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  • 特開-地中梁の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074648
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】地中梁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E02D27/01 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184867
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】514229650
【氏名又は名称】株式会社エルフホールデイングス
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】中島 仁
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】
【課題】 工期の短縮化および施工コストの低減を図りつつ、安全な施工を行うことができる地中梁の施工方法を提供する。
【解決手段】 地盤を掘削して収容溝10を形成する収容溝形成工程と、収容溝10に地中梁鉄筋を配置して地中梁を築造する地中梁築造工程とを備える地中梁の施工方法であって、収容溝形成工程は、収容溝10の長手方向の一部に他の部分よりも開口幅が小さい幅狭部12を形成する幅狭部形成工程と、幅狭部12の上方に敷板14を配置して工事車両が通行可能な仮設通路を形成する通路形成工程とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して収容溝を形成する収容溝形成工程と、
前記収容溝に地中梁鉄筋を配置して地中梁を築造する地中梁築造工程とを備える地中梁の施工方法であって、
前記収容溝形成工程は、前記収容溝の長手方向の一部に他の部分よりも開口幅が小さい幅狭部を形成する幅狭部形成工程と、前記幅狭部の上方に敷板を配置して工事車両が通行可能な仮設通路を形成する通路形成工程とを備える地中梁の施工方法。
【請求項2】
前記幅狭部形成工程は、地盤を掘削して形成された空間部に幅狭部形成用型枠を配置し、土砂に固化材を混合した改良土を前記幅狭部形成用型枠の周囲に充填して固化させた後、前記幅狭部形成用型枠を撤去する工程を備える請求項1に記載の地中梁の施工方法。
【請求項3】
前記収容溝形成工程は、前記幅狭部形成工程により前記幅狭部を形成した後、前記幅狭部に連通するように地盤を掘削して前記収容溝を形成する請求項1または2に記載の地中梁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中梁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地中梁の施工方法は、例えば特許文献1に開示されているように、地盤を掘削する土工事を行った後、地中梁の鉄筋を配置する鉄筋工事や、地中梁の周囲に型枠を組み立てる型枠工事等を行うのが一般的である。土工事、鉄筋工事、型枠工事は、それぞれの専門職である土工、鉄筋工、型枠工により施工順序に従って行われ、施工に必要な砂利、生コン、鉄筋、型枠等の資材の搬入や掘削土等の搬出は、トラック等の車両が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-195886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、地中梁を広範囲に配置する基礎工事においては、地盤の掘削によって施工現場への車両の通行が制限され易く、資材の搬入が困難になるという問題があった。このため、土工、鉄筋工、型枠工が、それぞれの作業を効率良く行うことができず、資材の搬入や移動等に大型のクレーン車が必要になるため、工期や施工コストが増大するおそれがあった。また、大型のクレーン車は、転倒のおそれがあるだけでなく、緩慢な動作による作業効率の低下、設置スペースの制約、道路の通行規制等の問題が生じ易く、更には高度な運転技術が要求されるため、大型クレーン車を使用せずに施工することのニーズが高まっている。
【0005】
そこで、本発明は、工期の短縮化および施工コストの低減を図りつつ、安全な施工が可能な地中梁の施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、地盤を掘削して収容溝を形成する収容溝形成工程と、前記収容溝に地中梁鉄筋を配置して地中梁を築造する地中梁築造工程とを備える地中梁の施工方法であって、前記収容溝形成工程は、前記収容溝の長手方向の一部に他の部分よりも開口幅が小さい幅狭部を形成する幅狭部形成工程と、前記幅狭部の上方に敷板を配置して工事車両が通行可能な仮設通路を形成する通路形成工程とを備える地中梁の施工方法により達成される。
【0007】
この地中梁の施工方法において、前記幅狭部形成工程は、地盤を掘削して形成された空間部に幅狭部形成用型枠を配置し、土砂に固化材を混合した改良土を前記幅狭部形成用型枠の周囲に充填して固化させた後、前記幅狭部形成用型枠を撤去する工程を備えることが好ましい。
【0008】
前記収容溝形成工程は、前記幅狭部形成工程により前記幅狭部を形成した後、前記幅狭部に連通するように地盤を掘削して前記収容溝を形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地中梁の施工方法によれば、工期の短縮化および施工コストの低減を図りつつ、安全な施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る地中梁の施工方法の一工程を説明するための平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る地中梁の施工方法の他の工程を説明するための平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る地中梁の施工方法の更に他の工程を説明するための平面図である。
図4図1の工程に対応する工程断面図である。
図5図2の工程に続いて行われる工程の工程断面図である。
図6】施工された地中梁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態に係る地中梁の施工方法の各工程を説明するための平面図である。本実施形態の地中梁の施工方法は、建物の基礎となる地中梁を構築する箇所の地盤を掘削して、収容溝を形成する収容溝形成工程を備える。
【0012】
この収容溝形成工程は、図1に示すように、破線で示す収容溝10の形成予定箇所の一部に、収容溝10の他の部分よりも開口幅が小さい幅狭部12を予め形成した後、図2に実線で示すように、収容溝10の他の部分を形成することにより、直線状に延びる収容溝10の長手方向の一部に幅狭部12を含むように形成するものである。幅狭部12は、地中梁を築造するのに必要最小限の幅を有する空間部であり、コンクリート打設時に側型枠となる。図2に示すように、幅狭部12に鋼板等の敷板14を配置することで、ユニック車やトラック、重機等の工事車両が通行可能な仮設通路を形成することができる。このような通路形成工程を備えることで、図3に示すように収容溝10に地中梁鉄筋20を配置して地中梁を築造する地中梁築造工程を迅速容易に行うことができる。幅狭部12の長手方向(図1から図3の左右方向)の長さは、工事車両の通路を確保できればよく、例えば約3.0mである。
【0013】
収容溝10における幅狭部12の形成箇所は必ずしも限定されないが、収容溝10の形成によって工事車両のアクセスが困難になる場所を予め想定した上で、必要箇所に必要な数の幅狭部12を形成することが好ましい。例えば、図2においては、不図示の道路から矢示A方向に進入した工事車両が、収容溝10の全体にアクセスできるように、幅狭部12および敷板14を複数個所に配置している。これにより、資材の搬入や土砂の搬出等を各施工現場の近傍で容易に行うことができるので、大型クレーン車等の使用により収容溝10を跨いで資材等を搬入する必要がなく、土工、鉄筋工、型枠工等が各所で同時に連続して作業を行うことができ、工期の短縮化および施工コストの低減を図ることができる。
【0014】
図4は、図1に示す幅狭部12を形成する幅狭部形成工程を説明するための工程断面図であり、図1のA-A断面を示している。幅狭部形成工程は、図4(a)に示すように、地盤30を掘削して排土することにより溝状の空間部31を形成した後、図4(b)に示すように、掘削土等の土砂とセメント等の固化材とを水と共に混合した改良土35を少量作成して空間部31に供給し、鋼製の幅狭部形成用型枠34を、下部が改良土35に沈むように空間部31内の所定の位置に配置する。空間部31の大きさは特に制限されないが、本実施形態においては、収容溝10の他の部分と同じ大きさとしており、空間部31の上部の開口幅(図4の左右方向の長さ)が約2.4mであり、底面の幅が約1.0mであり、深さが約1.2mである。
【0015】
改良土35がある程度固化し、幅狭部形成用型枠34が固定されると、図4(c)に示すように、空間部31内の幅狭部形成用型枠34の周囲に改良土35を追加して充填する。そして、改良土35が固化した後、図4(d)に示すように幅狭部形成用型枠34を撤去することにより、幅狭部12を形成する。幅狭部12の開口幅(図4の左右方向の長さ)は、地中梁を収容可能な大きさであり、例えば、250~500mm程度である。幅狭部12の開口幅は、地中梁を築造できる必要最小限の幅であることが好ましく、収容溝10の他の部分の開口幅(例えば、約2.4m)よりも小さく設定される。
【0016】
幅狭部形成工程を上記のように行うことで、その後の図4(e)に示す通路形成工程で幅狭部12の上方に配置した敷板14を、改良土35が固化した部分で確実に支持することができるので、工事車両が敷板14を安全に通行することができ、大型クレーン車による作業を行うことなく、資材の搬入や掘削土の搬出等を安全に効率良く行うことができる。なお、敷板14の配置や撤去も、ユンボやユニック車等により随時行うことができる。幅狭部形成工程は、必ずしも本実施形態のものに限定されず、例えば、空間部31内に砂利を敷いて捨てコンクリートを打設し、その上に幅狭部形成用型枠34を配置した後、幅狭部形成用型枠34の周囲に改良土35を充填する方法で行ってもよい。
【0017】
本実施形態の収容溝10は、図2に示すように、幅狭部12の長手方向両側に連通するように掘削することで、幅狭部12を含むように形成される。図5は、図2に示す収容溝10の形成工程に続いて行われる地中梁築造工程を説明するための工程断面図であり、図2のB-B断面を示している。
【0018】
地中梁築造工程は、まず図5(a)に示すように、地盤30に形成した収容部10の底面に砂利32を敷いて転圧を行い、その上に捨てコンクリート33を打設した後、収容部10に主力筋や帯筋等の地中梁鉄筋20を搬入して組み立てを行う。ついで、図5(b)に示すように、収容部10に型枠材を搬入して組み立てを行い、地中梁鉄筋20が内部に配置されるように地中梁用型枠36を構築する。この際、図4(e)に示す敷板14を撤去して、幅狭部12にも地中梁鉄筋20を配置し、幅狭部12の両側に配置された地中梁鉄筋20と連結させる。
【0019】
次に、図5(c)に示すように、地中梁用型枠36の内部に生コンクリート37を搬入してコンクリート打設を行うことにより、地中梁鉄筋20とコンクリート37とが一体化された地中梁40を構築する。地中梁用型枠36の内部は幅狭部12と連通しており、図6に示すように、生コンクリート37が幅狭部12にも流れ込んでコンクリート打設が行われ、地中梁40が構築される。そして、図5(d)に示すように、地中梁用型枠36を解体して型枠材を搬出した後、図5(e)に示すように、良質土38による埋め戻しを行い、転圧することにより、地中梁40の築造が完了する。
【0020】
本実施形態の地中梁の施工方法は、収容溝形成工程において、地盤の幅狭部12に相当する箇所のみを掘削して幅狭部12を形成した後に、幅狭部12に連通する他の部分を掘削して収容溝10を形成しているが、施工の妨げにならない範囲で、幅狭部12よりも長い箇所を予め掘削して空間部31を形成してもよい。この場合、空間部31の一部を型枠等で閉鎖して幅狭部12を形成し、空間部31の残部を収容溝10として使用することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 収容溝
12 幅狭部
14 敷板
20 地中梁鉄筋
30 地盤
40 地中梁
31 空間部
1 幅狭部形成用型枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6