(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074591
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】積層体運動計測装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A63B69/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184745
(22)【出願日】2020-11-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】318006033
【氏名又は名称】山下 克宏
(72)【発明者】
【氏名】山下克宏
(57)【要約】
【課題】
フィットネスジムなどに設置されているトレーニングマシンの稼働状況を自動計測し、トレーニング実施者やトレーナーおよび施設管理者と情報共有すること。
【解決手段】
トレーニングマシンの稼働状態を負荷用重り積層体の変異方向に平行に配置した距離センサアレイで状態変化を計測して評価する。その結果をトレーニング実施者の情報とともにインターネットクラウドデータベースに記録しリアルタイムで読み出し活用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向に運動可能な物体を積層した積層体に対して、アレイ状に配列した距離センサを積層体の運動方向に平行に配置し、積層体の構成要素との距離を測定することにより積層体の状態の時間変化を評価することを特徴とする積層体運動計測装置
【請求項2】
距離センサが、超音波式距離センサまたは赤外線式センサであることを特徴とする請求項1の積層体運動計測装置
【請求項3】
距離センサアレイの距離センサ位置が可変であることを特徴とする請求項1の積層体運動計測装置
【請求項4】
積層体がトレーニングマシンの負荷用重りであることを特徴とする請求項1の積層体運動計測装置
【請求項5】
請求項4の積層体運動計測装置を利用することを特徴とするトレーニングマシン稼働状況管理システム
【請求項6】
トレーニングマシンに設置した近距離無線通信を用いた自動認識装置により、トレーニングを実施している人物を同定することを特徴とする請求項5のトレーニングマシン稼働状況管理システム
【請求項7】
トレーニングマシンに向けて設置されたカメラ画像を元に人物を同定することを特徴とする請求項5のトレーニングマシン稼働状況管理システム
【請求項8】
積層された重り位置データ及びその情報を元に加工したデータをクラウド上のデータベースに保存することを特徴とする請求項5のトレーニングマシン稼働状況管理システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィットネスやトレーニングジムなどの運動訓練サービスを提供する場面において、トレーニングマシンの稼働状況を常時管理し、トレーニング者の同定機能とともに用いることで、誰がどんな訓練をどの程度実施したかを自動的に取得するシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
フィットネスやリハビリを実施する場面において、どの様な動作を何度実施したかを記録し、どの程度その動作を適切に実施できたかを記録することは訓練の成果を得るために非常に重要である。しかしながら、従来はその実施回数や動作の質に関しての評価はトレーニング実施者自身のカウントや判断で行われることがほとんどであり、客観性がなくまた情報の共有も難しかった。フィットネスジムなどに設置される機器のうち、トレッドミル(ランニングマシン)など有酸素運動など、運動強度や継続時間がすでにデジタル化されているトレーニング機器もあるが、重り等を使った筋力トレーニング機器については実施回数と重り重量などを自動的にデジタル記録し、トレーニング管理に活用するシステムは知られていなかった。
また距離センサのアレイを自動車のナビゲーションに用いたり人の立位の計測に用いた例は知られているが、一軸方向に動く物体の積層体の状態計測で積層体の運動を計測する装置は知られておらず、さらにこのような装置がトレーニングマシンの重りの状態を計測するのに使用された例はない。
【非特許文献1】計測自動制御学会論文集 Vol.48, No.1, 11/19(2012)
【特許文献1】特許第6425261号(P6425261)
【0003】
さらに、トレーニングマシンの稼働状況と誰がそのトレーニングを実施しているかをリアルタイムに検出し、トレーニング実施者本人にトレーニング状況をフィードバックしたり、管理者がトレーニング状況を把握し適切なトレーニングメニュを提案するなどのトレーニングサポートサービスなどについての提案はされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、フィットネスやトレーニングジムにおいて、トレーニングの実施内容が実施者本人の記憶やメモだけになってしまい正確性や客観性に欠けることに対して、自動的かつ正確にトレーニング実施記録を取得することである。またトレーナーや施設管理者がトレーニングメニューを提案するなどのサービスを提供するのに必要な情報を取得することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、トレーニングマシン等の稼働状況をリアルタイムで把握するために、トレーニングマシン等で用いられる積層された重りの運動を計測を可能とする装置を提供する。さらにこの計測装置で得られる情報をデータベースに記録するとともに、リアルタイムにトレーニング実施者やトレーナーおよび施設管理者に情報を提示し、トレーニング遂行状況を確認したり、トレーニングメニューを提案したりするシステムを提供する。
【0006】
本発明の距離センサは赤外線距離センサーや超音波距離センサーを用いることができる。同じセンサーを複数個用いることになるので、I2C通信方式などのデジタル通信方式のセンサーが好ましい。これにより、1台のマイクロコンピュータで複数のセンサーの情報を取得し、データベースに保存することが可能となる。
【0007】
一軸方向にだけ変位可能な積層体の運動を計測する方法を以下に示す。積層体の変位可能な方向に対して、距離センサーをアレイ状に配置し、積層体を構成する個々の物体に対して、対応する距離センサーを配置する。積層体のうち一部が運動すると、積層体の一部は移動し、その他は元の場所に留まることになる。その境目の位置では積層体との距離が変化しない距離センサーと、積層体が元の場所にいなくなって距離が大きく変化する距離センサーが生じることになり、積層体がこの位置を境目として運動したことを検出できることになる。また、運動した側の積層体がどこまで移動したかを判定する方法としては、積層体が移動可能な範囲まで、距離センサーを配置しておく方法を用いることができる。距離センサーは対象となる積層体に合わせて位置が変更可能であることが好ましい。
【0008】
距離センサーアレイで取得したトレーニングマシンの稼働情報は、運動を開始してから元の位置に戻るまでを1回として、運動を開始した時間と元に戻った時間を1回ごとに記録するのが好ましい方法である。記録したデータはどのような形で保存しても良いが、インターネット上のクラウドデータベースなどに保存し、必要な時にアクセスできるようにすることが好ましい。
【0009】
トレーニングマシン稼働情報とともに、実施者の情報を記録することが好ましい。実施者を特定する方法としては、近距離無線通信を用いた自動認識装置を用いることが好ましい。近距離無線通信として好ましい形態の一つは、RFタグを用いる方法であり、トレーニングジム等の施設が個人識別用に配布したRFタグにより自動認識し、トレーニングマシンの稼働情報とともに実施者情報を記録することができる。また別の好ましい方法としては、実施者が登録したスマートフォンやウエアラブル端末とBluetoothでの通信である。これらの通信は距離センサーアレイを制御するマイクロコンピュータとの間で通信し、トレーニングマシン稼働情報とともにデータベースに記録することが好ましい。
【0010】
トレーニング実施者の情報を取得するための別の好ましい方法としては、トレーニングジム内に設置したカメラの画像を元に画像認識にて人物特定する方法である。トレーニングジムで入会時に提供または撮影された画像を元にディープラーニング手法で人物特定できるようにしておくことで、施設内のどの場所にどのくらい滞在したかなども把握できるため好ましい。ただし、入会時に承諾を得ることは必要である。
また、画像解析ではポーズ推定により動作や運動をパターニングできるため、本特許のトレーニングマシン稼働情報とともにポーズ推定による動作パターニングの情報を記録することも好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明はフィットネスジムなどに設置してあるトレーニングマシンの稼働状況をトレーニング実施者の情報とともに記録することで、実施者本人へのフィードバックや、トレーナーおよび施設管理者等に提供することで、トレーニングメニューの設定や管理を行うサービスに利用できる。
【実施例0012】
本発明にて採用した構成は以下の通りであるが、当然この構成には限定されない。
(1)コンピュータ:Raspberry Pi 3 modelB+
(2)距離センサ:シャープ製赤外線距離センサGP2Y0E03。デフォルトのI2Cアドレスは0x40。仕様書にしたがって、0x08、0x10、0x18、0x20、0x28、0x30、0x38、0x40、0x48、0x50、0x58、0x60にアドレスを設定した12個のセンサを準備。トレーニングマシンの重りの大きさに合わせて間隔を調整し、一直線状に固定した。重りと距離センサの距離を約10cmとしておく。また最上部のセンサは重りのない部分に設置し、重りが持ち上がった状態を計測できる位置とする。
(3)計測するアルゴリズム:0.1秒間隔で距離センサのデータを配列として取得する。最上部のセンサ以外の距離センサの測定値が15cm以下であれば配列は初期化する。最上部以外の距離センサが15cm以上の値を示したら時刻と、15cm以上の値を示した最下部のセンサ番号を記録する。その後最上部のセンサ値が15cm以下になったのちに、最上部を除く全てのセンサ値が15cm以下になった時刻を計測し、一回の運動としてデータベースに開始時刻と終了時刻および15cm以上の値を示した距離センサに対応する重り重量を記録する。最上部のセンサ値が15cm以下にならないまま最上部以外のセンサ値が15cm以下になった場合は一回の運動としては記録しない。
(4)トレーニング実施者特定方法:トレーニング実施者のID情報を記録したRFIDカードをRFIDリーダRC522で読み取り、(3)の計測データとともに記録する。
(5)記録されたデータは、インターネットクラウド上に保存する。この実施例では、Google社が提供するFirebaseに記録した。
(6)Firebaseに記録されたデータはwebアプリとしてリアルタイムにトレーニング実施者にフィードバックした。