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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074437
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】車両用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20220511BHJP
【FI】
H02K11/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184474
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】壁谷 英典
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏則
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611AA03
5H611BB01
5H611BB09
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT02
5H611UA01
(57)【要約】
【課題】電子部品の耐水性および耐油性を確保しつつ、車両用アクチュエータの小型化を実現することが可能な車両用アクチュエータを提供する。
【解決手段】この車両用アクチュエータ100は、車両に設けられるアクチュエータ1と、アクチュエータ1に取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵するとともに、異なる機能を有する複数の樹脂製機能ブロック8とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるアクチュエータと、
前記アクチュエータに取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵するとともに、異なる機能を有する複数の樹脂製機能ブロックとを備える、車両用アクチュエータ。
【請求項2】
前記複数の樹脂製機能ブロックは、
前記アクチュエータを駆動する駆動電力制御機能を有する駆動ブロックと、
前記アクチュエータを制御する制御機能および外部機器と通信する通信機能の少なくともいずれかを有する制御/通信機能ブロックとを含む、請求項1に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項3】
前記制御/通信機能ブロックは、
前記制御機能を有する制御ブロックと、
前記制御ブロックとは別個に設けられ、前記外部機器および前記制御ブロックと通信可能な前記通信機能を有する通信ブロックとを有する、請求項2に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項4】
前記複数の樹脂製機能ブロックの各々は、前記電子部品の周囲を覆うことにより、密閉封止する樹脂封止部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項5】
前記複数の樹脂製機能ブロックは、前記アクチュエータの外周部の異なる箇所に取り付けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用アクチュエータ。
【請求項6】
前記樹脂製機能ブロックは、前記アクチュエータとの間に配置されたシール部材を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アクチュエータに関し、特に、車両に設けられるアクチュエータを備える車両用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられるアクチュエータを備える車両用アクチュエータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、車両に設けられる電動モータ(車両用アクチュエータ)が開示されている。電動モータは、車両の電動パワーステアリング装置に用いられるモータである。電動モータには、電子制御ユニットが設けられている。電子制御ユニットは、ステアリングからの操舵トルク信号に基づいて、電動モータにおいて操舵トルクに応じた補助トルクを発生させるための駆動信号を発生させるように構成されている。
【0004】
具体的には、電子制御ユニットは、第1の基板と、第2の基板と、第3の基板と、ユニットカバーとを含んでいる。第1の基板には、電動モータに駆動信号を供給するスイッチング回路(電子部品)が搭載されている。第2の基板には、駆動信号を発生させるための電源電圧を平滑化する電解コンデンサ(電子部品)が搭載されている。第3の基板には、スイッチング回路(電子部品)を制御する制御回路が搭載されている。
【0005】
上記特許文献1のユニットカバーは、第1の基板、第2の基板および第3の基板の全てを収容して保護するように筒状形状を有している。ここで、電動モータは、ユニットカバーの開口部を閉塞するモータカバーを備えている。このように、電動モータは、ユニットカバーおよびモータカバーにより、電子制御ユニットの第1の基板、第2の基板および第3の基板に搭載されている電子部品の耐水性および耐油性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-106376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の電動モータでは、第1の基板、第2の基板および第3の基板の全てを筒状のユニットカバーに収容するので、ユニットカバーの内部空間を大きく確保する必要がある。これにより、上記特許文献1の電動モータでは、ユニットカバーの内部空間が大きくなることに起因してユニットカバーが大型化するので、電子制御ユニットを小型化することが困難であるという不都合がある。また、上記特許文献1の電動モータでは、ユニットカバーがなければ、電子制御ユニットの第1の基板、第2の基板および第3の基板に搭載されている電子部品の耐水性および耐油性を確保することができない。これらの結果、上記特許文献1の電動モータでは、電子部品の耐水性および耐油性を確保しつつ、電動モータ(車両用アクチュエータ)の小型化を実現することが困難であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電子部品の耐水性および耐油性を確保しつつ、車両用アクチュエータの小型化を実現することが可能な車両用アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における車両用アクチュエータは、車両に設けられるアクチュエータと、アクチュエータに取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵するとともに、異なる機能を有する複数の樹脂製機能ブロックとを備える。
【0010】
この発明の一の局面による車両用アクチュエータでは、上記のように、アクチュエータに取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵するとともに、異なる機能を有する複数の樹脂製機能ブロックを設ける。これにより、複数の樹脂製機能ブロックの各々に電子部品を内蔵することにより、電子部品の耐水性および耐油性を確保することができる。また、電子部品を複数の樹脂製機能ブロックに分割して内蔵することができるので、全ての電子部品を筒状のユニットカバー内に収容する場合と異なり、複数の樹脂製機能ブロックの各々の大きさを内蔵する電子部品に合わせて適切な大きさにすることができる。この結果、複数の樹脂製機能ブロックの各々の小型化を実現することができるので、電子部品の耐水性および耐油性を確保しつつ、車両用アクチュエータの小型化を実現することができる。
【0011】
上記一の局面による車両用アクチュエータにおいて、好ましくは、複数の樹脂製機能ブロックは、アクチュエータを駆動する駆動電力制御機能を有する駆動ブロックと、アクチュエータを制御する制御機能および外部機器と通信する通信機能の少なくともいずれかを有する制御/通信機能ブロックとを含む。
【0012】
このように構成すれば、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックとしてアクチュエータを動かすために必要な機能を分割することにより、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックを簡易な構造にすることができるので、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックの小型化を実現することができる。また、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックを分割して小型化することにより、車両に車両用アクチュエータを組み付ける際、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックと、車両の他の構造とが干渉しにくくなるので、アクチュエータへの配置の自由度を向上させることができる。また、機能を分割して小型化した駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックにより、車両内の車両用アクチュエータの組み付け位置に合わせて、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックを配置することができるので、車両用アクチュエータの設計自由度を向上させることができる。また、車両用アクチュエータの配置の自由度を向上させることにより、耐熱性、耐震性および電磁両立性が確保されたアクチュエータの所定箇所に、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロックを容易に配置することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御/通信機能ブロックは、制御機能を有する制御ブロックと、制御ブロックとは別個に設けられ、外部機器および制御ブロックと通信可能な通信機能を有する通信ブロックとを有する。
【0014】
このように構成すれば、アクチュエータを動かすために必要な機能である制御機能と通信機能とをさらに分割することにより、制御/通信機能ブロックを簡易な構造にすることができるので、制御/通信機能ブロックの小型化を実現することができる。
【0015】
上記一の局面による車両用アクチュエータにおいて、好ましくは、複数の樹脂製機能ブロックの各々は、電子部品の周囲を覆うことにより、密閉封止する樹脂封止部を含む。
【0016】
このように構成すれば、樹脂封止部により、電子部品を水および油から保護することができるので、電子部品の耐水性および耐油性を確実に確保することができる。
【0017】
上記一の局面による車両用アクチュエータにおいて、好ましくは、複数の樹脂製機能ブロックは、アクチュエータの外周部の異なる箇所に取り付けられている。
【0018】
このように構成すれば、アクチュエータに複数の樹脂ブロックを容易に取り付けることができるので、車両用アクチュエータの組立作業が煩雑にならないようにすることができる。
【0019】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、樹脂製機能ブロックは、アクチュエータとの間に配置されたシール部材を含む。
【0020】
このように構成すれば、シール部材により、樹脂製機能ブロック内への水および油の浸入を抑制することができるので、電子部品をより確実に水および油から保護することができる。
【0021】
なお、上記一の局面による車両用アクチュエータにおいて、以下のような構成も考えられる。
【0022】
(付記項1)
すなわち、上記制御/通信機能ブロックを備える車両用アクチュエータにおいて、制御/通信機能ブロックは、制御機能および通信機能の両方が設けられた制御通信ブロックを有する。
【0023】
このように構成すれば、制御機能と通信機能とを接続するための接続配線が必要ないので、車両用アクチュエータの部品点数の増加および大型化を抑制することができる。
【0024】
(付記項2)
上記一の局面による車両用アクチュエータにおいて、電子部品が搭載された基板をさらに備え、基板の接続端子は、樹脂製機能ブロックにおけるアクチュエータ側に配置されている。
【0025】
このように構成すれば、樹脂製機能ブロックの接続端子とアクチュエータとの電気的な接続に必要な配線の長さを短くすることができるので、樹脂製機能ブロックからアクチュエータに向かう方向の車両用アクチュエータの大型化を抑制することができる。
【0026】
(付記項3)
上記制御/通信機能ブロックを備える車両用アクチュエータにおいて、アクチュエータ内に内蔵されており、駆動ブロックおよび制御/通信機能ブロック同士を電気的に接続する接続配線をさらに備える。
【0027】
このように構成すれば、接続配線をアクチュエータ内に内蔵することにより、接続配線を水および油から保護することができるので、接続配線の防水性および防油性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1および第2実施形態による車両用アクチュエータの斜視図である。
図2図1の101-101線に沿った断面図である。
図3図2のZ部分の拡大図である。
図4】第1実施形態による車両用アクチュエータに用いられるリニアアクチュエータの斜視図である。
図5】第1実施形態による車両用アクチュエータに用いられるリニアアクチュエータの接続配線を示した斜視図である。
図6】第1実施形態による車両用アクチュエータの電気的な接続を示したブロック図である。
図7】第1実施形態による車両用アクチュエータにおける樹脂製機能ブロックと接続配線との電気的な接続を示した一部断面図である。
図8】第1実施形態による車両用アクチュエータにおける樹脂製機能ブロックをD方向の内側から見た斜視図である。
図9】第1実施形態による車両用アクチュエータにおける駆動ブロック、制御ブロックおよび通信ブロックのバリエーションを示した模式図である。
図10】第2実施形態による車両用アクチュエータに用いられるリニアアクチュエータを示した斜視図である。
図11】第1および第2実施形態の変形例による車両用アクチュエータの電動モータを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1図9を参照して、第1実施形態の車両用アクチュエータ100の構成について説明する。車両用アクチュエータ100は、自動車などの車両に搭載される。
【0031】
図1および図2に示すように、車両用アクチュエータ100は、変速機としての機能を有している。車両用アクチュエータ100は、ロウ状態、ハイ状態およびニュートラル状態に切り替わるように構成されている。具体的には、車両用アクチュエータ100は、リニアアクチュエータ1(特許請求の範囲の「アクチュエータ」の一例)と、第1ギヤ2と、第2ギヤ3とを備えている。ここで、リニアアクチュエータ1は、固定子4と、可動子5とを含んでいる。また、車両用アクチュエータ100は、シャフト6と、位置センサ7(図6参照)とを備えている。
【0032】
ここで、シャフト6の延びる方向をX方向とし、X方向のうちの一方向をX1方向とし、X方向のうちの他方向をX2方向とする。また、X方向に平行なシャフト6の中心軸線Cに直交する径方向をD方向とし、シャフト6の中心軸線C回りの周方向をR方向とする。
【0033】
第1ギヤ2には、シャフト6が回転可能に挿入されている。第1ギヤ2は、シャフト6において固定子4よりもX1方向側に配置されている。第1ギヤ2は、図示しない入力軸と係合している。第1ギヤ2は、可動子5の後述するドグクラッチ53と係合することにより、入力軸の駆動力をシャフト6に伝達するように構成されている。第2ギヤ3には、シャフト6が回転可能に挿入されている。第2ギヤ3は、シャフト6において固定子4よりもX2方向側に配置されている。第2ギヤ3は、図示しない入力軸と係合している。ここで、第2ギヤ3は、可動子5の後述するドグクラッチ53と係合することにより、入力軸の駆動力をシャフト6に伝達するように構成されている。
【0034】
図2および図3に示すように、固定子4は、可動子5を取り囲むように環状に形成されている。固定子4は、一対の第1突出部41と、一対の第2突出部42と、第3突出部43と、第1コイル44と、第2コイル45と、第3コイル46と、樹脂製のカバー部47と、外部コネクタ48(図1参照)とを含んでいる。
【0035】
一対の第1突出部41の各々は、D方向の内側に向かって突出している。一対の第1突出部41は、X方向に対向している。一対の第1突出部41は、X1方向側に配置されている。一対の第1突出部41は、磁性体(たとえば、鉄)により形成されている。一対の第2突出部42の各々は、D方向の内側に向かって突出している。一対の第2突出部42は、X方向に対向している。一対の第2突出部42は、X2方向側に配置されている。一対の第2突出部42は、磁性体(たとえば、鉄)により形成されている。第3突出部43は、D方向の内側に向かって突出している。第3突出部43は、一対の第1突出部41と、一対の第2突出部42との間に配置されている。第3突出部43は、磁性体(たとえば、鉄)により形成されている。
【0036】
第1コイル44は、一対の第1突出部41の間に配置されている。第1コイル44は、R方向に沿って周状に一対の第1突出部41の間に巻き回されている。第1コイル44と、一対の第1突出部41との間には、絶縁性のボビン44aが配置されている。第1コイル44は、ボビン44aに収容されている。ボビン44aは、略環状に形成されている。
【0037】
第2コイル45は、一対の第2突出部42の間に配置されている。第2コイル45は、R方向に沿って周状に一対の第2突出部42の間に巻き回されている。第2コイル45と、一対の第2突出部42との間には、絶縁性のボビン45aが配置されている。第2コイル45は、ボビン45aに収容されている。ボビン45aは、略環状に形成されている。
【0038】
第3コイル46は、第3突出部43に環状に巻き回されている。第3コイル46と、第3突出部43との間には、絶縁性の絶縁部材46aが配置されている。絶縁部材46aは、第3突出部43を取り囲むように略環状に形成されている。
【0039】
このように、固定子4には、ボビン44aと、ボビン45aと、絶縁部材46aとが設けられている。
【0040】
カバー部47は、固定子4のD方向の外側に配置されている。カバー部47は、一対の第1突出部41、一対の第2突出部42および第3突出部43をD方向の外側から囲んでいる。
【0041】
可動子5は、固定子4の第1コイル44、第2コイル45および第3コイル46が励磁することにより発生する引力および斥力により、X1方向およびX2方向に移動するように構成されている。具体的には、可動子5は、磁石51と、プランジャ52と、ドグクラッチ53とを含んでいる。
【0042】
磁石51は、プランジャ52のD方向の外側の面に配置されている。磁石51は、第1コイル44、第2コイル45および第3コイル46が励磁した状態で、引力および斥力を発生させるように構成されている。これにより、可動子5は、X1方向およびX2方向のいずれかに移動する。磁石51は、第1コイル44、第2コイル45および第3コイル46が励磁していない状態で、一対の第1突出部41および一対の第2突出部42との引力により、X方向において可動子5の位置を保持するように構成されている。
【0043】
プランジャ52は、D方向において、対向するように、固定子4の内側に配置されている。プランジャ52は、ドグクラッチ53のD方向の外側に固定されている。
【0044】
ドグクラッチ53は、入力軸と、第1ギヤ2または第2ギヤ3との接続を切替可能に構成されている。ドグクラッチ53は、第1ドグ歯53aと、第2ドグ歯53bとを有している。第1ドグ歯53aは、X1方向側に配置されている。第1ドグ歯53aは、第1ギヤ2と係合可能に構成されている。第2ドグ歯53bは、X2方向側に配置されている。第2ドグ歯53bは、第2ギヤ3と係合可能に構成されている。また、ドグクラッチ53は、X1方向およびX2方向に移動可能にシャフト6に取り付けられている。
【0045】
第1コイル44、第2コイル45および第3コイル46が励磁して磁石51に引力および斥力が発生することにより、プランジャ52およびドグクラッチ53がX1方向に一体的に移動した場合、第1ドグ歯53aと、第1ギヤ2とが係合する。これにより、入力軸の駆動力が、第1ギヤ2を介してシャフト6に伝達される。第1コイル44、第2コイル45および第3コイル46が励磁して磁石51に引力および斥力が発生することにより、プランジャ52およびドグクラッチ53がX2方向に一体的に移動した場合、第2ドグ歯53bと、第2ギヤ3とが係合する。これにより、入力軸の駆動力が、第2ギヤ3を介してシャフト6に伝達される。
【0046】
シャフト6は、X方向に延びる略円柱形状を有している。シャフト6には、第1ドグ歯53aと、第1ギヤ2とが係合することにより、入力軸の駆動力が第1ギヤ2を介して伝達される。これにより、車両用アクチュエータ100が、ロウ状態に切り替わる。シャフト6には、第2ドグ歯53bと、第2ギヤ3とが係合することにより、入力軸の駆動力が第2ギヤ3を介して伝達される。これにより、車両用アクチュエータ100が、ハイ状態に切り替わる。また、シャフト6に入力軸の駆動力が伝達されていない状態では、車両用アクチュエータ100が、ニュートラル状態に切り替わる。
【0047】
位置センサ7(図6参照)は、可動子5の磁石51からの磁束を検知することにより、可動子5のX方向における位置を検出するように構成されている。すなわち、車両用アクチュエータ100では、位置センサ7の検知信号に基づいて、ハイ状態、ロウ状態およびニュートラル状態が判断される。
【0048】
(樹脂製機能ブロック)
図4および図5に示すように、第1実施形態の車両用アクチュエータ100は、樹脂製の複数の樹脂製機能ブロック8と、接続配線9とを備えている。複数の樹脂製機能ブロック8の各々は、リニアアクチュエータ1に取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵している。詳細には、複数の樹脂製機能ブロック8の各々は、モールド樹脂内に基板を内蔵することにより、カバーを設けることなく、直接、耐水性および耐油性を有している。すなわち、複数の樹脂製機能ブロック8の各々には、電子部品が搭載された異なる機能を有する基板が内蔵されている。
【0049】
このように、複数の樹脂製機能ブロック8の各々には、樹脂の内部に電子部品が搭載された基板が埋め込まれている。具体的には、複数の樹脂製機能ブロック8の各々は、電子部品の周囲を覆うことにより、密閉封止する樹脂封止部81を含んでいる。樹脂封止部81は、熱硬化性のエポキシ樹脂などにより構成されている。樹脂封止部81は、基板に搭載される電子部品の形状および寸法に合わせて異なる形状に成型されている。これにより、複数の樹脂製機能ブロック8は、互いに異なる形状および寸法を有している。
【0050】
このような複数の樹脂製機能ブロック8の各々には、リニアアクチュエータ1を駆動させるための機能が分割して割り当てられている。すなわち、複数の樹脂製機能ブロック8は、駆動ブロック82と、制御/通信機能ブロック83とを含んでいる。制御/通信機能ブロック83は、制御ブロック84と、通信ブロック85とを有している。
【0051】
駆動ブロック82は、リニアアクチュエータ1を駆動する駆動電力制御機能を有している。駆動ブロック82は、FET(Field Effect Transistor)などの電力用半導体素子を有するパワーデバイス部を有している。制御ブロック84は、リニアアクチュエータ1を制御する制御機能を有している。制御ブロック84は、記憶部およびCPU(Central Processing Unit)を有するマイクロコントローラなどの制御部を有している。通信ブロック85は、外部機器および制御ブロック84と通信可能な通信機能を有している。通信ブロック85は、CAN(Controller Area Network)などの通信部を有している。このように複数の樹脂製機能ブロック8は、3つの機能が割り当てられている。
【0052】
駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85は、それぞれ、別個に設けられている。駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85は、リニアアクチュエータ1の外周部の異なる箇所に取り付けられている。ここで、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85は、それぞれ、固定子4のカバー部47の異なる箇所に形成された駆動ブロック用凹部47a、制御ブロック用凹部47bおよび通信ブロック用凹部47cに圧入されている。駆動ブロック用凹部47a、制御ブロック用凹部47bおよび通信ブロック用凹部47cの各々は、固定子4のカバー部47の外周面をD方向の内側に窪ませている。
【0053】
また、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85は、固定子4の外周部にR方向に沿って並んで配置されている。駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85は、所定角度よりも小さい等角度間隔で固定子4の外周部に取り付けられている。また、R方向において、制御ブロック84と、通信ブロック85との間には、駆動ブロック82が配置されている。駆動ブロック82と、制御ブロック84との間には、固定子4の外部コネクタ48が配置されている。
【0054】
図5および図6に示すように、接続配線9は、バスバーである。接続配線9は、固定子4の外周部の形状に合わせて、R方向に沿って延びている。接続配線9は、リニアアクチュエータ1内に内蔵されている。また、接続配線9は、車両用アクチュエータ100の各機器を電気的に接続している。すなわち、接続配線9は、固定子4内に埋め込まれた状態で、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85同士を電気的に接続している。また、接続配線9は、外部コネクタ48と、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85とを電気的に接続している。ここで、外部コネクタ48は、外部の制御装置などの外部機器と電気的に接続されているとともに、通信可能に接続されている。また、接続配線9は、駆動ブロック82と、第1コイル44、第2コイル45および第3コイル46とを電気的に接続している。また、電気配線は、位置センサ7と、制御ブロック84とを電気的に接続している。
【0055】
図7および図8に示すように、接続配線9は、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85の各々の接続端子85aに電気的に接続されるばね端子91を有している。ばね端子91は、接続配線9の端部に設けられている。ばね端子91は、駆動ブロック用凹部47a、制御ブロック用凹部47bおよび通信ブロック用凹部47c内に突出している。以下では、通信ブロック85の接続端子85aと、ばね端子91との接続を一例として説明するが、他のブロックと、ばね端子91との接続に関しても同様である。
【0056】
ばね端子91は、通信ブロック85が通信ブロック用凹部47cに圧入される際に、接続端子85aに当接する。詳細には、ばね端子91は、通信ブロック85が通信ブロック用凹部47cに圧入されることにより、通信ブロック85の接続端子85aにD方向の内側に向かって押圧されているとともに、通信ブロック85の接続端子85aをD方向の外側に向かって付勢している。これにより、ばね端子91と、通信ブロック85の接続端子85aとは、確実に電気的に接続される。
【0057】
上記通信ブロック85の接続端子85aは、基板の接続端子である。接続端子85aは、通信ブロック85のリニアアクチュエータ1側に配置されている。詳細には、接続端子85aは、D方向において、通信ブロック85の内側に配置されている。
【0058】
駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85の各々は、リニアアクチュエータ1との間に配置されたシール部材86を有している。以下では、通信ブロック85に設けられるシール部材86を一例として説明するが、他のブロックに設けられるシール部材86も同様である。シール部材86は、通信ブロック85と、リニアアクチュエータ1との間に密着している。シール部材86は、Oリングである。このように、通信ブロック85の接続端子85aは、シール部材86に囲まれている。
【0059】
図9に例示されているように、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85の各々は、異なるバリエーションを有していてもよい。
【0060】
駆動ブロック82は、たとえば、許容電流が100A用、50A用および10A用などのバリエーションを有していてもよい。駆動ブロック82は、許容電流が小さくなるにしたがって寸法も小さくなっていてもよい。100A用の駆動ブロック82、50A用の駆動ブロック82および10A用の駆動ブロック82の形状は、全て異なっていてもよい。
【0061】
制御ブロック84は、たとえば、記憶部の記憶容量が512kB、256kBおよび128kBなどのバリエーションを有していてもよい。制御ブロック84は、記憶容量が小さくなるにしたがって寸法も小さくなっていてもよい。
【0062】
通信ブロック85は、たとえば、通信部がCAN通信用、LIN(Local Interconnect Network)通信用、および、PWN(Pulse Width Moduration)用などのバリエーションを有していてもよい。通信ブロック85は、CAN通信用、LIN通信用、および、PWN用などのそれぞれにおいて寸法が異なっていてもよい。
【0063】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
第1実施形態では、上記のように、車両用アクチュエータ100に、リニアアクチュエータ1に取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵するとともに、異なる機能を有する複数の樹脂製機能ブロック8を設ける。これにより、複数の樹脂製機能ブロック8の各々に電子部品を内蔵することにより、電子部品の耐水性および耐油性を確保することができる。また、電子部品を複数の樹脂製機能ブロック8に分割して内蔵することができるので、全ての電子部品を筒状のユニットカバー内に収容する場合と異なり、複数の樹脂製機能ブロック8の各々の大きさを内蔵する電子部品に合わせて適切な大きさにすることができる。この結果、複数の樹脂製機能ブロック8の各々の小型化を実現することができるので、電子部品の耐水性および耐油性を確保しつつ、車両用アクチュエータ100の小型化を実現することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の樹脂製機能ブロック8に、リニアアクチュエータ1を駆動する駆動電力制御機能を有する駆動ブロック82と、リニアアクチュエータ1を制御する制御機能および外部機器と通信する通信機能の少なくともいずれかを有する制御/通信機能ブロック83とを設ける。これにより、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83としてリニアアクチュエータ1を動かすために必要な機能を分割することにより、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83を簡易な構造にすることができるので、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83の小型化を実現することができる。また、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83を分割して小型化することにより、車両に車両用アクチュエータ100を組み付ける際、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83と、車両の他の構造とが干渉しにくくなるので、リニアアクチュエータ1への配置の自由度を向上させることができる。また、機能を分割して小型化した駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83により、車両内の車両用アクチュエータ100の組み付け位置に合わせて、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83を配置することができるので、車両用アクチュエータ100の設計自由度を向上させることができる。また、車両用アクチュエータ100の配置の自由度を向上させることにより、耐熱性、耐震性および電磁両立性が確保されたリニアアクチュエータ1の所定箇所に、駆動ブロック82および制御/通信機能ブロック83を容易に配置することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、制御/通信機能ブロック83に、制御機能を有する制御ブロック84と、制御ブロック84とは別個に設けられ、外部機器および制御ブロック84と通信可能な通信機能を有する通信ブロック85とを設ける。これにより、リニアアクチュエータ1を動かすために必要な機能である制御機能と通信機能とをさらに分割することにより、制御/通信機能ブロック83を簡易な構造にすることができるので、制御/通信機能ブロック83の小型化を実現することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の樹脂製機能ブロック8の各々に、電子部品の周囲を覆うことにより、密閉封止する樹脂封止部81を設ける。これにより、樹脂封止部81により、電子部品を水および油から保護することができるので、電子部品の耐水性および耐油性を確実に確保することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の樹脂製機能ブロック8を、リニアアクチュエータ1の外周部の異なる箇所に取り付ける。これにより、リニアアクチュエータ1に複数の樹脂ブロックを容易に取り付けることができるので、車両用アクチュエータ100の組立作業が煩雑にならないようにすることができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、樹脂製機能ブロック8に、リニアアクチュエータ1との間に配置されたシール部材86を設ける。これにより、シール部材86により、樹脂製機能ブロック8内への水および油の浸入を抑制することができるので、電子部品をより確実に水および油から保護することができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、図10を参照して、第2実施形態の車両用アクチュエータ200について説明する。詳細には、駆動ブロック82、制御ブロック84および通信ブロック85が別個に設けられる第1実施形態の車両用アクチュエータ100とは異なり、第2実施形態の車両用アクチュエータ200は、制御ブロック84および通信ブロック85が、それぞれ、同一に設けられている。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0071】
(樹脂製機能ブロック)
図10に示すように、第2実施形態の車両用アクチュエータ200は、樹脂製の複数の樹脂製機能ブロック208と、接続配線9とを備えている。詳細には、複数の樹脂製機能ブロック208の各々は、モールド樹脂内に基板を内蔵することにより、カバーを設けることなく、直接、耐水性および耐油性を有している。すなわち、複数の樹脂製機能ブロック208の各々には、電子部品が搭載された異なる機能の基板が内蔵されている。
【0072】
このような複数の樹脂製機能ブロック208の各々には、リニアアクチュエータ1を駆動させるための機能が分割して割り当てられている。すなわち、複数の樹脂製機能ブロック208は、駆動ブロック82と、制御/通信機能ブロック83とを含んでいる。制御/通信機能ブロック83は、制御機能および通信機能の両方が設けられた制御通信ブロック286を有している。
【0073】
駆動ブロック82は、リニアアクチュエータ1を駆動する駆動電力制御機能を有している。駆動ブロック82は、FETなどの電力用半導体素子を有するパワーデバイス部を有している。制御通信ブロック286は、リニアアクチュエータ1を制御する制御機能、および、外部機器と通信可能な通信機能を有している。制御通信ブロック286は、記憶部およびCPUを有するマイクロコントローラなどの制御部と、CANなどの通信部を有している。このように複数の樹脂製機能ブロック208は、3つの機能が割り当てられている。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0074】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
第2実施形態では、上記のように、車両用アクチュエータ200に、リニアアクチュエータ1に取り付けられ、少なくとも電子部品をそれぞれ樹脂に内蔵するとともに、異なる機能を有する複数の樹脂製機能ブロック208を設ける。これにより、電子部品の耐水性および耐油性を確保しつつ、車両用アクチュエータ100の小型化を実現することができる。
【0076】
また、第2実施形態では、上記のように、制御/通信機能ブロック83に、制御機能および通信機能の両方が設けられた制御通信ブロック286を設ける。これにより、制御機能と通信機能とを接続するための接続配線9が必要ないので、車両用アクチュエータ200の部品点数の増加および大型化を抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0077】
[変形例]
今回開示された第1および第2実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記第1および第2実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、複数の樹脂製機能ブロック8の各々には、電子部品が搭載された異なる機能の基板が内蔵されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の樹脂製機能ブロックの各々には、基板に電子部品を搭載することなく、電子部品同士をバスバーにより直接接続してもよい。
【0079】
また、上記第1および第2実施形態では、車両用アクチュエータ100は、本発明のアクチュエータとして、複数の樹脂製機能ブロック8が取り付けられたリニアアクチュエータ1を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11に示す変形例の車両用アクチュエータ300は、本発明のアクチュエータとして、複数の樹脂製機能ブロック8が取り付けられた電動モータ301を備えていてもよい。
【0080】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の樹脂製機能ブロック8は、リニアアクチュエータ1(アクチュエータ)の外周部の異なる箇所に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の樹脂製機能ブロックは、アクチュエータの上端部、下端部および内側などの箇所に取り付けられてもよい。
【0081】
樹脂製機能ブロック8は、リニアアクチュエータ1(アクチュエータ)との間に配置されたシール部材86を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、樹脂製機能ブロックは、シール部材を含んでいなくてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 リニアアクチュエータ(アクチュエータ)
8、208 樹脂製機能ブロック
81 樹脂封止部
82 駆動ブロック
83 制御/通信機能ブロック
84 制御ブロック
85 通信ブロック
86 シール部材
100、200、300 車両用アクチュエータ
301 電動モータ(アクチュエータ)
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11