(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074335
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/136 20100101AFI20220511BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220511BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220511BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20220511BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220511BHJP
H01M 10/36 20100101ALI20220511BHJP
【FI】
H01M4/136
H01M4/58
H01M4/66 A
H01M4/64 A
H01M4/52
H01M10/36 A
H01M10/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184288
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】荒井 創
(72)【発明者】
【氏名】池澤 篤憲
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AS02
5H017CC03
5H017EE06
5H029AJ02
5H029AK02
5H029AL01
5H029AM00
5H029DJ07
5H029EJ04
5H029HJ02
5H050AA02
5H050BA08
5H050CA03
5H050CB05
5H050DA04
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】良好なプロトン挿入脱離特性を備える水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様にかかる水溶液系二次電池用電極は、プロトンを挿入・脱離可能な水溶液系二次電池用電極であって、集電体と、集電体の上に形成された合剤層と、を備え、合剤層が少なくとも金属硫化物を含むことを特徴としている。本発明の一態様にかかる水溶液系二次電池は、上述の水溶液系二次電池用電極からなる正極および負極と、水溶液系の電解質と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトンを挿入・脱離可能な水溶液系二次電池用電極であって、
集電体と、
前記集電体の上に形成された合剤層と、を備え、
前記合剤層が少なくとも金属硫化物を含むことを特徴とする、
水溶液系二次電池用電極。
【請求項2】
前記金属硫化物が、TaS2、CoS2、TiS2、VS2、NbS2、MoS2、WS2、及びFeS2からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の水溶液系二次電池用電極。
【請求項3】
前記集電体がカーボン板である、請求項1または2に記載の水溶液系二次電池用電極。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水溶液系二次電池用電極からなる正極および負極と、
水溶液系の電解質と、を備える、
水溶液系二次電池。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水溶液系二次電池用電極からなる負極と、
水酸化ニッケルを含む正極と、
水溶液系の電解質と、を備える、
水溶液系二次電池。
【請求項6】
前記電解質が、硫酸水溶液、硝酸水溶液、水酸化カリウム水溶液、及び硝酸カリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項4または5に記載の水溶液系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在最も幅広く使われている二次電池(蓄電池)であるリチウムイオン二次電池は、結晶構造を保ったままリチウムイオンが出入りする、挿入脱離型の電極材料を正極・負極に有し、高い可逆性と充放電効率を有する優れた二次電池である(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、リチウムイオン二次電池は、酸化力の極めて強い正極と還元力の極めて強い負極からなり、かつ有機溶媒を主体とする電解質が可燃性であるため安全性の課題がある。このため、安全性を確保するために保護回路等を設ける必要がありコストが増加する。したがって、再生可能エネルギーを貯蔵するような大規模用途には、正極の酸化力・負極の還元力に基づく起電力ないしエネルギー密度よりも、安全性を重視した二次電池が望ましい。すなわち、リチウムイオン二次電池に代わる、安全で安価な水溶液系の二次電池が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水溶液系二次電池用電極には亜鉛等の卑金属やLaNi5に代表される水素吸蔵合金が提案されているが、リチウムイオン二次電池の概念を適用した挿入脱離型材料の材料探索はまだ端緒段階である。
【0006】
本発明の目的は、良好なプロトン挿入脱離特性を備える水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる水溶液系二次電池用電極は、プロトンを挿入・脱離可能な水溶液系二次電池用電極であって、集電体と、前記集電体の上に形成された合剤層と、を備え、前記合剤層が少なくとも金属硫化物を含むことを特徴としている。
【0008】
上述の水溶液系二次電池用電極において、前記金属硫化物が、TaS2、CoS2、TiS2、VS2、NbS2、MoS2、WS2、及びFeS2からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0009】
上述の水溶液系二次電池用電極において、前記集電体がカーボン板であってもよい。
【0010】
本発明の一態様にかかる水溶液系二次電池は、上述の水溶液系二次電池用電極からなる正極および負極と、水溶液系の電解質と、を備える。
【0011】
本発明の他の態様にかかる水溶液系二次電池は、上述の水溶液系二次電池用電極からなる負極と、水酸化ニッケルを含む正極と、水溶液系の電解質と、を備える。
【0012】
上述の水溶液系二次電池において、前記電解質が、硫酸水溶液、硝酸水溶液、水酸化カリウム水溶液、及び硝酸カリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、良好なプロトン挿入脱離特性を備える水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態にかかる水溶液系二次電池用電極の構成例を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる水溶液系二次電池の構成例を示す模式図である。
【
図3】実施例1にかかる電極(TaS
2)のサイクリックボルタモグラムの測定結果である。
【
図4】実施例2にかかる電極(CoS
2)のサイクリックボルタモグラムの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる水溶液系二次電池用電極の構成例を示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる水溶液系二次電池用電極1(以下、単に電極1とも記載する)は、集電体11と、集電体11の上に形成された合剤層12と、を備える。本実施の形態にかかる電極1は、プロトンを挿入・脱離可能な水溶液系二次電池用の電極である。
【0016】
集電体11は、合剤層12を保持するとともに、合剤層12に電荷を供給・回収する機能を備える。集電体11は、導電性の高い金属箔や金属板を用いて構成することができる。具体的には、集電体11として、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金、ニッケル、チタン、銅など用いることができる。また、本実施の形態では、集電体11としてカーボン板を用いてもよい。集電体11にカーボン板を用いた場合は、副反応である水素発生による集電体の水素脆性劣化を抑制できる。
【0017】
合剤層12は、集電体11の上に形成されており、少なくとも活物質として金属硫化物を含んでいる。本実施の形態において金属硫化物は、TaS2、CoS2、TiS2、VS2、NbS2、MoS2、WS2、及びFeS2からなる群から選択される少なくとも一種である。本実施の形態では特に、活物質としてTaS2、CoS2を用いることが好ましい。なお、合剤層12に使用する活物質は上述の金属硫化物に限定されることはなく、これら以外の金属硫化物を用いてもよい。また、合剤層12に用いる活物質は、電極1の極性に応じて適宜選択することができる。また、合剤層12に用いる活物質は、ボールミル等を用いて粉砕し、表面積の高い微粉末とすることにより、反応性を高めることができる。
【0018】
合剤層12はバインダを含んでいてもよい。バインダには、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを用いてもよい。バインダの金属硫化物に対する割合は、例えば、1質量%以上20質量%以下、好ましくは5質量%以上15質量%以下、更に好ましくは8質量%以上12質量%以下とすることができる。
【0019】
また、合剤層12は導電材を含んでいてもよい。導電材は合剤層12中に電子伝導パスを形成する材料であり、例えば、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛等を用いることができる。なお、導電材を添加した場合は、副反応によって水素が発生する場合もある。この場合は、導電材を添加することなく、合剤層12を構成することが好ましい。
【0020】
次に、本実施の形態にかかる電極の製造方法について説明する。本実施の形態にかかる電極を製造する際は、まずスラリーを形成する。具体的には、活物質である金属硫化物、バインダ、及び溶媒(必要に応じて導電材を添加してもよい)を混合して混練する。溶媒には、例えば、2-プロパノール、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。その後、混練後のスラリーを集電体11の上に塗布して乾燥させる。その後、集電体11に形成した合剤層12をプレスすることで、本実施の形態にかかる電極1を製造することができる。
【0021】
次に、本実施の形態にかかる水溶液系二次電池について説明する。
図2は、本実施の形態にかかる水溶液系二次電池の構成例を示す模式図である。
図2に示すように、本実施の形態にかかる水溶液系二次電池20は、正極21、負極22、及び電解質23を備える。正極21、負極22、及び電解質23は、電池筐体24に収容されている。正極21には正極引出電極26が取り付けられている。正極引出電極26は電池筐体24の外部に露出するように配置されている。負極22には負極引出電極27が取り付けられている。負極引出電極27は電池筐体24の外部に露出するように配置されている。正極引出電極26および負極引出電極27は、リード線を介して負荷28に接続されている。
【0022】
本実施の形態にかかる水溶液系二次電池20は、正極21と負極22との間をプロトン(H
+)が移動するととともに、正極21および負極22においてプロトンが挿入・脱離することで充放電される二次電池である。具体的には、
図2に示すように、放電の際は、負極22からプロトンが脱離し、この脱離したプロトンが負極22から正極21に電解質23中を移動して正極21にプロトンが挿入される。このとき電子は負極22から、負極引出電極27、リード線、負荷28、及び正極引出電極26を通過して正極21へと移動する。一方、充電の際は、正極21からプロトンが脱離し、この脱離したプロトンが正極21から負極22に電解質23中を移動して負極22にプロトンが挿入される。
【0023】
本実施の形態にかかる水溶液系二次電池20では、電解質23としてイオン導電率の高い電解質を使用することが好ましい。例えば、電解質23に用いる水溶液として、硫酸水溶液、硝酸水溶液、水酸化カリウム水溶液、及び硝酸カリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0024】
本実施の形態にかかる水溶液系二次電池20では、上述した本実施の形態にかかる電極を用いて正極21および負極22を構成してもよい。この場合は、それぞれ異なる活物質を用いて電極1を形成し、参照極に対する電位が高い方の電極1を正極21とし、参照極に対する電位が低い方の電極を負極22とする。なお、参照極に対する電位は、使用する活物質に応じて異なる。本実施の形態では、正極21と負極22との電位差が大きくなるような組合せの活物質を選択することが好ましい。
【0025】
また、本実施の形態にかかる水溶液系二次電池20では、上述した本実施の形態にかかる電極1を用いて負極22を構成し、水酸化ニッケルを活物質として含む電極を用いて正極21を構成してもよい。例えば、正極21に水酸化ニッケルを用いて電池を形成した後、この電池を充電してプロトンを負極22に挿入して二次電池として機能させる方法は、安定性の高い放電状態で電池生産できる点でメリットが大きい。このためには負極22の金属硫化物の中心金属の形式価数は最初に高価数側の3価もしくは4価であることが望ましい。本実施の形態ではこのような理由から、金属硫化物を用いた電極を負極として用いることが好ましい。金属硫化物(MS2)を用いた場合は、中心金属Mの価数を4価とすることができる。
【0026】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明では、金属硫化物を用いて電極を構成している。金属硫化物は、充放電時にプロトンを挿入・脱離可能な材料であり、良好なプロトン挿入脱離特性を有する。したがって本実施の形態にかかる発明により、良好なプロトン挿入脱離特性を有する水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池を提供することができる。
【0027】
特に、本実施の形態にかかる電極を用いた水溶液系二次電池は、電解質が不燃性であるため安全性を確保することができ、また、長寿命・高効率であるとともに安価であるので、再生可能エネルギーを貯蔵するような大規模な二次電池に好適に用いることができる。
【0028】
なお、上述の本実施の形態にかかる電極では、活物質として金属硫化物を用いた場合について説明した。しかしながら本実施の形態にかかる電極では、活物質として、オキシハイドライドMOOH、オキシフルオライドMOF、三フッ化物MF3、三酸化物MO3、ホウ酸塩MBO3、リン酸塩MPO4(Mは遷移系列金属)を用いてもよい。ここでMはプロトンの挿入脱離に伴い、2価/3価/4価の酸化還元反応を行う。
【実施例0029】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0030】
<実施例1>
実施例1としてTaS2を含む電極を作製した。
まず、活物質としてTaS2(高純度化学研究所社製)を、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR:JSR社製)をそれぞれ準備した。そして、TaS2とSBRを混合し、さらに2-プロパノールを加えてスラリーを作製した。このときのTaS2とSBRの割合は、TaS2を90質量%、SBRを10質量%とした。その後、作製したスラリーを集電体であるカーボン板に塗布し、60℃で5時間以上、加熱・乾燥して合剤層を形成した。その後、集電体上に形成した合剤層を10MPaの圧力でプレスすることで、実施例1にかかる電極を作製した。
【0031】
<実施例1にかかるサンプルの評価>
以下の方法を用いて実施例1にかかるサンプルを評価した。
実施例1にかかる電極(TaS2)を作用極とする三極式セル(試験セル)を構築して、サイクリックボルタモグラムを測定した。試験セルには、ガラス製容器を用いた。電解質(電解液)には重量濃度50%の硫酸水溶液(ナカライテスク社製)を用いた。参照極には、塩化カリウム飽和溶液に浸漬した銀塩化銀電極を用いた。以下の電位はすべて、この参照極に対する電位である。対極には白金線を用いた。電位走査速度は10mV/sとした。
【0032】
図3は、実施例1にかかる電極(TaS
2)のサイクリックボルタモグラムの測定結果である。
図3に示すように、開放電位は約0.2Vであり、マイナス方向に電位を走査すると、-0.2V付近より還元電流が流れ出し、-0.4V付近で還元電流が最大となった。また、電極の表面から水素と見られる気泡が発生した。-0.6Vまで掃引した後、プラス方向に電位を走査すると、-0.4V付近から酸化電流が流れ出し、-0.2V付近で酸化電流が最大となり、0V付近で酸化電流がほぼゼロとなった。これらのことから、実施例1にかかる電極(TaS
2)は、-0.3V付近に酸化還元電位を有する可逆電極として機能することが分かった。
【0033】
次に、同じセルを用いて、-0.4Vまで電位を走査したのち、-0.4Vにて連続的に1時間還元を行い、その後、電極を取り出した。還元前後の電極(TaS2)のエックス線回折パターンを測定したところ、還元前の電極ではTaS2が観察された。また、還元後の電極では、H0.77TaS2に相当するピークが観察された(C. Ritter et al., Solid State Ionics. 20, 283 (1986).参照)。このとき、(006)のピークにおいては、面間隔が0.60nmから0.62nmに増えていた。この結果から、実施例1にかかる電極(TaS2)では、構造を保ったままプロトンの挿入が起こっていることが示唆された。このことから、実施例1にかかる電極(TaS2)は、還元時にプロトンが挿入され、酸化時にはその逆反応でプロトンが脱離される電極として機能していることが示された。
【0034】
<実施例2>
実施例2としてCoS2を含む電極を作製した。
まず、活物質としてCoS2(アルファ・エイサー社製)を、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR:JSR社製)をそれぞれ準備した。そして、CoS2とSBRを混合し、さらに2-プロパノールを加えてスラリーを作製した。このときのCoS2とSBRの割合は、CoS2を90質量%、SBRを10質量%とした。その後、作製したスラリーを集電体であるカーボン板に塗布し、60℃で5時間以上、加熱・乾燥して合剤層を形成した。その後、集電体上に形成した合剤層を10MPaの圧力でプレスすることで、実施例2にかかる電極を作製した。
【0035】
<実施例2にかかるサンプルの評価>
以下の方法を用いて実施例2にかかるサンプルを評価した。
実施例2にかかる電極(CoS2)を作用極とする三極式セル(試験セル)を構築して、サイクリックボルタモグラムを測定した。試験セルには、ガラス製容器を用いた。電解質(電解液)には重量濃度50%の硫酸水溶液(ナカライテスク社製)を用いた。参照極には、塩化カリウム飽和溶液に浸漬した銀塩化銀電極を用いた。以下の電位はすべて、この参照極に対する電位である。対極には白金線を用いた。電位走査速度は10mV/sとした。
【0036】
図4は、実施例2にかかる電極(CoS
2)のサイクリックボルタモグラムの測定結果である。
図4に示すように、開放電位は約+0.5Vであり、マイナス方向に電位を走査すると、0.0V付近より還元電流が流れ出し、-0.2V付近において平坦を保った後、-0.4V付近から水素と見られる気泡が発生した。その後、プラス方向に電位を走査すると、-0.2V付近から酸化電流が流れ出し、+0.2V付近で最大となり、+0.4V付近でほぼ酸化電流がゼロとなった。実施例2にかかる電極(CoS
2)においても、実施例1にかかる電極(TaS
2)と類似した挙動を示したことから、実施例2にかかる電極(CoS
2)は、0.0V付近に酸化還元電位を有するプロトン挿入脱離型の可逆電極として機能することが示された。
【0037】
<二次電池>
次に、水溶液系二次電池(フルセル)を作製した。フルセルには、実施例1にかかる電極(TaS2)、実施例2にかかる電極(CoS2)、白金線、及び銀塩化銀電極の4つの電極を用いた。具体的には、実施例1にかかる電極(TaS2)を作用極、白金線を対極、銀塩化銀電極を参照極とする三極式セルを構築し、-0.4Vまで電位を走査した。その後、-0.4Vにて連続的に1時間、還元を行うことで、実施例1にかかる電極(TaS2)にプロトンを挿入した。
【0038】
続いて、実施例1にかかる電極(TaS2)を負極、実施例2にかかる電極(CoS2)を正極とする二次電池を構成して、放電試験を行った。電流を1mAとしたところ、約0.2Vの起電力が得られ、1時間に渡って平坦な放電が可能であった。また1mAの電流でこの二次電池を1時間にわたって充電し、その後、放電したところ、再び約0.2Vの起電力が得られ、1時間に渡って放電が可能であった。この放電-充電の操作を10回にわたって繰り返したところ、毎回同様に約0.2Vの起電力が得られ、1時間の放電が可能であった。
【0039】
したがって、実施例1にかかる電極(TaS2)を負極、実施例2にかかる電極(CoS2)を正極とする二次電池が、プロトン挿入脱離型電極を組み合わせたプロトン移動型二次電池として作動することが確認された。
【0040】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。