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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074768
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】バリ取り装置及びバリ取り方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20220511BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20220511BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20220511BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20220511BHJP
   B23C 3/12 20060101ALI20220511BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B24B9/00 602L
B25J13/08 A
B24B27/00 A
B24B49/12
B23C3/12 B
B23Q17/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185102
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】下津 久明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚紀
【テーマコード(参考)】
3C022
3C029
3C034
3C049
3C158
3C707
【Fターム(参考)】
3C022DD01
3C022DD11
3C022DD19
3C029AA04
3C029AA40
3C034AA13
3C034BB93
3C034CA04
3C034CB01
3C034DD07
3C049AA03
3C049AA13
3C049AC02
3C049BA07
3C049BC02
3C049CA07
3C049CB03
3C158AA03
3C158AA13
3C158AC02
3C158BA07
3C158CA07
3C158CB03
3C707AS12
3C707BS12
3C707DS01
3C707KS03
3C707KS07
3C707KX06
3C707LS15
3C707MT04
3C707MT09
(57)【要約】
【課題】樹脂成型品のバリの位置が常に一定にならない事情があっても、オペレータによるティーチングの手間を軽減しながら、自動で高品質なバリ取り動作を実行する。
【解決手段】実施形態のバリ取り装置は、ロボットによる作業空間に位置して樹脂成形品がセットされるワーク台と、ワーク台にセットされた樹脂成形品の外形をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサと、3次元形状データからバリの形状及び位置を認識する認識装置と、認識装置の認識に基づいてロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成装置と、動作データに従ってロボットを動作させるロボット制御装置とを具備している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリ取り工具を装着したロボットにより、樹脂成形品の外面に生じているバリのバリ取りを行うバリ取り装置であって、
前記ロボットによる作業空間に位置して前記樹脂成形品がセットされるワーク台と、
前記ワーク台にセットされた前記樹脂成形品の外形をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサと、
前記3次元形状データからバリの形状及び位置を認識する認識装置と、
前記認識装置の認識に基づいて前記ロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成装置と、
前記動作データに従って前記ロボットを動作させるロボット制御装置とを具備してなるバリ取り装置。
【請求項2】
前記動作データ生成装置は、前記認識装置の認識に基づいて前記樹脂成形品に対する面取り動作用の面取り動作データを併せて生成すると共に、
前記ロボット制御装置は、前記面取り動作データに従って、前記ロボットに、前記バリ取り動作と共に面取り動作を併せて実行させる請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記ロボットによるバリ取り動作実行後に、前記レーザセンサにより前記樹脂成形品の外形をスキャンすることに基づく検査動作が実行される請求項1又は2記載のバリ取り装置。
【請求項4】
前記レーザセンサは、2次元センサであり、前記ロボットに装着されて該ロボットにより移動されながら前記樹脂成形品の3次元データを取得する請求項1から3のいずれか一項に記載のバリ取り装置。
【請求項5】
前記動作データ生成装置は、前記認識装置が認識したバリの形状及び位置に基づいて、バリ取り動作のプロセスを自動で決定する請求項1から4のいずれか一項に記載のバリ取り装置。
【請求項6】
バリ取り工具を装着したロボットにより、樹脂成形品の外面に生じているバリのバリ取りを行うバリ取り方法であって、
前記ロボットによる作業空間に位置するワーク台に前記樹脂成形品をセットするセット工程と、
前記ワーク台にセットされた前記樹脂成形品の外形をレーザセンサによりスキャンして3次元形状データを取得する3次元スキャン工程と、
前記3次元形状データから認識装置によりバリの形状及び位置を認識する認識工程と、
前記認識工程における認識に基づいて動作データ生成装置により前記ロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成工程と、
前記動作データに従ってロボット制御装置により前記ロボットを動作させてバリ取り動作を実行するバリ取り工程とを含むバリ取り方法。
【請求項7】
前記認識装置の認識に基づいて前記動作データ生成装置により前記樹脂成形品に対する面取り動作用の面取り動作データを併せて生成する面取り動作データ生成工程と、
前記面取り動作データに従って、前記ロボット制御装置により前記ロボットに、前記バリ取り動作と共に面取り動作を併せて実行させる面取り工程とを含む請求項6記載のバリ取り方法。
【請求項8】
前記バリ取り工程後に、前記レーザセンサにより前記樹脂成形品の外形をスキャンすることに基づく検査動作を実行する検査工程を含む請求項6又は7記載のバリ取り方法。
【請求項9】
前記レーザセンサは、2次元センサであり、前記ロボットに装着され、
前記3次元スキャン工程において、該ロボットにより移動されながら前記樹脂成形品の3次元データを取得する請求項6から8のいずれか一項に記載のバリ取り方法。
【請求項10】
前記動作データ生成工程においては、前記認識工程において装認識したバリの形状及び位置に基づいて、バリ取り動作のプロセスを自動で決定する請求項6から9のいずれか一項に記載のバリ取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バリ取り装置及びバリ取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば66kV或いは77kV用の高電圧受変電設備に使用される変圧器には、コイル全体を例えばエポキシ樹脂等の樹脂でモールド成形した樹脂モールドコイルが採用されている。一般に、樹脂成形品においては、パーティングラインと称される成形型の分割面に沿って、バリが発生することが知られている。近年では、従来の人手によるバリ取り作業に代えて、樹脂成形品であるワークに対するバリ取り動作をロボットにより自動で実行することが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記バリ取り装置にあっては、予め、ロボットアームに対して固定的に設けられた作業位置にワークをセットし、ロボットに対するティーチングを行ってロボット先端の移動軌跡を示す動作データを生成することが行われる。その後は、得られた動作データに従って、バリ取り工具が装着されたロボットアームを実際に動作させてワークに対するバリ取り動作を行うことが繰り返される。前記ティーチングは、例えばオペレータがティーチングペンダントを手動操作して、ワークのバリ部分に沿ってロボットを実際に移動させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-40921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂成形品として、上記した樹脂モールドコイルにあっては、かなり大型、高重量となる事情から、モールド成形時においては、取り扱い性の容易な板金製の成形型が用いられる。このような板金製の成形型の場合、剛性に劣る等の理由により、成形型に歪み、たわみ等の変形が生じやすく、成形品ごとに外形形状が微妙に異なってくることがある。また、大型で高重量のワークを毎回常に同じセット位置に正確に位置決めすることが困難である事情もある。そのため、複数のワークの実際のバリの位置が常に一定とはならず、一つの動作データを毎回用いてバリ取り動作を行うと、正しいバリ取り動作が行えなくなる問題点がある。
【0006】
このとき、上記問題点は、例えば、1個1個のワークに対するバリ取り作業の都度、作業者がティーチングの操作を行って動作データを生成すれば解消できる。ところが、それでは、ティーチングに多大な時間や手間がかかることになり、実用的ではない。
そこで、樹脂成型品のバリの位置が常に一定にならない事情があっても、オペレータによるティーチングの手間を軽減しながら、自動で高品質なバリ取り動作を実行することを可能とするバリ取り装置及びバリ取り方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のバリ取り装置は、バリ取り工具を装着したロボットにより、樹脂成形品の外面に生じているバリのバリ取りを行うものであって、前記ロボットによる作業空間に位置して前記樹脂成形品がセットされるワーク台と、前記ワーク台にセットされた前記樹脂成形品の外形をスキャンして3次元形状データを取得するレーザセンサと、前記3次元形状データからバリの形状及び位置を認識する認識装置と、前記認識装置の認識に基づいて前記ロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成装置と、前記動作データに従って前記ロボットを動作させるロボット制御装置とを具備している。
【0008】
実施形態のバリ取り方法は、バリ取り工具を装着したロボットにより、樹脂成形品の外面に生じているバリのバリ取りを行う方法であって、前記ロボットによる作業空間に位置するワーク台に前記樹脂成形品をセットするセット工程と、前記ワーク台にセットされた前記樹脂成形品の外形をレーザセンサによりスキャンして3次元形状データを取得する3次元スキャン工程と、前記3次元形状データから認識装置によりバリの形状及び位置を認識する認識工程と、前記認識工程における認識に基づいて動作データ生成装置により前記ロボットのバリ取り動作のための動作データを生成する動作データ生成工程と、前記動作データに従ってロボット制御装置により前記ロボットを動作させてバリ取り動作を実行するバリ取り工程とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態を示すもので、バリ取り装置のシステム構成を模式的に示す図
図2】バリ取りの工程を示す図
図3】スキャン時の様子を概略的に示す斜視図
図4】バリ取り動作時の様子を概略的に示す斜視図
図5】樹脂モールドコイルの外観を示す斜視図
図6】スキャン時の様子を概略的に示す要部の断面図
図7】バリ取り及び面取り動作時の様子を概略的に示す要部の断面図
図8】異なる面取り量で面取りを行う様子を概略的に示す要部の断面図
図9】厚みの大きいバリのバリ取りを行う様子を概略的に示す要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例えば高電圧受変電設備に使用される三相変圧器用の樹脂モールドコイルに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態では、バリ取りと共に面取りを併せて行う場合を具体例としている。まず、図5は、本実施形態におけるバリ取り対象のワークとなる樹脂成形品としての樹脂モールドコイル1の外観構成を示しており、この樹脂モールドコイル1の構成について、簡単に述べる。
【0011】
この樹脂モールドコイル1は、金属導体を絶縁材と共に巻回して構成された図示しないコイル本体と、このコイル本体の内部の隙間に充填されると共に外面全体を覆うようにモールド成形されたモールド樹脂層2とを備えて構成される。この場合、樹脂モールドコイル1は、全体としてほぼ八角形の角筒状に構成されている。尚、前記モールド樹脂層2のうち、一つの側壁部は、他の側壁部と比べて外側に向けて厚く構成されており、この部分に、接続端子などが設けられる。図3図5では、樹脂モールドコイル1を、軸方向を水平にして上記厚みの大きい側壁部が上面に来るように配置している。
【0012】
詳しい図示や説明は省略するが、上記樹脂モールドコイル1は、コイル本体を成形型内に収容し、成形型内に例えばエポキシ樹脂などのモールド樹脂を注入し、硬化させて構成される。このとき、前記成形型として、軽量で取り扱い性の容易な板金製のものが用いられる。このような成形時においては、樹脂モールドコイル1には、図6図9に示すように、例えばモールド樹脂層2の二面2b、2cが交差する各稜部2aにバリ3が生ずるケースがある。本実施形態に係るバリ取り装置11は、樹脂モールドコイル1の成形後に、モールド樹脂層2のバリ3を除去するための装置であり、本実施形態に係るバリ取り方法を実施する。
【0013】
さて、上記樹脂モールドコイル1のバリ3を取るための本実施形態に係るバリ取り装置11の構成について、図1図3図4等を参照して述べる。図1は、バリ取り装置11のシステム構成を示している。このバリ取り装置11は、例えば防塵室等の設備の床部12上に、ロボット13を備えていると共に、ロボット13の作業空間に位置して、前記樹脂モールドコイル1よりも小形、幅狭の台状のワーク台14を備えている。前記ワーク台14上に、前記樹脂モールドコイル1が載置状に固定され、ロボット13による作業が行われる。
【0014】
前記ロボット13は、例えば周知の多関節型ロボット例えば6軸型アームを有するロボットからなる。このロボット13は、固有の(X,Y,Z)の3次元座標系を備えており、その座標系に従って、アームの手先部15を任意の位置、向きに動作することが可能とされている。このとき、ロボット13は、3次元方向に夫々例えば0.1mmピッチで動作させることが可能となっている。
【0015】
このロボット13の手先部15には、図3等に示すように、バリ取り工具16及びレーザセンサ17が装着される。本実施形態では、バリ取り工具16及びレーザセンサ17は、手先部15に同時に並んで取付けられている。ロボット13の各軸アーム及び前記バリ取り工具16は、ロボット制御装置としてのロボットコントローラ18により夫々制御されるようになっている。
【0016】
前記バリ取り工具16は、図4図7図9にも示すように、回転軸の先端にブレードや砥石等の研削部材16aを備え、その研削部材16aを高速回転させてその外周面をバリ3部分に当てることにより、バリ取り作業を行うように構成されている。本実施形態では、バリ取り工具16は、樹脂モールドコイル1のモールド樹脂層2の稜部2aに対する面取りの動作を行うための面取り工具を兼用するものとされている。尚、バリ取り工具16とは別途の面取り工具を使用して面取り動作を実行する構成としても良い。
【0017】
前記レーザセンサ17は、前記ワーク台14にセットされた樹脂モールドコイル1の外形をスキャンして3次元形状データを取得するためのもので、本実施形態では、2次元センサ例えばオムロン株式会社製の2次元形状計測センサからなる。周知のように、このレーザセンサ17は、2次元レーザ光の投光部と受光部とを有して構成され、やや離間して配置された対象物の表面に設定された直線状の検出領域に対し、投光部からレーザ光を照射し、受光部でその反射光を受光する。これにより、直線状の検出領域に沿う各点までの距離が測定され、当該直線に沿う二次元形状データが得られるように構成されている。このレーザセンサ17の検出信号は、システムコントローラ19に入力される。
【0018】
このとき、本実施形態では、図3にも示すように、レーザセンサ17は、前記ロボット13の手先部15に取付けられており、該ロボット13により、前記樹脂モールドコイル1の外形、特にバリ3が発生する稜部2a部分に沿って移動されながら、上記計測動作を連続的に実行する。この計測動作は、例えば0.1mmピッチで実行される。これにより、樹脂モールドコイル1の外形が3次元スキャンされ、実際の樹脂モールドコイル1の表面形状のデータ即ち3次元形状データが、ロボット座標系における(X,Y,Z)の点群データとして得られる。
【0019】
前記システムコントローラ19は、コンピュータ本体、キーボード等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置を含んだコンピュータシステムからなり、バリ取り装置11の全体を制御し、後の作用説明で述べるように、バリ取り動作の各工程等を実行させる。このシステムコントローラ19は、前記レーザセンサ17から入力された点群データを処理し、樹脂モールドコイル1の3次元モデルを生成し、バリ3の形状及び位置を認識する。これと共に、システムコントローラ19は、上記バリ3の認識に基づいて、ロボット13によりバリ取り動作のための移動軌跡等を表す動作データを生成する。従って、システムコントローラ19は、認識装置及び動作データ生成装置としての機能を備えている。
【0020】
このとき、システムコントローラ19においては、バリ3の形状及び位置に基づいて、バリ取り動作のプロセスが自動で決定される。この場合、ロボット13の手先部15の移動軌跡だけでなく、バリ取り動作のプロセス、即ちロボット13に装着されているバリ取り工具16のバリ3に対する接触角度や、バリ取り工具16の押圧移動方向,移動速度などについて、適切なプロセスが自動で設定されるようになっている。
【0021】
また本実施形態では、システムコントローラ19は、樹脂モールドコイル1の3次元モデルの認識に基づき、樹脂モールドコイル1の各稜部2aに対する面取り動作用の面取り動作データを併せて生成する。このとき、面取り量CX(mm)については、オペレータが入力装置を操作して任意の値を設定することができるようになっている。システムコントローラ19において生成されたバリ取り動作用の動作データ、及び、面取り動作用の面取り動作データは、前記ロボットコントローラ18に送信される。
【0022】
前記ロボットコントローラ18は、入力されたバリ取り動作用の動作データに従って、ロボット13及びバリ取り工具16を制御し、ロボット13に樹脂モールドコイル1に対するバリ取り動作を実行させる。これと共に、ロボットコントローラ18は、入力された面取り動作データに従って、ロボット13及びバリ取り工具16を制御し、ロボット13に樹脂モールドコイル1に対する面取り動作を実行させる。
【0023】
さらに本実施形態では、システムコントローラ19は、前記ロボット13によるバリ取り動作及び面取り動作の実行後に、検査工程を実行するように構成されている。この検査工程は、上記3次元形状データを取得するスキャン工程と同様に、前記レーザセンサ17により前記樹脂モールドコイル1の外形をスキャンすることに基づいて、バリ取りの仕上り状態を検査するものである。検査工程において、樹脂モールドコイル1の表面にバリ3の残り等の不適切な部分が見つかった場合には、例えばその部分に対するバリ取り動作を再度行わせたり、オペレータに報知したりすることが行われる。
【0024】
次に、上記構成のバリ取り装置11により実行される、本実施形態におけるバリ取りの工程について、図2図9も参照して述べる。図2は、システムコントローラ19により実行される、樹脂モールドコイル1に対すバリ取り動作の各工程の実行順序を示している。即ち、樹脂モールドコイル1の成形工程が終了すると、まずステップS1にて、型分解が行われて、樹脂成形品即ち、モールド樹脂層2によりモールドされた樹脂モールドコイル1が取出される。このとき、上記したように、モールド樹脂層2の二面2b、2cが交差する部分、即ち各稜部2aにバリ3が生ずるケースがあることが知られている。
【0025】
次のステップS2では、樹脂モールドコイル1の外面に生じているバリ3のうち、特に目立つような大形、肉厚のバリを、例えば超音波カッタを用いて、オペレータが手動で大まかに除去する手動除去の工程が実行される。手動除去の工程が終了すると、ステップS3では、ワーク台14に前記樹脂モールドコイル1をセットするセット工程が実行される。このセット工程では、樹脂モールドコイル1は、その側壁部のうち、一つの側壁部を下面としてワーク台14上に載置される。このとき、樹脂モールドコイル1の底面の周辺部がワーク台14からはみ出していて、各稜部2aがロボット13による加工範囲内に配置される。尚、このセット工程では、樹脂モールドコイル1は、ワーク台14に対し固定的に載置されていれば良く、厳密な位置決め固定を行う必要はない。
【0026】
ステップS4では、ワーク台14にセットされた樹脂モールドコイル1の外形をレーザセンサ17によりスキャンして3次元形状データを取得する3次元スキャン工程が実行される。この3次元スキャン工程では、図3図6に示すように、ロボット13により、レーザセンサ17を樹脂モールドコイル1の外形この場合稜部2aを構成するラインに沿って、稜部2aからやや離間した位置を移動させながら、レーザセンサ17による2次元の距離計測動作を連続的に実行することが行われる。これにより、ロボット13の位置データ及びレーザセンサ17の計測データがシステムコントローラ19に入力され、実際の樹脂モールドコイル1の表面の3次元形状データが得られる。
【0027】
ステップS5では、システムコントローラ19において、認識工程及び動作データ生成工程が実行される。認識工程は、前記3次元スキャン工程で得られた3次元形状データから、バリ3の形状及び位置を認識するものであり、図6等に示すように、モールド樹脂層2の稜部2aを構成する2面この場合面2b、2cの交点を基準点Oとし、その基準点Oから外側にはみ出している部分をバリ3と認識する。この場合、バリ3の厚み寸法についても認識される。
【0028】
前記動作データ生成工程は、前記認識工程における認識に基づいてロボット13のバリ取り動作のための動作データを生成するものである。本実施形態では、前記動作データには、バリ取り動作に加えて、面取り動作を行うための面取り動作データも含まれる。面取り動作データは、予めオペレータにより設定されている面取り量CX(mm)に応じて作成されるようになる。図7は、面取り量CXが比較的小さい例えば1mmの場合を例示し、図8は、面取り量CXが比較的大きい例えば4mmの場合を例示している。
【0029】
また、この動作データの生成においては、バリ取り動作及び面取り動作のプロセス、即ちロボット13に装着されているバリ取り工具16のバリ3に対する接触方向や接触角度、バリ取り工具16の押圧移動方向、移動速度などについて、適切なプロセスが設定される。この場合、例えば図9に示すように、バリ3の厚みが比較的大きい場合には、バリ残りを防止したり、研削部材16aに対する負荷を抑えたりするべく、バリ取り工具16の接触角度をバリ3の突出方向に対して直角に近くなるように設定する等がなされる。生成されたバリ取り動作及び面取り動作用の動作データは、前記ロボットコントローラ18に送信される。
【0030】
ステップS6では、前記動作データに従ってロボットコントローラ8によりロボット13を動作させてバリ取り動作を実行するバリ取り工程が実行される。これと共に、ステップS7にて、バリ3の生じていた稜部2a等に対する面取り動作を行う面取り工程が併せて実行される。これらバリ取り工程及び面取り工程では、図7図9に示すように、バリ取り工具16を駆動させながらロボット13により移動させることにより、バリ取り工具16によってバリ3を順次研削していき、バリ3が除去されると共に、稜部2aに対する所定の面取りが行われる。
【0031】
次のステップS8では、レーザセンサ17により樹脂モールドコイル1の外形をスキャンすることに基づく検査動作を実行する検査工程が実行される。この検査工程も、上記3次元スキャン工程と同様に、ロボット13によりレーザセンサ17を移動させながら行われ、これにて、バリ取り工程後の実際の樹脂モールドコイル1の表面の3次元形状データが得られる。システムコントローラ19は、その3次元形状データから、バリ取りが良好に行われているかどうかを判断する。この後、ステップS9では、オペレータによる、例えばサンドペーパー等を用いた手仕上げの工程が実行される。
【0032】
このように本実施形態のバリ取り装置11及びバリ取り方法によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、樹脂モールドコイル1のバリ取りを行うにあたって、まずセット工程にて、ワーク台14に樹脂モールドコイル1がセットされると、3次元スキャン工程にて、レーザセンサ17により樹脂モールドコイル1の外形がスキャンされ、非接触で容易に3次元形状データが取得される。次いで、認識工程にて、樹脂モールドコイル1の実際のバリ3の形状及び位置が認識され、動作データ生成工程にて、上記認識に基づいてロボット13の動作データが生成される。この後、バリ取り工程において、動作データに従ってロボット13を動作させてバリ取り動作が実行される。
【0033】
この場合、作業者がティーチングの作業を行うものと異なり、いわばティーチング作業なしで、自動で個々の樹脂モールドコイル1の外形形状、つまりバリ3の位置や大きさ等に対応し、そのバリ3を除去できる動作プログラムを生成することができる。また、個々の樹脂モールドコイル1に対し、その都度動作プログラムが生成されるので、樹脂モールドコイル1をセット位置に厳密に位置決めする必要もない。従って、本実施形態によれば、樹脂モールドコイル1のバリ3の位置が常に一定にならない事情があっても、オペレータによるティーチングの手間を軽減しながら、自動で高品質なバリ取り動作を実行することが可能となるという優れた効果を得ることができる。
【0034】
また本実施形態では、システムコントロータ19は、バリ取り動作用の動作データを生成すると共に面取り動作データを生成し、面取り工程において面取り動作を併せて実行させるようにした。これにより、上記3Dデータから、個々の樹脂モールドコイル1の稜部2aの面取り位置を正確に認識し、面取り動作データ生成工程により、その認識に基づいて、高精度の面取り動作データを生成することができる。そして、樹脂モールドコイル1に対し、バリ取りと併せて、面取りの動作を高精度で実行させることができる。この結果、利便性、実用性により一層優れたものとなる。
【0035】
特に本実施形態では、ロボット13によるバリ取り動作及び面取り動作実行後に、レーザセンサ17により樹脂モールドコイル1の外形を再度3次元スキャンすることに基づく検査工程を実行するようにした。これにより、検査工程において、樹脂モールドコイル1の表面のバリ取りが良好に行われたかどうかの検査を行うことができる。この場合、3次元スキャン工程で用いたレーザセンサ17を利用することにより、バリ取り工程及び面取り工程後に、検査工程を連続して実行することが可能となり、また、別途の検査のための特別な装置を付加することなくすませることができる。この結果、安価で効率的に検査工程を実行することができる。
【0036】
本実施形態では、レーザセンサ17を2次元センサから構成し、3次元スキャン工程において、ロボット13により移動されながら樹脂モールドコイル1の3次元データを取得する構成とした。これにより、レーザセンサ17として、小形、軽量で比較的安価な2次元センサを採用することができながらも、ロボット134に装着されて移動されることにより、高精度な3次元形状データを得ることが可能となる。
【0037】
更に本実施形態では、動作データ生成工程において、認識工程において装認識したバリ3の形状及び位置に基づいて、バリ取り動作のプロセスを自動で決定する構成とした。これにより、動作データ生成工程において、バリの形状及び位置に基づいて、ロボット13即ちバリ取り工具16の移動軌跡だけでなく、バリ取り動作のプロセス、すなわち、ロボット13に装着されているバリ取り工具16のバリ3に対する接触角度や、押圧移動方向、移動速度などについても、適切なプロセスを自動で設定することが可能となった。この結果、より高品質なバリ取り動作及び面取り動作を実行させることが可能となる。
【0038】
尚、上記実施形態では、樹脂成形品として樹脂モールドコイル1を例にあげて説明したが、樹脂モールドコイル1に限らず、各種の樹脂成形品全般に適用することができる。また、上記実施形態では、ロボット13として6軸型のロボットを採用したが、直交座標型のロボット等、目的に応じた動作が可能なロボットであれば良い。さらに、上記実施形態では、バリ取り動作と面取り動作とを共通したバリ取り工具16により行う構成としたが、面取り動作は、バリ取り工具とは別の面取り工具を用いて行うようにしても良い。面取り動作については、必要に応じて行えば良い。検査工程についても、必要に応じて行えば良い。さらに、レーザセンサは、3次元データが取得できるものを採用しても良い。
【0039】
以上説明した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
図面中、1は樹脂モールドコイル(樹脂成形品)、2はモールド樹脂層、2aは稜部、3はバリ、11はバリ取り装置、13はロボット、14はワーク台、15は手先部、16はバリ取り工具、17はレーザセンサ、18はロボットコントローラ(ロボット制御装置)、19はシステムコントローラ(認識装置、動作データ生成装置)を示す。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9