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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074764
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ヒーターチップユニット
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20220511BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H05K3/32 C
B23K20/00 340
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185095
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】598131650
【氏名又は名称】株式会社アポロ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】須賀 伸一郎
【テーマコード(参考)】
4E167
5E319
【Fターム(参考)】
4E167BB06
4E167DA04
5E319AB01
5E319CC12
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】冷却効率の高いヒーターチップ、およびヒーターチップユニットを提供する。
【解決手段】端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップ2であって、端子用導線に当接するコテ先部7をコテ本体6に備えたコテ部4と、コテ本体6の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体6に流してコテ部4を昇温させる一対の接続腕部5と、を備え、コテ本体6と接続腕部5との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面14を両側に有する窪部13が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を縁に有する窪部が形成されていることを特徴とするヒーターチップ。
【請求項2】
前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記窪部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のヒーターチップ。
【請求項3】
端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を両側に有する溝部が形成されていることを特徴とするヒーターチップ。
【請求項4】
前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記溝部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項3に記載のヒーターチップ。
【請求項5】
少なくとも前記発熱部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項4に記載のヒーターチップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のヒーターチップのコテ部の近傍に温度センサーを備えたヒーターチップユニットであって、
該温度センサーの表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とするヒーターチップユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子用導線を端子部材に熱圧着するためのヒーターチップ、およびヒーターチップに温度センサーを備えたヒーターチップユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
端子用導線を端子部材に熱圧着する作業、例えば、チップインダクター等の電子部品の製造においてリード線をコアの端子部に熱圧着する作業においては、熱圧着用のヒーターチップユニットが用いられる。具体的には、コテ部が昇温するヒーターチップに温度センサーとして熱電対などを取り付けてヒーターチップユニットを構成し、このヒーターチップユニットを熱圧着装置のツールホルダーへ取り付ける。そして、熱圧着装置を作動し、端子部材に載せた端子用導線をヒーターチップのコテ部により加圧しながら急加熱して、端子用導線を端子部材へ熱圧着する(例えば、特許文献1参照)。
そして、熱圧着する工程では、熱により気化した導線の被覆の一部がヒュームとなりコテ先面に付着する。また、ヒーターチップは繰り返し昇温、冷却されるので、コテ先面が次第に酸化して微細な凹凸ができる。このため、熱圧着後、砥石や研磨紙などにコテ先面を押し当てつつコテ先面に平行に移動させることにより付着していた被覆を剥がすと共にコテ先面の酸化物を研磨し、清浄な平面に修正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-284781号公報
【特許文献2】特開2012-222316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献に記載のヒーターチップ(ヒーターチップユニット)においては、電流密度を高めて発熱効率を上げるために電流が通る部分の断面積を小さく絞る傾向にある。具体的には、端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設されて電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部とを導電性板材から成形し、コテ部の近傍に熱電対を取り付けて構成されている。そして、近年、発熱効率を高めるために発熱部の板厚を小さくする傾向にあり、例えば、接続腕部をコテ先部に向けて板幅を次第に小さくすると共に板厚を次第に小さくして発熱部の断面積を小さく作製する。しかし、発熱部の板厚を小さくすると、剛性を確保することが困難になる。このため、作業者がヒーターチップを取り出したり装置のホルダーに取り付けて締め付ける際、さらには、熱圧着後にコテ先面の酸化物を研磨する際に、発熱部近傍にクラックが入ったり破損したりすることがある。
また、発熱部の断面積を小さくして熱効率を高めても、断面積を小さくしたことで表面積が減少することとなり、これにより電流を遮断した後の冷却時間が長くなって単時間当たりの作業回数が減少するという不都合を生じる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流が通過して発熱する部分の断面積を小さくしても十分な剛性が確保できるヒーターチップ、およびヒーターチップユニットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部の少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を縁に有する窪部が形成されていることを特徴とするヒーターチップである。
【0007】
請求項2に記載のものは、前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記窪部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のヒーターチップである。
【0008】
請求項3に記載のものは、端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部の少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を両側に有する溝部が形成されていることを特徴とするヒーターチップである。
【0009】
請求項4に記載のものは、前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記溝部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項3に記載のヒーターチップである。
【0010】
請求項5に記載のものは、少なくとも前記発熱部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項2または4に記載のヒーターチップである。
【0011】
請求項6に記載のものは、請求項1から5のいずれかに記載のヒーターチップに温度センサーを備えたヒーターチップユニットであって、
該温度センサーの表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とするヒーターチップユニットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、コテ本体と接続腕部の少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を縁に有する窪部が形成されているので、窪部の壁面の外側の部分がリブとして機能し、これにより剛性を確保することができる。また、窪部を形成することに伴って周りにできる壁面の分だけヒーターチップの表面積を増加させることができ、これにより空気に触れる面積が増えて放熱機能を高めることができる。したがって、冷却時間が短縮されてタクト時間の短縮化を図ることができ、これにより生産効率を高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記窪部の一部と前記壁面の一部が含まれているので、発熱部の冷却時間の短縮化に寄与することができ、生産効率を高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、コテ本体と接続腕部の少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を両側に有する溝部が形成されているので、溝部の壁面の外側の部分がリブとして機能し、これにより剛性を確保することができる。また、溝部を形成することに伴って溝の両側にできる壁面の分だけヒーターチップの表面積を増加させることができ、これにより空気に触れる面積が増加させて放熱機能を高めることができる。したがって、冷却時間が短縮されてタクト時間の短縮化を図ることができ、これにより生産効率を高めることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記溝部の一部と前記壁面の一部が含まれているので、発熱部の冷却時間の短縮化に寄与することができ、生産効率を高めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、少なくとも前記発熱部の表面に耐酸化性被膜層が形成されているので、酸化し易さを抑えることができ、耐久性を高めることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、ヒーターチップに温度センサーを備え、この温度センサーの表面に耐酸化性被膜層が形成されているので、加熱と放冷が繰り返されても酸化のし易さを抑えることができ、ヒーターチップユニットの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】直線状の窪部を接続腕部の下半に形成したヒーターチップユニットの斜視図である。
図2】接続腕部の下半部分からコテ本体に亘って窪部を形成したヒーターチップの斜視図である。
図3】コテ部から接続腕部の下端部分に窪部を形成したヒーターチップの正面図である。
図4】熱電対を装着したヒーターチップユニットの正面図である。
図5】溝部の他の実施形態の断面図である。
図6】接続腕部の途中にも凹部を形成したヒーターチップの斜視図である。
図7】接続腕部の途中に溝部を形成したヒーターチップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
ヒーターチップユニット1は、端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップ2と、温度センサーとして取り付けられた熱電対3とを備えて構成されている。
【0020】
ヒーターチップ2は、導電性材料(タングステン,モリブデン、超硬材等)の板材をワイヤー放電加工により加工して成形されたチップであり、図1に示すように、このヒーターチップ2の下部(ワーク(端子用導線や端子部材)側に位置する先端部)となるコテ部4と、上部(基部)となる左右一対の接続腕部5とを備えて構成されている。そして、接続腕部5を介してコテ部4へ通電したときに電気抵抗、特に断面積を他の部分よりも小さく設定した接続腕部5の下部乃至コテ部4の間が発熱部として機能し、効率よく発熱してコテ部4を昇温する構成を採り、コテ部4の温度を熱電対3によって測定可能としている。
【0021】
コテ部4は、接続腕部5の下部同士を接続する横長なコテ本体6を備え、僅かに下方に突出したコテ本体6の底部には箱状のコテ先部7を下方へ向けて突設し、このコテ先部7の底面(先端面)をコテ先面8として端子用導線へ当接可能としている。さらに、コテ本体6のコテ先部7と反対側に位置する上部(接続腕部5側)には略V字あるいは略U字形状のコテ凹部9を形成し、このコテ凹部9内に熱電対3の測温接点(測温部)をコテ凹部9の面の2点で接触支持した状態で止着している。
【0022】
接続腕部5は、コテ本体6の左右端部から上方へ延設された縦長な構成部分であり、接続腕部5同士を互いに離間した状態で備えられている。また、接続腕部5の上部(延設端部)には、熱圧着装置のチップホルダー(図示せず)へ装着するための装着穴11をヒーターチップ2の板厚方向へ貫通し、この装着穴11に通した装着ボルト(図示せず)をチップホルダーへ螺合することにより、コテ先部7を下(接合ステージ側)に向けた姿勢でヒーターチップユニット1をチップホルダーへ装着するように構成されている。
【0023】
なお、チップホルダーに装着されたヒーターチップユニット1においては、一方の接続腕部5が熱圧着装置のヒーター用電源(図示せず)の一端へ電気的に接続され、他方の接続腕部5がヒーター用電源の他端へ電気的に接続される。そして、電源(ヒーター用電源)からヒーターチップ2へ電流を流すと、電流が接続腕部5,5を介してコテ本体6内を通り、接続腕部5下端からコテ本体6内の電気抵抗によってコテ本体6が発熱し、この熱によってコテ先部7が昇温するように構成されている。また、コテ本体6内の電流が一方の接続腕部5側から他方の接続腕部5側へ向かって流れるが、電流が流れる経路のうち、コテ凹部9の両側に位置するくびれ箇所の断面積が他の箇所の断面積よりも狭くなっているため、このくびれ箇所で電流密度が最も高くなり、この部分を中心にして電気抵抗によるジュール熱を生じ易い。
【0024】
さらに、ヒーターチップ2は、図1および図2に示すように、このヒーターチップ2の表裏面、具体的には図1では接続腕部5の長さの中央辺りからコテ部4の手前までの下半に細長い窪部13を形成し、図2では接続腕部5の長さの中央辺りの幅広部分から接続腕部5の下半を通り、コテ本体6を左右方向に貫通する範囲に窪部13を形成してある。窪部13は、いずれにおいても、板厚方向に窪んだ窪みであり、その縁に、前記表裏面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面14を有する。図面に示す窪部13は、その縁にヒーターチップ2の面方向にほぼ直交する方向(板厚方向)に立ち下がる壁面14を有し、この壁面14により囲繞されている。この様にして窪部13を形成すると、壁面14の外側の部分がリブとして機能するので、発熱部の断面積を小さく設定したとしてもリブとなる部分により剛性を高めることができ、必要な強度を確保することができる。また、窪部13を形成することで同時に壁面14を形成すると、窪部13のない従来タイプに比較して、壁面14の面積の分だけ表面積が増大するので、通電を遮断した後の冷却効率を向上させることができる。これは圧着工程の所要時間の短縮化となり、作業効率、特に、自動化においてはタクトタイムの短縮化となり、作業効率の向上に寄与する。
【0025】
そして、窪部13の形状は、直線状に形成するものに限らず、また、形成する範囲については、接続腕部5からコテ部4に亘る発熱部に含まれる部分に配設すると効果的であるが、これに限定されるものではなく、また面に対して立ち下がる範囲も限定されない。例えば、従来であれば、図5(ア)に示すように、発熱部の断面形状が正方形であった場合、この部分の断面積を小さく設定したときに、従来は(イ)に示すように幅方向に断面を絞ったり、(ウ)に示すように厚み方向に絞ったりしていたが、本発明においては、絞る方向に対して交差する方向に壁面14が形成できればよい。図5(エ)に示すように、厚み方向に絞る場合には各窪部13の両側、図5(オ)に示すように、両窪部13の表裏同じ側の一方の縁、(カ)に示すように両窪部13の表裏異なる側の一方の縁、(キ)に示すように、表裏中央、(ク)に示すように一方の面の両側、(ケ)に示すように、一方の面の片側、(コ)(サ)(シ)に示すように壁面14が円弧面で底面と連続させてもよく、その他(ス)~(ソ)に示すように、窪部13の縁に立ち下がる壁面14が形成されればどのような形状でもよい。また、窪部13を形成する領域は、接続腕部5の下半部分に長手方向に沿って形成するものやコテ部4の表裏面に形成するものに限定されるものではなく、図6に示すように、接続腕部5の上半の幅広部分に横長な窪部13を複数段平行に形成してもよい。この様に幅広部分に複数並べて形成すると窪部13の壁面14を効率よく増大することができ、これにより単位面積当たりの放熱効果を無理なく大きく増すことができる。
【0026】
また、ヒーターチップ2の冷却面積を増大するためには、表裏面の少なくとも一方に溝部15を形成してもよい。例えば、図7に示すように、接続腕部5の上半の幅広部分に横長な溝部15を複数段平行に形成してもよい。溝部15は、コテ本体6と接続腕部5との少なくとも一方の面に、表裏面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面14を両側に有する。そして、長手方向の端部が開放されており、この点窪部13と異なる。
この様に幅広部分に複数並べて形成すると溝部15の壁面14を効率よく増大することができ、これにより単位面積当たりの放熱効果を無理なく大きく増すことができる。また、両端開放により雰囲気の抜けが良好となる。なお、この溝部15を形成する部位は、窪部13と同様限定されるものではなく、また、幅や深さも限定されない。
【0027】
次に、ヒーターチップ2に取り付けられている熱電対3、および、熱電対3を取り付けるためのヒーターチップ2上の構成について説明する。
熱電対3は、図4に示すように、2種の素線の先端同士を溶接して球体状の測温接点(測温部)を構成し、電気絶縁性を有する素線被覆材で各素線をそれぞれ被覆し、さらには外側被覆材の被覆により1本に束ねて導線を構成している。
【0028】
また、ヒーターチップ2においては、導線の収納箇所を接続腕部5同士の隙間に備え、測温接点の止着箇所をコテ部4に備えている。具体的に説明すると、図4に示すように、導線収納空部20内に導線をヒーターチップ2の表裏各面から導線が外方へ突出しない状態で収納し、導線収納空部20の上端部分の開放口から導線を延出し、導線収納空部20の下端を拡開してコテ凹部9へ連通している。
【0029】
さらに、各接続腕部5には、導線収納空部20に臨む側面の一部を切り欠いて止め凹部21を導線収納空部20に連通する状態でそれぞれ形成し、各止め凹部21および導線収納空部20の一部(止め凹部21の間に位置する部分)には、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂等の樹脂を注入した後に硬化(固化)して導線止め部を備え、この導線止め部により導線が導線収納空部20からずれてヒーターチップ2から突出することを防止している。
【0030】
なお、上記実施形態では、熱電対3を本発明の温度センサーとして例示したが、どのような構成の温度センサーを採用してヒーターチップ2に取り付けてもよい。
【0031】
次に、耐酸化性被膜層について説明する。
ヒーターチップ2においては、熱圧着の度に昇温、冷却を繰り返すので、表面が酸化し易く、特に、コテ部4(発熱部)近傍、および熱電対3を溶着した部分においては酸化が顕著である。このため、発熱部近傍の酸化部分が剥離して強度が低下してしまい加圧時に破損する不都合が生じたり、また、熱電対3の溶着部分が腐食することで強度が低下して、遂には熱電対3が離脱して使用できないなどの不都合が発生することがある。
【0032】
そこで、本実施形態においては、ヒーターチップ2の表面に耐酸化性被膜層を形成して耐酸化性を高めた。以下、製造工程を含めて具体的に説明する。
まず、素材(母材)となる金属板、具体的には、従来一般的に用いられていたタングステン(硬度HV430程度)、タングステン合金(硬度HV200~400程度)よりも耐研磨性に優れたいわゆる超硬材(硬度HV900~2400)(正式名;超硬質合金、硬質の金属炭化物の粉末を焼結した合金)を使用することが望ましく、この超硬材の板材をワイヤーカットにより所定形状に切り出す。そして、前記した窪部13を形成する場合には、放電加工(型使用)、エンドミル加工などにより加工することができる。また、溝部15であれば、素材となる金属板を加工する場合とは90度角度を変えて、即ち、金属板の面方向とワイヤーの方向とが平行になるようにセットしてワイヤーカットにより加工することができる。
【0033】
次に、前記した切り出し片にメッキ前処理を施し、その後に溶解槽に浸漬して通電することで前記切り出し片の表面にニッケルによる耐酸化被膜を形成、即ち、ニッケルメッキを施す。その後、溶解槽から引き揚げて洗浄等の後処理を施す。
そして、コテ部4の上部に形成したV字あるいはU字状の測温止着部に熱電対3の測温接点をレーザー溶接する。この溶接において、測温止着部の表面(止着接触面)にニッケル層の被膜が形成されているので濡れ性が高められ、これにより溶接の確実性、溶接強度が向上する。また、溶接時の濡れ性が高められるとレーザーの出力を従来よりも抑制することができるとともに母材へのダメージを抑制することができ、品質向上とエネルギー消費の節約を図ることができる。
熱電対3の溶接が終了したならば、更にメッキ前処理を施し、熱電対3を装着したヒーターチップユニット1を電解液に浸漬し、熱電対3の測温接点を含めた全体の表面にニッケルメッキを施す。
【0034】
この様にして作製したヒーターチップユニット1を使用すると、耐酸化性が向上するので、コテ部4や熱電対3の取付部分の酸化に起因する剥離や強度低下を抑制することができ、これにより耐久性を向上させることができる。特に、母材に超硬材を使用してニッケルメッキを施すと、濡れ性が向上して溶接性も向上させることができ、耐久性を確実に向上させることができる。なお、熱電対3は主成分がニッケルなので、ニッケルメッキが親和性が良い。また、耐酸化性被膜は、ニッケルメッキに限らず、例えば、金メッキなどでもよい。
【0035】
前記した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。例えば、図5(ツ)に示すように、プレス加工で窪部13を形成する際に、パンチを突入させて窪部13の縁を隆起させて壁面14の高さが板厚を超えて高く大きくなるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ヒーターチップユニット
2 ヒーターチップ
3 熱電対
4 コテ部
5 接続腕部
6 コテ本体
7 コテ先部
8 コテ先面
9 コテ凹部
11 装着穴
13 窪部
14 壁面
15 溝部
20 導線収納空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、端子用導線を端子部材に熱圧着するためのヒーターチップ温度センサーを備えたヒーターチップユニットに関するものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流が通過して発熱する部分の断面積を小さくしても十分な剛性が確保できるヒーターチップユニットを提供しようとするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップと、前記ヒーターチップに備えられた温度センサーと、を備えたヒーターチップユニットであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を縁に有する窪部が形成され
前記温度センサーは、前記ヒーターチップのコテ部の近傍に備えられ、表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とするヒーターチップユニットである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項2に記載のものは、前記ヒーターチップは、前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記窪部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のヒーターチップユニットである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項3に記載のものは、端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップと、前記ヒーターチップに備えられた温度センサーと、を備えたヒーターチップユニットであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を両側に有する溝部が形成され
前記温度センサーは、前記ヒーターチップのコテ部の近傍に備えられ、表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とするヒーターチップユニットである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項4に記載のものは、前記ヒーターチップは、前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記溝部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項3に記載のヒーターチップユニットである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項5に記載のものは、前記ヒーターチップは、少なくとも前記発熱部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項4に記載のヒーターチップユニットである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、コテ本体と接続腕部の少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を縁に有する窪部が形成されているので、窪部の壁面の外側の部分がリブとして機能し、これにより剛性を確保することができる。また、窪部を形成することに伴って周りにできる壁面の分だけヒーターチップの表面積を増加させることができ、これにより空気に触れる面積が増えて放熱機能を高めることができる。したがって、冷却時間が短縮されてタクト時間の短縮化を図ることができ、これにより生産効率を高めることができる。
また、ヒーターチップに温度センサーを備え、この温度センサーの表面に耐酸化性被膜層が形成されているので、加熱と放冷が繰り返されても酸化のし易さを抑えることができ、ヒーターチップユニットの耐久性を高めることができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、コテ本体と接続腕部の少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を両側に有する溝部が形成されているので、溝部の壁面の外側の部分がリブとして機能し、これにより剛性を確保することができる。また、溝部を形成することに伴って溝の両側にできる壁面の分だけヒーターチップの表面積を増加させることができ、これにより空気に触れる面積が増加させて放熱機能を高めることができる。したがって、冷却時間が短縮されてタクト時間の短縮化を図ることができ、これにより生産効率を高めることができる。
また、ヒーターチップに温度センサーを備え、この温度センサーの表面に耐酸化性被膜層が形成されているので、加熱と放冷が繰り返されても酸化のし易さを抑えることができ、ヒーターチップユニットの耐久性を高めることができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップと、前記ヒーターチップに備えられた温度センサーと、を備えたヒーターチップユニットであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を縁に有する窪部が形成され
前記温度センサーは、前記ヒーターチップのコテ部の近傍に備えられ、表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とするヒーターチップユニット。
【請求項2】
前記ヒーターチップは、前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記窪部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のヒーターチップユニット
【請求項3】
端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップと、前記ヒーターチップに備えられた温度センサーと、を備えたヒーターチップユニットであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、を備え、
前記コテ本体と接続腕部との少なくとも一方の面に、前記面の面方向に対して交差する方向に立ち下がる壁面を両側に有する溝部が形成され
前記温度センサーは、前記ヒーターチップのコテ部の近傍に備えられ、表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とするヒーターチップユニット。
【請求項4】
前記ヒーターチップは、前記接続腕部からコテ部に亘る範囲内に、電流が流れる方向に直交する方向の断面が、電流が流れる他の部分の断面よりも面積が小さく設定された発熱部が形成され、該発熱部に、前記溝部の一部と前記壁面の一部が含まれていることを特徴とする請求項3に記載のヒーターチップユニット
【請求項5】
前記ヒーターチップは、少なくとも前記発熱部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項4に記載のヒーターチップユニット