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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074438
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】圧力センサによる圧力測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 25/00 20060101AFI20220511BHJP
   G01L 1/20 20060101ALI20220511BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01L25/00 B
G01L1/20 Z
G01L5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184475
(22)【出願日】2020-11-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 学会名:第55回地盤工学研究発表会、 掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jgs55/21-5-4-02/public/pdf?type=in(21-5-4-02 感圧導電性鋼球を用いた二次元主応力方向の測定原理の開発)、 掲載日:令和2年7月1日、 学会名:令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会、 掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2020/CS2-30/public/pdf?type=in(CS2-11 PYRAMID SEGMENTATION FOR LOAD MEASUREMENT BASED ON ELECTRIC CONTACT THEORY)、 掲載日:令和2年8月5日、 学会名:令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会、 掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2020/CS9-51/public/pdf?type=in(CS9-56 ステンレス鋼球を用いた抵抗値変化の異方性による二次元載荷方向の推定方法)、 掲載日:令和2年8月5日
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピパットポンサー ティラポン
(72)【発明者】
【氏名】肥後 陽介
(72)【発明者】
【氏名】ルー ジールイ
(72)【発明者】
【氏名】間宮 基貴
(72)【発明者】
【氏名】川野 健一
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】久保田 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】那須 郁香
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB06
(57)【要約】
【課題】多次元の圧力を計測可能な圧力センサのキャリブレーション工程を簡素化する。
【解決手段】複数の球体12が互いに接触した状態で収容される収容部14と、収容部14内の電気抵抗値を検出可能に配置された電極16a,16bと、を有する圧力検知部10A,10B,10Cと、圧力検知部10A,10B,10C毎の電気抵抗値を計測可能な計測部30と、を備えた圧力センサ100による圧力測定方法は、少なくとも所定の一方向から圧力センサ100に荷重を載荷した際に、計測部30によって計測された電気抵抗値に基づいて圧力センサ100の固有パラメータを求めるキャリブレーション工程と、未知の荷重が圧力センサ100に載荷された際に、固有パラメータと、計測部30によって計測された圧力検知部10A,10B,10C毎の電気抵抗値と、に基づいて、圧力センサ100に作用する圧力を算出する測定工程と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する複数の球体が互いに接触した状態で収容される収容部と、前記収容部内の電気抵抗値を検出可能に配置された一対の電極と、を有する圧力検知部を少なくとも3つ備えるとともに、前記圧力検知部毎の電気抵抗値を計測可能な計測部を備えた圧力センサによる圧力測定方法であって、
少なくとも所定の一方向から前記圧力センサに荷重を載荷した際に、前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値に基づいて、前記圧力センサの固有パラメータを求めるキャリブレーション工程と、
任意の方向から未知の荷重が前記圧力センサに載荷された際に、前記固有パラメータと、前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値と、に基づいて、前記圧力センサに作用する圧力を算出する測定工程と、を有する、
圧力測定方法。
【請求項2】
前記キャリブレーション工程では、前記圧力センサに前記所定の一方向から荷重が載荷された状態において前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値に基づいて、荷重の変化に対する電気抵抗値の変化割合である較正時ゲージ率を前記圧力検知部毎に算出し、前記較正時ゲージ率の総和であるゲージ率総和を前記固有パラメータの1つとして求め、
前記測定工程では、前記ゲージ率総和を、未知の荷重が前記圧力センサに対して載荷された状態において前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値に基づいて算出される荷重の変化に対する電気抵抗値の変化割合である測定時ゲージ率の総和として用いることによって、前記圧力センサに作用する圧力が算出される、
請求項1に記載の圧力測定方法。
【請求項3】
前記較正時ゲージ率は、前記圧力センサ内に初期応力が生じた状態と、前記圧力センサに前記所定の一方向から既知の荷重が載荷されることにより前記圧力センサ内に前記初期応力よりも大きい最終応力が生じた状態と、の2つの状態において前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値に基づいて算出される、
請求項2に記載の圧力測定方法。
【請求項4】
前記キャリブレーション工程では、
前記初期応力に相当する基準応力と、
前記基準応力に対応する基準電気抵抗値と、
前記較正時ゲージ率を前記ゲージ率総和により正規化した正規化較正時ゲージ率の最大値及び最小値と、が前記固有パラメータとしてさらに求められ、
前記測定工程では、前記固有パラメータに基づいて、下記数1及び下記数2により、前記圧力センサ内に生じた応力の最大主応力σI及び最小主応力σIIIが求められる、
請求項3に記載の圧力測定方法。

【数1】
【数2】
但し、
c:基準電気抵抗値
σc:基準応力
c:ゲージ率総和
c I:較正時ゲージ率をゲージ率総和で正規化した正規化較正時ゲージ率の最大値
c III:較正時ゲージ率をゲージ率総和で正規化した正規化較正時ゲージ率の最小値
σt i:未知の荷重が載荷された状態において計測部によって計測された圧力検知部毎の電気抵抗値
I:測定時ゲージ率をゲージ率総和で正規化した正規化測定時ゲージ率の最大値
III:測定時ゲージ率をゲージ率総和で正規化した正規化測定時ゲージ率の最小値
【請求項5】
前記測定工程では、下記数3により、前記最大主応力の方向である主応力方向βが求められる、
請求項4に記載の圧力測定方法。

【数3】
但し、
β:最大主応力σIの方向をXY座標におけるX軸からの角度(-180°<β<180°)で示した角度
xx、ryy、rxy:測定時ゲージ率をゲージ率総和で正規化した正規化測定時ゲージ率をXY座標系の垂直成分及び平行成分に変換したもの
【請求項6】
前記測定工程では、下記数4、数5及び数6により、前記圧力センサ内に生じた応力のXY座標における垂直応力成分及びせん断応力成分がそれぞれ算出される、
請求項5に記載の圧力測定方法。

【数4】
【数5】
【数6】
但し、
σxx:X軸に直交する平面に作用する垂直応力成分
σyy:Y軸に直交する平面に作用する垂直応力成分
σxy:X軸に直交する平面及びY軸に直交する平面に沿う方向に作用するせん断応力成分
σI:最大主応力
σIII:最小主応力
β:最大主応力σIの方向をXY座標におけるX軸からの角度(-180°<β<180°)で示した角度
【請求項7】
前記キャリブレーション工程において求められる前記固有パラメータは、2つ以上の方向から前記圧力センサに荷重を載荷することによって載荷方向毎に求められたパラメータ値を平均することにより求められる、
請求項1から6の何れか1つに記載の圧力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサによる圧力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多次元の圧力を測定可能な圧力センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-219222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような多次元の圧力を計測可能な圧力センサにおいて、不特定の方向から圧力センサに作用する圧力を精度よく計測するためには、予め、あらゆる方向においてキャリブレーションを行っておく必要がある。しかしながら、キャリブレーションをあらゆる方向において行うことは、無限の方向においてキャリブレーションを際限なく行うことを意味し、実際に行うことは非現実的である。このため、代表的な複数の方向、例えば、3次元の圧力センサであれば互いに直交する3方向、2次元の圧力センサであれば互いに直交する2方向においてキャリブレーションを行っておくことが考えられるが、何れの場合においてもキャリブレーションが行われた方向とは異なる方向において圧力センサに作用する圧力を計測する際には計測精度が低下するおそれがある。したがって、多次元の圧力を計測可能な圧力センサの計測精度を確保ないし向上させるには、キャリブレーションを行う方向を増やさざるを得ず、キャリブレーション作業に多大な労力を要することになる。
【0005】
本発明は、多次元の圧力を計測可能な圧力センサのキャリブレーション工程を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性を有する複数の球体が互いに接触した状態で収容される収容部と、前記収容部内の電気抵抗値を検出可能に配置された一対の電極と、を有する圧力検知部を少なくとも3つ備えるとともに、前記圧力検知部毎の電気抵抗値を計測可能な計測部を備えた圧力センサによる圧力測定方法であって、少なくとも所定の一方向から前記圧力センサに荷重を載荷した際に、前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値に基づいて、前記圧力センサの固有パラメータを求めるキャリブレーション工程と、任意の方向から未知の荷重が前記圧力センサに載荷された際に、前記固有パラメータと、前記計測部によって計測された前記圧力検知部毎の電気抵抗値と、に基づいて、前記圧力センサに作用する圧力を算出する測定工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多次元の圧力を計測可能な圧力センサのキャリブレーション工程を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る圧力センサによる圧力測定方法によって地盤内の圧力を測定する状態を示した概略図である。
図2図1のA-A線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
図3】圧力センサの構成を示す構成図である。
図4】所定の一方向から圧力センサに荷重を載荷する一軸圧縮試験について説明するための図である。
図5図4で示した一軸圧縮試験において計測された電気抵抗値と応力との相関性が示された対数グラフである。
図6】一軸圧縮試験が行われた際の圧力センサの周囲における応力分布状態を示した図である。
図7図4とは異なる一方向から圧力センサに荷重を載荷する一軸圧縮試験について説明するための図である。
図8図7で示した一軸圧縮試験において計測された電気抵抗値と応力との相関性が示された対数グラフである。
図9】主応力と正規化ゲージ率との相関性が示されたグラフである。
図10】キャリブレーション工程のフロー図である。
図11】測定工程のフロー図である。
図12】圧力センサにより地盤内の圧力を測定する状態を説明するための図である。
図13】測定工程で算出される各応力について説明するための図である。
図14】圧力センサの変形例を示す図である。
図15図14で示した変形例で算出される各応力について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧力センサによる圧力測定方法について説明する。
【0010】
まず、図1~3を参照して、本発明の実施形態に係る圧力測定方法が適用される圧力センサ100について説明する。以下では、圧力センサ100が地盤1内の土圧を2次元において測定可能な土圧計であって、具体的には、コーン貫入試験(CPT)に用いられるコーンプローブ2の内部に設けられる2次元ジオストレス感知器である場合を例にして説明する。図1は、コーン貫入試験において、圧力センサ100が内蔵されたコーンプローブ2が地盤1内に打ち込まれた状態を示す図であり、図2は、図1のA-A線に沿う圧力センサ100の断面を示した断面図であり、図3は、圧力センサ100の構成を示す構成図である。
【0011】
コーンプローブ2は、円柱状の本体部2aと、本体部2aの先端に設けられた円錐形のコーン部2bと、を有し、コーン貫入試験において地盤1内に打ち込まれる際にコーン部2bに作用する先端抵抗力や本体部2aに作用する周面摩擦力などを計測する。コーンプローブ2によって計測された各種計測値は、地上に設置された演算部4によって処理され、処理されたデータから地盤1内の土質性状が推定される。
【0012】
圧力センサ100は、コーン貫入試験においてコーンプローブ2が地盤1内に打ち込まれる際にコーンプローブ2の中心軸C1に垂直な方向における地盤1内の応力状態、すなわち、コーンプローブ2の本体部2aの側面に作用する圧力を計測するために、コーンプローブ2の本体部2a内に設けられる。
【0013】
このようにコーンプローブ2に内蔵された圧力センサ100によって、従来測定されていた先端抵抗力や周面摩擦力に加えて、コーンプローブ2が地盤1内に打ち込まれる際にコーンプローブ2に作用する圧力を計測することにより、地盤1内の状態を示すデータが増えることで、結果として、地盤1内の土質性状の推定精度を向上させることが可能となる。また、コーンプローブ2を斜め方向に貫入することによって、斜め方向における圧力を計測できることから、鉛直方向に貫入した結果をあわせることで、地盤1内の状態を三次元的に把握するためのデータを取得することも可能である。
【0014】
続いて、図2及び図3を参照し、圧力センサ100の具体的な構成について説明する。
【0015】
圧力センサ100は、作用する圧力の大きさ及び方向に応じて内部の電気抵抗値が変化する複数の圧力検知部10A,10B,10Cと、各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値を計測可能な計測部30と、を備える。
【0016】
圧力検知部10A,10B,10Cは、中心軸C1を中心に周方向に均等に配置されており、図2及び図3に示す実施形態では、第1検知部10Aと第2検知部10Bと第3検知部10Cとの3つの圧力検知部が均等配置されている。
【0017】
各圧力検知部10A,10B,10Cは、導電性を有する複数の球体12が互いに接触した状態で収容される収容部14と、収容部14内の電気抵抗値を検出可能に配置された一対の電極16a,16bと、をそれぞれ有している。
【0018】
収容部14は、図2に示すように、円筒状のハウジング18の内部に設けられた複数の空間であり、ハウジング18の内周面と、コーンプローブ2の中心軸C1から放射状に延びる樹脂製の板状部材20と、によってそれぞれ仕切られる。
【0019】
ハウジング18は、コーンプローブ2の外殻を兼ねる金属製部材であり、地盤1の圧力を受ける受圧部として機能する。収容部14を画成するハウジング18の内周面には、電気絶縁性を有する樹脂層がコーティングされている。
【0020】
板状部材20は、中心軸C1を中心として周方向に120度の間隔で設けられた3つの板部材が一体的に形成されたものであり、径方向において最も外側の端面は、ハウジング18の内周面にそれぞれ当接している。これによりハウジング18内には、中心軸C1から径方向外側に向かって徐々に容積が拡大する空間として、3つの収容部14がそれぞれ画成される。なお、板状部材20は、電気絶縁性を有する樹脂層がコーティングされた金属製部材であってもよい。
【0021】
また、収容部14は、中心軸C1方向において対向して配置される図示しない一対の樹脂製の円盤状部材によって、中心軸C1方向における両端面が封止されている。
【0022】
このように電気絶縁性を有する部材によって区画された各収容部14内には、導電性を有する複数の球体12が収容されるとともに、一対の電極16a,16bがそれぞれ配置される。
【0023】
球体12は、圧力に応じて弾性的に形状が変化し、導電性が高く、抵抗が小さい、いわゆる感圧導電性粒子として機能する金属製の鋼球である。具体的には、例えばロックウェル硬さ(HRC)が25~39程度のステンレス鋼球である。
【0024】
球体12の直径は、収容部14の大きさ、すなわち、ハウジング18の内径の大きさに応じて最適な大きさに設定される。具体的には、球体12の直径は、例えば、1~5mm程度であるが、球体12の直径の大きさはこの範囲に限定されるものではなく、感圧導電性粒子として機能すればどのような大きさであってもよく、例えば、粒径が1mmよりも相当に小さい鉄粉が球体12として用いられてもよい。また、最大直径は、取り扱いの容易さを考慮すれば、10cm以下であることが好ましいが、ハウジング18の内径が十分に大きければ、これより大きいものが球体12として用いられてもよい。なお、球体12は、金属製に限定されず、導電性を有し、弾性的に形状が変化する硬球体であればどのような材料によって形成されていてもよい。また、直径が異なる球体12を混合して用いてもよいが、各球体12の直径を同じ大きさに揃えることで、1つの球体12に対して可能な限り多くの球体12が接触するようにすることが好ましい。
【0025】
また、各球体12は、収容部14内の空間に可能な限り密な状態で収容されるとともに、ハウジング18等の収容部14を構成する部材によって、互いに押し付け合った状態となるよう拘束されている。つまり、各球体12は、互いに支持し合い何れの方向にも移動することができない状態となっている。したがって、外部から力が作用することによってハウジング18が僅かに変形すると、各球体12が互いに押し付け合う力が変化し、隣接する他の球体12と接触する面積が変化することになる。
【0026】
一対の電極16a,16bは、中心軸C1近傍に配置される棒状の第1電極16aと、ハウジング18の内周面に沿って配置される板状の第2電極16bと、から構成される。第1電極16aと第2電極16bとの間には、前述の球体12が互いに接触した状態で配置されているため、第1電極16aと第2電極16bとは、複数の球体12を通じて電気的に導通した状態となっている。換言すれば、第1電極16aと第2電極16bとの間の電気抵抗は、収容部14内に収容された複数の球体12によって構成される導電体の電気抵抗に等しくなる。
【0027】
第1電極16aは、中心軸C1方向において少なくとも収容部14の一端側から他端側に及ぶ長さを有する棒状電極であり、第1電極16aの図示しない一方の端部は、後述の直流電圧源32が接続される接続部として、収容部14の外部へと延出している。
【0028】
第2電極16bは、各収容部14を区画する一対の板状部材20の間のハウジング18の内周面に沿って弧状に形成された板状電極であり、第1電極16aと同様に、中心軸C1方向において少なくとも収容部14の一端側から他端側に及ぶ長さを有する。換言すれば、ハウジング18の内周面のうち、板状部材20が当接する部分には何れの第2電極16bも存在していない。また、第2電極16bの略中央の部分は、後述の直流電圧源32が接続される接続端部16cとして、第1電極16aと同じ方向において収容部14の外部へと延出している。
【0029】
中心軸C1方向において収容部14の外側に突出して設けられた第1電極16aの端部には、後述の直流電圧源32の負極が接続され、第2電極16bの接続端部16cには、後述の直流電圧源32の正極が接続される。なお、第1電極16aは、収容部14の外側において、他の収容部14内に配置された第1電極16aと結合されてもよい。また、第1電極16aは、他の第1電極16aと収容部14内において一体的に形成されていてもよく、この場合、負極となる1本の棒状電極が、各圧力検知部10A,10B,10Cに共通する第1電極16aとして中心軸C1と同軸上に配置される。
【0030】
また、収容部14内には樹脂材が充填され、球体12間の隙間や球体12と第1電極16aとの間の隙間、球体12と第2電極16bとの間の隙間は、樹脂材によって満たされる。このように樹脂材によって隙間を埋め、球体12の移動を制限することによって、球体12同士の接触状態や球体12と電極16a,16bとの接触状態を安定させることができる。樹脂材としては、例えば、金属への接着性が高いとともに絶縁性が高いエポキシ樹脂が用いられる。なお、これらの隙間は、空気や不活性ガスによって満たされていてもよい。
【0031】
このような構成の各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値を計測する計測部30は、圧力検知部10A,10B,10C毎に設けられる直流電圧源32、直流電流計34及び直流電圧計36を備えるとともに、直流電流計34及び直流電圧計36の計測値が入力される演算装置38を備える。これら計測部30を構成する機器は、図1に示されるようなコーン貫入試験においては、地上に設置された演算部4内に設けられる。
【0032】
直流電圧計36は、図3に示すように、一対の電極16a,16b間のみの電圧を検出するようにそれぞれ設けられており、このように直流電圧計36を配することによって、四端子測定法により各圧力検知部10A,10B,10Cにおける僅かな電気抵抗値の変化を検出できるようにしている。なお、直流電圧源32が出力電流を常に一定に制御可能な定電流電圧源である場合には、直流電流計34は設けられなくともよい。
【0033】
演算装置38は、直流電流計34及び直流電圧計36で計測された計測値に基づいて各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値を算出するとともに、後述の演算処理によって、圧力センサ100により計測された圧力を演算するものである。
【0034】
演算装置38は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは演算装置38に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。演算装置38は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0035】
上記構成の圧力センサ100では、上述のように、外部から力が作用することによってハウジング18が僅かに変形すると、各球体12が互いに押し付け合う力が変化することによって、隣接する他の球体12と接触する面積が変化する。そして、ハウジング18に作用する圧力が大きくなるほど、球体12間の接触面積が増大し、第1電極16aと第2電極16bとの間における導通面積が大きくなり、結果として、第1電極16aと第2電極16bとの間の電気抵抗値は小さくなる。
【0036】
ここで、上記構成の圧力センサ100のように、第1電極16aと第2電極16bとの間に配置される感圧導電性粒子として機能する球体12同士を、荷重を掛けることで接触させた場合、粒子同士を接触させる荷重の対数値と、粒子間の電気抵抗値の対数値と、には線形の相関がある。
【0037】
したがって、上記構成の圧力センサ100において、各圧力検知部10A,10B,10Cの第1電極16aと第2電極16bとの間の電気抵抗値をそれぞれ検出することによって、各圧力検知部10A,10B,10Cに作用する荷重の大きさ、すなわち、中心軸C1に垂直な3つの方向において圧力センサ100に作用する圧力を測定することが可能である。
【0038】
続いて、上記構成の各圧力検知部10A,10B,10Cにおいて検出された電気抵抗値から圧力センサ100に作用する2次元圧力を算出する方法について説明する。
【0039】
まず、後述のキャリブレーション工程において実施される一軸圧縮試験により上記構成の圧力センサ100に荷重を載荷した場合に、各圧力検知部10A,10B,10Cにおいて検出される電気抵抗値の傾向について、図4~8を参照して説明する。
【0040】
図4は、所定の一方向から圧力センサ100に荷重を載荷する一軸圧縮試験について説明する図であり、図5は、図4で示した一軸圧縮試験において計測された電気抵抗値と応力との相関性を対数グラフで示したものであり、図6は、一軸圧縮試験が行われた際の圧力センサ100の周囲における応力分布状態を示した図である。また、図7は、図4とは異なる一方向から圧力センサ100に荷重を載荷した場合の一軸圧縮試験について説明する図であり、図8は、図7で示した一軸圧縮試験において計測された電気抵抗値と応力との相関性を対数グラフで示したものである。
【0041】
一軸圧縮試験は、図4に示すように、圧力センサ100に対して所定の一方向から予め設定された所定の荷重を載荷可能な一軸圧縮試験装置40によって行われる。
【0042】
一軸圧縮試験において、圧力センサ100は、その中心軸C1が水平とされた状態で、一軸圧縮試験装置40の下方治具41と上方治具42との間に据え置かれる。なお、以下では、中心軸C1をゼロ点として、水平方向のうち中心軸C1に直交する方向をX軸方向、鉛直方向をY軸方向とし、中心軸C1を中心としてX軸方向から反時計回りの角度を角度θとして説明する。
【0043】
図4に示す例では、圧力センサ100は、複数の圧力検知部10A,10B,10Cのうち、第1検知部10Aが上方に配置されるように、つまり、第1検知部10Aの第2電極16bの配置角度θ1である第1検知部10Aの第2電極16bの中央部における角度が90度となるように据え置かれている。この場合、第2検知部10Bの第2電極16bの配置角度θ2は210度となり、第3検知部10Cの第2電極16bの配置角度θ3は330度となる。
【0044】
上記構成の圧力センサ100の概略外形は、直径Dが所定の大きさであって、中心軸C1方向における長さLが所定の長さである円柱状であることから、圧力センサ100に載荷される荷重Pを初期荷重P0から初期荷重P0よりも大きい最終荷重PPへと変化させた場合、圧力センサ100に生じる応力は、載荷方向における圧力センサ100の断面積A=D・Lによって初期荷重P0を除することで算出される初期応力σ0=P0/Aから、載荷方向における圧力センサ100の断面積A=D・Lによって最終荷重PPを除することで算出される最終応力σP=PP/Aへと変化する。
【0045】
初期荷重P0は、できるだけ小さな値とすることが好ましく、具体的には、圧力センサ100に載荷される荷重をゼロから徐々に大きくしていき、検出される各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値に僅かな変化が生じたとき、例えば、電気抵抗値が予め設定された所定の変化量を超えて低下したときの荷重を、初期荷重P0として設定する。
【0046】
換言すれば、初期荷重P0は、複数の球体12を密着し合った状態で圧力センサ100内に拘束することで圧力センサ100内部に生じている残留応力を僅かに上回る応力を生じさせる程度の大きさの荷重であって、残留応力を生じさせている荷重とほぼ同じ大きさとみなすことができる荷重である。
【0047】
なお、圧力センサ100の内部に生じている残留応力の大きさや圧力センサ100を製造する際に掛けられる荷重が既知である場合には、この既知の荷重を初期荷重P0とし、圧力センサ100に荷重が載荷されていない状態において検出された各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値を、初期荷重P0が載荷された状態での電気抵抗値とみなしてもよい。
【0048】
一方、最終荷重PPは、圧力センサ100の定格圧力に相当する応力を圧力センサ100内部に生じさせる程度の大きさの荷重に設定される。なお、初期荷重P0及び最終荷重PPの大きさを設定する方法は、上述の方法に限定されず、これらの大きさはどのように設定されてもよいが、初期荷重P0と最終荷重PPとの差はできるだけ大きい方がよく、また、初期荷重P0はできるだけ小さい方がよい。また、後述の圧力センサ100の固有パラメータを精度よく求めるためには、初期荷重P0と最終荷重PPとの間で徐々に荷重を増加させる載荷と徐々に荷重を減少させる除荷とを繰り返して行うことが好ましく、このように載荷と除荷とを繰り返す際に検出された電気抵抗値のヒステリシスや直線性といった傾向から圧力センサ100の検出特性や異常の有無を予め把握することも可能となる。
【0049】
初期荷重P0が載荷され圧力センサ100内の応力が初期応力σ0となったときに検出された各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値Rσ0 iと、最終荷重PPが載荷され圧力センサ100内の応力が最終応力σPとなったときに検出された各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値RσP iと、を両対数グラフにそれぞれプロットすると、図5に示されるように、圧力検知部10A,10B,10C毎に異なった線形相関があることがわかる。
【0050】
初期応力σ0状態で検出される各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値は、何れの圧力検知部10A,10B,10Cにもほとんど荷重が作用しておらず、各圧力検知部10A,10B,10C内の球体12間の接触面積が小さいままであることから、何れも比較的大きな値であって、ほぼ同じような値となる。
【0051】
一方、最終応力σP状態で検出される各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値は、応力が大きくなるほど各圧力検知部10A,10B,10C内の球体12間の接触面積が大きくなることから、何れも応力の増加に応じて低くなる。そして、荷重が最も掛かりやすい位置に配置された第1検知部10Aにおいて検出される電気抵抗値が最も小さくなり、図4に示されるようにほぼ左右対称に配置された第2検知部10B及び第3検知部10Cにおいて検出される電気抵抗値はほぼ同等の値まで低下する。
【0052】
そして、下記数1によって算出される較正時ゲージ率Sc iを比較すると、第1検知部10Aのものが最も大きくなっており、第2検知部10Bと第3検知部10Cとは同等の大きさとなっている。較正時ゲージ率Sc iは、図5に示される各直線の傾きであって、荷重の変化に対する電気抵抗値の変化割合を示している。
【0053】
【数1】
【0054】
なお、式中の添字iは、圧力検知部10A,10B,10Cの何れかを指し示すものであり、以下の説明では、第1検知部10Aがi=1、第2検知部10Bがi=2、第3検知部10Cがi=3とする。また、図5に示される各直線は逆相関であって傾きは負の値となるが、較正時ゲージ率Sc iが正の値となるように上記数1は予め変形されている。
【0055】
このように算出された較正時ゲージ率Sc iを、下記数2に示すように、較正時ゲージ率Sc iの総和によって除すると、正規化された正規化較正時ゲージ率rc iが得られる。
【0056】
【数2】
【0057】
なお、本実施形態における較正時ゲージ率Sc iの総和は、下記数3で示されるように3つの圧力検知部10A,10B,10Cのそれぞれの較正時ゲージ率Sc 1,Sc 2,Sc 3の和となる。
【0058】
【数3】
【0059】
算出された各正規化較正時ゲージ率rc 1、rc 2、rc 3を、ゼロ点からの距離としてXY座標系にプロットすると、図6に示すような影響曲線(実線)が得られる。なお、図6中に示される黒丸印のうち、符号rc 1で示されるものは、第2電極16bの配置角度θ1が90度である第1検知部10Aにおける正規化較正時ゲージ率であり、符号rc 2で示されるものは、第2電極16bの配置角度θ2が210度である第2検知部10Bにおける正規化較正時ゲージ率であり、符号rc 3で示されるものは、第2電極16bの配置角度θ3が330度である第3検知部10Cにおける正規化較正時ゲージ率である。
【0060】
影響曲線は、圧力センサ100に所定の方向から荷重が載荷された状態において、中心軸C1に対して垂直な方向に生じる応力成分の総和に対するそれぞれの方向における応力成分の割合を示すものであって、例えば、図6に示される任意の角度θjにおける正規化較正時ゲージ率rc jに所定の係数を乗じて初期応力を差し引くことによって任意の角度θjの方向における応力の大きさを算出することが可能である。
【0061】
また、図6において、載荷方向の延長線上である90度及び270度における正規化較正時ゲージ率rc iは最大となっており、この方向が載荷方向であるとともに、この方向における応力が較正時最大主応力σc Iとなっていることがわかる。また、載荷方向に直交する0度及び180度では、正規化較正時ゲージ率rc iが最小となっており、この方向における応力が較正時最小主応力σc IIIとなっていることがわかる。なお、上述の一軸圧縮試験は、側圧を掛けずに行われるため、載荷方向に直交する方向における応力、すなわち、較正時最小主応力σc IIIの大きさはゼロとなる。したがって、この方向における正規化較正時ゲージ率rc iの割合は残留応力、すなわち、圧力センサ100を製造する際に生じている応力に相当する応力の割合を示しているといえる。
【0062】
ここで、図6に示される正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)及び最小値(rc III)は、以下の過程を経て算出される。
【0063】
まず、上記数3によって算出された各圧力検知部10A,10B,10Cにおける正規化較正時ゲージ率rc 1、rc 2、rc 3を用いて、下記数4によって、正規化較正時ゲージ率rc iをXY座標系の各成分(rc xx,rc yy,rc xy)に変換する。
【0064】
【数4】
【0065】
なお、上記数4中のnは、圧力検知部の数であって3以上の整数であるが、本実施形態では3つの圧力検知部10A,10B,10Cが設けられていることから、n=3となる。また、上記数4における行列Mは、下記数5で示されるような回転マトリクスである。
【0066】
【数5】
【0067】
上記数5中のθnは、n個目の圧力検知部の第2電極16bの配置角度を意味しており、本実施形態では3つの圧力検知部10A,10B,10Cが設けられることから、上記数5ではθ1が第1検知部10Aの第2電極16bの配置角度、θ2が第2検知部10Bの第2電極16bの配置角度、θ3が第3検知部10Cの第2電極16bの配置角度をそれぞれ意味することになる。
【0068】
そして、座標変換された正規化較正時ゲージ率(rc xx,rc yy,rc xy)を用いて、下記数6により、正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)が算出され、下記数7により、正規化較正時ゲージ率rc iの最小値(rc III)が算出される。
【0069】
【数6】
【数7】
【0070】
なお、正規化較正時ゲージ率rc iが最大値(rc I)となる方向は、圧力センサ100における応力が最大となる最大主応力方向であって、図6に示すように、一軸圧縮試験において荷重が載荷される方向と一致し、その方向を示す最大主応力角度βcは、座標変換された較正時ゲージ率(rc xx,rc yy,rc xy)を用いて下記数8により算出可能である。
【0071】
【数8】
【0072】
なお、図6に示される例では、説明を簡素化するために最大主応力角度βcは90度となっている。上記数8における主応力角度βcの範囲は、中心軸C1を中心としてX軸方向から反時計回りの角度を正として、180度よりも小さく、-180度よりも大きい範囲である。
【0073】
次に、一軸圧縮試験において、図4とは異なる一方向から圧力センサ100に荷重を載荷した場合について、図7及び図8を参照して説明する。
【0074】
図7に示す例では、図4に示す例と異なり、圧力センサ100は、複数の圧力検知部10A,10B,10Cのうち、第1検知部10Aが、図7において中心軸C1の左側に位置するように、つまり、第1検知部10Aの第2電極16bの配置角度θ1が180度となるように据え置かれている。この場合、第2検知部10Bの第2電極16bの配置角度θ2は300度となり、第3検知部10Cの第2電極16bの配置角度θ3は60度となる。
【0075】
この状態において、図4に示す例と同様に、初期荷重P0及び最終荷重PPが載荷されたときに計測された各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値を両対数グラフにプロットすると、図8に示すように、圧力検知部10A,10B,10C毎に線形相関があることがわかる。この場合、荷重が最も掛かりにくい位置に配置された第1検知部10Aの傾きである較正時ゲージ率Sc 1’が最も小さくなり、図7に示されるように上下対称的に配置された第2検知部10Bと第3検知部10Cの傾きである較正時ゲージ率Sc 2’,Sc 3’は同等の大きさとなっている。
【0076】
このときの較正時ゲージ率Sc i’の総和は、下記数9で示されるように、上述の数3で求められた総和と等しい値となること、つまり、上記構成の圧力センサ100では、荷重を載荷する方向を変えても較正時ゲージ率の総和が同等の大きさとなり、この較正時ゲージ率の総和は、圧力センサ100毎に異なるものであって、圧力センサ100に固有の値であることが出願人による実験により判明している。したがって、以下では、下記数9で示される較正時ゲージ率の総和を圧力センサ100に固有のゲージ率総和Scとしている。なお、圧力センサ100が同じものであれば、測定時に算出される後述の測定時ゲージ率Siの総和も較正時ゲージ率の総和、すなわち、ゲージ率総和Scと同等の大きさとなる。
【0077】
【数9】
【0078】
また、図8に示される結果から得られた各較正時ゲージ率Sc i’を、較正時ゲージ率Sc i’の総和により除することによって正規化した正規化較正時ゲージ率rc 1’、rc 2’、rc 3’を図6に示されるXY座標系にプロットすると、これらは図4に示した一軸圧縮試験で得られた影響曲線と同じ曲線上にそれぞれプロットされる。なお、図6中に示される黒四角印のうち、符号rc 1’で示されるものは、第2電極16bの配置角度θ1が180度である第1検知部10Aにおける正規化較正時ゲージ率であり、符号rc 2’で示されるものは、第2電極16bの配置角度θ2が300度である第2検知部10Bにおける正規化較正時ゲージ率であり、符号rc 3’で示されるものは、第2電極16bの配置角度θ3が60度である第3検知部10Cにおける正規化較正時ゲージ率である。
【0079】
このように、図7で示される一軸圧縮試験の結果から得られた影響曲線が、図4で示される一軸圧縮試験の結果から得られた影響曲線と同じ影響曲線になるということは、図7で示される一軸圧縮試験において計測された電気抵抗値を用いて、正規化較正時ゲージ率rc i’の最大値(rc I’)及び最小値(rc III’)求めた場合、これらは図4で示される一軸圧縮試験の結果から得られた上述の正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)と最小値(rc III)とほぼ同じ値になることを意味する。
【0080】
ここで、上述のようにして電気抵抗値から算出された正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)及び最小値(rc III)と、較正時最大主応力σc I及び較正時最小主応力σc IIIと、は、図9に示すように、一次関数で表される関係にある。
【0081】
この関係性、すなわち、図9に示される一次関数の傾きa及び切片bは、圧力センサ100に固有のものであって、傾きa及び切片bが判明すれば、未知の荷重が圧力センサ100に載荷された際に計測された電気抵抗値に基づいて算出される正規化ゲージ率の最大値rI及び最小値rIIIから、そのときに圧力センサ100に生じている最大主応力σI及び最小主応力σIIIを求めることができる。
【0082】
図9に示される一次関数の傾きa及び切片bは、各主応力及び各正規化ゲージ率を用いて、下記数10、数11のようにそれぞれ表される。
【0083】
【数10】
【数11】
【0084】
そして、下記数12及び数13で示される一次関数中の傾きa及び切片bに数10及び数11を代入し、さらにキャリブレーション時の最小主応力σc IIIは、上述のようにゼロとなることを反映させると、未知の荷重が圧力センサ100に載荷された際の最大主応力σIと最小主応力σIIIは、下記数12及び数13によってそれぞれ求められることがわかる。
【0085】
【数12】
【数13】
【0086】
ここで、上記数12及び数13中のキャリブレーション時の最大主応力σc Iは、以下の過程により導出することができる。
【0087】
まず、上述の数1の両辺の総和をとって整理すると、下記数14が得られる。
【0088】
【数14】
【0089】
さらに、上記数14から対数を外して、最終応力σPについて整理すると、下記数15が得られる。
【0090】
【数15】
【0091】
ここで、上述のように、一軸圧縮試験は、側圧を掛けずに行われるため、載荷方向に直交する方向における応力である最小主応力σc IIIはゼロとなる一方、キャリブレーション時の最大主応力σc Iは、載荷方向における応力、すなわち、上記数15の最終応力σPに等しい。そして、その値の大きさは、圧力センサ100に荷重が載荷されたときに検出される電気抵抗値RσP iの大きさによって決まる。
【0092】
また、初期応力σ0を基準応力σcとした場合、基準応力σcに対応する基準電気抵抗値Rcは、下記数16で表されるように圧力センサ100に固有の不変量となる。
【0093】
【数16】
【0094】
上記数16中のRσ0は、上述のように、初期荷重P0が載荷された際に検出された各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値である。なお、上記数16中のnは、圧力検知部の数であって3以上の整数であるが、本実施形態では3つの圧力検知部10A,10B,10Cが設けられていることから、n=3となる。
【0095】
さらに、上記数15中の較正時ゲージ率Sc iの総和は、上述の数9で示されるように圧力センサ100に固有の不変量であって、その大きさは未知の荷重が圧力センサ100に載荷された場合であっても変わらない。つまり、圧力センサ100により実際に測定が行われる際のゲージ率である後述の測定時ゲージ率Siの総和は、較正時ゲージ率Sc iの総和である上述のゲージ率総和Scと等しい不変量とみなすことができる。
【0096】
したがって、ゲージ率総和Scが不変量である原理及び基準電気抵抗値Rcが不変量である原理に基づいて、上記数15は、上記数9及び数16を用いて、圧力センサ100に最終荷重PPが載荷されたときに検出される電気抵抗値RσP iのみが変数である下記数17のように書き換えられる。
【0097】
【数17】
【0098】
そして、上記数12及び数13中のキャリブレーション時の最大主応力σc Iを上記数17に置き換えることによって、未知の荷重Ptが圧力センサ100に載荷された際の最大主応力σIと最小主応力σIIIとを求める式として、下記数18及び数19が導出される。
【0099】
【数18】
【数19】
【0100】
なお、上記数18及び数19中のRσt iは、未知の荷重Ptが圧力センサ100に載荷された際に検出される各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値である。
【0101】
このように、未知の荷重Ptが圧力センサ100に載荷された際の最大主応力σIと最小主応力σIIIとを求めるには、正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)及び最小値(rc III)や圧力センサ100に固有の不変量であるゲージ率総和Sc、初期応力σ0を基準応力σcとした場合に基準応力σcに対応する電気抵抗値であって圧力センサ100に固有の不変量である基準電気抵抗値Rcを予め求めておく必要がある。
【0102】
したがって、上記構成の圧力センサ100によって測定を行う前に、圧力センサ100に固有のこれらのパラメータを求めるために、以下のような手順でキャリブレーション工程が実施される。
【0103】
以下に、図10を参照し、キャリブレーション工程について説明する。
【0104】
キャリブレーション工程では、まず、ステップS11において、図4図7に示される上述の一軸圧縮試験によって圧力センサ100に初期荷重P0と最終荷重PPとが載荷された際の各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値がそれぞれ計測される。
【0105】
続くステップS12では、圧力センサ100に載荷される荷重の変化に対する各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値の変化割合である較正時ゲージ率Sc iが、上述の数1によって圧力検知部10A,10B,10C毎に算出される。
【0106】
次に、ステップS13では、圧力センサ100の固有パラメータとして、まず、正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)と最小値(rc III)とが求められる。
【0107】
正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)及び最小値(rc III)は、ステップS12で求められた較正時ゲージ率Sc iに基づいて、上述の数2により各正規化較正時ゲージ率rc iを求め、さらに、上述の数4により正規化較正時ゲージ率rc iをXY座標系の各成分(rc xx,rc yy,rc xy)に変換し、座標変換された正規化較正時ゲージ率(rc xx,rc yy,rc xy)を用いて、上述の数6及び数7により、それぞれ算出される。
【0108】
また、ステップS13では、圧力センサ100の固有パラメータとして、ゲージ率総和ScがステップS12で求められた較正時ゲージ率Sc iに基づいて上述の数9により求められ、初期応力σ0を基準応力σcとした場合に基準応力σcに対応する基準電気抵抗値Rcが上述の数16により求められる。
【0109】
このようにしてキャリブレーション工程では、後述の測定工程で必要とされる圧力センサ100の固有パラメータがそれぞれ求められる。
【0110】
ここで、上述のように、キャリブレーション工程において圧力センサ100に対して荷重を載荷する方向を、例えば、図4に示される方向とした場合であっても、図7に示される方向とした場合であっても、算出されるゲージ率総和Scは同等の大きさであり、得られる影響曲線も同等となる。つまり、キャリブレーション工程において圧力センサ100に対して荷重を載荷する方向を変えたとしても、キャリブレーション工程において得られる上述の圧力センサ100の固有パラメータの値は、ほぼ同じ値となる。
【0111】
したがって、上記構成の圧力センサ100であれば、少なくとも所定の一方向から圧力センサ100に荷重を載荷するだけでキャリブレーション工程を完了させることが可能であって、所定の一方向とは異なる方向から荷重をさらに載荷してキャリブレーションを行う必要はないといえる。
【0112】
なお、キャリブレーション工程において荷重を載荷する方向を変えた場合に得られる圧力センサ100の固有パラメータの値は、完全に一致する訳ではない。このため、測定工程での圧力測定精度を向上させるためには、載荷方向を変えて上述のキャリブレーション工程を複数回、例えば2~6回行うことによって、例えば、正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)及び最小値(rc III)の平均値やゲージ率総和Scの平均値、基準応力σcの平均値、基準電気抵抗値Rcの平均値を圧力センサ100に固有のパラメータとして求めることが好ましい。
【0113】
続いて、キャリブレーション工程において求められた圧力センサ100の固有パラメータを用いて行われる測定工程について、図11~13を参照して説明する。図11は、測定工程のフロー図であり、図12は、圧力センサ100による測定状態を説明する図であり、図13は、測定工程で算出される各応力について説明する図であり、XY座標軸を面法線とする微小領域に作用する各応力成分とせん断応力がゼロとなる座標系における主応力成分とを示した図である。
【0114】
測定工程では、まず、ステップS21において、図12に示すように、未知の方向から未知の大きさの荷重Ptが圧力センサ100に載荷した状態、つまり、未知の荷重Ptが載荷され圧力センサ100内の応力が未知の応力σtとなった状態において各圧力検知部10A,10B,10Cにおける電気抵抗値Rσt iがそれぞれ計測される。
【0115】
図12は、図2に相当するコーンプローブ2の断面を示しており、圧力センサ100は、地盤1の圧力を受ける状態となっている。以下では、図12に示す中心軸C1をゼロ点として、中心軸C1に直交する平面をXY座標平面とし、中心軸C1を中心としてX軸方向から反時計回りの角度を角度θとして説明する。
【0116】
図12に示す例では、第1検知部10Aの第2電極16bの配置角度θ1が90度、第2検知部10Bの第2電極16bの配置角度θ2が210度、第3検知部10Cの第2電極16bの配置角度θ3が330度となるように、XY座標のX軸の位置が設定されている。また、図12に示す例では、圧力センサ100に作用する未知の荷重Ptの方向を示す角度が、中心軸C1を中心としてX軸方向から反時計回りの角度を正とする角度β(後述の主応力方向β)で示されている。なお、XY座標の設定は、主応力の方向を角度βによって特定するにあたってその基準を規定するために行われるものであって、上述のような位置に限定されるものではなく、例えば、第1検知部10Aの第2電極16bの配置角度θ1が0度となるようにX軸の位置が設定されてもよい。
【0117】
続くステップS22では、ステップS21で計測された各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値Rσt iに基づいて、測定時ゲージ率Siを測定時ゲージ率Siの総和により除することによって正規化した正規化測定時ゲージ率riを、下記数20により算出する。
【0118】
【数20】
【0119】
上記数20中の測定時ゲージ率Siは、以下の数21で示されるように未知の応力σtを含む式となる。しかしながら、上記数20は、測定時ゲージ率Siの総和によって除することによって、各圧力検知部10A,10B,10Cにおける電気抵抗値のみを変数とした数式となっている。
【0120】
【数21】
【0121】
また、上記数20中のRσ0 iは、圧力センサ100内の応力が初期応力σ0、すなわち、基準応力σcとみなされる応力となっているときに検出された抵抗値であって、上述のキャリブレーション工程において既に測定された値である。このように上記数20には、未知の数値がないことから、3つの圧力検知部10A,10B,10Cの正規化測定時ゲージ率r1,r2,r3をそれぞれ算出することができる。
【0122】
次にステップS23において、正規化測定時ゲージ率riの最大値(rI)と最小値(rIII)とが算出される。これらを算出するにあたって、上記数20によって算出された各圧力検知部10A,10B,10Cにおける正規化測定時ゲージ率r1、r2、r3を用いて、下記数22によって、まず、正規化測定時ゲージ率riをXY座標系の各成分(rxx,ryy,rxy)に変換する。
【0123】
【数22】
【0124】
なお、上記数22における行列Mは、上述の数5で示される回転マトリクスと同じ回転マトリクスである。また、上記数22中のnは、圧力検知部の数であって3以上の整数であるが、本実施形態では3つの圧力検知部10A,10B,10Cが設けられていることから、n=3となる。
【0125】
このように座標変換された正規化測定時ゲージ率(rxx,ryy,rxy)を用いて、下記数23により、正規化測定時ゲージ率riの最大値(rI)が算出され、下記数24により、正規化測定時ゲージ率riの最小値(rIII)が算出される。
【0126】
【数23】
【数24】
【0127】
続くステップS24では、圧力センサ100に未知の荷重Ptが載荷された状態で検出された電気抵抗値Rσt iと上記数23により算出された正規化測定時ゲージ率riの最大値(rI)とを用いて、上述の数18により測定時の最大主応力σIが算出され、また、圧力センサ100に未知の荷重Ptが載荷された状態で検出された電気抵抗値Rσt iと上記数24により算出された正規化測定時ゲージ率riの最小値(rIII)とを用いて、上述の数19により測定時の最小主応力σIIIが算出される。なお、上述の数18及び数19中の正規化較正時ゲージ率rc iの最大値rc I及び最小値rc III、基準応力σc、基準応力σcに対応する基準電気抵抗値Rc、及び、ゲージ率総和Scは、上述のキャリブレーション工程において既に求められており、これらの固有パラメータを、圧力センサ100に固有の不変量として扱うことによって、測定時の最大主応力σI及び最小主応力σIIIを容易に算出することができる。換言すれば、測定時の最大主応力σI及び最小主応力σIIIは、基準電気抵抗値Rcが不変という原理及びゲージ率総和Scが不変という原理に基づいて算出される。
【0128】
このようにして求められた最大主応力σI及び最小主応力σIIIは、図13に示すように、せん断応力がゼロとなる座標系における主応力テンソルの最大値と最小値であり、上述のXY座標対して、最大主応力σIの方向を示す主応力角度βだけ回転された座標系における応力成分である。
【0129】
最大主応力σIの方向を示す主応力角度βは、未知の荷重Ptの載荷方向に一致し、座標変換された測定時ゲージ率(rxx,ryy,rxy)を用いて下記数25により算出される。
【0130】
【数25】
【0131】
なお、この式における主応力角度βの範囲は、中心軸C1を中心としてX軸方向から反時計回りの角度を正として、180度よりも小さく、-180度よりも大きい範囲である。
【0132】
続いて、ステップS25では、ステップS24で算出された最大主応力σI、最小主応力σIII、及び、主応力角度βを用いて、下記数26、数27及び数28により、XY座標系における各応力成分、すなわち、2次元の応力が算出される。
【0133】
【数26】
【数27】
【数28】
【0134】
このようにして求められる応力成分は、図13に示すように、上述のXY座標軸を面法線とする微小領域に作用する応力テンソルであって、それぞれ、X軸に直交する平面に作用する垂直応力σxx、Y軸に直交する平面に作用する垂直応力σyy、X軸に直交する平面及びY軸に直交する平面に沿う方向に作用するせん断応力σxyである。
【0135】
このようにして、測定工程では、キャリブレーション工程で得られた圧力センサ100の固有パラメータに基づいて、圧力センサ100に生じる法線方向の応力、すなわち、圧力センサ100に作用する2次元方向の圧力を測定することができる。
【0136】
この結果、圧力センサ100よって、コーンプローブ2の周囲の圧力、すなわち、中心軸C1に対してあらゆる方向からコーンプローブ2に作用する圧力を2次元で把握することができる。
【0137】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0138】
本実施形態に係る圧力センサ100による圧力測定方法によれば、少なくとも所定の一方向から圧力センサ100に荷重を載荷した際に計測された圧力検知部10A,10B,10C毎の電気抵抗値に基づいて圧力センサ100の固有パラメータを求めるキャリブレーション工程と、キャリブレーション工程で得られた圧力センサ100の固有パラメータと各圧力検知部10A,10B,10Cの電気抵抗値とに基づいて圧力センサ100に生じる応力を求める測定工程と、を経て、圧力センサ100に作用する圧力が測定される。
【0139】
これまで、多次元の圧力を計測可能な圧力センサ100のキャリブレーションを確実に行うことは非現実的であったが、上述のように、本実施形態によれば、キャリブレーション工程における圧力センサ100への荷重の載荷は、所定の一方向からだけでよいことから、キャリブレーション工程を簡素化することが可能となり、結果として、キャリブレーション作業に要する労力を低減させることができるとともに、キャリブレーションが実施された圧力センサ100によって精度よく圧力を測定することができる。
【0140】
また、キャリブレーション工程において求められる正規化較正時ゲージ率rc iの最大値rc I及び最小値rc IIIやゲージ率総和Scは、両対数グラフにおける直線の傾きを示す較正時ゲージ率Sc iに基づいて算出される。したがって、キャリブレーション工程において圧力センサ100へ載荷される荷重のレベルは、較正時ゲージ率Sc iが算出できるように、少なくとも2点あればよく、また、実際の測定時の荷重の大きさを考慮する必要がないことから、キャリブレーション工程における荷重の設定や変更を容易に行うことが可能となる。
【0141】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0142】
上記実施形態では、圧力センサ100の圧力検知部10A,10B,10Cの数は3つである。圧力検知部の数は3つに限定されず、4つ以上の複数個であってもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、圧力センサ100の形状は円柱状である。圧力センサの形状はこれに限定されず、例えば、3次元の圧力を計測することが可能な半球体状や図14に示されるような球体状であってもよい。図14は、圧力センサ200が地盤1中に埋設される球体状の土圧計である場合について示している。
【0144】
ここで、図14に示される圧力センサ200は、上述の圧力センサ100と同様に、複数の図示しない圧力検知部と、各圧力検知部の電気抵抗値を計測可能な計測部130と、を備える。
【0145】
受圧部として機能する球状の外殻118の内部には、上記実施形態と同様に、図示しない複数の球体が互いに接触した状態で収容される複数の図示しない収容部と、収容部内の電気抵抗値を検出可能に配置された中央電極116a及び周縁電極116bと、が設けられる。なお、収容部間には、外殻118の中心から放射状に延びる図示しない仕切り部材が設けられている。
【0146】
中央電極116aは、上記実施形態における第1電極16aに相当する電極であって、
外殻118内の空間の中心に設けられる。また、周縁電極116bは、上記実施形態における第2電極16bに相当する電極であって、外殻118の内面に沿って複数配置される。つまり、図14に示される例では、中央電極116aと周縁電極116bとが一対の電極となって、図示しない圧力検知部の電気抵抗値を検出している。
【0147】
圧力検知部は、少なくとも6つ設けられており、各圧力検知部の周縁電極116bは、隣り合う電極同士の間隔が等間隔となるように外殻118の内面に等配される。つまり、圧力検知部は、中央電極116aを中心として均等に配置される。なお、計測精度を向上させるためには、圧力検知部を例えば6つよりも多く設け、1つの周縁電極116bと中央電極116aとを結んだ直線上には、他の周縁電極116bが配置されていない状態、すなわち、各圧力検知部の検出方向が被らない状態とすることが望ましい。
【0148】
そして、この場合も上記実施形態と同様にして、所定の一方向から圧力センサ200に荷重を載荷した際に計測された圧力検知部毎の電気抵抗値に基づいて圧力センサ200の固有パラメータを求めるキャリブレーション工程を実施し、キャリブレーション工程で得られた圧力センサ200の固有パラメータと各圧力検知部の電気抵抗値とに基づいて、すなわち、基準電気抵抗値Rcが不変という原理及びゲージ率総和Scが不変という原理に基づいて、圧力センサ200に生じる応力を求める測定工程を実施することによって、圧力センサ200に作用する圧力を測定することができる。
【0149】
具体的には、キャリブレーション工程では、3次元の応力成分を求めるために、正規化較正時ゲージ率rc iの最大値(rc I)及び最小値(rc III)に加えて、中間値(rc II)がさらに圧力センサ200の固有パラメータとして求められる。なお、上述のように、一軸圧縮試験は、側圧を掛けずに行われるため、キャリブレーション工程において、一軸圧縮試験装置40により球状の圧力センサ200に荷重が載荷された場合、載荷方向に直交する方向における応力、すなわち、較正時中間主応力σc II及び較正時最小主応力σc IIIの大きさは共にゼロとなる。
【0150】
また、圧力センサ200に未知の荷重Ptが載荷された際、測定工程では、図15に示すように、せん断応力がゼロとなる座標系における最大主応力σI及び最小主応力σIIIに加えて、中間主応力σIIが求められるとともに、XYZ座標軸を面法線とする微小領域に作用する応力テンソルである垂直応力(σxx,σyy,σzz)及びせん断応力(σxy,σxz,σyz)が各平面においてそれぞれ求められる。
【0151】
このように球状の圧力センサ200によれば、圧力センサ200に生じる法線方向の応力、すなわち、圧力センサ200に作用する3次元方向の圧力を測定することが可能である。また、この場合もキャリブレーション工程における圧力センサ200への荷重の載荷は、所定の一方向からだけでよいことから、キャリブレーション工程が簡素化され、結果として、キャリブレーション作業に要する労力を低減させることができる。
【0152】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0153】
上記実施形態では、圧力センサ100,200が土圧計である場合を例にして説明したが、圧力センサ100,200の用途はこれに限定されるものではなく、上記構成の圧力センサ100,200は、様々な圧力や荷重の測定において利用可能である。
【符号の説明】
【0154】
100,200・・・圧力センサ
10A,10B,10C・・・圧力検知部
12・・・球体
14・・・収容部
16a・・・第1電極(一対の電極)
16b・・・第2電極(一対の電極)
30・・・計測部
40・・・一軸圧縮試験装置
116a・・・中央電極(一対の電極)
116b・・・周縁電極(一対の電極)
図1
図2
図3
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