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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074913
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】イムノクロマト検査キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185344
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針山 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】河崎 秀陽
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博明
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来のイムノクロマト検査キットと比べて、製造コストが削減されたイムノクロマト検査キットを提供する。
【解決手段】イムノクロマト検査キットは、検体が滴下される検体滴下部と、検体中の検出対象物と結合する性質を有する標識抗体が付着しているコンジュゲート部と、検出対象物と結合する性質を有する捕捉抗体が付着している複数の検出部3とを備える。検体滴下部、コンジュゲート部、および複数の検出部3は、多孔質部材上に形成されている。各検出部3は、多孔質部材に形成されている。担体には、複数の凹部が形成されている。各検出部3は、1つの凹部の底面を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が滴下される検体滴下部と、
前記検体中の検出対象物と結合する性質を有する標識抗体が付着しているコンジュゲート部と、
前記検出対象物と結合する性質を有する捕捉抗体が付着している少なくとも1つの検出部とを備え、
前記検体滴下部、前記コンジュゲート部、および前記少なくとも1つの検出部は、多孔質部材上に形成されており、
前記多孔質部材には、少なくとも1つの凹部が形成されており、
前記少なくとも1つの検出部は、前記少なくとも1つの凹部の底面を含む、イムノクロマト検査キット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出部の平面外形状は、ドット状であり、
前記少なくとも1つの検出部の幅は、1mm未満である、請求項1に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの検出部の幅は、100μm以下である、請求項1または2に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの検出部は、複数の検出部であり、
前記少なくとも1つの凹部は、複数の凹部であり、
前記複数の検出部の各々は、前記複数の凹部のうちの1つの前記凹部の底面を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項5】
前記複数の検出部は、1次元的または2次元的に配列されている、請求項4に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項6】
前記複数の検出部のうち隣り合う2つの前記検出部間の最短距離は、1mm未満である、請求項4または5に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項7】
前記複数の検出部は、第1種の前記検出対象物と結合する性質を有する第1捕捉抗体が固定されている第1検出部と、第2種の前記検出対象物と結合する性質を有する第2捕捉抗体が固定されている第2検出部とを有する、請求項4~6のいずれか1項に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項8】
前記検体滴下部、前記コンジュゲート部、および前記少なくとも1つの検出部は、単一の前記多孔質部材上に形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のイムノクロマト検査キット。
【請求項9】
前記検体滴下部、前記コンジュゲート部、および前記少なくとも1つの検出部は、複数の前記多孔質部材上に形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のイムノクロマト検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマトグラフィーは、現在、インフルエンザウイルスを中心に様々な疾患の診断補助として社会実装されている。その原理は抗原抗体反応を利用しており、その簡便さ・有効性ゆえに広く医療現場で使用されている。
【0003】
従来のイムノクロマトグラフィーでは、イムノクロマト検査キット(展開支持体、またはクロマトグラフ媒体とも呼ばれる)の検出部における発色の有無が目視観察される。具体的には、標識抗体と結合した検出対象物が検出部に固定された捕捉抗体に捕捉されて検出部上に十分に集積した場合に、標識抗体に由来する発色が目視にて確認される。
【0004】
国際公開第2010/061772号(特許文献1)には、検出部が、目視判定可能な数mm以上の大きさで形成されたイムノクロマト検査キットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/061772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のイムノクロマト検査キットでは、標識抗体に由来する発色が目視にて確認されるため、誤判定することのないよう十分な面積を設ける必要があり、その結果検出部の面積が数mm以上となっている。このため、ある程度以上の多数の捕捉抗体を検出部に固定させて抗原を捕捉しなければならず、高価な捕捉抗体の使用量を削減することは難しく、低コスト化が困難であった。
【0007】
また、検出部を微小化した場合、たとえば、顕微鏡などで検出部を拡大して標識抗体を確認する必要があるが、顕微鏡での微小な検出部の位置合わせは困難である。この対策として、キット上に目印を設け、そこから所定の距離に検出部を設ける方法が考えられる。しかしながら、この場合、マークを設ける設備が検出部を形成する設備とは別に必要になり、また工程も増えるために製造タクトを削減できず、低コスト化を図ることは難しい。
【0008】
本発明の主たる目的は、従来のイムノクロマト検査キットと比べて、捕捉抗体の使用量を抑制でき、低コストなイムノクロマト検査キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るイムノクロマト検査キットは、検体が滴下される検体滴下部と、検体中の検出対象物と結合する性質を有する標識抗体が付着しているコンジュゲート部と、検出対象物と結合する性質を有する捕捉抗体が付着している少なくとも1つの検出部とを備える。検体滴下部、コンジュゲート部、および少なくとも1つの検出部は、多孔質部材上に形成されている。多孔質部材には、少なくとも1つの凹部が形成されている。少なくとも1つの検出部は、前記少なくとも1つの凹部の底面を含む。
【0010】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、少なくとも1つの検出部の平面外形状は、ドット状であってもよい。少なくとも1つの検出部の幅は、1mm未満であってもよい。
【0011】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、少なくとも1つの検出部の幅は、100μm以下であってもよい。
【0012】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、少なくとも1つの検出部は、複数の検出部であり、少なくとも1つの凹部は、複数の凹部であってもよい。複数の検出部の各々は、複数の凹部のうちの1つの凹部の底面を含む。
【0013】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、複数の検出部は、1次元的または2次元的に配列されていてもよい。
【0014】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、複数の検出部のうち隣り合う2つの検出部間の最短距離は、1mm未満であってもよい。
【0015】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、複数の検出部は、第1種の検出対象物と結合する性質を有する第1捕捉抗体が固定されている第1検出部と、第2種の検出対象物と結合する性質を有する第2捕捉抗体が固定されている第2検出部とを有していてもよい。
【0016】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、検体滴下部、コンジュゲート部、および少なくとも1つの検出部は、単一の多孔質部材上に形成されていてもよい。
【0017】
上記イムノクロマト検査キットにおいて、検体滴下部、コンジュゲート部、および少なくとも1つの検出部は、複数の多孔質部材上に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来のイムノクロマト検査キットと比べて、捕捉抗体の使用量を抑制でき、低コストなイムノクロマト検査キットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に係るイムノクロマト検査キットの斜視図である。
図2図1に示されるイムノクロマト検査キットの検出部の部分拡大平面図である。
図3】検出部の幅を説明するための部分拡大図である。
図4図2中の矢印IV-IVから視た部分拡大断面図である。
図5】実施の形態1に係るイムノクロマト検査キットの製造方法のフローチャートである。
図6】実施の形態1に係るイムノクロマト検査キットの製造方法に用いられる塗布装置の斜視図である。
図7図6に示される塗布装置の塗布ユニットの正面図である。
図8図6に示される塗布装置の塗布ユニットの側面図である。
図9図6に示される塗布装置の塗布ユニットの動作を説明する正面図である。
図10図6に示される塗布装置の塗布ユニットの動作を説明する正面図である。
図11図2に示される検出部の変形例を示す部分拡大平面図である。
図12図2に示される検出部の他の変形例を示す部分拡大平面図である。
図13】実施の形態2に係るイムノクロマト検査キットの検出部の部分拡大平面図である。
図14図13に示される検出部の変形例を示す部分拡大平面図である。
図15図13に示される検出部の他の変形例を示す部分拡大平面図である。
図16図13に示される検出部のさらに他の変形例を示す部分拡大平面図である。
図17】実施の形態3に係るイムノクロマト検査キットの斜視図である。
図18】実施の形態4に係るイムノクロマト検査キットの斜視図である。
図19】実施例1の検出部3を電子顕微鏡を用いて観察して得られた電子顕微鏡画像である。
図20】実施例2の検出部3を電子顕微鏡を用いて観察して得られた電子顕微鏡画像である。
図21】実施例2において、補助液が滴下される前の検出部3を電子顕微鏡を用いて観察して得られた電子顕微鏡画像である。
図22】実施例2において、補助液が滴下された後の検出部3を電子顕微鏡を用いて観察して得られた電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一例としての実施の形態について説明する。なお、以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さないものとする。
【0021】
(実施の形態1)
<イムノクロマト検査キット>
図1図2に示されるように、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100は、検体滴下部1、コンジュゲート部2、複数の検出部3を含む検出領域t、コントロール部4を含むコントロール領域c、および吸収部5を主に備える。図1および図2に示されるように、検体滴下部1、コンジュゲート部2、検出領域t、コントロール領域c、および吸収部5は、展開方向Dに沿って上記記載順に並んで配置されている。
【0022】
検体滴下部1は、検体が滴下される部分である。検体滴下部1は、例えばグラスファイバーパッド、セルロースファイバーパッド、およびポリエステルパッドなどの多孔質部材により形成されている。
【0023】
コンジュゲート部2は、検体中の検出対象物と結合する性質を有する標識抗体が固定されている部分である。標識抗体は、検出対象物の第1部分(第1エピトープ)を特異的に認識してこれと結合する抗体と標識物質との結合体である。抗体は、検出対象物に応じて任意に選択され得る。標識物質は、従来のイムノクロマトグラフィーに用いられる標識物質から任意に選択され得る。標識物質は、例えば、金属ナノ粒子(金属微粒子)、ラテックス微粒子、有機高分子微粒子、無機微粒子、および発色剤を包含したリポソームなどの発色微粒子からなる群から選択される少なくとも1つを含む。標識物質は、例えば、金属ナノ粒子として、金ナノ粒子、白金ナノ粒子、白金-金ナノ粒子、銀ナノ粒子などの貴金属ナノ粒子、チタンナノ粒子、鉄ナノ粒子、ニッケルナノ粒子、およびカドミウムナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1つを含む。上記金属ナノ粒子は、粒径が1nm以上100nm以下のコロイド状の金属ナノ粒子であってもよい。コンジュゲート部2は、例えば、標識抗体を含む懸濁液をグラスファイバーパッド、セルロースファイバーパッド、およびポリエステルパッドなどの多孔質部材に塗布した後、これを乾燥することにより、調整されている。
【0024】
検出領域tは、展開方向Dにおいて、コンジュゲート部2に対して検体滴下部1とは反対側に配置されている。検出領域tは、多孔質部材から成る担体6に形成されている。検出領域tは、複数の検出部3を含む。各検出部3は、コンジュゲート部2を介して検体滴下部1と接続されている。各検出部3は、展開方向Dにおいて、コンジュゲート部2に対して検体滴下部1とは反対側に配置されている。各検出部3は、検出対象物と結合する性質を有する捕捉抗体が固定されている部分である。捕捉抗体は、検出対象物のうち上記第1部分とは異なる第2部分(第2エピトープ)を特異的に認識してこれと結合する抗体である。異なる観点から言えば、捕捉抗体は、標識物質と結合している検査対象物と結合する性質を有する。捕捉抗体は、検出対象物に応じて任意に選択され得る。
【0025】
図2に示されるように、各検出部3の平面外形状は、ドット状である。各検出部3のドット幅は、目視により観察可能な最小の大きさ、または目視により観察不可能であって顕微鏡により観察可能な大きさである。各検出部3のドット幅は、例えば1mm未満である。好ましくは、各検出部3のドット幅は、標識抗体に結合する1μm以下の大きさの標識物質を直接観察可能な電子顕微鏡などの視野と同等である。各検出部3のドット幅は、例えば100μm以下である。
【0026】
なお、検出部3の幅は、以下のようにして測定される。まず、十分な検出対象物を含む検体を検体滴下部1に滴下してイムノクロマト検査キット100上で抗原抗体反応を発現させる。次に、後述する検査方法に従って検出部3の電子顕微鏡画像を取得する。なお、本実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100のように、検出部3が凹部7の底面7Aを含む場合には、底面7Aに焦点を合わせた上で取得された上記電子顕微鏡画像が用いられる。次に、該画像中において標識抗体が観察された領域の外形を検出部3の外形として特定する。次に、検出部3の外形の幅を測定する。図3に示されるように、標識抗体が観察された領域の外形線が内外に波打っている場合、画像処理によって上記外形線の外接円CCの直径D1と、上記外形線の内接円ICの直径D2とを算出し、直径D1と直径D2の中間値を検出部3の外形の幅と定義する。
【0027】
図2に示される各検出部3は、展開方向Dと交差(例えば直交)する方向に互いに間隔を空けて配置されている。各検出部3は、展開方向Dと交差(例えば直交)する方向に1次元的に配列されている。隣り合う2つの検出部3間の距離は、例えば1mm未満である。
【0028】
各検出部3の平面外形状は、ドット状である限りにおいて特に制限されないが、例えば円形状である。なお、各検出部3の平面外形状は、楕円形状、正方形状、または長方形状などであってもよい。
【0029】
図4に示されるように、担体6の検出領域tには、複数の凹部7が形成されている。各凹部7は、担体6の上面に対して凹んでいる。各凹部7は、底面7Aと、底面7Aと担体6の上面とを接続する壁面7Bとを有しており、上面6Aの開口部と底面7Aはドット状である。図4に示される断面において、底面7Aと壁面7Bとは、鈍角を成している。言い換えると、図4に示される各凹部7の断面形状は、対向する壁面7B間の間隔が底面7Aに近づくにつれて狭くなるような、テーパー形状を有しているが、上面6Aの開口径と底面7Aの直径は同等であっても良い。各凹部7の底面7Aの幅は、目視観察で確認できる最小の大きさ、たとえば1mm未満である。好ましくは、各凹部7の底面7Aの幅は、標識抗体に結合する1μm以下の大きさの標識物質を直接観察な電子顕微鏡などの視野と同等であることが望ましい。たとえば、各底面7Aのドット幅は、100μm以下である。各底面7Aの深さは、電子顕微鏡の焦点深度よりも深い。各底面7Aの深さは、例えば10μm以上である。
【0030】
各底面7Aの平面外形状は、例えば円形状である。なお、各底面7Aの平面外形状は、楕円形状、正方形状、または長方形状などであってもよい。
【0031】
各検出部3は、各凹部7の底面7Aを含んでいる。各検出部3は、担体6の各凹部7に形成されている。各検出部3および各凹部7は、例えば担体6に同時に形成される。検出部3および凹部7を担体6に同時に形成する方法は、後述するイムノクロマト検査キットの製造方法にて詳細に説明する。
【0032】
コントロール領域cは、展開方向Dにおいて、検出領域tに対してコンジュゲート部2とは反対側に配置されている。コントロール領域Cは、コントロール部4を含む。コントロール部4は、標識抗体と結合するコントロール抗体が固定されている部分である。コントロール部4の平面外形状は、任意の形状であればよく、例えばライン状である。
【0033】
コントロール部4は、担体6に形成されている。コントロール部4は、展開方向Dにおいて、検出部3に対してコンジュゲート部2とは反対側に配置されている。
【0034】
なお、図1及び図2では、説明の便宜上、検出領域t及びコントロール領域cの各範囲を破線で示している。実際のイムノクロマト検査キットでは、例えば上記破線は表されていない。
【0035】
吸収部5は、展開後の余剰な検体等を吸収する部分である。吸収部5は、例えばグラスファイバーパッド、セルロースファイバーパッド、およびポリエステルパッドなどの多孔質部材により形成されている。吸収部5は、展開方向Dにおいて、コントロール領域cに対して検出領域tとは反対側に配置されている。
【0036】
担体6の平面外形状は、長方形状である。担体6は、展開方向Dに沿っている長手方向と、展開方向Dと直交する短手方向とを有している。担体6を構成する材料は、任意の多孔質材料であればよいが、例えばニトロセルロース、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)の少なくともいずれかを含む。つまり、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100では、複数の検出部3およびコントロール部4が、検体滴下部1、コンジュゲート部2、および吸収部5を構成する多孔質部材とは別体の多孔質部材上に形成されている。検体滴下部1を構成する多孔質部材は、例えばコンジュゲート部2を構成する多孔質部材と接着されている。コンジュゲート部2および吸収部5を構成する各多孔質部材は、例えば担体6を構成する各多孔質部材と接着されている。
【0037】
なお、検体滴下部1、コンジュゲート部2、検出部3、コントロール部4、吸収部5、および担体6は、図示しない基材(バッキングシートとも呼ばれる)上に、粘着剤または粘着シートを用いて固定されていてもよい。担体6は、基材上に形成された薄膜であってもよい。
【0038】
<イムノクロマト検査キットを用いた検査方法>
イムノクロマト検査キットを用いた検査方法では、電子顕微鏡を用いてイムノクロマト検査キット上での抗原抗体反応後の検出部3を観察する。以下、イムノクロマト検査キット上での抗原抗体反応について説明する。
【0039】
まず検体滴下部1に検体が滴下される。滴下された検体は、毛細管現象により、展開方向Dに沿って流動する。検体中の検出対象物は、コンジュゲート部2において標識抗体と結合する。検出対象物と標識抗体との結合体は、毛細管現象により、検出対象物と結合していない標識抗体とともに、展開方向Dに沿って移動する。標識抗体と結合した検出対象物は、検出部3において捕捉抗体と結合する。これにより、検出部3には、検出対象物と結合した標識抗体が集積される。検出部3における標識抗体に結合した標識物質を、電子顕微鏡を用いて直接観察する。さらに、検出対象物と結合していない標識抗体は、コントロール部4においてコントロール抗体と結合する。これにより、コントロール部4には、検出対象物と結合していない標識抗体が捕捉される。コントロール部4における標識抗体に結合した標識物質を、電子顕微鏡を用いて直接観察する。展開方向Dにおいてコントロール部4よりも下流側に流れた余剰の検体は、吸収部5に吸収される。
【0040】
イムノクロマト検査キットを用いた検査方法は、例えば以下の手順で行われる。
まず、検体滴下部1に検体を滴下後、指定時間経過した後、補助液を滴下する。
【0041】
補助液は、電子顕微鏡による測定条件において、画像の鮮明性に寄与する帯電と熱の発生を防ぐ導電性、および/または、重合して皮膜を形成する性質、を有している。補助液は、必須成分として、グリセリン及びグリセリン代替物;ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85などのポリソルベート類、及び、ポリソルベート類代替物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、任意成分として、単糖類、二糖類、塩類、及び、緩衝液から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0042】
次に、検出部3が電子顕微鏡を用いて観察される。具体的には、まず、担体6が電子顕微鏡のチャンバー内にセットされる。次に、担体6の上面を観察しながら、検出部3を探索する。イムノクロマト検査キット100では、電子顕微鏡の顕微鏡画像(明視野画像)において、担体6の上面と底面7Aとの間の距離に起因した焦点ずれが観察される。そこで、焦点ずれの有無を確認することにより顕微鏡画像中において凹部7を探索できるため、当該画像中において検出部3を容易に探索できる。その後、当該画像の焦点を底面7Aに合わせることで、当該画像の焦点を検出部3に合わせることができる。次に、電子顕微鏡画像を撮影し、当該画像中の標識物質の数を測定する。電子顕微鏡画像中において、標識物質の輪郭は明確に識別され得るため、画像中の標識物質の数は計測され得る。計測された標識物質の数が予め定められた判定基準を超えていれば、検体中に検出対象物が存在する(すなわち「陽性」)と判定する。
【0043】
上記観察および測定は、例えば複数の検出部3に対して同様に行われる。この場合、各検出部3の同視野中の標識物質の数の、たとえば平均値、最大値、最小値などが算出され、これら算出された値の内のいずれか一つを評価値とし、その評価値が予め定められた判定基準を超えていれば、「陽性」と判定する。
【0044】
<イムノクロマト検査キットの製造方法>
次に、イムノクロマト検査キット100の製造方法の一例について説明する。図5に示されるように、イムノクロマト検査キット100の製造方法は、担体6を準備する工程(S1)と、準備された担体6に複数の検出部3を形成する工程(S2)とを備える。
【0045】
担体6を準備する工程では、コントロール部4が上面に形成されている担体6、またはコントロール部4が上面に形成されていない担体6が準備される。
【0046】
複数の検出部3を形成する工程では、捕捉抗体を先端部に保持している塗布針21(図10参照)を用いて、捕捉抗体が担体6の上面にドット状に塗布される。塗布針21の先端部の直径(以下、先端径とよぶ)は1mm未満である。本工程では、塗布針21を用いて担体6に凹部7が形成されると同時に、捕捉抗体が凹部7の底面7Aに塗布される。つまり、捕捉抗体を先端部に保持している塗布針21は、担体6の上面に接触した後に担体6にさらに押し込まれる。本工程では、図6図10に示される塗布装置が使用される。塗布装置の構成については、後述する。
【0047】
このようにして、複数の検出部3を含む担体6が形成される。この担体6にコントロール部4が形成されている場合、当該担体6にコンジュゲート部2および吸収部5が接続され、さらにコンジュゲート部2に検体滴下部1が接続されることにより、イムノクロマト検査キット100が製造される。上記担体6にコントロール部4が形成されていない場合、当該担体6にコントロール部4を形成する。その後、当該担体にコンジュゲート部2および吸収部5が接続され、さらにコンジュゲート部2に検体滴下部1が接続されることにより、イムノクロマト検査キット100が製造される。イムノクロマト検査キット100の製造方法では、検体滴下部1、コンジュゲート部2、コントロール部4、および吸収部5の各々は、従来のイムノクロマト検査キットでのそれらと同様に形成され得る。
【0048】
<塗布装置の構成>
次に、イムノクロマト検査キット100の製造方法において、複数の検出部3を形成するために用いられる塗布装置の一例について説明する。
【0049】
図6に示されるように、実施の形態1に係る塗布装置は、X軸テーブル11、Y軸テーブル12、Z軸テーブル13、塗布機構14、観察光学系15、CCDカメラ16、および制御部を主に備える。X軸テーブル11、Y軸テーブル12、Z軸テーブル13、塗布機構14、観察光学系15、およびCCDカメラ16は、例えば処理室の内部に配置されている。制御部は、操作パネル17、モニタ18、制御用コンピュータ19を含む。操作パネル17、モニタ18、制御用コンピュータ19は、例えば処理室の外部に配置されている。
【0050】
Y軸テーブル12は、Y軸方向に移動可能であり、かつ担体6を搭載可能である。例えば、Y軸方向に沿って延びるガイドレールが、処理室の底部に固定されている。ガイドレールに沿って移動可能なガイド部がY軸テーブル12の下面と連結されている。Y軸テーブル12の上部表面は、担体6を搭載する搭載面となっている。Y軸テーブル12をX軸方向に跨ぐ構造体が、処理室の底部に固定されている。
【0051】
X軸テーブル11は、Y軸テーブル12をX軸方向に跨ぐように設置された構造体上に配置されている。X軸テーブル11には、Z軸テーブル13が接続された移動体がX軸方向に移動可能に設置されている。移動体は、たとえばボールねじを用いてX軸方向に移動可能となっている。なお、X軸テーブル11は上記構造体を介して処理室の底面に固定されている。そのため、上述したY軸テーブル12は、X軸テーブル11に対してY軸方向に移動可能となっている。
【0052】
X軸テーブル11に接続された移動体には、上述のようにZ軸テーブル13が設置されている。Z軸テーブル13には、観察光学系15および塗布機構14が接続されている。観察光学系15は担体6上の塗布位置を観察するためのものである。CCDカメラは、観察した画像を電気信号に変換する。Z軸テーブル13は、これらの観察光学系15および塗布機構14をZ軸方向に移動可能に保持している。
【0053】
操作パネル17、モニタ18、制御用コンピュータ19は、Y軸テーブル12、X軸テーブル11、Z軸テーブル13、観察光学系15および塗布機構14を制御するために用いられる。操作パネル17は、制御用コンピュータ19への指令を入力するために用いられる。モニタ18は、上述したCCDカメラ16で変換された画像データや、制御用コンピュータ19からの出力データを表示する。
【0054】
<塗布機構14の構成>
次に、図6に示した塗布機構14の詳細な構成について説明する。図7および図8に示されるように、塗布機構14は、サーボモータ41、架台42、カム43、軸受44、カム連結板45、可動部46、塗布針ホルダ20、当該塗布針ホルダ20に保持された塗布針21と、塗布材料容器22とを主に含んでいる。サーボモータ41は、図6に示したZ軸方向に沿った方向に回転軸が延びるように設置されている。サーボモータ41は、架台42に保持されている。サーボモータ41の回転軸にはカム43が接続されている。カム43は、サーボモータ41の回転軸を中心として回転可能になっている。
【0055】
カム43は、サーボモータ41の回転軸に接続された中心部と、当該中心部の一方端部に接続されたフランジ部とを含む。フランジ部の上部表面(サーボモータ41側の表面)はカム面となっている。このカム面は、中心部の外周に沿って円環状に形成されているとともに、フランジ部の底面からの距離が変動するようにスロープ状に形成されている。具体的には、カム面は、フランジ部の底面からの距離が最も長い上端フラット領域と、フランジ部の底面からの距離が最も短い下端フラット領域と、上端フラット領域と下端フラット領域との間を接続するスロープ領域とを含む。上端フラット領域は、回転軸に対する周方向において下端フラット領域と間隔を空けて配置されている。
【0056】
軸受44は、カム43のカム面に接するように配置されている外輪と、カム連結板45と接続されている内輪とを有している。図7に示すように、軸受44は、カム43から見て特定の方向(サーボモータ41の右側)に配置されている。軸受44は、後述するバネ50によって、カム43のカム面に付勢されている。そのため、カム43が回転するときに、軸受44は、外輪の外周面がカム面に接触した状態に保持される。カム連結板45は、軸受44の内輪と接続された一方端部と、可動部46に固定された他方端部とを有している。可動部46には、塗布針ホルダ固定部47および塗布針ホルダ収納部48が接続されている。
【0057】
架台42には、固定ピン51が設置されている。可動部46には固定ピン52が設置されている。バネ50の一端が固定ピン51に接続されており、かつバネ50の他端が固定ピン52に接続されている。バネ50により、可動部46は塗布材料容器22側に向けた引張り力を受けた状態になっている。また、このバネ50による引張り力は、可動部46およびカム連結板45を介して軸受44に作用する。このバネ50の引張り力によって、軸受44はカム43のカム面に押圧された状態を維持している。
【0058】
可動部46、塗布針ホルダ固定部47、塗布針ホルダ収納部48は、上記架台42に設置されたリニアガイド49に接続されている。リニアガイド49は、Z軸方向に延びるように配置されている。そのため、可動部46、塗布針ホルダ固定部47、塗布針ホルダ収納部48はZ軸方向に沿って移動可能になっている。
【0059】
塗布針ホルダ20は、塗布針ホルダ収納部48に収納されている。塗布針ホルダ20は塗布針21を含む。塗布針21は、塗布針ホルダ20の下面において塗布針ホルダ20から突出するように配置されている。塗布針21の延在方向は、重力方向(図6中のZ軸方向)に沿っている。塗布針21の先端部の形状は、例えば円錐台形状である。塗布針21の中心軸に対する径方向における先端径は、1mm未満である。好ましくは、塗布針21の先端径は、100μm以下である。
【0060】
塗布針ホルダ20の下方には塗布材料容器22が配置されている。塗布材料容器22の内部には、塗布材料70を貯留する空間が形成されている。図9および図10に示されるように、塗布材料容器22の底部および上部には、上記空間と外部とを接続している第1孔および第2孔が形成されている。第1孔および第2孔の形状は、任意の形状であればよいが、例えば円形状である。第1孔および第2孔は、塗布針21の延在方向において重なるように設けられている。塗布材料70は、捕捉抗体を含む。
【0061】
塗布針ホルダ20および塗布針21は、塗布針ホルダ収納部48のZ軸方向への移動に伴い、塗布材料容器22に対して上下動する。これにより、塗布針21の先端部が塗布材料容器22内に貯留されている塗布材料70内に浸漬された第1状態と、塗布材料容器22の底部に形成された孔を通り塗布材料容器22の底面から下向きに突出した第2状態とが、切り替えられる。
【0062】
<塗布装置の動作>
次に、イムノクロマト検査キットの製造方法の複数の検出部3を形成する工程での、塗布装置の動作について説明する。まず、担体6がY軸テーブル12上に搭載される。次に、塗布針21の先端部が塗布材料容器22内に貯留されている塗布材料70内に浸漬された上記第1状態とされる。次に、X軸テーブル11およびY軸テーブル12を動作させて、第1に検出部3を形成すべき領域が塗布機構14の直下に配置されるように、担体6をX軸方向およびY軸方向に位置決めする。次に、Z軸テーブル13を動作させて、塗布針が上記第2状態とされたときに塗布針21の先端部が担体6の上面よりも下方に押し込まれるように、Z軸テーブル13および塗布機構14をZ軸方向に距離dだけ下降させる。
【0063】
次に、塗布機構14のサーボモータ41を動作させて、上記第1状態から上記第2状態に切り替える。具体的には、サーボモータ41を動作させることにより当該サーボモータ41の回転軸を回転させてカム43を回転させる。この結果、カム43のカム面は、Z軸方向における高さが変化するため、該カム面に接触している軸受44のZ軸方向における位置もサーボモータ41の駆動軸の回転に応じて変動する。軸受44のZ軸方向での位置変動に応じて、可動部46、塗布針ホルダ固定部47、塗布針ホルダ収納部48、および塗布針ホルダ収納部48に保持されている塗布針ホルダ20もZ軸方向に移動する。その結果、サーボモータ41を動作させることにより、塗布針21がZ軸方向に移動して、図9に示される第1状態と図10に示される第2状態とが切り替えられる。上記塗布機構14では、サーボモータ41の回転運動を塗布針21のZ軸方向における運動(上下運動)に変換することができるため、塗布針21を迅速かつ正確にZ軸方向において移動させることができる。
【0064】
図9に示される第1状態では、塗布針21は、その可動域において最も上方に配置される。このとき、塗布針21の先端部は、塗布材料容器22内に保持されている塗布材料70内に浸漬されている。第1状態では、軸受44の外輪がカム43のカム面の上端フラット領域に接している。
【0065】
図10に示される第2状態では、塗布針21はその可動域において最も下方に配置される。このとき、塗布針21の先端部には、捕捉抗体を含む塗布材料が保持されている。具体的には、塗布針21の先端部の端面および側面には、捕捉抗体を含む塗布材料が保持されている。塗布針21の先端部は、塗布材料容器22の底部に形成された孔を通り塗布材料容器22の底面から下向きに突出し、かつ担体6の上面よりも下方に押し込まれる。
【0066】
このように、サーボモータ41を動作させて上記第1状態から上記第2状態に切り替えることにより、担体6に凹部7が形成されると同時に、捕捉抗体が凹部7の底面7Aに塗布される。次に、サーボモータ41を動作させて上記第2状態から上記第1状態に切り替える。
【0067】
さらに、X軸テーブル11およびY軸テーブル12のみを動作させて第2に検出部3を形成すべき領域を塗布機構14の直下に配置した後、Z軸テーブル13を距離dだけ下降させた後、塗布機構14のサーボモータ41を動作させて上記第1状態から上記第2状態に切り替える。また、さらに上記第2状態から上記第1状態に切り替えた後、Z軸テーブル13を距離dだけ上昇させる。
【0068】
上記動作を連続して繰り返すことで、複数の検出部3が担体6の上面に形成される。
<作用効果>
実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100の作用効果を、従来のイムノクロマト検査キット(以下、単に比較例1とよぶ)との対比において説明する。比較例1は、検出部が平坦な平面上に形成されており、かつ標識抗体に由来する検出部での発色が目視にて確認されるように設けられている。そのため、比較例1では、目視判定で誤判定することのないよう十分な検出部の面積(例えば数mm以上)が必要であり、検出部に固定される高価な捕捉抗体の使用量を削減することは困難であった。その結果、比較例1では、製造コストの削減は困難であった。
【0069】
また、比較例1のように平坦な平面上に形成された検出部を微小化した場合、たとえば、顕微鏡などで検出部を拡大して標識抗体を確認する必要があるが、顕微鏡での微小な検出部を探索し、位置合わせすることは困難である。この対策として、キット上に目印を設け、そこから所定の距離に検出部を設ける方法が考えられる。しかしながら、この場合、目印を設ける設備が検出部を形成する設備とは別に必要になり、また工程も増えるため製造タクトを削減できず、低コスト化を図ることは難しい。
【0070】
これに対し、イムノクロマト検査キット100では、担体6に複数の凹部7が形成されており、各検出部3は1つの凹部7の底面7Aを含む。そのため、検出部3上の標識物質を電子顕微鏡を用いて直接確認する際に、担体6の上面と底面7Aとの間の距離に起因した焦点ずれが電子顕微鏡の顕微鏡画像で確認できるため、この焦点ずれを利用して電子顕微鏡の顕微鏡画像中において凹部7を探索できる。その結果、イムノクロマト検査キット100では、比較例1と比べて、各検出部3が微小化され得る。例えば、イムノクロマト検査キット100では、各検出部3のドット幅は塗布針21の先端径を小径化することで1mm未満にすることが可能である。つまり、イムノクロマト検査キット100では、各検出部3の面積が比較例1の各検出部の面積と比べて小さくすることが可能なため、各検出部3に固定される捕捉抗体の量が比較例1の各検出部に固定される捕捉抗体の量と比べて削減できる。その結果、イムノクロマト検査キット100の製造コストは、比較例1の製造コストと比べて削減することが可能である。
【0071】
また、イムノクロマト検査キット100では、比較例1とは異なり、検出部3を探索する際に用いる目印を別途設ける必要がなく、目印を設ける設備を検出部を形成する設備とは別に用意する必要がない。さらに、イムノクロマト検査キット100では、凹部7が検出部3と同時に形成され得るため、比較例1に目印を設ける場合と比べて、製造タクトを削減できる。
【0072】
さらに、当該画像の焦点を底面7Aに合わせることで、当該画像の焦点を検出部3に容易に合わせることができる。つまり、イムノクロマト検査キット100では、各検出部3が1つの凹部7の底面7Aを含まない場合と比べて、検出部3の探索に要する時間を短縮できる。
【0073】
さらに、イムノクロマト検査キット100によれば、検出部3を電子顕微鏡を用いて確認し、かつ電子顕微鏡画像中において検出部3に捕捉された標識抗体の数を計測することで、検体中の検出対象物を定量的に評価できる。
【0074】
上記イムノクロマト検査キット100では、各検出部の幅を100μm以下と微小な大きさにすることが可能である。このようなイムノクロマト検査キット100では、各検出部3に固定される捕捉抗体の量が比較例1の各検出部に固定される捕捉抗体の量と比べて大幅に削減されるため、イムノクロマト検査キット100の製造コストは比較例1の製造コストと比べて大幅に削減され得る。
【0075】
上記イムノクロマト検査キット100は、複数の検出部3を備える。このようなイムノクロマト検査キット100では、検出部3を1つのみ備えるイムノクロマト検査キットと比べて、複数の検出部3の標識物質を電子顕微鏡画像中において確認できるため、検査結果の信頼性が向上する。
【0076】
上記イムノクロマト検査キット100において、複数の検出部3は、展開方向Dに対して1次元的に配列されている。このようなイムノクロマト検査キット100では、複数の検出部3がランダムに配置されているイムノクロマト検査キットと比べて、検出対象物がすべての検出部3に効率よく流動して捕捉抗体と結合するため、安定した検査結果が得られる。
【0077】
上記イムノクロマト検査キット100において、複数の検出部3のうち隣り合う2つの前記検出部間の最短距離は、1mm未満である。このようなイムノクロマト検査キット100では、当該最短距離が1mm以上であるイムノクロマト検査キットと比べて、比較的小さい視野内にも複数の検出部3が観察され得るため、各検出部3が容易に探索され得る。
【0078】
実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100の製造方法の作用効果を、各検出部3をディスペンサを用いて形成する製法(以下、単に比較例2とよぶ)、および各検出部3をインクジェット方式により形成する製法(以下、単に比較例3とよぶ)との対比において説明する。
【0079】
比較例2,3では、微小な大きさで検出部3を形成するためには、ディスペンサまたはノズルの先端部の開口幅を小さくする必要がある。しかし、高粘度の塗布材料70が用いられる場合、塗布材料70を吐出することができず、目詰まりが発生する可能性がある。また、比較例3では、ピエゾ素子などを用いて瞬間的に容器内を高圧にして捕捉抗体を含む液体材料を吐出する方式では、吐出圧が高いために、該液体材料は担体6に着弾した時に拡がりやすく、検出部3の形状が安定しないなどの問題がある。
【0080】
これに対し、イムノクロマト検査キット100の製造方法では、微小な検出部3を形成するためには、塗布針21の先端径を小径化すればよいため、粘度によらず、比較例2、2のような目詰まりは発生しない。さらに上記製造方法では、担体6の上面に対する塗布針21の先端部のZ軸方向の位置を、Z軸テーブル13で精密に制御できるため、検出部3の大きさのばらつきを低減でき、イムノクロマト検査キット100を安定的に製造できる。
【0081】
また、比較例2では、液滴を塗布するために、ドット幅が1mm未満の検出部3を安定的に形成すること、特にドット幅が100μm未満の検出部3を安定的に形成すること、は困難である。
【0082】
これに対し、イムノクロマト検査キット100の製造方法では、塗布針21が用いられるため、各検出部3の平面外形状がドット状であり、かつ各検出部3の幅が1mm未満であるイムノクロマト検査キット100を容易にかつ安定的に製造できる。
【0083】
さらに、イムノクロマト検査キット100の製造方法では、塗布針21を用いて担体6に凹部7が形成されると同時に、捕捉抗体が凹部7の底面7Aに塗布されるため、1つの凹部7の底面7Aを含む検出部3の形成と捕捉抗体の塗布を1回の動作で行える。このため、検出部3の形成に伴うタクトタイムの増加はなく、製造コストが増加することもない。
【0084】
<変形例1>
実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100は、以下のような変形例を採り得る。
【0085】
検出領域tは、少なくとも1つの検出部3を含んでいればよい。
イムノクロマト検査キット100では、各検出部3が互いに同等の構成を備えているが、これに限られるものではない。イムノクロマト検査キット100では、各検出部3に固定された捕捉抗体の濃度は一定であるが、各検出部3に固定された捕捉抗体の濃度は互いに異なっていてもよい。例えば、展開方向Dと直交する方向において、一方の側から他方の側に向かうにつれて、徐々に捕捉抗体の濃度が低下するように設けられていてもよい。また、捕捉抗体の濃度が互いに異なる複数の検出部3からなる1組のパターンが、並んで配置されていてもよい。このような複数の検出部3は、塗布材料容器22に貯留された塗布材料中の捕捉抗体の濃度が互いに異なる複数の塗布機構14を用いることにより、容易に形成され得る。
【0086】
また、各検出部3の平面外形状、各検出部3のドット幅、隣り合う2つの検出部3間の距離、各凹部7の底面7Aの平面外形状、各底面7Aの最大幅、および各底面7Aの深さの少なくともいずれかが、異なっていてもよい。このような複数の検出部3は、複数種の塗布針21を用いることによって、あるいは複数種の塗布条件を用いることによって、容易に形成され得る。
【0087】
イムノクロマト検査キット100では、担体6の検出領域tに複数の凹部7が形成されており、かつ1つの検出部3が1つの凹部7の底面7Aを含んでいるが、これに限られるものではない。
【0088】
各検出部3は、各凹部7の底面7Aの全体と、壁面7Bの少なくとも一部とを含んでいてもよい。また、各検出部3は、各凹部7の底面7Aおよび壁面7Bの全体を含んでいてもよい。また、各検出部3は、各凹部7の底面7Aおよび壁面7Bの全体、ならびに担体6の上面のうち壁面7Bと連なる環状領域を含んでいてもよい。
【0089】
複数の検出部3は、図4に示される少なくとも1つの検出部3と、図11に示される少なくとも1つの検出部3とを含んでいてもよい。図11に示される複数の検出部3は、担体6の上面のみを含んでいる。このような検出部3は、上記製造方法において塗布針21の先端または先端に付着した塗布材料70が担体6の上面に接触した後、下方に押し込まれることなく上方に移動することにより、容易に形成され得る。
【0090】
図12に示されるように、イムノクロマト検査キット100では、複数の検出部3が展開方向Dに間隔を空けて配置されていてもよい。展開方向Dにおいて隣り合う2つの検出部3間の距離は、例えば展開方向Dと直交する方向において隣り合う2つの検出部3間の距離と等しい。
【0091】
イムノクロマト検査キット100の製造方法では、複数の検出部3を形成するために1つの塗布針21が用いられるが、複数の検出部3を形成するために複数の塗布針21が用いられてもよい。言い換えると、塗布装置は、複数の塗布機構14を備えていてもよい。
【0092】
また、塗布針21による塗布材料70の塗布工程における精度をより高めるために、塗布針21のZ軸方向への移動速度が、塗布針21の位置に応じて変更されてもよい。例えば、上記第1状態から上記第2状態に切り替える際に、上記第2状態が実現される手前で塗布針21の移動速度を低下させる。塗布針21の移動速度の低下は、サーボモータ41の回転速度を低下させることにより実現される。
【0093】
このような制御を行なうことにより、塗布針21が担体6に接触するときには塗布針21の移動速度が十分小さくなっているので、塗布針21の先端または先端に付着した塗布材料70と担体6との接触時間を長くすることができる。このため、担体6に塗布する捕捉抗体の量が増加し濃度を高めることができるため、検出対象物との抗原抗体反応をより安定させることができる。
【0094】
イムノクロマト検査キット100において、検体滴下部1およびコンジュゲート部2は、担体6とは別体とされた単一の多孔質部材上に形成されていてもよい。イムノクロマト検査キット100において、コンジュゲート部2は担体6上に形成されており、検体滴下部1は担体6とは別体とされた多孔質部材上に形成されていてもよい。イムノクロマト検査キット100において、吸収部5は、担体6上に形成されていてもよい。
【0095】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るイムノクロマト検査キット101は、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100と基本的に同様の構成を備えかつ同様の効果を奏するが、図13に示されるように複数の検出部3が第1検出部3Aおよび第2検出部3Bを含む点で、イムノクロマト検査キット100とは異なる。
【0096】
第1検出部3Aには、第1種の検出対象物と結合する性質を有する第1捕捉抗体が固定されている。第2検出部3Bには、第1種の検出対象物とは異なる第2種の検出対象物と結合する性質を有する第2捕捉抗体が固定されている。
【0097】
図13に示されるように、複数の検出部3は、例えば複数の第1検出部3Aおよび複数の第2検出部3Bを含む。複数の第1検出部3Aは、展開方向Dと直交する方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第1検出部3Aは、例えば1次元的に配列されている。複数の第2検出部3Bは、展開方向Dと直交する方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第2検出部3Bは、例えば1次元的に配列されている。
【0098】
複数の第1検出部3Aおよび複数の第2検出部3Bは、展開方向Dと直交する方向に間隔を空けて配置されている。第1検出部3Aと第2検出部3Bとの間の最短距離は、隣り合う2つの第1検出部3A間の最短距離、および隣り合う2つの第2検出部3B間の最短距離よりも長い。複数の第1検出部3Aおよび複数の第2検出部3Bは、例えば全体として1次元的に配列されている。
【0099】
第1検出部3Aおよび第2検出部3Bの各々は、実施の形態1における各検出部3と同様の構成を備えている。第1検出部3Aのドット幅は、例えば第2検出部3Bのドット幅と等しい。なお、第1検出部3Aのドット幅は、例えば第2検出部3Bのドット幅よりも狭くてもよいし、広くてもよい。
【0100】
検出領域tは、複数の第1検出部3Aが配列されている領域が第1検出領域t1と、複数の第2検出部3Bが配列されている領域が第2検出領域t2とに区分される。第1検出領域t1および第2検出領域t2は、展開方向Dと直交する方向に並んで配置されている。
【0101】
各第1検出部3Aは、各凹部7の底面7Aを含む。各第2検出部3Bは、各凹部7の底面7Aを含む。
【0102】
実施の形態2に係るイムノクロマト検査キット101によれば、単一の検体から、2種類の検出対象物をイムノクロマトグラフィーにより検出できる。
【0103】
イムノクロマト検査キット101は、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キットと同様に製造され得る。好ましくは、上記塗布装置は、担体6に第1捕捉抗体を塗布することにより第1検出部3Aを形成するための第1塗布機構14と、担体6に第2捕捉抗体を塗布することにより第2検出部3Bを形成するための第2塗布機構14とを備える。第1塗布機構14は、第1塗布針21と、第1捕捉抗体を含む塗布材料が貯留されている第1塗布材料容器22とを含む。第2塗布機構14は、第2塗布針21と、第2捕捉抗体を含む塗布材料が貯留されている第2塗布材料容器22とを含む。
【0104】
イムノクロマト検査キット101の製造方法において、第1塗布針21は、その先端部に第1捕捉抗体を保持している。第2塗布針21は、その先端部に第2捕捉抗体を保持している。複数の検出部3を形成する工程では、第1塗布針21を用いて第1捕捉抗体を担体6の第1領域に塗布することにより、第1検出部3Aが形成される。さらに、第2塗布針21を用いて第2捕捉抗体を担体6の第2領域に塗布することにより、第2検出部3Bが形成される。
【0105】
このような塗布装置を用いてイムノクロマト検査キット101を製造することで、1つの塗布機構14のみを備える1台の塗布装置を用いてイムノクロマト検査キット101を製造する場合と比べて製造工数を低減でき、また、1つの塗布機構14のみを備える複数台の塗布装置を用いてイムノクロマト検査キット101を製造する場合と比べて製造コストを低減できる。
【0106】
<変形例2>
実施の形態2に係るイムノクロマト検査キット101も、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100と同様の変形例を採り得る。
【0107】
さらに、イムノクロマト検査キット101は、以下のような変形例を採り得る。
複数の第1検出部3Aおよび複数の第2検出部3Bの各々は、交互に並んで配置されていてもよい。
【0108】
図14図16に示されるように、複数の検出部3は、第1検出部3Aおよび第2検出部3Bに加え、複数の第3検出部3Cをさらに含んでいてもよい。各第3検出部3Cには、第1種の検出対象物および第2種の検出対象物とは異なる第3種の検出対象物と結合する性質を有する第3捕捉抗体が固定されている。
【0109】
図14に示されるように、複数の第1検出部3A、複数の第2検出部3B、および複数の第3検出部3Cの各々は、例えば展開方向Dと直交する方向において1個ずつ交互に並んで配置されている。
【0110】
図15に示されるように、複数の第1検出部3A、複数の第2検出部3B、および複数の第3検出部3Cの各々は、例えば展開方向Dと直交する方向において複数個ずつ交互に並んで配置されている。この場合、隣り合う2つの第1検出部3A間の距離および隣り合う2つの第2検出部3B間の距離は、例えば隣り合う第1検出部3Aと第2検出部3B間の距離よりも短い。隣り合う2つの第2検出部3B間の距離および隣り合う2つの第3検出部3C間の距離は、例えば隣り合う第2検出部3Bと第3検出部3C間の距離よりも短い。
【0111】
図16に示されるように、複数の第1検出部3A、複数の第2検出部3B、および複数の第3検出部3Cの各々は、例えば展開方向Dにおいて1次元的に配列されている。さらに複数の第1検出部3A、複数の第2検出部3B、および複数の第3検出部3Cの各々は、展開方向Dと直交する方向において1個ずつ交互に並んで配置されている。展開方向Dと直交する方向において隣り合う第1検出部3Aと第2検出部3B間の距離は、例えば展開方向Dにおいて隣り合う2つの第1検出部3A間の距離および隣り合う2つの第2検出部3B間の距離よりも長い。展開方向Dと直交する方向において隣り合う第2検出部3Bと第3検出部3C間の距離は、例えば展開方向Dにおいて隣り合う2つの第2検出部3B間の距離および隣り合う2つの第3検出部3C間の距離よりも長い。
【0112】
図14図16に示される変形例では、1組の第1検出部3A、第2検出部3B、および第3検出部3Cにおいて、各検出部3の平面外形状、各検出部3のドット幅、隣り合う2つの検出部3間の距離、各凹部7の底面7Aの平面外形状、各底面7Aの最大幅、および各底面7Aの深さの少なくともいずれかが、互いに異なっていてもよい。
【0113】
例えば、第2検出部3Bのドット幅は、第1検出部3Aのドット幅より狭く、かつ第3検出部3Cのドット幅より広くてもよい。第2検出部3Bに含まれる底面7Aの最大幅は、第1検出部3Aに含まれる底面7Aの最大幅より狭く、かつ第3検出部3Cに含まれる底面7Aの最大幅より広くてもよい。
【0114】
第2検出部3Bの平面外形状が矩形状であって、第1検出部3Aおよび第3検出部3Cの各検出部3の平面外形状が円形状であってもよい。
【0115】
第2検出部3Bに含まれる底面7Aの深さは、第1検出部3Aに含まれる底面7Aの最大幅より浅く、かつ第3検出部3Cに含まれる底面7Aの最大幅より深くてもよい。
【0116】
第1検出部3Aと第2検出部3Bとの間の距離は、第2検出部3Bと第3検出部3Cとの間の距離、および第3検出部3Cと第1検出部3Aとの間の距離より長くてもよい。
【0117】
このような第1検出部3A、第2検出部3B、および第3検出部3Cは、複数種の塗布針21を用いることによって、あるいは複数種の塗布条件を用いることによって、容易に形成され得る。
【0118】
このようにすれば、1つの視野内において、第1検出部3A、第2検出部3B、および第3検出部3Cを容易に識別できる。
【0119】
(実施の形態3)
実施の形態3に係るイムノクロマト検査キット102は、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100と基本的に同様の構成を備えかつ同様の効果を奏するが、検体滴下部1およびコンジュゲート部2が担体6に形成されている点で、イムノクロマト検査キット100とは異なる。つまり、イムノクロマト検査キット102では、検体滴下部1、コンジュゲート部2、複数の検出部3、およびコントロール部4が、単一の多孔質部材(1つの担体6)の上面に形成されている。
【0120】
図17に示されるイムノクロマト検査キット102では、吸収部5も、上記担体6に形成されている。
【0121】
検体滴下部1は、担体6において検体が滴下される領域であり、展開方向Dの一方の側に配置されている。コンジュゲート部2は、担体6の上面に標識抗体が塗布された領域であり、展開方向Dにおいて検体滴下部1と検出領域tとの間に配置されている。吸収部5は、担体6において余剰の検体が吸収される領域であり、コントロール領域Cに対して展開方向Dの他方の側に配置されている。
【0122】
イムノクロマト検査キット102によれば、イムノクロマト検査キット100と比べて部品点数が削減されているため、イムノクロマト検査キット102の製造コストはイムノクロマト検査キット100の製造コストと比べて削減され得る。
【0123】
<変形例3>
実施の形態3に係るイムノクロマト検査キット102も、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100および実施の形態2に係るイムノクロマト検査キット101と同様の変形例を採り得る。
【0124】
(実施の形態4)
実施の形態4に係るイムノクロマト検査キット103は、実施の形態1に係るイムノクロマト検査キット100と基本的に同様の構成を備えかつ同様の効果を奏するが、図18に示されるように複数のイムノクロマト検査キット100A~100Cが展開方向Dと直交する方向に連結された連結体として構成されている点で、イムノクロマト検査キット100とは異なる。イムノクロマト検査キット100A~100Cの各々の検出対象物は、互いに異なる。
【0125】
イムノクロマト検査キット100A~100Cの各々は、任意の方法により互いに固定されていればよいが、例えば接着されている。
【0126】
実施の形態4に係るイムノクロマト検査キット103によれば、連結体として構成された1つのイムノクロマト検査キット103を用いて、3種類の検出対象物をイムノクロマトグラフィーにより検出できる。
【0127】
(実施例1)
本実施例では、イムノクロマト検査キット100の検出部3の電子顕微鏡を用いて観察した結果について説明する。
【0128】
<試料>
担体6はニトロセルロースからなる多孔質部材とした。各検出部3は、先端部の形状が円錐台形状でありかつ先端径が50μmである塗布針21を用いて、凹部7の底面7Aを含むように形成された。
【0129】
<観察方法>
図19は、上記試料の検出部3を顕微鏡を用いて観察することにより得られた顕微鏡画像である。
【0130】
図19に示されるように、顕微鏡画像では凹部7に起因した焦点ずれにより、背景と検出部3との間に差異が生じるため、凹部7の底面7Aを容易に探索でき、該底面7Aを含む微小な検出部3を容易に探索できた。
【0131】
(実施例2)
本実施例では、イムノクロマト検査キット100を用いてイムノクロマトグラフィーを行った結果について説明する。
【0132】
<試料>
検体滴下部1およびコンジュゲート部2は、グラスファイバーパッドとした。担体6はニトロセルロースからなる多孔質部材とした。各検出部3は、先端部の形状が円錐台形状でありかつ先端径が50μmである塗布針21を用いて、凹部7の底面7Aを含むように形成された。
【0133】
<検査方法>
検査方法は、上述したイムノクロマト検査キットの検査方法と同等とした。
【0134】
図20は、上記試料の検出部3を電子顕微鏡を用いて観察することにより得られた電子顕微鏡画像である。
【0135】
図20に示されるように、電子顕微鏡画像では凹部7に起因した明暗のコントラストが生じるため、凹部7の底面7Aを容易に探索でき、該底面7Aを含む微小な検出部3を容易に探索できた。
【0136】
また、図21は、補助液が滴下される前の検出部3を観察した電子顕微鏡画像であり、図22は、補助液が滴下された後の検出部3を観察した電子顕微鏡画像である。
【0137】
図22に示される画像では、図21に示される画像と比べて、像のエッジが明確であることが確認された。
【0138】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
1 検体滴下部、2 コンジュゲート部、3 検出部、3A 第1検出部、3B 第2検出部、3C 第3検出部、4 コントロール部、5 吸収部、6 担体、7 凹部、7A 底面、7B 壁面、11 X軸テーブル、12 Y軸テーブル、13 Z軸テーブル、14 塗布機構、15 観察光学系、16 カメラ、17 操作パネル、18 モニタ、19 制御用コンピュータ、20 塗布針ホルダ、21 塗布針、22 塗布材料容器、41 サーボモータ、42 架台、43 カム、44 軸受、45 カム連結板、46 可動部、47 塗布針ホルダ固定部、48 塗布針ホルダ収納部、49 リニアガイド、50 バネ、51,52 固定ピン、70 塗布材料、100,100A,100C,101,102,103 イムノクロマト検査キット。
図1
図2
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