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特開2022-74600隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を修正する方法
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  • 特開-隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を修正する方法 図1
  • 特開-隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を修正する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074600
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を修正する方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 35/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E02D35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184760
(22)【出願日】2020-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】504424454
【氏名又は名称】アップコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】松藤 展和
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏二
(72)【発明者】
【氏名】漆原 孝成
(72)【発明者】
【氏名】吉村 曜人
(57)【要約】
【課題】 隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を、短時間で効果的に修正する方法を提供すること。
【解決手段】 枕版の下方に膨張性樹脂を充填して膨張させることによる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を、枕版の下方に膨張性樹脂を充填して膨張させることによって修正する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や橋の取り付け部などにおいて採用されているコンクリート版の接合部の構造の1つに、隣り合うコンクリート版の端部が枕版の上に設置されたものがあるが、近年、路盤の沈下に伴う枕版の沈下により、コンクリート版の接合部に発生する沈下や段差が、道路交通に支障をきたすことが各地で問題視されている。こうした沈下や段差の解消には、コンクリート舗装の表層をパッチング材(例えばアスファルト材)で補修する方法を適用することが簡便であるが、この方法はあくまで応急的措置に過ぎない。コンクリート舗装を開削し、沈下した路盤を修正することから行えば、根本的な解消を図ることができるが、施工に時間を要するので、長期にわたる交通規制を強いることになる。そのため、施工のための長期にわたる交通規制を必要とすることなく、枕版の沈下を短時間で効果的に修正する方法が希求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を、短時間で効果的に修正する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の点に鑑みてなされた本発明は、請求項1記載の通り、隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を、枕版の下方に膨張性樹脂を充填して膨張させることによって修正する方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、沈下した枕版を、その下方に充填した膨張性樹脂が膨張することによって生じる膨張圧力で押し上げるとともに地盤に対して圧密効果を発揮する。従って、枕版の沈下を短時間で効果的に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下により、コンクリート版の接合部に沈下が発生している状態の一例の断面模式図である。
図2】沈下した枕版の下方に膨張性樹脂を充填して膨張させる方法の一例の断面模式図(一部拡大図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の、隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を修正する方法を、図面を用いて説明する。
【0008】
図1は、隣り合うコンクリート版1,1’の端部が載置された枕版2の沈下により、コンクリート版1,1’の接合部に沈下が発生している状態の一例の断面模式図である(コンクリート版1,1’の表面にアスファルトが舗装されている場合のアスファルトは図略)。コンクリート版1,1’と枕版2の厚みは、通常、各々が例えば200~500mmである。このコンクリート舗装においては、枕版2の上に、コンクリート版1,1’の温度変化による伸縮や、地震の揺れなどによるコンクリート版1,1’の接合部における隙間の変化などに対応するための鋼製フィンガージョイント(クシ型構造の伸縮装置)3が、コンクリート版1,1’に挟み込まれる配置で設置されている。
【0009】
図2は、沈下した枕版2の下方に膨張性樹脂を充填して膨張させる方法の一例の断面模式図(一部拡大図)である。コンクリート版1,1’と枕版2にドリルを用いて貫通孔を設けた後、注入ガン4を用いて膨張性樹脂を枕版2の下方に注入して充填する。枕版2に設ける貫通孔の直径は、例えば13~20mmとし、コンクリート版1,1’に設ける貫通孔の直径は、枕版2に設ける貫通孔の直径よりも例えば1~5mm大きくする(その理由は後述する)。コンクリート版1,1’や枕版2により大きな貫通孔(直径が例えば25mmを超える貫通孔)を設けようとした場合、ドリルのシャフトの先端がコンクリート版1,1’や枕版2の内部に配筋された鉄筋に当たる確率がより高くなり、鉄筋に当たってしまうと、シャフトは直径が大きくて強固であるため、それ以上の穿孔ができなくなるといった事態を招いてしまうことが多くなる。しかしながら、直径が例えば25mm以下の貫通孔を設けるためのドリルを用いれば、シャフトが柔軟であるため、シャフトの先端が鉄筋に当たってしまっても、シャフトが鉄筋から逃げることで、穿孔を進めやすくなる(シャフトが鉄筋から逃げないことでそれ以上の穿孔ができない場合には穿孔を最初からやり直せばよい)。
【0010】
注入ガン4を用いた枕版2の下方への膨張性樹脂の注入を、注入ガン4の先端に取り付けた注入管5を、枕版2に設けた貫通孔に挿入して行うことで、枕版2の下方に膨張性樹脂を充填して膨張させることが容易となる。注入管5は、硬質合成樹脂(例えば硬質塩化ビニール)や金属(例えば銅)などの材質からなるパイプ状のものであってもよいし、軟質合成樹脂(例えば軟質塩化ビニール)などの材質からなるチューブ状のものであってもよいが、枕版2に設けた貫通孔の直径よりも外径が例えば0.5~3mm小さいものを用いる。外径がこれ以上大きいと貫通孔への挿入が困難となる。留意すべきは、枕版2に設けた貫通孔の直径よりも注入管5の外径が小さいので、枕版2に設けた貫通孔の内面と注入管5の外面の間に隙間が存在するため、枕版2の下方に注入した膨張性樹脂がこの隙間を通って枕版2の上方に向かって逆流する事態を招いてしまい得ることである。こうした逆流が起こると、枕版2の沈下が修正されないまま、逆流によって枕版2の上方に行き着いた膨張性樹脂がそこで膨張し、コンクリート版1,1’だけを押し上げてしまうといったことが起こることになる。そこで、膨張性樹脂の逆流を阻止するため、注入管5の長さ方向のいずれかの箇所に、管の開口端に向かって先細りした、注入ガン4を下向きに押さえつけることにより枕版2に設けた貫通孔の上部に押し込まれることで貫通孔と係合し、注入管5が固定されるとともに、貫通孔の内面と注入管5の外面の間に存在する隙間が封止される大きさのテーパ6を設けている。コンクリート版1,1’に設ける貫通孔の直径を、枕版2に設ける貫通孔の直径よりも大きくするのは、コンクリート版1,1’に設ける貫通孔の直径は、注入管5に設けたテーパ6が通り抜けることができる大きさである必要があるからである。なお、テーパ6は、例えば、注入管5に粘着テープ(例えばガムテープ)を、管の開口端に向かって先細りするように巻き付けることで設ければよい。
【0011】
このようにして沈下した枕版2の下方に注入した膨張性樹脂は、枕版2の上方への逆流が阻止されているため、枕版2の下方に全量が充填されて膨張し、生じた膨張圧力で枕版2を効果的に押し上げるとともに地盤に対して圧密効果を発揮する(従って、注入管5の先端は枕版2の下方まで到達させる必要は必ずしもないが、枕版2の下端から30mm以内の深さまでは到達させるのがよい)。なお、枕版2に設ける貫通孔の場所や個数、複数個の貫通孔を設けた場合における個々の貫通孔からの膨張性樹脂の注入量や注入タイミングなどは、枕版2の沈下の程度や他の貫通孔から注入した膨張性樹脂の膨張による枕版2の沈下の修正の程度などに基づいて適宜決定すればよい。枕版2の沈下の修正の程度の確認は、レーザーレベル器を用いて行うことができる。膨張性樹脂は、注入してから数時間のうちに膨張が完了し、所定の強度(例えば1000~1500kPa)を発揮するので、施工のための長期にわたる交通規制を必要としない。
【0012】
以上の工程によって枕版2の沈下を修正することで、コンクリート版1,1’の接合部に発生した沈下を解消した後、コンクリート版1,1’に設けた貫通孔は、例えば、無収縮性モルタルで閉塞するのがよい。
【0013】
また、枕版2の周囲の路盤の上に位置するコンクリート版1,1’に設けた貫通孔から、枕版2の周囲の路盤に膨張性樹脂を注入することで、コンクリート版1,1’と路盤の間に存在し得る空隙を膨張した膨張性樹脂で埋めたり、路盤に対して圧密効果を発揮するようにしたりしてもよい。
【0014】
なお、上記では、テーパを設けた注入管を注入ガンの先端に取り付けて施工する態様を説明したが、注入管にテーパを設けることは必ずしも必須ではなく、テーパを設けていない注入管を注入ガンの先端に取り付けて施工する態様であってもよい。この場合、コンクリート版に設ける貫通孔の直径は、枕版に設ける貫通孔の直径と同じであってよい。ただし、枕版に設けた貫通孔の内面と注入管の外面の間の隙間が大きいと、枕版の下方に注入した膨張性樹脂がこの隙間を通って枕版の上方に向かって逆流することが容易に起こり得る。従って、この隙間をできる限り小さくするため、枕版に設けた貫通孔の直径と注入管の外径の差異は、最大でも1.5mmとし、注入管の先端を枕版の下方まで到達させ、注入ガンを下向きに押さえつけて膨張性樹脂を注入するのがよい(注入管の先端を枕版の下方まで到達させると、枕版の下方に注入した膨張性樹脂は広がり方向に制約を受けずに充填されるので、枕版に設けた貫通孔の内面と注入管の外面の間の隙間を通って上方に向かって逆流しにくくなる)。
【0015】
本発明の方法において用いる膨張性樹脂は、膨張することによって生じる膨張圧力により、沈下した枕版を押し上げるとともに地盤に対して圧密効果を発揮することで枕版の沈下を修正することができるものであり、かつ、コンクリート版の接合部に発生した沈下や段差が解消されたコンクリート舗装に対する載荷重に耐えることができる例えば1000~1500kPaの強度を有するものであればどのようなものであってもよいが、中でも地球温暖化を引き起こすことなく環境に優しいノンフロン系膨張性樹脂が望ましい。ノンフロン系膨張性樹脂としては、フロンガスを発生することなく反応して発泡ウレタンとなる、ポリオールとイソシアネートからなる市販のものなどが挙げられる(具体的には日本パフテム株式会社のノンフロンポリオールFF5020-UCと同社のイソシアネートNP-90の組み合わせが例示される)。このようなノンフロン系膨張性樹脂は、ポリオールとイソシアネートを1:0.8~1.5の重量割合で20~70℃にて混合して用いることができる。ノンフロン系膨張性樹脂は、ポリオールとイソシアネートからなるものの他、水とイソシアネートとの反応で炭酸ガス発泡するもの、液化炭酸ガスを利用して発泡させるもの、発泡特性を有する炭化水素系のものなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、隣り合うコンクリート版の端部が載置された枕版の沈下を、短時間で効果的に修正する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0017】
1,1’ コンクリート版
2 枕版
3 鋼製フィンガージョイント
4 注入ガン
5 注入管
6 テーパ
図1
図2