(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074630
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220511BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20220511BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20220511BHJP
【FI】
F25B1/00 304T
F25B1/00 321A
F25B49/02 510B
F25B49/02 510C
F25B49/02 510A
F24F11/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184823
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】舟木 智之
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA15
3L260BA51
3L260CB08
3L260CB09
3L260CB16
3L260EA07
3L260EA19
3L260FA10
3L260FB07
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機において、冷媒回路は、冷媒配管で接続された、圧縮機、凝縮器、凝縮側減圧器、レシーバ、蒸発側減圧器、及び蒸発器に冷媒を循環させ、上記圧縮機から吐出される上記冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を含む。上記第1温度センサは、上記冷媒の凝縮温度を検出する。上記第2温度センサは、上記凝縮器の出口から流出した上記冷媒の出口温度を検出する。上記第3温度センサは、上記凝縮器の周囲温度を検出する。上記制御装置は、上記凝縮温度と上記周囲温度との差Δtに応じて、上記凝縮温度と上記出口温度との差であるSC値が目標過冷却度となるように上記凝縮側減圧器の開度を制御する。上記制御装置は、上記目標過冷却度が第1閾値よりも低い場合には、上記Δtにかかわらず、上記第1閾値を上記目標過冷却度として定める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒配管で接続された、圧縮機、凝縮器、凝縮側減圧器、レシーバ、蒸発側減圧器、及び蒸発器に冷媒を循環させ前記圧縮機から吐出される前記冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を含む冷媒回路と、
前記冷媒の凝縮温度を検出する第1温度センサと、
前記凝縮器の出口から流出した前記冷媒の出口温度を検出する第2温度センサと、
前記凝縮器の周囲温度を検出する第3温度センサと
前記凝縮温度と前記周囲温度との差Δtに応じて、前記凝縮温度と前記出口温度との差であるSC値が目標過冷却度となるように前記凝縮側減圧器の開度を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記目標過冷却度が第1閾値よりも低い場合には、前記Δtにかかわらず、前記第1閾値を前記目標過冷却度として定める
空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載された空気調和機であって、
前記制御装置は、前記目標過冷却度が第1閾値以上の場合には、前記Δtが大きくなるほど前記目標過冷却度を大きく設定する
空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2に記載された空気調和機であって、
前記制御装置には、前記目標過冷却度が前記第1閾値以上の場合に、前記Δtと前記目標過冷却度との関係として一次の線形関係が記憶され、
前記線形関係は、前記凝縮器の熱交換効率が高くなるほど、前記線形関係の傾きが大きく設定され、前記第1閾値に対応するΔtの範囲が狭く設定される
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の中で、エネルギー消費効率(COP)を最適にするために、凝縮器内の冷媒の凝縮温度と凝縮器を通過する空気の周囲温度との差に応じて目標過冷却度を変更する技術がある(例えば、特許文献1)。例えば、この技術においては、凝縮器における凝縮温度と周囲温度との差が大きくなるほど目標過冷却度が大きく設定され、前記差が小さくなるほど目標過冷却度が小さく設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エネルギー消費効率を優先するために凝縮器における冷媒の凝縮温度と周囲温度との差が小さくなった(以下、過小とする)場合においても、前記差に応じて目標過冷却度を小さく設定すると、圧力損失の影響で凝縮器の下流に配置された膨張弁に気液二相状態の冷媒が流入する場合がある。このような場合、膨張弁から冷媒の流動音が発生したり、冷媒回路における冷媒流量の制御が不安定になったりして、空気調和機の信頼性が低下する。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、凝縮器における凝縮温度と周囲温度との差が過小となった場合でも、上記不具合が抑制された信頼性の高い空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、冷媒回路と、制御装置と、第1温度センサと、第2温度センサと、第3温度センサとを備える。
上記冷媒回路は、冷媒配管で接続された、圧縮機、凝縮器、凝縮側減圧器、レシーバ、蒸発側減圧器、及び蒸発器に冷媒を循環させ、上記圧縮機から吐出される上記冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を含む。
上記第1温度センサは、上記冷媒の凝縮温度を検出する。
上記第2温度センサは、上記凝縮器の出口から流出した上記冷媒の出口温度を検出する。
上記第3温度センサは、上記凝縮器の周囲温度を検出する。
上記制御装置は、上記凝縮温度と上記周囲温度との差Δtに応じて、上記凝縮温度と上記出口温度との差であるSC値が目標過冷却度となるように上記凝縮側減圧器の開度を制御する。
上記制御装置は、上記目標過冷却度が第1閾値よりも低い場合には、上記Δtにかかわらず、上記第1閾値を上記目標過冷却度として定める。
【0007】
このような空気調和機であれば、凝縮器における凝縮温度と周囲温度との差が過小となった場合でも、膨張弁からの冷媒の流動音が抑えられ、冷媒回路における冷媒流量の制御が安定する。
【0008】
上記の空気調和機においては、上記制御装置は、上記目標過冷却度が第1閾値以上の場合には、上記Δtが大きくなるほど上記目標過冷却度を大きく設定してもよい。
【0009】
上記の空気調和機においては、上記制御装置には、上記目標過冷却度が上記第1閾値以上の場合に、上記Δtと上記目標過冷却度との関係として一次の線形関係が記憶され、上記凝縮器の熱交換効率が高くなるほど、上記線形関係の傾きが大きく設定され、上記第1閾値に対応するΔtの範囲が狭く設定されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によれば、信頼性の高い空気調和機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】図(a)は、本実施形態の空気調和機に係る冷媒回路を説明する図である。図(b)は、室外機制御手段のブロック構成図である。
【
図2】図(a)は、基本的な冷媒回路を説明する図である。図(b)は、図(a)の冷媒回路に係るモリエル線図(ph線図)である。
【
図3】図(a)は、インジェクション回路を有する冷媒回路を説明する図である。図(b)は、図(a)の冷媒回路に係るモリエル線図(ph線図)である。
【
図4】図(a)は、本実施形態の空気調和機において、レシーバを備えた冷媒回路を説明する図である。図(b)は、図(a)の冷媒回路に係るモリエル線図(ph線図)である。
【
図5】図(a)は、本実施形態の空気調和機において、インジェクション回路及びレシーバを有する冷媒回路を説明する図である。図(b)は、図(a)の冷媒回路に係るモリエル線図(ph線図)である。
【
図6】図(a)は、参考例の空気調和機に係る冷媒回路の制御の概要を説明するグラフであり、図(b)は、本実施形態の空気調和機に係る冷媒回路の制御の概要を説明するグラフである。
【
図7】凝縮器の熱交換効率が異なる場合のΔtと目標過冷却度SCとの関係を示す。
【
図8】暖房運転を行う際の室外機制御手段が実行する処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0013】
図1(a)は、本実施形態の空気調和機の冷媒回路を説明する図である。
図1(b)は、室外機制御手段のブロック構成図である。
【0014】
<冷媒回路の構成>
図1(a)を参照して、室外機2及び室内機3を含む空気調和機1の冷媒回路について説明する。
図1(a)に示すように、空気調和機1は、屋外に設置される室外機2と、室内に設置され、室外機2に液管4及びガス管5で接続された室内機3を備える。室外機2の液側閉鎖弁25と、室内機3の液管接続部33とが液管4で接続されている。室外機2のガス側閉鎖弁26と、室内機3のガス管接続部34とがガス管5で接続されている。これにより、空気調和機1の冷媒回路10が形成される。
【0015】
<<室外機の冷媒回路>>
室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、第1膨張弁24と、液管4が接続された液側閉鎖弁25と、ガス管5が接続されたガス側閉鎖弁26と、室外ファン27と、第2膨張弁28と、インジェクション膨張弁29と、レシーバ81と、冷媒間熱交換器82を備えている。室外ファン27を除くこれら各装置が後述する各冷媒配管(吐出管61、冷媒配管62、室外機液管63、室外機ガス管64、吸入管66、室内機液管67、及び室内機ガス管68)で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路10aが形成されている。圧縮機21の冷媒吸入側には、アキュムレータ(不図示)が設けられてもよい。また、本明細書では「インジェクション」を「INJ」と表記することがある。
【0016】
圧縮機21は、図示しないインバータにより回転数が制御されることで、運転容量を変えることができる容量可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、四方弁22のポートaと吐出管61で接続されている。圧縮機21の冷媒吸入側は、四方弁22のポートcと吸入管66で接続されている。
【0017】
レシーバ81は、液側閉鎖弁25と室外熱交換器23との間の室外機液管63に、第1膨張弁24と第2膨張弁28に挟まれて設けられている。レシーバ81は、大小様々な室内機3が接続されても、適切な冷媒量に調整するためのものである。レシーバ81の下流側ではインジェクション配管(インジェクション回路ともいう)65が分岐しており、インジェクション配管65は、インジェクション膨張弁29を介して圧縮機21内部の図示しないシリンダの中間部に接続されている。インジェクション配管65は、凝縮器(暖房運転時には室内熱交換器31)の冷媒循環量を増やしたり、圧縮機21の吐出温度を下げたりするための、圧縮機21に冷媒をインジェクションする配管である。インジェクション配管65の途中には、インジェクション配管65を流れる冷媒と室外機液管63を流れる冷媒との間で熱交換を行う冷媒間熱交換器82が設けられている。
【0018】
インジェクション配管65、インジェクション膨張弁29を含む一連の回路をインジェクション回路という(なお、本明細書では、インジェクション配管65で代表させてインジェクション回路ということがある。また、ここで示すインジェクション回路は一例であって、他の態様であってもよい)。インジェクション膨張弁29は、全閉可能であって、インジェクション配管65の開閉手段として設けられ、圧縮機21の吐出温度又は吐出SHを制御する。
【0019】
四方弁22は、圧縮機21から吐出される冷媒の流れ方向を切り替えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、圧縮機21の冷媒吐出側と吐出管61で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管62で接続されている。ポートcは、圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管66で接続されている。ポートdは、ガス側閉鎖弁26と室外機ガス管64で接続されている。
【0020】
室外熱交換器23は、冷媒と、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、四方弁22のポートbと冷媒配管62で接続され、他方の冷媒出入口は液側閉鎖弁25と室外機液管63で接続されている。室外熱交換器23は、四方弁22の切替えによって、暖房運転時は蒸発器として機能し、冷房運転時は凝縮器として機能する。
【0021】
第1膨張弁24及び第2膨張弁28は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁である。具体的には、パルスモータに加えられるパルス数によりその開度が調整される。
【0022】
暖房運転時、第1膨張弁24は、凝縮側減圧器(上流側膨張弁)として機能し、第2膨張弁28は、蒸発側減圧器(下流側膨張弁)として機能する。第1膨張弁24は、暖房運転時に室内熱交換器31から流出した冷媒のSC(サブクール:過冷却度)が所定の目標値になるように、その開度が調整される。また、第2膨張弁28は、暖房運転時に圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度が所定の目標温度となるように、その開度が調整される。なお、冷房運転時には、第2膨張弁28が凝縮側減圧器(上流側膨張弁)として機能し、第1膨張弁24が蒸発側減圧器(下流側膨張弁)として機能する。
【0023】
室外ファン27は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、その中心部が図示しないファンモータの回転軸に接続されている。ファンモータが回転することで室外ファン27が回転する。室外ファン27の回転によって、室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気が室外機2の図示しない吹出口から室外機2外部へ放出される。
【0024】
室外機2には各種のセンサが設けられている。
図1(a)に示すように、吐出管61には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサ71と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度(上述した吐出温度)を検出する吐出温度センサ73が設けられている。吸入管66には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ72と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ74が設けられている。
【0025】
室外熱交換器23の図示しない冷媒パスの略中間部には、室外熱交換器23の温度である室外熱交温度を検出する熱交温度センサ75が設けられている。暖房運転時には、熱交温度センサ75、又は、液側温度センサ77cによって冷媒の蒸発温度が検出される。冷房運転時には、本願請求項に記載の第1温度センサとして機能する熱交温度センサ75によって冷媒の凝縮温度が検出される。室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち、室外熱交換器23の周囲温度(外気温度)を検出する外気温度センサ76が設けられている。なお、冷房運転時、外気温度センサ76は本願請求項の第3温度センサとして機能する。また、冷房運転時には、室外熱交換器23から流出する冷媒の出口温度を検出する液側温度センサ77cが設けられている。この時の液側温度センサ77cは、本願請求項に記載の第2温度センサとして機能する。
【0026】
また、室外機2には、室外機制御手段200(制御装置)が設けられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納されている制御基板に搭載されている。
図1(b)に示すように、室外機制御手段200は、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240を備えている。なお、本明細書では、室外機制御手段200を単に制御手段ということがある。
【0027】
記憶部220は、フラッシュメモリで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27等の制御状態等を記憶している。記憶部220には室内機3から受信する要求能力に応じて圧縮機21の回転数を定めた回転数テーブルが予め記憶されている。
【0028】
通信部230は、室内機3との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
【0029】
CPU210は、室外機2の各センサでの検出結果をセンサ入力部240を介して取り込む。CPU210は、室内機3から送信される制御信号を通信部230を介して取り込む。CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号等に基づいて、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御を行う。CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22の切替制御を行う。CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、第1膨張弁24及び第2膨張弁28の開度調整の制御、インジェクション膨張弁29の開閉制御及び開度調整の制御を行う。CPU210には、レシーバ81内に液冷媒が貯まっているか否かを判定する液貯留判定部が設けられており、液貯留判定部は、後述するように、レシーバ81内に液冷媒が貯まっていると判定すると、インジェクション膨張弁29を開いて冷媒を圧縮機21の中圧へインジェクションを行う。
【0030】
<<室内機の冷媒回路>>
室内機3について説明する。室内機3は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、液管4の他端が接続された液管接続部33と、ガス管5の他端が接続されたガス管接続部34を備える。室内ファン32を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路10bが形成されている。
【0031】
室内熱交換器31は、冷媒と後述する室内ファン32の回転により室内機3の図示しない吸込口から室内機3の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器31の一方の冷媒出入口は、液管接続部33と室内機液管67で接続されている。室内熱交換器31の他方の冷媒出入口は、ガス管接続部34と室内機ガス管68で接続されている。室内熱交換器31は、室内機3が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能し、室内機3が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能する。
【0032】
室内ファン32は樹脂材で形成されており、室内熱交換器31の近傍に配置されている。室内ファン32は、図示しないファンモータによって回転することで、室内機3の図示しない吸込口から室内機3の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器31において冷媒と熱交換した室内空気を室内機3の図示しない吹出口から室内へ吹き出す。
【0033】
室内機3には各種のセンサが設けられている。室内機液管67には、室内熱交換器31に流入あるいは室内熱交換器31から流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ77aが設けられている。暖房運転時には、液側温度センサ77aによって室内熱交換器31から流出する冷媒の出口温度が検出される。この時、液側温度センサ77aは本願請求項に記載の第2温度センサとして機能する。
【0034】
室内機ガス管68には、室内熱交換器31から流出あるいは室内熱交換器31に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ78が設けられている。室内機3の図示しない吸込口付近には、室内機3の内部に流入する室内空気の温度、すなわち、室内熱交換器31の周囲温度(室内温度)を検出する室温センサ79が設けられている。なお、暖房運転時、室温センサ79は本願請求項に記載の第3温度センサとして機能する。
【0035】
また、室内熱交換器31の図示しない冷媒パスの略中間部には、室内熱交換器31の温度である室内熱交温度を検出する熱交温度センサ80が設けられている。暖房運転時には、熱交温度センサ80によって冷媒の凝縮温度が検出される。この時、熱交温度センサ80は本願請求項に記載の第1温度センサとして機能する。冷房運転時には、熱交温度センサ80によって冷媒の蒸発温度が検出される。
【0036】
<冷媒回路の動作の概要>
本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作の概要について、
図1(a)を用いて説明する。図中、実線で示した冷媒の流れに基づいて、室内機3が暖房運転を行う場合について説明する。なお、破線で示した冷媒の流れが冷房運転を示している。
【0037】
室内機3が暖房運転を行う場合、CPU210は、
図1(a)に示すように四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdが連通するよう、また、ポートbとポートcが連通するよう、切り替える。これにより、冷媒回路10において実線矢印で示す方向に冷媒が循環し、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器31が凝縮器として機能する暖房サイクルが形成される。
【0038】
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入する。四方弁22のポートaに流入した冷媒は、四方弁22のポートdから室外機ガス管64を流れて、ガス側閉鎖弁26を介してガス管5に流入する。ガス管5を流れる冷媒は、ガス管接続部34を介して室内機3に流入する。
【0039】
室内機3に流入した冷媒は、室内機ガス管68を流れて室内熱交換器31に流入し、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器31が凝縮器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0040】
室内熱交換器31から流出した冷媒は、室内機液管67を流れ、液管接続部33を介して液管4に流入する。液管4を流れ、液側閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機液管63を流れて第1膨張弁24、レシーバ81、第2膨張弁28を通過する際に減圧される。暖房運転時において、第1膨張弁24の開度は、室内熱交換器31流出後の冷媒の過冷却度(SC値)が所定の目標値となるように、第2膨張弁28の開度は、圧縮機21の吐出温度が所定の目標値となるように調整されるか、若しくは、圧縮機21に吸入される冷媒の吸入過熱度(吸入SH)が所定の目標値となるように調整される。
【0041】
第1膨張弁24、レシーバ81、第2膨張弁28を通過して室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管62に流出した冷媒は、四方弁22のポートb及びポートc、吸入管66を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0042】
<冷媒回路の動作の詳細>
次に、本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、
図2(a)から
図5(b)を用いて詳しく説明する。以下の説明においては、基本的な冷媒回路11、インジェクション配管65を有する冷媒回路12、レシーバ81を有する冷媒回路13、及び、インジェクション配管65及びレシーバ81を有する冷媒回路10の順に説明する。
【0043】
<<基本的な冷媒回路>>
図2(a)及び
図2(b)を用いて、基本的な冷媒回路11について説明する。
図2(a)に示すように、冷媒回路11における基準点として、点Aは圧縮機21と凝縮器(暖房運転時の室内熱交換器31に対応。以下、凝縮器31と表記)の間、点Bは凝縮器31と膨張弁(暖房運転時の第2膨張弁28に対応。以下、膨張弁28と表記)の間、点Cは膨張弁28と蒸発器(暖房運転時の室外熱交換器23に対応。以下、蒸発器23と表記)の間、点Dは蒸発器23と圧縮機21の間を指す(以下同様)。
【0044】
点Aから点D、又は各点間における冷媒の状態は、
図2(b)に示すように、以下のとおりとなる。
(1)圧縮機21での圧縮過程の冷媒(点D~A間)は、圧縮され、圧力(縦軸)・温度共に上昇して高温高圧の過熱蒸気となる(周囲空気との熱交換で凝縮しやすい状態になる)。
(2)圧縮機21から吐出された冷媒(点A)は、過熱状態の高圧気相冷媒である。
(3)凝縮器31での凝縮過程の冷媒(点A~B間)は、周囲空気と熱交換(放熱)することで、圧力が一定のまま、過熱蒸気、飽和蒸気、湿り蒸気、飽和液の各状態を経て高圧の過冷却液となる。
(4)凝縮器31から流出した冷媒(点B)は、過冷却状態の高圧液相冷媒である。
(5)膨張弁28での膨張過程の冷媒(点B~C間)は、膨張し、圧力(縦軸)・温度共に下降して湿り蒸気となる(周囲空気との熱交換で蒸発しやすい状態になる)。
(6)膨張弁28から流出した冷媒(点C)は、液リッチ(=液相比率が高い)状態の低圧二相冷媒である。
(7)蒸発器23での蒸発過程の冷媒(点C~D間)は、周囲空気と熱交換(吸熱)することで、圧力が一定のまま、湿り蒸気、飽和蒸気、の各状態を経て低圧の過熱蒸気となる。
(8)蒸発器23から流出した冷媒(点D)は、過熱状態の低圧気相冷媒である。
【0045】
この基本的な冷媒回路11における制御対象である圧縮機21、室内ファン32、膨張弁28及び室外ファン27の制御方法は、次のとおりである。圧縮機21は、室内機3側の要求される能力に基づいて制御される(要求される能力:室内熱交換器31(暖房運転時:凝縮器、冷房時:蒸発器)の周囲温度(=室温)と目標温度の差に応じて設定)。室内ファン32は、暖房運転時(凝縮器が室内熱交換器31の場合)冷房運転時(凝縮器が室外熱交換器23の場合)ともに室温と設定温度の差に応じて制御、若しくはユーザによって好みの風量となるように設定される。膨張弁28は、点Aの温度(吐出温度)が目標値となるように制御(吐出温度制御)、又は、圧縮機21の回転数の変化量に応じて予め定めた制御量(パルス)で膨張弁28の開度を調整する制御(回転数パルス制御)によって制御される。なお、吐出温度制御は、室内温度や外気温等の外乱が吐出温度の変化に現れてから開度調整を行うフィードバック制御であるのに対し、回転数パルス制御は、回転数の変化量から循環量の変化量を予測して予め膨張弁28が適正な開度となるように調整を行うフィードフォワード制御である。室外ファン27は、暖房運転時(蒸発器が熱源側の場合)冷房運転時(蒸発器が利用側の場合)ともに圧縮機21の回転数に基づいて制御される。
【0046】
基本的な冷媒回路11における運転上の制約は、次のとおりである。点Bでは冷媒が液相状態である(=過冷却が取れている)ことが求められる。なぜならば、膨張弁28に気液二相冷媒が流入すると、冷媒流動音の発生や、冷媒回路における冷媒流量の制御が不安定になるなどの不都合が生じるからである。点Dでは冷媒が気相状態である(=過熱が取れている)ことが求められる。なぜならば、圧縮機21に液相冷媒が流入すると液圧縮(液相冷媒は非圧縮性であるため、圧縮機21が破損する。)し、信頼性が低下するからである。
【0047】
<<インジェクション回路を有する冷媒回路>>
図3(a)及び
図3(b)を用いて、インジェクション配管65を有する冷媒回路12について説明する。
図3(a)に示すように、インジェクション配管65を有する冷媒回路12では、凝縮器31からの流出後の冷媒の一部を圧縮機21の中間圧へ流入させる。インジェクション配管65には、圧縮機21へインジェクションする冷媒量を調整するインジェクション膨張弁29を備えるとともに、インジェクションする冷媒の乾き度を上げるため、冷媒間熱交換器82(SC熱交換器)を備える。
【0048】
図3(a)に示すように、冷媒回路12の基準点としては、点A~Dのほかに点E~Gが加えられ、点Eは冷媒間熱交換器82の室外機液管63側流路出口と膨張弁28の間、点Fはインジェクション膨張弁29と冷媒間熱交換器82のインジェクション配管65側流路入口の間、点Gは冷媒間熱交換器82のインジェクション配管65側流路出口と圧縮機21の間を指す(以下同様)。
【0049】
インジェクション配管65の目的は、凝縮器31の冷媒循環量を増やす(低外気(-20~-30℃)暖房運転時等、暖房能力を上昇させる)こと、また、圧縮機21の吐出温度を下げる(低外気暖房運転時等、蒸発温度を外気温度よりも低くすることで、高圧(凝縮圧力)と低圧(蒸発圧力)の圧力差が大きくなっても、圧縮機21の温度が異常温度とならないようにする)ことである。
【0050】
冷媒回路12における冷媒の状態は、
図3(b)に示すようになる。冷媒回路11と異なる点は以下のとおりとなる。
(1)圧縮機21での圧縮過程の点D~A間において、インジェクション配管65を介して凝縮過程の冷媒の一部が二相状態で圧縮機21の中間圧に流入することにより、圧縮機21で圧縮される冷媒の温度が圧縮途中で低下し、インジェクション配管65に冷媒を循環させない場合と比較して点Aにおける吐出温度が下がる。
(2)冷媒は、凝縮過程の点A~B間を通過して液相状態になった後、点B~E間においてインジェクション配管65の点F~G間を流れる冷媒と冷媒間熱交換器82によって熱交換され過冷却される。
(3)点A~B間から分岐したインジェクション配管65に流入した冷媒は、点B~F間でインジェクション膨張弁29を介して低圧の二相状態になり、その後、点F~G間において点B~E間を流れる冷媒と冷媒間熱交換器82によって熱交換されて乾き度が上昇し、点Gから圧縮過程の点D~A間にインジェクションされる。
【0051】
この冷媒回路12における特徴的な制御対象である膨張弁28及びインジェクション膨張弁29の制御方法は、次のとおりである。膨張弁28は、インジェクションをしない場合は、点Aの温度(吐出温度)が目標値となるように制御(吐出温度制御)し、また、圧縮機21の回転数の変化量に応じて予め定めた制御量(パルス)で膨張弁28の開度を調整するように制御(回転数パルス制御)する。インジェクションを行う場合は、吸入SH(=点Dの温度-点Cの温度)が目標値となるように制御(吸入SH制御)し、圧縮機21の回転数の変化量に応じて予め定めた制御量(パルス)で膨張弁28の開度を調整するように制御(回転数パルス制御)する。インジェクション膨張弁29は、インジェクションをしない場合は、閉じる。インジェクションを行う場合は、点Aの温度(吐出温度)又は吐出SHが目標値となるように制御(吐出温度制御又は吐出SH制御)する。
【0052】
<<レシーバを有する冷媒回路>>
図4(a)及び
図4(b)を用いて、レシーバ81を有する冷媒回路13について説明する。
図4(a)に示すように、冷媒回路13の基準点は、基本的な冷媒回路11と同様に点A~Dである。
【0053】
レシーバ81の目的は、接続される室内機3の大きさを問わず、冷媒回路13を流れる冷媒量を適切な冷媒量に調整することである。これは、室内熱交換器31の大きさや、各所の配管の長さ(管内容積)によって冷媒回路13に必要な冷媒量が異なることに対応するものである。すなわち、容積の異なる室内熱交換器31が冷媒回路10中に接続されることで、冷媒回路10の必要冷媒量が変わったとしても、室内熱交換器31における冷媒が過多または不足にならないように、冷媒回路10中にバッファとしてのレシーバ81が設けられる。ここで、「必要な冷媒量が異なる」とは、効率の良い、信頼性的に問題ない運転(適性吸入SH、SC)を行うために必要な冷媒量は室内熱交換器大きさや接続配管長さの違いで生じる容積の違いで異なることを意味しており、レシーバ81内は、その内部の冷媒を冷媒回路13内に出入りさせることで調整する。
【0054】
レシーバ81を有する冷媒回路13では、凝縮器31と蒸発器23の間にレシーバ81を備えており、レシーバ81の上流側と下流側にはそれぞれ、第1膨張弁24と第2膨張弁28が設けられている。冷媒回路13における冷媒の状態は、
図4(b)に示すように、基本的な冷媒回路11と実質的に同様である。
【0055】
この冷媒回路13における特徴的な制御対象である第1膨張弁24及び第2膨張弁28の制御方法は、次のとおりである。第1膨張弁24は、SC値、すなわち、過冷却度(=点A~B間の二相域の温度-点Bの温度)が目標値となるように制御(SC制御)する。第2膨張弁28は、点Aの温度(吐出温度)が目標値となるように制御(吐出温度制御)、若しくは、吸入SH、すなわち、吸入過熱度(=点Dの温度-点Cの温度)が目標値となるように制御(吸入SH制御)する。
【0056】
<<本実施形態に係るインジェクション回路及びレシーバを有する冷媒回路>>
本実施形態に係る冷媒回路10について、
図5(a)及び
図5(b)を用いて説明する。冷媒回路10は、上記で説明したインジェクション配管65及びレシーバ81の双方を備えている。
図5(a)は、
図1を簡略化して冷媒回路10を図示したものであり、
図3(a)のインジェクション配管65を有する冷媒回路12において、インジェクション配管65が分岐する手前(上流側)に第1膨張弁24とレシーバ81を設けた態様となる。
図3(a)における膨張弁28は、第2膨張弁28となる。
図5(a)に示すように、冷媒回路10の基準点としては、点A~D、点E~Gのほかに点Hが加えられ、点Hは第1膨張弁24とレシーバ81の間を指す。
【0057】
冷媒回路10における冷媒の状態は、
図5(b)に示すようになるが、冷媒回路12と異なる点は以下のとおりとなる。
(1)冷媒は、凝縮過程の点A~B間を経た後、点B~H間で第1膨張弁24を介して圧力が下がり、その後、点H~E間においてインジェクション配管65の点F~G間と冷媒間熱交換器82によって熱交換される。
(2)点A~E間の点Hから分岐したインジェクション配管65に流入した冷媒は、点H~F間でインジェクション膨張弁29を介して圧力が下がり、その後、点F~G間において点B~E間と冷媒間熱交換器82によって熱交換されて乾き度が上昇し、点Gから圧縮過程の点D~A間にインジェクションされる。
【0058】
ところで、暖房運転時、空気調和機のエネルギー消費効率(COP)を最適にするために、凝縮器31における凝縮温度と周囲温度との差が大きくなるほど目標過冷却度を大きく設定する技術がある。換言すれば、この技術においては、凝縮器31における凝縮温度と周囲温度との差が小さくなるほど目標過冷却度が小さく設定される。
【0059】
しかしながら、エネルギー消費効率を優先するために、凝縮器31における凝縮温度と周囲温度との差が過小となった場合でも、前記差に応じて目標過冷却度を小さく設定すると、圧力損失の影響で凝縮器31の下流に配置された第1膨張弁24に気液二相状態の冷媒が流入する場合がある。このような場合、第1膨張弁24から冷媒流動音が発生したり、冷媒回路10における冷媒流量の制御が不安定になったりして、空気調和機の信頼性が低下する。そこで、本実施形態の空気調和機1では、
図6(b)に示す制御を行い、上記不具合(冷媒流動音、冷媒流量の制御不良)を防止する。
【0060】
図6(a)は、参考例の空気調和機に係る冷媒回路の制御の概要を説明するグラフであり、
図6(b)は、本実施形態の空気調和機に係る冷媒回路の制御の概要を説明するグラフである。
【0061】
例えば、
図6(a)の参考例では、空気調和機の最適なエネルギー消費効率(COP)を得るための、凝縮器31における凝縮温度と周囲温度との差Δt(凝縮温度-周囲温度)と、目標過冷却度SCとの関係が示されている。ここで、Δtが横軸で、目標過冷却度SCが縦軸である。参考例では、Δtと目標過冷却度SCとが一次関数の関係にある。すなわち、目標過冷却度SCとΔtとは比例し、室外機制御手段200によって、Δtが大きくなるほど目標過冷却度SCが大きく設定され、Δtが小さくなるほど、目標過冷却度SCが小さく設定される。
【0062】
ここで、凝縮温度は、熱交温度センサ80によって検出される。周囲温度は、室温センサ79によって検出される。SC値は、熱交温度センサ80によって検出された凝縮温度から液側温度センサ77aによって検出された出口温度を差し引くことで求められる。
【0063】
参考例では、Δtが測定された後、冷媒のSC値が
図6(a)の一次関数のラインから逸れた場合には、第1膨張弁24の開度が調整されて、SC値が目標過冷却度SCに設定される。例えば、SC値が目標過冷却度SCよりも大きくなった場合には、室外機制御手段200によって第1膨張弁24の開度が大きくなるように制御されて、SC値が目標過冷却度SCに設定され、SC値が目標過冷却度SCよりも小さい場合には、第1膨張弁24の開度が小さくなるように制御される。これにより、空気調和機は最適なエネルギー消費効率で運転できる。この時、第1膨張弁24の開度を調整することでSC値が目標過冷却度SCになるように制御する方法と、第1膨張弁24の開度の他にも、圧縮機や室内ファンの回転数を調整することでSC値が目標過冷却度SCになるように制御する方法とがある。前者の方法では、現在の状態である点P(Δt、SC値)を通る縦軸に平行な直線と一次関数のラインとの交点S
1を目標過冷却度SCとする。一方、後者の方法ではグラフ上の第1膨張弁24の開度を調整して現在の状態である点P(Δt、SC値)から最も近い点S
2を目標過冷却度SCとする。
【0064】
但し、参考例では、Δtが例えば5℃以下となる範囲tmでもエネルギー消費効率を優先するため、tmの範囲においてもΔtに応じて冷媒の過冷却度が調整される。このため、凝縮器31が低負荷の条件(範囲tmの条件)にあるときは、目標過冷却度の値が小さくなるため、過冷却度が目標過冷却値となるように第1膨張弁を制御しても凝縮器31の出口から充分に冷却されていない冷媒が流出する可能性が有る。これにより、凝縮器31の出口から第1膨張弁24までの間の冷媒配管(室内機液管67または室外機液管63)において圧力損失が生じると、第1膨張弁24に気液二相状態の冷媒が流入し、第1膨張弁24で冷媒流動音が発生したり、冷媒回路10において冷媒の流量制御が不安定なったりする。
【0065】
本実施形態では、参考例の低負荷条件で生じる現象を以下のように改善する。
図6(b)に、本実施形態の制御の概要を示す。
【0066】
本実施形態では、室外機制御手段200がΔtに応じて、SC値が目標過冷却度SCとなるように第1膨張弁24の開度を制御する場合、目標過冷却度SCが第1閾値(例えば3deg)よりも低い場合には、Δtにかかわらず、第1閾値を目標過冷却度SCとして定める。室外機制御手段200は、目標過冷却度SCが第1閾値以上の場合には、Δtが大きくなるほど目標過冷却度SCを大きく設定する。第1閾値は、試験等により予め定められ室外機制御手段200の記憶部220に記憶されている。第1閾値は、凝縮器31の出口から第1膨張弁24までの間の冷媒配管(室内機液管67または室外機液管63)で生じる圧力損失に対する余裕度であって、その値は当該冷媒配管の径・長さ・形状に依存する。一般的に、長配管設置(室内機と室外機を接続する配管が長い場合)の暖房運転では圧力損失が大きくなるので、最大配管長を想定して第1閾値を設定する。
【0067】
例えば、
図6(b)に示すように、室外機制御手段200は、目標過冷却度SCに第1閾値を設け、凝縮温度と周囲温度との差であるΔtが過小となる範囲t
m(目標過冷却度SCが第1閾値より小さくなるときのΔtの範囲)では、SC値をΔtに応じて変化させず、第1閾値を目標過冷却度SCとして定める。すなわち、本実施形態では、目標過冷却度SCに下限値(固定値)が設けられる。
【0068】
また、室外機制御手段200は、目標過冷却度SCが第1閾値以上の場合には、SC値を第1閾値よりも大きく設定し、且つ、SC値をΔtに応じて変更する制御を行う。例えば、目標過冷却度SCが第1閾値以上のΔtでは、Δtと目標過冷却度SCとが一次の線形関係にあり、Δtが大きくなるほど目標過冷却度SCが大きく設定される。
【0069】
このような空気調和機1によれば、凝縮器31が低負荷の条件に置かれても、凝縮器31の出口からは、下限値で固定された目標過冷却度SCに設定された冷媒が流出することになる。これにより、第1膨張弁24には液体状態の冷媒が確実に流入することになる。この結果、第1膨張弁24での冷媒流動音の発生が抑制され、冷媒回路10における冷媒の流量制御が安定する。
【0070】
なお、
図6(b)に示す、一次の線形関係の傾き、または、目標過冷却度SCが下限値となるΔtの範囲は、凝縮器31の熱交換効率によって変動する。
【0071】
図7に、凝縮器の熱交換効率が異なる場合のΔtと目標過冷却度SCとの関係を示す。
【0072】
図7に示すように、目標過冷却度SCが第1閾値以上のΔtの範囲では、凝縮器の熱交換効率が高くなるほど、線形関係の傾きが大きく設定され、凝縮器の熱交換効率が高くなるほど、第1閾値に対応するt
mの範囲が狭く設定される。
【0073】
ここで、凝縮器の熱交換効率εは、以下のように定義される。例えば、凝縮器に流入する冷媒の温度をTin、凝縮器から流出する冷媒の温度をTout、凝縮器に接触する空気の周囲温度をTatmとした場合、
熱交換効率ε=((Tin-Tout)/(Tin-Tatm))×100(%)
で表される。例えば、凝縮器から流出する冷媒の温度Toutが周囲温度Tatmと同じとなる理想の凝縮器では、熱交換効率εが100%になる。
【0074】
例えば、凝縮器Aと凝縮器Bとがあり、凝縮器Bの熱交換効率は、凝縮器Aの熱交換効率よりも高いとする。凝縮器Aにおいては、一次曲線の傾きが傾きαであり、凝縮器Aの一次曲線の延線が点αxで横軸と交差する。これに対し、凝縮器Bの一次曲線の傾きβは、傾きαよりも大きく、また、凝縮器Bの一次曲線の延線と横軸との交点βxは、点αxよりも0点側に近づく。ここで、第1閾値に対応するΔtの範囲が凝縮器Aではtmαと表示され、凝縮器Bでは、tmαよりも狭いtmβで表示されている。なお、一次曲線の傾き、及び、横軸との交点は試験等により予め定められる。
【0075】
例えば、熱交換効率が高い凝縮器の例として、凝縮器内にある複数のパイプを流れた冷媒を一つにまとめ、まとめた冷媒を凝縮器内の下部にある熱交換器に通過させる、所謂まとめパス(SCパス)を備えた凝縮器があげられる。SCパスを備えた凝縮器では、凝縮器内の熱交換器を通過した冷媒を凝縮器下部にある過冷却器に通過させることで冷媒と外気を熱交換させ、冷媒の過冷却を行う。SCパスを持たない凝縮器が
図7の凝縮器Aとした場合、SCパスを備えた凝縮器は、
図7の凝縮器Bとなる。
【0076】
このような熱交換効率が異なる凝縮器における、Δtと目標過冷却度SCとの関係は、室外機制御手段200の記憶部220に記憶されている。これらの関係は、実験、シミュレーションによって予め求められ、テーブルとして記憶部220に格納されている。
【0077】
なお、冷媒回路10には、レシーバ81が設けられている。従って、熱交換効率が異なる凝縮器31が用いられ、SC値が目標過冷却度SCとなるように第1膨張弁24の開度調整が行われたとしても、レシーバ81によって凝縮器31内の冷媒の量が過多または過不足にならないように調整される。このため、熱交換効率が異なる型の凝縮器31を用いても、SC値が所望の目標過冷却度SCに制御される。
【0078】
<<暖房運転時の処理の流れ>>
【0079】
次に、
図8に示すフローチャートを用いて、暖房運転を行う際に、室外機制御手段200のCPU210が実行する処理について説明する。
【0080】
図8に示すフローチャートは、CPU210が暖房運転を行う際の処理の流れを示すものであり、STはステップを表しこれに続く番号はステップ番号を表している。
図8では、本実施形態に係る処理を中心に説明しており、例えば、使用者の指示した設定温度や風量等の運転条件に対応した冷媒回路100の制御といった、空気調和機1に係る一般的な処理については説明を省略している。
【0081】
CPU210は、暖房運転を開始すると、圧縮機21、第1膨張弁24、第2膨張弁28の起動制御を行う(ST101)。圧縮機21の起動制御は、圧縮機21からの吐油量を抑える目的で段階的に回転数を上昇させる制御である。第1膨張弁24及び第2膨張弁28の起動制御は、予め試験等で定められ、外気温に応じた初期パルスが記憶部220にそれぞれ記憶されており、当該初期パルスで開度を固定する制御である。
【0082】
次に、CPU210は、起動制御の終了条件が成立したか否かを判定し(ST102)、終了条件が成立していれば(ST102-YES)、圧縮機21、第1膨張弁24、第2膨張弁28を通常制御に切り換える(ST103)。終了条件が成立していなければ(ST102-NO)、ST102に戻る。通常制御では、圧縮機21は要求能力に対応する回転数に制御、第1膨張弁24はSC制御、第2膨張弁28は吸入SH制御とする。
【0083】
次に、CPU210は、記憶部220からΔtと目標過冷却度SCとの関係式を読み込む(ST104)。関係式は、目標SC=a×Δt+bで表すことができる。なお、a、bは前述の凝縮器の熱交換効率に関連するものであり、実験等により予め定められ、記憶部220に記憶される。
【0084】
次に、CPU210は、熱交温度センサ80によって検出された冷媒の凝縮温度から室温センサ79によって検出された周囲温度を差し引いてΔtを求め、Δtに対応する目標過冷却度SCを算出する(ST105)。なお、ST105は、ST104よりも前に実行してもよい。
【0085】
次に、CPU210は、目標過冷却度SCが第1閾値よりも小さいか、否かを判断する(ST106)。
【0086】
目標過冷却度SCが第1閾値よりも小さいと判断された場合(ST106-YES)、CPU210は、目標過冷却度SCとして、下限値を選択する(ST107)。
【0087】
一方、目標過冷却度SCが第1閾値以上と判断された場合(ST106-NO)、CPU210は、目標過冷却度SCとして、一次曲線に則ったΔtに対応する目標過冷却度SCを選択する(ST108)。
【0088】
ST107またはST108の後、CPU210は、熱交温度センサ80によって検出された冷媒の凝縮温度から液側温度センサ77aによって検出された冷媒の凝縮器31の出口温度を差し引き、凝縮器31から流出した冷媒の過冷却度を算出する(ST109)。
【0089】
次に、CPU210は、過冷却度が目標過冷却度SCに到達したか否かの判断を行う(ST110)。過冷却度が目標過冷却度SCならば(ST110-YES)、CPU210は、第1膨張弁24の開度の調整を行わず、冷媒の冷却度の制御を終了する(END)。一方、過冷却度が目標過冷却度SCでないならば(ST110-NO)、CPU210は、第1膨張弁24の開度を調整して、冷媒の冷却度を調整する(ST111)。ST111の後、CPU210は、ST110に戻り、ST110の判断を再度行う。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記の説明では、暖房運転による運転動作の例を示したが、冷房運転にも
図6(b)~
図8に例示した制御方法が適用されてもよい。
【0091】
例えば、冷房運転を行う場合は、第1膨張弁24が下流側膨張弁となり、第2膨張弁28が上流側膨張弁となる。記憶部220には、室外熱交換器23における凝縮温度と周囲温度との差(凝縮温度-周囲温度)Δtと、目標過冷却度SCとの関係が記憶されている。ここで、凝縮温度は、熱交温度センサ75によって検出され、周囲温度は、外気温度センサ76によって検出される。過冷却度SCは、熱交温度センサ75によって検出された凝縮温度から液側温度センサ77cによって検出された出口温度を差し引くことで求められる。また、各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…空気調和機
2…室外機
3…室内機
4…液管
5…ガス管
10…冷媒回路
10a…室外機冷媒回路
10b…室内機冷媒回路
11、12、13…冷媒回路
21…圧縮機
22…四方弁
23…室外熱交換器
24…第1膨張弁(暖房運転時:上流側膨張弁)
25…液側閉鎖弁
26…ガス側閉鎖弁
27…室外ファン
28…第2膨張弁(暖房運転時:下流側膨張弁)
29…インジェクション膨張弁
31…室内熱交換器(暖房運転時:凝縮器)
32…室内ファン
33…液管接続部
34…ガス管接続部
61…吐出管
62…冷媒配管
63…室外機液管
64…室外機ガス管
65…インジェクション配管
66…吸入管
67…室内機液管
68…室内機ガス管
71…吐出圧力センサ
72…吸入圧力センサ
73…吐出温度センサ
74…吸入温度センサ
75…熱交温度センサ
76…外気温度センサ
77a…液側温度センサ
77c…液側温度センサ
78…ガス側温度センサ
79…室温センサ
80…熱交温度センサ
81…レシーバ
82…冷媒間熱交換器
200…室外機制御手段
210…CPU
220…記憶部
230…通信部
240…センサ入力部