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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074371
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184343
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柳原 俊太郎
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC13
3D333CC30
3D333CC33
3D333CD06
3D333CD07
3D333CD09
3D333CD37
3D333CE17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板の水濡れを抑制することができるセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置24は、ピニオンシャフト13と一体的に回転する主動歯車46と、主動歯車46に噛み合う従動歯車52,53と、従動歯車52,53の回転角を検出する磁気センサ56,57が設けられた基板61とを有している。センサハウジング31は、ピニオンシャフト13が貫通する第1のハウジング部材31Aと、従動歯車52,53および基板61が収容される第2のハウジング部材31Bとを有している。第2のハウジング部材31Bの内部は隔壁35によって第1の収容室33Aと第2の収容室33Bとに区画されている。鉛直上側に位置する第1の収容室33Aには、従動歯車52,53が第1のハウジング部材31Aに設けられた連通口36を介して主動歯車46に噛み合った状態で収容される。鉛直下側に位置する第2の収容室33Bには基板61が収容される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象であるシャフトと一体的に回転する主動歯車と、
前記主動歯車の回転に連動して回転する従動歯車と、
前記従動歯車の回転角度を検出する検出器が設けられた基板と、
前記シャフトが貫通する第1のハウジング部材と、
前記第1のハウジング部材に連結された状態で前記従動歯車および前記基板が収容される第2のハウジング部材と、
前記第2のハウジング部材の内部を鉛直方向における上下2つの収容室に区画する隔壁と、を有し、
鉛直方向における上側に位置する第1の収容室には前記従動歯車が前記第1のハウジング部材に設けられた連通口を介して前記主動歯車に噛み合った状態で収容される一方、
鉛直方向における下側に位置する第2の収容室には前記基板が収容されているセンサ装置。
【請求項2】
隔壁は、前記従動歯車を回転可能に支持する孔を有し、
前記従動歯車には前記孔を塞ぐかたちで覆う閉塞部が設けられている請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記隔壁は、鉛直方向における上側へ開口する凹部が設けられることにより前記第2の収容室側へ向けて突出する部分を有し、前記孔は前記隔壁における前記凹部が設けられた部分に設けられていることを前提として、
前記閉塞部は、鉛直方向における上側へ開口する有底円筒状をなしていて、前記凹部に遊びを持って嵌められている請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記凹部の少なくとも内底面には前記孔を中心とする同心円状に設けられた環状の段差凹部が設けられている一方、
前記閉塞部の少なくとも外底面には前記従動歯車の回転中心軸を中心とする環状の突部が設けられていて、
前記突部は前記段差凹部に挿入されている請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第2の収容室は、その内外を連通する部分を持たない水密区画として設けられている請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記シャフトは、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛合するピニオンシャフトである請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるセンサ装置が知られている。このセンサ装置は、ステアリングホイールに付与される操舵トルク、およびステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトの回転角である操舵角の双方を検出する。センサ装置は、ステアリングシャフトを構成するピニオンシャフトに設けられている。ピニオンシャフトは、入力軸と出力軸とがトーションバーを介して連結されてなる。
【0003】
センサ装置は、入力軸に固定された永久磁石、および出力軸に固定された磁気ヨークを有している。磁気ヨークは、2つのヨークが樹脂部分を介して一体化されてなる。入力軸にトルクが加えられてトーションバーがねじれ変形すると、永久磁石と磁気ヨークとの回転方向における相対位置が変化する。センサ装置は、永久磁石と磁気ヨークとの相対位置の変化に伴う磁気ヨークの磁束の変化に基づきトーションバーに加わるトルクを検出する。
【0004】
センサ装置は、ピニオンシャフトの出力軸と一体的に回転する主動歯車、および主動歯車に歯合する2つの従動歯車を備えている。主動歯車は磁気ヨークの樹脂部分に設けられている。2つの従動歯車の歯数は異なっているため、主動歯車の回転に伴う2つの従動歯車の回転角度は互いに異なる。センサ装置は、2つの従動歯車の回転角度をそれぞれ検出し、これら検出される回転角度に基づいてピニオンシャフトの出力軸の回転角度を検出する。
【0005】
センサ装置は、センサハウジングを有している。センサハウジングは、転舵シャフトを収容するギヤハウジングに取り付けられる。センサハウジングは、挿通孔および収容室を有している。挿通孔は、ギヤハウジングの内部に連通している。挿通孔には、ピニオンシャフトが挿通されるとともに磁気ヨークが収容される。収容室は、ピニオンシャフトの軸線に対して直交する方向へ向けて突出する箱体状をなしている。収容室の内部は、開口部分を介して挿通孔に連通している。収容室には、2つの従動歯車および基板が収容されている。2つの従動歯車は、収容室と挿入孔との間の開口部分を介して主動歯車に噛合している。基板には、回転角検出用およびトルク検出用の磁気センサなどの電子部品が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-112391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のセンサ装置においては、つぎのようなことが懸念される。すなわち、転舵シャフトの両端には、ラックエンドを介してタイロッドが回動自在に連結されている。また、ギヤハウジングの両端部には、それぞれ蛇腹状に設けられたゴム製のブーツが装着されている。転舵シャフトとタイロッドとの接続部分は、ブーツによって包囲されている。このブーツによってギヤハウジングの内部へ水あるいは粉塵が入り込むことが抑制される。
【0008】
ところが、ブーツの経年劣化などに起因して、ブーツに亀裂あるいは破れが生じることがある。この場合、ブーツの亀裂あるいは破れ目からギヤハウジングの内部へ浸入した水がセンサハウジングの挿通孔を遡上して収容室に浸入するおそれがある。収容室には、磁気センサなどの電子部品が設けられた基板が収容されている。このため、基板に水が付着することが懸念される。
【0009】
本発明の目的は、基板の水濡れを抑制することができるセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成し得るセンサ装置は、検出対象であるシャフトと一体的に回転する主動歯車と、前記主動歯車の回転に連動して回転する従動歯車と、前記従動歯車の回転角度を検出する検出器が設けられた基板と、前記シャフトが貫通する第1のハウジング部材と、前記第1のハウジング部材に連結された状態で前記従動歯車および前記基板が収容される第2のハウジング部材と、前記第2のハウジング部材の内部を鉛直方向における上下2つの収容室に区画する隔壁と、を有している。鉛直方向における上側に位置する第1の収容室には前記従動歯車が前記第1のハウジング部材に設けられた連通口を介して前記主動歯車に噛み合った状態で収容される一方、鉛直方向における下側に位置する第2の収容室には前記基板が収容されている。
【0011】
何らかの原因によって、第1のハウジング部材の内部に水が浸入した場合、この水が連通口を介して第2のハウジング部材の内部に流れ込むことが懸念される。この点、上記のセンサ装置成によれば、第2のハウジング31の内部は隔壁によって第1の収容室と第2の収容室とに区画されている。このため、第1のハウジング部材の内部に浸入した水は、連通口を介して第1の収容室に流れ込むことはあるものの、この第1の収容室に流れ込んでくる水が第2の収容室へ流れ込むことは隔壁によって邪魔される。したがって、基板の水濡れを抑制することができる。
【0012】
上記のセンサ装置において、前記隔壁は、前記従動歯車を回転可能に支持する孔を有し、前記従動歯車には前記孔を塞ぐかたちで覆う閉塞部が設けられていてもよい。
この構成によれば、隔壁の孔が従動歯車の閉塞部によって閉塞されるかたちで覆われる。このため、第1の収容室から第2の収容室への水の流入を抑制することができる。
【0013】
上記のセンサ装置において、前記隔壁は、鉛直方向における上側へ開口する凹部が設けられることにより前記第2の収容室側へ向けて突出する部分を有し、前記孔は前記隔壁における前記凹部が設けられた部分に設けられていてもよい。このことを前提として、前記閉塞部は、鉛直方向における上側へ開口する有底円筒状をなしていて、前記凹部に遊びを持って嵌められていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1の収容室に流れ込んできた水は、隔壁を伝って従動歯車における閉塞部の内部に流れ込む。閉塞部の内部に溜まった水の重量によって、従動歯車は第2の収容室側(鉛直方向における下側)へ向けて付勢される。これにより、閉塞部は、隔壁における凹部の内底面に押し付けられる。このため、閉塞部と隔壁における凹部の内底面との間の隙間がより狭くなる。第1の収容室に流れ込んできた水が隔壁の孔に到達しにくくなるため、第1の収容室に流れ込んできた水が第2の収容室へ流れ込むことを好適に抑制することができる。
【0015】
上記のセンサ装置において、前記凹部の少なくとも内底面には前記孔を中心とする同心円状に設けられた環状の段差凹部が設けられている一方、前記閉塞部の少なくとも外底面には前記従動歯車の回転中心軸を中心とする環状の突部が設けられていて、前記突部は前記段差凹部に挿入されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、従動歯車の閉塞部に突部を設けるとともに、隔壁の凹部の内底面に段差凹部を設けた分だけ、第1の収容室から隔壁の孔への水の流れ込み経路がより長い距離になる。ここで、水の流れ込み経路とは、隔壁の凹部の内周面と閉塞部の外周面との間の隙間、および隔壁の凹部の内底面と閉塞部の外底面との間の隙間からなる経路をいう。このため、第1の収容室に流れ込んできた水が隔壁の孔を介して第2の収容室へ流れ込むことを好適に抑制することができる。
【0017】
上記のセンサ装置において、前記第2の収容室は、その内外を連通する部分を持たない水密区画として設けられていてもよい。
この構成によれば、基板が収容される第2の収容室は、水密性が確保された水密区画として設けられる。このため、第1のハウジング部材の連通口を介して水が第1の収容室33Aに流れ込んでくる場合であれ、この水が第2の収容室へ流れ込むことはない。したがって、基板の水濡れをより確実に抑えることができる。
【0018】
上記のセンサ装置において、前記シャフトは、車両の転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛合するピニオンシャフトであってもよい。
車両の下部には水がかかりやすい。このため、基板の水濡れが抑制される上記のセンサ装置はピニオンシャフトの回転角度を検出するセンサ装置として好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のセンサ装置によれば、基板の水濡れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】センサ装置の第1の実施の形態が搭載される操舵装置の構成図。
図2】センサ装置の第1の実施の形態をピニオンシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図。
図3】センサ装置の第1の実施の形態の一部分を構成する回転角センサの概略構成を示すブロック図。
図4】センサ装置の第1の実施の形態をピニオンシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図であって、センサハウジングの内部に水が浸入した状態の一例を示す断面図。
図5】センサ装置の第1の実施の形態をピニオンシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図であって、従動歯車の周辺の要部を示す断面図。
図6】センサ装置の第2の実施の形態をピニオンシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図であって、従動歯車の周辺の要部を示す断面図。
図7】センサ装置の第3の実施の形態をピニオンシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図。
図8】センサ装置の第3の実施の形態をピニオンシャフトの軸線方向に沿って切断した断面図であって、センサハウジングの内部に水が浸入した状態の一例を示す断面図。
図9】センサ装置の他の実施の形態の従動歯車の周辺の要部を示す断面図。
図10】センサ装置の他の実施の形態の従動歯車の周辺の要部を示す断面図。
図11】センサ装置の他の実施の形態の従動歯車の周辺の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
以下、センサを車両の操舵装置に適用した第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、ステアリングホイール11に連結されたステアリングシャフト12を有している。ステアリングシャフト12におけるステアリングホイール11と反対側の端部には、ピニオンシャフト13が設けられている。ピニオンシャフト13のピニオン歯13aは、ピニオンシャフト13に対して交わる方向へ延びる転舵シャフト14のラック歯14aに噛み合わされている。転舵シャフト14の両端には、それぞれタイロッド15,15を介して左右の転舵輪16,16が連結されている。
【0022】
なお、転舵シャフト14は図示しないギヤハウジングの内部において往復動可能に支持されている。また、ピニオンシャフト13はギヤハウジングに対して回転可能に支持されている。ギヤハウジングの両端部には、それぞれ蛇腹状に設けられたゴム製のブーツが装着されている。転舵シャフト14とタイロッド15,15との接続部分は、ブーツによって包囲されている。このブーツによってギヤハウジングの内部へ水あるいは粉塵が入り込むことが抑制される。
【0023】
操舵装置10は、操舵を補助する力であるアシスト力を生成するための構成として、モータ21、減速機構22、ピニオンシャフト23、センサ装置24、および制御装置25を有している。
【0024】
モータ21は、アシスト力の発生源であって、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。モータ21は、減速機構22を介してピニオンシャフト23に連結されている。ピニオンシャフト23のピニオン歯23aは、転舵シャフト14のラック歯14bに噛み合わされている。モータ21の回転は減速機構22によって減速されるとともに、当該減速された回転力がアシスト力としてピニオンシャフト23から転舵シャフト14を介してピニオンシャフト13に伝達される。
【0025】
センサ装置24は、ピニオンシャフト13が貫通した状態で図示しないギヤハウジングに取り付けられる。ギヤハウジングには、転舵シャフト14と共にピニオンシャフト13が収容される。センサ装置24は、トルクセンサと回転角センサとが組み合わせられてなる。センサ装置24は、ステアリングホイール11の回転操作を通じてピニオンシャフト13に加わるトルクを操舵トルクThとして検出する。また、センサ装置24は、ピニオンシャフト13の360°を超える多回転にわたる回転角度θpaを操舵角θsとして検出する。
【0026】
制御装置25は、センサ装置24により検出される操舵トルクThおよび操舵角θsを取り込む。また、制御装置25は、車両に設けられる車速センサ26を通じて検出される車速Vを取り込む。制御装置25は、モータ21に対する通電制御を通じてモータ21に操舵トルクThおよび車速Vに応じたアシスト力を発生させるアシスト制御を実行する。制御装置25は、センサ装置24を通じて検出される操舵トルクTh、および車速センサ26を通じて検出される車速Vに基づき、モータ21に対する給電を制御する。
【0027】
つぎに、センサ装置24の構成を説明する。
図2に示すように、センサ装置24は、センサハウジング31を有している。センサハウジング31は、転舵シャフト14を収容するギヤハウジング17に取り付けられる。センサハウジング31は、第1のハウジング部材31Aおよび第2のハウジング部材31Bを有している。これら第1のハウジング部材31Aおよび第2のハウジング部材31Bは、合成樹脂材料により一体成形されている。
【0028】
第1のハウジング部材31Aは、中空の円筒状をなしている。第1のハウジング部材31Aには、挿通孔32が設けられている。挿通孔32には、ピニオンシャフト13が挿入されている。図示は割愛するが、ピニオンシャフト13は、ステアリングシャフト12側の入力軸、転舵シャフト14側の出力軸、およびこれら入力軸と出力軸とを連結するトーションバーを有している。
【0029】
第2のハウジング部材31Bは、第1のハウジング部材31Aの側部に設けられている。第2のハウジング部材31Bは、第1のハウジング部材31Aの軸線に対して直交する方向へ向けて突出する箱体状をなしている。第2のハウジング部材31Bの内部には、収容室33が設けられている。収容室33は、第1のハウジング部材31Aの軸線に対して直交する方向において第1のハウジング部材31Aと反対側へ向けて開口している。収容室33の開口部は、カバー34によって閉塞されている。
【0030】
収容室33の内部には、隔壁35が設けられている。隔壁35は、第1のハウジング部材31Aの軸線に対して直交する方に沿って延びている。収容室33の内部は、隔壁35によって第1の収容室33Aおよび第2の収容室33Bに区画されている。第1の収容室33Aおよび第2の収容室33Bは、第1のハウジング部材31Aの軸線に沿って並んでいる。第1の収容室33Aは、第2の収容室33Bよりもギヤハウジング17に対して遠い側に位置している。すなわち、センサ装置24が操舵装置10に搭載された状態において、第1の収容室33Aは第2の収容室33Bに対して鉛直方向(重力方向)における上側に位置している。また、センサ装置24が操舵装置10に搭載された状態において、第2の収容室33Bは第1の収容室33Aに対して鉛直方向における下側に位置している。第1の収容室33Aは、第1のハウジング部材31Aの周壁に設けられた連通口36を介して挿通孔32に連通している。図示は割愛するものの、連通口36は、第1の収容室33Aに対応する範囲において第1のハウジング部材31Aの周方向に沿って延びている。
【0031】
第2のハウジング部材31Bの底壁(図2中の下壁)には、四角筒状のコネクタ嵌合部39が設けられている。コネクタ嵌合部39は、第1のハウジング部材31Aの軸線に沿って延びている。コネクタ嵌合部39の内部には、端子39aが設けられている。端子39aは第2のハウジング部材31Bの底壁を貫通して第2の収容室33Bの内部に露出している。コネクタ嵌合部39には、外部機器から導出される配線のコネクタが嵌合される。外部機器は、たとえば制御装置25である。
【0032】
このように構成したセンサハウジング31の内部には、トルクセンサ41および回転角センサ51が設けられている。
トルクセンサ41は、円筒状の磁気ヨーク42を有している。磁気ヨーク42は、第1のハウジング部材31Aの挿通孔32の内部において、ピニオンシャフト13の出力軸に固定されている。磁気ヨーク42の内部には、図示しない円筒状の永久磁石が挿入されている。永久磁石は、その周方向に沿ってS極とN極とが交互に着磁されている。永久磁石は、ピニオンシャフト13における入力軸の外周面に固定されている。
【0033】
磁気ヨーク42は、磁性体からなる環状の2つのヨーク43,44が合成樹脂材料によりモールドされてなる。2つのヨーク43,44は、ピニオンシャフト13の軸線に沿った方向に沿って並んでいる。磁気ヨーク42の合成樹脂材料により形成された部分は、2つのヨーク43,44の位置関係を保持するホルダ45として機能する。このホルダ45の外周面には、主動歯車46が一体成形されている。
【0034】
2つのヨーク43,44の内周縁には、それぞれ図示しない複数の歯部が周方向に沿って等間隔で設けられている。これら歯部は、ピニオンシャフト13の軸線に沿った方向において互いに反対側へ向けて延びている。2つのヨーク43,44は、それらの歯部が周方向において交互に位置するように保持されている。2つのヨーク43,44は、ピニオンシャフト13を構成するトーションバーに捩れ変形が生じていない状態において、歯部の周方向における中心が永久磁石のN極とS極との境界に一致するように設けられている。
【0035】
ちなみに、図示は割愛するものの、第1のハウジング部材31Aの内周面には、たとえばC字状の2つの集磁リングが設けられている。これら集磁リングは、第1のハウジング部材31Aの軸線に沿って並んでいる。第1の集磁リングはヨーク43の周囲を取り囲んでいる。第2の集磁リングはヨーク44の周囲を取り囲んでいる。第1の集磁リングはヨーク43からの磁束を誘導する。第2の集磁リングはヨーク44からの磁束を誘導する。
【0036】
また、図示は割愛するものの、トルクセンサ41は、トルク検出用の第1の磁気センサおよび第2の磁気センサを有している。第1の磁気センサは、第1の集磁リングに設けられる集磁突部と第2の集磁リングに設けられる集磁突部との間に介在される。第2の磁気センサは、第1の集磁リングに設けられる他の集磁突部と第2の集磁リングに設けられる他の集磁突部との間に介在される。トルク検出用の第1の磁気センサおよび第2の磁気センサは、第1の集磁リングおよびは第2の集磁リングに誘導される磁束を検出する。
【0037】
ステアリングホイール11の操作を通じてピニオンシャフト13のトーションバーがねじれ変形すると、ピニオンシャフト13の入力軸に固定された永久磁石とヨーク43との回転方向における相対位置、ならびに永久磁石とヨーク44との回転方向における相対位置が変化する。これに伴い、永久磁石から一つのヨーク43を通じて第1の集磁リングに導かれる磁束密度が変化する。また、永久磁石からもう一つのヨーク44を通じて第2の集磁リングに導かれる磁束密度も変化する。
【0038】
トルク検出用の第1の磁気センサは、第1の集磁リングの集磁突部と第2の集磁リングの集磁突部との間に漏出する磁束に応じた電気信号を生成する。トルク検出用の第2の磁気センサは、第1の集磁リングの他の集磁突部と第2の集磁リングの他の集磁突部との間に漏出する磁束に応じた電気信号を生成する。制御装置25は、トルク検出用の第1の磁気センサおよび第2の磁気センサにより生成される電気信号に基づき、トーションバーに作用するトルクを操舵トルクThとして検出する。
【0039】
図3に併せ示すように、回転角センサ51は、主動歯車46および2つの従動歯車52,53を含んでなる。2つの従動歯車52,53は、第1の収容室33Aの内部において回転可能に支持される。2つの従動歯車52,53は、連通口36を介して主動歯車46に噛合している。このため、ピニオンシャフト13の回転に連動して主動歯車46が回転すると、この主動歯車46の回転に伴い2つの従動歯車52,53がそれぞれ回転する。また、2つの従動歯車52,53の歯数は異なっている。このため、主動歯車46の回転角度に対する2つの従動歯車52,53の回転角度α,βは、それぞれ異なった値となる。従動歯車52,53には、それぞれ永久磁石54,55が一体回転可能に設けられている。
【0040】
また、回転角センサ51は、角度検出用の2つの磁気センサ56,57を有している。一つの磁気センサ56は永久磁石54の近傍に、もう一つの磁気センサ57は永久磁石55の近傍に設けられている。磁気センサ56,57は、従動歯車52,53の回転に伴う磁界の変化に応じた電気信号を生成する。制御装置25は、磁気センサ56,57により生成される電気信号に基づき、ピニオンシャフト13の回転角度θpaを検出する。主動歯車46に対する従動歯車52の回転角度αと主動歯車46に対する従動歯車53の回転角度βとは互いに異なるため、磁気センサ56,57により生成される電気信号の位相は互いに異なる。制御装置25は、磁気センサ56,57により生成される電気信号に基づきピニオンシャフト13の360°を超える多回転の回転角度をステアリングシャフト12の操舵角θsとして演算する。
【0041】
図2に示すように、第2の収容室33Bには、基板61が設けられている。基板61の第1の収容室33A側の面(図2中の上面)には、角度検出用の2つの磁気センサ56,57が設けられている。磁気センサ56,57は、第1のハウジング部材31Aの軸線に沿う方向において、永久磁石54,55と対向している。また、図示は割愛するものの、基板61には、トルク検出用の磁気センサも設けられている。また、基板61には端子39aが貫通している。基板61に端子39aが貫通した状態で半田付けなどが行われることにより、基板61の図示しない配線パターンと端子39aとが電気的に接続される。
【0042】
このように構成したセンサ装置24においては、つぎのようなことが懸念される。
すなわち、転舵シャフト14とタイロッド15との接続部分を覆うブーツの経年劣化などに起因して、ブーツに亀裂あるいは破れが生じることがある。この場合、図4に多数のドットによる網掛けを施して示すように、ブーツの亀裂あるいは破れ目からギヤハウジング17の内部へ浸入した水が第1のハウジング部材31Aの挿通孔32を遡上するとともに、その遡上してくる水が連通口36を介して第2のハウジング部材31Bの収容室33に浸入するおそれがある。
【0043】
そこで、収容室33の内部を隔壁35で上下2室に区画することに加えて、隔壁35および従動歯車52,53として、つぎの構成を採用している。ただし、2つの従動歯車52,53は同一の構成を有するため、ここでは一つの従動歯車52についてのみ説明し、もう一つの従動歯車53の詳細な説明については割愛する。
【0044】
図5に示すように、隔壁35には、凹部37が設けられている。凹部37は、隔壁35において第1のハウジング部材31A側に寄っている。凹部37は第1の収容室33Aに開口している。隔壁35の凹部37が設けられている部分は、第2の収容室33B側へ向けて突出している。凹部37の底壁には、孔38が設けられている。第1の収容室33Aと第2の収容室33Bとは孔38を介して互いに連通している。
【0045】
従動歯車52は、合成樹脂材料により一体成形されている。従動歯車52は、歯車部71、軸部72、および閉塞部73を有している。
歯車部71は円板状に設けられている。歯車部71の外周面には歯形が設けられている。歯車部71は、主動歯車46に噛合する部分である。
【0046】
軸部72は歯車部71の隔壁35側の面(図5中の下面)の中央に連結されている。軸部72は、円柱状に設けられている。軸部72の先端には永久磁石54がはめ込まれている。永久磁石54は軸部72の先端面に露出している。軸部72の少なくとも先端における外径は、隔壁35の孔38の内形よりも若干短い長さに設定されている。軸部72の先端は、孔38の内周面に対して摺動回転可能である。
【0047】
閉塞部73は、軸部72の先端の近傍に設けられている。閉塞部73は、有底円筒状に設けられている。閉塞部73は、歯車部71側に開口する貯留凹部73aを有している。軸部72の軸線に沿った方向において、閉塞部73の長さは隔壁35の凹部37の深さと同程度の長さに設定されている。閉塞部73の外径は、隔壁35の孔38の内径よりも長い長さ、かつ隔壁35の凹部37の内径よりも若干短い長さに設定されている。閉塞部73は、凹部37の内周面および内底面に対してそれぞれ摺動回転可能である。
【0048】
従動歯車52における軸部72の先端は、隔壁35の孔38に挿入されている。また、従動歯車52における閉塞部73は隔壁35の凹部37に若干の遊びをもって嵌められている。従動歯車52の基板61側(図5中の下方)へ向けた移動は、閉塞部73の歯車部71と反対側の面(図5中の下面)が凹部37の内底面に当接することにより規制される。
【0049】
閉塞部73の歯車部71と反対側の面が凹部37の内底面に当接した状態において、隔壁35の孔38は閉塞部73によって閉塞された状態に維持される。このとき、閉塞部73の歯車部71側の面(図5中の上面)と、隔壁35の第1の収容室33Aに露出する側の面(図5中の上面)における凹部37を除いた部分とは、互いに段差のない面一の状態に維持される。
【0050】
また、閉塞部73の歯車部71と反対側の面が凹部37の内底面に当接した状態において、軸部72の先端は第2の収容室33Bの内部に露出した状態に維持される。これにより、軸部72の先端面に露出した永久磁石54は、磁気センサ56に近接した状態に維持される。このため、永久磁石54から発せられる磁界が磁気センサ56に対して好適に印加される。
【0051】
また、閉塞部73の歯車部71と反対側の面が凹部37の内底面に当接した状態において、歯車部71は連通口36を介して主動歯車46に噛合した状態に維持される。このため、主動歯車46が回転すると、これに連動して従動歯車52も回転する。
【0052】
このように構成した隔壁35および従動歯車52,53によれば、つぎの作用および効果を得ることができる。
(1)センサハウジング31として収容室33に隔壁35を設けることなく、従動歯車52,53と基板61とを収容室33の単一の内部空間に収容する構成を採用することも考えられるところ、この構成を採用する場合には第1のハウジング部材31Aの挿通孔32を遡上してきた水が連通口36を介して収容室33の単一の内部空間に流れ込む。このため、基板61に水が付着するおそれがある。この点、センサ装置24においては、センサハウジング31の収容室33が隔壁35によって第1の収容室33Aと第2の収容室33Bとに区画されている。このため、第1のハウジング部材31Aの挿通孔32を遡上してきた水が連通口36を介して第1の収容室33Aに流れ込む場合であれ、この流れ込んでくる水が第2の収容室33Bへ流れ込むことは隔壁35によって邪魔される。したがって、基板61の水濡れを抑制することができる。
【0053】
(2)隔壁35には、従動歯車52,53の軸部72の先端が挿通される孔38が設けられている。このため、第1の収容室33Aに流れ込んできた水が、凹部37の内周面と閉塞部73の外周面との間のわずかな隙間、および凹部37の内底面と閉塞部73の歯車部71と反対側の面(下面)との間のわずかな隙間を経由して、隔壁35の孔38から第2の収容室33Bへ流れ込もうとすることが考えられる。この点、センサ装置24においては、隔壁35の孔38は、基本的には従動歯車52,53の閉塞部73によって塞がれる。このため、第1の収容室33Aに流れ込んできた水が孔38を介して第2の収容室33Bへ流れ込むことが抑制される。したがって、基板61の水濡れをよりいっそう抑えることができる。
【0054】
(3)従動歯車52,53の閉塞部73は、歯車部71側に開口する貯留凹部73aを有している。このため、第1の収容室33Aに流れ込んできた水は、隔壁35を伝って貯留凹部73aに流れ込む。図5に矢印Pで示すように、貯留凹部73aに溜まった水の重量によって、従動歯車52,53は第2の収容室33B側(図5中の下方)へ向けて付勢される。また、ギヤハウジング17を含めセンサ装置24が水没するなどして第1の収容室33Aが水で満たされた場合、従動歯車52,53は水圧によって第2の収容室33B側(図5中の下方)へ向けて付勢される。これにより、閉塞部73の歯車部71と反対側の面(図5中の下面)は、凹部37の内底面に押し付けられる。その結果、閉塞部73における歯車部71とは反対側の面と凹部37の内底面との間の隙間がより狭くなる。第1の収容室33Aに流れ込んできた水が隔壁35の孔38に到達しにくくなるため、第1の収容室33Aから第2の収容室33Bへ水が流れ込むことを好適に抑制することができる。
【0055】
(4)閉塞部73の歯車部71側の面(図5中の上面)と、隔壁35の第1の収容室33Aに露出する側の面(図5中の上面)における凹部37を除いた部分とは、互いに段差のない面一の状態に維持される。このため、第1の収容室33Aに流れ込んできた水は、閉塞部73の貯留凹部73aに流れ込みやすい。
【0056】
ちなみに、軸部72の軸線に沿った方向において、閉塞部73の長さは隔壁35の凹部37の深さよりも短い長さに設定してもよい。このようにすれば、閉塞部73の歯車部71と反対側の面が凹部37の内底面に当接した状態において、閉塞部73の歯車部71側の面(図5中の上面)は、隔壁35の第1の収容室33Aに露出する側の面(図5中の上面)における凹部37を除いた部分よりも低い位置となる。このため、第1の収容室33Aに流れ込んできた水は、閉塞部73の貯留凹部73aに流れ込みやすい。
【0057】
<第2の実施の形態>
つぎに、センサを車両の操舵装置に適用した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1図4に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。本実施の形態は、従動歯車52,53の構成の点で第1の実施の形態と異なる。
【0058】
図6に示すように、従動歯車52において、閉塞部73の歯車部71と反対側の面(図6中の下面)には、円環状の突部73bが設けられている。突部73bは、従動歯車52の回転中心軸である軸部72を中心とする同心円状に設けられている。また、凹部37の内底面には、円環状の段差凹部37aが設けられている。段差凹部37aは、隔壁35の孔38を中心とする同心円状に設けられている。段差凹部37aの幅(図6中の左右方向における長さ)は突部73bの幅よりも若干長い長さに設定されている。ちなみに、幅とは突部73bおよび段差凹部37aの半径方向における長さをいう。段差凹部37aには、突部73bが挿入されている。ちなみに、従動歯車53は従動歯車52と同様の構成を有している。
【0059】
したがって、第2の実施の形態によれば、つぎの作用および効果を得ることができる。
(5)閉塞部73に突部73bを設けるとともに、凹部37の内底面に段差凹部37aを設けた分だけ、第1の収容室33Aから孔38への水の流れ込み経路Rがより長い距離になる。ちなみに、水の流れ込み経路Rとは、凹部37の内周面と閉塞部73の外周面との間の隙間、および凹部37の内底面と閉塞部73の歯車部71と反対側の面(図6中の下面)との間の隙間からなる経路をいう。このため、第1の収容室33Aに流れ込んできた水が孔38を介して第2の収容室33Bへ流れ込むことを好適に抑制することができる。
【0060】
(6)また、第1の収容室33Aから孔38への水の流れ込み経路Rの途中において、突部73bと段差凹部37aとが噛み合うかたちで設けられている。水の流れ込み経路Rにおいて屈曲する箇所がより多くなることにより、水の圧力損失がより大きくなる。したがって、水が第1の収容室33Aから孔38へ向けて流れ込むことを好適に抑制することができる。
【0061】
<第3の実施の形態>
つぎに、センサを車両の操舵装置に適用した第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1図4に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。本実施の形態は、隔壁35および従動歯車52,53の構成の点で第1の実施の形態と異なる。
【0062】
図7に示すように、従動歯車52は、歯車部71および軸部72を有してなる。すなわち、従動歯車52として、先の第1の実施の形態の閉塞部73が割愛された構成が採用されている。軸部72の先端には永久磁石54が設けられている。なお、従動歯車53も従動歯車52と同様の構成を有している。従動歯車52,53は、それらの軸部72を介して隔壁35に対して摺動回転可能に支持されている。
【0063】
隔壁35は、平板状に設けられている。すなわち、隔壁35として、先の第1の実施の形態の凹部37を割愛した構成が採用されている。永久磁石54が設けられた従動歯車52の先端は、第2の収容室33Bの内部に露出していないものの、角度検出用の磁気センサ56が検出できる程度の磁界が磁気センサ56に印加されるように、永久磁石54の強さ、磁気センサ56と永久磁石54との間の距離、あるいは磁気センサ56の感度などが調節される。なお、従動歯車53についても従動歯車52と同様に設けられる。
【0064】
第1の収容室33Aは、第1のハウジング部材31Aの軸線方向において第2の収容室33Bと反対側(図7中の上方)へ向けて開口している。この第1の収容室33Aの開口部は、カバー34Aによって閉塞されている。第1の収容室33Aは、第1のハウジング部材31Aの周壁に設けられた連通口36を介して挿通孔32に連通している。
【0065】
第2の収容室33Bは、第1のハウジング部材31Aの軸線に対して直交する方向において第1のハウジング部材31Aと反対側(図7中の左方)へ向けて開口している。第2の収容室33Bの開口部は、カバー34Bによって閉塞されている。第2の収容室33Bは水密性が確保されている。ここでの水密性とは、第2の収容室33Bの内部に水などの液体が流入しない性質をいう。
【0066】
したがって、第3の実施の形態によれば、つぎの作用および効果を得ることができる。
(7)基板61が収容される第2の収容室33Bは、水密性が確保された水密区画として設けられている。このため、図8に多数のドットによる網掛けを施して示すように、第1のハウジング部材31Aの挿通孔32を遡上してきた水が連通口36を介して第1の収容室33Aに流れ込む場合であれ、この流れ込んでくる水が第2の収容室33Bへ流れ込むことはない。したがって、したがって、基板61の水濡れをより確実に抑えることができる。
【0067】
<他の実施の形態>
なお、上記の各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1の実施の形態において、従動歯車52として閉塞部73を割愛した構成を採用してもよい。すなわち、図9に示すように、従動歯車52は、歯車部71および軸部72を有している。軸部72の先端には、小径部72aが設けられている。小径部72aには永久磁石54がはめ込まれている。また、隔壁35は平板状に設けられている。すなわち、隔壁35として、先の第1の実施の形態の凹部37を割愛した構成が採用されている。隔壁35には、孔38が設けられている。孔38の内径は、小径部72aの外径よりも若干長い長さに設定されている。孔38には、従動歯車52の小径部72aが挿入されている。従動歯車52の第2の収容室33B側(図9中の下方)へ向けた移動は、軸部72と小径部72aとの間の段差部72bが隔壁35の内底面に当接することにより規制される。従動歯車52は、隔壁35の孔38に対して摺動回転可能である。ちなみに、従動歯車53も従動歯車52と同様に設けられる。このようにしても、水が第1の収容室33Aから第2の収容室33Bへ流れ込むことが隔壁35によって抑制される。
【0068】
・第1の実施の形態において、隔壁35の凹部37と従動歯車52の閉塞部73との凹凸関係を逆にしてもよい。すなわち、図10に示すように、隔壁35には凹部37に代えて有蓋筒状の突部37Aが設けられている。突部37Aにおける頂壁の中央には孔38が設けられている。従動歯車52には、歯車部71側に開口する閉塞部73に代えて、歯車部71と反対側(図10中の下方)へ開口する有蓋筒状の閉塞部73Aが設けられている。閉塞部73Aは、突部37Aの外周に若干の遊びをもって嵌められている。従動歯車52における軸部72の先端は、突部37Aの孔38に挿入されている。ちなみに、従動歯車53も従動歯車52と同様に設けられる。このようにすれば、隔壁35に対して第1の収容室33A側に突出する突部37Aの頂壁に孔38が設けられているため、第1の収容室33Aの内部に流れ込んだ水は、突部37Aの外周面と閉塞部73Aの内周面との間のわずかな隙間を経由して孔38へ至りにくい。このため、水が第1の収容室33Aから第2の収容室33Bへ流れ込むことを抑えることができる。
【0069】
・第2の実施の形態においては、閉塞部73の歯車部71と反対側の面に円環状の突部73bを一つだけ設けたが、図11に示すように、複数の突部73bを設けてもよい。複数の突部73bは、いずれも軸部72に対して同心円状に設けられている。凹部37の内底面には、突部73bと同数の円環状の段差凹部37aが設けられている。また、閉塞部73の歯車部71と反対側の面だけではなく、閉塞部73の外周面に突部73bを設けてもよい。この場合、凹部37の内周面にも段差凹部37aが設けられる。このようにすれば、第1の収容室33Aから孔38への水の流れ込み経路Rがより長い距離になる。また、水の流れ込み経路Rにおいて屈曲する箇所がより多くなることにより、水の圧力損失がより大きくなる。したがって、水が第1の収容室33Aから孔38へ向けて流れ込むことをよりいっそう抑えることができる。
【0070】
・第1~第3の実施の形態では、センサ装置24にトルク検出機能および角度検出機能の双方の機能を持たせたが、つぎのようにしてもよい。すなわち、第1または第2の実施の形態においては、製品仕様などに応じて角度検出機能のみを持たせてもよい。また、第3の実施の形態においては、製品仕様などに応じてトルク検出機能のみを持たせてもよいし、角度検出機能のみを持たせてもよい。第3の実施の形態において、センサ装置24にトルク検出機能のみを持たせる場合、センサ装置24として従動歯車52,53、および角度検出用の磁気センサ56,57を割愛した構成を採用してもよい。このようにしても、基板61が収容される第2の収容室33Bは水密性が確保された水密区画として設けられているため、従動歯車52,53の有無にかかわらず基板61の水濡れを抑制することができる。
【0071】
・第1~第3の実施の形態では、磁気ヨーク42のホルダ45に主動歯車46を一体成形したが、主動歯車46と磁気ヨーク42とをそれぞれ別部品として設けてもよい。また、この構成を第3の実施の形態で採用する場合、たとえばセンサ装置24にトルク検出機能のみを持たせることが要求されるとき、主動歯車46が割愛された別部品としての磁気ヨーク42のみをピニオンシャフト13に設けるようにしてもよい。また、第1~第3の実施の形態において、センサ装置24に角度検出機能のみを持たせることが要求されるとき、別部品としての主動歯車46のみをピニオンシャフト13に設けるようにしてもよい。
【0072】
・第1~第3の実施の形態では、ピニオンシャフト13の回転角度θpaを検出するための構成として主動歯車46に噛み合う2つの従動歯車52,53を設けたが、センサ装置24として単一の従動歯車52または従動歯車53を有する構成を採用してもよい。このようにしても、ピニオンシャフト13の360°以内の回転角度θpaを検出することができる。また、センサ装置24として、3つあるいはそれ以上の従動歯車を有する構成を採用してもよい。このようにしても、ピニオンシャフト13の360°を超える多回転にわたる回転角度θpaを検出することができる。
【0073】
・第1~第3の実施の形態では、センサ装置24を車両の操舵装置の一例として電動パワーステアリング装置(EPS)に適用する例を挙げたが、ステアバイワイヤ方式の操舵装置にセンサ装置24を適用することも可能である。また、センサ装置24は、車載用途に限らない。
【符号の説明】
【0074】
13…ピニオンシャフト(検出対象であるシャフト)
14…転舵シャフト
16…転舵輪
24…センサ装置
31A…第1のハウジング部材
31B…第2のハウジング部材
33A…第1の収容室
33B…第2の収容室
35…隔壁
36…連通口
37…凹部
37a…段差凹部
38…孔
46…主動歯車
52,53…従動歯車
56,57…磁気センサ(検出器)
61…基板
73…閉塞部
73b…突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11