折力が負となるような形状であればよい。数値実施例4、5、7~9の第2レンズL2は、近軸において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状の例である。第2レンズL2の形状としてはこの他にも、曲率半径r4およびr5が共に負となり、近軸において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状でもよい。撮像レンズの低背化の観点からは、曲率半径r4が正となる形状が望ましい。
【0049】
第3レンズL3は正の屈折力を有する。この第3レンズL3の屈折力は正に限定されない。数値実施例4~9に係る撮像レンズは、第3レンズL3の屈折力が負となるレンズ構成の例である。
【0050】
第3レンズL3は、物体側の面の曲率半径r6(=R3f)および像面側の面の曲率半径r7が共に負となる形状を有する。第3レンズL3は、近軸において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状である。第3レンズL3の形状は、本数値実施例1に係る形状に限定されない。数値実施例5、7および8の第3レンズL3は、近軸において両凹レンズとなる形状の例である。また、数値実施例10の第3レンズL3は、近軸において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状の例であり、数値実施例11の第3レンズL3は、近軸において両凸レンズとなる形状の例である。
【0051】
第4レンズL4は、物体側の面の曲率半径r8および像面側の面の曲率半径r9が共に負となる形状を有する。第4レンズL4は、近軸において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状である。第4レンズL4の形状は本数値実施例1に係る形状に限定されず、その像面側の面が近軸において凸面となる形状であればよい。数値実施例6の第4レンズL4は、近軸において両凸レンズとなる形状の例である。
【0052】
第5レンズL5は、物体側の面の曲率半径r10(=R5f)が負となり、像面側の面の曲率半径r11(=R5r)が正となる形状を有する。第5レンズL5は、近軸において両凹レンズとなる形状を有する。第5レンズL5の形状は本数値実施例1に係る形状に限定されない。第5レンズL5の形状としては、近軸において物体側に凸面を向けたメニスカスレンズとなる形状や、近軸において物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとなる形状でもよい。なお、撮像レンズの低背化を図りつつバックフォーカスを確保する観点からは、第5レンズL5の像面側の面を、曲率半径r11が正となる形状、すなわち近軸において凹面に形成することが望ましい。
【0053】
第5レンズL5の両面は、変曲点が設けられた非球面である。ここで変曲点とは、曲線上で曲率の符号が変化する点を指し、レンズ面上の曲線で曲がる方向が変わる点を指すものとする。なお、本実施の形態に係る撮像レンズにおける第5レンズL5の像面側の面は、極点を有する非球面形状である。第5レンズL5の有するこのような形状により、軸上の色収差のみならず軸外の倍率色収差が良好に補正されるとともに、撮像レンズから出射した光線の像面IMへの入射角度がCRAの範囲内に好適に抑制される。なお、要求される光学性能や撮像レンズの低背化の程度によっては、第5レンズL5の像面側の面を、変曲点の無い非球面に形成するようにしてもよい。
【0054】
本実施の形態に係る撮像レンズは、以下に示す条件式(1)~(14)を満足する。
f/Dep<2.0 (1)
1.2<T3/T2<1.8 (2)
15<νd3<35 (3)
-1.0<R5f/R5r<-0.3 (4)
5.0<|f3|/f<95.0 (5)
-5.0<f23/f<-1.5 (6)
0.2<f34/f<1.0 (7)
0.02<|R2r/R3f|<1.0 (8)
0.01<D12/f<0.08 (9)
0.1<D12/D23<0.6 (10)
0.5<D34/D23<2.5 (11)
0.2<D34/T4<1.5 (12)
35<νd4<85 (13)
0.5<Dep/ih<0.8 (14)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離、
Dep:撮像レンズの入射瞳の直径、
f3:第3レンズL3の焦点距離、
f23:第2レンズL2および第3レンズL3の合成焦点距離、
f34:第3レンズL3および第4レンズL4の合成焦点距離、
T2:第2レンズL2の光軸X上の厚さ、
T3:第3レンズL3の光軸X上の厚さ、
T4:第4レンズL4の光軸X上の厚さ、
νd3:第3レンズL3のアッべ数、
νd4:第4レンズL4のアッべ数、
R2r:第2レンズL2の像面側の面の近軸曲率半径、
R3f:第3レンズL3の物体側の面の近軸曲率半径、
R5f:第5レンズL5の物体側の面の近軸曲率半径、
R5r:第5レンズL5の像面側の面の近軸曲率半径、
D12:第1レンズL1と第2レンズL2との間の光軸X上の距離、
D23:第2レンズL2と第3レンズL3との間の光軸X上の距離、
D34:第3レンズL3と第4レンズL4との間の光軸X上の距離、
ih:撮像素子の像面IMの最大像高、
とする。
【0055】
本実施の形態に係る撮像レンズは、次の条件式で示される全長対角比を満足する。
TTL/(2×ih)<1.73
但し、
TTL:第1レンズL1の物体側の面から像面IMまでの光軸X上の距離、
とする。
【0056】
また、本実施の形態に係る撮像レンズは次の条件式を満足する。
75°≦2ω
但し、
ω:半画角、
とする。
【0057】
なお、上記各条件式の全てを満たす必要はなく、上記各条件式のそれぞれを単独に満たすことにより、各条件式に対応する作用効果をそれぞれ得ることができる。
【0058】
本実施の形態に係る撮像レンズは、以下の条件式(6a)~(8a)、(10a)~(12a)および(14a)を満足することにより、より好ましい効果を奏する。
-3.0<f23/f<-1.2 (6a)
0.4<f34/f<0.8 (7a)
0.02<|R2r/R3f|<0.8 (8a)
0.2<D12/D23<0.5 (10a)
0.7<D34/D23<2.2 (11a)
0.4<D34/T4<1.3 (12a)
0.6<Dep/ih<0.8 (14a)
【0059】
これら条件式(6a)~(14a)については、その下限値または上限値として、それぞれ対応する条件式(6)~(14)の下限値や上限値を適用するようにしてもよい。
【0060】
本実施の形態では各レンズのレンズ面を非球面で形成する。これら非球面の非球面式を次式に示す。
【数1】
但し、
Z:光軸方向の距離、
H:光軸に直交する方向の光軸からの距離、
C:近軸曲率(=1/r、r:近軸曲率半径)、
k:円錐定数、
An:第n次の非球面係数、
とする。
【0061】
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの数値実施例を示す。基本的なレンズデータを示す各表において、fはレンズ系全体の焦点距離、FnoはFナンバー、ωは半画角、ihは像面IMの最大像高、TTLは第1レンズL1の物体側の面から像面IMまでの光軸上の距離をそれぞれ示す。また、iは物体側より数えた面番号、rは近軸曲率半径、dは光軸X上の面間距離、ndは基準波長588nmにおける屈折率、νdは当該基準波長におけるアッベ数である。なお、面番号に*(アスタリスク)の符号が付加された面は非球面であることを示す。
【0062】
【0063】
【0064】
図2は、球面収差(mm)、非点収差(mm)および歪曲収差(%)をそれぞれ示す収差図である。非点収差図および歪曲収差図には基準波長(588nm)における収差量を示す。また、非点収差図にあってはサジタル像面(S)およびタンジェンシャル像面(T)をそれぞれ示す(
図4、
図6、
図8、
図10、
図12、
図14、
図16、
図18、
図20および
図22においても同じ)。
図2に示されるように、本数値実施例1に係る撮像レンズによれば諸収差を良好に補正できる。
【0065】
【0066】
【0067】
図4に示されるように、本数値実施例2に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0068】
【0069】
【0070】
図6に示されるように、本数値実施例3に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0071】
【0072】
【0073】
図8に示されるように、本数値実施例4に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0074】
【0075】
【0076】
図10に示されるように、本数値実施例5に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0077】
【0078】
【0079】
図12に示されるように、本数値実施例6に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0080】
【0081】
【0082】
図14に示されるように、本数値実施例7に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0083】
【0084】
【0085】
図16に示されるように、本数値実施例8に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0086】
【0087】
【0088】
図18に示されるように、本数値実施例9に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0089】
【0090】
【0091】
図20に示されるように、本数値実施例10に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0092】
【0093】
【0094】
図22に示されるように、本数値実施例11に係る撮像レンズによっても諸収差を良好に補正できる。
【0095】
以上説明したように、本実施の形態に係る撮像レンズによれば、Fナンバーが小さく全長対角比が小さいにも拘わらず、諸収差を良好に補正できる。以下、本実施の形態に係る各数値実施例の条件式(1)~(14)に対応する値(条件式対応値)を示す。
【表23】
【0096】
したがって、上記実施の形態に係る撮像レンズをスマートフォン、携帯電話機および携帯情報端末等の携帯情報機器や、ゲーム機、家電製品、自動車等に内蔵されるカメラの撮像光学系に適用した場合、当該カメラの高機能化と小型化の両立を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、スマートフォン等の携帯情報機器、医療機器、ゲーム機、家電製品および自動車等に内蔵される比較的小型のカメラに組み込まれる撮像レンズに適用できる。
【符号の説明】
【0098】
X 光軸
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
IR フィルタ
IM 像面