(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074702
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】排熱発電方法
(51)【国際特許分類】
F01K 27/02 20060101AFI20220511BHJP
F25B 15/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F01K27/02 Z
F25B15/00 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184990
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】河合 卓也
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
【テーマコード(参考)】
3G081
3L093
【Fターム(参考)】
3G081BB04
3G081BB07
3G081BC13
3L093AA03
3L093BB01
3L093BB26
3L093BB28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗煙排水の保有熱を有効に利用する排熱発電方法を提供する。
【解決手段】排煙洗浄塔から排出された洗煙排水の保有熱を回収した流体を第1流体及び第2流体に分岐し、分岐した第1流体及び第2流体のそれぞれをヒートポンプ7に供給し、第1流体の保有熱によりヒートポンプ7が昇温した第2流体を、排熱発電システム10に供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙洗浄塔から排出された洗煙排水の保有熱を回収した流体を第1流体及び第2流体に分岐し、
分岐した前記第1流体及び前記第2流体のそれぞれをヒートポンプに供給し、
前記第1流体の保有熱により前記ヒートポンプが昇温した前記第2流体を、排熱発電システムに供給する、
ことを特徴とする排熱発電方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ヒートポンプは、
冷媒液を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器において蒸発させた前記冷媒液の蒸気を第1吸収液に吸収させることによって第2吸収液を生成する吸収器と、
前記吸収器において生成した前記第2吸収液を加熱することによって前記第2吸収液の冷媒液を蒸発させ前記冷媒液の蒸気を生成する再生器と、
前記再生器において生成した前記冷媒液の蒸気を液化させ前記蒸発器に供給する凝縮器と、を有し、
前記第1流体を前記ヒートポンプに供給する工程では、
前記第1流体を前記蒸発器に供給し、前記蒸発器において前記第1流体の保有熱により前記冷媒液を蒸発させ、
前記蒸発器からの前記第1流体を前記再生器に供給し、前記再生器において前記第1流体の保有熱により前記第2吸収液を加熱する、
ことを特徴とする排熱発電方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2流体を前記ヒートポンプに供給する工程では、
前記第2流体を前記吸収器に供給し、前記吸収器において前記冷媒液の蒸気を前記第1吸収液に吸収させる際に発生する吸収熱により前記第2流体を昇温する、
ことを特徴とする排熱発電方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記第2流体を前記排熱発電システムに供給する工程では、前記吸収器が昇温した前記第2流体を、前記排熱発電システムに供給する、
ことを特徴とする排熱発電方法。
【請求項5】
請求項1において、さらに、
前記第2流体の保有熱により前記排熱発電システムにおける作動流体を昇温する、
ことを特徴とする排熱発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥焼却炉等の焼却炉の排ガスは、800~850℃程度の高温の排ガスである。そのため、例えば、この高温の排ガスをボイラーに導いて水蒸気を発生させ、蒸気タービンにより発電機を回転させる排熱発電が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記のような排熱発電では、設備投資額に見合う発電量が得られない場合があり、より高いエネルギー回収率を実現可能なシステムが要望されている。
【0004】
そのため、一般的な焼却プラントでは、例えば、焼却炉から排出される高温の排ガスを白煙防止空気予熱器等の熱交換器に通すことによって排熱の一部を回収してから、集塵機においてダストを分離除去し、さらに、排煙処理塔に通して水洗浄を行うことによって排ガス中のNOXやSOX等の成分を除去する排ガス処理が行われている。
【0005】
ここで、上記のような排熱処理塔では、200~400℃程度の排ガスが約30℃にまで冷却される一方、50~75℃程度の洗煙排水が排出されている。そして、この洗煙排水は、比較的低温ではあるが、水の比熱の大きさから多くの熱エネルギー(例えば、排ガスの保有熱のうちの50%以上)を有している。そのため、近年では、洗煙排水の保有熱を利用した排熱発電が行われている(特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-174845号公報
【特許文献2】特開2013-213658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような排熱発電では、洗煙排水の保有熱を十分に利用することができない場合がある。そのため、排ガスの保有熱を利用した排熱発電の分野では、洗煙排水の保有熱をより有効に利用することが求められている。
【0008】
そこで、本発明は、洗煙排水の保有熱を有効に利用する排熱発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明における排熱発電方法は、排煙洗浄塔から排出された洗煙排水の保有熱を回収した流体を第1流体及び第2流体に分岐し、分岐した前記第1流体及び前記第2流体のそれぞれをヒートポンプに供給し、前記第1流体の保有熱により前記ヒートポンプが昇温した前記第2流体を、排熱発電システムに供給する。
【発明の効果】
【0010】
本発明における排熱発電方法によれば、洗煙排水の保有熱を有効に利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の比較例における汚泥焼却システム100の概略構成例を説明する図である。
【
図2】
図2は、第1の比較例における排煙処理塔3の概略構成例を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態における汚泥焼却システム200の概略構成例を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態におけるヒートポンプ7の機能ブロックを説明する図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態におけるヒートポンプ7の機能ブロックを説明する図である。
【
図6】
図6は、第1の比較例における汚泥焼却システム100と第1の実施の形態における汚泥焼却システム200との比較について説明する図である。
【
図7】
図7は、第2の比較例における汚泥焼却システム300の概略構成例を説明する図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態における汚泥焼却システム400の概略構成例を説明する図である。
【
図9】
図9は、第2の比較例における汚泥焼却システム300と第2の実施の形態における汚泥焼却システム400との比較について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
[第1の比較例における汚泥焼却システム100]
初めに、第1の比較例における汚泥焼却システム100について説明を行う。
図1は、第1の比較例における汚泥焼却システム100の概略構成例を説明する図である。また、
図2は、第1の比較例における排煙処理塔3の概略構成例を説明する図である。
【0014】
汚泥焼却システム100は、
図1に示すように、例えば、白煙防止空気予熱器1と、集塵機2と、排煙処理塔3と、煙突4と、排熱発電システム10とを有する。
【0015】
白煙防止空気予熱器1は、排ガス用の熱交換器であり、例えば、下水汚泥を焼却するため焼却炉(図示しない)から出力された高温の排ガス(800~850℃程度)の保有熱を用いることによって、大気を昇温して白煙防止空気Aを生成する。白煙防止空気Aは、煙突4から放出される排ガス中の水蒸気が白煙として見えることを防止するために用いられる加熱空気である。なお、白煙防止空気Aの温度は、例えば、400℃程度である。また、白煙防止空気予熱器1を通過した排ガスの温度は、例えば、200~400℃程度である。
【0016】
集塵機2は、白煙防止空気予熱器1の後段に配置され、白煙防止空気予熱器1から出力された排ガスの不純物を除去する。集塵機2は、例えば、耐熱性の優れたセラミック集塵機であり、白煙防止空気予熱器1を通過した排ガスの不純物をそのまま集塵する。なお、集塵機2を通過した排ガスG1の温度は、例えば、200~400℃程度である。
【0017】
次に、
図2を参照して、排煙処理塔3について説明する。排煙処理塔3は、塔の下部から排ガスG1を導入し、上部の散水ノズル3aから散水される水に接触させることによって、排ガスG1中のNO
XやSO
X等の成分を洗煙水Wに含ませて除去する。そして、洗煙水Wは、排ガスG1の水洗浄に用いられた後、塔内下部に溜まる。その後、洗煙水Wは、例えば、循環ポンプP1によって、洗煙冷却水W1として散水ノズル3aに送られる。
【0018】
また、例えば、循環ポンプP1の後段には、洗煙熱交換器23が配置されている。洗煙熱交換器23は、洗煙熱交換器23に送られた洗煙水Wから熱回収を行う。そして、洗煙熱交換器23によって熱回収された熱エネルギーは、例えば、循環ポンプP3(
図1参照)によって、循環水L1を介して排熱発電システム10(
図1参照)に供給される。なお、以下、排熱発電システム10に供給される流体が循環水L1等の水(水蒸気)であるものとして説明を行うが、他の種類の流体(気体または液体)が排熱発電システム10に供給されるものであってもよい。
【0019】
また、排煙処理塔3の上部には、煙突4が配置される。排煙処理塔3において洗浄された排ガスG2は、煙突4内で白煙防止処理が施された後、煙突4から大気に放出される。
【0020】
なお、排煙処理塔3の上方であって煙突4の前段には、処理水W2が給水され、排ガスG2と十分に接触することによって排ガスG2の水洗浄行う。そして、排ガスG2の水洗浄によって生じた低温排水W3は、例えば、洗煙水Wに混合される。
【0021】
図1の説明に戻る。排熱発電システム10は、排煙処理塔3の洗煙水Wの熱エネルギーを回収して他のエネルギーに変換する機能を有し、例えば、蒸発器11と、蒸気タービン12と、発電機13と、再生器14と、凝縮器15と、循環ポンプP2とを有する。そして、蒸発器11、蒸気タービン12、再生器14、凝縮器15及び循環ポンプP2により、作動媒体Lとして循環させるランキンサイクルやカリーナサイクル等の熱サイクルを形成する。作動媒体は、作動流体とも呼ばれ、例えば、水より低沸点のフロン、代替フロン、アンモニアまたはアンモニアと水との混合流体等の低沸点媒体である。
【0022】
循環ポンプP2は、作動媒体Lを、蒸発器11、蒸気タービン12、再生器14、凝縮器15、再生器14及び蒸発器11から構成されるサイクル内を循環させる。
【0023】
蒸発器11は、循環水L1が有する保有熱(洗煙熱交換器23において洗煙水Wから回収された熱エネルギー)を用いることにより、作動媒体Lを蒸発させる。なお、蒸発器11に送られる循環水L1の温度は、例えば、72℃程度である。また、蒸発器11から洗煙熱交換器23に送られる循環水L1の温度は、例えば、66℃程度である。
【0024】
蒸気タービン12は、蒸発器11によって生成された作動媒体Lの蒸気によって回転する。そして、蒸気タービン12の回転軸に接続された発電機13は、蒸気タービン12の回転によって発電を行う。
【0025】
凝縮器15は、図示しない循環ポンプによって送られた冷却水W4によって、蒸気タービン12から出力された作動媒体Lの蒸気を凝縮する。そして、凝縮器15は、凝縮した作動媒体Lを循環ポンプP2によって再生器14を経由して蒸発器11に供給する。なお、冷却水W4の温度は、例えば、20℃程度である。具体的に、再生器14は、この場合、蒸気タービン12から出力された作動媒体Lの蒸気と、凝縮器15によって凝縮済の作動媒体Lとの熱交換を行うことによって、蒸気タービン12から出力された作動媒体Lの蒸気を冷却してから凝縮器15に供給する。そして、凝縮器15は、例えば、図示しない循環ポンプによって送られた冷却水W4によって、再生器14から供給された作動媒体Lの蒸気を凝縮する。なお、冷却水W4は、この場合、凝縮熱によって昇温する。
【0026】
[第1の実施形態における汚泥焼却システム200]
次に、第1の実施の形態における汚泥焼却システム200について説明を行う。
図3は、第1の実施の形態における汚泥焼却システム200の概略構成例を説明する図である。また、
図4及び
図5は、第1の実施の形態におけるヒートポンプ7の機能ブロックを説明する図である。なお、以下、
図1で説明した汚泥焼却システム100と異なる点について説明を行う。また、
図3から
図5に示す配管や循環ポンプの配置位置や数は、一例であり、これに限られるものではない。
【0027】
汚泥焼却システム200は、
図3に示すように、例えば、排煙処理塔3(洗煙熱交換器23)と排熱発電システム10(蒸発器11)との間において、分岐器6と、ヒートポンプ7を有する。
【0028】
分岐器6は、ヒートポンプ7の前段に配置され、例えば、循環ポンプP4によって循環される循環水L1を循環水L11(以下、第1流体L11とも呼ぶ)と循環水L12(以下、第2流体L12とも呼ぶ)とに分岐する。分岐器6は、例えば、循環水L1が流れる配管内に設けられたボール弁や仕切弁であってよい。
【0029】
なお、汚泥焼却システム200は、例えば、分岐器6に代えて、循環水L11及び循環水L12が流れる各配管において流量調整弁(図示しない)を有するものであってもよい。そして、汚泥焼却システム200は、各流量調整弁の制御によって、循環水L11及び循環水L12の流量の調整を行うものであってもよい。
【0030】
ヒートポンプ7は、昇温型吸収式ヒートポンプであり、循環水L11の保有熱によって循環水L12を昇温する装置である。
【0031】
具体的に、ヒートポンプ7は、
図4及び
図5に示すように、例えば、蒸発器7aと、吸収器7bと、再生器7cと、凝縮器7dと、循環ポンプP6と、循環ポンプP7とを有する。以下、ヒートポンプ7の動作について説明を行う。
【0032】
[第1の実施形態におけるヒートポンプ7の動作]
図4は、ヒートポンプ7における冷媒液L21及び吸収液L31の流れを説明する図である。また、
図5は、ヒートポンプ7における循環水L11及び循環水L12の流れを説明する図である。
【0033】
初めに、冷媒液L21及び吸収液L31の循環に伴うヒートポンプ7の動作について説明を行う。
【0034】
蒸発器7aは、
図4及び
図5に示すように、循環水L11の保有熱によって冷媒液L21を蒸発させる。そして、蒸発器7aは、冷媒液L21を蒸発させることで生成した冷媒液L21の蒸気(以下、蒸気L22とも呼ぶ)を吸収器7bに供給する。
【0035】
吸収器7bは、
図4に示すように、蒸発器7aにおいて生成された蒸気L22を、再生器7cにおいて生成された、濃溶液である吸収液L31(以下、第1吸収液L31とも呼ぶ)に吸収させることによって、希溶液である吸収液L32(以下、第2吸収液L32とも呼ぶ)を生成する。吸収液L31及び吸収液L32は、例えば、水より低沸点である臭化リチウムである。そして、吸収器7bは、生成した吸収液L32を再生器7cに供給する。
【0036】
再生器7cは、
図4に示すように、吸収器7bにおいて生成した吸収液L32を加熱することによって、吸収液L32に含まれる冷媒液L21を蒸発させ、蒸気L22と吸収液L31とをそれぞれ生成する。そして、再生器7cは、生成した蒸気L22を凝縮器7dに供給する。また、再生器7cは、例えば、循環ポンプP7によって、生成した吸収液L31を吸収器7bに供給する。
【0037】
凝縮器7dは、
図4及び
図5に示すように、例えば、図示しない循環ポンプによって送られた冷却水W5によって、再生器7cにおいて生成した蒸気L22を液化させることで冷媒液L21を生成する。そして、凝縮器7dは、例えば、循環ポンプP6によって、生成した冷媒液L21を蒸発器7aに供給する。なお、凝縮器7dに送られる冷却水W5の温度は、例えば、22℃程度であり、凝縮熱によって昇温された後の冷却水W5の温度は、例えば、33℃程度である。
【0038】
次に、循環水L11の循環に伴うヒートポンプ7の動作について説明を行う。
【0039】
蒸発器7aは、
図4及び
図5に示すように、循環水L11の供給を受けた後、循環水L11の保有熱によって冷媒液L21を蒸発させる。そして、蒸発器7aは、冷媒液L21の蒸発に用いた循環水L11を再生器7cに供給する。なお、蒸発器7aに送られる循環水L11の温度は、例えば、74℃程度である。
【0040】
再生器7cは、
図4及び
図5に示すように、蒸発器7aから循環水L11の供給を受けた後、循環水L11の保有熱によって吸収液L32を加熱する。そして、再生器7cは、吸収液L32の加熱に用いた循環水L11を洗煙熱交換器23に供給する。この場合、循環水L11は、例えば、循環水L12と合流してから洗煙熱交換器23に供給されるものであってもよい。なお、再生器7cから洗煙熱交換器23に供給される循環水L11の温度は、例えば、68℃程度である。
【0041】
次に、循環水L12の循環に伴うヒートポンプ7の動作について説明を行う。
【0042】
吸収器7bは、
図4及び
図5に示すように、循環水L12の供給を受けた場合、蒸気L22を吸収液L31に吸収させる際に発生する吸収熱によって循環水L12を昇温する。そして、吸収器7bは、昇温した循環水L12を蒸発器11(排熱発電システム10)に供給する。なお、吸収器7bから蒸発器11に送られる循環水L12の温度は、例えば、120℃程度である。また、蒸発器11から洗煙熱交換器23に対して循環水L12が送られるが、循環水L12の温度は、例えば、51℃程度である。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態における汚泥焼却システム200では、循環水L1から分岐した循環水L11及び循環水L12のそれぞれをヒートポンプ7に供給し、循環水L11の保有熱によってヒートポンプ7が昇温した循環水L12を、排熱発電システム10に供給する。
【0044】
これにより、排熱発電システム10では、洗煙排水Wの保有熱を効率的に利用することが可能になり、排熱発電システム10における発電量を増加させることが可能になる。
【0045】
また、本実施の形態における汚泥焼却システム200では、ヒートポンプ7として昇温型吸収式ヒートポンプを用いることにより、ヒートポンプ7の稼働に伴う電力消費を抑えることが可能になる。
【0046】
[第1の比較例と第1の実施形態との比較]
図6は、第1の比較例における汚泥焼却システム100と第1の実施の形態における汚泥焼却システム200との比較について説明する図である。具体的に、
図6は、
図1及び
図2で説明した汚泥焼却システム100(ヒートポンプ7を有しない場合の汚泥焼却システム)と、
図3から
図5で説明した汚泥焼却システム200(ヒートポンプ7を有する場合の汚泥焼却システム)との比較について説明する図である。
【0047】
具体的に、
図6に示す例は、排熱発電システム10に供給される熱エネルギー(洗煙排水保有熱量)について、ヒートポンプ7を有しない場合が「1277kw」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「1346kw」であることを示している。
【0048】
また、
図6に示す例は、排熱発電システム10に送られる循環水の温度(入口温度)及び排熱発電システム10から送られる循環水の温度(出口温度)について、ヒートポンプ7を有しない場合が「72℃」及び「66℃」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「120℃」及び「51℃」であることを示している。
【0049】
また、
図6に示す例は、排熱発電システム10における発電量について、ヒートポンプ7を有しない場合が「68kw」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「77kw」である。
【0050】
さらに、
図6に示す例は、排熱発電システム10における発電増加量、すなわち、ヒートポンプ7を用いたことによる発電増加量からヒートポンプ7の稼働に伴う消費電力量を差し引いた電力量が「4.3kw」であることを示している。
【0051】
このように、
図6に示す例は、ヒートポンプ7を用いた排熱発電を行うことにより、ヒートポンプ7を用いない場合よりも、洗煙排水Wの保有熱を効率的に回収することが可能になり、さらに、排熱発電システム10における発電量を増加させることが可能になることを示している。
【0052】
[第2の比較例における汚泥焼却システム300]
次に、第2の比較例における汚泥焼却システム300について説明を行う。
図7は、第2の比較例における汚泥焼却システム300の概略構成例を説明する図である。なお、以下、
図1で説明した汚泥焼却システム100と異なる点について説明を行う。
【0053】
汚泥焼却システム300は、
図7に示すように、例えば、白煙防止空気予熱器1と煙突4との間において、温水発生器21を有する。
【0054】
温水発生器21は、熱交換器であり、白煙防止空気Aから熱回収を行う。そして、温水発生器21によって熱回収された熱エネルギーは、例えば、循環ポンプP8によって、蒸発器11(排熱発電システム10)に供給される。具体的に、循環ポンプP8は、温水発生器21によって昇温された循環水L4を蒸発器11に供給する。なお、蒸発器11に送られる循環水L4の温度は、例えば、143℃程度である。また、蒸発器11から温水発生器21に送られる循環水L4の温度は、例えば、108℃程度である。
【0055】
排熱発電システム10は、
図7に示すように、
図1で説明した構成に加えて、予熱器16を有する。
【0056】
予熱器16は、蒸発器11の前段に配置され、循環ポンプP3によって循環する循環水L1が有する保有熱(洗煙熱交換器23において回収された熱エネルギー)を用いることにより、作動媒体Lを過熱する。なお、予熱器16に送られる循環水L1の温度は、例えば、72℃程度である。また、予熱器16から洗煙熱交換器23に送られる循環水L1の温度は、例えば、62℃程度である。
【0057】
蒸発器11は、例えば、循環ポンプP8によって循環する循環水L4が有する保有熱(温水発生器22において回収された熱エネルギー)を用いることにより、予熱器16によって過熱された作動媒体Lを蒸発させる。なお、温水発生器21から蒸発器11に送られる循環水L4の温度は、例えば、143℃程度である。また、蒸発器11から温水発生器21に送られる循環水L4の温度は、例えば、108℃程度である。
【0058】
[第2の実施形態における汚泥焼却システム400]
次に、第2の実施の形態における汚泥焼却システム400について説明を行う。
図8は、第2の実施の形態における汚泥焼却システム400の概略構成例を説明する図である。なお、以下、
図3で説明した汚泥焼却システム200及び
図7で説明した汚泥焼却システム300と異なる点について説明を行う。また、
図8に示す配管や循環ポンプの配置位置や数は、一例であり、これに限られるものではない。
【0059】
汚泥焼却システム400は、
図8に示すように、洗煙熱交換器23と排熱発電システム10(蒸発器11及び予熱器16)との間において、分岐器6と、ヒートポンプ7とを有する。また、汚泥焼却システム400は、
図8に示すように、温水発生器21と排熱発電システム10(蒸発器11及び予熱器16)との間において、温水発生器22を有する。
【0060】
ヒートポンプ7は、例えば、蒸発器7aと、吸収器7bと、再生器7cと、凝縮器7dと、循環ポンプP6と、循環ポンプP7とを有する。以下、
図4及び
図5を参照することによって、第2の実施の形態におけるヒートポンプ7の動作のうち、第1の実施の形態におけるヒートポンプ7と異なる動作について説明を行う。
【0061】
[第2の実施形態におけるヒートポンプ7の動作]
吸収器7bは、
図4及び
図5に示すように、循環水L12の供給を受けた場合、蒸気L22を吸収液L31に吸収させる際に発生する吸収熱によって循環水L12を昇温する。そして、吸収器7bは、昇温した循環水L12を温水発生器22に供給する。なお、吸収器7bから温水発生器22に送られる循環水L12の温度は、例えば、120℃程度である。以下、温水発生器22の動作について説明を行う。
【0062】
[温水発生器22の動作]
温水発生器22は、熱交換器であり、吸収器7bから供給された循環水L12から熱回収を行う。具体的に、温水発生器22は、吸収器7bから供給された循環水L12と、蒸発器11から供給された循環水L4との間において熱交換を行う。そして、温水発生器22によって冷却された循環水L12は、例えば、循環ポンプP9によって、予熱器16(排熱発電システム10)に供給される。なお、予熱器16に送られる循環水L12の温度は、例えば、110℃程度である。また、予熱器16から洗煙熱交換器23に送られる循環水L12の温度は、例えば、60℃程度である。
【0063】
さらに、温水発生器22によって昇温された循環水L4は、例えば、循環ポンプP8によって温水発生器21に供給される。なお、温水発生器21から蒸発器11に送られる循環水L4の温度は、例えば、143℃程度であり、蒸発器11から温水発生器22に送られる循環水L4の温度は、例えば、108℃程度である。また、温水発生器22から温水発生器21に送られる循環水L4(温水発生器22において予熱された循環水L4)の温度は、例えば、111℃程度である。
【0064】
すなわち、本実施の形態における汚泥焼却システム400では、温水発生器22によって回収した熱エネルギーについても排熱発電システム10に供給する。
【0065】
これにより、排熱発電システム10では、洗煙排水Wの保有熱をより効率的に利用することが可能になり、排熱発電システム10における発電量をより増加させることが可能になる。
【0066】
また、本実施の形態における汚泥焼却システム400では、吸収器7bによって昇温された循環水L12を温水発生器22に供給して熱交換を行うことによって、蒸発器11と予熱器16とのそれぞれに供給される熱エネルギーを調整することが可能になる。
【0067】
[第2の比較例と第2の実施形態との比較]
図9は、第2の比較例における汚泥焼却システム300と第2の実施の形態における汚泥焼却システム400との比較について説明する図である。具体的に、
図9は、
図7で説明した汚泥焼却システム300(ヒートポンプ7を有しない場合の汚泥焼却システム)と、
図8で説明した汚泥焼却システム400(ヒートポンプ7を有する場合の汚泥焼却システム)との比較について説明する図である。
【0068】
具体的に、
図9に示す例は、排熱発電システム10に供給される熱エネルギーのうち、温水発生器21及び温水発生器22で熱回収を行った熱エネルギー(高温水保有熱量)について、ヒートポンプ7を有しない場合が「2689kw」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「2883kw」であることを示している。
【0069】
また、
図9に示す例は、排熱発電システム10に供給される熱エネルギーのうち、洗煙排水Wが保有する熱エネルギー(洗煙排水保有熱量)について、ヒートポンプ7を有しない場合が「457kw」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「698kw」であることを示している。
【0070】
また、
図9に示す例は、排熱発電システム10に送られる循環水の温度(入口温度)及び排熱発電システム10から送られる循環水の温度(出口温度)について、ヒートポンプ7を有しない場合が「72℃」及び「62℃」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「120℃」及び「60℃」であることを示している。
【0071】
また、
図9に示す例は、排熱発電システム10における発電量について、ヒートポンプ7を有しない場合が「348kw」であるのに対して、ヒートポンプ7を有する場合が「396kw」である。
【0072】
さらに、
図9に示す例は、排熱発電システム10における発電増加量、すなわち、ヒートポンプ7を用いたことによる発電増加量からヒートポンプ7の稼働に伴う消費電力量を差し引いた電力量が、「43.3kw」であることを示している。
【0073】
このように、
図9に示す例は、ヒートポンプ7を用いることによる排熱発電を行うことにより、ヒートポンプ7を用いない場合よりも、洗煙排水Wの保有熱を効率的に回収することが可能になり、さらに、排熱発電システム10における発電効率を高めることが可能になることを示している。
【符号の説明】
【0074】
1:白煙防止空気予熱器 2:集塵機
3:排煙処理塔 4:煙突
6:分岐器 7:ヒートポンプ
7a:蒸発器 7b:吸収器
7c:再生器 7d:凝縮器
10:排熱発電システム 11:蒸発器
12:蒸気タービン 13:発電機
14:再生器 15:凝縮器
16:予熱器 21:温水発生器
22:温水発生器 23:洗煙熱交換器
100:汚泥焼却システム 200:汚泥焼却システム
300:汚泥焼却システム 400:汚泥焼却システム