(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074682
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20220511BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220511BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H05K9/00 A
H01L23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184937
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】服部 正
【テーマコード(参考)】
5E321
5E322
【Fターム(参考)】
5E321AA02
5E321GG01
5E321GG05
5E321GH03
5E322AA01
5E322AA11
5E322AB11
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5E322EA10
(57)【要約】
【課題】電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品とアンテナ部材とを備えた電子機器において、簡単な構造で、当該電子部品から放射される電磁ノイズがアンテナ部材に与える影響を抑制すると共に、当該電子部品を適切に放熱させる。
【解決手段】電子機器1は、電子部品2と空気流形成装置3とシールド部材5とアンテナ部材6とを備える。シールド部材5は、内部に電子部品2が配置され、特定方向Yの両側に開口する一対の開口部70を備えて、空気流Fの方向に沿う特定方向Yに延在する筒状空間7を形成する。アンテナ部材6は、特定方向Yにおける一対の開口部70の間であって、シールド部材5よりも直交方向Xの外側に配置される。筒状空間7は、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って特定方向Yに直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品と、前記電子部品を通る空気流を形成する空気流形成装置と、前記電子部品から放射される電磁ノイズを遮蔽するシールド部材と、電波を少なくとも受信するアンテナ部材と、を備えた電子機器であって、
前記空気流形成装置により形成される空気流の方向に沿う方向を特定方向とし、前記特定方向に直交する方向を直交方向として、
前記シールド部材は、前記特定方向に延在する筒状空間を形成し、前記特定方向の両側に開口するように一対の開口部を備え、
前記電子部品は、前記筒状空間の内部に配置され、
前記アンテナ部材は、前記特定方向における一対の前記開口部の間であって、前記シールド部材よりも前記直交方向の外側に配置され、
前記筒状空間は、一対の前記開口部のそれぞれへ向かうに従って前記特定方向に直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている、電子機器。
【請求項2】
前記電子部品の前記特定方向における配置領域が、前記筒状空間における前記特定方向の中央位置と重複するように配置され、
前記アンテナ部材の前記特定方向における配置領域が、前記筒状空間における前記特定方向の中央位置と重複するように配置されている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子部品に対して熱伝達可能に配置されたヒートシンクを更に備え、前記ヒートシンクが、前記筒状空間を形成する前記シールド部材の一部を構成している、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子部品は、基板の実装面に実装され、前記シールド部材は、前記実装面に取り付けられ、前記筒状空間は、前記シールド部材と前記基板とにより囲まれている、請求項1から3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子部品は、基板の実装面に実装され、前記シールド部材は、前記実装面に取り付けられ、
前記直交方向のうち前記実装面に沿う方向を幅方向として、
前記筒状空間は、一対の前記開口部のそれぞれへ向かうに従って前記幅方向の寸法が次第に大きくなるように形成されている、請求項1から4の何れか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品とアンテナ部材とを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-212832号公報には、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品であるCPU(34)等と、CPU(34)等が発生させる熱を拡散させる導電性熱拡散プレート(28)と、CPU(34)等が発生させる電磁ノイズを遮蔽するシールド構造体(60)と、アンテナ(30,31)を備えた電子機器(10)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。導電性熱拡散プレート(28)は、基板(26)の実装面(26c)の側に配置され、CPU(34)との間で熱伝達可能に接続される受熱板(50)と、受熱板(50)に接続されて密封された内部空間を作動流体が流れるヒートパイプ(48)と、ヒートパイプ(48)が受熱板(50)と反対側の端部で接続され、送風ファン上に積層されるファンプレート(52)とを備えて構成されている。シールド構造体(60)は、隙間を空けて断続的にCPU(34)等を囲むように基板(26)に立設された複数の導電性壁部(60)と、導電性熱拡散プレート(28)に取り付けられて導電性壁部(60)の端部と接触する導電性スポンジ状部材(64)とを備えて構成されている。導電性スポンジ状部材(64)は、互いに隣接する導電性壁部(60)の間の隙間においても途切れることなく連続して配置されている。アンテナ(30,31)は、CPU(34)等の電磁ノイズの放射源とは、導電性壁部(60)を挟んで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電子機器(10)では、複数の導電性壁部(60)が隙間を空けて配置されており、導電性スポンジ状部材(64)が導電性壁部(60)に接触しても、基板(26)の実装面(26c)の近傍には隙間が残る。このため、この隙間から、電磁ノイズが漏れる可能性があり、アンテナ(30,31)による通信に影響を与える可能性がある。また、上記の電子機器(10)では、CPU(34)等の電子部品の周囲に導電性壁部(60)が立設されており、通気性が悪い。このため、発熱源となるCPU(34)等の電子部品を空気の循環によって放熱させることが難しく、ヒートパイプ(48)を用いた液冷構造が必要となっている。
【0005】
上記背景に鑑みて、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品とアンテナ部材とを備えた電子機器において、簡単な構造で、当該電子部品から放射される電磁ノイズがアンテナ部材に与える影響を抑制すると共に、当該電子部品を適切に放熱させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた電子機器は、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品と、前記電子部品を通る空気流を形成する空気流形成装置と、前記電子部品から放射される電磁ノイズを遮蔽するシールド部材と、電波を少なくとも受信するアンテナ部材と、を備えた電子機器であって、前記空気流形成装置により形成される空気流の方向に沿う方向を特定方向とし、前記特定方向に直交する方向を直交方向として、前記シールド部材は、前記特定方向に延在する筒状空間を形成し、前記特定方向の両側に開口するように一対の開口部を備え、前記電子部品は、前記筒状空間の内部に配置され、前記アンテナ部材は、前記特定方向における一対の前記開口部の間であって、前記シールド部材よりも前記直交方向の外側に配置され、前記筒状空間は、一対の前記開口部のそれぞれへ向かうに従って前記特定方向に直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている。
【0007】
筒状空間の内部に電磁ノイズの放射源となる電子部品が配置されたシールド部材は、筒状空間が、一対の開口部のそれぞれへ向かうに従って特定方向に直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている。そのため、筒状空間の内部で発生した電磁ノイズは、筒状空間の形状により、概ね特定方向に沿った指向性を有して開口部から筒状空間の外部に放射される。アンテナ部材は、一対の開口部の間で、シールド部材よりも直交方向の外側に配置されるので、開口部から放射される電磁ノイズが到達しにくい。このため、電子部品から放射される電磁ノイズがアンテナ部材に与える影響が抑制される。また、一対の開口部は特定方向の両側において開口しているから、筒状空間は特定方向に沿った空気流が円滑に通り抜けることができる空間である。このため、筒状空間の中に配置された発熱源となる電子部品を空気流によって適切に放熱させることができる。このように、本構成によれば、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品とアンテナ部材とを備えた電子機器において、簡単な構造で、当該電子部品から放射される電磁ノイズがアンテナに与える影響を抑制すると共に、当該電子部品を適切に放熱させることができる。
【0008】
電子機器のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、電子機器の実施形態を図面に基づいて説明する。この電子機器1は、例えば車両に搭載されて、車載情報機器などの車載装置を制御するECU(Electronic Control Unit)として用いられる。当然ながら、電子機器1は、他の用途に用いられるものであってもよい。
【0011】
本実施形態では、電子機器1は、複数の半導体素子が1つの配線基板に集積されたマルチチップモジュールと称される半導体モジュール2(電子部品)を備えている。
図1から
図3に示すように、本実施形態では、半導体モジュール2は、メインモジュール基板21と、システムLSIモジュール22と、メモリ23と、不図示の受動素子(抵抗器やコンデンサなど)とを備えている。ここでは、システムLSIモジュール22も、マルチチップモジュールとして構成されており、モジュール基板25と、システムLSI24と、不図示の受動素子(抵抗器やコンデンサなど)とを備えている。尚、これは、例示であり、半導体モジュール2は、これよりも多くの半導体素子を備えて構成されていても良いし、これよりも少ない半導体素子を備えて構成されていてもよい。同様に、システムLSIモジュール22も、これよりも多くの半導体素子を備えて構成されていても良いし、これよりも少ない半導体素子を備えて構成されていてもよい。
【0012】
システムLSIモジュール22のモジュール基板25の実装面(おもて面)には、システムLSI24が実装され、モジュール基板25の裏面には、ボールグリッドアレイが形成されている。半導体モジュール2のメインモジュール基板21の実装面(おもて面)には、何れもボールドグリッドアレイを備えた表面実装部品である、システムLSIモジュール22と、2つのメモリ23(第1メモリ23a、第2メモリ23b)が実装されている。メインモジュール基板21の裏面にも、ボールグリッドアレイが形成されている。
【0013】
電子機器1は、主基板10の実装面である主基板第1面10aに半導体モジュール2と、不図示の電源回路や周辺回路等とを備えて構成されている。システムLSI24は、各種の演算処理を行うプロセッサであり、例えば、SoC(System on a Chip)として、グラフィックコントローラ、DSP(Digital Signal Processor)、CPUコアを含む複数の演算コア、通信インターフェイス回路等が集積された半導体素子である。また、メモリ23は、例えば、例えば、DDR3(Double Data Rate3)SDRAM、DDR4(Double Data Rate4)SDRAM等の、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。当然ながら、メモリ23として、フラッシュメモリやSRAM(Static RAM)等が用いられてもよい。
【0014】
高速な演算が求められるシステムLSI24は、一般的に数100MHz~数GHzの高速のシステムクロックにより動作する。また、システムLSI24が搭載されたシステムLSIモジュール22と協働するメモリ23もシステムクロックよりは低いものの、システムLSIモジュール22との間でデータを高速で授受する。このため、システムLSI24、システムLSIモジュール22、半導体モジュール2は、高速で動作する電子部品であり、一般的に多くの放射ノイズ(電磁ノイズ)を発生させると共に、多くの熱を発生させる。つまり、システムLSI24、システムLSIモジュール22、半導体モジュール2は、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品である。システムLSI24、システムLSIモジュール22は、半導体モジュール2に含まれるので、以下では、半導体モジュール2が、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品であるとして説明する。尚、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品は、このようなマルチチップモジュールに限らず、単一の電子部品(半導体素子)であってもよい。
【0015】
上述したように、電子機器1が、例えば車両に搭載されて、車載情報機器などの車載装置を制御するECUの場合、電子機器1にアンテナ部材6が搭載される場合がある。尚、アンテナ部材6により送受信される情報は、当該電子機器1において使用される情報であっても良いし、他の装置によって使用される情報であってもよい。例えば、アンテナ部材6は、GPS(Global Positioning System)等の測位情報を受信するアンテナや、携帯電話網のアンテナとすることができる。
【0016】
本実施形態では、第1アンテナ部材6aと、第2アンテナ部材6bとの2つのアンテナ部材6を備える形態を例示しているが、1つのアンテナ部材6が備えられる形態であってもよいし、3つ以上のアンテナ部材6が備えられる形態であってもよい。また、2つ以上のアンテナ部材6が備えられる場合、同じ機能のアンテナ部材6が複数備えられる形態であっても良いし、それぞれ異なる機能のアンテナ部材6が備えられる形態であってもよい。
【0017】
同じ主基板10に半導体モジュール2と、アンテナ部材6とが搭載される場合、電磁ノイズの放射源となる半導体モジュール2からの電磁ノイズがアンテナ部材6の送受信に影響を与える可能性がある。例えば、アンテナ部材6が、GPS等の測位情報を受信するアンテナの場合、測位情報に誤りが発生し、ナビゲーションシステム等の動作に影響する可能性がある。
【0018】
この対策として、半導体モジュール2の周囲に電磁ノイズを遮蔽するためのシールドを設置することが考えられる。但し、上述したように、半導体モジュール2は発熱源でもある。このため、半導体モジュール2の周囲にシールドを設けると、半導体モジュール2の放熱を妨げ、熱を籠もらせてしまって、半導体モジュール2の動作不良や故障に繋がる可能性がある。
【0019】
電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品(半導体モジュール2)とアンテナ部材6とを備えた本実施形態の電子機器1は、簡単な構造で、当該電子部品から放射される電磁ノイズがアンテナ部材6に与える影響を抑制すると共に、当該電子部品を適切に放熱させる構造を備えている。以下、その構造について説明する。
【0020】
図1から
図3等に示すように、電子機器1は、電磁ノイズの放射源及び発熱源となる電子部品(半導体モジュール2)と、半導体モジュール2を通る空気流Fを形成する空気流形成装置(ファン3)と、半導体モジュール2から放射される電磁ノイズNを遮蔽するシールド部材5と、電波を少なくとも受信するアンテナ部材6とを備えている。ここで、半導体モジュール2(電子部品)を通る空気流Fとは、より具体的には、当該半導体モジュール2(電子部品)の外面に接するように通過する空気流Fのことである。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、空気流形成装置としてファン3を例示する。ファン3は、形成される空気流Fの方向における下流側に配置されている。ここで、ファン3により形成される空気流Fの方向に沿う方向を特定方向Yとし、特定方向Yにおける一方側を特定方向第1側Y1、他方側を特定方向第2側Y2と称する。本実施形態では、特定方向第1側Y1は、空気流Fの上流側であり、特定方向第2側Y2は、空気流Fの下流側である。ファン3は特定方向第2側Y2(下流側)に配置されて、特定方向第1側Y1から特定方向第2側Y2への空気流Fを発生させる吸い出し型のファンである。尚、ファン3を空気流Fの方向における上流側に配置しても良い。また本実施形態では、空気流形成装置としてファン3を例示したが、例えば特定方向第1側Y1の気圧を上げ、特定方向第2側Y2の気圧を下げて気圧の差を生じさせて、特定方向第1側Y1から特定方向第2側Y2へ向かう空気流Fを発生させる気圧調整装置を空気流形成装置としてもよい。
【0022】
シールド部材5は、特定方向Yの両側に開口するように一対の開口部70(第1開口部71、第2開口部72)を備えて、特定方向Yに延在する筒状空間7を形成する。第1開口部71は、特定方向第1側Y1において開口する開口部70であり、第2開口部72は、特定方向第2側Y2において開口する開口部70である。そして、電子部品としての半導体モジュール2は、この筒状空間7の内部に配置されている。シールド部材5は、
図1に示すように、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って特定方向Yに直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている。本例では、シールド部材5は筒状空間7が特定方向Yの両側に開いたホーン型に形成されている。
【0023】
ここで、特定方向Yに直交する方向を直交方向Xとする。また、直交方向Xのうち、主基板10の実装面である主基板第1面10aに沿う方向を幅方向Hとする。アンテナ部材6は、特定方向Yにおける一対の開口部70の間であって、シールド部材5よりも直交方向Xの外側に配置されている。本実施形態では、アンテナ部材6は、主基板第1面10aに実装されている、或いは、主基板10の配線パターンを用いて形成されており、アンテナ部材6は主基板10上に配置されている。このため、アンテナ部材6は、特定方向Yにおける一対の開口部70の間であって、シールド部材5よりも幅方向Hの外側に配置されているということもできる。
【0024】
上述したように、筒状空間7の内部に電磁ノイズNの放射源となる半導体モジュール2が配置されたシールド部材5は、筒状空間7が、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って特定方向Yに直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている。つまり、筒状空間7は、開口部70の側が特定方向Yにおける中央部に比べて開いたホーン形状に形成されている。筒状空間7の内部で発生した電磁ノイズNは、
図1に示すように、ホーン形状の筒状空間7により概ね特定方向Yに沿った指向性を有して開口部70から筒状空間7の外部に放射される。アンテナ部材6は、一対の開口部70の間で、シールド部材5よりも直交方向Xの外側に配置されるので、開口部70から放射される電磁ノイズNが到達しにくい。このため、半導体モジュール2から放射される電磁ノイズNがアンテナ部材6に与える影響が抑制される。また、一対の開口部70は特定方向Yの両側において開口しているから、筒状空間7は特定方向Yに沿った空気流Fが円滑に通り抜けることができる空間である。このため、筒状空間7の中に配置された発熱源となる半導体モジュール2を空気流Fによって適切に放熱させることができる。
【0025】
尚、
図1等に示すように、本実施形態では、滑らかな曲線状に幅方向Hの寸法が大きくなる形態を例示しているが、直線状に幅方向Hの寸法が大きくなってもよい。また、曲線状及び直線状の何れであっても、段階的に(階段状に)、幅方向Hの寸法が大きくなってもよい。尚、滑らかな曲線状に幅方向Hの寸法が大きくなる場合、指数関数で示される曲線状であると電磁ノイズNに対して適切な指向性を付与できて好適である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、半導体モジュール2は、主基板10の実装面である主基板第1面10aに実装され、シールド部材5も、主基板第1面10aに取り付けられている。上述したように、シールド部材5は、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って特定方向Yに直交する断面積が次第に大きくなるように形成されている。本実施形態では、筒状空間7は、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って幅方向Hの寸法が次第に大きくなるように形成されている。即ち、主基板第1面10aに沿った寸法が次第に大きくなるように形成されている。
【0027】
上述したように、アンテナ部材6は、シールド部材5に対して直交方向Xにおける外側に配置されている。半導体モジュール2から放射される電磁ノイズNの影響を受けるようなアンテナ部材6は、主基板10に設置されていることも多い。シールド部材5が主基板第1面10aに取り付けられていると、アンテナ部材6は、シールド部材5に対して幅方向Hにおける外側に配置されていることになる。筒状空間7は、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って幅方向Hの寸法が次第に大きくなるように形成されているので、筒状空間7によって与えられた指向性により、電磁ノイズNの幅方向Hへの放射は抑制される。従って、アンテナ部材6に到達する電磁ノイズNが抑制される。
【0028】
ここで、主基板第1面10a(実装面)に直交する方向を実装面直交方向Zとする。
図2及び
図3等に示すように、本実施形態では、筒状空間7は、特定方向Yに沿って実装面直交方向Zの寸法が一定であるように形成されている。つまり、筒状空間7は、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って幅方向Hの寸法が次第に大きくなるように形成されている一方で、実装面直交方向Zの寸法は一定に形成されている。このような形状とすることにより、シールド部材5の形状を、主基板第1面10a(実装面)に取り付けることが容易な形状とすることができる。なお、筒状空間7は、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って幅方向H及び実装面直交方向Zの寸法が次第に大きくなるように形成されていてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、筒状空間7は、シールド部材5のみによって形成されるのではなく、主基板10とシールド部材5とによって形成されている。即ち、半導体モジュール2は、主基板10の主基板第1面10aに実装され、シールド部材5は、主基板第1面10aに取り付けられ、筒状空間7は、シールド部材5と主基板10とにより囲まれている。
【0030】
電磁ノイズNの発生源となる半導体モジュール2は、筒状空間7の内部に配置される。また、一般的に電子部品である半導体モジュール2は、固定及び配線のために配線基板に実装される。主基板10が筒状空間7を形成する壁の1つとなることで、半導体モジュール2を適切に筒状空間7の内部に配置することができる。また、電磁ノイズNの発生源である半導体モジュール2が実装される主基板第1面10aにシールド部材5を取り付けることで、電磁ノイズNに対して適切に指向性を与え、アンテナ部材6への電磁ノイズNの影響を抑制することができる。
【0031】
シールド部材5は、半導体モジュール2が発生させる電磁ノイズNに対して特定方向Yに沿った指向性を与え、特定方向Yに直交する直交方向Xへの電磁ノイズNの伝搬を抑制する。即ち、シールド部材5によって、半導体モジュール2から見て直交方向Xへの電磁ノイズNの伝搬が抑制される。従って、電磁ノイズNの影響を避けたいアンテナ部材6は、半導体モジュール2から見て直交方向Xに配置されることが望ましい。つまり、アンテナ部材6の特定方向Yにおける配置領域は、半導体モジュール2の特定方向Yにおける配置領域と重複していると好適である。
【0032】
また、ノイズ対策の観点からは、第1開口部71から放射される電磁ノイズNの強さと、第2開口部72から放射される電磁ノイズNの強さとは、均等であることが望ましい。このため、電磁ノイズNの放射源である半導体モジュール2は、第1開口部71と第2開口部72の双方から均等な位置に配置されることが好ましい。第1開口部71と第2開口部72とは、筒状空間7の特定方向Yにおける両端に形成されているから、第1開口部71と第2開口部72の双方から均等な位置は、筒状空間7における特定方向Yの中央位置Cに相当する。
【0033】
即ち、
図2及び
図3に示すように、半導体モジュール2の特定方向Yにおける配置領域が、筒状空間7における特定方向Yの中央位置Cと重複するように配置され、アンテナ部材6の特定方向Yにおける配置領域が、筒状空間7における特定方向Yの中央位置Cと重複するように配置されていると好適である。
【0034】
電磁ノイズNの放射源である半導体モジュール2が、一対の開口部70の双方から均等な位置に配置されることで、2つの開口部70から放射される電磁ノイズNの強さが均等に近くなり、電子機器1のノイズ対策が容易となる。また、特定方向Yに沿った方向への指向性を与えられる電磁ノイズNは、放射源となる半導体モジュール2の直交方向への放射量や放射強度が抑制される。アンテナ部材6と半導体モジュール2との特定方向Yにおける配置領域が共に中央位置Cに重複することで、アンテナ部材6への電磁ノイズNの影響が低減される。
【0035】
尚、当然ながら、主基板10への半導体モジュール2の実装、主基板10へのアンテナ部材6の配置に際しては、主基板10の他の実装部品との関係により、それらの配置位置が決定される。従って、半導体モジュール2の特定方向Yにおける配置領域が、筒状空間7における特定方向Yの中央位置Cと重複せずに配置されることを妨げるものではない。同様に、アンテナ部材6の特定方向Yにおける配置領域が、筒状空間7における特定方向Yの中央位置Cと重複せずに配置されることを妨げるものではない。また、アンテナ部材6と半導体モジュール2との特定方向Yにおける配置領域が重複していなくてもよい。上述したように、シールド部材5によって半導体モジュール2から放射される電磁ノイズNは、概ね特定方向Yに沿った方向への指向性を持つ。従って、アンテナ部材6がシールド部材5の直交方向Xに配置されれば、アンテナ部材6への電磁ノイズNの影響は低減される。
【0036】
上述したように、筒状空間7は、特定方向Yの両側における開口部70で開口しており、空気流Fは、特定方向Yに沿って円滑に筒状空間7を通り抜けることができる。この空気流Fによって、半導体モジュール2を放熱させることができる。しかし、半導体モジュール2の発熱量が大きいような場合には、さらに、ヒートシンク4を介して放熱させてもよい。本実施形態では、電子機器1は、半導体モジュール2に対して熱伝達可能に配置されたヒートシンク4をさらに備えた構成を例示している。
【0037】
図2及び
図3に示すように、ヒートシンク4は、半導体モジュール2が実装される主基板第1面10aに対向する側から半導体モジュール2を構成する各素子(システムLSI24、メモリ23)に当接するように、配置されている。ヒートシンク4は、主基板第1面10aに対向する方向に突出した隆起部41と、隆起部41とは反対側に突出した複数のフィン44とを備えて構成されている。複数のフィン44は、1枚のフィン44が特定方向Yに沿って延在し、直交方向Xに沿って複数のフィン44が平行して並ぶ状態で配置されている。ヒートシンク4の隆起部41は半導体モジュール2に接触させるために、筒状空間7の内部に配置されているが、フィン44は筒状空間7の外側に配置されている。
【0038】
図2に示すように、ファン3は、筒状空間7の内部だけで空気流Fを発生させるのではなく、筒状空間7の外部でも空気流Fを発生させる。筒状空間7の外部の空気流Fは、
図2に示すように、フィン44に沿って特定方向Yを流れる。半導体モジュール2によって加熱されたフィン44は、この空気流Fによって冷却される。このように、ヒートシンク4を備えることで、半導体モジュール2を更に効率的に放熱させることができる。
【0039】
ヒートシンク4は、熱抵抗が小さい素材、例えばアルミニウムなどの金属によって構成されていると好適である。また、シールド部材5も、導電性の金属によって構成される。つまり、ヒートシンク4もシールド部材5も金属によって構成される。従って、電子機器1は、半導体モジュール2に対して熱伝達可能に配置されたヒートシンク4を更に備え、ヒートシンク4が、筒状空間7を形成するシールド部材5の一部を構成していると好適である。シールド部材5とヒートシンク4とが、一部を共用して構成されることで、電子機器1の部品コストを低減することができる。
【0040】
上述したように、シールド部材5は、主基板10の主基板第1面10aに取り付けられる。一般的にシールド部材5は板状でその板厚は薄いため、ネジなどの締結部材を取り付けにくい場合がある。一方、ヒートシンク4は熱容量を確保するために、一般的にはシールド部材5の厚みよりも大きい厚みを有することが多い。このため、本実施形態では、
図4に示すように、ヒートシンク4が配置されて厚みが増した箇所において、締結部材9を用いてシールド部材5が主基板10に取り付けられる。締結部材9は、例えば雄ネジであり、主基板第1面10a法面である主基板第2面10bの側から主基板10を挟んで、シールド部材5に螺合する。
【0041】
さらに、シールド部材5は、例えば、それぞれの開口部70の幅方向Hにおける両端部において、主基板10と接する箇所に、実装面直交方向Zに延在する突出部(不図示)を備えていてもよい。主基板10においてこの突出部に対応する位置に、貫通孔を設け、主基板第1面10aの側から主基板第2面10bの側に当該突出部を貫通させて、突出部を主基板第2面10bの側で固定することができる。例えば、突出部を主基板第2面10bに沿うように折り曲げても良いし、半田等によって突出部を主基板第2面10bに溶接してもよい。また、折り曲げた状態で、半田等によって溶接してもよい。このように、開口部70の幅方向Hにおける両端部においても、シールド部材5が固定されると、中央部のみでシールド部材5が固定される場合に比べて、シールド部材5を強固に主基板10に取り付けることができる。
【0042】
図5は、本実施形態の電子機器1に対応する第1比較例の電子機器1Bを示しており、
図6は、第2比較例の電子機器1Cを示している。第1比較例の電子機器1Bは、シールド部材5を備えていない。このため、半導体モジュール2が放射する電磁ノイズNが、直交方向Xからもアンテナ部材6に放射され、アンテナ部材6による送受信に影響する可能性がある。本実施形態のように、シールド部材5を備えることによって、電磁ノイズNがアンテナ部材6に与える影響が抑制される。
【0043】
第2比較例の電子機器1Cは、比較例のシールド部材5Cを備えている点で、第1比較例の電子機器1Bとは異なる。しかし、比較例のシールド部材5Cは、本実施形態のシールド部材5とは異なり、筒状空間7の特定方向Yに直交する断面積が、特定方向Yにおける何れの箇所においてもほぼ同じである。つまり、本実施形態の筒状空間7のように、一対の開口部70のそれぞれへ向かうに従って特定方向Yに直交する断面積が次第に大きくなるように形成されてはいない。
【0044】
第2比較例の電子機器1Cでは、半導体モジュール2から直接、直交方向Xに放射される電磁ノイズNによりアンテナ部材6が影響を受ける第1比較例の電子機器1Bとは異なり、直交方向Xへの直接の放射は比較例のシールド部材5Cによって抑制される。しかし、本実施形態のシールド部材5のように、電磁ノイズNが特定方向Yに沿った指向性を有する(例えばホーン型の)形状ではないため、電磁ノイズNには指向性が与えられない。このため、電磁波の回折作用によって、アンテナ部材6の方向へ回り込む電磁ノイズNが、本実施形態の比べて多くなる。その結果、第2比較例の電子機器1Cでは、比較例のシールド部材5Cを設けていてもその効果が限定的となる可能性がある。
【0045】
これに比べて、本実施形態の電子機器1では、上述したように、アンテナ部材6への電磁ノイズNの影響を適切に低減することができる。以上、説明したように、電磁ノイズNの放射源及び発熱源となる電子部品(例えば半導体モジュール2)とアンテナ部材6とを備えた本実施形態の電子機器1は、簡単な構造で、当該電子部品から放射される電磁ノイズNがアンテナ部材6に与える影響を抑制すると共に、当該電子部品を適切に放熱させることができる。
【0046】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0047】
(1)上記においては、電子機器1が、半導体モジュール2(電子部品)に対して熱伝達可能に配置されたヒートシンク4を備えている形態を例示して説明した。しかし、空気流Fによって放熱性が確保できるような場合などでは、電子機器1は、ヒートシンク4を備えずに構成されていてもよい。その場合、筒状空間7は、主基板10とシールド部材5とによって形成されていると好適である。
【0048】
(2)上記においては、主基板10の主基板第1面10a(主基板10の実装面)にシールド部材5が取り付けられ、筒状空間7が、シールド部材5と主基板10とにより囲まれて形成されている形態を例示して説明した。しかし、この形態に限らず、主基板10の全体が、シールド部材5によって形成された筒状空間7の内部に配置されていても良い。この場合、直交方向Xの全周囲がシールド部材5によって囲まれていても良い。例えば、不図示の筐体等にシールド部材5が取り付けられ、シールド部材5によって形成される筒状空間7の内部に主基板10が配置される形態とすることができる。この場合、アンテナ部材6は、例えば、シールド部材5の直交方向Xの外壁と、筐体との間に配置されると好適である。
【符号の説明】
【0049】
1:電子機器、2:半導体モジュール(電子部品)、3:ファン(空気流形成装置)、4:ヒートシンク、5:シールド部材、6:アンテナ部材、7:筒状空間、10:主基板(基板)、10a:主基板第1面(実装面)、70:開口部、C:中央位置、F:空気流、H:幅方向、N:電磁ノイズ、X:直交方向、Y:特定方向