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  • 特開-逆流防止部材を備えるマスク補助具 図1
  • 特開-逆流防止部材を備えるマスク補助具 図2A
  • 特開-逆流防止部材を備えるマスク補助具 図2B
  • 特開-逆流防止部材を備えるマスク補助具 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074499
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】逆流防止部材を備えるマスク補助具
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220511BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184590
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390000804
【氏名又は名称】白山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 茂男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】
マスク内の呼気の流れを一方向に導くことで、マスク装着時の呼吸を楽にすることができるマスク補助具を提供することを目的とする。
【解決手段】
装着者の顔面の鼻と口を覆うマスクの内側に装着するマスク補助具において、前記装着者の鼻孔下に保持され、鼻孔からの排気を下方のみに向けるための逆流防止部を備えた仕切り部材およびこれを備えたマスク補助具を提供する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の顔面の鼻と口を覆うマスクの内側に装着するマスク補助具において、前記装着者の鼻孔下に保持され、鼻孔からの排気を主として下方に向ける逆流防止部を備える仕切り部材。
【請求項2】
前記仕切り部材が、前記装着者の鼻孔と上唇の間を隔て、顔の曲面に沿った略U字の板部材であり、板部材の顔面に対向する端部のうち鼻孔のある上側が顔面より離れ、口がある下側が顔面に近づくように端部勾配を逆流防止部として設けてなる、あるいは下からの空気の流れの一部を分流し、180度その流れの方向を変えて元の流れに当てることで流れを阻止するための通路を有する、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項3】
前記逆流防止部が、逆止弁または羽根を備える回転部材である、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項4】
前記逆止弁が、複数の弁部材とフレームとで構成される逆止弁であって、前記弁部材の一端が、鼻孔の下で、鼻孔からの呼気によってお互いに離反して開くが、吸気による逆向きの流れに対しては、複数の弁部材の一端がお互いに接触するように閉じる逆流防止部を備える、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項5】
通気孔や隙間の開口部の上部を広くし、下部を狭くなるように傾斜させた通路を備え、鼻孔からの空気を下方に誘導する逆流防止部を備える、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項6】
前記弁部材が四角形であり、側部部材が少なくとも一対の二等辺三角形の形状であり、前記二等辺三角形の底辺が基体に定着されており、前記逆止弁が前記四角形の一辺を等辺と共有するように前記基体に定着されている逆流防止部を備える、請求項3または4に記載の仕切り部材。
【請求項7】
前記回転部材の羽根が回転軸に対して10°~45°になるように取り付けられている逆流防止部を備える、請求項2に記載の仕切り部材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の仕切り部材を備えたマスク補助具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻と口を覆うマスクの内側に装着するマスク補助具およびこれに用いる逆流防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクを着用する習慣が定着しつつある中、マスクを長時間着用する場合が増えている。また、日常生活の中で、運動中や作業中でも着用が必要になっている。その中で、マスク着用時の快適性を求めた発明はこれまでなされている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5818191号
【特許文献2】実用新案登録第3210692号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日常的にマスクの装着時間が長くなると、マスクの中に残った自分の排気を最初に吸い込むことが繰り返される。そのため、特にジョギングや、自転車の運転などをする際にマスクを装着すると、マスク内の残留排気中の二酸化炭素を過剰に吸うことで不快となり、マスクの一部を浮かしたりマスクそのものを外してしまったりして感染防止の効果をなくしてしまうことも多い。このような問題を鑑みて本願発明者らは、マスクの本来の機能と快適性を両立させるためのマスクまたはマスク補助具を発明した(PCT/JP2020-033154)。本願発明はこのようなマスク補助具において、さらに鼻孔からの排気をマスク下部に効率的に誘導して、快適に呼吸を行うことが可能なマスク補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1の態様の発明は、装着者の顔面の鼻と口を覆うマスクの内側に装着するマスク補助具において、装着者の鼻孔下に保持され、鼻孔からの排気を主として下方に向けるための逆流防止部を備える仕切り部材、を提供する。
【0006】
この構成をとることにより、装着者はマスクの中に残留した呼気を再度吸気の際に吸うことを避けることができる。
【0007】
また、第2の態様の発明は、仕切り部材が装着者の鼻孔と上唇の間を隔て、顔面の曲面に沿った略U字の板部材であり、板部材の顔面に対向する端部のうち鼻孔のある上側が顔面より離れ、口がある下側が顔面に近づくように端部勾配を設けてなる、逆流防止部を備える仕切り部材、である。
【0008】
このような構成を取ることにより、呼気により生じた下向きの空気の流れがこの仕切り部材と顔面との間を通過するとき、上記逆流防止部により、上から下に流れる空気の流れは流れが絞られながら楽に流れ、下から上に流れるときは流れの幅が広がるため乱流が生じて流れ難くなるというテスラ・バルブ(Tesla valve)の効果を発揮して、吸気により戻される空気の流れを制限して、呼気が主として下向きに流れるようにできる。
【0009】
また、第3の態様の発明は、仕切り部材の鼻孔の下側に設けられる鼻孔下孔に、逆止弁または羽根を備える回転部材を備える仕切り部材である。
【0010】
この構成をとることにより、仕切り部材の鼻孔の下側に設けられる鼻孔下孔からの排気をより効率的にマスク下部に送ることができる。
【0011】
また、第4の態様の発明は、逆止弁が、複数の弁部材とフレームとで構成される逆止弁であって、複数の弁部材の一端が鼻孔の下で、鼻孔からの呼気によってお互いに離反して開くが、吸気による逆向きの流れに対しては、複数の弁部材の一端がお互いに接触するように閉じる逆流防止部を備える仕切り部材である。
【0012】
この構成は、たとえば一対の逆止弁の弁部材がV字で下側に尖ったように構成され、尖った先端部が自由端で鼻腔からの呼気が弁部材に当たると、その弁部材を開きながら、弁部材から反射した呼気が対向する弁部材に当たってその対向する弁部材をも開くというように、一対の弁部材を弱い呼気の流れで微小な流体抵抗で効率的に開くと同時に、逆の流れは弁部材が、その下側に置かれたV字型のフレームに押されて確実に閉じられる、というように開状態の流体抵抗の少ない逆止弁が構成される。
【0013】
また、第5の態様の発明は、鼻孔からの空気を下方に誘導するために空気が流れる孔や隙間の開口部が、上は広く下が狭くなるように傾斜した通路を有する、あるいは下からの空気の流れの一部を分流し、180度その流れの方向を変えて元の流れに当てることで流れを阻止するための通路を有する、逆流防止部を備える仕切り部材である。
【0014】
この構成を取ることにより、上から下に流れる空気の流れは流れが絞られながら楽に流れ、下から上に流れるときは流れの幅が広がるため乱流が生じて流れ難くなる、あるいは分流した流れが180度その流れの方向を変えて元の流れに当たることで流れ難くなる、というテスラ・バルブ(Tesla valve)の効果を発揮して、上向きの流れを流れ難くする逆流防止部材としての働きが生ずる。
【0015】
また、第6の態様の発明は、弁部材が四角形であり、側部部材が少なくとも一対の二等辺三角形の形状であり、二等辺三角形の底辺が基体に定着されており、逆止弁が四角形の一辺を等辺と共有するように基体に定着されている、逆流防止部を備える仕切り部材である。
【0016】
この構成を取ることにより、鼻腔からの呼気によって、弱い呼気であっても対向する弁部材が開くことができる少ない流体抵抗の通路となり、逆の流れは確実に弁部材を閉じる逆流防止部材を効率的に作ることができる。
【0017】
また、第7の態様の発明は、回転部材の羽根が回転軸に対して10°~45°になるように取り付けられている、逆流防止部を備える仕切り部材である。
【0018】
この構成を取ることにより、回転体の羽根が鼻孔からの下向きの呼気を受けて回転させられ、この回転体の羽根の回転は慣性運動により一定時間呼気が止まっても維持されるため、その回転によって上の鼻孔まわりに残された残留呼気が強制的に下方に流されて外部の新鮮な空気が吸い込まれ、次に吸気を始めるときには初めから新鮮な空気を吸い込むことができる。
【0019】
また、第8の態様の発明は、本願にて開示される仕切り部材を備えたマスク補助具である。
【0020】
本願発明において、「マスク補助具」とは、装着者がマスクを着用したときに、装着者の鼻孔下と上唇との間に位置するようにマスク内に設けられる部材である。また、本願発明において、「仕切り部材」とは、マスク補助具の全部または一部を構成し、鼻孔の下に(呼気の)流入孔がもうけられており、この流入孔に本願発明に係る逆流防止部を設けることができる部材を意味する。「仕切り部材」の素材は本願発明において特に重要ではない。具体的には、木材、合成樹脂が考えられる。形状は顔面の曲面に沿った略U字型の薄板が好ましく、軽量化の観点から中空または肉抜きとすることが更に望ましい。本発明のマスク補助具は、装着者の顔面の所定の位置に前記補助具を固定するためのさらなる補助具(頬あて、クリップ、マスク下部を顔面から浮かして呼吸を楽にする部材等)を備えてもよい。好ましくは、「マスク補助具」は、樹脂のモールド加工、3Dプリンターなどで作成することができる。
【0021】
本願発明において、「逆流防止部」とは、マスク補助具を構成する鼻腔からの下向きの空気の流れを逆流させないように構成された仕切り部材の開口部に設けられる気体の流れを一方向的にする構造または装置を意味する。このような「仕切り部材」の開口部に設置する逆流防止部の例としては、顔面に向かって上から下にかけて設けられる傾斜構造、いろいろな形状の逆止弁、空気を一定方向に送る回転体がある。また、これらの構成に鼻孔下から空気の流れを効率よく導くような構造(整流板、テーパー)を設けてもよい。本願発明における仕切り部材は、日常的使用の観点からは、簡単で軽量な板材が好ましく、また、マスクに装着しやすいようにその両端にクリップ等の構造を有していてもよい。
【0022】
本願発明において、「逆止弁」とは、たとえば弁部材とフレームから構成された、一方の空気の流れを通しやすく、他方からの空気の流れを通し難くする構造を有するものを意味する。本願発明において、特に好ましい弁部材は、一対の逆流防止部の弁部材がV字で下側に尖ったように構成され、尖った先端部が自由端で鼻腔からの呼気がある弁部材に当たるとその弁部材を開きながら、反射した呼気が対向する弁部材に当たってその対向する弁部材をも開くというように、一対の弁部材を弱い呼気の流れと微小な流体抵抗で効率的に開くと同時に、逆の流れは弁部材がV字型のフレームに押されて確実に閉じられる、というように開状態の流体抵抗の少ない逆止弁が構成される。
【0023】
本願発明において、逆止弁の弁部材は樹脂フィルムや金属薄膜で構成することができる。弁部材は鼻孔からの呼気を通す程度の柔軟性でなければならないため、樹脂フィルムの場合は通常10μm~100μmの薄膜であることが好ましい。また、弁部材はフレームに任意の手段で接着させることができなければならない。また、フレームは、上記弁部材を通過する空気を鼻孔から下方向に通過させるように保持できればよく、素材は特に重要ではないが、軽量で耐湿性のあることが必要とされ、テフロン(登録商標)などの合成樹脂から構成することが好ましい。本発明の好ましい態様において、フレームは、量産がしやすい樹脂モールドで作ることができ、弁部材は樹脂フィルムでよく、溶着や接着剤でフレームに定着させることができる。
【0024】
本発明において、「羽根を備えた回転体」とは、回転軸の周りに複数枚の羽根と取り付けたものである。羽根は鼻孔からの呼気を受けて回転して空気を下に流すような角度で軸に取り付けられていることが好ましい。このような角度は通常10°~45°が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は通常のマスク内における呼吸を図示したものである。
図2A図2Aは本発明のマスク補助具における逆流防止部の一例を示すものである。鼻孔下から上唇の間を中心にして、左右に延びる略U字型の板部材において、顔に近い端部に勾配を設けることにより、マスク内の空気を上から下には通しやすく、下から上には通しにくい構造を有する。
図2B図2B図2AのX-X断面とその付近の空気の流れを示す図である。(a)のように、上からの空気は楽に流れるが、(b)のように下からの空気は膨張した空気が流れを乱し流れが阻止される効果が、この仕切り板端部の傾斜面で生成される。
図2C図2C図2AのY-Y断面とその付近の空気の流れを示す図である。ここでも、仕切り板端部の傾斜面で逆流防止効果が生まれる。
図3図3は本発明のマスク補助具における逆止弁を用いた態様を示すものである。
図4図4図3のマスク補助具における本発明の逆止弁の構造を示す図である。
図5図5図4のマスク補助具における空気の流れを説明する図である。
図6図6図3のマスク補助具におけるマスク内の空気の流れを示す図である。
図7図7は本発明のマスク補助具における羽根つき回転体を用いた態様を示す図である。
図8図8図7のマスク補助具におけるマスク内の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1を参照して、一般的なマスクを装着したときの空気の流れを説明する。マスク10を装着した場合に、息を吐くと酸素レベルが下がり生温かい呼気がマスク10内に充満する(図1(1))。その状態で吸気を開始すると、マスク10内に残留した呼気を始めに吸うことになる(図1(2))。その後にマスク10内に導かれた外気を吸うことができる(図1(3))。
【0028】
次に図2A、BおよびCを参照して本願発明に係る逆流防止部を備える仕切り部材について説明する。本実施態様では、逆流防止部は、マスク10の内側に置かれる仕切り部材20の開口部端部に設けられる。図示していないが、仕切り部材20はクリップ等の構成を備えておりマスク10に固定することができる。仕切り部材20は樹脂成型品であり、厚さは5mm程度で軽量化のために中空、あるいは下部から肉抜きした部材であり、素材により厚さをコントロールすることができる。
【0029】
本実施態様において、仕切り部材20は略U字型で顔の曲面にそってマスク内に保持することができる。鼻孔下はその鼻孔の出口形状に沿った形状に切り取られた開口部をしていてもよい。本実施態様において、仕切り部材20の顔に近い断面は、鼻孔からの空気を下方に誘導するために空気が流れる孔や隙間の開口部が、上は広く下が狭くなるように傾斜した通路を有する。
【0030】
このことにより、図2Bに示すように、鼻孔からの呼気、あるいはマスク上に溜まった空気が下側に流れる空気は、下向きに流れやすくなる。また、勾配により顔表面と逆流防止部材の隙間が狭くなるに従い下向きの空気流れが圧縮されて流れに勢いがつくため、下向きの空気の流れを一層促進させることができる。また、下側からの空気流れは空気が狭い入り口であるため、入り口の外側に広く拡散されて流れが逆向きになるような乱流が生成して流れにくく鼻孔付近に戻ることを抑制する。
【0031】
図2Cを参照して、本実施態様における鼻孔下の流れを記載する。この部分のテーパの角度や弁材の厚さを調整することにより呼気を楽にすることもできる。
【0032】
次に図3を参照して、本願発明の他の実施態様について説明する。仕切り部材20は逆止弁40および姿勢保持フレーム50を備える。逆止弁40の構成は図4にて詳述する。仕切り部材20、逆止弁40、姿勢保持フレーム50は樹脂成型品であることが好ましい。樹脂成型品であることにより耐湿性があり、また装着者の顔にあったサイズの製品を樹脂モールドで高精度で、必要に応じて大量に製造することが可能である。
【0033】
図3に示す実施態様において、逆止弁40は仕切り部材20の鼻孔下の開口部で溶着や接着剤、あるいは一体成型により結合されている。姿勢保持フレーム50はマスクを押してその反力でマスク補助具20を顔に軽く押し付けるようにして固定するものである。場合によっては、この姿勢保持フレーム50を上に上げることによって、マスクの下側を浮かせて、呼気を直接排出できるようにして呼吸をしやすくする用途にも使用する。
【0034】
次に図4を参照して、図3の実施態様における逆止弁40を詳述する。逆止弁40は、弁部材41aおよび41bが四角い樹脂フィルムで構成されており、フレーム43の上部で自由端が近接するように固定されている。本実施態様において、弁部材41は樹脂フィルムで構成されているが、必要に応じて紙などの他の素材を用いてもよい。フレーム43は弁部材を取り付け鼻孔からの呼気を誘導するように、43a、43b、43cのような側部部材を構成してもよい。図4において90aおよび90bは四角い孔になっており、このことによりマスク補助具20の鼻孔下の穴と連通して呼気をマスク下方に逃す構成となっている。
【0035】
次に図5を参照して、図3に記載の弁部材40における呼気と吸気を行う場合の空気の流れを説明する。図5の(A)は40の中心部を通る呼気が自由端を通過して排気されるときの弁部材41aおよび弁部材41bの動きを示す。(B)では弁部材41aと41bが斜めに対向しておかれ配置される構造であるため、呼気が弁部材に当たると、反射した空気が対向する弁部材に当たってその弁部材を開くように作用しながら流れるため、弁部材が開きやすいことを図示している。このようにして呼気は容易に弁を通過できる。しかしながら、吸気を行う場合、つまり外気が図で右から侵入しようとする場合には、自由端が閉じ空気の逆流を阻止するが起こりえない。このため、マスク内において空気の流れ方向を制御する逆止弁として機能することができる。
【0036】
次に図6を参照して、図3における実施態様における空気の流れを説明する。息を吐いたときに、呼気のほとんどは鼻孔の下にある逆流防止部を通過してマスク10の下部に流れる。この呼気は逆流防止部の効果でほとんどマスク上部に戻らず、マスク10の下部で浄化されて外部に排出される(図6(1))。次に吸気を開始するときには、マスク10の上部に残された少しの呼気を吸うが(図6(2))、マスク下部からの吸気は逆流防止部である逆止弁40により戻らないため、マスク10の上部からマスクを通過した浄化空気を吸うことになる(図6(3))。これを繰り返すことによりマスク上部はマスクを通過した浄化空気で満たされ、マスク10の下部は呼気で満たされた状態となり、装着者は呼気を吸うことが極力少なくなる。
【0037】
次に図7を参照して、本願発明に係る仕切り部材のさらなる態様について説明する。本願態様では、逆流防止部として鼻孔下に羽根車60を装着している。マスク補助具は20a、20b、および20cのように回転軸で連結されたパーツにより構成されていてもよく(図7においてこれらに対応する反対側のパーツ部分の番号は省略する。)、顔の形状の異なる装着者の顔形状に合ってマスクの上下空間を分離することが可能である。また、鼻孔下と上唇の間にマスク補助具を固定するため、マスク補助具の両端にクリップ80aおよび80bを備えていてもよい。さらに、顔で望みの位置を保つために頬あて81aおよび81bを備えていてもよい。本実施態様では、羽根車60に上唇やマスクが接触することを防ぐためのフレーム73aおよび73bを備えていてもよい。これは、羽根の外周を囲む円筒形でもよい。
【0038】
次に図8を参照して、図7の実施態様におけるマスク内の空気の流れを説明する。呼気は図7の鼻孔下の穴90を通ってマスク10の下部に入りマスク10の下部でマスク10を通ってマスク外にでる(図8(1))。同時に、呼気の風圧で羽根車60が回転を始め呼気が止まった後も羽根車60は惰性で回転を続ける。この回転で生じる下向きの空気の流れでマスク10の上部に残された呼気と外気がマスク10の下部に送られることにより、マスク10の上部はマスクを通過して浄化された外気のみとなる(図8(2))。吸気を開始すると、羽根車60の回転の惰性が続くことによりマスク10の上部は上部のマスクを通過して浄化された空気で満たされているために、装着者はこの浄化された空気を吸うことが出来る。なお、呼気に比較して吸気時のタービンに働く空気の上向き流れは圧倒的に弱いため、特にラチェットなどの反転防止機構を用いなくても、羽根車60は逆回転しないか、してもその回転は弱い(図8(3))。
【符号の説明】
【0039】
10:マスク
20:仕切り部材
40:逆止弁
41:弁部材
43、73:フレーム
50:姿勢保持フレーム
60:羽根車
80:クリップ
81:頬あて
90:穴
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8