(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074377
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】自律走行体の走行教示記憶方法、自律走行体、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220511BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184359
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 司
【テーマコード(参考)】
3B057
5H301
【Fターム(参考)】
3B057DA00
5H301AA01
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD02
5H301DD06
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG12
5H301HH10
(57)【要約】
【課題】自律走行体の走行教示記憶方法において、自律再現走行時において、自律走行体が教示走行時の記録停止までの記録と記録再開からの記録とに基づいて走行する際にスムーズに走行可能にする。
【解決手段】走行教示記憶方法は、一時停止制御部203が、操作者によって一時停止スイッチ201の停止操作が行われたか否かを検出するステップと、一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、洗浄機100の走行を停止し、記憶部57への記録停止を行うタイミングを制御するステップと、操作者によって一時停止スイッチ201の再開操作が行われたか否かを検出するステップと、一時停止スイッチ201の再開操作を検出した場合、洗浄機100の走行を開始し、記憶部57への記録再開を行うタイミングを制御するステップと、記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて記憶部57に記録するステップ7とを備えている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記録する記憶部と、前記車体の教示走行及び記録を停止及び再開させるための一時停止スイッチと、を備えた自律走行体の走行教示記憶方法であって、
操作者によって前記一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、前記自律走行体の走行を停止し、前記記憶部への記録停止を行うタイミングを制御するステップと、
操作者によって前記一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、前記自律走行体の走行を開始し、前記記憶部への記録開始を行うタイミングを制御するステップと、
記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて前記記憶部に記録するステップと、
を備えた自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項2】
前記記録停止を行うタイミングは、前記自律走行体の走行停止から所定時間後である、請求項1に記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項3】
前記記録停止を行うタイミングは、前記自律走行体の走行停止と同時である、請求項1に記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項4】
前記操作者が前記一時停止スイッチを停止操作した時から記録停止を行う時までの記録情報を編集するステップをさらに備えている、請求項1~3のいずれかに記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項5】
前記記録再開を行うタイミングは、前記自律走行体の走行開始と同時である、請求項1~4のいずれかに記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項6】
前記記録再開を行うタイミングは、前記自律走行体の走行開始から所定時間後である、請求項1~4のいずれかに記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項7】
記録中断位置の情報と記録再開位置の情報とをつなげるための情報を作成するステップをさらに備えている、請求項1~6のいずれかに記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項8】
前記記録停止を行うタイミングは、前記操作者が前記一時停止スイッチを停止操作した時と同時である、請求項7に記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項9】
前記記録再開を行うタイミングは、前記操作者が前記一時停止スイッチを再開操作したときと同時である、請求項7に記載の自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項10】
車体と、前記車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記録する記憶部と、前記車体の記録を停止及び再開させるためのスイッチであり、前記車体の走行停止中にのみ有効となる記録一時停止スイッチと、を備えた自律走行体の走行教示記憶方法であって、
操作者によって前記記録一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記記録一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、前記記憶部への記録停止を直ちに行うタイミングを制御するステップと、
操作者によって前記記録一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記記録一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、前記記憶部への記録再開を直ちに行うタイミングを制御するステップと、
記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて前記記憶部に記録するステップと、
を備えた自律走行体の走行教示記憶方法。
【請求項11】
車体と、
前記車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記録する記憶部と、
前記車体の教示走行及び記録を停止及び再開させるための一時停止スイッチと、
プロセッサと、を備えた自律走行体であって、
前記プロセッサは、
操作者によって前記一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、前記自律走行体の走行を停止し、前記記憶部への記録停止を行うタイミングを制御するステップと、
操作者によって前記一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、前記自律走行体の走行を開始し、前記記憶部への記録開始を行うタイミングを制御するステップと、
記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて前記記憶部に記録するステップと、を実行する、
自律走行体。
【請求項12】
車体と、前記車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記録する記憶部と、前記車体の教示走行及び記録を停止及び再開させるための一時停止スイッチと、を備えた自律走行体の走行教示記憶方法をコンピュータに実行させるプログラムが保存された記録媒体であって、
前記プログラムは、
操作者によって前記一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、前記自律走行体の走行を停止し、前記記憶部への記録停止を行うタイミングを制御するステップと、
操作者によって前記一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップと、
前記一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、前記自律走行体の走行を開始し、前記記憶部への記録開始を行うタイミングを制御するステップと、
記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて前記記憶部に記録するステップと、を前記コンピュータに実行させる、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行体の走行教示記憶方法、走行教示記憶方法を実行する自律走行体、走行教示記憶方法をコンピュータに実行させるプログラムが保存された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行開始位置から走行終了位置までの経路計画に従って自律的に走行する自律走行体が知られている。
一例として、自律走行式床洗浄機は、操作者の操作により教示された走行経路及び清掃条件を再現することにより、教示された走行経路を自律的に走行しつつ、教示された清掃条件に従った清掃を再現する。
【0003】
教示走行では、作業者が自律走行体を移動経路に沿って走行させながら、位置、速度、その他の情報を自律走行体に教示する。
自律再現走行は、予め作業者が教示した走行経路そのものを自律的に走行するコピー走行、又は、予め作業者が外周ダイレクトティーチングにより教示した外周内において制御部が決定した自律走行経路を自律的に走行する塗り潰し走行の2種類がある。
【0004】
教示走行では、操作者は、教示作業を中断することなく、移動体を操作し続ける。
特許文献1に記載の自律型芝刈りロボットでは、請求項14及び段落0005において、教示走行中に意図しない動作が行われたとき、データ記録を中断する機能が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
教示走行中にルート上の障害物がある場合、操作者が、自律移動体の操作を中断して、障害物をルートからどける。この場合、自律移動体の移動は中断されていても、教示は継続している。その結果、例えばコピー走行時に、不要な待ち時間(このケースだと障害物をどける時間)が再現され、作業効率が低下する。または、教示走行のやり直しが発生していた。
【0007】
従来、操作者は、自律移動体の走行を停止させてから、記録中断ボタンを押す。これにより、自立再現走行時に、停止の前と後とで位置と速度が連続する。
しかし、操作者が自律移動体の走行中に記録中断ボタンを押してしまうと、記録中断ボタンが押されてからも自律移動体は走行しているので、記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせると自律再現走行時に位置と速度が不連続になる。
【0008】
本発明の目的は、自律走行体の走行教示記憶方法において、自律再現走行時に際し、自律走行体が教示走行時の記録停止までの記録と記録再開からの記録とに基づいて走行する際にスムーズに走行可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0010】
本発明の一見地に係る自律走行体の走行教示記憶方法は、車体と、車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記憶する記憶部と、車体の教示走行及び記録を停止及び再開させるための一時停止スイッチとを備えた自律走行体に用いられる。
走行教示記憶方法は、下記のステップを備えている。
◎操作者によって一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、自律走行体の走行を停止し、記憶部への記録停止を行うタイミングを制御するステップ。
◎操作者によって一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、自律走行体の走行を開始し、記憶部への記録再開を行うタイミングを制御するステップ。
◎記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて記憶部に記録するステップ。
【0011】
この方法では、教示走行において、操作者が一時停止スイッチの停止操作を行うと、自律走行体の走行停止及び記憶部への記録停止が行われる。また、教示走行において、操作者が一時停止スイッチの再開操作を行うと、自律走行体の走行開始及び記憶部への記録開始が行われる。記録は、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせられる。したがって、再現走行時には、記録停止前と記録停止後とがつながれた記録を用いて、自律走行体が走行可能になる。つまり、再現走行時に自律移動体の位置と速度が不連続になる問題が生じない。
この結果、自律再現走行時において、自律走行体が教示走行時の記録停止前の記録と記録再開後の記録に基づいて走行する際にスムーズに走行できる。
従って、教示走行中に自律走行体を停止させて経路上の障害物をどける等の作業を行うことができる。また、教示走行中に、操作者は、他の人や物体の通行を待ったり、ルートの確認や休憩のために中座したりできる。
【0012】
記録停止を行うタイミングは、自律走行体の走行停止から所定時間後であってもよい。
この方法では、記録停止は走行停止、つまり自律走行体の走行速度がほぼゼロになった後の所定時間後に行われるので、走行停止後の自律走行体の状態や動作、つまり自律走行体が何もせずにその場に留まっている状況が記録される。したがって、再現走行時に、急停止の後に自律走行体が直ちに走行を開始することがない。つまり、再現走行時に自律走行体の走行や動作が安定する。
【0013】
記録停止を行うタイミングは、自律走行体の走行停止と同時であってもよい。
この方法では、記録停止は走行停止と同時に行われるので、再現走行時に自律走行体が停止している時間を最小限にできる。
【0014】
この方法は、操作者が一時停止スイッチを停止操作した時から記録停止を行う時までの記録情報を編集するステップをさらに備えていてもよい。
この方法では、例えば、操作者が一時停止スイッチを停止操作した時から記録停止を行う時までの減速度を下げるように記録情報を編集することで、自律走行体が一時停止時に緩やかに停止できる。
なお、上記の編集時には、一時停止スイッチを停止操作した時から記録停止を行う時まで期間の前後の一方又は両方を編集してもよい。
【0015】
記録再開を行うタイミングは、自律走行体の走行開始と同時であってもよい。
この方法では、自律走行体の走行開始前の停止状態が記録されない。したがって、再現走行時において速度ゼロの箇所を少なくできる。
【0016】
記録再開を行うタイミングは、自律走行体の走行開始から所定時間後であってもよい。
この方法では、教示走行時に例えば自律走行体の減速時の動作及び加速時の動作が記録されない。したがって、再現走行時に自律走行体が教示走行時の加速及び減速に対応した動作を行うことがない。
【0017】
この方法は、記録中断位置の情報と記録再開位置の情報とをつなげるための情報を作成するステップをさらに備えていてもよい。
この方法では、記録中断時と記録再開時の位置、速度、装置動作がスムーズにつながるように情報を編集できる。
なお、上記の編集時には、記録中断位置から記録再開位置まで期間の前後の一方又は両方を編集してもよい。
【0018】
記録停止を行うタイミングは、操作者が一時停止スイッチを停止操作した時と同時であってもよい。
この方法では、教示走行時に例えば自律走行体の減速時の動作が記録されない。したがって、再現走行時に自律走行体が教示走行時の減速に対応した動作を行うことがない。
【0019】
記録再開を行うタイミングは、操作者が一時停止スイッチを再開操作したときと同時であってもよい。
この方法では、自律走行体の走行開始前の停止状態が記録される。したがって、再現走行時に、一時停止の後に自律走行体が直ちに走行を開始することがない。つまり、自律走行体が確実に走行停止する。
【0020】
本発明の他の見地に係る自律走行体の走行教示記憶方法は、車体と、車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記憶する記憶部と、車体の記録を停止及び再開させるためのスイッチであり車体の走行停止中にのみ有効となる記録一時停止スイッチと、を備えた自律走行体に適用される。
走行教示記憶方法は、下記のステップを備えている。
◎操作者によって記録一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎記録一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、記憶部への記録停止を直ちに行うタイミングを制御するステップ。
◎操作者によって記録一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎記録一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、記憶部への記録再開を直ちに行うタイミングを制御するステップ。
◎記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて記憶部に記録するステップ。
【0021】
この方法では、教示中かつ走行中は記録一時停止スイッチを無効にしており、自律走行体が教示及び走行を停止したときに記録一時停止スイッチが有効になる。操作者は、自律走行体の停止中に、記録一時停止スイッチを停止操作して、その後に記録一時停止スイッチを再開操作する。記録一時停止スイッチが停止操作されれば記録停止が直ちに行われ、記録一時停止スイッチが再開操作されれば記録再開が直ちに行われる。
記録一時停止スイッチは自律走行体が走行中には機能しないので、再現走行時に自律移動体の位置と速度が不連続になる問題が生じない。
【0022】
本発明のさらに他の形態に係る自律走行体は、車体と、車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記録する記憶部と、車体の教示走行及び記録を停止及び再開させるための一時停止スイッチと、プロセッサと、を備えている。
プロセッサは、下記のステップを実行する。
◎操作者によって一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、自律走行体の走行を停止し、記憶部への記録停止を行うタイミングを制御するステップ。
◎操作者によって一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、自律走行体の走行を開始し、記憶部への記録開始を行うタイミングを制御するステップ。
◎記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて記憶部記録するステップ。
【0023】
本発明のさらに他の見地に係る記録媒体は、車体と、車体を教示走行させたときの環境情報と車体位置情報を記録する記憶部と、車体の教示走行及び記録を停止及び再開させるための一時停止スイッチと、を備えた自律走行体の走行教示記憶方法をコンピュータに実行させるプログラムが保存されている。
プログラムは、下記のステップをコンピュータに実行させる。
◎操作者によって一時停止スイッチの停止操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎一時停止スイッチの停止操作を検出した場合、自律走行体の走行を停止し、記憶部への記録停止を行うタイミングを制御するステップ。
◎操作者によって一時停止スイッチの再開操作が行われたか否かを検出するステップ。
◎一時停止スイッチの再開操作を検出した場合、自律走行体の走行を開始し、記憶部への記録開始を行うタイミングを制御するステップ。
◎記録停止前の記録と記録再開後の記録をつなぎ合わせて記憶部に記録するステップ。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る自律走行体の走行教示記憶方法では、再現走行時において、自律走行体は、教示走行時の記録停止までの記録と記録再開からの記録に基づいて走行する際に、スムーズに走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図8】洗浄機の基本的な動作を示すフローチャート。
【
図9】手動操作教示モードの動作を示すフローチャート。
【
図10】自律清掃モードの実行時の洗浄機の動作を示すフローチャート。
【
図11】第1~第4実施形態に係る走行教示記憶制御動作を示すフローチャート。
【
図12】第1実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図13】第1実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図14】第2実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図15】第2実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図16】第3実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図17】第3実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図18】第4実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図19】第4実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図20】第5実施形態の制御部の全体構成を示す図。
【
図21】第5実施形態に係る走行教示記憶制御動作を示すフローチャート。
【
図22】第5実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【
図23】第5実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.第1実施形態
(1)自律走行式床洗浄機の全体構成
図1を用いて、第1実施形態に係る自律走行式洗浄機100(以下、「洗浄機100」という。自律走行体の一例)の全体構成を説明する。
図1は、洗浄機の一例の全体構成を示す図である。洗浄機100は、設定された清掃条件と走行経路とを自律的に再現する清掃機である。
洗浄機100は、走行部1を備える。走行部1は、洗浄機100を走行させる装置である。走行部1は、洗浄機100の本体を構成する本体Bを有する。走行部1は、本体Bの底部の左右端にそれぞれ、走行モータ11と、走行モータ11の出力回転軸に取り付けられ、走行モータ11の回転に従って回転する主輪13と、を有する。
【0027】
洗浄機100は、清掃部3を備える。清掃部3は、本体Bの底部に設けられ、指定された清掃条件に従って床面Fを清掃する装置である。
清掃部3は、洗浄液吐出口31と、スキージ33と、洗浄用部材35と、を有する。
【0028】
洗浄液吐出口31は、例えば、その一端から洗浄液を吐出する中空の部材である。例えば、洗浄液吐出口31を構成する中空の部材の一端は、洗浄用部材35を固定する固定部材351に設けられた空洞O1に対応する位置に配置される。一方、当該部材の他端は、洗浄液を供給する洗浄液供給ポンプ311の出口側に接続される。
【0029】
洗浄液供給ポンプ311の入口側は、本体Bの内部に搭載され、その内部に洗浄液を貯蔵する洗浄液供給タンク313の出口に接続されている。この構成により、洗浄液供給タンク313に貯蔵された洗浄液が、洗浄液供給ポンプ311により供給量を調節されて洗浄液吐出口31に供給され、洗浄液吐出口31の一端から空洞O1を介して床面Fに吐出される。洗浄液としては、例えば、水を用いることができる。
【0030】
スキージ33は、スキージ固定部材331に固定されて本体Bの底面後方に設けられ、床面F上に残留する洗浄液(床面Fの洗浄に使用後の洗浄液)を収集する部材である。スキージ33は、本体Bの幅方向に所定の長さだけ延びており、本体Bの移動に伴って移動することにより、本体Bの移動軌跡とスキージ33の幅方向の長さとで決まる領域(スキージ軌跡と呼ぶことにする)を形成する。スキージ33は、スキージ軌跡内の洗浄液を収集する。
上記の清掃部3を備えることにより、洗浄機100は、洗浄液を用いて床面Fを洗浄用部材35にて磨く清掃作業を実行できる。
【0031】
スキージ固定部材331には吸引口O2が設けられている。吸引口O2は、吸引モータ333により吸引されて内部が負圧となる回収部材335(例えば、空洞を有する容器)に接続されている。これにより、吸引口O2は、吸引モータ333の吸引により回収部材335が負圧となると、吸引力Pを生じる。その結果、吸引口O2は、当該吸引力Pによりスキージ33により収集された洗浄液やゴミなどを吸引して、回収部材335へと搬送できる。吸引口O2にて発生する吸引力Pは、例えば、吸引モータ333の出力を調整することにより、調整できる。
【0032】
スキージ固定部材331は、ジョイントJを介して、スキージ昇降アクチュエータ337に接続され、床面Fに対して昇降可能となっている。これにより、スキージ33は、床面F上を接触するか、床面Fから離れるかを任意に設定可能となる。この結果、スキージ33は、必要に応じて、床面F上の液体(洗浄液)などを、洗浄機100の後方へ移動するのを抑制できる。
洗浄用部材35は、本体Bの底面の前方側に設けられた固定部材351に固定された、床面Fを洗浄するためのブラシである。固定部材351は、洗浄用部材回転モータ353の出力回転軸に接続されている。そのため、洗浄用部材35は、洗浄用部材回転モータ353の回転によって洗浄液が存在する床面F上にて回転することで、床面Fを洗浄する。
【0033】
洗浄機100は、制御部5を有する。制御部5は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、ハードディスクドライブ、SSDなど)、各種インターフェースなどを備えたコンピュータシステムである。制御部5は、洗浄機100に関する各種制御を行う(後述)。
洗浄機100は、走行経路教示部7を備える。走行経路教示部7は、操作者による走行部1の移動操作を受け付ける装置である。走行経路教示部7は、取付部材8を介して、本体Bの上部後側に取り付けられている。これにより、操作者は、走行経路教示部7を操作して走行部1を移動操作できる(後述)。
【0034】
他の実施形態として、走行経路教示部7は、本体Bに取り付けられていなくともよい。この場合、走行経路教示部7は、例えば、ジョイスティックなどのコントローラである。これにより、操作者は、洗浄機100を遠隔操作できる。
【0035】
洗浄機100は、設定部9を備える。設定部9は、洗浄機100に関する各種設定を行うための操作盤であり、本体Bの上方後側の表面に取り付けられている。また、設定部9は、走行経路教示部7の近傍に設けられている。これにより、操作者は、走行経路教示部7を操作して走行部1を操作しつつ、設定部9を操作できる。
他の実施形態として、設定部9は、本体Bに取り付けられていなくてもよい。この場合、設定部9は、例えば、ポータブル端末などの無線通信可能なコンソールとできる。これにより、操作者は、洗浄機100を遠隔にて設定できる。
【0036】
(2)走行経路教示部の構成
図2を用いて、走行経路教示部7の構成の一例を説明する。
図2は、走行経路教示部の構成の一例を示す図である。
走行経路教示部7は、ハンドル71a、71bを有する。ハンドル71a、71bは、それぞれ、筐体73の左右側面に取り付けられている。ハンドル71a、71bは、操作者が洗浄機100を操作するときに使用される。
【0037】
例えば、ハンドル71a、71bを把持する操作者は、ハンドル71a、71bを介して、洗浄機100を操作者の方へ引っ張る力、又は、洗浄機100を押し出す力のいずれかを加えることができる。ハンドル71a、71bのそれぞれにかける力を調節することにより、操作者は、洗浄機100の走行方向を調整できる。例えば、洗浄機100の前方方向から見て右側のハンドル71aに対して、洗浄機100を引っ張る力を加えれば、洗浄機100は左へと方向転換する。
【0038】
ハンドル71a、71bは、筐体73に回動可能に取り付けられている。また、ハンドル71a、71bは、走行制御指令算出部75を介して制御部5に接続されている。走行制御指令算出部75は、ハンドル71a、71bの回動を電気信号に変換し、制御部5に出力する。これにより、操作者は、ハンドル71a、71bの回動操作によって、洗浄機100(走行部1)を操作できる。
例えば、ハンドル71a、71bの回動方向を調整することにより、操作者は、洗浄機100の前進と後進とを切り替え可能となっていてもよい。また、ハンドル71a、71bの回動量を調節することにより、洗浄機100の走行速度を調整可能となっていてもよい。さらに、ハンドル71aの回動量と、ハンドル71bの回動量とを異ならせて、洗浄機100の進行方向を変更してもよい。
【0039】
(3)設定部の構成
図3を用いて、設定部9の構成を説明する。
図3は、設定部の構成を示す図である。
設定部9は、切替部91を有する。切替部91は、洗浄機100の動作モードを選択し、制御部5に出力する。洗浄機100の動作モードとしては、自律清掃モードと手動操作モードとがある。自律清掃モードは、洗浄機100が、自律的に走行及び動作を再現することで床面Fを洗浄する動作モードである。手動操作モードは、洗浄機100が操作者により手動操作可能な状態にある動作モードである。
切替部91は、例えば、
図3に示すような切り替えスイッチにて構成できる。
【0040】
設定部9は、手動操作記憶スイッチ92を有する。手動操作記憶スイッチ92は、操作者による洗浄機100の手動操作の記憶を開始又は終了するためのスイッチである。具体的には、切替部91により動作モードが手動操作モードに設定された後に手動操作記憶スイッチ92が押されると、操作者の手動操作により実行された清掃条件及び走行経路を、洗浄機100に教示する手動操作教示モードが、手動操作モードのサブ動作モードとして開始する。一方、手動操作教示モードを実行中に手動操作記憶スイッチ92が切り替わると、手動操作教示モードが停止される。
手動操作記憶スイッチ92としては、例えば、
図3に示すような押ボタンスイッチとすることができる。この場合、手動操作記憶スイッチ92の切り替えは、当該押ボタンスイッチを押すことにより切り替わる。
【0041】
図3に示すように、清掃条件教示部93は、清掃条件調整部931を有する。清掃条件調整部931は、洗浄液吐出口31から吐出される洗浄液の供給量Sを教示清掃条件として設定する供給量調整部931aを有する。供給量調整部931aは、例えば押ボタンスイッチにより構成でき、ボタンを押す回数により供給量Sを設定できる。
清掃条件調整部931は、吸引口O2による吸引力Pを、教示清掃条件として設定する吸引力調整部931bを有している。吸引力調整部931bは、例えば押ボタンスイッチであり、ボタンを押す回数により吸引力Pを調整できる。これにより、床面Fに存在する洗浄液の吸引可能範囲を調節できる。
清掃条件調整部931は、洗浄用部材35による床面Fの洗浄力Wを教示清掃条件として設定する洗浄力調整部931cを有している。洗浄力調整部931cは、例えば押ボタンスイッチであり、ボタンを押す回数により洗浄用部材35による床面Fの洗浄力Wを調整できる。
【0042】
清掃条件教示部93は、運転切替部933を有する。運転切替部933は、洗浄液吐出口31からの洗浄液の供給の開始又は停止を指令する供給切替部933aを有する。供給切替部933aは、例えば押ボタンスイッチにより構成でき、ボタンを押すことにより洗浄液の供給開始と供給停止を切り替えることができる。
運転切替部933は、吸引口O2による吸引の開始又は停止を指令する吸引切替部933bを有している。吸引切替部933bは、例えば押ボタンスイッチであり、ボタンを押すことにより吸引開始と吸引停止とを切り替えることができる。
運転切替部933は、洗浄用部材35による床面Fの洗浄の開始又は停止を指令する洗浄切替部933cを有している。洗浄切替部933cは、例えば押ボタンスイッチであり、ボタンを押すことにより床面Fの洗浄開始と停止とを切り替えることができる。
【0043】
設定部9には、
図3に示すように、一時停止スイッチ201が設けられている。一時停止スイッチ201は、操作者の操作に基づいて、教示走行中に教示走行及び記録を停止及び再開する(つまり、停止解除する)ためのスイッチである。一時停止スイッチ201は、走行時に一度押すと停止操作(後述)が行われたことになり、もう一度押すと再開操作(後述)が行われたことになる。なお、一時停止スイッチ201は、押しボタンであるが、他の種類のスイッチでもよい。
一時停止スイッチ201は、
図4に示すように、制御部5内の一時停止制御部203に接続されている。一時停止制御部203は、一時停止スイッチ201の操作に基づいて各種制御を実行する(後述)。
【0044】
設定部9は、設定操作部95を有する。設定操作部95は、例えば押圧スイッチなどにより構成され、洗浄機100に関する各種設定の入力を受け付けて、設定変換部96を介して、制御部5に出力する。
設定変換部96は、設定操作部95にて受け付けた入力を、制御部5が解読可能な信号に変換する信号変換回路、又は、コンピュータシステムである。
【0045】
設定部9はディスプレイ97を有する。ディスプレイ97は、現在設定されている洗浄機100に関する各種設定情報を表示する。ディスプレイ97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイである。
他の実施形態において、ディスプレイ97は、現在の動作モード(自律清掃モード/手動操作モード/手動操作教示モード)、運転時間、洗浄機100を駆動するバッテリー残量などをさらに表示してもよい。
さらなる他の実施形態において、ディスプレイ97は、設定操作部95により洗浄機100の各種設定を行う際に、各種設定手順を表示してもよい。これにより、洗浄機100に関する情報を視覚的に操作者に提供し、操作者は表示された情報に基づいて、設定部9を操作できる。
【0046】
他の実施形態において、ディスプレイ97にはタッチパネルが設けられていてもよい。この場合、上記の切替部91、手動操作記憶スイッチ92、設定操作部95及び/又は一時停止スイッチ201は、当該タッチパネルにより実現されてもよい。
設定部9は、清掃条件教示部93を有している。清掃条件教示部93は、操作者による清掃条件の入力を受け付けて、清掃制御指令算出部94へ出力する。清掃制御指令算出部94は、清掃条件教示部93にて受け付けた清掃条件を、制御部5が解読可能な信号に変換して制御部5に出力する信号変換回路、又は、コンピュータシステムである。
【0047】
(4)制御部の構成
(4-1)制御部の全体構成
図4を用いて、制御部5の全体構成を説明する。
図4は、制御部の全体構成を示す図である。以下に説明する制御部5の各機能ブロックの全部又は一部は、制御部5を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムにより実現されてもよい。この場合、当該プログラムは、メモリ部及び/又は記憶装置に記憶されていてもよい。制御部5の各機能ブロックの全部又は一部は、SoC(System on Chip)などのカスタムICとして実現されていてもよい。
【0048】
制御部5は、1つのコンピュータシステムにより構成されていてもよいし、複数のコンピュータシステムにより構成されていてもよい。複数のコンピュータシステムにより制御部5を構成する場合、例えば、制御部5の複数の機能ブロックにて実現される機能を複数のコンピュータシステムに任意の割合で振り分けて実行させることができる。
【0049】
(4-2)清掃制御部の構成
図5を用いて、清掃部3を制御する清掃制御部51の構成を詳細に説明する。
図5は、清掃制御部の詳細構成を示す図である。
清掃制御部51は、清掃切替部511を有する。清掃切替部511は、3つの端子a、b、及びcを有している。端子aは清掃条件教示部93に接続され、端子bは清掃部制御部513及び制御統括部55に接続され、端子cは制御統括部55に接続されている。設定部9がディスプレイ97を有する場合には、端子bにディスプレイ97が接続されてもよい。
【0050】
清掃切替部511は、切替部91により選択されている動作モードに基づいて、端子bと端子aとを接続するか、あるいは、端子bと端子cとを接続するかのいずれかを選択して、清掃部制御部513に対して教示清掃条件を出力するか、再現清掃条件を出力するかを決定する。
具体的には、切替部91において手動操作モード(手動操作教示モードも含む)が選択されていれば、清掃切替部511は、端子aと端子bとを接続することで、清掃条件教示部93を、清掃部制御部513及び制御統括部55に接続する。これにより、清掃切替部511は、手動操作モード又は手動操作教示モードの実行時には、清掃条件教示部93にて設定された教示清掃条件を、清掃部制御部513及び制御統括部55に送信できる。また、ディスプレイ97が端子bに接続されている場合には、教示清掃条件をディスプレイ97に表示できる。
【0051】
一方、切替部91において自律清掃モードが選択されていれば、清掃切替部511は、端子bと端子cとを接続することで、制御統括部55を、清掃部制御部513に接続する。これにより、清掃切替部511は、自律清掃モードの実行時には、制御統括部55から出力される再現清掃条件を、清掃部制御部513に送信できる。また、ディスプレイ97が端子bに接続されている場合には、再現清掃条件をディスプレイ97に表示できる。
清掃部制御部513は、受信した教示清掃条件又は再現清掃条件に基いて、洗浄用部材回転モータ353、洗浄用部材押圧アクチュエータ357、洗浄液供給ポンプ311、及び/又は吸引モータ333に出力すべき制御量を算出し、当該制御量に応じた駆動電力を、上述のモータ、ポンプ、及び/又はアクチュエータに出力する。
【0052】
具体的には、清掃部制御部513は、清掃条件としての床面Fの洗浄力Wに基づいて、洗浄用部材回転モータ353の回転数、及び/又は、洗浄用部材押圧アクチュエータ357の押圧力を算出して、当該回転数及び押圧力に応じた駆動電力を、それぞれ、洗浄用部材回転モータ353及び洗浄用部材押圧アクチュエータ357に出力することで、洗浄用部材35による床面Fの洗浄力を制御する。
清掃部制御部513は、清掃条件としての洗浄液の供給量Sに基づいて洗浄液供給ポンプ311の洗浄液流量を算出し、当該流量に応じた駆動電力を洗浄液供給ポンプ311に出力することで、洗浄液吐出口31から吐出される洗浄液の量を制御する。
【0053】
清掃部制御部513は、清掃条件としての吸引力Pに基づいて吸引モータ333の回転数(及び/又は出力)を算出し、当該回転数(及び/又は出力)に応じた駆動電力を吸引モータ333に出力することで、吸引口O2の吸引力を制御する。
清掃部制御部513は、スキージ33を昇降させる駆動信号を当該アクチュエータに出力することで、スキージ33を昇降できる。
【0054】
洗浄用部材35は、押圧部材355を介して、洗浄用部材押圧アクチュエータ357に接続されている。これにより、洗浄用部材35は、床面Fに押し付けられて回転しながら床面Fを洗浄できる。洗浄用部材回転モータ353の回転数及び洗浄用部材押圧アクチュエータ357による押圧力を調整することにより、洗浄用部材35による床面Fの洗浄力を調整できる。洗浄用部材35としては、例えば、床面洗浄用のブラシなどを用いることができる。
清掃部3が上記の構成を有することにより、洗浄機100は、床面Fを洗浄したり床面Fの液体(洗浄液)などを回収したりといった、多様な清掃作業を実行できる。
【0055】
(4-3)走行制御部の構成
図6を用いて、走行制御部53の構成を詳細に説明する。
図6は、走行制御部の詳細構成を示す図である。
走行制御部53は、走行切替部531を有する。走行切替部531は、3つの端子d、e、及びfを有している。端子dは走行経路教示部7に接続され、端子eはモータ制御部533に接続され、端子fは制御統括部55に接続されている。
【0056】
走行切替部531は、切替部91により選択されている動作モードに基づいて、端子eと端子dとを接続するか、あるいは、端子eと端子fとを接続するかのいずれかを選択する。
具体的には、切替部91において手動操作モードが選択されていれば、走行切替部531は、端子eと端子dとを接続することで、走行経路教示部7をモータ制御部533に接続する。これにより、走行切替部531は、手動操作モード又は手動操作教示モードの実行時には、走行経路教示部7のハンドル71a、71bの回動量及び/又は回転方向を示す信号を、モータ制御部533に送信できる。
一方、切替部91において自律清掃モードが選択されていれば、走行切替部531は、端子eと端子fとを接続することで、制御統括部55をモータ制御部533に接続する。これにより、走行切替部531は、自律清掃モードの実行時には、制御統括部55から出力される再現走行制御指令を、モータ制御部533に送信できる。
【0057】
モータ制御部533は、入力されたハンドル71a、71bの回動量/回動方向、又は、再現走行制御指令に基づいて、走行モータ11の目標回転速度を算出し、当該目標回転速度にて走行モータ11を回転させるための駆動電力を、走行モータ11に出力する。
モータ制御部533は、エンコーダ111からのパルス信号に基づいて実際の走行モータ11の回転速度を算出しフィードバックして、走行モータ11に出力すべき駆動電力を算出する。従って、モータ制御部533は、例えば、PI(Proportional Integral)制御理論や、PID(Proportional Integral Differential)制御理論などを用いて走行モータ11を制御する。
本実施形態においては、本体Bの底部の左右端のそれぞれに、走行モータ11及び主輪13が設けられている。このような場合、モータ制御部533は、左右2つの走行モータ11のそれぞれの回転速度及び回転方向を独立に制御して、洗浄機100の進行方向を決定する。
他の実施形態において、制御部5が複数のコンピュータシステムにて構成される場合、モータ制御部533は、当該複数のコンピュータシステムのうちの1つであってもよい。すなわち、モータ制御部533の機能のみを1つのコンピュータシステムにて実現してもよい。この場合、モータ制御部533は、例えば、PI制御理論又はPID制御理論を用いたモータ制御装置である。
【0058】
(4-4)制御統括部の構成
図7を用いて、制御統括部55の構成を詳細に説明する。
図7は、制御統括部の詳細構成を示す図である。
制御統括部55は、教示データ取得部551を有する。教示データ取得部551は、手動操作教示モードの実行時に、教示位置情報と、教示清掃条件とを、教示データ取得時間において取得する。具体的には、教示データ取得部551は、SLAM部555(後述)から教示データ取得時間と教示位置情報とを入力し、清掃制御部51から当該教示データ取得時間における教示清掃条件を入力する。教示データの取得時間としては、例えば、制御部5のシステムクロックとできる。
教示データ取得部551は、取得した教示データ取得時間、教示位置情報、及び教示清掃条件を、清掃スケジュール作成部553に出力する。
【0059】
清掃スケジュール作成部553は、教示データ取得部551から取得した教示位置情報と、教示清掃条件と、教示データ取得時間と、を関連付けて清掃スケジュール500(記録情報の一例)を作成して記憶部57に記憶する。
SLAM部555は、本体Bの前方に設けられた前方検出器5551a(
図1)にて取得した洗浄機100の前方に存在する障害物に関する情報と、本体Bの後方に設けられた後方検出器5551b(
図1)にて取得した洗浄機100の後方に存在する障害物に関する情報と、エンコーダ111にて取得した走行モータ11の回転量に基づいて、洗浄機100の所定の座標上の位置に関する情報(位置情報)を推定する。
【0060】
前方検出器5551a及び後方検出器5551bは、例えば、その検出範囲が180°以上のレーザーレンジファインダ(Laser Range Finder、LRF)である。レーザーレンジファインダを前方検出器5551a及び後方検出器5551bとして用いた場合、走行部1と障害物との距離と、当該障害物が存在する方向とが、障害物に関する情報として取得される。
制御統括部55は、清掃再現部559を有する。清掃再現部559は、自律清掃モードの実行時に、清掃スケジュール500に記憶された教示データ取得時間、教示清掃条件、及び教示位置情報に基づいて、自律清掃モードの実行開始からの所定の経過時間における再現清掃条件と再現走行制御指令とを算出し、それぞれ、清掃制御部51及び走行制御部53に出力する。
【0061】
(4-5)SLAM部の構成
図7を用いて、SLAM部555の構成を詳細に説明する。SLAM部555は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)法にて、洗浄機100の位置(位置情報)推定と地図情報の作成とを実行する。
SLAM部555は、地図作成部5553を有する。地図作成部5553は、前方検出器5551aにて取得された前方の障害物(例えば、壁など)に関する情報、後方検出器5551bにて取得された後方の障害物に関する情報と、を用いて地図情報を作成する。地図情報は、位置推定部5555において位置情報を推定する際に用いられる。地図情報としては、ローカルマップとグローバルマップとが存在する。
【0062】
ローカルマップは、洗浄機100の周囲に存在する障害物(の存在位置)に関する地図情報である。ローカルマップは、前方検出器5551aにて取得された前方の障害物に関する情報と、後方検出器5551bにて取得された後方の障害物に関する情報とを、必要に応じて座標変換することにより作成される。
グローバルマップは、床面Fを清掃する際に洗浄機100が移動する環境(移動環境)に存在する障害物(の存在位置)に関する地図情報である。グローバルマップは、手動操作教示モードの実行時に取得したローカルマップに基づいて生成される。そのため、ローカルマップは、それを取得した時間(例えば、教示データ取得時間)に関連付けられて記憶部57に記憶されている。
【0063】
他の実施形態において、ローカルマップは、それを取得したときの洗浄機100の推定位置に関連付けられて記憶部57に記憶されてもよい。
さらなる他の実施形態において、グローバルマップは、専用のソフトウェア又はCADなどを用いて作成されてもよい。この場合、当該ソフトウェアなどで作成したグローバルマップは、洗浄機100の制御部5が解釈できるようなデータに変換される。
【0064】
地図作成部5553は、ある経過時間に関連付けられたローカルマップと、当該ある経過時間の近傍の時間に関連付けられたローカルマップとを、各経過時間における洗浄機100の位置に配置する(ローカルマップの中心を、対応する経過時間における洗浄機100の位置に配置する)ことで、移動環境のうちの一部(例えば、位置推定に必要な程度の範囲)を表す地図情報を、グローバルマップとして生成する。
また、地図作成部5553は、過去に生成したグローバルマップのうち、位置推定に不要となった部分を削除する。
【0065】
他の実施形態において、移動環境が環状経路を形成しない場合など、「環状経路問題」(初期段階に生成されたグローバルマップの一部と、最終段階に生成されたグローバルマップに一部が一致しなくなる問題)が発生しない場合には、移動環境の全体を表す地図情報をグローバルマップとして生成してもよい。
【0066】
SLAM部555は、位置推定部5555を有する。位置推定部5555は、地図作成部5553が生成したグローバルマップと、ローカルマップと、エンコーダ111が出力する走行モータ11の回転量と、に基づいて、所定の座標上の洗浄機100の位置に関する位置情報を推定する。
【0067】
具体的には、以下のようにして位置情報が推定される。ここでは、洗浄機100がある所定の時刻(時刻tkとする)における(推定)位置から移動して、次の時刻(時刻tk+1とする)にて洗浄機100が到達する位置を推定する場合を例として考える。
まず、位置推定部5555は、時刻tkから時刻tk+1までの間にエンコーダ111から出力されたパルス数から、時刻tkから時刻tk+1までの間の主輪13の回転量を算出し、当該回転量に基づいて、主輪13の回転による洗浄機100の移動距離を推定する(デッドレコニング)。
【0068】
次に、位置推定部5555は、時刻tkにおける事後確率(洗浄機100の位置と、時刻tkにおいて当該位置に洗浄機100が存在する確率と、の関係を表した確率分布に対応する)を、主輪13の回転による洗浄機100の移動距離分だけ移動させて、時刻tk+1における事前確率を算出する。
その後、位置推定部5555は、時刻tk+1におけるローカルマップとグローバルマップとを地図作成部5553から取得し、時刻tk+1におけるローカルマップとグローバルマップとをマップマッチングし、時刻tk+1における洗浄機100の位置情報を推定する。
【0069】
具体的には、例えば、グローバルマップ上において、主輪13の回転量に基づいて算出された推定位置の近傍のいくつかの位置に、時刻tk+1におけるローカルマップを配置し、必要に応じて(例えば、洗浄機100の姿勢が変化している場合には)当該ローカルマップをその中心回りに回転させて、マップマッチングを行う。
位置推定部5555は、当該マップマッチングの結果に基づいて、尤度(ローカルマップを配置した位置と、当該位置におけるグローバルマップとローカルマップ情報との一致度と、の関係を表すものに対応)を算出する。
【0070】
その後、位置推定部5555は、尤度と時刻tk+1における事前確率とを乗算することにより、時刻tk+1における事後確率を算出する。位置推定部5555は、時刻tk+1における事後確率が最大値となる位置、すなわち、洗浄機100が存在する可能性が最も高いと推定される位置を、時刻tk+1における洗浄機100の存在位置(位置情報)と推定する。
時刻tk+1における事後確率は、次の位置推定において事前確率として使用される。
【0071】
上記のように、位置推定部5555が、主輪13の回転量に基づいた移動距離と、前方検出器5551a及び後方検出器5551bとを用いて得られた地図情報と、を用いて位置推定を実行することにより、主輪13の回転量に基づいた移動距離に含まれる誤差(主に、主輪13と床面Fとの間の滑りに起因)と、地図情報に含まれる誤差(主に、前方検出器5551a及び後方検出器5551bにて取得した情報に含まれるノイズ成分に起因)とを相補的に減少させて、精度のよい位置推定を実行できる。
【0072】
SLAM部555は、経過時間決定部5557を有する。経過時間決定部5557は、教示データ取得時間及び自律清掃モードの実行開始からの経過時間を決定する。本実施形態において、経過時間決定部5557は、例えば、制御部5を構成するマイコンシステムなどの時計機能を用いて、教示データ取得時間を決定する。
一方、自律清掃モードの実行開始からの経過時間は、位置推定部5555にて推定された位置情報に基づき決定される。具体的には、例えば、清掃スケジュール500に記憶されている位置情報のうち、位置推定部5555にて推定された洗浄機100の位置情報に最も近い位置情報に関連付けられている教示データ取得時間を、経過時間とする。
【0073】
自律清掃モードの実行開始からの経過時間を、位置推定部5555にて推定された位置情報に基づいて決定することにより、洗浄機100は、自律清掃モードの実行時に、教示された教示清掃条件を実行するタイミングと場所とを正確に把握しながら、自律的に清掃作業を再現できる。
【0074】
(4-6)一時停止制御部の動作
一時停止制御部203は、
図7に示すように、制御統括部55の清掃スケジュール作成部553を制御できる。さらに、一時停止制御部203は、
図6に示すように、走行制御部53のモータ制御部533を制御できる。
【0075】
教示走行中に一時停止スイッチ201が停止操作されると、一時停止制御部203は、モータ制御部533を制御することで、本体Bの走行を停止する。また、一時停止制御部203は、清掃スケジュール作成部553に教示位置情報と教示データ取得時間を記憶部57に記憶することを停止させる(つまり、清掃スケジュール500の作成を停止する)。なお、本体Bの走行停止及び清掃スケジュール500の作成停止のタイミングは、設定操作部95からの入力に従って一時停止制御部203が決定及び変更可能である。なお、洗浄機100は、一時停止ではないときはユーザの移動操作により移動するが、一時停止中は移動操作があっても移動しない。
上記の一時停止中に一時停止スイッチ201が再開操作されると、洗浄機100が移動可能になる。そして、ユーザが走行経路教示部7を操作してモータ制御部533を制御することで、本体Bの走行を再開する。また、一時停止制御部203は、清掃スケジュール作成部553に教示位置情報と教示データ取得時間を記憶部57に記憶することを再開させる(つまり、清掃スケジュール500の作成を再開する)。なお、本体Bの走行再開及び清掃スケジュール500の作成再開のタイミングは、設定操作部95からの入力に従って一時停止制御部203が決定及び変更可能である。
【0076】
清掃スケジュール500には、洗浄機100の動作として、スキージ33の上下動作、スキージ33からの吸引動作、水の排水等が記録されている。したがって、一時停止スイッチ201が停止操作されると、一時停止制御部203が清掃スケジュール作成部553に上記動作の記録も停止させる。また、一時停止スイッチ201が再開操作されると、上記動作の記録が再開される。
【0077】
(5)自律走行式床洗浄機の動作
(5-1)基本動作
図8を用いて、洗浄機100の基本動作を説明する。
図8は、洗浄機の基本的な動作を示すフローチャートである。
ステップS1では、洗浄機100が動作を開始したときに、制御部5は、切替部91の状態を確認する。切替部91が「自動」を選択している場合にプロセスはステップS2に移行し、切替部91が「手動」を選択している場合にプロセスはステップS3に移行する。
ステップS2では、記憶部57に記憶された清掃スケジュール500に従って、洗浄機100は自律的に清掃作業を実行する。
【0078】
ステップS3では、手動操作モードを実行中に手動操作記憶スイッチ92が押されたか否かが判断される。押された場合にプロセスはステップS4に移行し、押されていない場合にプロセスはステップS5に移行する。
ステップS4では、制御部5は、動作モードを手動操作教示モードに移行させる。その結果、手動操作記憶スイッチ92が押されたタイミング以降の操作者による清掃作業が、清掃スケジュール500として記憶される。
ステップS5では、操作者の操作による洗浄機100の清掃作業を記憶しない手動操作モードの実行を維持する。
【0079】
上記のステップS4において手動操作教示モードを実行中に、制御部5は、手動操作記憶スイッチ92が押されたか否かをモニターする。手動操作教示モードの実行中に手動操作記憶スイッチ92が押された場合には、そのタイミングで手動操作教示モードが終了し動作モードが手動操作モードに切り替わり、当該タイミング以降の清掃作業が清掃スケジュール500に記憶されなくなる。すなわち、手動操作教示モードの実行時に手動操作記憶スイッチ92を押すことにより、操作者は、清掃作業の途中の任意のタイミングにてその記憶(教示)を停止できる。
【0080】
上記のように、本実施形態に係る洗浄機100は、切替部91における動作モードの選択、及び、手動操作記憶スイッチ92が押されたか否かに応じて、自律清掃モード、手動操作モード、及び手動操作教示モードを実行できる。
【0081】
(5-2)手動操作教示モードの動作
図9を用いて、手動操作教示モード(
図8のステップS4)を説明する。
図9は、手動操作教示モードの動作を示すフローチャートである。
ステップS11では、例えば、手動操作記憶スイッチ92が押された後に洗浄機100の手動操作を開始するか、又は、手動操作中に手動操作記憶スイッチ92が押されることで、当該手動操作の教示が開始される。つまり、清掃スケジュール500の作成が開始される。
【0082】
具体的には、教示データ取得部551が、手動操作記憶スイッチ92が押されたタイミング(経過時間:0)において、当該タイミングにおける、清掃制御部51が洗浄液供給ポンプに出力している洗浄液の供給量S、吸引モータ333に出力している吸引力P、洗浄用部材回転モータ353及び洗浄用部材押圧アクチュエータ357に出力している洗浄力Wを、経過時間0における教示清掃条件として入力する。
また、位置推定部5555に対して、経過時間0における洗浄機100の位置情報を推定するよう指令し、推定された位置情報を教示位置情報として入力する。
【0083】
清掃スケジュール作成部553は、経過時間0における教示位置情報と教示清掃条件とを教示データ取得部551から入力し、当該教示位置情報と教示清掃条件とを経過時間0と関連付けて記憶部57に記憶し、清掃スケジュール500とする。
【0084】
ステップS12では、教示データ取得部551は、経過時間決定部5557にて決定される経過時間をモニターし、当該経過時間が教示データ取得時間となっているか否かを判断する。教示データ取得時間になっていればプロセスはステップS13に移行する。
ステップS13では、位置推定部5555から教示データ取得時間における位置情報を教示位置情報として、清掃制御部51から教示データ取得時間における清掃条件を教示清掃条件として入力する。これにより、教示データ取得時間ごとに、教示位置情報と教示清掃条件とを取得できる。上記の教示データ取得時間は、例えば、手動操作記憶スイッチ92を押してから所定時間(例えば、500ms)ごとのタイミングとできる。
【0085】
ステップS14では、清掃スケジュール作成部553は、教示データ取得部551にて取得した教示位置情報と教示清掃条件とを、これらを取得した教示データ取得時間に関連付けて清掃スケジュール500に記憶する。
上記のステップS11~S14を、操作者による清掃作業が終了するまで(ステップS15において「Yes」となるまで)繰り返し実行することにより、操作者による清掃作業の開始から終了までの教示位置情報と教示清掃条件とを、清掃スケジュール500として記憶できる。
【0086】
清掃作業の(記憶の)終了は、手動操作教示モードの実行中に手動操作記憶スイッチ92を押すことにより指令できる。他の実施形態において、緊急停止ボタンなどの緊急停止の指令時においても、清掃作業の(記憶の)終了を指令可能となっていてもよい。
【0087】
(5-3)自律清掃モードにおける動作
図10を用いて、教示された清掃作業を再現する自律清掃モード(
図8のステップS2)を説明する。
図10は、自律清掃モードの実行時の洗浄機の動作を示すフローチャートである。今、自律清掃モードの実行開始からの経過時間tn-1までの清掃作業が実行済みであるとする。ここで、nは、n番目の自律清掃のための制御を示す。
ステップS21では、最初に、SLAM部555が、前方検出器5551a及び後方検出器5551bから、前方の障害物に関する情報及び後方の障害物に関する情報を取得する。
【0088】
ステップS22では、位置推定部5555が、エンコーダ111にて測定された走行モータ11の回転量、グローバルマップ、及び上記のステップS21において取得された情報に基づいて得られたローカルマップに基づいて、洗浄機100のx-y座標上の位置を推定する(ステップS22)。例えば、洗浄機100の位置が、x-y座標上において、(xn’,yn’、θn’)と推定されたとする。
【0089】
ステップS23では、洗浄機100の位置を推定後、経過時間決定部5557が、自律清掃モードの実行開始からの経過時間tnを決定する。
【0090】
ステップS24では、清掃再現部559が、経過時間tnにおける再現走行制御指令及び再現清掃条件を下記のように算出する。
今、経過時間tnが、教示データ取得時間TL(に最も近い)であると決定されたとする。この場合、清掃再現部559は、次の教示データ取得時間TL+1に関連付けられた位置情報(xL+1,yL+1,θL+1)を、清掃スケジュール500から読み出し、経過時間tnにおける再現走行制御指令を、推定された位置情報と目標とする位置情報との差分(xL+1-xn’,yL+1-yn’,θL+1-θn’)に基づいて算出する。
【0091】
一方、清掃再現部559は、教示データ取得時間TLに関連付けられた清掃条件(SL,WL,PL)を清掃スケジュール500から読み出し、当該清掃条件(SL,WL,PL)を経過時間tnにおける再現清掃条件として決定する。
【0092】
ステップS25では、清掃再現部559は、再現走行制御指令を走行制御部53に出力し、再現清掃条件を清掃制御部51に出力する。
自律清掃モードの実行時は、走行切替部531の端子eと端子fとが接続されているため、再現走行制御指令は、走行切替部531を介して、モータ制御部533に送信される。モータ制御部533は、受信した再現走行制御指令に基づいて、走行モータ11を制御する。
一方、清掃切替部511においては、端子bと端子cとが接続されているので、再現清掃条件は、清掃切替部511を介して、清掃部制御部513に送信される。清掃部制御部513は、受信した再現清掃条件に基づいて、清掃部3を制御する。
【0093】
ステップS26では、走行部1及び清掃部3をそれぞれ再現走行制御指令及び再現清掃条件に基づいて制御後、清掃再現部559は、清掃スケジュール500に記憶された清掃作業が全て実行したかどうかを確認する。
清掃スケジュール500に記憶された清掃作業が全て終了したかどうかは、例えば、清掃スケジュール500の末尾にある識別子(例えば、「エンド・オブ・ファイル」を示す識別子など)を検出することにより確認できる。
【0094】
清掃スケジュール500に記憶された清掃作業が全て実行されていないと判定される限り、上記のステップS21~S25が繰り返し実行され、清掃スケジュール500に記憶された全ての清掃作業が実行されたと判定されたとき(ステップS26において「Yes」の場合)に、再現清掃モードの実行を終了する。これにより、洗浄機100は、清掃スケジュール500に記憶された清掃作業を忠実に再現できる。
【0095】
上記のステップS21~S26を実行することにより、清掃再現部559は、清掃スケジュール作成部553にて作成された清掃スケジュール500に基づいて、再現清掃条件と再現走行制御指令とを算出し、それぞれ、清掃部3及び走行部1に出力することで、洗浄機100に対して自律的に清掃作業を実行させることができる。
【0096】
(6)走行教示記憶制御動作
図11~
図13を用いて、第1実施形態の走行教示記憶方法の制御動作を説明する。
図11は、第1~第4実施形態に係る走行教示記憶方法の制御動作を示すフローチャートである。
図12は、教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
図13は、再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
なお、以下の説明は、自律再現走行がコピー走行の例である(第1~第4実施形態に同じ)。
【0097】
第1実施形態の走行教示記憶方法は、
図11に示すように、下記のステップを備えている。
ステップS41では、操作者によって一時停止スイッチ201の停止操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。停止操作が行われれば、プロセスはステップS42に移行する。
【0098】
ステップS42では、洗浄機100の走行停止動作が行われる。具体的には、洗浄機100は減速を行い、そして停止する(走行速度がほぼゼロになる)。上記の動作は、一時停止制御部203がモータ制御部533を制御することで実現される。
ステップS43では、記録停止が行われる。具体的には、上記の動作は、一時停止制御部203が清掃スケジュール作成部553を制御し、清掃スケジュール作成部553が清掃スケジュール500の記録を停止することによって実現される。
この実施形態では、記録停止は、洗浄機100の走行停止(ステップS42において減速後の完全停止)から所定時間後に行われる。
【0099】
ステップS44では、一時停止スイッチ201の再開操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。
ステップS45では、記録再開が行われる。具体的には、上記の動作は、一時停止制御部203が清掃スケジュール作成部553を制御し、清掃スケジュール作成部553が清掃スケジュール500の記録を再開することによって実現される。
この実施形態では、記録再開は、操作者が一時停止スイッチ201を再開操作した時と同時に行われる。
【0100】
ステップS46では、洗浄機100の走行が開始される。具体的には、一時停止スイッチ201の再開操作が行われてから所定時間経過した後に、洗浄機100が加速を開始する。上記の動作は、一時停止制御部203がモータ制御部533を制御することで実現される。
ステップS47では、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせられて記憶部57に記録される。つまり、清掃スケジュール作成部553が記録をつなぎ合わせることで清掃スケジュール500を作成する。
その結果、
図11で示す教示走行時の速度や位置の情報が、
図12に示す動作を行う清掃スケジュール500として実現される。
【0101】
(6-1)第1~第4実施形態の共通の効果
この方法では、教示走行において、操作者が一時停止スイッチ201の停止操作を行うと、洗浄機100の走行停止動作及び記録停止が行われる。また、教示走行において、操作者が一時停止スイッチ201の再開操作を行うと、洗浄機100の走行開始及び記録開始が行われる。記録は、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせられる。
したがって、コピー走行時には、記録停止前と記録停止後とがつながれた記録を用いて、洗浄機100が走行可能になる。つまり、コピー走行時に洗浄機100の位置と速度が不連続になる問題が生じない。
この結果、再現走行時において、洗浄機100は、教示走行時の記録停止前の記録と記録再開後の記録に基づいて走行する際に、スムーズに走行できる。
【0102】
以上のように従来の問題が解消しているので、追加の効果として、教示走行中に洗浄機100を停止させて経路上の障害物をどける等の作業を行うことができる。また、教示走行中に、操作者は、他の人や物体の通行を待ったり、ルートの確認や休憩のために中座したりできる。
【0103】
さらに追加の効果として、本実施形態では上記の場合に操作者が一時停止スイッチ201によって走行停止動作及び記録停止をすることで、地図に上記障害物情報を残さないようにできる。これまでは、教示走行時に公共空間等で周囲の人の通行により地図上に人の軌跡が残ってしまうことがあったので、残った人の軌跡を障害物として回避する動作が発生するばかりでなく、地図に不要な情報が残存することにより、ナビゲーション性能の低下につながっていたが、本実施形態ではこういった課題が解決された。この効果は、コピー走行だけでなく、外周ダイレクトティーチング(塗り潰し)の場合にも得られる。
【0104】
(6-2)第1実施形態に特有の効果
第1実施形態では、記録停止(ステップS43)は走行停止(ステップS42において減速後の完全停止)の所定時間後に行われ、しかも記録再開(ステップS45)が、一時停止スイッチ201が再開操作された時(ステップS44でYes)と同時であるので、洗浄機100が停止解除されてから走行を開始する前の停止状態(
図12の時間範囲A、B)が記録される。
コピー走行時に、
図13に示すように、急停止の後に洗浄機100がしばらく経ってから(
図13の時間範囲A、Bが経過してから)走行を開始する。つまり、洗浄機100が確実に停まる。さらに、例えば、左旋回→中断→右旋回といった条件では、慣性やステア舵角の応答遅れなどが生じ得るが、本実施形態では急停止の後に急発進することがないので、洗浄機100の移動が軌跡に追随しやすい。つまり、コピー走行時に洗浄機100の走行や動作が安定する。
【0105】
さらに、上記動作に起因して、洗浄機100として好ましい動作が実現可能である。具体的には、コピー走行において、一時停止箇所において例えば時間範囲Bでブラシである洗浄用部材35を上下に動かすなどの準備動作を再現できる。つまり、教示走行において、一時停止スイッチ201の再開操作後に時間範囲Bで洗浄用部材35を下ろしてその後に動き始めた動作を教示した場合に、その洗浄用部材35を下ろす動作時間が確保されている。したがって、コピー走行時に、洗浄用部材35を下ろしきってから、洗浄機100を動かすことができる。その結果、清掃品質が低下しない。
【0106】
2.第2実施形態
図11、
図14~
図15を用いて、第2実施形態の走行教示記憶方法の制御動作を説明する。
図14は、第2実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
図15は、第2実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
なお、下記の制御動作の説明では、第1実施形態の
図11を利用する。ただし、一時停止制御部203が、洗浄機100の走行を停止し(ステップS42)、記憶部57への記録停止を行う(ステップS43)タイミングを制御し、さらに洗浄機100の走行を開始し(ステップS45)、記憶部57への記録再開を行う(ステップS45)タイミングを制御するので、それらタイミングが互いに異なるように設定可能である(第2~第4実施形態も同じ)。
【0107】
第2実施形態の走行教示記憶方法は、下記のステップを備えている。
ステップS41では、操作者によって一時停止スイッチ201の停止操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。停止操作が行われれば、プロセスはステップS42に移行する。
ステップS42では、洗浄機100の走行停止動作が行われる。具体的には、洗浄機100は減速を行い、そして停止する(走行速度がほぼゼロになる)。
【0108】
ステップS43では、記録停止が行われる。この実施形態では、記録停止は、洗浄機100の走行停止(ステップS42において減速後の完全停止)と同時に行われる。
ステップS44では、一時停止スイッチ201の再開操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。
ステップS45では、記録再開が行われる。この実施形態では、記録再開は、洗浄機100の走行開始(後述のステップS46)と同時に行われる。
【0109】
ステップS46では、洗浄機100の走行が開始される。具体的には、一時停止スイッチ201の再開操作が行われてから所定時間経過した後に、ユーザが走行経路教示部7を操作してモータ制御部533を制御することで、本体Bの走行を再開する。
ステップS47では、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせられて記憶部57に記録される。
【0110】
この実施形態では、記録停止(ステップS43)は走行停止(ステップS42において減速後の完全停止)と同時に行われ、記録再開(ステップS45)が走行開始(ステップS46)と同時に行われる。したがって、洗浄機100の停止状態(走行停止から走行開始までの状態、
図14の時間範囲C)が、清掃スケジュール500として記録されない。
以上の結果、再現走行時には、
図15に示すように、洗浄機100は、一時停止箇所で一回停止するが、すぐに動きだす(
図15の時間点D)。つまり、洗浄機100が停止している時間(時間ロス)を最小限にできる。
【0111】
3.第3実施形態
図1、
図16~
図17を用いて、第3実施形態の走行教示記憶方法の制御動作を説明する。
図16は、第3実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
図17は、第3実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
【0112】
第3実施形態の走行教示記憶方法は、下記のステップを備えている。
ステップS41では、操作者によって一時停止スイッチ201の停止操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。停止操作が行われれば、プロセスはステップS42に移行する。
【0113】
ステップS42では、洗浄機100の走行停止動作が行われる。具体的には、洗浄機100は減速を行い、そして停止する。
ステップS43では、記録停止が行われる。この実施形態では、記録停止は、操作者が一時停止スイッチ201を停止操作した時と同時に行われる。
【0114】
ステップS44では、一時停止スイッチ201の再開操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。
ステップS45では、記録再開が行われる。この実施形態では、記録再開を行うタイミングは、洗浄機100の走行開始から所定時間後(例えば、加速終了後、つまり定速になった後)である。
【0115】
ステップS46では、洗浄機100の走行が開始される。具体的には、一時停止スイッチ201の再開操作が行われてから所定時間経過した後に、ユーザが走行経路教示部7を操作してモータ制御部533を制御することで、本体Bの走行を再開する。
ステップS47では、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせられて、清掃スケジュール500として記憶部57に記録される。
【0116】
この実施形態では、記録停止は操作者が一時停止スイッチ201を停止操作した時と同時であり、記録再開は洗浄機100の加速終了、つまり定速になった後である。したがって、教示走行時に、洗浄機100の減速時、停止時、加速時の動作(
図16の時間範囲E)が記録されない。
その結果、再現走行時には、
図17に示すように、洗浄機100は、教示走行時の一時停止がなかったようにして(
図17では、時間前後でつなぎ合わされた点Gが示されている)、スムーズな走行及び動作を行う。つまり、洗浄機100が教示走行時の減速や加速に対応した動作を行うことがなく、さらには、停止している時間(時間ロス)がない。
【0117】
ステップS47では、具体的には、記録中断位置の情報と記録再開位置の情報とをつなげるための情報を作成するステップが実行される。具体的には、教示走行中に、記録中断位置の情報(位置や速度)と記録再開位置の情報(位置や速度)の線形補間することで、複数の補間点を作成する。そして、自律走行時に、記録中断位置と記録再開位置の位置や速度がスムーズにつながるように、補間などにより記録を編集する。
なお、上記の編集時には、記録中断位置から記録再開位置まで期間の前後の一方又は両方を編集してもよい。なお、記録の補間は線形以外でもよく、例えばスプライン曲線を用いる手法を採用してもよい。
【0118】
4.第4実施形態
図1、
図18~
図19を用いて、第4実施形態の走行教示記憶方法の制御動作を説明する。
図18は、第4実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
図19は、第4実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
第4実施形態の走行教示記憶方法は、下記のステップを備えている。
ステップS41では、操作者によって一時停止スイッチ201の停止操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。停止操作が行われれば、プロセスはステップS42に移行する。
【0119】
ステップS42では、洗浄機100の走行が停止される。具体的には、洗浄機100は減速を行い、そして停止する(走行速度ゼロになる)。
ステップS43では、記録停止が行われる。この実施形態では、記録停止は、洗浄機100の走行停止と同時に行われる。
【0120】
ステップS44では、一時停止スイッチ201の再開操作が行われたか否かが判断される。具体的には、一時停止制御部203が上記判断を行う。
ステップS45では、記録再開が行われる。この実施形態では、記録再開は、洗浄機100の走行開始(後述のステップS46)と同時に行われる。
【0121】
ステップS46では、洗浄機100の走行が開始される。具体的には、一時停止スイッチ201の再開操作が行われてから所定時間経過した後に、ユーザが走行経路教示部7を操作してモータ制御部533を制御することで、本体Bの走行を再開する。
ステップS47では、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせられて記憶部57に記録される。
【0122】
この実施形態では、操作者が一時停止スイッチ201を停止操作した時から記録停止を行う時までの清掃スケジュール500が編集される(つまり、記録中断地点と記録再開地点の位置、速度、清掃操作がスムーズにつながるように、清掃スケジュール500の情報が例えば補間される)。具体的には、清掃スケジュール作成部553が清掃スケジュール500を上記のように編集する。例えば、
図18に示すように、操作者が一時停止スイッチ201を停止操作した時から記録停止を行う時まで(減速時間範囲G)の減速度を下げるように清掃スケジュール500が編集される(後述)。
【0123】
この実施形態では、前述のように、記録停止(ステップS43)は走行停止(ステップS42において減速後の完全停止)と同時に行われ、記録再開(ステップS45)が走行再開(ステップS46の加速開始)と同時に行われる。したがって、洗浄機100の停止状態(走行停止から走行開始までの状態)が記録されない。
その結果、コピー走行時に、
図19に示すように、洗浄機100が停止している時間を最小限にできる。
【0124】
この実施形態では、前述のように、操作者が一時停止スイッチ201を停止操作した時から記録停止を行う時まで(
図18の減速時間範囲G)の減速度を下げるように記録情報が編集される。具体的には、停止位置は編集前後で同じになることを条件として、望みの減速度を得るために、自律走行時の減速開始地点を教示走行時の停止操作位置より前側にずらす。これにより、
図19に示すように、自律走行時の減速時間範囲Hが教示走行時の減速時間範囲Gよりも前後に長くなる。
したがって、コピー走行時に、洗浄機100は、
図19に示すように、一時停止箇所(
図19の時間I)で緩やかに停止する。つまり、急停止するのが防止される。急停止が無ければ、スリップが防止され、また見た目の違和感が低下する。
以上に述べたように、上記の編集時には、一時停止スイッチ201を停止操作した時から記録停止を行う時まで期間の前後両方を編集している。ただし、一時停止スイッチ201を停止操作した時から記録停止を行う時まで期間だけ又はそれに加えて前後の片方だけを編集するようにしてもよい。
【0125】
5.第5実施形態
図20を用いて、制御部5の全体構成を説明する。
図20は、第5実施形態の制御部の全体構成を示す図である。なお、第5実施形態は第2実施形態と基本構成及び基本動作が同じなので、以下は異なる点を中心に説明する。
【0126】
設定部9には、
図20に示すように、記録一時停止スイッチ207が設けられている。記録一時停止スイッチ207は、操作者の操作に基づいて、走行停止中に記録を停止及び再開するためのスイッチである。記録一時停止スイッチ207は、ボタンであるが、他のスイッチでもよい。また、記録一時停止スイッチ207はタッチパネルのアイコンボタンでもよい。
記録一時停止スイッチ207は、制御部5内の記録一時停止制御部209に接続されている。
【0127】
記録一時停止制御部209は、記録一時停止スイッチ207の操作に基づいて各種制御を実行する。具体的には、一時停止制御部203は、制御統括部55の清掃スケジュール作成部553(第1実施形態の
図7を参照)を制御できる。
【0128】
記録一時停止スイッチ207は、本体Bの走行停止中にのみ有効となる。例えば、記録一時停止スイッチ207bがタッチパネルのアイコンボタンの場合は、洗浄機100が走行中は記録一時停止スイッチ207をグレーアウトして押せなくし、洗浄機100が走行停止したらグレーアウトを解除することで記録一時停止スイッチ207を押せるようにする。
本体Bの走行停止中に記録一時停止スイッチ207が停止操作されると、記録一時停止制御部209は、清掃スケジュール作成部553に清掃スケジュール500の記録を停止させる(つまり、本体Bの位置と時間の記録が停止させられる)。
上記の記録一時停止中に記録一時停止スイッチ207が再開操作されると、記録一時停止制御部209は、清掃スケジュール作成部553に清掃スケジュール500の記録を再開させる(つまり、本体Bの位置と時間の記録が再開させられる)。
【0129】
図21~
図23を用いて、第5実施形態の走行教示記憶方法の制御動作を説明する。
図21は、第5実施形態に係る走行教示記憶制御動作を示すフローチャートである。
図22は、第5実施形態の教示走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
図23は、第5実施形態の再現走行時の時間と速度の関係を示すグラフである。
【0130】
第5実施形態の走行教示記憶方法は、下記のステップを備えている。
ステップS51では、操作者によって記録一時停止スイッチ207の停止操作が行われたか否かが判断される。具体的には、記録一時停止制御部209が上記動作を実行する。停止操作が行われれば、プロセスはステップS52に移行する。
【0131】
ステップS52では、本体Bが走行停止しているか否かが判断される。走行停止していればプロセスはステップS53に移行する。走行停止していなければプロセスはステップS51に戻る。
ステップS53では、記録停止が直ちに行われる。
【0132】
ステップS54では、記録一時停止スイッチ207の再開操作が行われたか否かが判断される。具体的には、記録一時停止制御部209が上記動作を実行する。再開操作が行われれば、プロセスはステップS55に移行する。
【0133】
ステップS55では、記録再開が直ちに行われる。
ステップS56では、記録停止前の記録と記録再開後の記録がつなぎ合わせて記録される。
【0134】
この方法では、教示走行中は記録一時停止スイッチ207を無効にしており、洗浄機100が停止したら記録一時停止スイッチ207が有効になる。操作者は、洗浄機100の停止中に、記録一時停止スイッチ207を停止操作して、その後に記録一時停止スイッチ207を再開操作する。記録一時停止スイッチ207が停止操作されれば記録停止が直ちに行われ、記録一時停止スイッチ207が再開操作されれば記録再開が直ちに行われる。以上より、
図22において、走行停止時から記録停止時までの時間範囲Jと、記録再開時から走行開始時までの時間範囲Kが記録される。
したがって、コピー走行時に、
図23に示すように、洗浄機100は、一時停止箇所で停止中に動作がしばらく停止し(
図23の時間範囲J、K)、その後に動きだす。
この実施形態では、記録一時停止スイッチ207は洗浄機100が走行中には機能しないので、コピー走行時に洗浄機100の位置と速度が不連続になる問題が生じない。
【0135】
6.第6実施形態
他の実施形態として、予め作業者が外周ダイレクトティーチングにより教示した外周内において制御部が決定した自律走行経路を自律的に走行する塗り潰し走行の例を説明する。
第1実施形態と同じ洗浄機100によって、外周ダイレクトティーチングが行われる。このときに、位置と、地図が記録される(時刻は記録されない)。
【0136】
教示走行時には、上記の第1~第5実施形態の走行教示記憶方法が実行されると、地図に不要な情報が残存することを防止できる。その結果、ナビゲーション性能の低下が防がれる。本実施形態では例えばカートなど大きな障害物がそばを通る際に、操作者が一時停止スイッチ201によって洗浄機100の走行を停止することで、地図に上記障害物情報を残さないようにできる。
【0137】
7.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
第1~第4実施形態の変形例として、本体Bの走行停止及び清掃スケジュール500の作成停止のタイミングと、本体Bの走行再開及び清掃スケジュール500の作成再開のタイミングは、第1~第4実施形態の各パターンを適宜組み合わせ可能である。
洗浄機において清掃部の構造及び清掃方法は特に限定されない。
【0138】
第1~第4実施形態の一時停止スイッチは、2つのスイッチ(例えば、停止操作スイッチと再開操作スイッチ)によって実現されていてもよい。
第5実施形態の記録一時停止スイッチは、2つのスイッチ(例えば、停止操作スイッチと再開操作スイッチ)によって実現されていてもよい。
第3実施形態では記録中断及び記録再開を行っていたが、変形例として、記録中断及び記録再開を行わずに、編集によって停止操作時の位置と定速走行開始時の位置とをつなげてもよい。
【0139】
自律走行体は洗浄機以外のものでもよい。例えば、自律走行体は、ゴルフボール集球機、芝刈り機でもよい。
ゴルフボール集球機の装置の動作(自律走行時に再現したい装置固有の制御対象の指示状態又は指示可能な実状態)としては、集球動作、排球動作がある。
芝刈り機の装置の動作としては、カッタの駆動及び停止がある。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、自律走行体の走行教示記憶方法に広く適用できる。
【符号の説明】
【0141】
1 :走行部
3 :清掃部
5 :制御部
7 :走行経路教示部
8 :取付部材
9 :設定部
10 :洗浄機
11 :走行モータ
13 :主輪
31 :洗浄液吐出口
33 :スキージ
35 :洗浄用部材
51 :清掃制御部
53 :走行制御部
55 :制御統括部
57 :記憶部
71a :ハンドル
71b :ハンドル
73 :筐体
75 :走行制御指令算出部
91 :切替部
92 :手動操作記憶スイッチ
93 :清掃条件教示部
94 :清掃制御指令算出部
95 :設定操作部
96 :設定変換部
97 :ディスプレイ
100 :自律走行式洗浄機
111 :エンコーダ
201 :一時停止スイッチ
203 :一時停止制御部
207 :記録一時停止スイッチ
209 :記録一時停止制御部
311 :洗浄液供給ポンプ
313 :洗浄液供給タンク
331 :スキージ固定部材
333 :吸引モータ
335 :回収部材
337 :スキージ昇降アクチュエータ
351 :固定部材
353 :洗浄用部材回転モータ
355 :押圧部材
357 :洗浄用部材押圧アクチュエータ
500 :清掃スケジュール
511 :清掃切替部
513 :清掃部制御部
531 :走行切替部
533 :モータ制御部
551 :教示データ取得部
553 :清掃スケジュール作成部
555 :SLAM部
559 :清掃再現部
5551a :前方検出器
5551b :後方検出器
5553 :地図作成部
5555 :位置推定部
5557 :経過時間決定部
B :本体