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特開2022-74757多拠点連動式の計測装置および測量システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074757
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】多拠点連動式の計測装置および測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20220511BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220511BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01C15/00 104D
E21D9/06 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185081
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】米須 敏之
【テーマコード(参考)】
2D054
2F065
【Fターム(参考)】
2D054AA10
2D054AC18
2D054GA62
2D054GA65
2D054GA94
2F065AA04
2F065AA37
2F065BB15
2F065BB27
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF61
2F065FF65
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ05
2F065MM06
2F065MM16
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065QQ41
(57)【要約】
【課題】掘進路がカーブする推進工法などの現場においても掘進機の座標をより精度良く求めるための手段を提供する。
【解決手段】前方標識、後方標識、計測装置、演算装置と、を少なくとも有し、計測装置は、前方標識までの距離を算出するための距離取得手段と、後方標識を撮影してなる後方撮影画像を取得する後側カメラと、計測装置のピッチ角を少なくとも含んだ姿勢値を取得する傾斜計と、を少なくとも有する。演算装置は、(a)後方標識及び計測装置の座標、(b)姿勢値、(c)後方撮影画像に映る二点の前マーカから求める、後側カメラの光軸から前記前方標識までの垂直角度および水平角度、(d)計測装置から前方標識までの距離、を用いて、前方標識の座標を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量システムであって、
前方点に配置される、前方標識と、
後方点に配置される、後方標識と、
中間点に配置される、計測装置と、
前記計測装置に組み込まれるか、または別体の装置で構成される、演算装置と、を少なくとも有し、
前記計測装置は、
前記前方標識までの距離を算出するための、距離取得手段と、
前記後方標識を撮影してなる後方撮影画像を取得する、後側カメラと、
前記計測装置のピッチ角を少なくとも含んだ姿勢値を取得する、傾斜計と、を少なくとも有し、
前記後方標識は、
前記後側カメラで撮影対象とされる、互いに離隔する二点の前マーカを少なくとも有し、
前記演算装置は、
(a)前記後方点及び前記中間点の座標、
(b)前記姿勢値、
(c)前記後方撮影画像における二点の前マーカから求める、前記後側カメラの光軸から前記前方標識までの垂直角度および水平角度、
(d)前記計測装置から前記前方標識までの距離、
を用いて、前記前方点の座標を算出することを特徴とする、
測量システム。
【請求項2】
前記姿勢値に、さらに前記計測装置のロール角が含まれていることを特徴とする、
請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記前方標識は、
前記前側カメラで撮影対象とされる、互いに離隔する二点の後マーカを少なくとも有し、
前記距離取得手段が、
前記前方標識を撮影してなる前方撮影画像を取得する、前側カメラであり、
前記演算装置は、
少なくとも前記前方撮影画像における前記二点の後マーカの離角から、前記前方標識までの距離を求めることを特徴とする、
請求項1または2に記載の測量システム。
【請求項4】
前記演算装置は、
前記前方撮影画像における前記二点の後マーカの離角、および、
前記前方撮影画像に映る前記二点の後マーカをつなぐ線分の水平方向に対する傾斜角から、前記前方標識までの距離を求めることを特徴とする、
請求項3に記載の測量システム。
【請求項5】
前記前方標識または前記後方標識までの距離を求める距離計を更に含むことを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の測量システム。
【請求項6】
前記計測装置を、前記前方標識としての機能を発揮可能に構成してあることを特徴とする、
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の測量システム。
【請求項7】
前記計測装置を、前記後方標識としての機能を発揮可能に構成してあることを特徴とする、
請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の測量システム。
【請求項8】
複数の測量点にそれぞれ配置して、各測量点の座標を順次算出するための計測装置であって、
計測装置の前方を撮影可能な、前側カメラと、
計測装置の後方を撮影可能な、後側カメラと、
少なくとも計測装置のピッチ角を少なくとも含んだ姿勢値を取得可能な、傾斜計と、
前方に位置する別体の計測装置に設けた後側カメラの撮影対象となる、互いに離隔する二点の前マーカと、
後方に位置する別体の計測装置に設けた前側カメラの撮影対象となる、互いに離隔する二点の後マーカと、
を少なくとも具備してなることを特徴とする、
計測装置。
【請求項9】
前記姿勢値に、さらに前記計測装置のロール角が含まれていることを特徴とする、
請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
計測装置から測定対象までの距離を算出可能な距離計を更に具備することを特徴とする、
請求項8または9に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法等における掘進機の位置の測量等に適用可能な、多拠点連動式の計測装置および測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法において、地中で掘削する推進機の位置を計測するための技術として、以下の特許文献1に記載の計測システムが知られている。
この計測システムは、推進機の後方に複数の計測装置を各推進管に設置しておき、ある計測装置に対し、前方に配置した別体の計測装置と、後方に配置した別体の計測装置とをそれぞれ撮影し、必要に応じてローリング補正を行いつつ当該撮影画像を画像処理して各計測装置の座標を演算することで、最終的に推進機の位置を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4928130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した特許文献1に記載の計測システムと比較して、より利便性に優れる手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、測量システムであって、前方点に配置される、前方標識と、後方点に配置される、後方標識と、中間点に配置される、計測装置と、前記計測装置に組み込まれるか、または別体の装置で構成される、演算装置と、を少なくとも有し、前記計測装置は、前記前方標識までの距離を算出するための、距離取得手段と、前記後方標識を撮影してなる後方撮影画像を取得する、後側カメラと、前記計測装置のピッチ角を少なくとも含んだ姿勢値を取得する、傾斜計と、を少なくとも有し、前記後方標識は、前記後側カメラで撮影対象とされる、互いに離隔する二点の前マーカを少なくとも有し、前記演算装置は、(a)前記後方点及び前記中間点の座標、(b)前記姿勢値、(c)前記後方撮影画像における二点の前マーカから求める、前記後側カメラの光軸から前記前方標識までの垂直角度および水平角度、(d)前記計測装置から前記前方標識までの距離、を用いて、前記前方点の座標を算出することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記姿勢値に、さらに前記計測装置のロール角が含まれていることを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記前方標識は、前記前側カメラで撮影対象とされる、互いに離隔する二点の後マーカを少なくとも有し、前記距離取得手段が、前記前方標識を撮影してなる前方撮影画像を取得する、前側カメラであり、前記演算装置は、少なくとも前記前方撮影画像における前記二点の後マーカの離角から、前記前方標識までの距離を求めることを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第3発明において、前記演算装置は、前記前方撮影画像における前記二点の後マーカの離角、および、前記前方撮影画像に映る前記二点の後マーカをつなぐ線分の水平方向に対する傾斜角から、前記前方標識までの距離を求めることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第1発明乃至第4発明のうち何れか1つの発明において、前記前方標識または前記後方標識までの距離を求める距離計を更に含むことを特徴とする。
また、本願の第6発明は、前記第1発明乃至第5発明のうち何れか1つの発明において、前記計測装置を、前記前方標識としての機能を発揮可能に構成してあることを特徴とする。
また、本願の第7発明は、前記第1発明乃至第6発明のうち何れか1つの発明において、前記計測装置を、前記後方標識としての機能を発揮可能に構成してあることを特徴とする。
また、本願の第8発明は、複数の測量点にそれぞれ配置して、各測量点の座標を順次算出するための計測装置であって、計測装置の前方を撮影可能な、前側カメラと、計測装置の後方を撮影可能な、後側カメラと、少なくとも計測装置のピッチ角を少なくとも含んだ姿勢値を取得可能な、傾斜計と、前方に位置する別体の計測装置に設けた後側カメラの撮影対象となる、互いに離隔する二点の前マーカと、後方に位置する別体の計測装置に設けた前側カメラの撮影対象となる、互いに離隔する二点の後マーカと、を少なくとも具備してなることを特徴とする。
また、本願の第9発明は、前記第8発明において、前記姿勢値に、さらに前記計測装置のロール角が含まれていることを特徴とする、
請求項8に記載の測量システム。
また、本願の第10発明は、前記第8発明または第9発明において、計測装置から測定対象までの距離を算出可能な距離計を更に具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)計測装置で取得した測定データと、画像処理とを組み合わせることで、計測装置の前方にある前方標識の座標をより高速かつ高精度に求めることができる。
(2)計測装置に設ける各種センサに市販製品を用いることができ、専用品の製作を要しないため、比較的安価に測量システムを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る測量システムのシステム構成を示すイメージ図。
図2】計測装置と各標識間の位置関係に基づく各撮影画像のイメージ図。
図3】前方標識までの距離の算出に用いるモデル図。
図4】前方標識のX座標およびZ座標の算出に用いるモデル図。
図5】前方標識のY座標の算出に用いるモデル図。
図6】後方撮影画像を用いた画像処理のイメージ図。
図7】推進工法での適用例を示す図。
図8】測量手順のイメージ図。
図9】実施例2に係る測量システムでのロール補正のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【実施例0009】
<1>全体構成(図1
本発明に係る測量システムは、図1に示すように、座標が定まっていない一点(前方点E)に設置される前方標識10と、座標が定まっている二点のうち一方の点(後方点F)に設置される後方標識20と、座標が定まっている二点のうち他方の点(中間点G)に設置される計測装置30と、前記計測装置30に組み込まれるかまたは別体の装置で構成され、前記計測装置30で得た情報に基づいて前記前方標識10の座標を算出可能な、演算装置40と、を少なくとも有して構成する。
なお、測量の進捗に応じて、各点に設置する装置の役割は変化するため、各点に設置する装置を、計測装置30、前方標識10および後方標識20の機能を全て具備するものとし、各装置を、有線または無線を問わずに、互いに情報の送受信が可能となるよう構成してもよい。
【0010】
<2>前方標識(図1図2
前方標識10は、座標を求める箇所に設置される部材である。
前方標識10は、後方に位置する計測装置30に設けた前側カメラ311で撮影対象とされる後マーカ11を、所定間隔を空けて少なくとも二箇所以上配置して構成する。
この二点の後マーカ11を結ぶ線分の中心を中心点12とし、前方標識10の座標点(前方点E)とする。
【0011】
<3>後方標識(図1図2
後方標識20は、後述する計測装置30の後方に設置される部材である。
後方標識20は、前方に位置する計測装置30に設けた後側カメラ32で撮影対象とされる前マーカ21を、所定間隔を空けて少なくとも二箇所以上配置して構成する。
この二点の前マーカ21を結ぶ線分の中心を中心点22とし、後方標識20の座標点(後方点F)とする。
【0012】
<4>計測装置(図1図2
計測装置30は、前記した前方標識10および後方標識20を撮影する作業と、当該計測装置30に備えた各種の測定手段による測定作業を行うための装置である。
本実施例では、計測装置30に、距離取得手段31としての前側カメラ311と、後側カメラ32と、傾斜計33とを少なくとも具備している。
なお、本実施例では、前側カメラ311のカメラ光軸と、後側カメラ32のカメラ光軸とが一致した状態としている。
【0013】
<4.1>前側カメラ(図1図2
前側カメラ311は、計測装置30の前方を撮影範囲とするカメラである。
図2にイメージ図として示した、前側カメラ311で撮影した画像(前方撮影画像)には、前方標識10に設けた二点の後マーカ11が撮影対象として含まれている。
この前方撮影画像から得られる情報は、後述する演算装置40による前方標識10の座標演算で使用される。
【0014】
<4.2>後側カメラ(図1図2
後側カメラ32は、計測装置30の後方を撮影範囲とするカメラである。
図2に示す、後側カメラ32で撮影した画像(後方撮影画像)には、後方標識20に設けた二点の前マーカ21が撮影対象として含まれている。
この後方撮影画像から得られる情報は、後述する演算装置40による前方標識10の座標演算に使用される。
【0015】
<4.3>傾斜計(図1
傾斜計33は、計測装置30の姿勢値を求めるための計測機器である。
この姿勢値には、少なくとも計測装置30の左右方向軸(Y軸)回りの角度であるピッチ角(θ)が含まれている。
【0016】
<4.4>その他
なお、図1において図示しないが、計測装置30に、前述した前方標識10や後方標識20の機能を付与したい場合には、計測装置30に、後マーカ11や前マーカ21に相当する部材を設けて、別体の計測装置からの撮影対象となるように構成することもできる。
【0017】
<5>演算装置(図1
演算装置40は、計測装置30で測定した各測定値と、後方標識20の座標、および計測装置30の座標に基づいて、前方標識10の座標を求めるための装置である。
本実施例では、演算装置40として、計測装置30と情報の送受信を可能に構成した情報処理端末を用いている。
この情報処理端末に備えた、CPU,メモリなどのハードウェアを用いて座標計算処理を含んだプログラムを実行することで、演算処理を実行する。
【0018】
<6>演算装置による演算手順(図3図5
演算装置40による、前方標識10の座標演算には、種々の計算式(近似式を含む)を用いることができ、本発明において特段限定するものではない。
なお、本実施例では、前方標識10の座標(X,Y,Z)を求める演算処理に、以下のパラメータを用いる。
(a)後方点F及び中間点Gの座標(X,Y,Z),(X,Y,Z
(b)計測装置30の傾斜計33から取得したピッチ角(θ)を少なくとも含む姿勢値
(c)後方撮影画像における後側カメラ32の光軸から後方標識20の中心点22までの垂直角度(BV)および水平角度(BH)
(d)前方撮影画像における二点の後マーカ11間の直線距離(L)、前方撮影画像中の二点の後マーカ11をつなぐ線分の水平方向に対する傾斜角(φ’)、上下方向の離角(dV)および左右方向の離角(dH)
以下、図3図6を参照しながら、上記4種のパラメータを用いた前方標識10の座標の演算処理の一例について説明する。
【0019】
<6.1>前方標識までの距離[FL]の算出(図3
まず、図3(a)のモデル図に示す[dL]は、例えば以下の数式から求めることができる。
[数1]
φ’:前方撮影画像中の二点の後マーカをつなぐ線分の水平方向に対する傾斜角[°]
dV:前方撮影画像中の後マーカ間の上下方向の離角[°]
dH:前方撮影画像中の後マーカ間の左右方向の離角[°]
[数2]
dL:前方撮影画像における二点の後マーカ間の直線距離のうちY成分の距離[mm]
L:前方撮影画像における二点の後マーカ間の直線距離[mm]
φ’:前方撮影画像中の二点の後マーカをつなぐ線分の水平方向に対する傾斜角[°]
【0020】
なお、本発明に係る測量システムを用いる現場において、特に前方撮影画像中のローリング量が僅かとされる現場においては、前記した傾斜角(φ’)を考慮せずに、前記した[L]をそのまま[dL]として取り扱ってもよい。
【0021】
そして、図3(b)のモデル図に示す[FL]は、例えば以下の数式から求めることができる。
[数3]
[数4]
FL:計測装置から前方標識までの距離[mm]
dH:前方撮影画像中の後マーカ間の左右方向の離角[°]
dL:前方撮影画像における二点の後マーカ間の直線距離のうちY成分の距離[mm]
【0022】
<6.2>後方標識までの距離[BL]の算出(図1または図5
計測装置30から後方標識20までの距離[BL]は、後方標識20を設置してある後方点Fの座標(X,Y,Z)及び、計測装置30を設置してある中間点Gの座標(X,Y,Z)から求めることができる。
また、本発明では、後側カメラ32で後方標識20を撮影してなる後方撮影画像を用い、前述した<6.1>に係る[FL]の算出と同様の方法を用いて[BL]を算出してもよい。
また、両方の方法を用いて算出した[BL]の平均値を最終的な[BL]としてもよい。
【0023】
<6.3>前方標識のX座標[X]およびZ座標[Z]の算出(図4
前方標識10(前方点E)のX座標およびZ座標(X,Z)は、図4のモデル図に基づき、例えば以下の数式から求めることができる。
【0024】
[数5]

:前方標識のX座標[mm]
:計測装置のX座標[mm]
FL:計測装置から前方標識までの距離[mm]
θ:傾斜計によるピッチ角[°]
FV:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度[°]
【0025】
[数6]


:前方標識のZ座標[mm]
:計測装置のZ座標[mm]
FL:計測装置から前方標識までの距離[mm]
θ:傾斜計によるピッチ角[°]
FV:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度[°]
【0026】
<6.4>前方標識のY座標[Y]の算出(図5図6
前方標識10(前方点E)のY座標(Y)は、図5図6のモデル図に基づき、例えば以下の数式から求めることができる。
【0027】
[数7]
FL:前側カメラの垂直軸から前方標識までのX成分の距離[mm]
FL:計測装置から前方標識までの距離[mm]
FV:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度[°]
【0028】
[数8]
BL:後側カメラの垂直軸から後方標識までのX成分の距離[mm]
BL:計測装置から後方標識までの距離[mm]
BV:後方撮影画像における後側カメラの光軸から後方標識の中心点までの垂直角度[°]
【0029】
[数9]
FL:前側カメラの垂直軸から前方標識までのY成分の距離[mm]
FL:前側カメラの垂直軸から前方標識までのX成分の距離[mm]
FH:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの水平角度[°]
【0030】
[数10]
BL:後側カメラの光軸から後方標識までのY成分の距離[mm]
BL:後側カメラの垂直軸から後方標識までのX成分の距離[mm]
BH:後方撮影画像における後側カメラの光軸から後方標識の中心点までの水平角度[°]
【0031】
[数11]
Yaw:計測装置のヨーイング角[°]
BL:後側カメラの光軸から後方標識までのY成分の距離[mm]
:計測装置のY座標[mm]
:後方標識のY座標[mm]
BL:後側カメラの垂直軸から後方標識までのX成分の距離[mm]
【0032】
[数12]
dY:前側カメラ垂直軸から見た、X軸に対する前側カメラ光軸の前方標識上での差分[mm]
FL:前側カメラの垂直軸から前方標識までのX成分の距離[mm]
Yaw:計測装置のヨーイング角[°]
【0033】
[数13]
:前方標識のY座標[mm]
FL:前側カメラの垂直軸から前方標識までのY成分の距離[mm]
dY:前側カメラ垂直軸から見た、X軸に対する前側カメラ光軸の前方標識上での差分[mm]
【0034】
<6.5>まとめ
上記で例示した演算手順等を実行することにより、前方標識10の座標(X,Y,Z)を求めることができる。
【0035】
<7>推進工法での適用例(図7
図7に、本発明に係る測量システムを推進工法に適用した場合のイメージ図を示す。なお、図7では、説明を簡略化するために掘進路を直線状に図示しているに過ぎず、掘進路がカーブする例においても同様の座標演算が可能である。
【0036】
まず、図7(a)に示すように、掘進機の掘削開始位置で予め座標が定まっている二点を、バック点Cおよび基準点Dとして坑内にそれぞれ設け、掘進機Aに前方標識10を設けた状態から掘進を開始する。
掘進当初は、基準点Dに設けた、公知の測量器によって前方標識10の座標を直接求めていくことができる。
なお、バック点Cに後方標識20に相当する装置を設置しつつ、基準点Dに計測装置30に相当する装置を設置しておけば、掘進当初から掘進機Aに設けた前方標識10の座標を、演算装置40を用いて求めても良い。
【0037】
掘進路のカーブや、離隔長の増大等の要因によって、基準点Dから掘進機Aに設けた前方標識10の測量ができなくなった場合、図7(b)、図7(c)に示すように、継ぎ足した推進管に新たに計測装置30を設置していき、基準点Dから前方に向かって、継ぎ足した計測装置30の座標を求めていくことで、最終的に掘進機Aに設けた前方標識10の座標を求めていくことができる。
【0038】
<7.1>測量手順のイメージ(図8
さらに、図8を参照しながら、各測量点の座標を求める手順の一例を説明する。
前提条件として、基準点Dおよびバック点Cは予め座標が定まっている状態を想定する。そして、基準点Dには、次工程の測量で後方標識20として機能可能な測量器50などを設けておく。なお、前記基準点に測量器50が設置できない場合などには、基準点に本発明に係る計測装置30を設置してもよい。
(1)図8(a):基準点Dに設置した後方標識20として機能する測量器50を後方点F、推進管B2に配置した計測装置30を中間点G、推進管B1に設置した計測装置30を前方点E、にそれぞれ見立てて、後方点Fおよび中間点Gの座標、ならびに中間点Gの計測装置30で得た測定データに基づいて前方点Eの座標を算出する。
(2)図8(b):推進管B2に配置した後方標識20として機能する計測装置30の座標を後方点F、推進管B1に配置した計測装置30を中間点G、掘進機Aに設置した前方標識10を前方点Eにそれぞれ見立てて、後方点Fおよび中間点Gの座標、ならびに中間点Gの計測装置30で得た測定データに基づいて前方点Eの座標を算出する。
(3)このように、各測量点に設置する計測装置30は、測量の進捗が進むにつれて、前方標識10として機能したり、計測装置30として機能したり、後方標識20として機能していくことで、前方に向かって順番に各計測装置30の座標が特定されていき、最終の前方標識10に相当する掘進機Aの座標を最終的に求めることができる。
【0039】
なお、本発明では全ての測量点に、計測装置30を設置する構成に限定するものではなく、例えば、推進工法における掘進機Aの測量点に設置する装置としては、後述する前方標識10のみの機能を発揮する装置であってもよい。
【実施例0040】
次に、本発明に係る測量システムの第2実施例について説明する。
【0041】
<1>傾斜計によるロール角の取得
本発明では、計測装置30に設けた傾斜計33で取得する姿勢値の中に、ピッチ角(θ)に加えて、計測装置30の前後方向軸(X軸)回りの角度であるロール角(φ)を含めることもできる。
ロール角(φ)は、演算装置40での前方標識10の座標計算に使用することができる。例えば、前記実施例1における<6.3>以降の演算で用いるFHおよびFVについて、前方撮影画像から求めたFHおよびFVをそのまま用いずに、当該FHおよびFVに対し、計測装置30のロール角(φ)による補正を行ったものを用いると、前方標識10の座標演算の精度向上に寄与する。
【0042】
<2>計算方法
以下、補正後のFHcorおよびFVcorの計算方法の一例について説明する。
なお、ロール角の正負と、二次元上の第1象限~第4象限の何れの象限に各マーカが位置するかによっても、補正後のFHcorおよびFVcorの計算式は変わり得るため、本発明の権利範囲は、後述する計算方法によって限定されるものではない。
【0043】
<2.1>計算方法1(図9
例えば図9に示すモデル図のように、二次元上の第2象限にマーカが位置し、かつ計測装置30のロール角(φ)がマイナス側のときには、補正後のFHcorおよびFVcorは以下の数式から求めることができる。
【0044】
[数14]
[数15]
[数16]
FHcor:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの水平角度にロール補正を行ったもの[°]
FH:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの水平角度[°]
FV:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度[°]
φ:傾斜計によるロール角[°]
【0045】
[数17]
[数18]
[数19]
[数20]
FVcor:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識中心までの垂直角度にロール補正を行ったもの[°]
FH:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識中心までの水平角度[°]
FV:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度[°]
【0046】
<2.2>計算方法2
また、図示しないが、前記した計測装置30のロール角がプラス側の際には、補正後のFHcorおよびFVcorは、最終的に以下の数式から求めることができる。
[数21]
[数22]
【0047】
<2.3>計算方法3
その他にも、FHcorおよびFVcorの演算には、以下の計算式を用いることもできる。
[数23]
[数24]
FHcor:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの水平角度にロール補正を行ったもの[°]
FVcor:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度にロール補正を行ったもの[°]
FH:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの水平角度[°]
FV:前方撮影画像における前側カメラの光軸から前方標識の中心点までの垂直角度[°]
【0048】
<3>まとめ
この補正後のFHcorおよびFVcorを、前記実施例1における<6.3>以降の演算で用いるFHおよびFVとして用いることで、より精度の高い態様で、前方標識10の座標を求めることができる。
【実施例0049】
本発明では、計測装置30から前方標識10までの距離[FL]や、計測装置30から後方標識20までの距離[BL]を測定するために、計測装置30に別途距離計を設けてもよい(図示せず)。
この距離計には、前方標識10や後方標識20などの測定対象に別途設けたプリズムにレーザーを照射し、反射したレーザーの到達時間から距離を算出するタイプや、その他公知の距離計を用いることができる。
計測装置30に別途設けた距離計で求めた[FL]や[BL]は、前記した実施例1の<6.1><6.2>で求める[FL]や[BL]の代替として用いても良いし、それぞれ求めた[FL]や[BL]から平均値を算出して最終的な[FL]や[BL]として扱ってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 前方標識
11 後マーカ
20 後方標識
21 前マーカ
22 中心点
30 計測装置
31 距離取得手段
311 前側カメラ
312 距離計
32 後側カメラ
33 傾斜計
34 前マーカ
35 後マーカ
40 演算装置
50 測量器
A 掘進機
B 推進管
C バック点
D 基準点
E 前方点
F 後方点
G 中間点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9