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特開2022-74688レジンパターン対応の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材
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  • 特開-レジンパターン対応の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074688
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】レジンパターン対応の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/90 20200101AFI20220511BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K6/90
A61C13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184945
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】河野 顕志
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏夫
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA13
4C089BA03
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA14
4C089BA16
4C089CA02
4C089CA03
4C089CA07
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、金属の鋳造に使用できるりん酸塩系埋没材において、レジンパターンを用い、急速加熱で鋳造をした場合に鋳造体の表面性状が滑沢であり、バリを抑制するりん酸塩系埋没材を提供することである。
【解決手段】粉材に(a)酸化マグネシウム 5~20wt%、(b)第一りん酸アンモニウム 8~25wt%を含み、液材に(c)アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液を含むことを特徴とするレジンパターン対応の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材を用いることで課題が解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉材に(a)酸化マグネシウム 5~20wt%、(b)第一りん酸アンモニウム 8~25wt%を含み、
液材に(c) アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液を含むことを特徴とするレジンパターン対応の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材。
【請求項2】
請求項1記載の粉材にケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、ムライト、アルミナ、非晶質シリカのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材。
【請求項3】
前記(c) アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液中における、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)が0.001~0.30wt%あることを特徴とする請求項1又は2記載の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材。
【請求項4】
前記(c)アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液のpHが8.0~11.0であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材。
【請求項5】
前記レジンパターンが光造形方式又はインクジェット方式の3Dプリンターにより作製されたものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科分野に用いられるレジンパターン対応の急速加熱型りん酸塩系埋没材に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科の欠損補綴修復で間接的に金属の補綴装置を作製する場合、ロストワックス法と呼ばれる方法が主に用いられてきており、この方法を説明すると次の通りとなる。
歯科の欠損形態を印象材と呼ばれる型材にて欠損型を取り、そこに石膏などの模型材を注入することにより、患者の欠損形態を口腔外にて再現した模型を作製する。次に、この模型にワックスを用いて修復されるべき形の形態を再現したワックスパターンを作製する。得られたワックスパターンの周囲に耐火材からなる埋没材を流し込んで硬化させ、鋳型を形成する。その後、鋳型を加熱することでワックスパターンを焼却し、形成した鋳型の空間に溶融した金属を注ぎ込む。さらに冷却後、鋳型を壊して鋳造体を取り出すことで目的とする金属の補綴装置を得る。このロストワックス法により歯科の金合金、金銀パラジウム合金、陶材焼き付け用合金を作製することが一般的である。
このりん酸塩系埋没材の組成は、粉材中に結合材として酸化マグネシウム及び第一りん酸アンモニウムを、耐火材(骨材)としてシリカ、アルミナ及びケイ酸ジルコニウム等を含み、専用液にコロイダルシリカを含む液材からなる。それらを練和・硬化させることで鋳型が作製できる。専用液のコロイダルシリカを含む水溶液の濃度を調節することにより、様々な金属の鋳造収縮に見合った総合膨張(硬化膨張と熱膨張の合計値)を得ることができる。そのため、この埋没材は、たとえば、金を主体とするプレシャス合金からニッケル、コバルトを主体とするノンプレシャス合金まで幅広く使用できる。
【0003】
りん酸塩系埋没材の液材であるコロイダルシリカを含む水溶液は、粉材と練和して、硬化させる。この際、コロイダルシリカの粒子径及び濃度などにより硬化膨張の値が変化する。さらに埋没材はロストワックス法で使用される際に、800~1000℃まで昇温させるため、熱膨張も発生する。この硬化膨張と熱膨張の合計値が金属の凝固収縮や熱収縮を補填し、補綴装置の適合を調整する。
【0004】
一方、りん酸塩系埋没材の液材として使用されるコロイダルシリカを含む水溶液は、一般的にアルカリ性のものが多く、pHが8.0~11.0のものが使用される。pHを変化させることにより埋没材の硬化時間なども調製できる。このコロイダルシリカはSiO2の非晶質成分からなり、平均粒子径は4~100nmのものが一般的に用いられる。
【0005】
近年、3Dプリンターによるデジタル技術の発達は著しく、歯科領域においても新しい技術が応用され、歯科技工作業の効率化を可能とする様々な歯科技工用デジタルシステムが開発されている。3Dプリンターには、光造形方式、インクジェット方式、バインダージェット方式及び熱溶解積層方式など、いくつかの方式が知られている。鋳造において、ワックスパターンに変わり、3Dプリンターにより作製したレジンパターンを使用する方法がある。ワックスパターン同様に、このレジンパターンの周囲に耐火材からなる埋没材を流し込んで硬化させ、鋳型を形成する。その後、鋳型を加熱することでレジンパターンを焼却して、鋳造を行い、金属の補綴装置を得る。
【0006】
歯科において、レジンパターンとして使用されている3Dプリンターの方式は、光造形方式及びインクジェット方式である。光造形方式は、インクトレー内に満たした液状の光硬化性樹脂組成物に光(紫外線等)を照射することで、樹脂を少しずつ硬化させて、所望の形状のレジンパターンを作製する方法である。光造形方式には、ステレオリソグラフィ(SLA)方式とデジタルライトプロセッシング(DLP)方式がある。一方、インクジェット方式は、液状の光硬化性樹脂をノズルの先端から噴射し、そこに光(紫外線等)を照射することで樹脂を少しずつ硬化させて、所望の形状のレジンパターンを作製する方法である。
【0007】
近年では、作業時間の短縮のため、パターンの焼却における加熱方法が電気炉の温度を室温から徐々に目的の温度まで昇温させる「ノーマル加熱」から、目的の温度の炉にいきなり投入する「急速加熱」が主流となっている。したがって、埋没材は、急速加熱において爆発やクラックなどが発生しないことが求められる。しかし、レジンパターンは、ワックスパターンと異なり、樹脂であるため、焼却時において急激に膨張した後、気体となり焼却される。このため、急速加熱において、レジンパターンを使用すると埋没材が爆発して鋳造できない場合や、発生したクラックにより鋳造体にバリ(鋳造体の周囲に部分的、あるいは全体にわたって発生するひれ状のもの)が発生する場合がある。
【0008】
特許文献1には、プレス用の急速加熱型りん酸塩系埋没材の技術が開示されている。具体的には、りん酸塩系埋没材の粉材の重量比を規定し、かつ液材にカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液を使用することで、二ケイ酸リチウムなどのプレスセラミックスの表面性状を滑沢にする技術が開示されている。しかし、この技術では、ワックスパターンを使用した場合のプレスセラミックスの表面性状は滑沢になるものの、レジンパターンを使用した場合の鋳造体の表面性状の向上やバリの抑制に有効かどうかまでは言及されていない。
特許文献2には、レジンパターン対応の鋳造用の急速加熱型石膏系埋没材の技術が開示されている。具体的には、ケイ酸ジルコニウム及びアルミナから選ばれる熱膨張係数の低い耐火材を含むことで鋳造体の表面性状を滑沢にし、バリを抑制する技術が開示されている。しかし、この技術においても、鋳造体の表面性状やバリの抑制には不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-193320号公報
【特許文献2】特許第6082388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属の鋳造に使用できるりん酸塩系埋没材において、レジンパターンを用い、急速加熱で鋳造した場合に鋳造体の表面性状が滑沢であり、バリを抑制するりん酸塩系埋没材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題について本発明者らは鋭意研究の結果、本発明に到ることができた。
即ち、本発明は、
粉材に(a)酸化マグネシウム 5~20wt%、(b)第一りん酸アンモニウム 8~25wt%を含み、
液材に(c) アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液を含むことを特徴とするレジンパターン対応の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材である。
【0012】
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材は、粉材にケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、ムライト、アルミナ、非晶質シリカのうち少なくとも一つを含むことである。
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材は、(c) アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液中における、アルカリ金属の含有量(アルカリ金属酸化物の含有量)が0.001~0.30wt%以下である。
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材は、(c) アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液のpHが8.0~11.0である。
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材に使用するレジンパターンは、光造形方式又はインクジェット方式の3Dプリンターにより作製されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は、従来のワックスパターンを用いた場合においては勿論、ワックスパターンとは消失温度や消失挙動が異なるレジンパターンを用いて急速加熱で焼却した場合にも埋没材の爆発やクラックが発生せず、鋳造体の表面性状が滑沢であり、バリを抑制することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における鋳造体の写真
図2】比較例7における鋳造体の写真
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に例示されるものに関して特に限定されるものではない。
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材は、粉材と液材とにより構成される。
粉材は、(a)酸化マグネシウム及び(b)第一りん酸アンモニウムを含む。
粉材に含まれる(a)酸化マグネシウムの種類は特に制限はないが、純度が高い方が好ましく、また微細化してある方が好ましい。
(a)酸化マグネシウムの平均粒径は、特に制限はないが、平均粒径は15~40μmであることが好ましく、20~30μmであることが更に好ましい。また、酸化マグネシウムの粒度分布において100μm以上の粒子が1wt%以内であることが好ましく、更に好ましくは100μm以上の粒子を含まないことである。さらに複数の平均粒径を持つものを組み合わせても良い。複数の平均粒径を持つものを組み合わせた場合、組み合わせた後の平均粒径が15~40μmであることが好ましい。
本発明のりん酸塩系埋没材において本発明の効果を発現させるためには、酸化マグネシウムの配合量は、りん酸塩系埋没材の粉材に対して5~20wt%の範囲でなければならない。5wt%未満の場合、十分な鋳型の強度が得られず、鋳型材としては不十分なものとなり、20wt%越える場合の骨材の配合量が少なくなり、十分な熱膨張が得られない場合が生じうる。埋没材の熱膨張は、0.5%以上あることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材を構成する粉材に含まれる(b)第1りん酸アンモニウムは、可溶性であれば特に制限なく、いずれの平均粒子径や形状であっても何等問題なく用いることができる。
しかし、第一りん酸アンモニウムは、埋没材中で結合材として働くために最大粒径は小さいことが好ましい。鋳造した金属の表面の滑沢性を維持するためには60μm以上の粒径の粒子が無いことが好ましく、そしてさらに60μm以下の粒径の内、25μm以下の粒径の粒子が10~45wt%であることがより好ましく、20~35wt%であることが更に好ましい。
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材において本発明の効果を発現させるために、第一りん酸アンモニウムの配合量は、りん酸塩系埋没材の粉材に対して、8~25wt%の範囲でなければならない。配合量が8wt%未満の場合、十分な鋳型の強度が得られず、鋳型材としては不十分なものとなり、25wt%越える場合、鋳造体の表面性状が粗造になったり、十分な熱膨張が得られないという問題が生じうる。埋没材の熱膨張は、0.5%以上あることが好ましい。
【0017】
次に、本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材を構成する粉材に含まれる(a)酸化マグネシウムと(b)第1りん酸アンモニウムとの配合比であるが、重量比で(a)/(b)=0.3~0.8であることが好ましく、さらに好ましくは、(a)/(b)=0.4~0.6である。
【0018】
次に本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材を構成する粉材は、耐火材を含む。耐火材としては、歯科鋳造用埋没材に使用されている耐火材を何等制限なく用いることができる。それらを具体的に例示すると石英、クリストバライト、ケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、ムライト、アルミナ、非晶質シリカ、カルシア、イットリアなどが挙げられる。本発明では、石英やクリストバライトに加えて、熱膨張係数の低いケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、ムライト、アルミナ、非晶質シリカのうち少なくとも一つを含むことが好ましい。埋没材の流動性を調整するために骨材は、5~300μmの平均粒子径のものを組み合わせて使用できる。
【0019】
本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材において本発明の効果を発現させるためのこれらの耐火材の配合量は特に制限はないが、熱膨張係数の低い耐火材であるケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、ムライト、アルミナ、非晶質シリカの配合量は、5~25wt%が好ましい。配合量が5wt%未満の場合、埋没材に割れが生じる可能性があり、25wt%越える場合、十分な熱膨張が得られない場合が生じうる。埋没材の熱膨張は、0.5%以上あることが好ましい。
【0020】
次に本発明の歯科用急速加熱型りん酸塩系埋没材を構成する液材に含まれる(c)アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液について説明する。カチオン処理には、大きく分けてカチオン性を持つ金属元素で処理する方法とカチオン性を持つシランカップリング材で処理する方法とがある。本発明の効果を発揮するためには、コロイダルシリカの表面がアルミナ化合物でカチオン処理されていることが必須となる。コロイダルシリカ以外に水溶性金属塩を含んでも良い。例えば塩化ナトリウムなどが挙げられる。
まず、コロイダルシリカ自体の製造方法には大きく分けて2つの方法がある。水ガラス法とアルコキシド法の2つの方法が主流である。
水ガラス法は、ケイ酸ソーダをイオン交換し、活性ケイ酸を調製後、これを加熱下において、アルカリ金属化合物でpH調整するものである。
【0021】
アルコキシド法は、いわゆるStoeber法であり、ケイ酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を塩基性触媒の存在下で加水分解すると同時に縮合・粒子成長を行いながらシリカ粒子を製造する。この方法によれば、ナノスケールのコロイド粒子からミクロンスケールのコロイド粒子まで調製することが可能である。例えば、ケイ酸メチル(テトラメトキシシラン)又はケイ酸メチルとメタノールとの混合物を水、メタノール及びアンモニア又はアンモニアとアンモニウム塩からなる混合溶媒中に攪拌下に10~40分間で滴下し、ケイ酸メチルと水とを反応させて10~200nmの短径と1.4~2.2の長径/短径比を有するコロイダルシリカを生成することができる。
【0022】
まず、アルミナ化合物でカチオン処理する方法を説明する。これは水ガラス法でコロイダルシリカを作製する際に、予めアルミナ化合物を混合しておき、ケイ酸ソーダをイオン交換し、活性ケイ酸を調製後、これを加熱下において、アルカリ金属化合物でpH調整するものである。具体的には、アルミナ化合物でコロイダルシリカの表面をコーティングしたものが使用できる。コーティング処理する方法は特に限定されるものではないが、水溶液中で混合反応させる方法が用いられ、アルミナ化合物を、コロイダルシリカ水溶液に添加し、加温、攪拌することにより得られる。
アルミナ化合物として、具体的には、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどを好ましく使用することが出来る。
なお、アルカリ金属化合物を加えて、pHを8.0~11.0に調製することが好ましい。これらのアルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適に用いることができる。
金属元素で処理したカチオン性コロイダルシリカの固形分濃度は15~40wt%が好ましく、20~30wt%が特に好ましい。また、このコロイダルシリカの1次粒子径も特に制限はないが、5~30nmが好ましく、8~20nmが特に好ましい。
【0023】
また、もう1つのコロイダルシリカのカチオン処理の方法として、シランカップリング材を用いて、コロイダルシリカからカチオン性のコロイダルシリカを作製する方法がある。この方法は、予め水ガラス法やアルコキシド法にてコロイダルシリカを含む水溶液を作製してからシランカップリング材で表面処理するものである。また、市販されているコロイダルシリカを含む水溶液を用いても何ら問題ない。本発明で好適なコロイダルシリカを含む水溶液としては固形分濃度は、15~40wt%が好ましく、20~30wt%が特に好ましい。また、このコロイダルシリカの1次粒子径も特に制限はないが、5~30nmが好ましく、8~20nmが特に好ましい。
シランカップリング材にてカチオン性のコロイダルシリカを含む水溶液を製造する方法としては、コロイダルシリカ水溶液にシランカップリング材の処理量を添加して攪拌することによりコロイダルシリカを処理する方法がある。なお、例えば50~80℃の範囲で加温し、1~2時間程度攪拌することによって所望の処理液が得られる。コロイダルシリカ水溶液とシランカップリング材の比率は50:1~5:1の重量比率で処理することが好ましい。
【0024】
このカチオン性を持つシランカップリング材を具体的に例示するとN-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(α,γ-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランの塩酸塩、オクタデシルジメチル-(γ-トリメトキシシリルプロピル)-アンモニウムクロライド等が挙げられる。
これらの中でも、コロイダルシリカとの反応性が良好であることから、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。
これらシランカップリング材は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのシランカップリング処理を行った後にアルカリ金属化合物を加えてpHを8.0~11.0に調製することが好ましい。
これらのアルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適に用いることができる。
【0025】
また、(c)アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液は、アルカリ金属を含むのが好ましく、更にアルカリ金属の含有量(酸化物換算)は、0.30wt%以下であることが更に好ましい。また、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は、0.001wt%以上であることが更に好ましい。
アルカリ金属の含有量(酸化物換算)が、0.001wt%未満の場合、埋没材の硬化時間が極端に遅くなるという問題が生じうる。また、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)が、0.30wt%を超えると、鋳造体の面性状が悪くなるという問題が生じうる。
さらに、(c)アルミナ化合物でカチオン処理されたコロイダルシリカを含む水溶液のpHが8.0~11.0であることが好ましい。pHが8.0未満の場合、埋没材の硬化時間が極端に遅くなるという問題が生じる。また、pHが11.0を超えると、埋没材の硬化時間が早くなるという問題が生じる。
【0026】
次に本発明の歯科用りん酸塩系埋没材における粉材と液材との練和比率であるが、粉材100gに対して液材を17~25mLの比率で練和するものが好ましい。18~22mLが更に好ましい。
【0027】
次に本発明の歯科用りん酸塩系埋没材において対応するレジンパターンを説明する。レジンパターンは、光造形方式(SLA方式、DLP方式)又はインクジェット方式の3Dプリンターで作製されたレジンパターン、光重合型のレジンパターン及び常温重合型のレジンパターンが好ましい。具体的には、レジンパターンは、(メタ)アクリレート系樹脂など光硬化性または熱硬化性を有するものであればよく、重合収縮が少ないものが好ましい。
【0028】
レジンパターンの組成物において使用され得る重合性アクリル化合物としては、限定されないが、ラジカル重合性モノマーとしては広く、歯科及び化学工業の分野で用いられ、生体安全性の高い不飽和二重結合基を含有する化合物から選択される。
【0029】
例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基及びビニル基等の不飽和二重結合基を1以上有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーが好適に用いられる。
【0030】
「(メタ)アクリレート」の語は、アクリレート類とメタクリレート類の両方を意味する。例えば、不飽和二重結合基の他に炭化水素基、フェニル基、水酸基、酸性基、酸アミド基、アミノ基、チオール基、ジスルフィド基、環式基、複素環式基、ハロゲン基、シラノール基、ピロリドン基、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、アルキレングリコール基等を1以上若しくは複数有する化合物が挙げられる。好適なラジカル重合性モノマーは上記の官能基や結合を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体である。
【0031】
ラジカル重合性モノマーは、適度な粘性を維持するため架橋性モノマーと希釈モノマーを組み合わせることが好ましい。
【0032】
架橋性モノマーには、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート類を含むウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0033】
「ウレタンジ-(メタ)アクリレート」は適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル-モノ-(メタ)アクリレート類の1:2のモル比の反応生成物をいう。「ウレタントリ-(メタ)アクリレート」は適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル-ジ-(メタ)アクリレート類、及びヒドロキシアルキル-モノ-(メタ)アクリレート類との1:1:1のモル比の反応生成物である。ウレタンテトラ-(メタ)アクリレートは適当なジイソシアネート類とヒドロキシアルキル-ジ-(メタ)アクリレート類との1:2モル比の反応生成物である。
【0034】
ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシプロピル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシペンチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシヘキシル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシデシル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシプロピル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシブチル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシペンチル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシヘキシル]イソホロンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]ヘキサメチレンジウレタン、2,2ビス[4-(2ヒドロキシ-3メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2ビス[4-(2-メチルアクリロイルオキシエトキシ)-フェニル]プロパン、2,2ビス[4-メタクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2ビス[4-(3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。ジ-[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシプロピル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ-[(メタ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2ビス[4-(2ヒドロキシ-3メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2ビス[4-(2-メチルアクリロイルオキシエトキシ)-フェニル]プロパンが好ましい。所望によりこれらの化合物のうち2またはそれ以上を共に用いてもよい。
【0035】
好ましい希釈モノマーの具体的な例としてはモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、1,4-ジ[(メタ)アクリロキシ]ブチレン、1,6-ジ[(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパン-テトラ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びスチレンを含む。エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。所望によりこれらの化合物のうち2またはそれ以上を共に用いてもよい。
【0036】
3Dプリンターのレジンパターン及び光重合型のレジンパターンに使用できる光重合性触媒、還元剤は、カンファーキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、もしくはメチルベンゾイン;及び/又は還元剤、例えば第三級アミンなどである。
【0037】
3Dプリンターのレジンパターン及び光重合型のレジンパターンの吸収波長領域は、好ましくは、約300~600nmの範囲の波長を有する光エネルギーで組成物を照射することにより開始され得る。アシルホスフィンオキシドのクラスから選択される光開始剤もまた使用され得る。これらの化合物としては、例えば、モノアシルホスフィンオキシド誘導体、ビスアシルホスフィンオキシド誘導体、及びトリアシルホスフィン誘導体が挙げられる。
【0038】
常温重合型のレジンパターンに使用できる熱重合開始剤は、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類である。これらの中でも、本発明では過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、トリメチルバルビツール酸、トリブチルボラン酸化物から選択し、使用されることが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0039】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、酸化マグネシウムの粒度測定は、日機装製マイクロトラックHRA型を用い、第一りん酸アンモニウムの篩いは、JISの標準篩いを用いた。
【0040】
(酸化マグネシウムの調製)
酸化マグネシウム原料を粉砕、分級して、平均粒径が25μmであり、100μm以上の粒子の割合を1wt%以内のものを調製した。

(第一りん酸アンモニウムの調製)
第一りん酸アンモニウムを粉砕後、250メッシュ(60μm)を全通し、25μm(500メッシュ)篩い下の粒子が30wt%になるように調製した。

(耐火材)
耐火材として、クリストバライト(200メッシュ(77μm)全通)、石英(200メッシュ(77μm)全通)、ケイ酸ジルコニウム(200メッシュ(77μm)全通)、ジルコニア(200メッシュ(77μm)全通)を用いた。

以下の表に示す実施例に記載の組成にてボールミルを用いて30分間、粉材の混合を行った。さらに1000μmの篩いを行い、粉材とした。
【0041】
(液材Aの調製)
原料として市販のケイ酸ナトリウム水溶液をベースにアルミン酸ナトリウムを加えて、加温加熱を行い、コロイダルシリカ水溶液を作製した。なお、Al2O3/SiO2のモル比率は0.001となるように調製した。なお、イオン交換の濃縮過程でシリカ粒子径をコントロールし、1次粒子径は10nm、固形分濃度は30wt%、水酸化ナトリウムを用いてpH9.5になるように調製した。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.15wt%であった。

(液材Bの調製)
液材Aのコロイダルシリカを用いて液材Aと同様のアルミナ処理を行い、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調製した。アルカリ金属量(酸化物換算)は0.02wt%であった。

(液材Cの調製)
液材Aのコロイダルシリカを用いて液材Aと同様のアルミナ処理を行い、水酸化ナトリウムを用いてpHを12.0になるように調製した。なお、アルカリ金属量(酸化物換算)は0.80wt%であった。

(液材Dの調製)
液材Aのコロイダルシリカを用いて液材Aと同様のアルミナ処理を行い、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調製した。アルカリ金属量(酸化物換算)は0.01wt%であった。

(液材Eの調製)
液材Aのコロイダルシリカを用いて液材Aと同様のアルミナ処理を行い、水酸化ナトリウムを用いてpHを11.0に調製した。アルカリ金属量(酸化物換算)は0.30wt%であった。

(液材Fの調整)
1次粒子径が10nmの酸性コロイダルシリカ(固形分濃度30wt%)に、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM-603)を10:1の質量比率で加えて、80℃の温度に加温、攪拌し、その後1Nの水酸化ナトリウムを用いて、pH9.5になるように調製した。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.15wt%であった。

(液材Gの調製)
液材Fと同様の処理を行い、pHが7.0になるように液材を調製し、液材Gとした。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.01wt%であった。

(液材Hの調製)
液材Fと同様の処理を行い、pHが12.0になるように液材を調製し、液材Hとした。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.80wt%であった。

(液材Iの調製)
液材Fと同様の処理を行い、pHが8.0になるように液材を調製し、液材Iとした。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.01wt%であった。

(液材Jの調製)
液材Fと同様の処理を行い、pHが11.0になるように液材を調製し、液材Jとした。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.30wt%であった。

(液材Kの調製)
原料として市販のケイ酸ナトリウム水溶液をベースにアルミン酸カリウムを加えて、加温加熱を行い、コロイダルシリカ水溶液を作製した。なお、Al2O3/SiO2のモル比率は0.001となるように調製した。なお、イオン交換の濃縮過程でシリカ粒子径をコントロールし、1次粒子径は10nm、固形分濃度は30wt%、水酸化ナトリウムを用いてpH9.5になるように調製した。なお、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)は0.15wt%であった。

(液材Lの調製(比較例のコロイダルシリカ水溶液))
比較例としてカチオン処理されていないコロイダルシリカを含む水溶液SI-30(日揮触媒製)を用いた。この1次粒子径は11nmで固形分濃度は30wt%であった。これを液材Kとした。

(硬化時間及び熱による寸法変化(熱膨張)の測定)
下記実施例及び比較例組成表の粉材及び液材を用いて埋没材を作製し、JIS T 6612:2013(歯科高温鋳造用埋没材及びセラミックス用耐火材)の規格に従い、硬化時間及び700℃までの熱による寸法変化(熱膨張)の試験を行った。

(3Dプリンター装置)
光造形方式には、DLP方式のD30(Rapidshape製)及びSLA方式のDIGITAL WAX 020D(DWS製)を使用した。インクジェット方式には、ProJet MJP 3600 Dental(3D Systems製)を使用した。

(3Dプリンター材料)
DLP方式対応のCast(Nextdent製)及びSLA方式対応のRF080 RESIN(DWS製)を使用した。また、インクジェット方式対応のVisiJet M3 Dentcast(3D Systems製)を使用した。

(3Dプリンター材料の熱膨張係数の測定)
DLP方式及びSLA方式の3Dプリンター装置により、φ5mm×21mmの円柱状のレジンパターンを造形した。造形後、イソプロパノール中で5分間超音波洗浄を行い、サポートを取り除いた。その後、LC-3DPrint Box(Nextdent製)を使用し、15分間ポストキュアを行った。
インクジェット方式の3Dプリンター装置により、φ5mm×21mmの円柱状のレジンパターンを造形した。造形後、50℃の水中で10分間超音波洗浄を行い、サポートを取り除いた。
回転研磨機を用いてφ4mm×20mmに調整したものを試験体とした。作製した試験体を昇温速度2℃/minで25℃から100℃まで測定(RIGAKU製:TMA 8310)を行った。25℃から100℃までの測定時の最大値を算出し、その平均値を熱膨張係数とした(n=2)。

(バリの有無及び表面性状の評価用の試験体作製)
DLP方式及びSLA方式の3Dプリンター装置により、10mm×10mm×2mmのレジンパターン板を造形した。造形後、イソプロパノール中で5分間超音波洗浄を行い、サポートを取り除いた。その後、LC-3Dprint Box(Nextdent製)を使用し、15分間ポストキュアを行った。
インクジェット方式の3Dプリンター装置により、10mm×10mm×2mmのレジンパターン板を造形した。造形後、50℃の水中で10分間超音波洗浄を行い、サポートを取り除いた。
比較例におけるワックスパターン板は、パラフィンワックス(松風製)を10mm×10mm×2mmに調整したものを使用した。
作製したレジンパターン板を鋳造用ゴム台に植立した。下記表の下記実施例及び比較例組成表の粉材及び液材を用いて作製したりん酸塩系埋没材を用いて、ラボミキサー(松風製)により60秒間練和し、鋳造用リングに注入した。埋没してから40分後に900℃の焼却炉に投入し、1時間係留を行った。その後、歯科鋳造用コバルトクロム合金 コバルタン(松風製)を使用し、鋳造を行った。鋳造終了後、鋳造体を掘り出し、バリの有無及び表面性状について評価を行った。
(バリの有無の評価)
バリの有無の評価は、目視で行い、以下の5段階で評価した。臨床的には、バリが全くない(◎)、若干バリがある(○)及びバリがあるが問題ない(●)の評価が許容できる。
◎:バリが全くない
○:若干バリがある
●:バリがあるが問題ない
△:ややバリのある
×:多くのバリがある

(表面性状の評価)
表面性状の評価は、触針式表面粗さ測定機サーフコム1500SD(東京精密社製)を用いて、鋳造体の表面粗さ(Ra:算術平均粗さ)を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値を用いた。表面粗さは、25μm以下であるものが臨床的に許容でき、10μm以下であることが最適である。なお、レジンパターン板及びワックスパターン板の表面粗さは、1μmであった。

【0042】
【表1】
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】
【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
(考察)
実施例1~15は、バリが全くない(◎)、若干バリがある(〇)、あるいはバリがあるが問題ない(●)という結果となり、表面粗さ(Ra)も25μm以下であることから、臨床的に許容できる。実施例10は、熱による寸法変化(熱膨張)が0.5%と低いため、金属の補綴装置を作製すると臨床的に満足のいく適合が得られない場合がある。実施例1、2、11~13より、パターンの種類に関係なく使用できる。一方、シランカップリング材を用いてカチオン処理を行った比較例1~6は、ややバリのある(△)結果となり、臨床的に問題が生じる結果となった。また、表面粗さは、25μm以下であるが、アルミナ化合物でカチオン処理したコロイダルシリカを含む水溶液と比較すると大きい結果となった。比較例7~9、12は、ややバリのある(△)あるいは、多くのバリがある(×)結果となり、表面粗さも25μm以上であることから、臨床的に問題が生じうる結果となった。また、比較例10、11では、焼却時に埋没材が爆発し、鋳造ができなかった。
(効果)
上記結果より、本発明により、レジンパターンを使用し、鋳造を行ってもバリが発生しにくく、表面性状が滑沢な鋳造体を得ることが出来るりん酸塩系埋没材を得ることができた。

図1
図2