(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074608
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】アクチュエータ、及びそれを用いた運搬装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184778
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正
(72)【発明者】
【氏名】今野 浩行
(72)【発明者】
【氏名】畠井 秀
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081BB03
3H081CC26
3H081DD14
3H081DD36
3H081FF24
3H081HH10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、波状に変形させる動作の速度を上げることが可能な柔軟性を有するアクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】 エア給排気手段と、動作部と、エア給排気路とを備えたアクチュエータであって、 前記エア給排気手段は、エア制御部、エア供給部、エア排気部及び切替部を備え、前記動作部は、複数の仕切られた気室を有するシート状本体と、当該各気室内に挿入された伸縮部材とを備え、前記伸縮部材と前記エア給排気手段とが前記エア給排気路によって接続され、前記エア給排気手段によって前記伸縮部材にエアを給排気することで前記動作部を波状に変形可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア給排気手段と、動作部と、エア給排気路とを備えたアクチュエータであって、
前記エア給排気手段は、エア制御部、エア供給部、エア排気部及び切替部を備え、
前記動作部は、複数の仕切られた気室を有するシート状本体と、当該各気室内に挿入された伸縮部材とを備え、
前記伸縮部材と前記エア給排気手段とが前記エア給排気路によって接続され、
前記エア給排気手段によって前記伸縮部材にエアを給排気することで前記動作部を波状に変形可能であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
エア給排気手段と、動作部と、エア給排気路とを備えたアクチュエータであって、
前記エア給排気手段は、エア制御部、エア供給部、エア排気部及び切替部を備え、
前記動作部は、複数の仕切られた気室を有するシート状本体と、当該各気室の外側に設けられた伸縮部材とを備え、
前記気室と前記エア給排気手段とが前記エア給排気路によって接続され、
前記エア給排気手段によって前記気室にエアを給排気することで前記動作部を波状に変形可能であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
前記エア排気部に、真空発生器が接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1~3に記載のアクチュエータを用いた運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有するアクチュエータ及びそれを用いた運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂又はゴムなどの柔軟性を有する素材を用いた、所謂ソフトアクチュエータが知られている。当該ソフトアクチュエータは、その柔軟性から人工筋肉として、又は人や物を掴む、移動させる、運搬する装置などに用いられている。
【0003】
ソフトアクチュエータの主な動力源として圧縮空気(エア)などの流体が用いられており、例えば、本出願人は、複数の仕切られた気室を有するシート状のソフトアクチュエータであって、各気室へのエアの給気と排気を交互に行うことで、当該アクチュエータを波状に変形させ、当該アクチュエータ上に乗せた物体を移動させることができる運搬装置を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の運搬装置ではエアの供給はコンプレッサを用いているが、気室への給気と排気の切り替えに時間がかかってしまい、当該アクチュエータを波状に変形する動作の速度が十分ではなく、実用化するためにはさらなる改良が必要であった。
【0006】
そこで、本発明は、波状に変形させる動作の速度を上げることが可能な柔軟性を有するアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、気室への給気と排気の切り替えの際、排気に時間がかかっていることに着目し検討したところ、当該排気時間の短縮によりアクチュエータの動作速度が上がることを見出し、本発明にいたったものである。
【0008】
本発明は、エア給排気手段と、動作部と、エア給排気路とを備えたアクチュエータであって、
前記エア給排気手段は、エア制御部、エア供給部、エア排気部及び切替部を備え、
前記動作部は、複数の仕切られた気室を有するシート状本体と、当該各気室内に挿入された伸縮部材とを備え、
前記伸縮部材と前記エア給排気手段とが前記エア給排気路によって接続され、
前記エア給排気手段によって前記伸縮部材にエアを給排気することで前記動作部を波状に変形可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、エア給排気手段と、動作部と、エア給排気路とを備えたアクチュエータであって、
前記エア給排気手段は、エア制御部、エア供給部、エア排気部及び切替部を備え、
前記動作部は、複数の仕切られた気室を有するシート状本体と、当該各気室の外側に設けられた伸縮部材とを備え、
前記気室と前記エア給排気手段とが前記エア給排気路によって接続され、
前記エア給排気手段によって前記気室にエアを給排気することで前記動作部を波状に変形可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明では、気室内又は外側に伸縮部材を有するため、排気時間の短縮ができる。
さらに排気時間の短縮のため、エア排気部に、真空発生器が接続されていることが好ましい。
【0011】
本発明のアクチュエータは、動作速度が上がったことで、運搬装置として適用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、波状に変形させる動作の速度を上げることが可能な柔軟性を有するアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施態様のアクチュエータ1を説明する図である。
【
図2】
図1のA-A断面図であって、(a)気室に給気する前の状態 (b)気室に給気した状態を説明する図である。
【
図3】本発明の第2実施態様のアクチュエータ10を説明する図である。
【
図4】
図3のB-B断面図であって、(a)気室に給気する前の状態 (b)気室に給気した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施態様のアクチュエータ1を説明する図、
図2は
図1のA-A断面図であって、(a)気室に給気する前の状態 (b)気室に給気した状態を説明する図であり、
図3は本発明の第2実施態様のアクチュエータ10を説明する図、
図4は
図3のB-B断面図であって、(a)気室に給気する前の状態 (b)気室に給気した状態を説明する図である。また、
図5は、本発明の運搬装置を説明する図である。なお、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。
【0015】
〔第1実施態様〕
本発明の第1実施態様であるアクチュエータ1は、
図1に示すように、エア給排気手段2と、動作部3と、エア給排気路Lとを備える。この動作部3は、複数の仕切られた気室Rを有するシート状本体3aと、当該各気室R内に挿入された袋状の伸縮部材3bとを備え、伸縮部材3bとエア給排気手段2とがエア給排気路Lによって接続されている。
ここで、気室Rとは、シート状本体3aで囲まれた領域のことである。
図1には、シート状本体部3aを気室R毎に突出させた開口部4を設ける態様を示しているが、当該開口部4は、伸縮部材3bとエア給排気路Lとを接続する部分であり、本発明の気室Rには当該開口部4は含めない。
図1において、伸縮部材3bの点線で示された部分は気室R及び開口部4内に挿入された部分であり、当該伸縮部材3bの実線で示された先端は、シート状本体部3aの開口部4から出るよう配置されている。この部分にエア給排気路Lを接続し、固定手段5で固定されている。このとき、エア給排気路Lの先端は伸縮部材3b内にあって、気室入口付近(気室Rと開口部4との境界)まで挿入されている。
【0016】
アクチュエータ1は、伸縮部材3bにエアを給気することで、
図2(a)に示す給気前の状態から、
図2(b)に示すように、気室Rは、厚み方向Zに膨らみ、それに応じてエアが給気される方向Yと直交する方向X(幅方向)に縮むよう変形する。後述するように、エアの供給方向を切替部2dによって気室Rへの給気方向からエア排気部2cの方向に切り替えると、変形した気室Rはエアを給気する前の状態に戻る。
アクチュエータ1は、シート状本体3aの各気室R内には伸縮部材3bを備えているため、当該伸縮部材3bの伸縮力によってその内部のエアの排気を促すことにより、変形した気室Rがエアを給気する前の状態に戻るまでの時間(排気時間)を短縮することができる。
このように、アクチュエータ1によれば、伸縮部材3bへのエアの給気と排気の切り替えがすばやくでき、排気時間が短縮されることで、後述する波状に変形させるといったアクチュエータ1の動作速度を上げることが可能となる。
【0017】
伸縮部材3bの形状としては、袋状又は筒状のものが用いられる。例えば、ゴム風船、ゴムチューブなどが挙げられ、開口部分はエア給排気路Lを接続して塞がれるため、密閉状態となる。なお、筒状の場合は両端に開口部分を有するため、一方を任意の接合手段で塞ぐか、両方にエア給排気路Lを接続すれば密閉状態を維持できる。
伸縮部材3bは、エア給排気路Lを介してエアが供給されると膨張するが、シート状本体3aの各気室Rの領域以上には膨張しないよう規制されている。エアを排気する際には、伸縮部材3bが伸びた分だけ収縮しようとする力が働き、伸縮部材3b内のエアの排気を促すこととなるため、各気室内で伸縮部材3bが十分に膨張できないとその排気時間が短縮しにくくなる。
一方、シート状本体3aをエアの給排気によって波状に変形させる際、各気室の内部圧力が、0.05MPa以上必要である。また、シート状本体3aを構成する素材にもよるが、上限値が0.8MPa程度の圧力範囲で調整される。そのため、伸縮部材3bとしては、内部圧力が0.05MPa~0.8MPaの範囲内で各気室Rの領域と同程度に膨張するよう、大きさを設定すればよい。
【0018】
伸縮部材3bに用いる素材としては、通気性がなく伸縮性を有するものであって、その伸縮力によってエアの排出を促せるものであればよい。具体的には、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性樹脂、又はそれらと織布、編布、不織布といった任意の布帛との積層体などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクル共重合系樹脂(EMA、EMMA、EEAなど)などのポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂などが用いられる。
【0019】
伸縮部材3bは、破断伸度が60%以上のものが好ましい。なお、本発明の破断伸度とは、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能材料試験機)を用い、標線間距離50mm(L0)とし、25mm×150mmの試料を速度200mm/minで引張り、試料が破断するときの標線間距離(L)を測定し、以下の式にて算出された値である。
破断伸度(%)={(L-L0)/L0}×100
【0020】
シート状本体3aは、軟質素材であって、伸縮部材3bの膨張を規制できればよい。軟質素材としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクル共重合系樹脂(EMA、EMMA、EEAなど)などのポリオフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。特に、波状の変形のしやすさの面でTPUが好ましい。
【0021】
本発明でいう軟質素材としては、波状に変形できるものであればよい。例えば、厚さが0.1mm以上2mm以下で、JIS K 7311に準拠してA型硬度計で測定した値が、50~100のシート又はフィルムが使用できる。
【0022】
第1実施態様では、2枚のシート状本体3aの間に複数の仕切られた気室Rを有するものを示したが、気室の数や位置は特に限定されない。また、第1実施態様においては、伸縮部材3bによって気室Rが変形すればいいため、気室Rは必ずしも密閉されていなくてもよい。さらに、シート状本体3aの外側には、本発明の効果を損ねなければ、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性などの機能層を付与してもよい。
【0023】
アクチュエータ1のエア給排気手段2は、
図1に示すように、エア制御部2a、エア供給部2b、エア排気部2c及び切替部2dを備えており、各気室Rに接続されているエア給排気路Lに切替部2dが設置され、当該切替部2dとエア供給部2b、エア排気部2cが接続されている。また、エア制御部2aによって各切替部2dの動作が制御できるよう接続されている。
【0024】
エア制御部2aは、シーケンス制御を行うコントローラであり、エア供給部2bからのエア供給方向を、気室R、すなわち伸縮部材3bの方向か、エア排気部2cの方向かの切り替えを行う切替部2dの動作を制御するものである。
【0025】
エア供給部2bは、例えばコンプレッサを用いることができる。
【0026】
エア排気部2cは、エア給排気路Lを大気圧下に開放する部分である。例えば、後述する切替部2dに設けられた大気圧下に通じる穴、又は当該穴に接続されたチューブなどが挙げられる。
また、エア排気部2cには、真空発生器が接続されていることが好ましい。真空発生器としては、真空ポンプや真空エジェクタなどが挙げられ、エア給排気路Lを通じて伸縮部材3b内のエアを強制的に排気させるものが用いられる。特に、排気時間の短縮のために真空発生器を用いることが好ましく、エア給排気手段2の小型化のためにエア供給部2bからの圧縮エアを用いて真空を発生させる真空エジェクタを用いることがより好ましい。
【0027】
切替部2dは、エア供給部2bからのエア供給方向を、気室R、すなわち伸縮部材3bの方向か、エア排気部2cの方向かに切り替えるものである。例えば、電磁弁などが挙げられる。
【0028】
アクチュエータ1のエア給排気路Lは、エア給排気手段2と動作部3の伸縮部材3bとを接続しており、シート状本体3aの複数の仕切られた気室R内に挿入された伸縮部材3bに給排気できるよう配置されている。エア給排気路Lとしてはエアの給排気ができれば特に限定されないが、軟質のエアチューブが使用でき、管状や軟質フィルムを筒状に丸めたものでもよく、断面形状は円形、略扁平形状のものなどを使用できる。また、用途に応じて長さを設定すればよい。
【0029】
〔第2実施態様〕
本発明の第2実施態様であるアクチュエータ10は、
図3に示すように、エア給排気手段2と、動作部3とを備える。この動作部3は、複数の仕切られた気室Rを有するシート状本体3aと、当該各気室Rの外側に設けられた伸縮部材3cとを備え、各気室Rとエア給排気手段2とがエア給排気路Lによって接続されている。当該伸縮部材3cは、各気室の表と裏両面をそれぞれ被覆しており、その大きさは各気室の平面視による大きさよりも若干小さくしている。
ここで、気室Rとは、シート状本体3aで囲まれた領域のことである。
図3には、シート状本体部3aを気室R毎に突出させた開口部4を設ける態様を示しているが、当該開口部4は、エア給排気路Lを接続する部分であり、本発明の気室Rには当該開口部4は含めない。また、第2実施態様においては、気室Rを変形させるためには密閉されている必要がある。
シート状本体部3aの開口部4にはエア給排気路Lが接続され、固定手段5で固定されている。このとき、エア給排気路Lの先端は開口部4内にあって、気室入口付近(気室Rと開口部4との境界)まで挿入されている。
【0030】
アクチュエータ10は、シート状本体3aの気室Rに給気をすると、
図4(a)に示す給気前の状態から、
図4(b)に示すように、気室Rは厚み方向Zに膨らみ、それに応じてエアが給気される方向Yと直交する方向X(幅方向)に縮むよう変形する。エアの供給方向を切替部2dによって気室Rへの給気方向からエア排気部2cの方向に切り替えると、変形した気室Rはエアを給気する前の状態に戻る。
アクチュエータ10は、気室Rの外側に伸縮部材3cを備えているため、当該伸縮部材3cの伸縮力によって気室R内のエアの排気を促すことにより、変形した気室Rがエアを給気する前の状態に戻るまでの時間(排気時間)を短縮することができる。
このように、アクチュエータ10によれば、気室Rへのエアの供給と排気の切り替えがすばやくでき、排気時間が短縮されることで、後述する波状に変形させるといったアクチュエータ10の動作速度を上げることが可能となる。
【0031】
伸縮部材3cの形状は、シート又はフィルムである。伸縮部材3cは、気室Rにエアが供給されると、それに応じて伸び、気室R内のエアを排気する際には、伸縮部材3cが伸びた分だけ収縮しようとする力が働き、気室R内のエアの排気を促すこととなる。このとき、伸縮部材3cが気室Rの変形によって伸ばされる量は限られるため、その排気時間が短縮しにくくなる。そのため、予め一定量伸ばした状態で気室Rの外側に固定することが好ましい。また、伸縮部材3cは、各気室Rの変形に対応するよう気室R毎に設けられており、その位置としては
図4に示すように表と裏の両面に設けてもいいし、一方の面に設けてもよい。
【0032】
伸縮部材3cに用いる素材としては、その伸縮力によってエアの排出を促せるものであればよく、伸縮部材3bで挙げたものを用いることができる。
具体的には、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性樹脂、又はそれらと織布、編布、不織布といった任意の布帛との積層体などが挙げられる。なお、伸縮部材3cは、伸縮部材3bとは違い、通気性があってもよい。
【0033】
本発明のアクチュエータ1、10の動作について説明する。
例えば、エア給排気手段2を用いて、シート状本体3aの複数ある気室R(伸縮部材3b)のいくつかにエアを給気して、当該気室Rを厚み方向Zに膨らませ、それに応じてエアが給気される方向Yと直交する方向X(幅方向)に縮むよう変形させる。次いで、エアの供給方向を給気から排気に切り替えて気室R(伸縮部材3b)内のエアを排気して元の状態に戻すと同時に、先に給気した気室R(伸縮部材3b)と隣接する一方の気室R(伸縮部材3b)に給気する、といったエアの給排気を順番に行うことで、動作部3を波状に変形させることができる。また、任意の方向に波状変形を伝搬させることもできる。
動作部3の波長や振幅、周期は、用途や使用状況によって適宜設定される。
【0034】
エアの給気と排気との切り替えをスムーズに行うために、気室R又は伸縮部材3bへ挿入されたエア給排気路Lの先端は、気室入口付近(気室Rと開口部4との境界)に位置することが好ましい。当該先端を内部まで挿入した状態では、エアの排気速度が遅くなる傾向にある。
【0035】
本発明のアクチュエータ1、10は、例えば、動作部3に載せた物を移動させる運搬装置20に適用できる。当該運搬装置20としては、
図5に示すように、エア給排気手段2と動作部3の他、必要に応じて、固定部6、落下防止ガイド7、形状維持部8などを設けてもよい。
【0036】
固定部6は、動作部3及び/又はエア給排気路Lを設置個所に固定される部分であり、当該固定部6により、動作部3を波状に変形させることで、上に載せた対象物を運搬させるものであるが、動作部3自体が波状の変形によって移動してしまうのを防ぐことができる。
【0037】
固定部6の位置は、動作部3の動作を阻害しない位置とすればよく、
図5では動作部3の移動方向に対して両端部にヒレ状の固定部6を設けているが、動作部3の側面やエア給排気路Lに設けてもよい。また、動作部3の四隅に固定部6を設けてもよく、当該位置であれば、動作部3の動作を阻害すことなく固定できる。固定部6は、動作部3及び/又はエア給排気路Lと脱着自在に設けられていてもよく、動作部3及び/又はエア給排気路Lと接合し一体化してもよい。
【0038】
固定部6の形状としては特に限定されず、
図5で示すヒレ状以外に袋状としてもよい。
例えば、ヒレ状の固定部6を用いる場合、固定部6にピンを打って固定してもよいし、ピンが打てない箇所であれば、固定部6に土などの重しを載せて固定することもできる。袋状の固定部6を用いる場合、袋状内部に水や土を充填して重しとして固定することができる。
【0039】
固定部6は、シート状本体3aと同様に軟質素材から形成されることが好ましい。軟質素材としては、シート状本体3aで挙げた熱可塑性樹脂を用いてればよい。
【0040】
その他、本発明では、地面以外にもトラックの荷台や高所(木の間)などに固定して使用することもでき、その際の固定手段も固定部6とする。例えば、紐やワイヤー、リング、フック、カラビナ、磁石などが使用できる。
【0041】
本発明の落下防止ガイド7は、使用時に動作部3から対象物が落下しないように設けられるものであって、例えば、
図5に示すような複数の略円筒状の気柱iと当該気柱i間に幕体jを取り付けたものや、図示しないが動作部3の長さ方向に沿って設けられた壁状の気柱を用いることができる。
【0042】
落下防止ガイド7は、軟質素材で形成されることが好ましい。また、軟質素材としては、動作部3で挙げた熱可塑性樹脂を用いればよい。
【0043】
落下防止ガイド7の取付位置は、動作部3の動作を阻害しない位置とすればよい。
図5では、固定部6に略円筒状の気柱iを接合し、幕体jは気柱iにのみ接合し動作部3には接合していないため、動作部3が波状に変形することを阻害しない。また、落下防止ガイド7は、動作部3、固定部6又はエア給排気路Lと脱着自在に設けられていてもよく、動作部3又は固定部6と接合して一体化してもよい。
【0044】
本発明の形状維持部8は、使用時にシート状本体3aが捻じれることや撓むことを防ぐために設けられるものであって、例えば、
図5に示すような板状の気柱kを用いることができる。
【0045】
形状維持部8は、軟質素材で形成されることが好ましい。軟質素材としては、シート状本体3aで挙げた熱可塑性樹脂を用いればよい。また、必要に応じて設置面と接する箇所に滑り止めを設けてもよい。
【0046】
形状維持部8の取付位置は、動作部3の動作を阻害しない位置とすればよい。
図5では、動作部3の裏側に板状の気柱kを設けているが、固定部6のみに固定しており、動作部3の動きに追従できる程度の柔軟性となるよう、充填するエアの圧力を調整しているため、動作部3が波状に変形することを阻害しない。形状維持部8は、動作部3や固定部6、落下防止ガイド7と脱着自在に設けられていてもよく、動作部3や固定部6、エア給排気路L、落下防止ガイド7と接合して一体化してもよい。
【0047】
なお、形状維持部8の役割は、固定部6又は落下防止ガイド7で担ってもよい。
【0048】
本発明は、その他、自走式の移動部、点検ロボット、などの用途にも適用できる。
【実施例0049】
本発明について、実施例を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
【0050】
〔実施例1〕
図1に示す第1実施態様のアクチュエータ1を作成した。
長さ500cm、幅120cm、厚み300μmの熱可塑性ポリウレタンフィルム(ダイニック社製、「U-7305」)を2枚重ね、開口部4を除く周囲と幅方向に沿って一定間隔で2枚のフィルムを高周波ウェルダー溶着によって接合し気室Rを有するシート状本体3aを形成した。次いで、接合されていない開口部4から、ゴム製の袋状伸縮部材3b(アメゴムチューブ、破断伸度690%)を各気室Rに挿入し、チューブ先端が外部に出るよう配置して、本発明の動作部3を作成した。
次に、動作部3のゴムチューブにエア給排気路L(エアチューブ)を接続し、当該ゴムチューブと、当該エア給排気路Lと、当該開口部4とを結束バンド(固定手段5)でエアが漏れないように固定し、他端をエア切替部2dに接続し、さらにエア切替部2dとエア供給部2bであるコンプレッサ、エア排気部2cであるエアチューブをそれぞれ接続し、アクチュエータを得た。エア切替部2dとしては、エア制御部2aによって制御可能な電磁弁を用いた。
【0051】
〔実施例2〕
図3に示す第2実施態様のアクチュエータ10を作成した。
長さ500cm、幅120cm、厚み300μmの熱可塑性ポリウレタンフィルム(ダイニック社製、「U-7305」)を2枚重ね、開口部4を除く周囲と幅方向に沿って一定間隔で2枚のフィルムを高周波ウェルダー溶着によって接合し気室を有するシート状本体3aを形成した。次いで、接合されていない開口部4から、各気室にエアチューブ(エア給排気路L)を挿入し、当該開口部は高周波ウェルター溶着(固定手段5)を用いてエアが漏れないように固定した。次いで、ゴム製のシート状伸縮部材3c(アメゴムシート、破断伸度600%)を気室Rの両側に固定し、本発明の動作部3を作成した。
次に、動作部3のエアチューブ(エア給排気路L)をエア切替部2dに接続し、さらにエア切替部2dとエア供給部2bであるコンプレッサ、エア排気部2cであるエアチューブをそれぞれ接続し、アクチュエータを得た。エア切替部2dとしては、エア制御部2aによって制御可能な電磁弁を用いた。
【0052】
〔実施例3〕
エア排気部2cに、真空エジェクタ(SMC社製、インラインエジェクタ)を接続したこと以外は、実施例1と同様にアクチュエータを作成した。
【0053】
〔比較例1〕
伸縮部材3bを用いないこと以外は、実施例1と同様にアクチュエータを作成した。
【0054】
〔比較例2〕
エア排気部2cであるエアチューブに、真空エジェクタ(SMC社製、インラインエジェクタ)を接続したこと以外は、比較例1と同様にアクチュエータを作成した。
【0055】
得られたアクチュエータを用いて、以下のように排気時間と排気体積を測定し、排気体積当たりの排気速度(体積変化速度)を算出した。結果を表1に示す。
【0056】
〔排気時間〕
気室にエアが入っていない状態での動作部の厚み:d0と、内圧が0.2MPaとなるように給気した状態での動作部の厚み:d1を測定しておき、給気した状態から排気によって動作部の厚みがd0に戻るまでの時間とした。
【0057】
〔排気体積〕
内圧が0.2MPaとなるように給気した状態とし、動作部の厚みがd0になるまでに排出されたエアの体積を、シリンジを用いて測定した。
【0058】
【0059】
表1より、実施例1~3では、比較例1、2と比較して、体積変化速度が上がっていることが示された。
【0060】
実施例1~3で得られたアクチュエータは、比較例1,2と比較して、波状に変形させる動作の速度が上がることが確認できた。また、真空エジェクタを用いた実施例3で得られたアクチュエータが最も速度の向上が見られた。