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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074844
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ヘリポート用融雪装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/16 20060101AFI20220511BHJP
   E01F 3/00 20060101ALI20220511BHJP
   E01H 10/00 20060101ALI20220511BHJP
   E01C 11/26 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E04H9/16 K
E01F3/00
E01H10/00 A
E01C11/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185241
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】506389573
【氏名又は名称】株式会社住まい・環境プランニング
(71)【出願人】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】520434086
【氏名又は名称】ミントエア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】堀川 均
(72)【発明者】
【氏名】中島 範行
(72)【発明者】
【氏名】小瀬 善則
【テーマコード(参考)】
2D051
2E139
【Fターム(参考)】
2D051AF17
2D051GB09
2E139AA03
2E139AC19
2E139DA23
2E139DB03
2E139DC13
2E139DC17
2E139DC20
(57)【要約】
【課題】雨水を有効に利用し、環境に優しく、経済的なヘリポート用融雪装置を提供する。
【解決手段】雨水タンク22の雨水と凍結防止剤水溶液タンク24の水溶液を選択的に送り出す切替弁29,30と、ポンプ31,32を備える。雨水又は水溶液をヘリポート12の発着面12aに供給する配管34と、融雪パイプ33から散水された雨水又は水溶液を回収する回収手段36,38,40,44,45を備える。外気温センサ59の出力が入力し、切替弁29,30及びポンプ31,32を制御する制御装置60を備える。制御装置60は、外気温センサ59からの信号により、切替弁29,30及びポンプ31,32を制御して、雨水タンク22から雨水を送出する場合と、凍結防止剤水溶液タンク24から水溶液を送出する場合を切り替える。雨水タンク22は、油水分離装置を兼ね、配管を介して雨水又は水溶液を散水・循環可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリポートの発着面に積もった雪を溶かすヘリポート用融雪装置において、
回収した雨水を溜める雨水タンクと、少なくとも有機酸の塩を含有する凍結防止剤が混合された雨水の水溶液を溜める凍結防止剤水溶液タンクと、前記雨水タンクの雨水と前記凍結防止剤水溶液タンクの水溶液とを選択的に送り出す切替弁と、前記切替弁により選択された前記雨水又は前記水溶液を送り出すポンプと、前記ポンプにより送り出された前記雨水又は前記水溶液を前記ヘリポートの発着面に供給し散水する配管と、前記配管から散水された前記雨水又は前記水溶液を回収する回収手段とを備え、
降雪を感知する降雪センサ及び外気温を検出する外気温センサと、前記降雪センサ及び前記外気温センサの出力を入力して前記切替弁及び前記ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記雨水タンクは、油水分離装置を兼ねることを特徴とするヘリポート用融雪装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記降雪センサと前記外気温センサにより、降雪時の外気温が3℃~-3℃の内の所定の温度を境に、それより高い場合は、前記切替弁を、前記雨水タンクから前記雨水を前記ポンプに送出可能に切り替え、前記所定の温度より低い場合には、前記切替弁を、前記凍結防止剤水溶液タンクから前記水溶液を前記ポンプに送出可能に切り替えて、前記配管を介して前記雨水又は前記水溶液を散水・循環可能にする請求項1記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項3】
前記有機酸は、ギ酸、酢酸、コハク酸、又はプロピオン酸である請求項1又は2記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項4】
前記有機酸の塩は、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム・マグネシウム、コハク酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム・六水和物、又はプロピオン酸ナトリウム等である請求項3記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項5】
前記凍結防止剤は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の塩化物と、コハク酸塩から成る有機酸の塩を、前記塩化物100質量部に対して、前記有機酸の塩を5~20質量部混合して成るものである請求項1又は2記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項6】
前記凍結防止剤は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の塩化物と、プロピオン酸塩等から成る有機酸の塩を、前記塩化物100質量部に対して、前記有機酸の塩を5~20質量部混合して成るものである請求項1又は2記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項7】
前記制御装置は、外気温が0℃~-3℃の内の所定の温度よりも低い値になった場合に、前記凍結防止剤水溶液タンクの前記水溶液を前記配管に供給及び回収可能に、前記切替弁を制御する請求項2記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項8】
前記凍結防止剤水溶液タンクには、前記水溶液の濃度を検知する濃度センサが設けられ、前記凍結防止剤水溶液タンクに隣接して前記凍結防止剤を収容した容器が設けられ、前記凍結防止剤水溶液タンクの前記水溶液の濃度が一定値以下になった場合に、前記凍結防止剤を前記凍結防止剤水溶液タンクに投入する凍結防止剤補充装置を備える請求項1乃至7のいずれか記載のヘリポート用融雪装置。
【請求項9】
前記雨水タンクと前記凍結防止剤水溶液タンクは、開放された開口を有せず、遮光された空間に前記雨水又は前記水溶液を貯蔵し、前記雨水及び前記水溶液を循環利用する請求項1乃至8のいずれか記載のヘリポート用融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨水による融雪水を循環させて融雪に利用するヘリポート用融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、雨水を貯蔵可能な貯水槽と、屋根や家の周りに設けられた散水装置とを配管とポンプとで連結し、配管の途中に加熱装置を設けた融雪装置が提案されている。また、融雪のために散水する場合、氷点下の気温により凍結する場合があるので、特許文献2,3に開示されているように、融雪水に不凍液や凍結防止剤を混合し、融雪水を循環させる融雪システムも提案されている。
【0003】
一方、ヘリポートの融雪装置として、特許文献4に開示されているように、電熱線等の温熱により融雪するヘリポート用融雪装置も提案されている。このヘリポート用融雪装置は、電熱線等が破損した際にも面倒な作業を必要とせず、ヘリポートの保守作業性にも優れ、ヘリポートの上面に効率的に熱が伝達され、融雪に要する時間及び費用も少ないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-207754号公報
【特許文献2】特開2007-278054号公報
【特許文献3】特開2018-188915号公報
【特許文献4】特開2010-156155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、雨水等の水を融雪に使用するには、融雪水が外気にさらされて循環するので、氷点下の気温の場合容易に凍結してしまい、融雪水を回収しにくく、凍結による断水や配管の破裂の恐れもある。特許文献1では、循環する融雪水の水温を上げるための加熱装置が設けられているが、加熱のための装置やエネルギーコストがかかるという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2,3に開示されているように、融雪水に不凍液や凍結防止剤を混合する場合、融雪水をそのまま周囲の土地や排水路に流すと、道路の周辺や地域の土壌に環境汚染が生じる恐れがあるので、不凍液や凍結防止剤が混合された融雪水の処理が問題となる。一般的な凍結防止剤としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の塩化物や、尿素等がある。これらのうち、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の塩化物が最も広く使用されている。これらの塩化物は凍結温度が低く、溶解性、即効性に優れ、価格が安価で供給量が豊富であり、貯蔵、運搬及び散布がしやすいこと等の理由により凍結防止剤として広く用いられている。しかし、塩化物は塩害を起こすものであり、金属の腐食や、コンクリートの劣化、周囲の土壌が汚染される等の問題がある。具体的には、自動車の車体が腐食したり、橋梁や道路標識、トンネル等道路周辺の構造物が劣化し破損したり、街路樹が枯れたりする被害がある。
【0007】
また、特許文献4に開示された電熱線等による温熱を利用した融雪装置は、装置が複雑且つ大がかりであり、融雪のためのエネルギーコストがかかる。さらに、ヘリポートの構造も複雑になり、既存のヘリポートには利用できないと言う問題がある。
【0008】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたもので、雨水を有効に利用し、環境に優しく、経済的なヘリポート用融雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、ヘリポートの発着面に積もった雪を溶かすヘリポート用融雪装置であって、回収した雨水を溜める雨水タンクと、少なくとも有機酸の塩を含有する凍結防止剤が混合された雨水の水溶液を溜める凍結防止剤水溶液タンクと、前記雨水タンクの雨水と前記凍結防止剤水溶液タンクの水溶液とを選択的に送り出す切替弁と、前記切替弁により選択された前記雨水又は前記水溶液を送り出すポンプと、前記ポンプにより送り出された前記雨水又は前記水溶液を前記ヘリポートの発着面に供給し散水する配管と、前記配管から散水された前記雨水又は前記水溶液を回収する回収手段とを備え、降雪を感知する降雪センサ及び外気温を検出する外気温センサと、前記降雪センサ及び前記外気温センサの出力を入力して前記切替弁及び前記ポンプを制御する制御装置とを備え、前記雨水タンクは、油水分離装置を兼ねるヘリポート用融雪装置である。
【0010】
前記制御装置は、前記降雪センサと前記外気温センサにより、降雪時の外気温が3℃~-3℃の内の所定の温度を境に、それより高い場合は、前記切替弁を、前記雨水タンクから前記雨水を前記ポンプに送出可能に切り替え、前記所定の温度より低い場合には、前記切替弁を、前記凍結防止剤水溶液タンクから前記水溶液を前記ポンプに送出可能に切り替えて、前記配管を介して前記雨水又は前記水溶液を散水・循環可能にするものである。
【0011】
前記有機酸は好ましくは、ギ酸、酢酸、コハク酸、又はプロピオン酸である。前記有機酸の塩は好ましくは、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム・マグネシウム、コハク酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム・六水和物、又はプロピオン酸ナトリウム等である。
【0012】
さらに、前記凍結防止剤は、液状、粉末、固形などで良く、望ましくは、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の塩化物と、コハク酸塩又はプロピオン酸塩から成る凍結防止剤を、前記塩化物100質量部に対して、前記凍結防止剤を5~20質量部混合して成るものであると良い。
【0013】
前記制御装置は、降雪時の外気温が0℃~-3℃の内の所定の温度よりも低い値になった場合に、前記凍結防止剤水溶液タンクの前記水溶液を前記配管に供給可能に、前記切替弁を制御すると良い。また、前記凍結防止剤水溶液タンクには、前記水溶液の濃度を検知する濃度センサが設けられ、前記凍結防止剤水溶液タンクに隣接して前記凍結防止剤を収容した容器が設けられ、前記凍結防止剤水溶液タンクの前記水溶液の濃度が一定値以下になった場合に、前記凍結防止剤を前記凍結防止剤水溶液タンクに投入する凍結防止剤補充装置を備える。
【発明の効果】
【0014】
この発明のヘリポート用融雪装置は、雪解け水を含む雨水を、ヘリポートの発着面に積もった雪を溶かす融雪水として利用して、ヘリポートの発着面の融雪を効率的且つ安価に行うものである。さらに、融雪に用いる雨水タンク等は、油水分離装置を兼ねるものであり、ヘリポートに必要な設備を兼ねる構成であるので、設備コストを抑え、既設のヘリポートにも容易に設置することができる。
【0015】
さらに、融雪に用いる水溶液に含まれる酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸二ナトリウムやプロピオン酸ナトリウム等の有機酸塩は、弱アルカリ性の水溶液となり、これを添加した凍結防止剤水溶液は、pHのコントロールが容易であり、ポンプや弁、配管等の機材の酸化を抑え、耐久性を高めるとともに、環境中に排水されても安全であり、水質規制に適合するpHの範囲内に容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明のヘリポート用融雪装置の一実施形態の概念図である。
図2】この実施形態のヘリポートの平面図である。
図3】この実施形態のヘリポートが設置された建築物の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図3はこの発明の一実施形態を示すもので、この融雪システムの実施形態であるヘリポート用融雪装置10は、ヘリポート12の融雪を行うもので、ヘリポート12は、図示しないヘリコプターが発着可能な発着面12aを有した構造物で、病院や公的機関等の建築物14の屋上に設置されている。ヘリポート12の下方には、建築物14の所定の位置に、油水分離構造を有した融雪用の貯水タンク20が設置されている。貯水タンク20は、後述する回収手段により回収した雨水を溜める雨水タンク22と、後述するように少なくとも有機酸の塩を含有する凍結防止剤が雨水に混合された水溶液を溜めるとともに、循環させて回収手段により回収する凍結防止剤水溶液タンク24とを備えている。ここで言う雨水には、降雪が解けたもので凍結防止剤を含まない雪解け水を含む。さらに、凍結防止剤水溶液タンク24に隣接して、有機酸の塩等を含有する凍結防止剤を溶解した原液である液体を収容した容器の凍結防止剤タンク26も設けられている。
【0018】
貯水タンク20の雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24、及び凍結防止剤タンク26は互いに一体的に併設され、又は各々独立して近傍に設けられ、ヘリポート12の下部又は側方に設置されている。雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24及び凍結防止剤タンク26は、外気に開放された開口を有せず、遮光された空間に設定され、雨水又は凍結防止剤の水溶液を貯蔵し、後述する各配管等により雨水及び水溶液を循環利用可能に設置されている。
【0019】
さらに、貯水タンク20の設備は、ヘリポート12に流出した燃料等の油分を分離して回収する油水分離装置を兼ねている。油水分離装置は、ヘリポート12に設置されることが義務づけられた設備である。従って、雨水タンク22に溜められる雨水の量は、例えばヘリコプターの燃料タンク容量の1300Lの燃料を回収可能な余裕を持った構造であれば良く、法令に従い適宜設計すれば良い。油水分離装置の構造は、公知の構造を適用することができ、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24の各々のタンク内を隔壁で仕切り、油分が流入した場合には、水分の上に油分を浮かせて、隣り合う隔壁内へは槽内の下部にある水分のみが移行するようにタンク内部が配管されている。そして、ヘリポート12に流出した燃料等の油分は、雨水タンク22又は凍結防止剤水溶液タンク24の槽内で、上流側の区画に油分が分離され、下流側の区画には水分のみが移行するように構成されている。
【0020】
雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24には、吸引管27,28が各々に挿通され、吸引管27,28は、各々ポンプ31,32に接続されている。ポンプ31,32は、後述する制御装置60により、雨水と凍結防止剤の水溶液とを選択的に送り出す切替弁29,30を介して、供給配管34に接続されている。供給配管34は、ヘリポート12に雨水や水溶液を供給するもので、ヘリポート12の発着面12aの一対の対向する縁部に沿って設けられた融雪パイプ33に接続されている。融雪パイプ33は、ヘリポート12の発着面12aに散水して融雪を行うもので、その他、雨水を利用してヘリポート12の洗浄を行ってもよい。なお、ポンプ31,32は、供給配管34の所定の位置に設けられ、切替弁29,30で切り替えられた雨水や水溶液を、1台のポンプで融雪パイプ33に供給するようにしても良い。
【0021】
ヘリポート12には、融雪のために散水された雨水等を回収するために、ヘリポート12の中央部の2箇所設けられた集水桝36を備え、集水桝36は、雨水や水溶液の回収手段である回収配管38に接続されている。ヘリポート12の発着面12aは、僅かにロート状になっており、中央部の最も低い位置に集水桝36が配置され、ヘリポート12に降った雨水が自然に集水桝36に流れ込むように傾斜が付けられている。回収配管38は、回収した雨水等を、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24に戻すための回収配管40に接続されている。
【0022】
回収配管40は、切替弁29,30と連動する切替弁42,43に接続され、切替弁42,43は、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24に各々接続された戻し配管44,45に各々接続されている。これにより、集水桝36から回収配管38,40により回収された雨水は、切替弁42,43により、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24に選択的に接続され、戻される。集水桝36、回収配管38,40、戻し配管44,45は、雨水や水溶液の回収手段を構成している。
【0023】
雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24には、各々図示しない水位センサが設けられているとともに、オーバーフロー防止のための排水用配管46,47が設けられている。排水用配管46,47は、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24の各々のオーバーフロー水位に設けられた図示しない排水口に接続され、集水桝48を経て図示しない排水用路に接続され、オーバーフロー水位を超えると排水可能に設置されている。排水された雨水又は水溶液は、図示しない排水槽に溜められた後、雨水用の下水等に排水される。
【0024】
凍結防止剤水溶液タンク24又はこれに接続した吸引管28内には、凍結防止剤の濃度を検知する濃度センサ54が設けられている。凍結防止剤水溶液タンク24は、凍結防止剤タンク26から凍結防止剤水溶液タンク24へ凍結防止剤を供給する凍結防止剤補充配管56を備え、凍結防止剤補充配管56は、図示しない凍結防止剤補充装置に接続されている。
【0025】
さらに、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24には、各々図示しない水位センサにより開閉される補充配管51,52が接続され、水道水や地下水等が供給可能に設けられている。また、供給配管34は、ポンプ62と配管63を介して水道水や地下水等の供給源に接続されている。これにより、貯水タンク20の雨水や水溶液がなくなった場合にも、ヘリポート12の融雪を行うことができる。
【0026】
その他、ヘリポート12には、降雪センサ58、外気温センサ59が設けられ、濃度センサ54、降雪センサ58、外気温センサ59の出力は、制御装置60に入力している。制御装置60は、降雪センサ58、外気温センサ59、濃度センサ54等のセンサからの信号を基に、切替弁29,30,42,43を切り替えて開閉するとともに、ポンプ31,32を作動させて、雨水に凍結防止剤が混合された水溶液や雨水を循環させて適切に融雪が行われるように制御している。
【0027】
凍結防止剤水溶液タンク24に収容する凍結防止剤の水溶液は、雨水と凍結防止剤を混合したもので、回収配管38,40、切替弁43を介して回収した水溶液も含む。本システムにおいては、市販の水溶性の凍結防止剤を用いることが可能である。ただし、配管等に、さびや劣化を生じさせるものであってはならず、油水分離装置の機能を妨げるものであってはならない。この観点から、凍結防止剤には有機酸の塩を用いることが望ましい。ここで用いる有機酸の塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸等の、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニム等の塩を用いる。好ましくは、コハク酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム・六水和物、プロピオン酸ナトリウムのうち、いずれかが含まれているものを用いる。コハク酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム・六水和物、プロピオン酸ナトリウムは、植物等の原料から発酵により生産することができるものであり、植物由来成分であるので、毒性や環境負荷で問題となる成分を含まず安全である。特に、コハク酸二ナトリウム及びプロピオン酸ナトリウムは、食品添加物として使用されている安全性の高い化合物であり、毒性や環境負荷で問題となる成分を含まず安全であり、臭いもわずかである。
【0028】
なお、コハク酸二ナトリウムの凝固点は-11.6℃、コハク酸二ナトリウム・六水和物の凝固点は-5.9℃、プロピオン酸ナトリウムの凝固点は-17℃である。この実施形態の凍結防止剤は、常温では固体であり、また水溶性であるため、固体でも水溶液でも取り扱うことができる。
【0029】
また、凍結防止剤として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウム等の塩化物から選ばれた1種又は複数の塩化物と混合して用いると、経済的であり好ましい。これらの塩化物と混合する場合、混合割合は前記塩化物100質量部に対して、コハク酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム・六水和物、又はプロピオン酸ナトリウムが5~20質量部とすることが適当である。塩化物と混合する方法は、例えば塩化物の固形剤或いは水溶液を一旦作製してから、これに前記有機酸の塩を所定量添加して、凍結防止剤とする。
【0030】
コハク酸二ナトリウム(水溶液pH8.9)とプロピオン酸ナトリウム(水溶液pH7.7)は弱アルカリ性の水溶液となるが、これを添加した凍結防止剤はpHのコントロールが容易であり、水質規制に適合するpHの範囲内に容易に調整することができる。散布された凍結防止剤は、溶けた氷雪とともに回収されて、再利用されるが、余剰分は最終的に公共水域に流れ込むため、水質関係法規の規制からpHは9.0以下が望ましく、さらには配管やポンプ等の機器の保護のためには、弱アルカリ領域であることが望ましい。
【0031】
また、凍結防止剤の水溶液は、ヘリポート12の発着面12aの傾斜した領域に散布すると、容易に流れ出てしまうため、散布箇所にある程度定着させておくことが好ましい。そこで、定着剤としてグリセリン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール等のポリオールや糖類を混合すると良い。特に、グリセリンは無臭で安全性が高く、粘着性が高いことから、この実施形態の凍結防止剤に上記ポリオールを混合することにより、上記効果に加えて、高い定着性、持続性、保水性、拡散性を有するものとなる。
【0032】
この他、凍結防止剤として、酢酸カリウムを基剤とする水溶液に、グリセリン及び/又はプロピレングリコール等のポリオールが配合され、有効成分を酢酸カリウムとグリセリン及び/又はプロピレングリコール等のポリオールが配合された液状凍結防止剤を用いても良い。液状凍結防止剤中における有効成分の含有率は、40質量%~50質量%であり、有効成分中のグリセリン及び/又はプロピレングリコールの含有率が、12質量%~70質量%、好ましくは21質量%~50質量%以下、より好ましくは21質量%~40質量%が良い。これは、液状凍結防止剤中の有効成分の含有率が40質量%未満の場合、凍結を防止する性能が十分でない。一方、液状凍結防止剤中の有効成分の含有率が45質量%以下であれば、液状凍結防止剤は液状であり、かつ粘度を低くできる。また、有効成分中のグリセリン又は/及びプロピレングリコールの含有率が70質量%を越えると、散布面の凍結防止効果が小さくなるのみならず油水分配が起こらず、油水分離装置の機能を妨げる危険性がある。そのため、有効成分中のグリセリン及び/又はプロピレングリコールの含有率を上記の範囲とすることで、良好に散布面の消雪効果を得ることができる。この液状凍結防止剤によれば、配合する材料割合により、-40℃乃至-70℃程度の低温でも凍結防止効果を発揮し、凍結を防止して、凍結面でのスリップや転倒その他の事故を防止することができ、環境に対しても害が少ない。
【0033】
次に、この実施形態のヘリポート用融雪装置の動作について述べる。先ず、冬場の降雪時には、ヘリポート用融雪装置10の制御装置60は、外気温センサ59により外気温が例えば3℃以下になり、降雪センサ58が降雪を感知すると、ポンプ31を作動させ、切替弁29,42を開き、切替弁30,43は閉じておく。外気温が0℃以上であれば、雨水の凍結の恐れがないので、雨水タンク22に繋がった吸引管27、ポンプ31、切替弁29,42、戻し配管44が連通するように設定する。これにより、外気温が3℃~0℃の間で降雪センサ58により降雪を感知した場合は、雨水タンク22から雨水がポンプ31により、供給配管34に送られ、供給配管34を経て、融雪パイプ33に雨水が供給され、ヘリポート12の発着面12aの消雪等が行われる。
【0034】
さらに気温が低下して、外気温が0℃未満又は0℃以下になった場合、降雪センサ58により降雪を感知すると、凍結を防止するために、凍結防止剤が雨水に溶解した消雪水である水溶液を供給する。そこで、制御装置60は、ポンプ32を作動させ、切替弁30,43を開き、切替弁29,42は閉じて、凍結防止剤水溶液タンク24に繋がった吸引管28、ポンプ32、切替弁30,43、戻し配管45が連通するように切り替える。そして、ポンプ32が作動して散水された凍結防止剤と雨水の水溶液は、上記と同様に集水桝36に集まる。集水桝36に集まった水溶液は、回収配管38,40に流れ、切替弁43を経て凍結防止剤水溶液タンク24に回収され、降雪中は融雪水として循環する。
【0035】
凍結防止剤水溶液タンク24から供給される凍結防止剤の水溶液の濃度は、融雪して戻って来ると濃度が低くなっているので、凍結防止剤水溶液タンク24内の水溶液の濃度は徐々に低下する。従って、水溶液の濃度が一定の値以下になると、濃度センサ54からの信号により制御装置60は、図示しない凍結防止剤補充装置により、凍結防止剤補充配管56を介して、凍結防止剤タンク26から凍結防止剤を供給する。そして、凍結防止剤水溶液タンク24内の水溶液が所定の濃度になると、濃度センサ54により制御装置60が凍結防止剤補充装置の作動を止めて、凍結防止剤の供給を止める。この動作により、凍結防止剤水溶液タンク24内の水溶液の濃度は一定の範囲に保たれる。
【0036】
さらに、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24には、各々図示しない水位センサが設けられているとともに、オーバーフロー防止のための排水用配管46,47が設けられているので、各タンクの水位がオーバーフロー水位を超えると、排水用配管46,47を介して排水される。排水された雨水又は水溶液は、図示しない排水槽に溜められた後、雨水用の下水等に排水される。
【0037】
また、この雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24は、内部に図示しない仕切りと接続用管路が設けられ、既存の油水分離槽と同様の構造であるので、燃料等の油分がヘリポート12に流出した場合、集水桝36、回収配管38,40、戻し配管44,45を経て、雨水タンク22又は凍結防止剤水溶液タンク24に油分が回収される。雨水タンク22又は凍結防止剤水溶液タンク24では、油分を浮かせた状態で水分のみが仕切りの隣の区画に移動するように配管されているので、ヘリポート12に流出した燃料等の油分は、雨水タンク22又は凍結防止剤水溶液タンク24の槽内で、上流側の区画に油分が分離され、下流側には水分のみが流れ出て排水される。
【0038】
この実施形態のヘリポート用融雪装置10は、雨水タンク22に雨水や融雪水を溜めて、循環利用することにより、冬場において融雪用の雨水、及び環境負荷のない凍結防止剤を用いた水溶液により、必要に応じてヘリポート12の融雪動作を行うことができる。しかも、ヘリポート12の油水分離装置を兼ねることができ、設備コストを抑えて、設備の効率的な使用が可能となる。
【0039】
また、使用する凍結防止剤は、環境負荷の小さいものであり、弱アルカリ性に調整されているため、本システムに使用するポンプ31,32や切替弁29,30,42,43、その他の配管や設備への影響も極めて小さく、凍結防止剤の水溶液の循環利用に好適であり、排水も問題なく行うことができる。また、雨水タンク22と凍結防止剤水溶液タンク24は、開放された開口を有せず、遮光された空間に雨水及び水溶液を貯蔵し、雨水及び水溶液を循環利用可能に設けられているので、内部に藻等が発生しない。さらに、凍結防止剤水溶液タンク24は、凍結防止剤が抗菌作用を有し、雑菌が繁殖することもない。
【0040】
10 ヘリポート用融雪装置
12 ヘリポート
12a 発着面
14 建築物
20 貯水タンク
22 雨水タンク
24 凍結防止剤水溶液タンク
26 凍結防止剤タンク
27,28 吸引管
29,30,42,43 切替弁
31,32,62 ポンプ
33 融雪パイプ
34 供給配管
36,48 集水桝
38,40 回収配管
42,43 切替弁
44,45 戻し配管
46,47 排水用配管
51,52 補充配管
54 濃度センサ
56 凍結防止剤補充配管
58 降雪センサ
59 外気温センサ
60 制御装置
図1
図2
図3