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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007470
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ストレス緩和剤及び予防剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/18 20160101AFI20220105BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220105BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220105BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A23L33/18 ZNA
A61K31/197
A61K36/53
A61P25/18
A61P43/00 111
A61P25/02 105
A61P25/02 106
A61P43/00 121
A23L33/105
C12N9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110476
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 千奈
(72)【発明者】
【氏名】松本 知大
(72)【発明者】
【氏名】高木 寛
【テーマコード(参考)】
4B018
4B050
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MD20
4B018MD66
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF13
4B050DD11
4B050HH01
4B050KK11
4B050KK20
4B050LL03
4C088AB38
4C088AC02
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA52
4C088NA05
4C088ZA18
4C088ZA26
4C088ZA27
4C088ZC41
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA45
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA18
4C206ZA26
4C206ZA27
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、GABA及びタイムを含有することを特徴とするストレス緩和剤及びストレス予防剤を提供することである。
【解決手段】GABA及びタイムの組み合わせは、極めて優れたストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を示すことから、ストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を有する食品、医薬品又は医薬部外品として利用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GABA及びタイムを含有することを特徴とするストレス緩和剤及びストレス予防剤。
【請求項2】
GABA及びタイムを含有することを特徴とするGABA受容体活性化剤。
【請求項3】
GABA及びタイムを含有することを特徴とするコリンアセチルトランスフェラーゼ活性化剤。
【請求項4】
GABAを交感神経抑制剤、タイムを交感神経抑制剤及び副交感神経活性化剤として含有することを特徴とする請求項1記載のストレス緩和剤及びストレス予防剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の剤を含有することを特徴とする、ストレス緩和用及び予防用、GABA受容体活性化用、コリンアセチルトランフェラーゼ活性化用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABA及びタイムを含有することを特徴とするストレス緩和剤及び予防剤に関する。より詳しくは、GABA及びタイムを含有するストレス緩和剤、ストレス予防剤、GABA受容体活性化剤、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスとは、外部から心や身体に与えられた刺激に対応し、心や身体に生じた様々なゆがみや変調などの反応であると、定義付けられている。外部から心や身体に与えられる刺激はストレッサーと呼ばれ、天候、気温変化、騒音などの物理的ストレッサー、薬物、身体に害を与える化学物質などの化学的ストレッサー、人間関係、仕事上の問題、家庭の問題などの心理・社会的ストレッサーが知られている。一般的に、ストレスは心理・社会的ストレッサーのことを指すことが多いと考えられる。現代社会においては、さらに複雑で多岐にわたる心理・社会的ストレッサーが存在し、その結果、我々は様々なストレスに絶えず、さらされている。
【0003】
外部から心や身体に与えられた刺激に対して、自分の意思では調節できない自律神経系と呼ばれる体内環境を維持するシステムが存在する。自律神経には交感神経と副交感神経があり、ストレスを感じると交感神経が刺激され、心拍数の増加、血管の収縮、胃腸の働きの低下などにより、一過性に身体に負荷をかけてもストレスから逃れようとする生体反応が生じる。一方、副交感神経は、食事中や睡眠中など身体がゆったりとした時に刺激され、心拍数の低下、血管の拡張、胃腸の働きの活性化などに働く。現代社会において、ストレスを感じ続けると、交感神経が刺激され続け、その結果、血管が収縮し続けることで、冷えや筋肉のコリを招いたり、胃腸の働きが低下し続けることで、胃もたれや下痢、便秘などを招いたり、身体の不調をきたす。
【0004】
外部から刺激を与えられると、神経細胞から神経伝達物質であるノルアドレナリンが合成、放出され、また副腎髄質からも分泌され、交感神経が刺激された状態になる。交感神経が刺激された状態が続き、過大なノルアドレナリンの分泌状態が続くと、身体の不調がもたらされる。ストレス状態を緩和・予防するには、このノルアドレナリンの働きを抑制し、交感神経の働きを抑制することが重要である。
【0005】
そのため、ストレスにより生ずる精神的・身体的症状の緩和のため、精神安定剤、抗不安剤、睡眠薬などの合成薬剤が用いられている。しかし、これらの薬剤は習慣性や副作用の問題もあり、長期的に使用することは好ましくない。そこで、日常的に連用可能で安全なストレス緩和剤やストレス予防剤が求められ、各方面で開発が行われてきた。
【0006】
GABA(ガンマ-アミノ酪酸:Gamma-Amino Butyric Acid)は、アミノ酸の一種で、通常の食事からも摂取することができる。GABAは、その受容体(GABA受容体)を介して、作用すると考えられており、末梢神経節において交感神経を抑制し、ノルアドレナリンの分泌を抑制する。すなわち、GABAによるノルアドレナリンの分泌抑制作用を発揮するには、GABAを多量に摂取するばかりでなく、GABA受容体を活性化することで、GABAの働きを高めることも必要である。GABAは、リラックス作用(特許文献1)や精神的ストレスによる免疫能の低下改善作用(特許文献2)、血圧低下作用(非特許文献1)を示すことが知られている。
【0007】
タイムはヨーロッパ南部の地中海沿岸原産のハーブである。抗菌作用(非特許文献2)や抗ウイルス作用(非特許文献3)などの薬理作用を持つことが知られており、スパイスとして料理に入れて、防腐効果を高めたり、風邪やインフルエンザの予防のためにハーブティーとして飲まれたりする。また、コラゲナーゼ阻害作用(特許文献3)、ストレス緩和作用(特許文献4)も明らかになっている。
【0008】
しかしながら、ストレスの緩和と予防を目的とした、GABA及びタイムを組み合わせたストレス緩和剤、ストレス予防剤、GABA及びタイムをストレス緩和剤及び予防剤の目的に含有する食品組成物は全く知られていない。
【0009】
さらに、ストレス状態を緩和・予防するには、アセチルコリンの合成・分泌を高め、副交感神経の働きを高めることも重要である。アセチルコリンは、アセチルコリン受容体を介して、副交感神経を刺激し、心拍数の低下、血管の拡張、胃腸の働きの活性化などをもたらし、ストレス状態を緩和する作用を有する。アセチルコリンは、コリンとアセチルCoAを基質として、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT、choline acetyltransferase)を介して合成される。
【0010】
ストレスの緩和や予防を目指すには、交感神経を抑制することと共に、同時に副交感神経を刺激することも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011-93842
【特許文献2】特開2003-327528
【特許文献3】特開平11-079970
【特許文献4】特表2011-500616
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】日本栄養・食糧学会誌 第56巻 第2号 97-102(2003)
【非特許文献2】J.Fac.Appl.Biol.Sci.,Hiroshima Univ.(1996),35:181~190
【非特許文献3】Trace Nutrients Research22:45-50(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、GABA及びタイムを含有することを特徴とするストレス緩和剤及び予防剤に関する。より詳しくは、GABA及びタイムを含有するストレス緩和剤、ストレス予防剤、GABA受容体活性化剤、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究した結果、GABA及びタイムを組み合わせることで、優れたストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を有することを見出した。
【0015】
本発明に用いるGABAは、野菜、果物、穀物などから抽出されたGABA、発酵法により生産されたGABA、有機的に合成されたGABAのいずれも用いることができる。
【0016】
本発明に用いるGABAは、発酵法などで得たままの精製が行われていないGABA含有物を用いることができる。また、常法で精製したGABAを用いることができるし、市販品を用いることもできる。
【0017】
本発明に用いるタイムは、一般的にシソ科イブキジャコウソウ属のタチジャコウソウ(別名:コモンタイム、学名:Thymus vulgarics)のことをいうが、タチジャコウソウの交配種(例えばシトラスタイムなど)や同属のイブキジャコウソウ(学名:Thymus serpyllum)なども用いることができる。特に限定するものではないが、タチジャコウソウが好ましい。使用する部位は、特に限定されないが、地上部が好ましい。
【0018】
本発明に用いるタイムは、必要に応じてそのままの状態、破砕物、圧搾物、乾燥物などを適宜選択することができる。また、微粒化処理、ロールプレス処理、摩砕処理、超高圧マイクロスチーム処理、通常工業的に用いられるその他機械的方法などを採用できる。
【0019】
本発明に用いるタイムは、必要に応じて抽出操作に付することができる。抽出溶媒として、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなど)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテルなど)などを用いることができる。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。また、抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出などが挙げられ、必要に応じて、濃縮、希釈、ろ過、活性炭処理などによる脱色、脱臭などの処理をして用いてもよい。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いてもよい。抽出溶媒は、特に限定するものではないが、水、熱水あるいは含水エタノールを用いることが好ましい。
【0020】
本発明に用いるGABA及びタイムの摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重などによって異なる。GABAの摂取量は、精製された化合物のGABAとして1~1000mg/日、好ましくは10~100mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。タイムは乾燥生薬として、0.1~5000mg/日、好ましくは1~2000mg/日で1日1回から数回経口投与できる。上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0021】
本発明のストレス緩和剤及び予防剤は、食品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができる。その剤形は内服用であることが好ましく、タブレット、飴、グミ、ガム、飲料等の食品の形態や、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤等の医薬品の形態を用いることができる。また、皮膚外用剤、注射剤、座剤などとして用いることもできる。
【0022】
本発明のストレス緩和剤及び予防剤は、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の成分を含有することもできる。他の薬効成分を含有しても良く、ハーブ類、ビタミン、アミノ酸、ミネラル等の他に、乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリン等の賦形剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、ゼラチン、プルラン、シェラック、ツェイン等の被膜剤、小麦胚芽油、米胚芽油、サフラワー油等の油脂類、ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウ等のワックス類、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロース等の甘味料、並びにクエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等の酸味料等を適宜含有することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のGABA及びタイムを含有することを特徴とするストレス緩和剤及び予防剤は、極めて優れたストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施例は例示のために説明するものであり、本発明の特許請求の範囲はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。実施例に示す含有量の%は重量%を示す。
【実施例0025】
製造例1 GABA
0.2%グルタミン酸ソーダ、0.004%ブドウ糖、0.01%パン酵母エキスを含有する培地に、乳酸菌(ラクトバチルス ヒルガルディーK-3株(FERM P-18422))を接種し培養した。培養終了後、殺菌、ろ過後、ろ液を噴霧乾燥して、乾燥、粉末化したものをGABAとした(GABA含量21%)。
【0026】
製造例2 タイム熱水抽出物
タイム地上部100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した後、ろ液を濃縮、凍結乾燥して、タイム熱水抽出物10.2gを得た。
【0027】
製造例3 タイム30%エタノール抽出物
タイム地上部100gに、精製水1.4Lとエタノール0.6Lを加え、常温で5日間抽出した後、ろ液を濃縮乾固して、タイム30%エタノール抽出物4.8gを得た。
【0028】
製造例4 タイムエタノール抽出物
タイム地上部100gに、エタノール1Lを加え、常温で5日間抽出した後、ろ液を濃縮乾固して、エタノール抽出物2.3gを得た。
【0029】
次に、本発明のGABA及びタイムを用いた処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0030】
処方例1 タブレット
<処方>
成分 含有量(%)
1.GABA(製造例1) 3.0
2.タイム熱水抽出物(製造例2) 0.01
3.エリスリトール 30.0
4.マルチトール 全量が100となる様に加える
5.クエン酸 5.0
6.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
7.香料 3.0
<製造方法>
成分1~5を混合し、10%の水を結合剤として加え、流動層造粒する。造粒で得た顆粒に成分6及び7を加えて混合し、打錠して1粒1.5gのタブレットを得た。
<用法>
1日当たり3粒摂取する。
【0031】
処方例2 粒チューインガム
<処方>
成分 含有量(%)
1.GABA(製造例1) 0.5
2.タイム30%エタノール抽出物(製造例3) 0.01
3.ガムベース 全量が100となる様に加える
4.キシリトール 10.0
5.スクラロース 0.01
6.アスパルテーム 0.01
7.香料 1.0
<製造方法>
成分1~7を混合し、混練し、成形して1粒2.2gのチューインガムを得た。
<用法>
1日当たり9粒摂取する。
【0032】
処方例3 軟カプセル剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.GABA(製造例1) 16.0
2.タイムエタノール抽出物(製造例4) 0.01
3.米胚芽油 全量が100となる様に加える
4.ミツロウ 7.0
5.ビタミンE 3.0
<製造方法>
成分1~5を混合し、ゼラチン、グリセリン、カラメル色素で構成される被膜に、350mg充填し、乾燥後、軟カプセル剤を得た。
<用法>
1日当り3粒摂取する。
【0033】
処方例4 飲料
<処方>
成分 含有量(%)
1.GABA(製造例1) 0.5
2.タイム熱水抽出物(製造例2) 0.01
3.クエン酸 6.0
4.ショ糖 10.4
5.香料 1.0
6.水 全量が100となる様に加える
<製造方法>
成分1~5を成分6の一部の水に撹拌溶解する。次いで、成分6の残りの水を加えて混合し、殺菌したものを飲料とする。
<用法>
1日当り50mL摂取する。
【0034】
処方例5 顆粒剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.GABA(製造例1) 15.0
2.タイム30%エタノール抽出物(製造例3) 0.01
3.乳糖 全量が100となる様に加える
4.セルロース 10.0
<製造方法>
成分1~4を乾式法により造粒し、顆粒剤を得る。
<用法>
1日当り1g摂取する。
【0035】
比較例1 従来のタブレット1
処方例1のタブレットにおいて、GABA(製造例1)、タイム熱水抽出物(製造例2)をマルチトールに置換えたものを、従来のタブレット1とした。
【0036】
比較例2 従来のタブレット2
処方例1のタブレットにおいて、GABA(製造例1)をマルチトールに置換えたものを、従来のタブレット2とした。
【0037】
比較例3 従来のタブレット3
処方例1のタブレットにおいて、タイム熱水抽出物(製造例2)をマルチトールに置換えたものを、従来のタブレット3とした。
【実施例0038】
試験例1 GABA及びタイムのストレス緩和に関わる遺伝子発現促進作用
神経様細胞PC-12を10%牛胎児血清、10%馬血清を含むDMEM培地で培養後、50ng/ml神経成長因子、10%牛胎児血清、10%馬血清を含むDMEM培地で培養し、分化させた。そこに、終濃度200μg/mlのGABA(製造例1)、又は終濃度50μg/mlのタイム熱水抽出物(製造例2)、又はGABAとタイム熱水抽出物をGABAが終濃度200μg/ml、タイム熱水抽出物が終濃度50μg/mlとなるように組み合わせた試料を添加して、培養後、RNAを回収し、リアルタイムPCR法により、GABA受容体-2(Gabbr2:Gamma-aminobutyric acid B receptor 2)、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyltransferase)の遺伝子発現量を解析した。未添加の条件での発現量を1として比較した。
【0039】
GABA受容体-2(Gabbr2)用のプライマーセット
TGAAGATCACAGAGCTGGAC(配列番号1)
TTTCCTCCATCTGTGCTCTC(配列番号2)
コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)用のプライマーセット
CAATTGGGTCTCTGAATACTGG(配列番号3)
GCTGCAAATCTTAGCTGGTC(配列番号4)
【0040】
試験例1の結果を表1に示す。GABA受容体-2の遺伝子発現は、GABA、タイム熱水抽出物、及びGABAとタイムの組み合わせで亢進した。GABAとタイム熱水抽出物の組み合わせは、それぞれ単独の効果を足し合わせたものをはるかに上回る、極めて優れた相乗効果を示すものであった。コリンアセチルトランスフェラーゼの遺伝子発現は、タイム熱水抽出物、及びGABAとタイムの組み合わせで亢進した。タイム熱水抽出物単独よりも、GABAと組み合わせると極めて優れた効果を示すものであった。
【0041】
また、GABAとタイム30%エタノール抽出物(製造例3)、GABAとタイムエタノール抽出物(製造例4)の組み合わせでも、同様の効果が認められた。
【0042】
以上の結果から、GABAはGABA受容体活性化作用を有することで交感神経の働きを抑制する効果が認められた。また、タイムはGABA受容体活性化作用を有することで交感神経の働きを抑制し、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を有することで副交感神経の働きを活性化する効果が認められた。さらに、GABAとタイムを組み合わせることで、極めて優れたGABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を示すことが明らかとなった。
【0043】
【表1】
【0044】
試験例2 GABA及びタイムのヒト飲用によるストレス緩和作用
日常的にストレスを感じる自覚症状のある男女40名(32~60歳)を10人ずつ4群に分け、試験群1GABA及びタイムを含有するタブレット(処方例1)、試験群2従来のタブレット1(比較例1)、試験群3従来のタブレット2(比較例2)、試験群4従来のタブレット3(比較例3)とした。何れの群も、ストレス負荷として、コンピュータを用いた視覚探索課題(ATMT:Advanced Trail Making Test)を行った後、タブレットを3粒摂取させた。ストレス負荷直後のストレスの感じ方と、タブレット3粒摂取後20分経過した後のストレスの感じ方の比較をアンケートで行った。ストレス負荷直後からタブレット摂取20分後にストレスが著しく緩和した場合は「ストレスが著しく緩和した」、ストレス負荷直後からタブレット摂取20分後に感じるストレスが変わらない場合は「変化なし」などとし、回答した人数を表2に示した。
【0045】
その結果、GABA及びタイムを含有するタブレット(処方例1)を摂取した群では、「ストレスが著しく緩和した」人数が最も多く、ストレスを感じた後にGABA及びタイムを摂取することで、ストレスを緩和する作用が明らかとなった。また、比較例ではストレスを緩和する作用は弱いものであった。
【0046】
【表2】
【0047】
試験例3 GABA及びタイムのヒト飲用によるストレス予防作用
日常的にストレスを感じる自覚症状のある男女40名(32~60歳)を10人ずつ4群に分け、試験群1GABA及びタイムを含有するタブレット(処方例1)、試験群2従来のタブレット1(比較例1)、試験群3従来のタブレット2(比較例2)、試験群4従来のタブレット3(比較例3)とした。何れの群も、タブレット3粒を摂取させた後、ストレス負荷として、コンピュータを用いた視覚探索課題(ATMT:Advanced Trail Making Test)を行った。タブレット摂取前のストレスの感じ方と、ストレス負荷後のストレスの感じ方の比較をアンケートで行った。ストレス負荷後のストレスをほとんど感じなかった場合は「ストレスをほとんど感じなかった」、ストレス負荷後のストレスを著しく感じた場合は「ストレスを著しく感じた」などとし、回答した人数を表3に示した。
【0048】
その結果、GABA及びタイムを含有するタブレット(処方例1)を摂取した群では、ストレスをほとんど感じなかった人数が最も多く、ストレスを与えられる前にGABA及びタイムを摂取することで、ストレスを予防する作用が明らかとなった。また、比較例ではストレスを予防する作用は弱いものであった。
【0049】
【表3】
【0050】
以上の結果より、GABA及びタイムの組み合わせは、優れたストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用が明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上から、本発明のGABA及びタイムを含有するストレス緩和剤及び予防剤は、優れたストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を示した。本発明のGABA及びタイムを含有するストレス緩和剤及び予防剤は、ストレス緩和作用、ストレス予防作用、GABA受容体活性化作用、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性化作用を有する食品、医薬品又は医薬部外品として利用できる。また、GABA及びタイムを、神経細胞あるいは神経様細胞のin vitroでの細胞培養における、GABA受容体産生促進方法、コリンアセチルトランスフェラーゼ産生促進方法として利用できる。さらに、GABA受容体産生促進のため、あるいはコリンアセチルトランスフェラーゼ産生促進のための培地添加剤としても利用できる。
【配列表】
2022007470000001.app