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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074862
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】不良判断装置および不良判断方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01B11/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185266
(22)【出願日】2020-11-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 智俊
(72)【発明者】
【氏名】小村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】金森 信弥
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065AA65
2F065BB13
2F065BB15
2F065BB27
2F065CC06
2F065DD02
2F065FF04
2F065FF67
2F065JJ05
2F065MM03
2F065MM26
2F065PP16
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065QQ41
2F065RR08
2F065SS04
2F065SS09
2F065SS14
2F065UU02
(57)【要約】
【課題】棒状のような特殊な光源を用いることなく金属帯板の板表面形状の不良を容易に判断することが可能な不良判断装置および不良判断方法を提供する。
【解決手段】被圧延鋼板1の幅方向に回転軸が延びて設置され、被圧延鋼板1を上方に持ち上げるロールと、ロールにより上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラ61,62,63,64と、カメラ61,62,63,64が撮像した画像に基づき、被圧延鋼板1の板表面形状の不良を判断する制御装置60と、を備えた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機により圧延される金属帯板の板形状の不良を判断する不良判断装置であって、
前記金属帯板の幅方向に回転軸が延びて設置され、前記金属帯板を上方に持ち上げるロールと、
前記ロールにより上方側に持ち上げられた前記金属帯板の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラと、
前記カメラが撮像した画像に基づき、前記金属帯板の板表面形状の不良を判断する画像処理部と、を備えた
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不良判断装置において、
前記ロールは、複数の前記圧延機の間に設けられた張力制御用ルーパーである
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の不良判断装置において、
前記ロールは、複数に分割されたセグメントロールからなり、
前記各セグメントロールを一端に支持し他端にトルクメータを設けた支持フレームを含み、計測した各トルク値から算出した張力分布に基づき板形状を算出する形状計を備えた ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の不良判断装置において、
前記画像処理部は、前記画像の中で、輝度が一定値以上の領域の境界の位置を2次元座標データとして取得し、前記2次元座標データに対して所定の数学処理により評価値を算出して不良を判断する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の不良判断装置において、
前記画像処理部は、算出した評価値と所定の閾値とを比較して不良を判断する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の不良判断装置において、
前記画像処理部は、前記画像の中で、板幅方向に所定間隔毎に輝度を得る
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の不良判断装置において、
表示装置において表示する内容に関する信号を送信する表示信号部を更に備え、
前記表示信号部は、前記画像処理部の判断を表示させる信号を前記表示装置に送信する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の不良判断装置において、
表示装置において表示する内容に関する信号を送信する表示信号部を更に備え、
前記表示信号部は、前記画像処理部の判断に応じた操作を表示させる信号を前記表示装置に送信する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項9】
請求項4に記載の不良判断装置において、
前記画像処理部は、輝度が一定以上の領域の板長手方向の一端側の境界から他端側の境界までの長さのうち、板幅方向における板中央の中央長さをMLと、前記板幅方向におけるワークサイド側の板端の長さをWSLと、前記板幅方向におけるドライブサイド側の板端の長さであるDSLとしたときに、
ML>WSLかつML>DSLの場合、中伸びと判断すること、
ML<WSLかつML<DSLの場合、耳伸びと判断すること、
ML≧WSLかつML<DSLの場合、ドライブサイド端伸びと判断すること、
ML<WSLかつML≧DSLの場合、ワークサイド端伸びと判断すること、
のうち少なくともいずれか一つを判断する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項10】
請求項9に記載の不良判断装置において、
表示装置において表示する内容に関する信号を送信する表示信号部を備え、
前記表示信号部は、
前記画像処理部が中伸びと判断した場合に中伸びと表示させる信号
前記画像処理部が両端伸と判断した場合に耳伸びと表示させる信号
前記画像処理部がドライブサイド端伸びと判断した場合にドライブサイド端伸びと表示させる信号
前記画像処理部がワークサイド端伸びと判断した場合にワークサイド端伸びと表示させる信号
のうち少なくともいずれか一つの信号を前記表示装置に送信する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の不良判断装置において、
表示装置において表示する内容に関する信号を送信する表示信号部を備え、
前記表示信号部は、
前記画像処理部が中伸びと判断した場合に、ワークロールのベンディング操作に関しインクリーズベンディングを弱める操作をする指示、ディクリーズベンディングを強める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号
前記画像処理部が耳伸びと判断した場合に、前記ワークロールのベンディング操作に関し前記インクリーズベンディングを強める操作をする指示、前記ディクリーズベンディングを弱める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号
前記画像処理部がドライブサイド端伸びと判断した場合に、ロール両側に配置される圧下装置によるレベリング制御に関し、前記ドライブサイド側の前記ワークロールの間隔が広がる操作をする指示と前記ワークサイド側の前記ワークロールの間隔を狭める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号
前記画像処理部がワークサイド端伸びと判断した場合に、前記レベリング制御に関し、前記ワークサイド側の前記ワークロールの間隔が広がる操作をする指示、前記ドライブサイド側の前記ワークロールの間隔を狭める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号
のうち少なくともいずれか一つの信号を前記表示装置に送信する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の不良判断装置において、
前記画像処理部は、前記画像の中で、輝度が一定値以上の領域が2箇所以上に分かれていると判断されるときは、不良と判断する
ことを特徴とする不良判断装置。
【請求項13】
圧延機により圧延される金属帯板の板形状の不良を判断する不良判断方法であって、
前記金属帯板の幅方向に設置されているロールにより前記金属帯板を上方に持ち上げる工程と、
前記ロールにより上方側に持ち上げられた前記金属帯板の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する撮像工程と、
前記撮像工程で得られた画像に基づき、前記金属帯板の板表面形状の不良を判断する画像処理工程と、を有する
ことを特徴とする不良判断方法。
【請求項14】
請求項13に記載の不良判断方法において、
前記画像処理工程の後に、その判断結果を表示する表示工程を更に有する
ことを特徴とする不良判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧延金属帯板の板形状不良を検出するための不良判断装置および不良判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高精度で板材の形状を計測することができ、メンテナンスが容易な形状計測装置の一例として、特許文献1には、板状の被計測材の表面を照明する棒状光源と、被検査材表面に形成された棒状光源像を撮像する2次元カメラと、棒状光源像の位置から被計測材の形状を求める演算装置とを備えており、棒状光源と2次元カメラとが被計測材の両側で向かい合う位置にあり、棒状光源の中心と2次元カメラとを結ぶ直線の水平な被計測材面への主投影線が被計測材の幅方向に延びる直線に対し傾斜していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-221410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1では、線状の反射光を得るのに棒状光源を用いることから、棒状光源を周囲の照明よりも強い照度のものを用いたり、周囲の照明を暗くしたりすることが必要となる。また、棒状光源を金属帯板に近接して配置することも考えられる。
【0005】
しかし、消耗品の棒状光源で、特に照度の大きいものを準備することはコスト的に望ましくない、との問題がある。
【0006】
また、周囲の照明を暗くするのは、作業環境上適切でない、との課題もある。
【0007】
そして、棒状光源を金属帯板に近接して配置することは、圧延ラインのメンテナンスのスペースにも影響するため望ましくない、との問題がある。
【0008】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものであって、棒状のような特殊な光源を用いることなく金属帯板の板表面形状の不良を容易に判断することが可能な不良判断装置および不良判断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、圧延機により圧延される金属帯板の板形状の不良を判断する不良判断装置であって、前記金属帯板の幅方向に回転軸が延びて設置され、前記金属帯板を上方に持ち上げるロールと、前記ロールにより上方側に持ち上げられた前記金属帯板の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラと、前記カメラが撮像した画像に基づき、前記金属帯板の板表面形状の不良を判断する画像処理部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、棒状のような特殊な光源を用いることなく金属帯板の板表面形状の不良を容易に判断することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1の不良判断装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図である。
図2】実施例1の不良判断装置において取得される画像を解析した状態の一例を示す図であり、被圧延鋼板の表面が平坦な場合である。
図3】実施例1の不良判断装置において取得される画像を解析した状態の他の一例を示す図であり、被圧延鋼板の表面の板形状に不良が確認された場合である。
図4】実施例1の不良判断装置において解析されたデータを更に処理した結果、被圧延鋼板の表面に確認できる反射光領域の境界線を、2次元座標に変換したグラフの図である。
図5】本発明の実施例2に示されている形状計と、不良判断装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図である。
図6】実施例2の圧延機における形状計の構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の不良判断装置および不良判断方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
<実施例1>
本発明の不良判断装置および不良判断方法の実施例1について図1乃至図4を用いて説明する。
【0014】
最初に、不良判断装置を含めた圧延設備の全体構成について図1を用いて説明する。図1は本実施例1の不良判断装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図である。
【0015】
図1において、被圧延鋼板1を圧延する圧延設備100は、F1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、カメラ61,62,63,64、張力制御用のルーパー71,72,73,74、制御装置60(画像処理部)、表示装置70等を備えている。
【0016】
このうち、カメラ61,62,63,64、張力制御用のルーパー71,72,73,74、制御装置60(画像処理部、表示信号部)、表示装置70により、本発明の不良判断装置が構成される。
【0017】
なお、圧延設備100については、図1に示すような5つの圧延スタンドが設けられている形態に限られず、最低2スタンド以上であればよい。
【0018】
F1スタンド10や、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50の各々は、上ワークロールおよび下ワークロール、これら上ワークロールおよび下ワークロールにそれぞれ接触することで支持する上バックアップロール、下バックアップロール、上バックアップロールの上部に設けられた圧下シリンダ11,21,31,41,51を備えている。なお、各ワークロールと各バックアップロールとの間に、更に中間ロールを設けた6段の構成とすることができる。
【0019】
ルーパー71は張力制御用のロールである。このロールは、その回転軸を被圧延鋼板1の幅方向に延びるようにして設置され、被圧延鋼板1を鉛直方向の上方に持ち上げるロールとしてF1スタンド10とF2スタンド20との間に設けられている。なお、本発明において、上方に持ち上げるロールとは、上方への制御された力が作用する機構で支持されているロールであることを意味するものとする。ロールを上方に持ち上げる機構としては、ばね等で上方に付勢するものや、油圧シリンダー、又はモータ駆動等で持ち上げるもの等が考えられる。
【0020】
カメラ61は、ルーパー71により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に設けられている。カメラ61が撮像したルーパー71により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像のデータは、通信線90を介して制御装置60に送信される。
【0021】
同様に、張力制御用のルーパー72はF2スタンド20とF3スタンド30との間に、張力制御用のルーパー73はF3スタンド30とF4スタンド40との間に、張力制御用のルーパー74はF4スタンド40とF5スタンド50との間に、それぞれ設けられている。
【0022】
また、カメラ62はルーパー72により鉛直方向上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に、カメラ63はルーパー73により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に、カメラ64はルーパー74により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に、それぞれ設けられている。カメラ62,63,64により撮像された画像のデータは、通信線90を介して制御装置60に送信される。
【0023】
これらルーパー71,72,73,74により、被圧延鋼板1の幅方向に回転軸が延びて設置されているロールにより被圧延鋼板1を上方に持ち上げる工程が実行される。
【0024】
また、これらカメラ61,62,63,64により、ロールにより上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する撮像工程が実行される。
【0025】
なお、カメラ61,62,63,64が主に撮像する、ロールにより上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた撮影領域を照らす照明は、圧延設備100が設置されている圧延工場の天井などに適宜配置される一般的な照明でよく、本発明では特段新たな照明設備は不要であるが、専用の照明を設けても良い。
【0026】
制御装置60は、圧延設備100内の各機器の動作を制御する装置である。本実施例では、特には、制御装置60は、カメラ61,62,63,64が撮像した画像に基づき、被圧延鋼板1の板表面形状の不良を判断し、板形状不良の発生状態に応じた各種制御を実行する。その詳細は図2乃至図4を用いて後ほど詳しく説明する。
【0027】
この制御装置60により、撮像工程で撮像された画像に基づき、被圧延鋼板1の板表面形状の不良を判断する画像処理工程が実行される。
【0028】
表示装置70は、ディスプレイなどの表示機器や警報機などの音響機器であり、例えばオペレータに対して制御装置60が板形状不良であると判断されたときに板形状不良の発生やその対処作業について伝えるための装置であることから、このような表示装置70としては、ディスプレイが用いられることが多い。
【0029】
ここで、上述の制御装置60は表示信号部を含んでおり、表示装置70に表示する内容に関する信号を表示信号部が表示装置70に送信する。この制御装置60の表示信号部と上述の表示装置70とにより表示工程が実行される。
【0030】
オペレータは、操業中、表示装置70の表示画面や各スタンド自体、各スタンド間を目視することで板形状不良の有無を確認する。例えば、オペレータは、表示装置70に、中伸び等の板形状不良の種類と、インクリーズベンディング、ディクリーズベンディング、WSレベリング、DSレベリング、ロール速度の減速・増速等、行うべき操作が表示されている場合、その指示に従って手動で操作をすることにより、板形状不良となる状態から良好となる状態に復帰させることができる。
【0031】
なお、オペレータに板形状の不良を伝える形態に限られず、表示するとともに板形状不良を修正する操業を自動で行う形態や、表示せずに自動で修正操業する形態とすることができる。
【0032】
次いで、本発明における圧延される被圧延鋼板1の板形状の不良を判断する不良判断装置、不良判断方法の具体例について以下図2乃至図4を用いて以下説明する。図2および図3は取得される画像から被圧延鋼板1の表面に映る反射光領域の境界を解析した状態の一例、図4は解析された反射光領域の境界位置データを更に処理し、2次元座標に変換した結果を示す図である。
【0033】
カメラ61,62,63,64では、被圧延鋼板1の圧延操業中は、例えば、1秒間に30回、ルーパー71,72,73,74により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の領域を絶えず撮像して、制御装置60に取り込んでいる。なお、動画形式で撮像して、適宜静止画像として制御装置60に取り込む形式とすることができる。
【0034】
撮像された画像は、例えば図2に示すように、ルーパー71,72,73,74により上方に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域が映っていて、略長方形形状の反射光領域1Aが含まれている。そのほかには、図3に示すように、ルーパー71,72,73,74により上方に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を映した画像には、不定形形状の反射光領域1Bが含まれている。
【0035】
ここで、反射光領域1Aとは、被圧延鋼板1が映っている範囲のうち、他の部分よりも強い反射光が得られる領域で、ルーパー71,72,73,74で持ち上げられた所を主にして現れる。撮影画像に反射光領域1Aが含まれるようにカメラレンズが向けられ、カメラ61,62,63,64が配置される。
【0036】
これら図2図3等の1枚ごとの静止画像について、以下に示すような手順で、被圧延鋼板1上面の輝度が、ある閾値よりも高い領域を見つける。
【0037】
最初に、図2図3等の1枚ごとの静止画像にX座標およびY座標を定義する。例えば、被圧延鋼板1の圧延方向をX座標、圧延方向に垂直な被圧延鋼板1の板幅方向をY座標と定義する。ここでは、X座標およびY座標の単位を静止画像を構成する光の1点であるピクセル単位とする。
【0038】
その後、Y座標を特定の値、例えば、Y=0と固定する。
【0039】
次いで、Y=0のときのX座標(ピクセル)を左から右にスキャンし、X=0から、X=10000(被圧延鋼板1が撮影されている画像の左端から右端までのピクセル)の間で、X座標を1ピクセルずつ変えていき、その位置での輝度が閾値を超えているか超えていないかを判定する。例えば、閾値を超えた場合を「明」、閾値を超えない場合を「暗」とすると、「暗→暗→暗→暗」→「明→明→明→明→明→明→明」→「暗→暗→暗→暗」と判定されることになる。ここで、「暗」→「明」、「明」→「暗」と輝度が変化するところに反射光領域の境界線があることになる。なお、実際のピクセルの数は極めて多いので、説明のために数を少なくして簡略化している。
【0040】
次に、Y座標のピクセルを+1してY=1として、先と同様に、X座標を左から右にスキャンする。例えば、「暗→暗→暗」→「明→明→明→明→明→明→明」→「暗→暗→暗→暗→暗」、と判定される。Y=0よりもY=1のほうが、初めの暗の続く数が4個から3個に減り、明の続く数は7と同じであり、後の暗の続く数が4から5に増えているので、反射光領域の境界は全体として左側にずれたことを意味する。なお、ここでも説明のために、実際のピクセルの数よりも少なくして簡略化している。
【0041】
このY座標を順次変えてX座標を左から右にスキャンする作業を被圧延鋼板1の板幅方向で繰り返していき、板幅方向全ての領域で完了すると、前スタンド側(反射光領域の左側)や次スタンド側(反射光領域の右側)での設定した閾値の輝度を超えた反射光領域と判定される境界線を求めることができ、得られた画像内で、図2の反射光領域1Aや図3の反射光領域1Bの境界のピクセル座標の値が求められる。
【0042】
図4は、あるタイミングにおける図3の撮像画像に基づく反射光領域1Bの境界を含み、ピクセルを単位とした2次元座標グラフであり、「明」と「暗」との境界線の座標をピクセルを単位としてグラフ化したもので、ルーパー71,72,73,74により上方に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域にある反射光領域の境界が前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402として認識される。
【0043】
前スタンド側境界線401を構成するポイントLeft(i)の座標(x,y)を(xLi,yLi)として、次スタンド側境界線402を構成するポイントRight(i)の座標を(xRi,yRi)とする。また、Y座標方向は板幅方向と合致する。
【0044】
板幅方向での所定間隔毎のポイントは、Y=1からNまであり、ここではピクセル単位と一致させている。前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402を構成するポイントはN(i=1~N)個となる。後述する式(3)等の他の説明でも、N(i=1~N)は、同様の意味である。
【0045】
この場合、前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402とを構成するポイントをスキャンする際、Y座標を固定して行うので、左側の前スタンド側境界線401を構成するポイントと右側の次スタンド側境界線402を構成するポイントは同数であり、N個となる。
【0046】
前スタンド側境界線401の座標xLi(左側の境界線のX座標)は、以下の式(1)ように表せる。
【0047】
【数1】
【0048】
また、次スタンド側境界線402の座標xRi(右側の境界線のX座標)は、以下の式(2)のように表せる。
【0049】
【数2】
【0050】
この後、制御装置60は、画像の中で、実際の境界を示す位置が、予め定めた境界の位置と相違する場合、板形状不良と判断する。例えば、以下に説明するように、被圧延鋼板1の表面上の輝度が一定値以上を示す領域が2箇所以上に分かれていると判断されるときは、板形状不良が発生していると判断する。
【0051】
例えば、被圧延鋼板1の板形状が良好であれば、反射光領域1A,1Bの境界線は、例えば図2に示すように、画像の中で、左側の前スタンド側境界線401の1本のほぼ直線と右側の次スタンド側境界線402の1本のほぼ直線、計2本のほぼ直線が概ね平行である。反射光領域は、この2本のほぼ直線に囲まれた1箇所となる。
【0052】
これに対し、画像内に輝度が一定値以上を示す2つの領域がある場合とは、X座標を左から右に、1ピクセル毎にスキャンすると、例えば、「暗→・・・→暗」→「明→・・・→明」→「暗→・・・→暗」→「明→・・・→明」→「暗→・・・→暗」と判定でき、図2に示す反射光領域1Aや図3に示す反射光領域1B以外に他の反射光領域がある状態であり、前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402のペアが2つある状態である。ここで、前記の「・・・」は、左のピクセル位置と、輝度の閾値に対する上下関係が同じ輝度のピクセルが、多数あることを簡略化して表記したものである。
【0053】
このような2箇所以上観察される反射光領域は正常な圧延状態では生じず、被圧延鋼板1の板形状が波を打っている圧延板形状不良が発生している状態である。当該画像が撮像されたスタンド間の後段側では、圧延機を出た被圧延鋼板1には絞り込み(圧延不良)が生じる可能性があり得る。
【0054】
そこで、反射光領域が2箇所以上あるときは、制御装置60は、その時点で板形状不良と判定し、表示装置70を介してオペレータに板形状不良発生を通知する、表示装置70を介して絞り込みを抑制するよう圧下シリンダ11,21,31,41,51等による圧下量の修正などの圧延条件の変更をオペレータに促す、圧延条件を自動で変更する、または、圧延を停止するなどの各種対策を実行することが望ましい。
【0055】
なお、ルーパー71,72,73,74に沿った反射光が複数の領域になることも、板長手方向に沿って反射光が複数の領域になることもあるが、いずれの場合でも板形状不良と判断する。
【0056】
また、制御装置60は、得られた画像の中で、被圧延鋼板1の表面に映る反射光領域と判定された輝度が一定値以上の領域の境界の位置を画像内の2次元の座標データとして取得し、その座標データに対して所定の数学処理により評価値を算出し、評価値と所定の評価値の閾値とを比較して、板形状不良と判断することが望ましい。
【0057】
この評価値の閾値を大きくすると板形状不良の程度の大きいものが判断でき、この評価の閾値を小さくすると板形状不良の程度の小さいものが判断できるので、評価値に基づき、不良の程度を示しても良いし、閾値を段階的に設けて不良の程度を段階的に示すことも可能である。
【0058】
例えば、制御装置60は、被圧延鋼板1の板幅方向の一方側の板端(例えばY=1)での前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402の間隔長さと他方側の板端(例えばY=N)での前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402の間隔長さとの差の数値が、予め定めた閾値よりも大きい場合、板形状不良と判断することができる。
【0059】
これは、ワークサイド又はドライブサイドの一方の側の圧延長手方向の反射光領域の長さが変化する場合は、被圧延鋼板1のワークサイド又はドライブサイドの一方の側に端伸びが生じて被圧延鋼板1の板表面形状が波打っている場合と判断されるためであり、簡易に板形状不良の有無を判断することができる。なお、板形状不良レベルの大小は、評価値の閾値とを比較により判断される。
【0060】
また、制御装置60は、板幅方向毎に得られる、実際の前スタンド側境界線401や次スタンド側境界線402の位置を示す値と、前スタンド側境界線401や次スタンド側境界線402の位置を示す近似直線式から得られる値との差から得られる分散値σや標準偏差σが、予め定めた閾値よりも大きい場合に、板形状不良と判断することができる。
【0061】
被圧延鋼板1の板表面形状に波打ち等がなく、平坦な状態であれば、ルーパー71,72,73,74に沿った長方形に近い反射光領域の画像が得られるので、画像上の実際の前スタンド側境界線401や次スタンド側境界線402は近似直線と概ね一致する傾向となって、分散値は小さくなる。
【0062】
一方、被圧延鋼板1の板表面形状に波打ち等がある場合は、ルーパー71,72,73,74部分に到達している被圧延鋼板1の反射光領域の輪郭が変動して、反射光領域の圧延方向の間隔が広がったり狭くなったりするので、前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402との間の長さの分布が、表面形状が平坦な場合とは異なる長さの分布になる。
【0063】
従って、画像上の実際の前スタンド側境界線401や次スタンド側境界線402は近似直線から離れる傾向となるため、分散値は大きくなる。その分散値は、前スタンド側境界線401や次スタンド側境界線402のそれぞれで得ることができる。この分散値に閾値を設け、その閾値を超えたか否かで、圧延板形状不良のレベルの大小を判定することができる。また、一方だけの分散値からの判断でも両方の分散値からの判断でもどちらでも良い。また、分散値を標準偏差に変換して、判断をしても良い。
【0064】
正常な場合でも、画像の反射光領域は、カメラ61,62,63,64とルーパー71,72,73,74との位置関係により、必ずしも長方形ではなく、台形に近かったりするため、前スタンド側と次スタンド側との近似直線は必ずしも平行にならない場合もあり得る。
【0065】
近似直線式は、板形状不良検出精度を高くするために、過去の正常な被圧延鋼板1の圧延時のデータをもとに予め作成したものを用いることが望ましい。それに限らず、現在、検出中のデータに基づいて作成した近似直線式によっても、板形状不良判定が可能な精度で板形状不良が起こっているか否かを検出できる。
【0066】
また、照明とカメラ61,62,63,64との位置関係により、上流側と下流側の一方の境界線の座標が、板形状変化に対して、感度の高い変化を示すこともあるので、板形状不良を検知し易い側の境界線の座標だけを利用することも好ましい。
【0067】
具体的な処理としては、前スタンド側境界線401のX座標の平均値を以下に示す式(3)
【0068】
【数3】
【0069】
前スタンド側境界線401と、その前スタンド側境界線401のX座標の平均値との差の分散を以下に示す式(4)
【0070】
【数4】
【0071】
前スタンド側境界線401と、その前スタンド側境界線401のX座標の平均値との差の標準偏差を以下に示す式(5)
【0072】
【数5】
【0073】
次スタンド側境界線402のX座標の平均値を以下に示す式(6)
【0074】
【数6】
【0075】
次スタンド側境界線402と、その次スタンド側境界線402のX座標の平均値との差の分散を以下に示す式(7)
【0076】
【数7】
【0077】
次スタンド側境界線402と、その次スタンド側境界線402のX座標の平均値との差の標準偏差を以下に示す式(8)
【0078】
【数8】
【0079】
で表したときに、式(5)、あるいは式(8)に示した標準偏差の値が、ある閾値を超えた場合、板形状不良が発生している不安定な圧延である可能性があると判定し、表示装置70を介した警告などの処理を行うものとする。
【0080】
なお、式(3)や式(6)は、X座標が一定値となり、Y軸に平行な直線となる。
【0081】
そのほかには、制御装置60は、前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402との間の間隔長さを板幅方向の全ての所(Y=1からN)に対して求め、その間隔長さの全体の平均値と板幅方向のいずれかの所(Y=i)の間隔長さとの偏差から求める分散または標準偏差が、予め定めた閾値よりも大きい場合、板形状不良が発生していると判断することができる。
【0082】
具体的には、前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402との間の間隔Diを以下に示す式(9)
【0083】
【数9】
【0084】
前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402との間の間隔の平均を以下に示す式(10)
【0085】
【数10】
【0086】
前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402との間の間隔の分散を以下に示す式(11)
【0087】
【数11】
【0088】
前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402との間の間隔の標準偏差を以下に示す式(12)
【0089】
【数12】
【0090】
で表したときに、式(11)で表した分散や、式(12)で表した標準偏差の値が、ある閾値を超えた場合、板形状不良が発生している不安定な圧延であると判定し、表示装置70を介した警告などの処理を行うものとする。
【0091】
また、制御装置60は、式(9)のDiの値を評価して、板幅中央部のDiが他よりも大きな値であれば中伸びと判断し、板幅の両端のDiが板幅中央部よりも大きな値であれば耳伸びと判断し、板幅のワークサイド(以下「WS」とも記載)側のDiの値が他よりも大きな値であればWSの端伸びと判断し、板幅ドライブサイドの(以下「DS」とも記載)側のDiの値が他よりも大きな値であればDSの端伸びと判断し、WSと板幅中央の間の位置のDiの値が他よりも大きな値であればWS寄りのクウォーター伸びと判断し、またDSと板幅中央の間の位置のDiの値が他よりも大きな値であればDS寄りのクウォーター伸びと判断する。
【0092】
制御装置60の表示信号部は、制御装置60の判断の結果を示す信号を表示装置70に送信する。これにより、オペレーターは板の状態を表示装置70から操業中に容易に把握できる。
【0093】
数学的に処理した説明とすると、輝度が一定以上の領域の板長手方向(圧延方向)の一端側の境界から他端側の境界までの長さのうち、板幅方向における板中央の中央長さをML、板幅方向におけるワークサイド側の板端の長さをWSL、板幅方向におけるドライブサイド側の板端の長さをDSLとしたときに、制御装置60はこれらML,WSL,DSLの関係が、(1)ML>WSLかつML>DSLの場合は中伸びと判断し、(2)ML<WSLかつML<DSLの場合は耳伸びと判断し、(3)ML≧WSLかつML<DSLの場合はドライブサイド端伸びと判断し、(4)ML<WSLかつML≧DSLの場合はワークサイド端伸びと判断することができる。これら全てを判断することが望ましいが、いずれかだけ判断してもよい。
【0094】
制御装置60の表示信号部は、表示装置70に送信する内容を、例えば、制御装置60において中伸びと判断された場合は、ベンディングをマイナス側に変更する、即ち、インクリーズベンディングを弱めるかディクリーズベンディングを強めるよう指示する表示のうちいずれか一方か、いずれも表示させる。
【0095】
また、制御装置60において耳伸びと判断された場合は、ベンディングをプラス側に変更する、即ち、インクリーズベンディングを強めるかディクリーズベンディングを弱めるよう指示する表示のうちいずれか一方か、いずれも表示させる。
【0096】
そして、制御装置60においてWSの端伸びと判断された場合は、レベリングのWS側のワークロールギャップ(ワークロールの間隔)を広げるよう指示、又は、DS側のワークロールギャップを狭めるよう指示、若しくはその両方を指示する表示とする。
【0097】
更に、制御装置60においてDSの端伸びと判断された場合は、レベリングのDS側のワークロールギャップを広げるよう指示、又は、WS側のワークロールギャップを狭めるよう指示、若しくはその両方を指示する表示とする。
【0098】
本実施例の制御装置60は、上述の判断に応じた表示を実行することにより、オペレータに注意を促すようにする。これら全てを表示することが望ましいが、いずれか1つ、あるいは2つ、3つだけを表示してもよい。
【0099】
更には、制御装置60は、ある瞬間から以前の特定の時間内の境界線の平均位置と、その瞬間の境界線の位置の偏差から求める分散または標準偏差が、予め定めた閾値よりも大きい場合、板形状不良が発生していると判断することができる。
【0100】
例えば、0.5秒間の評価する静止画像のデータ数は、1秒間に30個の静止画データとすると、15データとなる。つまり、t秒間での静止画のデータ数Qは、Q=α・tとなる。ここで、αは、1秒間の静止画データの数とする。
【0101】
t秒の間に変化する静止画データの境界線の左側と右側(前スタンド側境界線401と次スタンド側境界線402)のX座標xLi_mとxRi_mは、次のような式(13)、および式(14)に表す関係となる。
【0102】
t秒の間のある瞬間の前スタンド側境界線401のX座標を以下に示す式(13)
【0103】
【数13】
【0104】
t秒の間のある瞬間の次スタンド側境界線402のX座標を以下に示す式(14)
【0105】
【数14】
【0106】
で定義すると、t秒間の前スタンド側境界線401の座標の平均は以下の式(15)のように、t秒間の次スタンド側境界線402の座標の平均は以下の式(16)のように表すことができる。但し、Q=α×tの関係を満たすものとする。
【0107】
【数15】
【0108】
【数16】
【0109】
この場合の評価を開始する画像データは、t秒以降の画像データとなる。
【0110】
従って、境界線の位置の偏差から求める分散または標準偏差は以下のように求められる。但し、「xLi_tave」は、対象としている「xLi」の直前のt秒間の平均値である。したがって、「xLi_tave」は、逐次変化していくことになる。前スタンド側境界線401のX座標のt秒間平均との分散は式(17)
【0111】
【数17】
【0112】
前スタンド側境界線401と同様にして、次スタンド側境界線402のX座標のt秒間平均との分散が式(18)
【0113】
【数18】
【0114】
前スタンド側境界線401のX座標のt秒間平均との標準偏差が式(19)
【0115】
【数19】
【0116】
次スタンド側境界線402のX座標のt秒間平均との標準偏差が式(20)
【0117】
【数20】
【0118】
で表せるが、これら式(17),(18)で表した分散や、式(19),(20)で表した標準偏差の値が、ある閾値を超えた場合は板形状不良が発生している不安定な圧延であると判定し、表示装置70を介した警告などの処理を行うものとする。
【0119】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0120】
上述した本発明の実施例1のF1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50により圧延される被圧延鋼板1の板形状の不良を判断する不良判断装置は、被圧延鋼板1の幅方向に回転軸が延びて設置され、被圧延鋼板1を上方に持ち上げるルーパー71,72,73,74と、ルーパー71,72,73,74により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラ61,62,63,64と、カメラ61,62,63,64が撮像した画像に基づき、被圧延鋼板1の板表面形状の不良を判断する制御装置60とを備えている。
【0121】
被圧延鋼板1は、圧延中にロールによって上方に押されて張力がかかった状態となるが、その被圧延鋼板1の表面が波打っておらず、平坦な板形状、即ち、良好な板形状の場合は、ロールを通過する被圧延鋼板1の反射光領域のカメラ画像は、ロールに沿って整った帯状の輝度の高い領域を映したものとなる。実際には、カメラと被圧延鋼板1表面の反射光領域との位置関係から帯状の反射光領域は、完全な長方形にはならないものの、概ね同じところに時間的に連続して比較的安定した概ね帯状の反射光領域を示す画像が得られる。
【0122】
一方、被圧延鋼板1の表面が、端伸び、中伸び等、波打っているような板形状の場合、輝度の高い領域が正常時の概ね帯状の反射光領域とは相違し変形したものとなり、また、被圧延鋼板1の移動に伴って輝度の高い反射光領域が安定して特定の位置になく繰り返し変動する。
【0123】
このように、ロールにより上方に持ち上げられた領域において、良好な板形状の場合と不良な板形状の場合とは画像の反射光領域の変動に顕著に相違が現れることから、上方に持ち上げられているロール部分を通過する被圧延鋼板1の画像を得ることにより、棒状光源などの特殊な光源を用いなくても、被圧延板形状が良好な場合には概ね帯状の反射光領域、板形状が不良の場合には変形した反射光領域が得られて、被圧延鋼板1の板表面形状の良好と不良とを判断できるため、従来に比べて簡易な構成で板形状不良の判断を実行することができる。
【0124】
また、複数のF1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50の間に張力制御用のルーパー71,72,73,74を備えた圧延機は既存のものでも多く、また、天井に照明があるのも一般的である。その照明が張力制御用のルーパー71,72,73,74にまで十分な照度で届いていれば、カメラ61,62,63,64をルーパー71,72,73,74のところにきた被圧延鋼板1の上面を含む画像を撮影する方向に向けて配置するだけで、圧延機回りで必要とされるハード面は準備することができる。従って、既存の設備への適用が非常に容易とすることができる。なお、十分な照度の照明ではない場合、カメラ61,62,63,64の設置位置を変更したり、カメラの感度を上げたり、十分な照度となるように照明設備を変更すれば良く、既存設備への適用に困難はない。
【0125】
更に、制御装置60は、画像の中で、輝度が一定値以上の領域の境界の位置を2次元の座標データとして取得し、2次元座標データに対して所定の数学処理により評価値を算出するので、評価値に基づいて板形状不良を判断できる。更に、評価値とその評価値の所定の閾値とを比較して、板形状不良を判断するので、板形状不良が容易に把握できる。更に、制御装置60は、画像の中で、輝度を板幅方向に所定間隔毎に得ることで、反射の強い領域と弱い領域との境界の位置を、被圧延鋼板1板の板幅方向毎に得ることになり、板幅方向での位置の違いの程度を数学的に簡便に処理して評価値を得ることができ、また、その評価値を基準となる所定の評価値と比較して、板形状不良を判断することができる。
【0126】
なお、同じタイミングでの板幅方向での境界の位置の違いの程度だけでなく、さらに、時間経過に伴う異なる時間毎の板幅方向の境界の位置の違いの程度も考慮した数学的処理とすることができる。
【0127】
また、制御装置60は、算出した評価値と所定の閾値とを比較して不良を判断することにより、より正確な不良判断が可能となる。
【0128】
更に、制御装置60は、画像の中で、板幅方向に所定間隔毎に輝度を得ることにより、様々な板幅方向での不良、例えば中延びや耳延び等を確実に検出することができるようになる。
【0129】
また、表示装置70において表示する内容に関する信号を送信する制御装置60を更に備え、判断を表示させる信号を表示装置70に送信することにより、オペレータに対して対応策を促すことができ、不良の拡大を抑えることができる。
【0130】
更に、表示装置70において表示する内容に関する信号を送信する制御装置60を更に備え、判断に応じた操作を表示させる信号を表示装置70に送信することで、オペレータに対して生じている不良に対する正確な対処を促すことができるため、不良の拡大をより効果的に抑制することができる。
【0131】
また、制御装置60は、輝度が一定以上の領域の板長手方向の一端側の境界から他端側の境界までの長さのうち、板幅方向における板中央の中央長さをMLと、板幅方向におけるワークサイド側の板端の長さをWSLと、板幅方向におけるドライブサイド側の板端の長さであるDSLとしたときに、ML>WSLかつML>DSLの場合、中伸びと判断すること、ML<WSLかつML<DSLの場合、耳伸びと判断すること、ML≧WSLかつML<DSLの場合、ドライブサイド端伸びと判断すること、ML<WSLかつML≧DSLの場合、ワークサイド端伸びと判断すること、のうち少なくともいずれか一つを判断することにより、より正確な板表面形状の不良の判断が可能となる。
【0132】
更に、制御装置60は、中伸びと判断した場合に中伸びと表示させる信号、両端伸と判断した場合に耳伸びと表示させる信号、ドライブサイド端伸びと判断した場合にドライブサイド端伸びと表示させる信号、ワークサイド端伸びと判断した場合にワークサイド端伸びと表示させる信号のうち少なくともいずれか一つの信号を表示装置に送信することや、中伸びと判断した場合に、ワークロールのベンディング操作に関しインクリーズベンディングを弱める操作をする指示、ディクリーズベンディングを強める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号、耳伸びと判断した場合に、ワークロールのベンディング操作に関しインクリーズベンディングを強める操作をする指示、ディクリーズベンディングを弱める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号、ドライブサイド端伸びと判断した場合に、ロール両側に配置される圧下装置によるレベリング制御に関し、ドライブサイド側のワークロールの間隔が広がる操作をする指示とワークサイド側のワークロールの間隔を狭める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号、ワークサイド端伸びと判断した場合に、レベリング制御に関し、ワークサイド側のワークロールの間隔が広がる操作をする指示、ドライブサイド側のワークロールの間隔を狭める操作をする指示、の少なくとも一方の指示を表示させる信号のうち少なくともいずれか一つの信号を表示装置70に送信することにより、操業を監視するオペレータに対して正確かつ迅速な対処を促すことができ、不良の拡大を更に効果的に抑制することができる。
【0133】
また、制御装置60は、画像の中で、輝度が一定値以上の領域が2箇所以上に分かれていると判断されるときは、不良と判断することにより、被圧延鋼板1が高い精度の平面であれば、被圧延鋼板1からの強い反射光の領域は一つの領域になるのに対し、被圧延鋼板1に端伸びや中伸びが大きいと、板表面の波打ち凹凸が大きいため、強い反射光の領域は複数の領域として現れるので、容易に不良と判断することができる。
【0134】
<実施例2>
本発明の実施例2の不良判断装置および不良判断方法について図5および図6を用いて説明する。図5は本実施例2の不良判断装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図、図6は形状計の構成の一例を示した図である。
【0135】
図5に示す圧延設備100Aでは、圧延機80と圧延機82は2スタンドであり、圧下シリンダ81を備えた圧延機80の出側、かつ、圧下シリンダ83を備えた圧延機82の入側に、被圧延鋼板1を上方側へ持ち上げる形状計75が設けられている配置となっている。この形状計75により被圧延鋼板1を上方に持ち上げる工程が実行される。
【0136】
形状計75は、例えば、対象の圧延機間のライン張力を被圧延鋼板1の板形状からセグメントロール311の軸の両端に作用するモーメントが支持アーム312を介して固定部材313により接続されている支持シャフト(図示省略)に伝達され、その支持シャフトのねじれひずみとなってトルクメータ314,315によりトルク分布が取得されるものである。
【0137】
具体的には、図6に示すように、駆動モータ301に接続され且つ被圧延鋼板1の幅方向に延設する支持軸302を備えており、この支持軸302にはテーブル303が支持されている。テーブル303は被圧延鋼板1をガイドするガイド部材304と、このガイド部材304を支持するガイド支持部材305とから構成され、ガイド支持部材305の圧延方向下流側の面には、7個の検出器306が支持されている。そして、テーブル303の両側方の支持軸302には、フレーム(図示省略)に支持される軸受307が設けられている。
【0138】
各検出器306は、被圧延鋼板1が接触すると連れ回りされるセグメントロール311と、このセグメントロール311を一端間に支持する一対の支持アーム312と、この支持アーム312の他端を支持し且つテーブル303のガイド支持部材305に支持される固定部材313と、この支持アーム312の他端を支持し、且つ、支持アーム312の他端と固定部材313との間に設置されたリング状のトルクメータ314,315と、このトルクメータ314,315の開口部に貫通された支持シャフト(図示省略)とを備えている。
【0139】
セグメントロール311は支持アーム312の一端に設けられた自動調心ベアリング(図示省略)を介して支持アーム312間に回転可能に支持されている。また、固定部材313には支持シャフト(図示省略)が貫通されており、この支持シャフトの端部には支持アーム312の他端に設けられた自動調心ベアリング(図示省略)に支持されている。
【0140】
形状計75は、駆動モータ301を駆動して支持軸302を適宜に回動させることにより、被圧延鋼板1の裏にセグメントロール311を接触させて、被圧延鋼板1を持ち上げる。また、形状計75は、各検出器306が検出トルクから各モーメント、さらに、張力分布を算出し、張力分布に基づいて板形状を演算する。
【0141】
図5に戻り、形状計75により上方側に持ち上げられた被圧延鋼板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラ65が設けられている。このカメラ65により、撮像工程が実行される。
【0142】
また、制御装置60Aは、本実施例では、カメラ65が撮像した画像に基づき、被圧延鋼板1の表面形状の不良を判断する。この制御装置60Aにより、画像処理工程が実行される。
【0143】
その他の構成・動作は前述した実施例1の不良判断装置および不良判断方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0144】
本発明の実施例2のように、複数に分割されたセグメントロール311からなり、セグメントロール311を一端に支持し他端にトルクメータ314,315を設けた支持フレームを含み、計測した各トルク値から算出した張力分布に基づき板形状を算出する形状計75を備えたが本発明を構成するロールである不良判断装置および不良判断方法においても、前述した実施例1の不良判断装置および不良判断方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0145】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0146】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0147】
例えば、上記説明では、圧延される金属帯板を被圧延鋼板1の場合で説明してきたが、圧延の対象材料は、アルミや銅などの非鉄材料でも良く、一般に圧延が可能な金属材料の帯板を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0148】
1…被圧延鋼板
1A,1B…反射光領域
10…第1スタンド
11,21,31,41,51,81,83…圧下シリンダ
20…第2スタンド
30…第3スタンド
40…第4スタンド
50…第5スタンド
60,60A…制御装置(画像処理部、表示信号部)
61,62,63,64,65…カメラ
70…表示装置
71,72,73,74…ルーパー
75…形状計
80,82…圧延機
90…通信線
100,100A…圧延設備
301…駆動モータ
302…支持軸
303…テーブル
304…ガイド部材
305…ガイド支持部材
306…検出器
307…軸受
311…セグメントロール
312…支持アーム
313…固定部材
314,315…トルクメータ
401…前スタンド側境界線
402…次スタンド側境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6