(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074463
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 102H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184524
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 年彦
(72)【発明者】
【氏名】大杉 卓也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】持ち運び可能な熱交換装置を提供する。
【解決手段】熱源を収納する熱源相2、作動液7を含む作動相3、両相を隔てる隔壁4、作動相3の末端に連結しているハンドル5を含み、ハンドル5は熱伝導性が高い中空構造であり、作動液7が中空構造を循環でき、手のひらでハンドル5を握ることにより、作動液7が熱源相2とハンドル5との間を循環し、ハンドル5において気化熱の採熱又は凝縮熱を放出することで、使用者の深部体温を低下又は上昇させることができる、持ち運び可能な熱交換装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を収納する熱源相、作動液を含む作動相、両相を隔てる隔壁、該作動相の末端に連結しているハンドル、を含む熱交換装置。
【請求項2】
前記ハンドルは熱伝導性が高い中空構造であり、前記作動液が該中空構造を循環できる、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記両相を隔てる隔壁は熱伝導性が高い隔壁である、請求項1又は2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記熱源は冷熱源であり、前記ハンドルから気化熱を採熱する、請求項1~3のいずれか1に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記熱源は温熱源であり、前記ハンドルから凝縮熱を放出する、請求項1~3のいずれか1に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記熱源は冷温熱源であり、前記ハンドルから気化熱を採熱する又は凝縮熱を放出する、請求項1~3のいずれか1に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプ現象を利用する熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(ヒートパイプ)
ヒートパイプは、中空構造をした金属製パイプで、内部を真空状態にし、そこへ液体(作動液と呼ばれる)を封入して作られる。該パイプ両端に温度差が生じると、高温部で作動液は熱吸収して蒸発し、低温部への蒸気流が生じる。そして、低温部に到達した蒸気は、熱を放出すると同時に凝縮し、その液体は壁面を通じて高温部へ戻る。ヒートパイプは、高温部と低温部とで作動液が相変化を繰り返し循環するため、パイプ両端の温度差がなくなるまで永続的に熱を伝えることができる。
ヒートパイプの液体が高温部へ戻る仕組みには2つある。1つは、重力を利用する方法(サーモサイホン式ヒートパイプ)、もう1つは、毛管力を利用する方法(ウィック式ヒートパイプ)である。いずれのヒートパイプも温度差のみを駆動力とし、高い熱輸送能を持つため、地中熱を利用した融雪技術やノートパソコンのCPU冷却装置など、幅広い分野に応用されている。
【0003】
(先行特許文献)
ヒートパイプを利用した熱輸送装置は、下記のように複数報告されている。
特許文献1は、「真空容器と、その真空容器の内周面に外周面を沿わせて配置された銅粉からなる焼結金属体と、前記真空容器の内部に封入されかつ加熱されて蒸発するとともに放熱して凝縮する作動液とを備えたヒートパイプであって、前記真空容器の内周面と前記焼結金属体の外周面との境界部分に、前記作動液を流動させるための流路が形成されていることを特徴とするヒートパイプ」を開示している。
特許文献2は、「内部に作動流体を封入して真空状態に保持した管状本体と、該管状本体の基端側に形成された二重管状凹部を有する加熱部とから成り、該加熱部の加熱面積比率を高めた事を特徴とするヒートパイプ」を開示している。
特許文献3は、「土のヒートパイプ現象を利用した熱輸送装置」を開示している。
【0004】
上記先行特許文献では、持ち運び可能な熱交換装置を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-115346
【特許文献2】特開2004-108749
【特許文献3】特開2017-40376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のヒートパイプ現象を利用した熱輸送装置は、持ち運び可能な構造ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、熱源を収納する熱源相、作動液を含む作動相、両相を隔てる隔壁、該作動相の末端に連結しているハンドル、を含む熱交換装置が、持ち運びながら熱交換することができることを確認して、本発明を完成した。
【0008】
本発明は以下の通りである。
1.熱源を収納する熱源相、作動液を含む作動相、両相を隔てる隔壁、該作動相の末端に連結しているハンドル、を含む熱交換装置。
2.前記ハンドルは熱伝導性が高い中空構造であり、前記作動液が該中空構造を循環できる、前項1に記載の熱交換装置。
3.前記両相を隔てる隔壁は熱伝導性が高い隔壁である、請求項1又は2に記載の熱交換装置。
4.前記熱源は冷熱源であり、前記ハンドルから気化熱を採熱する、前項1~3のいずれか1に記載の熱交換装置。
5.前記熱源は温熱源であり、前記ハンドルから凝縮熱を放出する、前項1~3のいずれか1に記載の熱交換装置。
6.前記熱源は冷温熱源であり、前記ハンドルから気化熱を採熱する又は凝縮熱を放出する、前項1~3のいずれか1に記載の熱交換装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱交換装置は、以下のいずれか1以上の効果を有する。
(1)持ち運びながら熱交換が可能である。
(2)ハンドルから気化熱の採熱及び凝縮熱の放出の両方を提供することができる。
(3)作動液の常温沸騰を見ることができる。
(4)使用者が手のひらでハンドルを握ることにより、深部体温を低下、上昇させることができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(1)熱交換装置の概要構図。(2)熱交換装置の断面概要図。
【0011】
以下に、本発明のヒートパイプ現象を利用した熱交換装置を詳細に説明する。
【0012】
(本発明の熱交換装置の構成)
本発明の熱交換装置(1)は、以下の構成を含む。
熱源を収納する熱源相(2)、作動液(7)を含む作動相(3)、両相を隔てる隔壁(4)、作動相の末端に連結しているハンドル(5)。
【0013】
(熱源相)
熱源相(2)の材質、形状は、熱源を収納できれば特に限定されない。例えば、円筒形状のアクリル容器、塩化ビニル容器、ガラス容器等を利用することができる。加えて、熱源(6)の出し入れをするための出入口(8)を有しても良い。なお、出入口(8)は、使用時には蓋(9)で閉めておくことが好ましい。
【0014】
(作動相)
作動相(3)の材質、形状は、作動液を含むことができかつ内部を減圧できれば特に限定されない。例えば、円筒形状のアクリル容器、塩化ビニル容器、ガラス容器等を利用することができる。
減圧の例は、熱交換できれば特に限定されないが、本装置を製作する際、作動液の飽和蒸気圧まで減圧することが望ましい。
【0015】
(隔壁)
隔壁(4)の材質、形状は、作動相(3)と熱源相(2)の両相を隔てることができかつ熱交換することができる熱伝導性が高ければ、特に限定されない。例えば、材質として、銅、アルミ、銀等を挙げることができる。
【0016】
(ハンドル)
ハンドル(5)の材質、形状は、本装置(1)の利用者が接して(握って)かつ熱交換することができる熱伝導性が高ければ、特に限定されない。加えて、ハンドル(5)は、中空構造であり、作動液(7)が該中空構造を循環できることが好ましい。
例えば、ハンドル(5)の形状として、使用者が手で握りやすい形状が好ましい。
【0017】
(熱源)
熱源(6)は、冷熱源、温熱源、冷温熱源のいずれでも良い。
冷熱源を使用すれば、ハンドル(5)から気化熱を採熱することができる。冷熱源の例として、氷、自体公知の冷却材、水道水等を挙げることができる。
温熱源を使用すれば、ハンドル(5)から凝縮熱を放出することができる。温熱源の例として、懐炉、自体公知の加温材、温水等を挙げることができる。
冷温熱源を使用すれば、本交換装置(1)の外部環境により、ハンドル(5)から気化熱又は凝縮熱を採熱又は放出することができる。詳しくは、外部環境の温度が高い時(例、夏)はハンドル(5)から気化熱を採熱し、外部環境の温度が低い時(例、冬)は凝縮熱を放出する。
【0018】
(作動液)
作動液(7)は、作動相の減圧条件下において、沸騰すれば、特に限定されない。例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン等を挙げることができる。
【0019】
(本発明の熱交換装置の使用例)
冷熱源を使用する使用例として、ハンドル(5)を重力方向(下側)にして使用する。また、ハンドル(5)を重力方向と反対側(上側)で使用する場合には、本装置(1)を時々逆さにして、ハンドル(5)の中空構造に作動液(7)がいきわたるようにする。
温熱源を使用する使用例として、ハンドル部を重力方向と反対側(上側)にして使用する。また、ハンドル部を重力方向(下側)にして使用する場合には、本装置を時々逆さにして、隔壁(4)周辺に作動液(7)がいきわたるようにする。
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例0021】
図2に記載の試作品を作成した。詳細は、以下の通りである。
熱源相:透明な形状の塩化ビニル容器
作動相:透明な形状の塩化ビニル容器
隔壁:銅
ハンドル:中空形状の銅
熱源:冷熱源としての氷
作動液:水
減圧:飽和水蒸気圧
使用者は、本試作品を持ち運び中に、ハンドルが冷却されていることを確認した。
手のひらには、体温を調整するAVA血管がある。AVA血管を通る血液を冷やすことで冷えた血液が体内を巡り、体の中心部の体温(深部体温)を下げることができることが知られている。また、AVA血管を通る血液を温めることで、体の深部体温を挙げることができることが知られている。
本発明の熱交換装置(1)の使用者は、手のひらでハンドル(5)を握ることにより、深部体温を低下、上昇させることができる。