(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074652
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】消火栓設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20220511BHJP
A62C 35/20 20060101ALI20220511BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A62C35/68
A62C35/20
F16L5/00 A
F16L5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184878
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000155838
【氏名又は名称】株式会社立売堀製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】宮村 繁治
(72)【発明者】
【氏名】辻 則男
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、消火栓格納箱と給水管との相対的な位置ずれを考慮することなく、給水管から分岐された可撓性を有する分岐管及び継ぎ手部材を介して、消火栓格納箱内に配設された消火栓弁と給水管とを容易に且つ確実に接続し、消火栓格納箱を建築物の内壁に容易に且つ正確に設置することができる消火栓設備を提供する。
【解決手段】 本発明の消火栓設備は、建築物の内壁に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に非円形状の継ぎ手挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、上記継ぎ手挿通孔に係合して上記継ぎ手挿通孔に対して相対的に回動不能に上記継ぎ手挿通孔に配設されている継ぎ手部材と、上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管と上記継ぎ手部材の流入口とを接続している可撓性を有する分岐管と上記継ぎ手部材の流出口に接続された消火栓弁とを有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の内壁に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に非円形状の継ぎ手挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、
上記継ぎ手挿通孔に挿通されて上記壁板に対して相対的に回動不能に配設されている継ぎ手部材と、
上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管と上記継ぎ手部材の流入口とを接続している可撓性を有する分岐管と
上記継ぎ手部材の流出口に接続された消火栓弁とを有することを特徴とする消火栓設備。
【請求項2】
継ぎ手部材は、その外周面に、消火栓格納箱の継ぎ手挿通孔の内周面に当接する係止部を有していることを特徴とする請求項1に記載の消火栓設備。
【請求項3】
消火栓格納箱の継ぎ手挿通孔が多角形状に形成されていると共に、継ぎ手部材の係止部は、上記継ぎ手挿通孔に嵌合可能に且つ上記継ぎ手挿通孔に合致させて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の消火栓設備。
【請求項4】
消火栓格納箱の継ぎ手挿通孔に凹部が形成されていると共に、継ぎ手部材の係止部が上記継ぎ手挿通孔の凹部に係止していることを特徴とする請求項2に記載の消火栓設備。
【請求項5】
継ぎ手部材は、係止部の外周縁から延設された壁板当接部を有しており、上記壁板当接部を消火栓格納箱の壁板に当接させていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の消火栓設備。
【請求項6】
継ぎ手部材の壁板当接部から係止部を挟んで所定間隔を存して楔部材支持部が形成され、上記楔部材支持部と上記係止部の対向面間には楔部材打ち込み用溝部が形成されており、上記楔部材打ち込み用溝部内に打ち込まれた楔部材と上記壁板当接部によって消火栓格納箱の壁板が挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の消火栓設備。
【請求項7】
継ぎ手部材の外周面には、係止部よりも端部側においてナット体が螺合する壁板固定用螺子部が形成され、上記壁板固定用螺子に螺合させた上記ナット体と上記壁板当接部とによって上記消火栓格納箱の壁板を挟持していることを特徴とする請求項5に記載の消火栓設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフィスビル、マンション及びデパートなどの建築物の内壁に設置され、火災発生時に消火栓弁を開弁することによって給水管から消火用水を消火用ホースを通じて放水するように構成した消火栓設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1や特許文献2に記載されているように、火災発生に備えて消火活動に使用される消火用ホースやノズル、消火栓弁などを格納してなる消火栓格納箱が知られている。このような消火栓格納箱は、建築物における通路壁等の内壁に設けている格納箱設置空間部内に設置され、内壁の後方側に垂直状に配管された給水管から分岐している分岐管の先端部を上記消火栓格納箱の背板に設けている分岐管挿通孔を通じて消火栓格納箱内に挿入してその先端部に上記消火栓弁の流入口を接続させる一方、消火栓弁の流出口に上記消火用ホースの基端部を接続することによって消火栓設備を構成している。
【0003】
又、消火栓格納箱の後方には給水管が配設されており、この給水管から分岐して水平方向に剛直な分岐管が配設されており、この分岐管の先端部を消火栓格納箱内に引き込み、分岐管の先端部に消火栓弁を取り付けている。
【0004】
上記のように構成した消火設備によれば、消火栓格納箱を建築物の内壁に設置するにあたって、予め、内壁に消火栓格納箱と同形の方形状空間部を設けておき、この空間部内に消火栓格納箱を埋め込み状に収納、固定することによって行われているが、この際、上記消火栓格納箱を設置させるための方形状空間部の位置と、給水管から分岐して水平方向に配設された分岐管とが相対的に多少のずれを生じていることがある。
【0005】
そのため、消火栓格納箱を設置する格納箱設置空間部を予め、大きめに形成しておき、格納箱設置空間部内において消火栓格納箱を位置調整することによって、消火栓格納箱の分岐管挿入孔と分岐管(給水管)との位置ずれを調整することが行われているが、格納箱設置空間部内における消火栓格納箱の位置調整は、労力と時間を要するといった問題点を有する。
【0006】
そこで、特許文献3には、可撓管と、前記可撓管の一端に設けられた消火栓弁と、前記消火栓弁の近傍に固定されたフランジ状の取付板と、前記可撓管の他端に設けられた継手部と、前記消火栓弁が挿通可能で且つ前記取付板より小さい開口面積を有する消火栓弁挿通用孔が裏箱に形成された消火栓格納箱と、を備え、前記消火栓弁挿通用孔に前記消火栓弁が挿通されて前記取付板が前記裏箱に固定され、前記継手部が建物壁の内側に配管された給水管に設けられた分岐継手に接続されている消火設備が提案されており、この消火設備によれば、可撓管を用いることによって、消火栓格納箱と分岐管(給水管)との位置ずれの調整が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3-78566号公報
【特許文献2】特開2005-270494号公報
【特許文献3】特開2019-10255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3の消火設備は、可撓管の先端に取り付けられた消火栓弁を閉止した後、縦配管及び可撓管内に水を充満させて所定の圧力を加えて水圧試験を行っており、可撓管内に水が充満しているため、可撓管の可撓性が低下しており、作業性が低下するという問題点を有している。
【0009】
更に、可撓管の先端部に取り付けた取付板を消火栓格納箱の背板に取付板の四方角部においてボルト及びナットを用いて固定しているが、上述の通り、水が充満している可撓管は可撓性が低下していることから、消火栓格納箱の背板の背面に取付板を全面的に当接させることに手間及び時間を要するという問題点を有している。取付板が消火栓格納箱の背板の背面に全面的に当接された状態となっていない場合には、特定のボルトに過度な応力が継続して加わることとなり、劣化の原因となったり、或いは、取付板が消火栓格納箱の壁板に対して相対変位し、消火栓弁が消火栓格納箱内において正しい姿勢からずれを生じるという問題点を生じる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、消火栓格納箱と給水管との相対的な位置ずれを考慮することなく、給水管から分岐された可撓性を有する分岐管及び継ぎ手部材を介して、消火栓格納箱内に配設された消火栓弁と給水管とを容易に且つ確実に接続し、消火栓格納箱を建築物の内壁に容易に且つ正確に設置することができる消火栓設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の消火栓設備は、
建築物の内壁に設置され且つ内部に消火用ホースを収納していると共に、壁板に非円形状の継ぎ手挿通孔が形成されている消火栓格納箱と、
上記継ぎ手挿通孔に挿通されて上記壁板に対して相対的に回動不能に配設されている継ぎ手部材と、
上記消火栓格納箱の外方に配管された給水管と上記継ぎ手部材の流入口とを接続している可撓性を有する分岐管と
上記継ぎ手部材の流出口に接続された消火栓弁とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消火栓設備によれば、継ぎ手部材を消火栓格納箱の継ぎ手挿通孔に挿通させ且つ壁板に対して相対的に回動不能に配設、固定し、この継ぎ手部材の流入口と給水管とを可撓性を有する分岐管を介して接続すると共に、継ぎ手部材の流出口に消火栓弁を接続することによって、消火栓格納箱と吸水管との相対的な位置ずれを考慮することなく、消火栓設備を容易に所望場所に設けることができる。
【0013】
そして、消火栓設備は、消火栓格納箱の壁板に設けられた継ぎ手挿通孔に挿通状態に且つ壁板に対して回動不能に配設された継ぎ手部材を介して消火栓弁と可撓性を有する分岐管とが接続されており、分岐管内に水を充満させた後においても、消火栓弁を消火栓格納箱内の正しい位置に配設、維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】(a)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造を示した分解斜視図。(b)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造を示した斜視図。
【
図4】(a)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造を示した側面図。(b)
図4(a)のA-A線断面図。
【
図5】(a)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造の他の一例を示した分解斜視図。(b)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造の他の一例を示した斜視図。
【
図6】(a)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造の他の一例を示した分解斜視図。(b)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造の他の一例を示した分解斜視図。
【
図7】(a)消火栓収納箱の壁板への継ぎ手部材の取付構造の他の一例を示した側面図。(b)
図7(a)のB-B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、
図1及び
図2に示したように、消火栓設備は、建築物の内壁Wに設置された消火栓格納箱1と、この消火栓格納箱1内に収納された消火用ホース2と、消火用ホース2の先端に接続しているノズル3と、消火栓格納箱1の壁板に形成された継ぎ手挿通孔11aに挿通状態にて配設されている継ぎ手部材4と、内壁Wの後方空間部に配管された給水管5と、給水管5から消火栓格納箱1に向かって分岐して継ぎ手部材4の流入口に接続されている可撓性を有する分岐管6と、継ぎ手部材4の流出口に配設されている消火栓弁7とを含む。なお、消火栓弁7の流出口に必要に応じて接続部71を介して消火用ホース2の基端が接続されている。
【0016】
建築物の内壁Wには消火栓格納箱1を収納できる矩形状の格納箱設置空間部W1が形成されていて、この格納箱設置空間部W1に前方側から消火栓格納箱1を収納、設置するように構成している。更に、上記格納箱設置空間部W1を設けている内壁Wの後方空間部に上記給水管5が垂直状に配管されてあり、この給水管5に、可撓性を有する分岐管6の基端を連通するように接続して給水管5から分岐管6を格納箱設置空間部W1側に向かって突設している。
【0017】
図3に示したように、消火栓格納箱1の壁板11には、非円形状の継ぎ手挿通孔11aが内外面間に亘って貫通した状態に形成されている。なお、非円形状とは、真円形を除いた形状を含む。継ぎ手挿通孔11aは、後述する継ぎ手部材4の係止部41が係止して継ぎ手部材4を継ぎ手挿通孔11aに挿通状態に且つ壁板11に対して相対的に回動不能に配設できる形状であればよい。例えば、
図3に示したように、継ぎ手挿通孔11aは、多角形状(
図3では、六角形状であるがこれに限定されない)に形成することができる。なお、
図1では、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aは、背板に形成されている場合を示したが、左右側板の何れかに形成されていてもよい。
【0018】
消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aには、継ぎ手部材4が挿通状態に且つ消火栓格納箱1の壁板11に対して相対的に回動不能に配設されている。継ぎ手部材4は、両端が開口している筒状の継ぎ手部材本体40から形成されており、一端開口部が流入口42aに、他端開口部が流出口42bに形成されている。なお、
図3では、継ぎ手部材4をL字状に形成した場合を示したが、直状であってもよい。
【0019】
継ぎ手部材4における流出口42b側(流出側端部)の外周面には、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aの内周面に係止して継ぎ手部材4を継ぎ手挿通孔11aに挿通状態に且つ壁板11に対して相対的に回動不能に配設するための一定厚みを有し、外形形状が継ぎ手挿通孔11aの形状に合致した環状の係止部41が形成されている。係止部41は、環状に形成されている必要はなく、継ぎ手部材4の外周面にその周方向に断続的に設けられていてもよい。
【0020】
係止部41は、その外周面が消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aの内周面に当接する当接面41aに形成されている。係止部41は、その外形形状が消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aに嵌合可能に同一、同大の形状に形成されている。継ぎ手部材4を消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aに挿通させた状態において、係止部41の当接面41aが略全面的に継ぎ手挿通孔11aの内周面に当接して係止し、継ぎ手部材4は、消火栓格納箱1の壁板11に対して相対的に回動不能に配設された状態となる。なお、係止部41は、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aが形成されている壁板の厚みと同一又は僅かに薄い厚みに形成されている。
【0021】
継ぎ手部材4において、係止部41における流入口42a側の外周縁の全周には、消火栓格納箱1の壁板11に当接する壁板当接部44が、流入口42aの径方向に突出した状態に形成されている。なお、壁板当接部44は、係止部41の外周縁に断続的に形成されていてもよい。
【0022】
更に、継ぎ手部材4の継ぎ手部材本体40の外周面には、壁板当接部44から係止部41を挟んで所定間隔を存して楔部材支持部45が形成されており、楔部材支持部45と係止部41の対向面間には、後述する楔部材8が打ち込まれる楔部材打ち込み用溝部46が継ぎ手部材本体40の全周に亘って形成されている。
【0023】
楔部材8は、一定厚みを有する平板状の楔本体81と、この楔本体の一部をU字状に切り欠くことによって楔本体81の端縁に開口する切欠き部82とを有している。楔部材8の切欠き部82の上周縁(円弧状部分)は、楔部材打ち込み用溝部46の底部46aの形状に略合致した形状に形成されている。この楔部材8の上周縁が楔部材打ち込み用溝部46の底部46aに当接した状態となるまで、楔部材8が楔部材打ち込み用溝部46内に打ち込まれており、楔部材8と壁板当接部44との対向面によって、消火栓格納箱1の壁板11が安定的に挟持されて、継ぎ手部材4が、消火栓格納箱1の壁板11に挿通した状態に且つ壁板11に対して相対的に回動不能に安定的に固定されている(
図4参照)。
【0024】
このように、継ぎ手部材4の壁板当接部44と楔部材8とが消火栓格納箱1の壁板11に両側から面接触にて当接しており、楔部材8と継ぎ手部材4の壁板当接部44とによって、消火栓格納箱1の壁板11が強固に挟持されているので、継ぎ手部材4は、消火栓格納箱1の壁板11に正確な姿勢で安定的に配設、固定されている。
【0025】
継ぎ手部材4の流出側端部の外周面には消火栓弁用螺子部47が形成されている一方、消火栓弁7の流入口部の内周面にも雌螺子部が形成されており、消火栓弁7の雌螺子部を継ぎ手部材4の消火栓弁用螺子部47に螺合させることによって、消火栓弁7が継ぎ手部材4の流出口42bに水密的に螺合一体化されている。
【0026】
継ぎ手部材4の流入側端部には、汎用の接続部材を介して可撓性を有する分岐管6の先端部が水密状に接続一体化されている。給水管5と消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aとが予め想定していた位置から相対的に位置ずれを生じていても、分岐管6は可撓性を有するので、分岐管が必要に応じて撓むことによって位置ずれを吸収して、継ぎ手部材4と給水管5とが分岐管6を介して容易に接続される。
【0027】
そして、継ぎ手部材4は、その係止部41の当接面41aが消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aの内周面に当接した状態に回動不能に消火栓格納箱1の壁板11に取り付けられているので、分岐管6内への水の充満による分岐管6の内圧上昇に伴う分岐管6の妄動が生じたとしても、継ぎ手部材4が消火栓格納箱1の壁板11に対して相対変位することはなく、消火栓弁7は、消火栓格納箱1内において正確な取付位置を確実に維持することができる。
【0028】
上記では、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aを正面から見て多角形状に形成した場合を説明したが、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aは、その内周面に継ぎ手部材4の係止部41が係止し、継ぎ手部材4が継ぎ手挿通孔11aに挿通した状態にて壁板11に対して相対的に回動不能に配設可能に形成されておればよい。消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aは、多角形状に限定されることはなく、楕円形状であってもよいし、多角形のうちの一又は複数の辺が円弧状に形成されている形状、多角形の全ての辺が円弧状に形成されている形状(円弧状の辺が組み合わせられて形成された形状)であってもよい。消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aは、例えば、
図5及び
図6に示したように、真円形状の貫通孔の一部に内周面に開口する凹部11bを一個又は複数個形成してなる非円形状に形成されていてもよい。この場合、継ぎ手部材4の係止部41は、継ぎ手部材4の継ぎ手部材本体40の外周面に形成された一定厚みを有する円環状の基部41bとこの基部41bの外周面に突設された、一個又は複数個の係止凸部41cとから形成され、係止凸部41cの外周面は、継ぎ手挿通孔11aの凹部11bの内周面に当接する。継ぎ手部材4の係止部41の外形形状は、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aに嵌合可能に同一、同大の形状に形成されている。又、継ぎ手部材4の継ぎ手部材本体40の外周面に、円環状の基部41bを形成することなく、継ぎ手挿通孔11aの凹部に係止する係止凸部41cを係止部として形成してもよい。なお、
図3及び
図4に示した構造と同一構造部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
又、上記では、消火栓格納箱1の壁板11に継ぎ手部材4を固定するために楔部材8を用いたが、これに限定されることはなく、例えば、
図7に示したように、ナット体9を用いてもよい。なお、
図3及び
図4に示した継ぎ手部材4と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。この場合、継ぎ手部材4の継ぎ手部材本体40の外周面には、楔部材支持部45の代わりに、ナット体9を螺合させるための壁板固定用螺子部48が形成されている。なお、ナット体9を螺合するための壁板固定用螺子部48は、継ぎ手部材4の継ぎ手部材本体40の外径と同径であっても一回り大きな径に形成されていてもよい。
【0030】
そして、継ぎ手部材4を消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aに挿通させ、継ぎ手部材4の係止部41を継ぎ手挿通孔11aに嵌合させた状態とした上で、継ぎ手部材4の壁板固定用螺子部48にナット体9を螺合一体化させてあり、ナット体9と壁板当接部44との対向面によって、消火栓格納箱1の壁板11が安定的に挟持されて、継ぎ手部材4が、消火栓格納箱1の壁板11の継ぎ手挿通孔11aに挿通した状態に且つ壁板11に対して相対的に回動不能に安定的に固定されている。
【0031】
なお、上記では、継ぎ手部材4を消火栓格納箱1の壁板11に配設、固定するための固定手段(継ぎ手部材4の係止部41、壁板当接部44、楔部材支持部45及び壁板固定用螺子部48など)を継ぎ手部材4の流出側端部に形成した場合を説明したが、流入側端部に形成してもよい。
【0032】
次に、消火栓設備の施工方法について説明する。なお、下記の説明においては、楔部材8を用いる場合を例に挙げて説明する。建築物の内壁Wには、通路に面して消火栓格納箱1を収納できる矩形状の格納箱設置空間部W1が形成されている一方、この格納箱設置空間部W1を設けた内壁Wの後方には
図1に示すように、給水管5が垂直状に配管されていると共に、給水管5には上記格納箱設置空間部W1に向かって分岐する可撓性を有する分岐管6がその基端部を給水管5に連通するように接続している。なお、分岐管6の長さは、その先端部が格納箱設置空間部W1内に収納、設置される消火栓格納箱1の壁板11(例えば、背板、左右側板)に設けている継ぎ手挿通孔11aに挿通状態に配設、固定している継ぎ手部材4の流入口42aに接続可能な長さを有している。
【0033】
格納箱設置空間部W1内に消火栓格納箱1を収納、設置する前に、消火栓格納箱1の壁板11に継ぎ手部材4を配設、固定する。消火栓格納箱1の壁板11に継ぎ手部材4を配設、固定するには、先ず、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11a内に継ぎ手部材4を挿通し、継ぎ手部材4の係止部41を継ぎ手挿通孔11aに嵌めた状態とする。この状態において、継ぎ手部材4は、消火栓格納箱1の壁板11に対して相対的に回動不能となっている。
【0034】
しかる後、楔部材8を楔部材打ち込み用溝部46内に打ち込み、楔部材8と壁板当接部44との対向面によって、消火栓格納箱1の壁板11を挟持することによって、継ぎ手部材4を消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aに挿通し且つ壁板11に対して相対的に回動不能に安定的に且つ正確な位置に固定することができる。
【0035】
次に、内壁Wに設けている格納箱設置空間部W1に前方側から内部に消火用ホース等を収納している上記消火栓格納箱1を収納、設置した後、継ぎ手部材4の流入口42aに可撓性を有する分岐管6の先端部を連通状態に接続する。なお、消火栓格納箱1をその前端開口部に開閉自在に設けている扉1aが格納箱設置空間部W1の前端開口部から前方に臨むように格納箱設置空間部W1内に設置し、消火栓格納箱1の外周面と格納箱設置空間部W1との間の隙間に目地処理を施こす。
【0036】
消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11aに固定させている継ぎ手部材4の流入口42aと、給水管5とが相対的に位置ずれを生じている場合であっても、分岐管6は可撓性を有していることから、分岐管6を必要に応じて屈曲させることによって位置ずれを吸収して、分岐管6の先端部を継ぎ手部材4の流入口42aに容易に接続することができる。更に、分岐管6には水は充満されていないことから、分岐管6の柔軟性は維持されており、分岐管6を必要に応じて容易に屈曲させて、分岐管6と継ぎ手部材4との接続作業を行なうことができる。
【0037】
そして、継ぎ手部材4の流出側端部の外周面に形成されている消火栓弁用螺子部47に、消火栓弁7の流入口部の内周面に形成された雌螺子部を螺合させることによって、消火栓弁7を継ぎ手部材4の流出口42bに水密的に連通状態に一体化する。消火栓弁7の流出口に必要に応じて接続部71を介して消火用ホース2の基端を水密的に連通状態にて接続させて消火栓設備を施工することができる。
【0038】
上記では、楔部材8を用いた消火栓設備の施工方法を説明したが、ナット体9を用いる場合は、上述と同様の要領で、消火栓格納箱1の継ぎ手挿通孔11a内に継ぎ手部材4を挿通し、継ぎ手部材4の係止部41を継ぎ手挿通孔11aに嵌めた状態とした後、継ぎ手部材4の壁板固定用螺子部48にナット体9を螺合させて、ナット体9と壁板当接部44との対向面によって、消火栓格納箱1の壁板11を挟持して、継ぎ手部材4を消火栓格納箱1の壁板11の継ぎ手挿通孔11aに挿通した状態に且つ壁板11に対して相対的に回動不能に安定的に固定すればよい。その後の施工要領は、楔部材8を用いた場合と同様であるので説明を省略する。
【符号の説明】
【0039】
1 消火栓格納箱
11 壁板
11a 継ぎ手挿通孔
2 消火用ホース
3 ノズル
4 継ぎ手部材
40 継ぎ手部材本体
41 係止部
41a 当接面
41b 基部
41c 係止凸部
42a 流入口
42b 流出口
44 壁板当接部
45 楔部材支持部
46 楔部材打ち込み用溝部
48 壁板固定用螺子部
5 給水管
6 分岐管
7 消火栓弁
8 楔部材
9 ナット体
W1 格納箱設置空間部