(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074712
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】トンネル内空情報取得方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220511BHJP
E21D 9/11 20060101ALI20220511BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20220511BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20220511BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220511BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01B11/24 B
E21D9/11 E
E21F17/00
E21D9/00 Z
G01B11/00 B
G01C15/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185010
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】394017446
【氏名又は名称】マック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 宏史
【テーマコード(参考)】
2D054
2F065
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054GA62
2D054GA65
2D054GA82
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA52
2F065BB15
2F065BB27
2F065CC14
2F065CC40
2F065DD06
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL62
2F065MM07
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】計測員兼運転員の勤務都合に左右されることなく、トンネル掘削サイクルの空時間などを利用できる利便性が高いものとする。
【解決手段】
トンネル1内を移動自在に移動する移動体10と、この移動体10に搭載された移動体の移動位置計測手段30、12と、前記移動体10に設けられた自動移動制御手段と、を備え、前記移動体10が移動したある位置において、前記移動位置計測手段30、12が、前記移動体10より後方のトンネル内の既知位置40との相関により、前記移動体10の現位置を把握する現位置把握ステップと、前記現位置把握ステップで得られた現位置に基づき、移動目的位置に対して前記移動体10が移動する自動移動ステップと、前記移動目的位置において、前記移動体側がトンネル1内空情報を取得するトンネル内空情報取得ステップと、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内において、トンネル内の内空情報取得する方法であって、
トンネル内を移動自在に移動する移動体と、
この移動体に搭載された移動体の移動位置計測手段と、
前記移動体に設けられた自動移動制御手段と、を備え、
前記移動体が移動したある位置において、前記移動位置計測手段が、前記移動体より後方のトンネル内の既知位置との相関により、前記移動体の現位置を把握する現位置把握ステップと、
前記現位置把握ステップで得られた現位置に基づき、移動目的位置に対して前記移動体が移動する自動移動ステップと、
前記移動目的位置において、前記移動体側がトンネルの内空情報を取得するトンネル内空情報取得ステップと、を含むことを特徴とするトンネル内空情報取得方法。
【請求項2】
前記移動位置計測手段は、前記移動体に設けられた計測装置、及び異なる位置に設けられた少なくとも3個の第1のターゲットと、前記移動体と離間した位置に設置された測量機とを有し、
前記現位置把握ステップは、前記測量機が前記第1のターゲットのそれぞれを捉え、前記測量機が、既知の坑内基準点情報を基礎として、前記計測装置又は前記移動体の三次元位置を検知するステップであり、
前記トンネル内位置計測ステップは、前記計測装置がトンネル内空情報データを得るステップである、
請求項1記載のトンネル内計測方法。
【請求項3】
前記移動位置計測手段は、前記移動体に設けられた計測装置及び第1のターゲットと、前記移動体と離間した位置に設置された測量機及び第2のターゲットとを有し、
前記現位置把握ステップは、前記測量機が前記計測装置の前記第1のターゲットを捉え、前記計測装置が前記第2のターゲットを捉え、前記測量機が、既知の坑内基準点情報を基礎として、前記計測装置又は前記移動体の三次元位置を検知するステップであり、
前記トンネル内位置計測ステップは、前記計測装置がトンネル内情報を得るステップである、
請求項1記載のトンネル内計測方法。
【請求項4】
前記移動位置計測手段は、前記移動体に設けられた計測装置、第1のターゲット及びジャイロコンパスと、前記移動体と離間した位置に設置された測量機とを有し、
前記現位置把握ステップは、前記測量機が前記第1のターゲットを捉え、前記測量機が、既知の坑内基準点情報を基礎とし、かつ前記ジャイロコンパスによる前記移動体の方位に基づき、前記計測装置又は前記移動体の三次元位置を検知するステップであり、
前記トンネル内位置計測ステップは、前記計測装置がトンネル内情報を得るステップである、
請求項1記載のトンネル内計測方法。
【請求項5】
前記移動体は自動車であり、この自動車に対して架台が設けられ、この架台に対して設けられた計測装置の姿勢を自動で整準する、架台と計測装置との間の整準機構を備える請求項1~4のいずれか1項に記載のトンネル内計測方法。
【請求項6】
前記移動体は走行路周辺の外部環境検出手段が設けられ、かつ、自動操舵装置が設けられ、
前記自動移動ステップは、前記現位置把握ステップで得られた現位置に基づき、移動目的位置に対して、前記外部環境検出手段による外部環境の下で、前記自動操舵装置に従って前記移動体が移動する自動移動ステップを有する、
請求項1記載のンネル内計測方法。
【請求項7】
前記測量機は、トンネル断面の任意点の測定、反射物を使用する定点座標測定、レーザーによるマーキング機能を持ち、切羽距離、断面形状及び変位の少なくとも一つを測定可能である、請求項2~6のいずれか1項に記載のトンネル内計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内空情報取得方法に関する。例えば、トンネル内空の変位計測情報や内空を画像により情報として取得するなどのトンネル内空情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳等トンネルにおいて、トンネル断面の形状を測量してアタリ(計画断面の半径より小さな径の部位)や余掘り(計画断面の半径よりも大きな径の部位)を求める作業、岩盤やコンクリート吹付の状況を画像として取得する作業が要求される。
【0003】
また、切羽を掘削してから覆工コンクリートが打設されるまでの間のトンネル内壁面の地山の変位を計測して、その後の挙動を追跡することは、例えばトンネルの安全性を判断したり、安定したトンネル覆工体を形成するために重要である。例えば、トンネル内壁面の地山の変位を計測して、変位量が好ましくは1~2週間に1mm程度となることで、掘削後の地山が安定したと判断されて、覆工コンクリートが施工されるよう管理されている。
【0004】
トンネル内壁面の地山の変位を計測する従来の方法では、掘削後に吹付けコンクリートによって覆われたトンネル内壁面の所定の位置に、複数のターゲットを配設し、これらのターゲットを、作業の邪魔になり難い位置として、トンネル肩部に固定したトータルステーションで視準したり、測定作業毎に、三脚を用いて作業員がトンネル坑内の路盤上に据え付けたトータルステーションで視準したりすることによって行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
他方、トータルステーションで測定したターゲットの三次元座標を、例えばトンネル坑外の現場事務所に設けた管理コンピュータに、情報通信端末やトンネル坑内の無線通信基地局を介して、無線通信によって転送することでトンネル内壁面の地山の変位を管理することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
近年では、3Dレーザースキャナを使用してより多くの点についてのデータを取得して、トンネル内空変位を検知する技術も提案されている(特許文献3)。
【0007】
3Dレーザースキャナを使用してより多くの点についての点群データを取得する手法は、トンネル内空変位を検知する情報としてきめ細かい多点群のデータとなり有用である。
【0008】
しかし、例えば特許文献3のように、3Dレーザースキャナをトンネル底面に設置して計測する形態では、施工サイクルを短くするのに十分でないものと考えられる。
そこで、本特許出願人は、共同で自動車を利用した機動性の高い計測方法を提案した(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-99670号公報
【特許文献2】特開2008-298432号公報
【特許文献3】特開2014-98704号公報
【特許文献4】特開2018-163063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4のものの有用性は確認済みであるが、十分な経験のある計測員兼運転員が自動車の目的の位置まで運転し、その到達位置において、操作して計測するものであるために、計測員兼運転員の勤務都合による計測の時間帯が制限され、また、計測に必要な時間を十分に短くできず、機敏とはいえがたい形態である。
【0011】
本発明の主たる課題は、計測員兼運転員の勤務都合に左右されることなく、トンネル掘削サイクルの空時間などを利用できる利便性が高いトンネル内空情報取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明は、トンネル内において、トンネル内の内空情報取得する方法であって、
トンネル内を移動自在に移動する移動体と、
この移動体に搭載された移動体の移動位置計測手段と、
前記移動体に設けられた自動移動制御手段と、を備え、
前記移動体が移動したある位置において、前記移動位置計測手段が、前記移動体より後方のトンネル内の既知位置との相関により、前記移動体の現位置を把握する現位置把握ステップと、
前記現位置把握ステップで得られた現位置に基づき、移動目的位置に対して前記移動体が移動する自動移動ステップと、
前記移動目的位置において、前記移動体側がトンネルの内空情報を取得するトンネル内空情報取得ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、計測員兼運転員の勤務都合に左右されることなく(例えば無人で)、トンネル掘削サイクルの空時間などを利用でき、利便性が高いトンネル内空情報取得方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】トンネル内を移動体が移動する形態の説明用の概要斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態における移動車例の正面図である。
【
図6】第2の実施の形態における移動車例の正面図である。
【
図8】第3の実施の形態における移動車例の正面図である。
【
図10】計測状況及び情報伝達系例の概要正面図である。
【
図12】データの処理ステップ例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
トンネルの掘進に伴ってトンネル1の各断面状況(トンネル内状況)は変化する。例えば、
図1に示すように、切羽F手前の各断面S1、S2などにおける、断面形状、内空面変位、余堀状況などが各種測量によって、トンネルの掘進のサイクルタイムごと計測される。その計測手法として、例えば本出願人に係る特許第3418682号などが挙げられる。
【0017】
従来の計測手法及びトンネルの掘進計画(サイクルタイム)によって、トンネル内状況として、例えば断面S1では内空変化が激しい、断面S2では余堀が多いなどのほか、トンネルの掘進計画に伴う掘削機器Mの配置などの情報を得ることができる。
しかし、各断面S1、S2の概要は把握できたとしても詳細まで把握できない。
【0018】
そこで、各断面S1、S2の近くの位置において、トンネルの内空情報を得るのが望ましい。
この場合、本発明の「トンネル内空情報」としては、前述の断面形状、内空面変位、余堀状況、切羽Fの面状況及びこれらの各画像情報などを挙げることができる。
【0019】
また、「トンネル内空情報」としては、従来の測量より高い精度で大量のデータを得ることができる観点から、3Dレーザースキャナを使用して各断面(領域)について詳細な情報を得ることが望ましい。
【0020】
3次元レーザースキャナは、計測対象にレーザーを放射状に照射することで、表面形状の3次元座標やその点群データを画像として取得することができる計測機器である。例えば毎秒数万点以上の速度により非接触で計測し、高密度で面的な点群データを取得することができる。
3次元座標は、レーザーの反射時間から求められる計測対象までの距離と照射角度により算出できる。さらに、1か所からでは計測ができない計測対象の裏側や広範囲なエリアでも、複数のスキャンデータ間でターゲットを共通点にして合成したり、座標付けをすることができる。
【0021】
かかる観点から、3Dレーザースキャナを使用してトンネル内の多くの点についての点群データを取得する手法は、トンネル内壁面の地山の変位、余堀状況、切羽の面状況などに関する情報を精度よく取得するのに有効である。
【0022】
特許文献4においては、その設置位置が既知とされる(たとえばトンネル後方の設置位置が既知ターゲットを計測することにより、トータルステーションの位置情報を取得することができる。)トータルステーションにより、3Dレーザースキャナと一体化して設けられた少なくとも3点のターゲット検知し、3Dレーザースキャナの三次元座標を取得するものである。
この状態で3Dレーザースキャナによるスキャンによりトンネル内壁面のローカル点群データを得ると、そのローカル点群データは、3Dレーザースキャナの三次元座標により、絶対座標上での点群データに変換でき、さらにトンネル座標系の点群データに変換することができる。
したがって、3Dレーザースキャナのスキャンによる基礎データに基づき、最終的にトンネル座標系の多数の点群データを得ることができることは、変位計測の精度を高めることに大きく寄与する。
【0023】
特許文献4の手法は、優れた方法であるが、十分な経験のある計測員兼運転員が自動車の目的の位置まで運転し、その到達位置において、操作して計測するものであるために、計測員兼運転員の勤務都合による計測の時間帯が制限され、機敏とはいえがたい形態である。
さらに、望ましくは人員によるトンネル内の自動車運転を、安全面から回避するようにすること、計測員兼運転員の勤務時間の制限なしに「トンネル内空情報」を得ることができるようにすることが望ましい。
【0024】
そこで、本発明は、トンネル内を移動自在に移動する移動体(例えば自動車)に自動移動制御手段を装備させ、移動目的位置に対して、移動体が移動する自動移動させるようにしたものである。
【0025】
この自動移動過程において、トンネル内では、屋外のようにGPS(GNSS)を利用することはできない。GPS(GNSS)情報と自動車の運転情報(IMU:乾性測位)とを組み合せようとする提案もあるが、トンネル抗口から既に進入した自動車についての位置情報を更新しながら利用はできないとともに、位置精度の点で問題が多い。
【0026】
本発明の実施の形態においては、移動体が移動したある位置において、移動位置計測手段が、前記移動体より後方のトンネル内の既知位置との相関により、移動体の現位置を把握する現位置把握ステップと、この現位置把握ステップで得られた現位置に基づき、移動目的位置に対して移動体を、自動移動制御手段を動作させながら移動する自動移動ステップと、前記移動目的位置において、前記移動体側がトンネルの内空情報を取得するトンネル内空情報取得ステップと、を有するようにしたものである。
さらに具体的な形態を以下に説明する。
【0027】
本発明の移動体としては自動車(ロボット走行車を含む)、モノレール車両、ドローンなどの飛翔体などがあるが、限定されるものではない。
予め、代表的な実施の形態として、移動体が自動車、移動位置計測手段がトータルステーション、フロントターゲット及び(既知位置を構成する)バックターゲット含み、自動移動ステップが、例えばステアリングを含む自動運転のための自動操舵システムを含むもの、トンネル内位置計測ステップが3Dレーザースキャナを使用するものである。
【0028】
そして、例えば
図2に示すように、自動車10は、トンネルの掘進サイクルの適宜の時点で、例えば掘削機器Mを避けながら自動走行し、P3位置において、断面S2の余堀状況の詳細データを取得し、P2位置において、断面S1の内空変位状況の詳細データを取得し、P1位置においては、切羽F断面の切羽状況の詳細データを取得し、掘進サイクルの適宜の時点で後方に退避して次の掘進サイクルを待つものである。
【0029】
<第1の実施の形態>
これを実施するための第1の実施の形態を
図3~
図5によって説明する。
自動車10に、3Dレーザースキャナ20及び第1のターゲット12が設けられ、自動車10と(例えば50~100m)離間した後方位置に設置されたトータルステーション30が設置されている。
【0030】
自動車10には、例えばそのルーフに設置台11を取り付け、その設置台11に3Dレーザースキャナ20を搭載させてある。
また、設置台11には、トータルステーション30に対するターゲット(例えば基準球)12が設けられている。ターゲット12は、例えば、移動車10の前側に設置された3Dレーザースキャナ20に付設して1個、後部の両側部に一対で2個設けられている。
後部の一対のターゲット12、12は、必要により設置される伸縮機構(設置台11上の基台14に対して設けられるが、詳細機構は図示せず)13により、幅方向の離間間隔を三次元位置(位置、方位、傾き)の座標確定精度を高めるために伸長可能なように拡大させ、走行の邪魔にならないように縮小するようになっている。
ターゲット12、12相互の離間間隔を拡大させることにより、3Dレーザースキャナ20の計測精度が高まる。
必要ならば、基台14を設置台11に沿って前後移動可能にすることもできる。また、ターゲット12の数を増やして他の個所に設置することもできる。
【0031】
他方で、予め又は適宜の時点で、トータルステーション30の設置位置情報を取得しておく。例えば、トンネル測量に従って得た、抗口側の後方位置が既知の後方ターゲット40(
図4参照)との位置関係(離間距離及び方位θ)に基づき、トータルステーション30の設置位置情報を取得しておく。
【0032】
第1の実施の形態では、自動車(移動体)10に設けられた3Dレーザースキャナ20、及び異なる位置に設けられた少なくとも3個の第1のターゲット20と、自動車(移動体)10と離間した位置に設置されたトータルステーション30とが移動体の移動位置計測手段を構成している。
そして、現位置把握ステップは、トータルステーション30が第1のターゲット20のそれぞれを捉え、トータルステーション30が、既知の坑内基準点(後方ターゲット40位置)情報を基礎として、3Dレーザースキャナ20又は自動車(移動体)10の三次元位置(位置、方位、傾き)を検知するステップである。
【0033】
そして、現位置把握ステップで得られた現位置に基づき、移動目的位置(例えば前述のP1~P3のいずれかの地点)に対して自動車(移動体)10が移動する自動移動ステップを有する。
この自動移動ステップは、ステアリングを走行ルートに向け、また走行速度を制御し、走行停止及び発進制御などを含む自動操舵システムを含み、
図2に示したように、自動車(移動体)10が移動目的位置まで走行する。
【0034】
この場合、自動車(移動体)10の移動は、無人運転移動が望ましいが、測量経験が無い又は乏しい運転者が自動車(移動体)10に乗車し、定められたレーンに沿って走行するレーンアシスト機能を利用しながら目的位置まで移動するものでもよい。
【0035】
目的位置に到達したならば、トンネル内位置計測ステップに従って、3Dレーザースキャナ20を動作させ、ローカル点群データを得る。このローカル点群データは、トンネルの内空情報として取得することが可能であり、かくしてトンネル内空情報取得ステップが構成されている。
【0036】
現位置把握ステップ及び自動移動ステップを実行するために、
図10も参照されるように、自動車(移動体)10側に、例えばタブレットパソコンなどの第1の情報処理端末31を装備させ、トータルステーション30側にも例えばパソコンなどの第2の情報処理端末36を装備させることができる。
【0037】
そして、自動車(移動体)10側における第1の情報処理端末31から無線でトータルステーション30を作動させて3Dレーザースキャナ20の三次元位置(位置、方位、傾き)を検知することができる。
トータルステーション30としては、3Dレーザースキャナ20と一体のターゲット12の中心を、自動的に見つけ出して測定する機能を備える自動視準・自動追尾タイプのモータ-搭載型トータルステーションを使用できる。
【0038】
トータルステーション30側に、主にその操作用に使用されるパソコンなどの第2の情報処理端末36を設けることができる。必要により、この第2の情報処理端末(図示せず)は、トータルステーション30と組み合せて、切羽のマーキングシステムなどにも利用することが望ましい。第2の情報処理端末36の設置位置に限定はなく、また、作業員が携帯する態様でもよい。
【0039】
図10に示すように、自動車(移動体)10に無線端末33を装備させ、第1の情報処理端末31により、無線でトータルステーション30側に設けた無線端末32を介して遠隔操作によりトータルステーション30を作動させることが好ましい。
逆に、トータルステーション30は、自動車(移動体)10のターゲット12を捉えて3Dレーザースキャナ20又は自動車(移動体)10の位置情報を迅速に取得できる。
【0040】
最終の目的位置において、3Dレーザースキャナ20は動作して、その設置位置近傍の三次元の点群データを取得する(
図3に網点でスキャニング範囲を模式的に示した。)。
この3Dレーザースキャナ20によるローカル点群データは、無線端末33を介して、無線で無線端末32に送信され、トンネル構内の公知の信号伝送システム34により、抗外の事務所のパソコン35により伝送される。
【0041】
図12に3Dレーザースキャナ20によるローカル点群データの処理フローを示した。
すなわち、トータルステーション30による3Dレーザースキャナ20の三次元位置(位置、方位、傾き)に基づいて、ローカル点群データを絶対座標系に変換するステップS2を有する。
この場合、
図12に示すように、予め基準球(ターゲット)の探索条件を与えておき、トータルステーション30による3Dレーザースキャナ20の三次元位置を検知するようにする。
【0042】
続いて、絶対座標系に変換された点群データを、予め設定しておいたトンネル線形、トンネル断面条件などに基づいて、トンネル座標系の点群データに変換するステップS3を有する。
【0043】
次いで、予め、トンネル構内の障害物(風管などの各種管類など)の影響を除外するために、トンネル断面半径や反射率などを設定し、有効データのみを選定処理するステップS4を有する。
【0044】
点群データの数は膨大である。そのために、誤差が生じ易いと共に処理時間が長くなる。そこで、パターンマッチング処理などの(公知の)誤差要因除去手法を利用して、誤差補正するステップS5を有する。
【0045】
以上のステップを経た後、変位計算するS6。
【0046】
これらの一連の処理は、計測作業員が所持するタブレットPC31内で処理することができるが、必要により、一連の処理を事務所のパソコン35で処理することもできる。
【0047】
事務所のパソコン35では、トンネル内空面の図面を作成し、その経時的な変化の管理に利用する。この場合、トンネル内空面の特異点を抽出してその経時的変化を捉えること、トンネル方向の各断面図を作成することなどが有効である。
ここではトンネルの内空変位を中心に述べたが、既述のように、前述の断面形状、内空面変位、余堀状況、切羽Fの面状況及びこれらの各画像情報を取得する態様を含むものである。
【0048】
<第2の実施の形態>
移動体に設けられた自動移動制御手段の構成、移動体の現位置を把握する現位置把握ステップの構成については、
図6及び
図7に示す第2の実施の形態でもよい。
【0049】
すなわち、第2の実施の形態においては、移動位置計測手段は、自動車(移動体)10に設けられた3Dレーザースキャナ20及び第1のターゲット12Fと、自動車(移動体)10と離間した位置に設置されたトータルステーション30及び第2のターゲット12Bとを有する。
【0050】
そして、現位置把握ステップは、トータルステーション30が3Dレーザースキャナ20の第1のターゲット12Fを捉え、3Dレーザースキャナ20が第2のターゲット12Bを捉え、トータルステーション30が、既知の坑内基準点(後方ターゲット40)情報を基礎として、3Dレーザースキャナ20又は自動車(移動体)10の三次元位置(位置、方位、傾き)情報を取得する。を検知するステップである。
【0051】
<第3の実施の形態>
さらに、
図8及び
図9に示す第3の実施の形態でもよい。
【0052】
第3の実施の形態においては、移動位置計測手段は、自動車(移動体)10に設けられた3Dレーザースキャナ20、第1のターゲット12F及びジャイロコンパス50と、自動車(移動体)10と離間した位置に設置されたトータルステーション30とを有する。
【0053】
そして、現位置把握ステップは、トータルステーション30が3Dレーザースキャナ20の第1のターゲット12Fを捉え、トータルステーション30が、既知の坑内基準点(後方ターゲット40)情報を基礎として、3Dレーザースキャナ20又は自動車(移動体)10の三次元位置を検知し、さらにジャイロコンパス50が自動車(移動体)10の又は3Dレーザースキャナ20の方位を検知し、三次元位置(位置、方位、傾き)を検知するステップである。
【0054】
上記の実施の形態のように、3Dレーザースキャナを移動体に搭載させ、ターゲットを一体化させてある。そして、移動体は無人運転移動又はレーンアシスト機能を利用しながら目的位置まで移動するものであるから、計測員兼運転員の勤務都合に左右されることなく、無人で又は経験不足の要員によっても、トンネル掘削サイクルの空時間などを利用してトンネル内の計測ができる。
【0055】
そして各実施の形態においては、トータルステーションを利用することで、GNSS無しで高精度な移動(走行)が可能である。
【0056】
なお、移動体に対して架台が設けられ、この架台に対して設けられた3Dレーザースキャナの姿勢を自動で整準する、架台と3Dレーザースキャナとの間の整準機構を備えるのが望ましい。この整準機構としては、例えば特開2015-7567に記載のものを使用できる。
整準機構を設けることで、3Dレーザースキャナによるスキャン開始までの準備時間を短縮できる。
【0057】
図11に、移動体としての自動車10が移動する自動移動ステップの概要を示した。
自動車10には、例えばジャイロコンパス50、及び走行制御処理装置(CPU)51が設けられ、ステアリング自動操作、自動速度制御装置のほか、フロントには前方カメラ装置52、前方及び側面などにおいてはミリ波レーダー53、赤外線レーダーなどの外部環境監視手段が設けられている。
【0058】
そして、トンネル線形計画(断面形状情報を含む)、トンネル掘進進行度、現変位状況、現余堀状況、掘削サイクルタイムなどに基づき、より詳細な情報を得るために、点群データ取得個所(測定個所)の選定を行い、トンネル掘進進行度などをふまえて測定タイミングを決定し、自動運転の開始を行う。
自動運転の開始指令は、走行制御処理装置(CPU)51に対して行い、走行中は、既述の現位置把握ステップによる現位置情報を時々刻々得て、ジャイロコンパス50からの方位情報を得ながら、ステアリング自動操作、自動速度制御装置を動作させるものである。この際、現位置データは順次フィードバックされながら走行方向及び速度の変更が行われる。
前方カメラ装置52、ミリ波レーダー53などの外部環境監視手段は安全走行のために利用される。
【0059】
トータルステーションは、切羽距離、断面形状、変形測定、掘削サイクルタイムなどを取得する機能を有する。その結果、従来技術に見られるGNSS等の位置情報とミリ波レーダー等の外部環境監視手段による車両自動走行と比較し、よりトンネルの実情に応じた制御が可能となる。
すなわち、例えば、トータルステーションが取得した切羽距離情報から、切羽近傍の掘削データや画像データ取得のために、どこまで車両を自動走行させれば良いかの判断が可能である。
また、トータルステーションが取得した断面形状情報や変形測定情報から、異常データが見られる箇所のみ、3Dスキャナーによる詳細測定を行えばよい等の理由によって、業務効率向上を図ることができる。
さらに取得された掘削サイクルタイム情報により、空気が清浄なロックボルト施工中に、3Dスキャナーによる詳細測定を行えばよく、また、ロックボルト施工中は切羽中央に重機が存在するので、切羽近傍は中央からシフトした移動体(例えば自動車)の進路を取らなければならない等の詳細な判断も可能となる。
【0060】
前述のように、3Dレーザースキャナ20を使用してより多くの点についての点群データを取得する手法は、トンネル内壁面の地山の変位、余堀状況、切羽状況などを精度よく計測するのに有効である。
3Dレーザースキャナとしては市販のものを使用でき、例えばFARO社から入手できる「Focus3D」を使用できる。
【0061】
上記例においては、移動体として自動車を挙げたがドローン、モノレールなどでもよい。
また、移動体として、トンネル工事に使用される重機に自動運転機能が備えられている場合、その重機を本発明に係る移動体とし、この移動体(重機)に移動位置計測手段を搭載し、本発明の実施の形態を採ることができる。
移動体には、粉じんや水の多いトンネル内ということを考慮し、測定器の保護機構を設けるのが望ましい。保護機構としては自動開閉式のケースや、透過率の高いガラスに自動除塵機構を備えたケースが使用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…トンネル、10…移動車(移動体)、12、12F、12B…ターゲット、20…3Dレーザースキャナ、30…トータルステーション、31…タブレットPC、35…事務所のパソコン、50…ジャイロコンパス。