(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074908
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】埋め込み磁石同期モータおよび埋め込み磁石同期モータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20220511BHJP
【FI】
H02K1/27 501D
H02K1/27 501A
H02K1/27 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185334
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 庸人
(72)【発明者】
【氏名】水越 陽一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 匠
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】モールド部の偏肉による悪影響を抑制し、精度や性能を向上させることができる、埋め込み磁石同期モータおよび埋め込み磁石同期モータの製造方法を提供する。
【解決手段】磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータであって、ロータは、環状のインナーコアと、インナーコアの外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数のアウターコアと、互いに隣接する前記アウターコアの間にそれぞれ配置された複数の磁石と、インナーコアおよびアウターコアに接合された樹脂モールド部と、を備え、樹脂モールド部は、アウターコアを軸方向に貫通する柱部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータであって、
前記ロータは、
環状のインナーコアと、
前記インナーコアの外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数のアウターコアと、
互いに隣接する前記アウターコアの間にそれぞれ配置された複数の磁石と、
前記インナーコアおよび前記アウターコアに接合された樹脂モールド部と、
を備え、
前記樹脂モールド部は、前記アウターコアを軸方向に貫通する柱部を有する、埋め込み磁石同期モータ。
【請求項2】
前記アウターコアは、複数の板状部材を軸方向に積層して形成され、
前記柱部は、前記板状部材の重心を貫通している、請求項1に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項3】
前記アウターコアの内周面には、内周側に向けて開口し、軸方向に延設された溝部が形成されている、請求項1または請求項2に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項4】
前記樹脂モールド部は、前記磁極の1/2の数のゲートを有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項5】
前記ゲートは、軸方向から視て、前記アウターコアが配置された領域に設けられた、請求項4に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項6】
前記ゲートは、軸方向から視て、前記磁石が配置された領域に設けられた、請求項4に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項7】
前記樹脂モールド部は、軸方向から視て、前記インナーコアが配置された領域に重なるフィルムゲートを有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項8】
前記樹脂モールド部は、軸方向から視て、前記インナーコアと前記アウターコアとの間の領域に重なるリングゲートを有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項9】
磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータの製造方法であって、
前記ロータは、
環状のインナーコアと、
前記インナーコアの外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数のアウターコアと、
互いに隣接する前記アウターコアの間に配置された複数の磁石と、
前記インナーコアおよび前記アウターコアに接合されたる樹脂モールド部と、
を備え、
前記埋め込み磁石同期モータの製造方法は、
金型内において、前記アウターコアを外周方向に押し込む第1のステップと、
前記アウターコアが外周方向に押し込まれた状態で、前記樹脂モールド部を形成する樹脂を硬化させる第2のステップと、
を備える、埋め込み磁石同期モータの製造方法。
【請求項10】
前記アウターコアの内周面には、内周側に向けて開口し、軸方向に延設された溝部が形成され、
前記第1のステップでは、テーパー面を有する部材を軸方向に移動させて、前記テーパー面を前記溝の底面であって、前記アウターコアの軸方向端部に当接させることで、前記アウターコアを外周方向に押し込む、請求項9に記載の埋め込み磁石同期モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み磁石同期モータおよび埋め込み磁石同期モータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石を有するロータを備える埋め込み磁石同期モータが開示されている。ロータは複数のコアピース等の部材を備え、これらの部材は、互いに樹脂モールド部により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータを構成する部材を樹脂モールド部により固定する場合、モールド部の偏肉がモータの精度や性能に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、モールド部の偏肉による悪影響を抑制し、精度や性能を向上させることができる、埋め込み磁石同期モータおよび埋め込み磁石同期モータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータであって、
前記ロータは、
環状のインナーコアと、
前記インナーコアの外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数のアウターコアと、
互いに隣接する前記アウターコアの間にそれぞれ配置された複数の磁石と、
前記インナーコアおよび前記アウターコアに接合された樹脂モールド部と、
を備え、
前記樹脂モールド部は、前記アウターコアを軸方向に貫通する柱部を有する、埋め込み磁石同期モータを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モールド部の偏肉による悪影響を抑制し、精度や性能を向上させることができる、埋め込み磁石同期モータおよび埋め込み磁石同期モータの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図である。
【
図2】インナーコアおよびアウターコアを軸方向から視た図である。
【
図3】樹脂モールド部を成形する工程(プレス加工)を示す図である。
【
図3A】樹脂モールド部を成形する工程(プレス加工)を示す図である。
【
図3B】樹脂モールド部を成形する工程(プレス加工)を示す図である。
【
図4】
図3Aの上方向から視たときのアウターコアおよび肉盗み部駒の位置関係を示す図である。
【
図5】樹脂モールド部のゲートの位置を例示する図である。
【
図6】樹脂モールド部のゲートの位置を例示する図である。
【
図7】樹脂モールド部のゲートの位置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図、
図2は、インナーコアおよびアウターコアを軸方向から視た図である。なお、以下の記載において、軸方向、径方向、周方向、内周側、外周側は、ロータの回転軸の軸心を基準として定義されている。
【0011】
図1に示すように、ロータ10は、ロータ10の回転軸11の軸心を取り囲む環状のインナーコア20と、インナーコア20の外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数(10個)のアウターコア30と、互いに隣接するアウターコア30の間にそれぞれ配置された複数(10個)の磁石40と、インナーコア20およびアウターコア30に接合された樹脂モールド部50と、を備える。なお、回転軸11への磁束漏れを抑制するために、インナーコア20とアウターコア30は、分離して設けられている。
【0012】
なお、本実施例では、磁極の数が10の場合を示しているが、極数は任意である。
【0013】
インナーコア20およびアウターコア30は、例えば、それぞれ
図2に示す形状の所定枚数の鉄板20Aおよび鉄板30A(板状部材の一例)を、軸方向に積層することで構成される。なお、インナーコア20およびアウターコア30は、鉄板に代えて、冷間圧延鋼板のほか、任意の磁性材(例えば、電磁鋼板)による板状部材を用いて構成できる。この場合、例えば、インナーコア20は、冷間圧延鋼により形成され、アウターコア30は、電磁鋼板により形成されてもよい。
【0014】
磁石40は、回転軸11の周りに、均等の角度で(36°ずつずれて)配置される。アウターコア30は、互いに隣接する磁石40に挟まれた位置において、回転軸11の周りに均等の角度で(36°ずつずれて)配置される。
【0015】
磁石40は、軸方向に延びる直方体形状とされ、
図1に示すように、互いに隣接する磁石12のN極どうし、またはS極どうしが対向する方向に配置される。これにより、アウターコア30のそれぞれは、周方向にN極およびS極を交互に繰り返す磁極として機能する。
【0016】
図2に示すように、インナーコア20を構成する鉄板20Aには、回転軸11の周りに、均等の角度で(72°ずつずれて)係合部21が形成されている。係合部21は、凹状または凸状に形成され、互いに積層された鉄板20Aが係合部21において係合することで、鉄板20Aの周方向および径方向の位置決めに寄与する。
【0017】
また、鉄板20Aには、回転軸11の周りに、それぞれ均等の角度で(72°ずつずれて)配置された凸部22および凸部23が、周方向に交互に設けられている。凸部22および凸部23は、それぞれ磁石40に対向する位置で外周側に突出することで、樹脂モールド部50の厚みを均一化するとともに、インナーコア20の回り止めとしても機能する。
【0018】
図2に示すように、アウターコア30を構成する鉄板30Aには、それぞれ3つの係合部31が形成されている。係合部31は、凹状または凸状に形成され、互いに積層された鉄板30Aが係合部31において係合することで、鉄板30Aの周方向および径方向の位置決めに寄与する。
【0019】
また、鉄板30Aには、貫通孔32が形成されている。貫通孔32は積層された鉄板30Aを軸方向に貫く円柱形状の貫通孔を形成する。この円柱形状の貫通孔は、後述する樹脂モールド部50の柱部50Cに対応する。
【0020】
また、鉄板30Aの外周部には、周方向に突出する2つの突出部33が形成されている。
図1、
図2に示すように、突出部33は、隣接する鉄板30Aの突出部33と対向して形成されており、磁石40の外周端よりも外周側から樹脂モールド部50に接合される。なお、突出部33(アウターコア30)と、磁石40との間の距離を確保することにより、磁石40の減磁耐力を向上させている。
【0021】
インナーコア20(鉄板20A)と対向する鉄板30Aの内周面には、外周側に窪んだ凹部35が形成されている。互いに積層される鉄板30Aの凹部35は、軸方向に連通して、アウターコア30の溝部Dを形成する。
図2に示すように、溝部Dは、アウターコア30の内周面において内周側に向けて開口し、軸方向に延設される。
【0022】
このように、アウターコア30の内周面に溝部Dを形成することにより、樹脂モールド部50の厚みを均一化することができる。
図2に点線で示す樹脂の流路41において、溝部Dを設けることにより、互いに隣接するアウターコア30の間から、インナーコア20の外周面とアウターコア30の内周面の間まで、流路41の厚みを均一化することができる。これにより、樹脂の流動性が良好になるとともに、樹脂の偏肉が抑制されるため、モータの性能向上を図ることができる。
【0023】
次に、ロータ10の製造方法について説明する。
【0024】
図3~
図3Bは、樹脂モールド部を成形する工程(プレス加工)を示す図である。
【0025】
図3に示すように、樹脂モールド部50を成形する工程では、例えば、金型の下型61と、上型62と、下型61と上型62の間に挿入される下型63とを用いることができる。下型61にはくさび形状の肉盗み部駒65が、上型62には、同様のくさび形状の肉盗み部駒66が、それぞれ
図3における上下方向に摺動可能に取り付けられている。また、肉盗み部駒65にはテーパー部65Aが、肉盗み部駒66にはテーパー部66Aが、それぞれ設けられている。なお、磁石40に相当する部分にも、金型を構成する部材が挿入される。
【0026】
図3Aに示すように、型閉時に、上型62を下型63に当接するまで下し、テーパー部65Aおよびテーパー部66Aが、アウターコア30の下端および上端に、それぞれ当接するまで、肉盗み部駒65および肉盗み部駒66をスライドさせる。
【0027】
図4は、
図3Aの上方向から視たときのアウターコアおよび肉盗み部駒の位置関係を示す図である。
【0028】
肉盗み部駒65および肉盗み部駒66を、アウターコア30に対して上下方向から押し込むと、
図3Bおよび
図4に示すように、テーパー部65Aおよびテーパー部66Aは、アウターコア30の軸方向端部において、アウターコア30の溝部Dの底面に当接し、アウターコア30を下型63に向けて外周方向に押し込む。このため、アウターコア30の外周面36が下型63にしっかりと押し当てられて、アウターコア30が正しく位置決めされる。とくに、磁極の位置に対応するアウターコア30の外周面36が正確に位置決めされるため、モータの性能を向上させることができる。また、偏肉部に肉盗み部駒65および肉盗み部駒66による肉盗み形状を設けることで、樹脂モールド部50における樹脂の充填状態の均一性を向上させることができる。
【0029】
この状態で、樹脂を金型内に充填し、硬化させると、樹脂モールド部50によってインナーコア20およびアウターコア30が固定される。また、樹脂は、積層された鉄板30Aの貫通孔32により形成される上記の円柱形状の貫通孔に、軸方向(上下方向)から充填され、アウターコア30を軸方向に貫通する柱部50Cが形成される。
【0030】
一般的に、磁石が周方向に配列されるスポーク型のロータでは、コア形状およびコアの位置精度がモータの性能に大きな影響を及ぼす。とくに、アウターコアが複数のコアに分離して配置されるため、アウターコアの外周の位置精度がモータの性能に直結するが、この位置精度は樹脂が硬化する際の体積収縮および変形によって劣化する。また、ロータを樹脂モールドによって一体化する場合、樹脂はアウターコアを抱きかかえるように充填されるため、充填性の確保が難しいという問題がある。また、スポーク型のロータでは、コア形状やコアの位置精度がモータの性能を左右するので、樹脂の肉厚を増すなどの設計の自由度が低いという事情もある。
【0031】
しかし、本実施例では、アウターコア30を軸方向に貫通する樹脂モールド部50の柱部50Cを設けることにより、樹脂の肉厚を増すことなくゲートから反ゲートまでの樹脂の流路を確保することができ、樹脂の充填不足を補うことができる。また、樹脂モールド部50が柱部50Cを有することにより、硬化時において樹脂が収縮する際に、アウターコア30の全体を変位させることができる。このため、アウターコア30の傾きや位置ずれを抑制できる。結果として、アウターコア30、とくに外周面36の位置や向きの精度を高めることができ、モータの性能を向上させることができる。
【0032】
なお、柱部50Cは、アウターコア30を構成する鉄板30Aの重心を通るようにすることで、より柱部50Cを効果的に作用させることができる。ただし、アウターコア30を通す領域、すなわち鉄板30Aに形成される貫通孔32の位置は任意である。なお、貫通孔32の位置は、モータ性能およびプレス加工に悪影響がない範囲を選択することが望ましい。
【0033】
なお、肉盗み部駒65および肉盗み部駒66の形状は任意であり、肉盗みの効果を高めるような形状に、肉盗み部駒65および肉盗み部駒66を形成してもよい。あるいは、テーパー部65Aまたはテーパー部66Aを有する部材と、肉盗みの効果を高めるための別の部材とを組み合わせてもよい。前者の場合、金型部品としての肉盗み部駒の強度を高めることができる。後者の場合、プレス加工の繰り返しにおいて摩耗しやすいテーパー部を構成する部材のみを交換できる、という利点がある。
【0034】
図1では、テーパー部65Aまたはテーパー部66Aを有する部材と、肉盗みの効果を高めるための別の部材とを組み合わせて、軸方向から視てT字形状に窪んだ肉盗み部67を設けた例を示している。また、
図1において上下2か所には、肉盗み部67を内周側にさらに拡大させた形状の肉盗み部68を設けている。肉盗み部68では、インナーコア20の外周に当接する肉盗み部駒(不図示)を用いることにより、肉盗み部駒により、インナーコア20とアウターコア30との間の径方向の間隙を制御することができる。
【0035】
図5~
図7は、樹脂モールド部のゲートの位置を例示する図である。ゲートG1~G4のうちの任意のゲートを選択できる。
【0036】
図5に示すゲートG1は、軸方向から視て、アウターコア30が配置された領域に設けられたピンポイントゲートである。この場合、
図6に示すように、ゲートG1の数を、アウターコア30の1/2の数、すなわち、磁極の1/2の数とすることができる。また、ゲートG1の位置を、周方向において均等の角度(72°ずつ)に配分することで、均一性がよく精度の高い成形品を得ることができる。なお、ゲートG1の数をアウターコア30の数とした場合には、歩留まりが悪くなり易いという問題がある。
【0037】
図5に示すゲートG2は、軸方向から視て、アウターコア30から外れた領域、すなわち、磁石40が配置された領域(
図1)に設けられたピンポイントゲートである。この場合、
図7に示すように、ゲートG2の数を、磁極の1/2の数とすることができる。また、ゲートG2の位置を、周方向において均等の角度(72°ずつ)に配分することで、均一性がよく精度の高い成形品を得ることができる。なお、ゲートG2の数をアウターコア30の数とした場合には、ゲートG1の場合と同様、歩留まりが悪くなり易いという問題がある。
【0038】
図5に示すゲートG3は、軸方向から視て、インナーコア20が配置された領域に重なるフィルムゲートとして形成されている。また、
図5に示すゲートG4は、軸方向から視て、インナーコア20とアウターコア30との間の領域に重なるリングゲートとして形成されている。ゲートG3およびゲートG4は、いずれも周方向について均等な断面積を有するので、均一性がよく精度の高い成形品を得ることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施例によれば、アウターコア30を軸方向に貫通する樹脂モールド部50の柱部50Cを備える。このため、樹脂の流路を確保することができるとともに、樹脂の収縮に起因するアウターコア30の位置精度等を向上させることができる。したがって、モータの性能を高めることができる。
【0040】
また、アウターコア30の内周面に溝部Dを形成することにより、樹脂モールド部50の厚みを均一化することができる。このため、樹脂の流動性が良好になるとともに、樹脂の偏肉が抑制されるため、モータの性能向上を図ることができる。
【0041】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0042】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0043】
[付記1]
磁石が埋め込まれたロータ(10)を有する埋め込み磁石同期モータであって、
前記ロータは、
環状のインナーコア(20)と、
前記インナーコアの外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数のアウターコア(30)と、
互いに隣接する前記アウターコアの間にそれぞれ配置された複数の磁石(40)と、
前記インナーコアおよび前記アウターコアに接合された樹脂モールド部(50)と、
を備え、
前記樹脂モールド部は、前記アウターコアを軸方向に貫通する柱部(50C)を有する、埋め込み磁石同期モータ。
【0044】
付記1の構成によれば、樹脂モールド部は、アウターコアを軸方向に貫通する柱部を有するので、樹脂の肉厚を増すことなくゲートから反ゲートまでの樹脂の流路を確保することができ、樹脂の充填不足を補うことができる。また、硬化時において樹脂が収縮する際に、アウターコアの全体を変位させることができ、アウターコアの傾きや位置ずれを抑制できる。
【0045】
[付記2]
前記アウターコアは、複数の板状部材(30A)を軸方向に積層して形成され、
前記柱部は、前記板状部材の重心を貫通している、付記1に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0046】
付記2の構成によれば、柱部が板状部材の重心を貫通しているので、硬化時において樹脂が収縮する際に、アウターコアの全体を変位させることができ、アウターコアの傾きや位置ずれを抑制できる。
【0047】
[付記3]
前記アウターコアの内周面には、内周側に向けて開口し、軸方向に延設された溝部(D)が形成されている、付記1または付記2に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0048】
付記3の構成によれば、アウターコアの内周面に溝部(D)が形成されているので、樹脂モールド部の厚みを均一化することができる。これにより、樹脂の流動性が良好になるとともに、樹脂の偏肉が抑制されるため、モータの性能向上を図ることができる。
【0049】
[付記4]
前記樹脂モールド部は、前記磁極の1/2の数のゲートを有する、付記1~付記3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0050】
付記4の構成によれば、磁極の1/2の数のゲートを有するので、樹脂モールド部の均一性と、歩留まりの向上の両立を図ることができる。
【0051】
[付記5]
前記ゲートは、軸方向から視て、前記アウターコアが配置された領域に設けられた、付記4に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0052】
付記5の構成によれば、ゲートをロータの周方向について均等に設けることができる。
【0053】
[付記6]
前記ゲートは、軸方向から視て、前記磁石が配置された領域に設けられた、付記4に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0054】
付記6の構成によれば、ゲートをロータの周方向について均等に設けることができる。
【0055】
[付記7]
前記樹脂モールド部は、軸方向から視て、前記インナーコアが配置された領域に重なるフィルムゲートを有する、付記1~付記3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0056】
付記7の構成によれば、ゲートをロータの周方向について均等に設けることができる。
【0057】
[付記8]
前記樹脂モールド部は、軸方向から視て、前記インナーコアと前記アウターコアとの間の領域に重なるリングゲートを有する、付記1~付記3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0058】
付記8の構成によれば、ゲートをロータの周方向について均等に設けることができる。
【0059】
[付記9]
磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータの製造方法であって、
前記ロータは、
環状のインナーコアと、
前記インナーコアの外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数のアウターコアと、
互いに隣接する前記アウターコアの間に配置された複数の磁石と、
前記インナーコアおよび前記アウターコアに接合されたる樹脂モールド部と、
を備え、
前記埋め込み磁石同期モータの製造方法は、
金型内において、前記アウターコアを外周方向に押し込む第1のステップと、
前記アウターコアが外周方向に押し込まれた状態で、前記樹脂モールド部を形成する樹脂を硬化させる第2のステップと、
を備える、埋め込み磁石同期モータの製造方法。
【0060】
付記9の構成によれば、アウターコアが外周方向に押し込まれた状態で、樹脂モールド部を形成する樹脂を硬化させるので、アウターコアを正確に位置決めすることができる。
【0061】
[付記10]
前記アウターコアの内周面には、内周側に向けて開口し、軸方向に延設された溝部が形成され、
前記第1のステップでは、テーパー面を有する部材(65,66)を軸方向に移動させて、前記テーパー面を前記溝の底面であって、前記アウターコアの軸方向端部に当接させることで、前記アウターコアを外周方向に押し込む、付記9に記載の埋め込み磁石同期モータの製造方法。
【0062】
付記10の構成によれば、テーパー面を有する部材を軸方向に移動させることにより、アウターコアを外周方向に押し込むことができる。
【符号の説明】
【0063】
10 ロータ
20 インナーコア
30 アウターコア
30A 鉄板
40 磁石
50 樹脂モールド部
50C 柱部
D 溝部