IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新工業株式会社の特許一覧

特開2022-74927アスファルト防水工事における溶融アスファルト運搬容器
<>
  • 特開-アスファルト防水工事における溶融アスファルト運搬容器 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074927
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】アスファルト防水工事における溶融アスファルト運搬容器
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/02 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E04F21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185365
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000226714
【氏名又は名称】日新工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】関原 克章
(72)【発明者】
【氏名】相臺 志浩
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属製の溶融アスファルト運搬容器における溶融アスファルトの付着堆積を防止して、金属製運搬容器に付着堆積したアスファルトを溶解釜に浸漬して溶かして容器を空の状態に戻す従来の作業に伴う危険を無くし、かつアスファルト防水工事の効率化を図る溶融アスファルト運搬容器を提供する。
【解決手段】金属製容器1の内側に、ポリビニルアルコール水溶液に充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型用シリコンで離型処理されたクラフト紙によって金属製容器1の内形・内寸にあわせて形成されたクラフト紙製内容器2をセットし、このクラフト紙製内容器2内に溶融アスファルトを入れて運搬する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製溶融アスファルト運搬容器の内側に、前記金属製容器の内形・内寸に合わせて形成されたクラフト紙製内容器をセットし、このクラフト紙製内容器内に溶融アスファルトを注入して運搬するようにしたことを特徴とする溶融アスファルト運搬容器。
【請求項2】
前記クラフト紙製内容器は、溶融アスファルトの接する内側がポリビニルアルコール水溶液に充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型剤で離型処理されたことを特徴とする請求項1に記載の溶融アスファルト運搬容器。
【請求項3】
前記クラフト紙が目付100~200g/mのものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶融アスファルト運搬容器。
【請求項4】
前記クラフト紙製内容器の上部が金属製溶融アスファルト運搬容器の上端部から延設され、かつ延設部が金属製溶融アスファルト運搬容器の器外面側に屈曲されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の溶融アスファルト運搬容器。
【請求項5】
前記クラフト紙製内容器が多重のクラフト紙製容器であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の溶融アスファルト運搬容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート建築物屋上等におけるアスファルト防水工事で使用される溶融アスファルト運搬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物屋上等におけるアスファルト防水工事においては、まず固形の防水工事用アスファルトを建築現場で専用の溶解釜で200~280℃に加熱溶融し、次いで溶融した状態のアスファルトを専用の金属製運搬容器に小分けして入れて運び、該金属製運搬容器から柄杓などで溶融アスファルトを汲み出して屋上床面に撒き、その上にルーフィング類を張り付けて防水層を形成するという工程で行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記において、金属製溶融アスファルト運搬容器に小分けされた溶融アスファルトは徐々に冷えて固化し、金属製容器の内壁に付着堆積していく。
そしてこの金属製容器に付着堆積したアスファルトを除去するために、金属製容器を溶解釜の中の溶融アスファルト内に浸漬して溶かし、容器を空の状態に戻す作業が一般的に行われてきているが、この作業は原始的でかつ作業に危険が伴う。
またこの作業によって金属製容器の外面にもアスファルトが付着し汚れてしまう難点があった。
本発明は、上記背景技術に記載の難点を解消し、金属製容器の内外面にアスファルトが付着堆積することのない溶融アスファルト運搬容器を提供し、防水工事に伴う作業の危険性を除去するとともに、同作業の効率化を図ることを課題として行ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記課題を下記の手段により解決した。
[1]金属製溶融アスファルト運搬容器の内側に、前記金属製容器の内形・内寸に合わせて形成された紙製、好ましくはクラフト紙製の内容器をセットし、このクラフト紙製内容器内に溶融アスファルトを注入して運搬するようにしたことを特徴とする溶融アスファルト運搬容器。
[2]前記クラフト紙製内容器は、溶融アスファルトの接する内側がポリビニルアルコール水溶液に無機材料質充填材,好ましくは乾燥粘土質充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型剤で離型処理されたことを特徴とする[1]に記載の溶融アスファルト運搬容器。
[3]前記クラフト紙が目付100~200g/mのものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の溶融アスファルト運搬容器。
[4]前記クラフト紙製内容器の上部が金属製溶融アスファルト運搬容器の上端部から延設され、かつ延設部が金属製溶融アスファルト運搬容器の器外面側に屈曲されてなることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の押有アスファルト運搬容器。
[5]前記クラフト紙製内容器が多重のクラフト紙製容器であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載の熔融アスファルト運搬容器。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって下記の効果が実現できる。
<1>金属製溶融アスファルト運搬容器の内側に、前記金属製容器の内形・内寸に合わせて形成されたクラフト紙製内容器をセットし、このクラフト紙製内容器内に熔融アスファルトを注入して運搬するので、溶融アスファルトが徐々に冷却してもクラフト紙製内容器の内面に付着堆積して金属製容器に影響を与えることはなく、かつクラフト紙製内容器を金属製容器から取り外して新しいものと交換するだけでアスファルト防水工事が迅速に継続できる。
よって,作業効率に向上が図れ、また、従来の金属製容器を溶解釜に浸漬して付着堆積したアスファルトを溶融除去する作業の危険性が排除できる。
<2>金属製溶融アスファルト運搬容器の内側に、ポリビニルアルコール水溶液に充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型剤、好ましくは離型用シリコンで離型処理されたクラフト紙によって前記金属製容器の内寸に合わせて形成されたクラフト紙製内容器をセットし、このクラフト紙製内容器内に溶融アスファルトを入れて運搬するので、溶融アスファルトが徐々に冷却してもクラフト紙製内容器の内面に付着堆積し金属製容器に影響を与えることなく、クラフト紙製内容器を金属製容器から取り外して新しいものと交換するだけでアスファルト防止工事が迅速に継続できる利便性によって作業効率の向上が図れる
<3>前記クラフト紙製内容器は、溶融アスファルトと接する内側がポリビニルアルコール水溶液に充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型用シリコンで離型処理されて形成されているので、該クラフト紙製内容器に溶融アスファルトを入れてもクラフト紙への浸透は少なく、またクラフト紙に浸透した溶融アスファルトの金属製容器への浸み出しが防止され、クラフト紙製内容器の金属製容器からの取り出しも容易に行え、この面からも作業の効率化が図れる。
<4>前記クラフト紙製内容器の上部が金属製溶融アスファルト運搬容器の上端部から延設され、かつ延設部が金属製容器の器外面側に屈曲されているので、クラフト紙製内容器を金属製容器から取り外す際に、同屈曲部の先端縁部を手指で支えて持ち上げれば、容易に取り外すことができる。
そして、金属製容器外面の溶融アスファルトによる汚れも減少する。
<5>前記クラフト紙製内容器が多重のクラフト紙製内容器であるので、金属製容器内に一度挿入セットしておけば、度々クラフト紙製内容器を入れ替える作業がなく、作業効率が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の溶融アスファルト運搬容器の構成図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明を実施するための形態を図1に基づいて説明する。
図1の(a)~(d)図は本発明の溶融アスファルト運搬容器を製作する手順を示す工程説明図である。
(a)図は金属製容器としての18リットル缶1を示し、(b)図は内側にポリビニルアルコール水溶液に充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型剤で処理されたクラフト紙で前記金属容器1の内形(内側の形状)・内寸合わせて形成されたクラフト紙製内容器2を示す。
(c)図は前記金属製容器の18リットル缶1にクラフト紙製内容器2を挿入した状態を示し、(d)図は18リットル缶1にクラフト紙製内容器2を挿入・セットし終えた時、18リットル缶1の上部にはみ出したクラフト紙製内容器の延設部2’の4隅に切り込みを入れて金属製容器の外側に折り曲げた状態の完成図を示し、溶融アスファルト運搬時や撒布時に溶融アスファルトが前記18リットル缶1の外面とクラフト紙製内容器2の折り曲げられた円設部2’間の隙間に入り込むのを防止している。
なお、18リットル缶1には運搬時に使用する持ち手3を設けている。
【0008】
本発明を実施するにあたり重要となるクラフト紙の目付の選定について検討した実験結果に基づいて説明する。
実験は70g/m、100g/m、150g/m、200g/m、250g/mの無処理のクラフト紙の取り扱い易さと、溶融アスファルトの浸透具合との2項目について行った。
その結果目付70g/mのものは薄くて強度不足が感じられ、250g/mのものは紙質が堅く取り扱いに難があると思われ、100~200g/mのものが良好と判断した。
また、溶融アスファルトの浸透具合においては、いずれの目付のクラフト紙とも250℃の溶融アスファルトを入れると、時間の経過とともに溶融アスファルトがクラフト紙に浸透して金属製容器に付着し、クラフト紙製内容器の取り外しが難くなった。
【0009】
上記実験結果に基づき、溶融アスファルトの浸透及び付着を抑制し、金属製容器からの取り出しを容易にするために、クラフト紙にポリビニルアルコール水溶液に充填材(クレー)を混合したものを塗布乾燥後、離型用シリコンによる離型処理を施した。
その結果溶融アスファルトのクラフト紙への浸透が少なく、金属製容器からの取り出しが容易なクラフト紙製内容器を備えた溶融アスファルト運搬容器を提供することができた。
【符号の説明】
【0010】
1:金属製容器(18リットル缶)
2:クラフト紙製内容器
2’:クラフト紙製内容器の延設部
3:持ち手
図1