(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074581
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】装飾品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B44C 3/12 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
B44C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184726
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】520417481
【氏名又は名称】株式会社K’s collection
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】▲検▼見▲埼▼ 亜衣
(57)【要約】
【課題】重量のある装飾部品を容器内の所望の位置に配置できる新規な方法を提供する。
【解決手段】透明又は半透明の硬化性液体14を注入した横倒し状態の容器12内の硬化性液体14上に装飾部品18を載置し、硬化性液体14を固化することにより装飾部品18を容器12内の外周固化層16に固定する装飾部品設置工程を有する装飾品10の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する透明又は半透明の容器内に装飾部材を配置した装飾品を製造する方法であって、
透明又は半透明の硬化性液体を注入した横倒し状態の前記容器内の硬化性液体上に前記装飾部品を載置し、該硬化性液体を固化することにより前記装飾部品を前記容器内の外周固化層に固定する装飾部品設置工程を有していることを特徴とする装飾品の製造方法。
【請求項2】
前記横倒し状態の容器の底部の位置を変更して前記装飾部品設置工程を複数回行うことを特徴とする請求項1記載の装飾品の製造方法。
【請求項3】
前記装飾部品設置工程において、直立した容器の上半分となる位置に、前記装飾部品を載置して固定することを特徴とする請求項1又は2記載の装飾品の製造方法。
【請求項4】
前記装飾部品設置工程後に、
前記容器を直立させて、該容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、前記容器の開口から硬化性液体を注入して固化する硬化性液体補充工程を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の装飾品の製造方法。
【請求項5】
前記装飾部品設置工程後に、
前記容器を直立させて、該容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、前記容器の開口から液状オイルを注入する液状オイル注入工程と、
前記液状オイルに、その先端部が前記容器の開口閉塞部材に取り付けられた芯部材を浸漬する芯部材浸漬工程と、
を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の装飾品の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性液体が、加熱時に液化し常温時にジェル化するジェルワックス、複数の溶剤を混合することにより固化するエポキシレジン、及び紫外線照射により固化するUVレジンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の装飾品の製造方法。
【請求項7】
透明又は半透明の容器内に透明又は半透明の硬化性液体が固化した外周固化層を備え、該外周固化層に装飾部品が固定されていることを特徴とする装飾品。
【請求項8】
前記装飾部品の少なくとも一部が、直立した前記容器の上半分に固定されていることを特徴とする請求項7記載の装飾品。
【請求項9】
前記外周固化層の内側の内部空間に液状オイルを備えると共に、該液状オイルに、その先端部が前記容器の開口閉塞部材に取り付けられた芯部材が浸漬されている、リキッドキャンドルであることを特徴とする請求項7又は8記載の装飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、透明な容器内に、装飾部品を収容した様々な装飾品が提案されている。
【0003】
例えば、透明な容器内に、標本を固定した透明な支持体を入れるとともに、オイルを入れてなる装飾品が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1の装飾品は、充填物であるオイル中に、花や草などのオイル中で浮く軽量な装飾部品を固定した透明な支持体を収容することにより、装飾部品を容器内の所定位置に固定するものであるが、充填物や装飾部品に合わせた支持体が必要であるため、コスト高となり、その製造方法も煩雑であった。
【0005】
一方、透明な容器内に、重量のある装飾部品を収容する場合には、固定する支持体の作製が容易でなく、装飾部品を容器内の所望の位置に配置することが難しかった。また、支持体を用いることなく充填物に配置しても、充填物中に沈んでしまい、同様に、容器内の所望の位置に配置することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、重量のある装飾部品を容器内の所望の位置に配置できる新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、重量のある装飾部品を容器内の所望の位置に正確に配置する方法について鋭意検討した結果、透明又は半透明の硬化性液体を注入した横倒し状態の容器内の硬化性液体上に装飾部品を載置し、硬化性液体を固化し装飾部品を容器内の外周固化層に固定することにより、装飾部品を所望の位置に正確に配置できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
上部に開口を有する透明又は半透明の容器内に装飾部材を配置した装飾品を製造する方法であって、
透明又は半透明の硬化性液体を注入した横倒し状態の前記容器内の硬化性液体上に前記装飾部品を載置し、該硬化性液体を固化することにより前記装飾部品を前記容器内の外周固化層に固定する装飾部品設置工程を有していることを特徴とする装飾品の製造方法。
[2]
前記横倒し状態の容器の底部の位置を変更して前記装飾部品設置工程を複数回行うことを特徴とする上記[1]記載の装飾品の製造方法。
[3]
前記装飾部品設置工程において、直立した容器の上半分となる位置に、前記装飾部品を載置して固定することを特徴とする上記[1]又は[2]記載の装飾品の製造方法。
[4]
前記装飾部品設置工程後に、
前記容器を直立させて、該容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、前記容器の開口から硬化性液体を注入して固化する硬化性液体補充工程を有していることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の装飾品の製造方法。
[5]
前記装飾部品設置工程後に、
前記容器を直立させて、該容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、前記容器の開口から液状オイルを注入する液状オイル注入工程と、
前記液状オイルに、その先端部が前記容器の開口閉塞部材に取り付けられた芯部材を浸漬する芯部材浸漬工程と、
を有していることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の装飾品の製造方法。
[6]
前記硬化性液体が、加熱時に液化し常温時にジェル化するジェルワックス、複数の溶剤を混合することにより固化するエポキシレジン、及び紫外線照射により固化するUVレジンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか記載の装飾品の製造方法。
【0010】
[7]
透明又は半透明の容器内に透明又は半透明の硬化性液体が固化した外周固化層を備え、該外周固化層に装飾部品が固定されていることを特徴とする装飾品。
[8]
前記装飾部品の少なくとも一部が、直立した前記容器の上半分に固定されていることを特徴とする上記[7]記載の装飾品。
[9]
前記外周固化層の内側の内部空間に液状オイルを備えると共に、該液状オイルに、その先端部が前記容器の開口閉塞部材に取り付けられた芯部材が浸漬されている、リキッドキャンドルであることを特徴とする上記[7]又は[8]記載の装飾品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、装飾部品を容器内の所望の位置に配置した装飾品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、硬化性液体を注入した直立状態の容器の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、硬化性液体を注入した横倒し状態の容器の斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、容器を90°回転して横倒し状態の底部の位置を変更して、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、容器を180°回転して横倒し状態の底部の位置を変更して、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、容器を270°回転して横倒し状態の底部の位置を変更して、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、装飾部品コーティング工程後の容器内の概略断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、液状オイル注入工程及び芯部材浸漬工程後の容器内の概略断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る装飾品の斜視図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る装飾品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る装飾品の製造方法は、上部に開口を有する透明又は半透明の容器内に装飾部材を配置した装飾品を製造する方法であって、透明又は半透明の硬化性液体を注入した横倒し状態の容器内の硬化性液体上に装飾部品を載置し、硬化性液体を固化することにより装飾部品を容器内の外周固化層に固定する装飾部品設置工程を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明の製造方法によれば、透明又は半透明の容器内の所望の位置に装飾部品を収容した装飾品を容易に製造することができる。すなわち、本発明の方法は、横倒し状態の容器内の硬化性液体上に装飾部品を載置し、その状態で固定することから、装飾部品を容器内の所望の位置に容易かつ正確に配置することができる。これにより、従来困難であった直立した容器の上半分となる位置にも装飾部品を容易かつ正確に固定することが可能となる。すなわち、直立した容器に加熱により液化した硬化性液体を注入し、硬化性液体の固化層を形成して装飾部品を載置した後、さらに加熱により液化した硬化性液体を容器内に追加すると、追加した硬化性液体の熱により、先だって固化した硬化性液体の層が液化して装飾部品が沈降してしまい、所望の位置に装飾部品を固定することが困難であったが、本発明の製法によれば、装飾部品を容器内の所望の位置に容易かつ正確に配置することができる。
【0015】
また、本発明の製造方法は、特殊な材料を用いる必要がなく、従来から用いられている一般に入手容易な材料を用いることから、安価に装飾品を製造することができる。さらに、装飾部品が容器内で浮遊しているかのような優れた美観を備えた装飾品を製造することができる。
【0016】
本発明の製造方法で製造される装飾品は、観賞用又はインテリア用の置物として用いることができる。また、容器内に液状オイル及び芯部材を設ける場合には、リキッドキャンドルとして用いることができる。
【0017】
[容器]
本発明の装飾品の製造に用いる容器は、後述の硬化性液体や装飾部品を内部に収容可能な、上部に開口を有する透明又は半透明の容器である。その外形としては、特に制限されるものではなく、例えば、角柱状、円柱状、角錐状、円錐状等の各種形状を挙げることができる。また、その大きさは、用途によって適宜設定することができるが、例えば、直径(多角形の場合は対角線の長さ)10~500mm程度、高さ10~500mm程度であり、直径15~250mm程度、高さ20~400mm程度が好ましく、直径20~120mm程度、高さ40~300mm程度がより好ましい。
【0018】
容器の材質としては、後述の硬化性液体や装飾部品を内部に収容可能な、透明又は半透明なものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ガラス、プラスチック等を挙げることができ、耐熱性及び耐久性を有する点で、ガラス又は耐熱性プラスチックが好ましい。開口は、容器上部の一部に設けられるものであれば特に制限されるものではないが、上部中央に設けられていることが好ましい。これにより、容器を横倒しする場合や横倒し状態で回転する場合に、内容物が容易に漏出することを防止できる。
【0019】
[硬化性液体]
本発明の装飾品の製造に用いる硬化性液体は、硬化性を有する透明又は半透明の液体である。硬化性を有する液体とは、流動性状態から固体状態に変化する(固化する)液体であり、硬質な固体に変化するものほか、ゼリー状等の軟質な固体に変化するものを含む。なお、硬化性液体は、染料や顔料を含有し、着色されたものであってもよい。
【0020】
具体的に、硬化性液体としては、例えば、温度変化により固化するもの、エポキシレジン等の複数の溶剤を混合することにより固化するもの、UVレジン等の紫外線照射により固化するものなどを挙げることができ、温度変化により固化するものが好ましい。温度変化により固化するものとしては、加熱時に液化し、常温時に固化するものが好ましく、加熱時に液化し常温時にジェル化するものがより好ましい。硬化性液体の融点としては、45℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。また、硬化性液体の融点の上限としては、特に制限されるものではないが、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。具体的に、硬化性液体としては、例えば、石油系炭化水素(パラフィン)で構成されるものを挙げることができる。加熱時に液化し常温時にジェル化する硬化性液体としては、ジェルワックス(ジェルキャンドル)を挙げることができる。
【0021】
[装飾部品]
本発明の装飾品の製造に用いる装飾部品は、特に制限されるものではなく、例えば、金属、鉱石、プラスチック、ガラス、粘土、植物、砂、貝殻、昆虫等の各種固形装飾部品を挙げることができる。なお、装飾部品は、耐熱性部材であってもよいし、非耐熱性部材であってもよい。
【0022】
以下、本発明の方法における各工程を詳細に説明する。
[装飾部品設置工程]
装飾部品設置工程は、透明又は半透明の硬化性液体を注入した横倒し状態の容器内の硬化性液体上に装飾部品を載置し、硬化性液体を固化することにより装飾部品を容器内の外周固化層に固定する工程である。本発明の装飾品の製造方法は、横倒し状態の容器内の硬化性液体上に装飾部品を載置し、その状態で固定することから、軽量な装飾部品だけでなく、従来適切な配置が困難であった重量のある装飾部品も所望の位置に正確に配置することができる。
【0023】
硬化性液体を注入した横倒し状態の容器は、例えば、直立又は斜めに起立させた容器に、硬化性液体を注入して横倒し状態にする方法や、横倒し状態の容器に、硬化性液体を直接注入する方法により得ることができる。また、硬化性液体の注入方法としては、例えば、ノズル、スポイト、ホッパー、漏斗等の注入器具を用いる方法を挙げることができる。
【0024】
容器内の硬化性液体上に装飾部品を載置する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、ピンセット等の把持具を用いて載置する方法を挙げることができる。また、装飾部品を配置する予定の容器の外周面上に予めシールやインクなどの目印を設けていてもよい。なお、装飾部品を載置する容器内の硬化性液体は、液体状態であってもよいし、固化する途中の半分程度固化した状態であってもよい。具体的に、硬化性液体がジェルワックスの場合、ジェルワックスが半分程度固化した(ジェル化した)状態で形成された外周固化層に、装飾部品を埋め込む方法を挙げることができる。
【0025】
本発明の製造方法においては、装飾部品設置工程を複数回行うことが好ましい。すなわち、横倒し状態の容器の底部の位置を変更して装飾部品設置工程を複数回行うことが好ましい。これにより、容器を直立した際に、装飾部品を容器内の全方向に配置できる。例えば、複数の装飾部品を容器内の外周固化層の周方向に斜めに連続して固定することにより、容器を直立した際に、装飾部品がらせん状に配置された装飾品を得ることができる。
【0026】
具体的に装飾部品設置工程を複数回行う場合としては、例えば、容器を180°回転させて装飾部品設置工程を2回行う場合や、容器を90°回転、180°回転、270°回転させて装飾部品設置工程を4回行う場合等を挙げることができる。
【0027】
なお、横倒し状態の容器の底部の位置を変更して装飾部品設置工程を複数回行う場合、各装飾部品設置工程の間に、装飾部品を載置することなく硬化性液体を注入して固化する工程を有していてもよい。具体的に、容器を180°回転させて装飾部品設置工程を2回行う場合、2回目の装飾部品設置工程の前に、容器を90°回転させて装飾部品を載置することなく硬化性液体を注入して固化し、2回目の装飾部品設置工程の後に、容器を270°回転させて装飾部品を載置することなく硬化性液体を注入して固化することができる。
【0028】
装飾部品設置工程において、装飾部品を固定する位置としては、直立した容器の底部よりも上(容器の側面)が好ましく、直立した容器の上半分となる位置がより好ましい。これにより、装飾部品が容器内で浮遊しているかのような優れた美観を備えた装飾品とすることができる。
【0029】
(装飾部品コーティング工程)
装飾部品コーティング工程は、装飾部品設置工程の後に必要に応じて行う工程であり、容器の開口から硬化性液体を注入し、容器内に固定した装飾部品を被覆して固化する(コーティングする)工程である。この工程により形成されるコーティング層は外周固化層の一部をなし、容器内に設置した装飾部品を外周固化層により強固に固定することができる。具体的には、装飾部品設置工程後に、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、容器の開口から硬化性液体を注入して、横倒し状態の容器を回転させ、容器内に固定した装飾部品をコーティングする。
【0030】
(外周固化層保護工程)
外周固化層保護工程は、装飾部品設置工程後(装飾部品コーティング工程を有する場合は、装飾部品コーティング工程後)に必要に応じて行う工程であり、保護材により、外周固化層を保護する工程である。この工程により形成される保護層は、外周固化層(硬化性液体)と硬化性液体が注入されていない内部空間との干渉を抑制し、外周固化層の劣化を防止して、外周固化層に固定された装飾品を安定して保持する。具体的には、装飾部品設置工程後に、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、容器の開口から保護液体を注入して固化し、保護液体により容器内の外周固化層を被覆して保護する方法や、装飾部品設置工程後に、外周固化層と、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間との間に仕切部材を設け、この仕切部材により、外周固化層を保護する方法を挙げることができる。仕切部材としては、例えば、試験管等のガラス製筒状容器を挙げることができる。
【0031】
また、本発明の装飾品の製造方法は、用途に応じて、装飾部品設置工程後に、硬化性液体補充工程、若しくは液状オイル注入工程及び芯部材浸漬工程を有していてもよい。
【0032】
[硬化性液体補充工程]
硬化性液体補充工程は、装飾部品設置工程後(装飾部品コーティング工程及び/又は外周固化層保護工程を有する場合は、装飾部品コーティング工程及び/又は外周固化層保護工程後)に、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、容器の開口から硬化性液体を注入して固化する工程である。これにより、容器内全体がクリアな装飾性の高い装飾品とすることができる。また、本工程により製造される装飾品は、観賞用又はインテリア用の置物として用いることができる。
【0033】
[液状オイル注入工程]
液状オイル注入工程は、装飾部品設置工程後(装飾部品コーティング工程及び/又は外周固化層保護工程を有する場合は、装飾部品コーティング工程及び/又は外周固化層保護工程後)に、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、容器の開口から液状オイルを注入する工程である。液状オイルは、常温で液体のオイルであり、例えば、後述の芯部材に含ませることで点火するもの挙げることができる。
【0034】
[芯部材浸漬工程]
硬化性液体補充工程は、液状オイル注入工程後に、液状オイルに、その先端部が容器の開口閉塞部材に取り付けられた芯部材を浸漬する工程である。芯部材は、通常キャンドルの芯に用いられるものであり、例えば、木綿等の天然繊維を挙げることができる。
【0035】
続いて、本発明の装飾品について説明する。
本発明の装飾品は、透明又は半透明の容器内の透明又は半透明の硬化性液体が固化した外周固化層に装飾部品が固定されていることを特徴とする。本発明の装飾品は、上述した本発明の装飾品の製造方法を用いて製造することができる。なお、本発明の装飾品における容器、硬化性液体、及び外周固化層は、上述した装飾品の製造方法に用いるものと同様の構成であり説明を省略する。本発明の装飾品は、容器内に装飾部品を固定する支持体などの部材を有しておらず、容器内全体がクリアな装飾性の高い装飾品である。また、一般に入手容易な資材を用いて製造することができることから、安価である。また、本発明の装飾品は、装飾部品の少なくとも一部を直立した容器の上半分に固定することができることから、装飾部品が容器内で浮遊しているかのような優れた美観とすることができる。
【0036】
また、上記液状オイル注入工程及び芯部材浸漬工程を経て製造される本発明の装飾品は、外周固化層の内側の内部空間に液状オイルを備えると共に、液状オイルに、その先端部が容器の開口閉塞部材に取り付けられた芯部材が浸漬されている、リキッドキャンドルである。本装飾品は、点火時に、芯部材が液状オイルを吸い上げて燃焼するため、容器の外周固化層である硬化性液体は燃焼しない。したがって、本装飾品は、容器内全体がクリアな装飾性を有したまま、装飾部品を容器内に固定することができる。すなわち、本装飾品は、点火時に、容器の外周固化層である硬化性液体は燃焼しないため、通常のキャンドルでは点火時に容器内で共に燃焼してしまう燃焼しやすい部材(非耐熱性部材)や燃焼忌避の部材を装飾部品として容器内に固定することができる。また、本装飾品は、液状オイルが燃焼して無くなったとしても、液状オイルを追加することで繰り返し使用することができる。
【0037】
以下、本発明の装飾品の製造方法について、図面を用いて詳細に説明するが、本発明の範囲は本実施形態に制限されるものではない。なお、実施形態において参照する図面は、理解を深めるために模式的に記載したものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。
【0038】
ここで、
図1は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、硬化性液体を注入した直立状態の容器の斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、硬化性液体を注入した横倒し状態の容器の斜視図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、容器を90°回転して横倒し状態の底部の位置を変更して、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、容器を180°回転して横倒し状態の底部の位置を変更して、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、容器を270°回転して横倒し状態の底部の位置を変更して、横倒し状態の容器内の底部の外周固化層に装飾部品を固定した状態を示す概略断面図である。
図8は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、装飾部品コーティング工程後の容器内の概略断面図である。
図9は、本発明の第1の実施形態に係る装飾品の製造方法の説明図であって、液状オイル注入工程及び芯部材浸漬工程後の容器内の概略断面図である。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る装飾品の斜視図である。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る装飾品の斜視図である。
【0039】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る装飾品10は、容器としてのボトル12と、ボトル12の内部外周に透明な硬化性液体のジェルワックス14が固化して形成された外周固化層16と、外周固化層16に固定された複数の装飾部品18とを備えている。
【0040】
ボトル12は、例えば、直径45mm程度、高さ180mm程度の大きさであって、上部に開口20を有するガラス製の円筒体である。
【0041】
外周固化層16は、ボトル12の内部外周に、ジェルワックス14が固化(ジェル化)して形成されたゼリー状の円筒体である。
【0042】
装飾部品18は、プラスチック製の円形片であり、ボトル12内の外周固化層16に複数固定され、全体がらせん状に配置されている。
【0043】
ボトル12は、外周固化層16の内側のジェルワックス14が注入されていない内部空間に、液状オイル22が充填されており、この液状オイル22には、その先端部がボトル12のキャップ24に取り付けられた木綿製の芯部材26が浸漬されている。装飾品10は、芯部材26に点火することにより、リキッドキャンドルとして用いることができる。
【0044】
上記本発明の第1の実施形態に係る装飾品10の製造方法について以下説明する。
【0045】
図2に示すように、加熱して液体化したジェルワックス14をボトル12の開口20から、横倒し状態でボトル12の開口20から漏出しない程度の量を注入する。続いて、ボトル12を横倒し状態にし、転がらないように固定した状態で約3分間室温で放置して冷却する。この際、装飾部品18を配置する予定のボトル12の外周面上に、目印となる目印テープ28を貼り付けておく。
【0046】
続いて、
図3に示すように、ボトル12の内部のジェルワックス14が半分程度固化(ジェル化)した状態で形成された外周固化層16に、目印テープ28を目安にピンセット30を用いて装飾部品18を埋め込む(装飾部品設置工程)。
【0047】
次に、装飾部品18を外周固化層16に固定した後に、ボトル12を開口20側からみて反時計回りに回転させ、横倒し状態の底部の位置を変更して、上記装飾部品設置工程を繰り返す。本実施形態においては、ボトル12を最初の底部の位置(0°)から360°回転するまで90°回転ごとに装飾部品設置工程を4回行う。
【0048】
以下、装飾部品設置工程を
図4~
図7の概略断面図を用いて説明する。
図4に示すように、ボトル12の最初の底部の位置(0°回転)におけるボトル12の内部断面は、底部の外周固化層16Aに装飾部品18Aが固定される。
【0049】
図5に示すように、ボトル12を最初の底部の位置から90°回転させた場合、ボトル12の内部断面は、底部の外周固化層16Bに、装飾部品18Bが固定される。
【0050】
図6に示すように、ボトル12を最初の底部の位置から180°回転させた場合、ボトル12の内部断面は、底部の外周固化層16Cに、装飾部品18Cが固定される。
【0051】
図7に示すように、ボトル12を最初の底部の位置から270°回転におけるボトル12の内部断面は、底部の外周固化層16D上に、装飾部品18Dが固定される。
以上のように、横倒し状態のボトル12の底部の位置を変更して装飾部品設置工程を4回行うことにより、装飾部品18をボトル12内の外周固化層16の周方向に斜めに連続して固定し、ボトル12を直立した際に、装飾部品18をらせん状に配置することができる。
【0052】
次に、
図8に示すように、ボトル12のジェルワックス14が注入されていない内部空間に、起立状態でボトル12の開口20からジェルワックス14’を注入して、横倒し状態のボトル12を回転させ、ボトル12内に固定した装飾部品18A~18Dをコーティングし、コーティング層32を形成する(装飾部品コーティング工程)。これにより、ボトル12内に設置した装飾部品18A~18Dを強固に固定することができる。
【0053】
次に、ボトル12を直立させて、ボトル12のジェルワックス14が注入されていない内部空間に、ボトル12の開口20から液状オイル34を注入する(液状オイル注入工程)。また、液状オイル34に、その先端部がボトル12のキャップ24に取り付けられた芯部材26を浸漬する(芯部材浸漬工程)。
図9に示すように、液状オイル注入工程及び芯部材浸漬工程後のボトル12の内部断面は、外周固化層16A~16Dの内側の内部空間に液状オイル34が充填されると共に、液状オイル34に芯部材26が浸漬されている。なお、装飾部品コーティング工程後、液状オイル注入工程の前に、外周固化層と容器の硬化性液体が注入されていない内部空間との干渉を抑制するための保護材により外周固化層を被覆してもよい(外周固化層保護工程)。
以上の工程により、本発明の第1の実施形態に係る装飾品10が製造される。装飾品10は、リキッドキャンドルとして用いることができる。
【0054】
次に、第2の実施形態に係る装飾品について説明する。なお、上記装飾品10と同様の構成の部材については、同一符号を付して説明を省略する。第2の実施形態においては、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、液状オイル及び芯部材が設けられていない点で上記実施形態と異なる。
【0055】
図10に示すように、第2の実施形態に係る装飾品36は、ボトル12のジェルワックス14が注入されていない円筒状の内部空間38を有しており、ボトル12の上部にキャップ40を備えている。第2の実施形態に係る装飾品36は、内部空間38に別の装飾品などを収容して観賞用又はインテリア用の置物として用いることができる。なお、キャップ40の上にフラワーデコレーションなどを行い別の装飾部品を設けてもよい。
【0056】
次に、第3の実施形態に係る装飾品について説明する。なお、上記装飾品10と同様の構成の部材については、同一符号を付して説明を省略する。第3の実施形態においては、容器の硬化性液体が注入されていない内部空間に、硬化性液体を注入して固化している点で上記第2の実施形態実施形態と異なる。
【0057】
第3の実施形態に係る装飾品42の製造方法は、装飾部品設置工程後に、ボトル12を直立させて、ボトル12のジェルワックス14が注入されていない内部空間に、ボトル12の開口20から加熱して液体化したジェルワックス14を注入して固化する(硬化性液体補充工程)。
図11に示すように、本実施形態においては、ボトル12内のすべてにジェルワックス14が注入され、ボトル12にキャップ40を備えている。これにより、ボトル12内全体をクリアにして、まるで装飾部品18が浮遊しているような装飾性の高い装飾品とすることができる。第3の実施形態に係る装飾品42は、観賞用又はインテリア用の置物として使用することができる。なお、キャップ40の上にフラワーデコレーションなどを行い別の装飾部品を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の装飾品の製造方法によれば、リキッドキャンドル等の有用な装飾品を得ることができることから、産業上の有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 装飾品
12 ボトル
14 ジェルワックス
14’ ジェルワックス
16 外周固化層
18 装飾部品
20 開口
22 液状オイル
24 キャップ
26 芯部材
28 目印テープ
30 ピンセット
32 コーティング層
34 液状オイル
36 装飾品
38 内部空間
40 キャップ
42 装飾品