(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074900
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】赤外線パスフィルター、着色性組成物、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20220511BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220511BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20220511BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20220511BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20 101
C08F265/06
C08F2/50
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185318
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹也
【テーマコード(参考)】
2H148
4J011
4J026
4M118
【Fターム(参考)】
2H148BD01
2H148BD21
2H148BG11
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA23
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA12
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4J026DB36
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4M118GC08
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4M118GC20
4M118GD04
(57)【要約】
【課題】分光特性と密着性を両立した赤外線パスフィルター、赤外線パスフィルター用の着色性組成物、赤外線パスフィルターを用いた固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子を提供する。
【解決手段】波長400nm以上800nm以下の光の平均透過率が30%以下で、900nm以上1100nm以下の光の平均透過率が75%以上であり、2層以上の着色層から構成され、着色層のそれぞれの膜厚は1μm以下であり、着色層は、着色性組成物と重合性化合物と光重合開始剤とを備え、重合性化合物に対する光重合開始剤のモル比は0.08以上、0.6以下である、赤外線パスフィルター。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長400nm以上800nm以下の光の平均透過率が30%以下で、900nm以上1100nm以下の光の平均透過率が75%以上であり、
2層以上の着色層から構成され、前記着色層のそれぞれの膜厚は1μm以下であり、
前記着色層は、着色性組成物と重合性化合物と光重合開始剤とを備え、
前記重合性化合物に対する前記光重合開始剤のモル比は0.08以上、0.6以下である、赤外線パスフィルター。
【請求項2】
着色剤分散体、重合性化合物、バインダー樹脂及び光重合開始剤を含み、
前記重合性化合物に対する前記光重合開始剤のモル比は0.08以上0.6以下である、赤外線パスフィルター用着色性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤にオキシム・エステル化合物を含む、請求項2に記載の赤外線パスフィルター用着色性組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物に3官能アクリルモノマーを含む、請求項2または3に記載の赤外線パスフィルター用着色性組成物。
【請求項5】
第1光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤色用フィルター、緑色用フィルター、青色用フィルターの三色の可視光用フィルターと、
第2光電変換素子に対し光の入射側に位置する請求項1に記載の赤外線パスフィルターとを備える、固体撮像素子用フィルター。
【請求項6】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とに対し光の入射側に赤外線カットフィルターをさらに備える、請求項5に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項7】
前記赤外線カットフィルターの、前記赤外線パスフィルターの光の入射面と対向する領域に貫通孔を備える、請求項6に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項8】
前記第1光電変換素子と、
前記第2光電変換素子とを備え、
請求項1に記載の赤外線パスフィルターと、請求項6から7のいずれか一項に記載の固体撮像素子用フィルターとのいずれかを備える、固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線パスフィルター、着色性組成物、固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子に関する。より詳しくは分光特性と密着性とを両立した赤外線パスフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子は、複数の光電変換素子の他に、各色用の光電変換素子上に位置するカラーフィルターと、赤外用の光電変換素子上に位置する赤外線パスフィルターとを備える(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
赤外線パスフィルターは、赤外用の光電変換素子が検出し得る可視光を遮蔽して、赤外用の光電変換素子による赤外線の検出精度を高める。赤外線パスフィルターの構成材料は、例えば、ビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系染料などの黒色着色材である(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-177273号公報
【特許文献2】特開2018-119077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
赤色、緑色、及び青色フィルターといった可視光用フィルター(カラーフィルター)と赤外線パスフィルターとを同一の固体撮像素子に備える場合、フォトリソグラフィー法を用いた各色のパターニングが必要となる。近年、固体撮像素子においては画素サイズが2.0μm以下といった微細化する傾向にあるが、可視光用フィルターと赤外線パスフィルターとを同一の固体撮像素子に備える場合、微細化が進むにつれ膜厚と画素サイズのアスペクト比が大きくなり、赤外線パスフィルターの密着不良が発生することが判明した。また、赤外線パスフィルターの膜厚を薄くすることで密着性不良は改善されることもあるが、そうした場合、薄膜化による分光特性の悪化が発生することも判明した。
【0006】
本発明は分光特性と密着性とを両立した赤外線パスフィルター、赤外線パスフィルター用の着色性組成物、赤外線パスフィルターを用いた固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一局面は、波長400nm以上800nm以下の光の平均透過率が30%以下で、900nm以上1100nm以下の光の平均透過率が75%以上であり、2層以上の着色層から構成され、着色層のそれぞれの膜厚は1μm以下であり、着色層は、着色性組成物と重合性化合物と光重合開始剤とを備え、重合性化合物に対する光重合開始剤のモル比は0.08以上、0.6以下である、赤外線パスフィルターである。
【0008】
また、本発明の他の局面は、着色剤分散体、重合性化合物、バインダー樹脂及び光重合開始剤を含み、重合性化合物に対する光重合開始剤のモル比は0.08以上0.6以下である、赤外線パスフィルター用着色性組成物である。
【0009】
また、光重合開始剤にオキシム・エステル化合物を含むことが好ましい。
【0010】
また、重合性化合物に3官能アクリルモノマーを含むことが好ましい。
【0011】
また、固体撮像素子用フィルターは、第1光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤色用フィルター、緑色用フィルター、青色用フィルターの三色の可視光用フィルターと、第2光電変換素子に対し光の入射側に位置する赤外線パスフィルターとを備える。
【0012】
また、固体撮像素子用フィルターは、第1光電変換素子と第2光電変換素子とに対し光の入射側に赤外線カットフィルターをさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、固体撮像素子用フィルターは、赤外線カットフィルターの、赤外線パスフィルターの光の入射面と対向する領域に貫通孔を備えることが好ましい。
【0014】
また、固体撮像素子は、第1光電変換素子と、第2光変換素子とを備え、赤外線パスフィルターと固体撮像素子用フィルターのいずれかを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分光特性と密着性とを両立した赤外線パスフィルター、赤外線パスフィルター用の着色性組成物、赤外線パスフィルターを用いた固体撮像素子用フィルターおよび固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】赤外線パスフィルターの層構成の一例を示す概略図。
【
図2】赤外線パスフィルターの層構成の一例を示す概略図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の層構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の赤外線パスフィルターは可視領域および近赤外領域の一部である波長400nm以上800nm以下の光の平均透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。また、本発明の赤外線パスフィルターは近赤外領域900nm以上1100nm以下の光の平均透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。赤外線パスフィルターの分光特性が上述の範囲にあることで可視領域由来のノイズの少ない赤外線パスフィルターとして機能する。
【0018】
本発明の赤外線パスフィルターの層構成の一例を示す概略図を
図1、
図2に示す。
図1の赤外線パスフィルターは、着色層01および着色層02からなる。ここで、着色層02は着色層01と同じ着色性組成物から構成される着色層である。
図2の赤外線パスフィルターは、着色層01、着色層02、着色層03からなる。ここで、着色層03は着色層01(着色層02)とは異なる着色性組成物から構成される着色層である。このように、赤外線パスフィルターは2層以上の着色層から構成されることが好ましい。2層以上の着色層から構成することにより、膜厚と画素サイズのアスペクト比が大きくなることが抑えられ、膜の密着性を向上させることができる。着色層の数に限定はないが、2層以上、6層以下が好ましく、2層以上、4層以下がより好ましい。
【0019】
各着色層の膜厚は1μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.6μm以下が更に好ましい。着色層の膜厚を薄くすることによりフォトリソグラフィー法を用いたパターニング時の膜の密着性を向上させることができる。
【0020】
赤外線パスフィルターを構成する各着色層は、それぞれが同一の着色性組成物からなる着色層であってもよいし、異なる着色性組成物からなる着色層でもよい。また、赤外線パスフィルターは、
図2のように2層以上の同一の着色層に加え、当該着色層とは異なる着色層を含むこともできる。また、着色層の層間に平坦化層を形成することもできる。
【0021】
着色性組成物中の着色材としては黒色着色材を使用することができる。また、緑、青、赤、黄、紫、マゼンタ、オレンジ等の各着色材を使用することができる。また、赤外線吸収色材を使用することができる。各着色材は2種以上混合して使用することもできる。
【0022】
黒色着色材としては、例えばビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系染料などの黒色色材を使用することができる。
【0023】
緑色着色材としては、緑色顔料または緑色染料あるいはそれらの中間体が使用可能である。緑色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7、36、37、58、緑色染料としては、例えば、C.I.Acid Green 25、41を、それぞれ単独で、または、混合して使用することができる。
【0024】
青色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:3、15:4、15:6、6、22、60等の青色顔料や、C.I.Acid Blue 41、83、90、113、129等の青色染料を使用することができる。
【0025】
赤色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Red 123、155、168、177、180、217、220、254等の赤色顔料や、C.I.Acid Red 37、50、111、114、257、266等の赤色染料を使用することができる。
【0026】
黄色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138、139、150、185等の黄色顔料や、C.I.Acid Yellow 17、49、67、72、127、110等の黄色染料を使用することができる。
【0027】
紫色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の顔料を使用することができる。
【0028】
マゼンタ色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、146、177、178、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272等の顔料を使用することができる。
【0029】
シアン色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、80等の顔料を使用することができる。
【0030】
オレンジ色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等の顔料を使用することができる。
【0031】
赤外線吸収色材としては、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素を使用することができる。
【0032】
本発明の赤外線パスフィルターの膜厚は0.3~5μm、好ましくは0.5~3μm、より好ましくは0.7~2μmである。
【0033】
本発明の赤外線パスフィルターの画素サイズは0.7~5μm、好ましくは0.9~3μmである。
【0034】
本発明の着色性組成物はさらに、フォトリソグラフィー法による塗膜のパターニング形成を行うために重合性化合物、バインダー樹脂、光重合開始剤を含むことができる。
【0035】
重合性化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=2)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=2)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性シトリアクリレート、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0036】
重合性化合物としては、3官能アクリルモノマーを主成分としているものを使用することが好ましい。また、4官能モノマー、5官能モノマー、6官能モノマーも露光時の感度上昇のために加えることができる。
【0037】
バインダー樹脂は数種類のモノマーやオリゴマーを共重合させて得られる。バインダー樹脂を生成するモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートなどの各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0038】
バインダー樹脂は、アルカリ現像液に溶解するように酸性基を有するモノマーを共重合させたものであることが望ましい。酸性基としてはカルボキシル基が主に用いられ、カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などの分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。ここで、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α‐クロルアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などであってもよい。また、不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2‐メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2‐アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2‐メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2‐アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2‐メタクリロイロキシエチル)などであってもよい。不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω‐カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω‐カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどであってもよい。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
バインダー樹脂の重量平均分子量は5000以上20000以下であることが好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、着色性組成物中に低分子量の化合物のみになってしまい、フォトリソグラフィー法による塗膜のパターニング形成時に露光部の硬化が不十分となり良好なパターン形状が得られない。重量平均分子量が20000を超えると現像液への溶解性が劣り、やはり良好なパターンが得られない。
【0040】
バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0041】
光重合開始剤としてはオキシム・エステル系開始剤、α-アミノアルキルフェノン系開始剤が好ましく、オキシム・エステル系開始剤がより好ましい。オキシム・エステル系開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、α-アミノアルキルフェノン系開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。
【0042】
また、他の光重合開始剤も併せて使用することができる。併せて使用できる光重合開始剤としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン系光重合、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、および、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、および2、4-ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-クロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシーナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(ピペロニル)-6-トリアジン、及び2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0043】
重合性化合物に対する光重合開始剤のモル比は0.08以上、0.6以下が好ましく、0.15以上、0.4以下がより好ましい。重合性化合物に対する光重合開始剤の添加量が0.08未満の場合、露光部の硬化が不十分となり良好なパターン形状が得られない。0.6を超える場合、感度が過剰に高くなり良好なパターン形状が得られない。
【0044】
溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0045】
また、着色性組成物には、必要に応じて添加剤を入れてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、貯蔵安定剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0046】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、および、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤、アルキル4級アンモニウム塩、および、そのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、および、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0047】
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸およびシュウ酸などの有機酸、そのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、トリエチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0048】
フォトリソグラフィー法による塗膜のパターニング形成を行うためにステッパー露光装置等の装置と、所定のパターンを有するフォトマスクを用いることが好ましい。フォトマスクを介して露光したのち現像液により未露光部を除くことによりパターンが形成される。
【0049】
現像液にはアルカリ性の現像液を用いることが好ましい。アルカリ性現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ現像液、またはテトラヒドロキシアンモニウム等の有機アルカリ現像液を使用することができる。また、塗膜への濡れ性を高めるために、界面活性剤を現像液に含むことも好ましい。
【0050】
本発明の赤外線パスフィルター及び着色性組成物は固体撮像素子用フィルターに用いることができる。
【0051】
図3を参照して、固体撮像素子用フィルター、および固体撮像素子における本発明の一実施形態を説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の層構造を示す分解斜視図である。
【0052】
<固体撮像素子>
図3に示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター12R、12G、12B、赤外線パスフィルター12P、赤外線カットフィルター13、バリア層14、複数の可視光用のマイクロレンズ15R、15G、15B、および、赤外線用マイクロレンズ15Pを備える。なお、本発明の赤外線パスフィルター12Pは2層以上の着色層から構成されるが、
図3では、図示の便宜上、1層構成で示している。また、可視光用フィルター12R、12G、12Bはシリコンウエハー等の基板上に直接形成することもできるし、密着性の向上のために平坦化層を設けてもよい。
【0053】
光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外線用光電変換素子11Pを備える。固体撮像素子10は、複数の光電変換素子11を備えており、すなわち、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外線用光電変換素子11Pを備える。複数の赤外線用光電変換素子11Pは、赤外線の強度を測定する。なお、
図3では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の最小の繰り返し単位が示されている。
【0054】
<可視光用フィルター>
可視光用フィルター(カラーフィルター)は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0055】
可視光用フィルター12R、12G、12Bは、着色性感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜が、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、乾燥によって形成され、当該塗膜に対し、赤色用フィルター12Rに相当する領域に対する露光、および、現像を経ることで赤色用フィルター12Rが形成される。なお、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bもそれぞれに対応した着色性感光性樹脂を用いることで、赤色用フィルター12Rと同様の方法によって形成される。
【0056】
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色性組成物に含有される着色材としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。使用することができる顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料が挙げられる。以下に、本発明の着色性組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0057】
可視光用フィルターの青色着色性組成物に用いられる着色材としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、81等の顔料が挙げられ、中でもC.I.Pigment Blue 15:6が好ましい。
【0058】
赤色の着色性組成物に用いられる着色材としては、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、C.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等の赤色顔料、および必要に応じ調色用として、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等を用いて得られる組成物である。
【0059】
また、緑色の着色性組成物に用いられる着色材としては、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37、58、59等の緑色顔料、および必要に応じ調色用として、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等を用いて得られる組成物である。
【0060】
<赤外線パスフィルター>
固体撮像素子用フィルター10Fは、赤外線用光電変換素子11Pに対して光の入射側に赤外線パスフィルター12Pを備える。赤外線パスフィルター12Pは、赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る可視光をカットする。それによって、赤外線用光電変換素子11Pによる赤外線の検出精度が高められる。赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る赤外線は、900nm以上1100nm以下の波長を有した近赤外線である。
【0061】
赤外線パスフィルター12Pは、可視領域の光を遮断し、近赤外領域の光を透過する光学フィルターである。赤外線パスフィルター12Pは、可視光用フィルター12R、12G、12Bよりも厚くてもよい。この構成であれば、赤外線パスフィルター12Pにおいて可視光の非透過性を向上可能である。
【0062】
<赤外線カットフィルター>
固体撮像素子は、赤外線カットフィルター13を可視光用フィルター12R、12G、12Bおよび赤外線パスフィルター12Pに対する光の入射側に備えることが可能である。赤外線カットフィルター13は、各光電変換素子11がノイズとして検出し得る波長帯の赤外線を、光電変換素子11に対しカットする。それによって、光電変換素子11の検出精度を高める。
【0063】
赤外線カットフィルター13は、例えば
図3に示すように、赤外線パスフィルター12Pの光の入射面と対向する領域に貫通孔13Hを備える。
【0064】
また、赤外線カットフィルター13は貫通孔13Hを備えていなくてもよい。この場合、赤外線カットフィルター13は例えば、700nm以上900nm未満の波長を有した近赤外線を遮断する特性を有する。この特性を有することで、赤外用光電変換素子11Pにおいて900nm以上1100nm以下の波長を有した近赤外線を効率的に検出することができる。
【0065】
赤外線カットフィルター13の構成材料は、赤外線吸収色材を含む透明樹脂である。赤外線吸収色材は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素である。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外線カットフィルター13は、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。
【0066】
なお、マイクロレンズ15R、15G、15B、15Pは、それぞれが形成される下地での段差によって、その加工の精度が低下する。そこで、各マイクロレンズ15R、15G、15B、15Pの下地での平坦性が高められる観点から、例えば赤外線カットフィルター13が貫通孔13Hを備える構成においては、各色用フィルター12R、12G、12Bの厚みと、赤外線カットフィルター13の厚みとの合計が、赤外線パスフィルター12Pの厚みとほぼ等しいことが好ましい。
【実施例0067】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【0068】
<黒色着色材分散体1の合成>
着色材、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色材 BASF社製LumogenBlack K0088 :12.0部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-2001(固形分46%):17.4部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:70.6部
その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ディスパー分散機DISPERMATLC55(英弘精機社製)で1.5時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、黒色着色材分散体1を得た。
【0069】
<赤色着色材分散体1の合成>
着色材、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色材 C.I.Pigment Red 254:14.0部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-161(固形分30%):20.0部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:66.0部
その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ディスパー分散機DISPERMATLC55(英弘精機社製)で1.5時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、赤色着色材分散体1を得た。
【0070】
<青色着色材分散体1の合成>
着色材、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色材 C.I.Pigment Blue 15:6:14.0部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-161(固形分30%):20.0部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:66.0部
その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ディスパー分散機DISPERMATLC55(英弘精機社製)で1.5時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、青色着色材分散体1を得た。
【0071】
<黄色着色材分散体1の合成>
着色材、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色材 C.I.Pigment Yellow 139:14.0部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-161(固形分30%):20.0部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:66.0部
その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ディスパー分散機DISPERMATLC55(英弘精機社製)で1.5時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、黄色着色材分散体1を得た。
【0072】
<バインダー樹脂1の合成>
60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、40重量部のメタクリル酸フェニルと、0.60重量部のベンゾイルペルオキシドを準備し、これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌および還流した。これにより、バインダー樹脂1を得た。
【0073】
<着色性組成物の調液>
合成した黒色着色材分散体1、赤色着色材分散体1、青色着色材分散体1、黄色着色材分散体1、バインダー樹脂1、および、赤外線吸収色材(山田化学工業株式会社製、商品名:FDN-002およびFDN-015)、重合性化合物(東亜合成株式会社製、商品名:アロニックス M-350)、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:イルガキュア OXE-02)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を、均一になるように1時間攪拌混合した。このとき用いた各材料の重量部、および重合性化合物に対する光重合開始剤のモル比は表1に示す。攪拌混合後、混合溶液を0.45μmのフィルターで濾過し、着色性組成物1~5を得た。
【0074】
【0075】
<分光特性評価用基板作製>
表2に示す着色性組成物をガラス基板上にスピンコーターにて、ベーク後の1層目の膜厚が表2に示すようになるように塗布し、100℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行い、赤外線パスフィルターにおける1層目の着色層を作製した。2層目以降も表2に示す着色性組成物をガラス基板上にスピンコーターにて、ベーク後の膜厚が表2に示すようになるように塗布し、100℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行い、実施例1-1~7-1、比較例1-1~3-1の赤外線パスフィルターを得た。
【0076】
【0077】
<分光特性評価>
得られたそれぞれの赤外線パスフィルターについて、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて波長400~1100nmの光の透過率を測定した。表3には波長400nm以上800nm以下の光の平均透過率と、900nm以上1100nm以下の光の平均透過率を示した。
【0078】
【0079】
<密着性評価用基板作製>
平坦化層を形成したシリコンウエハー上に着色性組成物をスピンコーターにて、ベーク後の1層目の膜厚が表4に示すようになるように塗布し、100℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行い、その後、画素サイズ2.0μm、1.8μm、1.6μm、1.4μmの正方形パターンがそれぞれ独立した領域に配列したフォトマスクを用いて、露光機(キヤノン製:FPA-5510iZ)にて露光を実施した。その後、水酸化テトラアンモニウム(TMAH)0.2%水溶液にて現像を実施し、水洗、乾燥を行った。2層目以降も着色性組成物をスピンコーターにて、ベーク後の膜厚が表4に示すようになるように塗布し、100℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行い1層目のパターンと重なるようにフォトマスクを介して露光機(キヤノン製:FPA-5510iZ)にて露光を実施した。その後、水酸化テトラアンモニウム(TMAH)0.2%水溶液にて現像を実施し、水洗、乾燥を行い、実施例1-2~7-2、比較例1-2~3-2の基板を得た。なお、実施例1-2~7-2、比較例1-2~3-2の基板の層構成及び各層の膜厚は、実施例1-1~7-1、比較例1-1~3-1とそれぞれ同じである。
【0080】
【0081】
<密着性評価>
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製:S-4800)を用いて、上記方法で得られた2.0μm、1.8μm、1.6μm、1.4μmの各画素サイズのパターンについて観察を行い、以下に示す基準で密着性の評価を行った。表5には密着性の評価結果を示した。
〇:100個のパターンにおいて、密着しているパターンが98個以上。
△:100個のパターンにおいて、密着しているパターンが95個以上、98個未満。
×:100個のパターンにおいて、密着しているパターンが95個未満。
【0082】
【0083】
表5を参照すると、実施例1-2~7-2の基板は、少なくとも2.0μmの画素サイズのパターンで良好な密着性を示した。具体的には、実施例1-2~6-2においては、パターンが2.0μm、1.8μm、1.6μm、1.4μmのいずれであっても、評価が「〇」であったが、実施例7-2においては、パターンが1.8μmでは「△」、1.6μm以下では「×」であった。これは、実施例1-2~6-2の着色層の膜厚はいずれも0.5μm以下であったのに対し、実施例7-2の着色層の膜厚は0.8μmおよび0.7μmと、他の実施例よりも厚いため、膜厚と画素サイズのアスペクト比が大きくなったことが原因である。また、比較例1-2~2-2においては、いずれの基板の着色層の膜厚も1μmを超えていたため、いずれのパターンにおいても評価が「×」となり、密着性に問題があった。比較例3-2においては、着色層の膜厚はいずれも0.5μmで実施例1-2と同じ膜厚条件であったにも関わらず、いずれのパターンにおいても評価が「×」であった。これは、比較例3-2で用いた着色性組成物5の重合性化合物に対する光重合開始剤のモル比が0.05であり、0.08未満となっていたことが原因である。
【0084】
以上述べたように、本発明で実施した着色性組成物を用いたフィルターは可視領域および近赤外領域の一部である波長400nm以上800nm以下の光の平均透過率が30%以下であり、かつ近赤外領域900nm以上1100nm以下の光の平均透過率が75%以上かつ、少なくとも2.0μmのパターンにおいても良好な密着性を示し、赤外線パスフィルターとして良好な特性を示した。