(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074856
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】透湿防水シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220511BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220511BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220511BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/12
B32B27/36
E04B1/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185254
(22)【出願日】2020-11-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和元年11月6日発行の自社カタログ「建材総合カタログ」にて公開された。 令和元年12月1日に自社サイト掲載によって公開された。 令和2年2月1日発行の自社カタログ「防水資材総合カタログ」にて公開された。 令和2年4月1日に株式会社富士住建への販売によって公開された。 令和2年6月10日付、7月10日付、8月21日付発行の「日刊木材新聞」への掲載によって公開された。 令和2年10月27日に他社サイト(公開者:株式会社イプロス)掲載によって公開された。 令和2年10月29日に他社サイト(公開者:株式会社プログランス)掲載によって公開された。
(71)【出願人】
【識別番号】593020175
【氏名又は名称】一村産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳
(72)【発明者】
【氏名】野宇 隆史
(72)【発明者】
【氏名】塩地 晃志
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DB04
2E001FA04
2E001GA24
2E001HD08
2E001HD11
2E001MA01
4F100AB01D
4F100AB10D
4F100AB33D
4F100AK01A
4F100AK04A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AR00D
4F100AT00B
4F100AT00C
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4F100DG15B
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4F100GB07
4F100JB07
4F100JD04A
4F100JJ02D
4F100JK02
(57)【要約】
【課題】劣化を抑制して長期間に亘る耐水性を備えると共に施工が容易な透湿防水シートを提供する。
【解決手段】 透湿防水シートは、透湿防水フィルムと、透湿防水フィルムの一方の面側に設けられて透湿防水フィルムを補強するシート状の基体と、透湿防水フィルムの他方の面側に設けられて透湿防水フィルムを保護すると共に透湿性を呈する保護層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿防水フィルムと、
前記透湿防水フィルムの一方の面側に設けられて前記透湿防水フィルムを補強するシート状の基体と、
前記透湿防水フィルムの他方の面側に設けられて前記透湿防水フィルムを保護すると共に透湿性を呈する保護層と、
を備える、透湿防水シート。
【請求項2】
前記基体及び前記保護層は、共にポリエチレンテレフタレート不織布からなり、前記保護層は加圧加工されてなる、請求項1記載の透湿防水シート。
【請求項3】
前記保護層の表面に設けられて透湿性を呈する遮熱層をさらに備える、請求項1または2記載の透湿防水シート。
【請求項4】
前記遮熱層は、多孔質のアルミ箔からなる、請求項3記載の透湿防水シート。
【請求項5】
前記遮熱層は、前記保護層の表面に金属粉を含む塗料を塗布することにより形成される、請求項3記載の透湿防水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿防水シートに関し、特に、住宅の外壁の下地に用いられる透湿防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅の外壁通気工法において、透湿防水シートが広く用いられている。透湿防水シートは、建物外部からの雨水の浸入を防止する防水性と、室内側からの湿気を外部に逃がす透湿性とを兼ね備えたシートである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の住宅の高耐久化に伴い、透湿防水シートに求められる性能も、JIS規格の改定に伴い、30年、50年などの長期に亘る耐久性を求められるようになった。
【0005】
透湿防水シートの多くは、ポリエチレン系(PE)樹脂から作製されるため、外光に含まれる紫外線による劣化が生じて、耐水性が低下することが分かっている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、劣化を抑制して長期間に亘る耐水性を備えると共に施工が容易な透湿防水シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の透湿防水シートは、透湿防水フィルムと、前記透湿防水フィルムの一方の面側に設けられて前記透湿防水フィルムを補強するシート状の基体と、前記透湿防水フィルムの他方の面側に設けられて前記透湿防水フィルムを保護する透湿性を呈する保護層と、を備える。
【0008】
上記構成により、保護層が外気に晒されるように透湿防水シートを建物の外壁に取り付けた場合に、保護層が透湿防水シートを保護するので、紫外線や風雨による透湿防水シートの劣化を抑制して長期に亘り高い耐水性を維持する。
【0009】
好ましくは、前記基体及び前記保護層は、共にポリエチレンテレフタレート不織布からなり、前記保護層は加圧加工されてなる。これにより、高い強度と耐久性を有した透湿防水シートを得ることができる。
【0010】
好ましくは、透湿防水シートは、前記保護層の表面に設けられて透湿性を呈する遮熱層をさらに備える。この構成により、外部からの熱が遮熱層によって遮断されるので、透湿防水シートを外壁に用いた建物内部の室温が、外部の熱の影響を受けずに維持される。
【0011】
好ましくは、前記遮熱層は、多孔質のアルミ箔からなる。故に、アルミ箔を保護層の表面に設けるだけで、遮熱層を簡単に透湿防水シートに作製することができる。
【0012】
好ましくは、前記遮熱層は、前記保護層の表面に金属粉を含む塗料を塗布することにより形成される。従って、透湿防水シートに容易に遮熱層を作製することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透湿防水シートによれば、劣化を抑制して透湿防水フィルムの防水性を長期間に亘り維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態である透湿防水シートの断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態である透湿防水シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を説明する。なお、本願発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0016】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態の透湿防水シート1の断面図を示す。透湿防水シート1は、透湿防水フィルム2と、透湿防水フィルム2の一方の面である裏面側に設けられたシート状の基体3と、透湿防水フィルム2の他方の面である表面側に設けられた保護層4とを備える3層構造からなる。透湿防水シート1の厚みは、例えば0.22mmである。
【0017】
基体3は透湿防水フィルム2の裏面に、保護層4は透湿防水フィルム2の表面に、それぞれ接着剤を用いてホットメルト接着法により貼付されている。
【0018】
透湿防水フィルム2は、ポリエチレン(PE)多孔質フィルムからなる。透湿防水フィルム2は、透湿性と防水性とを備え、膜厚方向において、湿気は通過させるが、雨滴などの水分の通過を遮断して高い耐水圧を呈する。透湿防水フィルム2は、透湿性と防水性との両方を備えている適宜のフィルムを用いることができる。
【0019】
基体3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)不織布、特に長繊維のスパンボンド不織布からなる。基体3は、透湿防水フィルム2の裏面に貼付されて、透湿防水シート1の強度を補強する。基体3としてのPET不織布は、適宜のPET不織布を用いることができる。
【0020】
保護層4は、カレンダー加工されたPET不織布からなる。PET不織布をカレンダー加工した後、透湿防水フィルム2の表面側に貼付することにより形成される。保護層4は、透湿性を呈しながらも透湿防水シート1の表面を保護する。具体的には、保護層4は、外部からの紫外線や熱に透湿防水フィルム2が直接晒されるのを防いで、透湿防水フィルム2の防水性の劣化を防ぎ耐水性を維持する。なお、カレンダー加工とは、融点以下の温度に調整されたカレンダーロールやエンボスロールを用い、不織布を加圧処理する加工である。このカレンダー加工により、不織布を構成する繊維の一部が熱融着し、かつ繊維間に形成された空隙が目潰しされることにより、不織布が高い強度と所望の耐水圧を備えると共に、表面の毛羽立ちが抑制されて表面が滑らかになる。保護層4としてのPET不織布は、透湿性を備える適宜のPET不織布を用いることができる。
【0021】
上記構成の透湿防水シート1は、基体3及び保護層4が共にPETから作製されているので、融点がポリエチレン(PE)の約110度に比べて約250度と高いので耐熱性を備えると共に、耐候性(屋外暴露後の強度)もPEよりも強力である。
【0022】
さらに、保護層4はPET不織布からなるため、安定した強度、耐熱性、耐久性を備える。
【0023】
また、保護層4は、カレンダー加工により表面が滑らかに形成されているので、透湿防水フィルムが直接透湿防水シートの表面側になる場合に比べて、毛羽立ちを抑えると共に、テープ密着性を向上させている。また、表面が滑らかなので、施工時のバタつき音も抑制される。
【0024】
次に、本実施形態の透湿防水シート1と、比較例の透湿防水シートとの性能を比較する。ここで、本実施形態の透湿防水シート1を実施例1とする。
【0025】
(比較例1)
比較例1の透湿防水シートは、PE多孔質フィルムからなる透湿防水フィルムと、PET不織布からなり透湿防水フィルムの一方の面である裏面側に設けられたシート状の基体とを備える2層構造からなる。透湿防水シートの厚みは、0.16mmである。比較例1の透湿防水シートは、実施例1の透湿防水シートとの差異は、保護層が無いだけであり、基体の構成及び材料は実施例1のものと同じである。
【0026】
(比較例2)
比較例2の透湿防水シートは、PE多孔質フィルムからなる透湿防水フィルムと、透湿防水フィルムの一方の面である裏面側に設けられて透湿防水フィルムを補強するPET不織布からなる基体とを備える2層構造からなる。透湿防水シートの厚みは0.16mmである。
【0027】
(比較例3)
比較例3の透湿防水シートは、PE不織布のみからなる単層構造である。透湿防水シートの厚みは、0.17mmである。
【0028】
実施例1、及び比較例1~3の各透湿防水シートについて、特性として、引張強さ、つづり針保持強さ、透湿抵抗、及び防水性(初期性能と耐久性能)を比較したものを以下の表1に示す。各特性は、JISA6111:2016規格を満たすことが要求され、その数値は、JIS規格に従う方法により測定した数値である。
【0029】
【表1】
縦の引張強さとつづり針保持深さとについては、実施例1の透湿防水シートが、最も強度が示されている。
【0030】
また、実施例1については、透湿抵抗が最小値を示し、比較例1及び2に対してより多くの湿気を屋外に放出していることが分かる。さらに、防水性については、値が最も大きくなり、高い耐水性を備えている。
【0031】
次に、防水性の耐久性能については、施工から30年相当経過後であっても初期の値を約10%程度の低下に留まることが分かる。また、30年相当の値と50年相当の防水性の値と、いずれも、比較例2及び3の初期性能の値を上回っていて、比較例1~3に対して高い耐水性を呈する。このように、初期性能の透湿抵抗が0.12m2・Pa/μgと低く、且つ防水性は35kpaと高い。防水性は、初期性能が比較例1~3よりも高いながらも、経年劣化が30年相当であっても10%程度に留まることから、長期に亘って安定した耐水性を示すことが分かる。
【0032】
さらに、実施例1を比較例1と比較した場合に、保護層があることによって、引張強さとつづり針保持強さとがどちらも高くなって強度が増している。すなわち、透湿防水シートを保護層を含む3層構造とすることで、物理的な強度も強化されて、強度、耐熱性、耐久性を備えることになる。
【0033】
以上から、実施例1の透湿防水シートは、JISA6111:2016規格の加熱処理条件I-1(10年相当)、II-1(30年相当)、III-1(50年相当)の全ての耐久性能を満たす特性を呈する。特に、保護層を設けて3層構造にすることにより、強度が増すと共に防水性についての経年劣化が抑制される。従って、従来に比べて例えば10年、20年、30年と、透湿性を維持しながらも、長期間に亘り高い防水性を維持することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の透湿防水シート10を、
図2を参照して説明する。
図2に示すように、透湿防水シート10は、透湿防水フィルム2と、透湿防水フィルム2の一方の面である裏面側に設けられたシート状の基体3と、透湿防水フィルム2の他方の面である表面側に設けられた保護層4と、保護層4の透湿防水フィルム2に接する面とは反対側の面に設けられた遮熱層5とを備える4層構造からなる。透湿防水フィルム2と基体3と保護層4とについては、第1実施形態における実施例1の透湿防水シート1を構成するものと同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
遮熱層5は、透湿性を呈する微多孔のアルミ箔にからなり、保護層となるPET不織布の表面側に設けられている。又は、遮熱層5は、保護層となるPET不織布の表面への、アルミ粉末混入インクによる印刷で形成される。どちらの作成方法であっても、遮熱層5は、透湿防水シート10に侵入しようとする熱を遮断する遮熱性と、層厚方向に湿気を通過させる透湿性とを備える。遮熱層5を構成する金属は、アルミニウムに限らず、遮熱性を呈する適宜の金属を用いることができる。
【0036】
遮熱層5をアルミ箔で形成した4層構造の透湿防水シート10を実施例2、遮熱層5を印刷で形成した4層構造の透湿防水シートを実施例3として、特性、すなわち、引張強さ、つづり針保持強さ、透湿抵抗、及び防水性(初期性能と耐久性能)を比較したものを表2に示す。
【0037】
【表2】
実施例2及び実施例3のいずれの透湿防水シート10も、3層構造を採る実施例1の透湿防水シートと同等の引張強さ、つづり針保持強さ、透湿抵抗を、及び防水性(初期性能と耐久性能)を示すことが分かる。
【0038】
次に、4層構造の透湿防水シート10の遮熱性について記載する。実施例2及び実施例3の遮熱性を、以下の比較例と対比する。
【0039】
(比較例4)
比較例4は、遮熱層及び保護層の無い、透湿防水フィルム及び基体の2層構造の透湿防水シートである。すなわち、先の比較例1と同じシートである。この透湿防水シートにおいて、透湿防水フィルムが位置する面を表面側とする。
【0040】
(比較例5)
比較例5は、透湿防水性を呈するPE不織布の一方の面側にアルミニウムの蒸着により遮熱層を形成した透湿防水シートである。
【0041】
(比較例6)
比較例6は、透湿防水フィルムと基体とからなる2層構造の透湿防水シートであって、透湿防水フィルムの表面に微細なアルミニウム粒子を塗布して遮熱層を形成した透湿防水シートである。
【0042】
(比較例7)
比較例7は、透湿防水フィルムの表面側に、直接、アルミニウムの蒸着により遮熱層を形成した透湿防水シートである。
【0043】
実施例2と、比較例4~7との遮熱性能を比較したものを
図3に示す。遮熱性の試験方法は、木軸に対象となる透湿防水シートを設置し、800Wの電気ストーブで30cmの距離から透湿防水シートを表面側から温めた時の裏面側の温度を、赤外線カメラにより測定した。透湿防水シートの表面側とは、比較例5~7の各々において、遮熱層が位置する面側である。
【0044】
図3を参照すると、透湿防水シートの裏側の温度が、遮熱層がない比較例4が87.38度、遮熱層を有する実施例2が35.36度、比較例5が43.4度、比較例6が55.4度、比較例7が51.6度となった。遮熱層の無い比較例4の温度が87度と最も高くなり、遮熱層を有する実施例2及び比較例5~7の温度は、いずれも比較例4の温度よりも低くなった。これから、遮熱層が、透湿防水シートの表側に照射された熱を遮断していることが分かる。また、その中でも、実施例2の透湿防水シートの温度が最も低くなった。実施例2のシートは、アルミ箔からなる遮熱層と保護層との両方を備えている。これに対し、比較例5~7は、いずれも保護層の無い透湿防水シートである。従って、
図3に示す遮熱性能温度から、保護層の存在によって遮熱効果の向上が図られていることが分かる。
【0045】
以上から、透湿防水シート10の表面側に、遮熱層に加え保護層を設けることによって、保護層の無い状態よりも遮熱性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1、10 透湿防水シート
2 透湿防水フィルム
3 基体
4 保護層
5 遮熱層