(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074939
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】空港用地上支援車両及び空港用地上支援車両の改造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20220511BHJP
B64F 1/32 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B62D21/00 A
B64F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185385
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】上村 大樹
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA21
3D203AA31
3D203BA15
3D203BA16
3D203DA02
3D203DA08
3D203DB05
3D203DB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンジン駆動式車両から電動式車両への改造、及び、電動式車両からエンジン駆動式車両への改造を容易にする。
【解決手段】貨物を移動させるプラットホームを備える空港地上支援車両であって、駆動輪11a及びプラットホームが設けられた車体フレーム10と、車体フレーム10の第1所定取付部T1に対して着脱可能に構成されたエンジンフレーム30とを有しており、エンジンフレーム30は、駆動輪11a及びプラットホームを動作させるために使用されるエンジン32、エンジン32に接続される吸気配管33aと排気配管33b及びエンジン32により駆動されるピストンポンプ34が一体に設けられたエンジンユニットを構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物を移動させるプラットホームを備える空港地上支援車両であって、
駆動輪及び前記プラットホームが設けられた車体フレームと、
前記車体フレームの第1所定取付部に対して着脱可能に構成されたエンジンフレームとを有しており、
前記エンジンフレームは、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるエンジン、前記エンジンに接続される吸気配管と排気配管及び前記エンジンにより駆動されるピストンポンプが一体に設けられたエンジンユニットを構成することを特徴とする空港用地上支援車両。
【請求項2】
前記車体フレームは、前記第1所定取付部と第2所定取付部とを備え、
前記第1所定取付部は、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるバッテリが設けられたバッテリフレームが着脱可能に構成されており、
前記第1所定取付部に対して前記エンジンフレームが取り付けられた場合、前記第2所定取付部には、燃料タンクが取り付けられるとともに、
前記第1所定取付部に対して前記バッテリフレームが取り付けられた場合、前記第2所定取付部には、電動モータ及び前記電動モータにより駆動されるピストンポンプが取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の空港用地上支援車両。
【請求項3】
前記車体フレームは、
前記駆動輪を駆動するために使用される油圧走行モータと、
前記プラットホームを昇降移動させるために使用されるシリンダと、
前記油圧走行モータ及び前記シリンダに対して作動油を供給する油圧ユニットとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の空港用地上支援車両。
【請求項4】
前記第1所定取付部は、前記車両の前端部に設けられることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載空港用地上支援車両。
【請求項5】
前記バッテリフレームは、前記バッテリを移動させるために使用されるローラを有していることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載空港用地上支援車両。
【請求項6】
貨物を移動させるプラットホームを備え、駆動輪及び前記プラットホームが設けられた車体フレームと、前記車体フレームの第1所定取付部に対して着脱可能に構成されたエンジンフレームとを有する空港地上支援車両の改造方法であって、
前記車体フレームから、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるエンジン、前記エンジンに接続される吸気配管と排気配管及び前記エンジンにより駆動されるピストンポンプが一体に設けられたエンジンフレームを取り外す第1工程と、
前記第1工程において前記エンジンフレームが取り外された後、前記第1所定取付部に対して、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるバッテリが設けられたバッテリフレームを取り付ける第2工程とを備えることを特徴とする空港用地上支援車両の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港などで使用され、航空機内の貨物室との間で貨物を搬出入可能な空港用地上支援車両及び空港用地上支援車両の改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、航空機と貨物トレーラとの間においてコンテナやパレット・手荷物・機内食などの航空貨物(貨物)の搬出入を行う場合に、空港用地上支援車両が使用されている。空港用地上支援車両は、例えばハイリフトローダであり、自走可能な車両と、車両に設けられて貨物を所定方向に移動させるプラットホームとを備えており、航空機の機体の胴部に設けられた搬出入用ドア(後部搬出入用ドアや前部搬出入用ドア)にプラットホームの先端部を接近させた位置に停車した状態で、搬出入用ドアによって開閉可能な開口ゲートを通じて、プラットホーム上と機体内の貨物室との間で貨物を搬出入するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、エンジン駆動式の空港用地上支援車両が使用されていたが、バッテリをエネルギー源とした電動式車両へと変更して環境面に優れた車両の開発が求められる。しかし、従来のエンジン駆動式車両を電動式車両へと改造するには、車体構造を大幅に変えるための切断や溶接などの作業が発生し、容易に改造するのは困難である。
【0005】
そこで本発明は、エンジン駆動式車両から電動式車両への改造、及び、電動式車両からエンジン駆動式車両への改造を容易にする空港用地上支援車両及び空港用地上支援車両の改造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る空港用地上支援車両は、貨物を移動させるプラットホームを備える空港地上支援車両であって、駆動輪及び前記プラットホームが設けられた車体フレームと、前記車体フレームの第1所定取付部に対して着脱可能に構成されたエンジンフレームとを有しており、前記エンジンフレームは、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるエンジン、前記エンジンに接続される吸気配管と排気配管及び前記エンジンにより駆動されるピストンポンプが一体に設けられたエンジンユニットを構成することを特徴とする。
【0007】
これにより、本発明に係る空港用地上支援車両では、エンジン駆動式車両で駆動輪及びプラットホームを動作させるために使用されるエンジンなどの部品が一体にユニット化されたエンジンフレームが、車体フレームに対して着脱可能に構成される。そのため、エンジン駆動式の空港用地上支援車両を電動式車両へと改造する際、及び、電動式の空港用地上支援車両をエンジン駆動式車両へと改造する際に、車体構造を大幅に変えるための切断や溶接などの作業が発生しないため、改造が容易である。
【0008】
本発明に係る空港用地上支援車両において、前記車体フレームは、前記第1所定取付部と第2所定取付部とを備え、前記第1所定取付部は、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるバッテリが設けられたバッテリフレームが着脱可能に構成されており、前記第1所定取付部に対して前記エンジンフレームが取り付けられた場合、前記第2所定取付部には、燃料タンクが取り付けられるとともに、前記第1所定取付部に対して前記バッテリフレームが取り付けられた場合、前記第2所定取付部には、電動モータ及び前記電動モータにより駆動されるピストンポンプが取り付けられることを特徴とする。
【0009】
これにより、本発明に係る空港用地上支援車両では、エンジン駆動式車両を電動式車両へ改造する場合、大容積のバッテリが必要となり、バッテリが設けられたバッテリフレームは、エンジンフレームが搭載されていた第1所定取付部に搭載されるが、その際、電動モータ及びそれに駆動されるピストンポンプが、エンジン駆動式車両において燃料タンクが搭載されていた第2所定取付部に搭載される。これにより、電動式の車両において、駆動輪及びプラットホームを適正に動作させることができる。
【0010】
本発明に係る空港用地上支援車両において、前記車体フレームは、前記駆動輪を駆動するために使用される油圧走行モータと、前記プラットホームを昇降移動させるために使用されるシリンダと、前記油圧走行モータ及び前記シリンダに対して作動油を供給する油圧ユニットとを有することを特徴とする。
【0011】
これにより、本発明に係る空港用地上支援車両では、駆動輪及びプラットホームが何れも油圧ユニットから供給される作動油により駆動される。そのため、エンジン駆動式の空港用地上支援車両から電動式車両へ改造する際に、油圧ユニットに対して作動油を供給するピストンポンプの位置が変わったとしても、ピストンポンプと油圧ユニットとを配管で接続することにより油圧ユニットを適正に駆動することが可能であるため、改造が容易である。
【0012】
本発明に係る空港用地上支援車両において、前記バッテリフレームは、前記バッテリを移動させるために使用されるローラを有していることを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明に係る空港用地上支援車両では、大型のバッテリでもバッテリフレーム上を移動させやすくなる。そのため、例えばバッテリフレームにある充電がなくなったバッテリを充電されたバッテリに容易に交換することができる。
【0014】
本発明に係る空港用地上支援車両において、前記車体フレームの第1所定取付部は、前記車両の前端部に設けられることを特徴とする。
【0015】
これにより、本発明に係る空港用地上支援車両では、バッテリは日常的または稼働毎に点検が必要な機器であるが、バッテリフレームが車体フレームの前端部に対して取り付け及び取り外し可能に構成されているため、バッテリのメンテナンス作業をスムーズに行うことができる。また、バッテリの充電がなくなった際に、充電されたバッテリに容易に交換することができる。
【0016】
本発明に係る空港用地上支援車両の改造方法は、貨物を移動させるプラットホームを備え、駆動輪及び前記プラットホームが設けられた車体フレームと、前記車体フレームの第1所定取付部に対して着脱可能に構成されたエンジンフレームとを有する空港地上支援車両の改造方法であって、前記車体フレームから、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるエンジン、前記エンジンに接続される吸気配管と排気配管及び前記エンジンにより駆動されるピストンポンプが一体に設けられたエンジンフレームを取り外す第1工程と、前記第1工程において前記エンジンフレームが取り外された後、前記第1所定取付部に対して、前記駆動輪及び前記プラットホームを動作させるために使用されるバッテリが設けられたバッテリフレームを取り付ける第2工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、本発明に係る空港用地上支援車両の改造方法では、エンジン駆動式車両で駆動輪及びプラットホームを動作させるために使用されるエンジンなどの部品が一体にユニット化されたエンジンフレームを、車体フレームから取り外した後、電動式車両で駆動輪及びプラットホームを動作させるために使用されるバッテリが設けられたバッテリフレームを車体フレームに取り付けることにより、エンジン駆動式の空港用地上支援車両を電動式車両へと容易に改造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、エンジン駆動式車両から電動式車両への改造、及び、電動式車両からエンジン駆動式車両への改造を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る空港用地上支援車両の側面模式図である。
【
図2】エンジン駆動式の車両の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、エンジンフレームの正面図、平面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、エンジンフレームが車体フレームに固定された状態の正面図、平面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、バッテリフレームの正面図、平面図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、バッテリフレームが車両の車体フレームに固定された状態の正面図、平面図である。
【
図8】エンジン駆動式の車両及び電動式の車両の構成を示す図である。
【
図9】エンジン駆動式の空港用地上支援車両を電動式の車両へ改造する際の手順を示すフローチャートである。
【
図10】エンジン駆動式の空港用地上支援車両を電動式の車両へ改造する際の方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
以下、本発明の実施形態における空港用地上支援車両1について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
空港用地上支援車両1は、
図1に示すように、自走可能な車両2と、車両2の前部に設けた前部プラットホーム3と、車両2の後部に設けた後部プラットホーム4とを備え、前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4によって、駐機中の機体との間で貨物を搬出入可能に構成したものである。以下の説明では、車両2の前後方向(車両2の進退方向と同じ方向)に直交する方向を「幅方向」とする。
【0023】
車両2は、
図1及び
図2に示すように、車体フレーム10を有している。車体フレーム10には、2つの駆動輪11a及び前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4が設けられている。前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4は、リフトシザースリンク機構5の伸縮動作に伴って昇降動作可能なものである。リフトシザースリンク機構5は、シリンダ5a(
図8参照)を有しており、シリンダ5aに作動油が供給されることにより駆動される。
【0024】
図2では、車両2の前部プラットホーム3の下にある車体フレーム10の前部10aが図示されており、車両2の前端部が図面下部に図示される。なお、以下の図において、車両2の左側面に対応した部分を左端部、車両2の右側面に対応した部分を右端部として説明する。
【0025】
車体フレーム10の前部10aの前端部にある第1所定取付部T1には、エンジンフレーム30が配置される。
【0026】
車体フレーム10の前部10aの中央部には、ドライブアクスル11が配置される。ドライブアクスル11は、2つの駆動輪11aに接続されるとともに、油圧走行モータ12に接続される。油圧走行モータ12は、ドライブアクスル11を介して2つの駆動輪11aを駆動する。車両2は、2つの駆動輪11aが駆動されることにより自走可能に構成される。
【0027】
車体フレーム10の前部10aの後端部には、燃料を収容する燃料タンク13が配置される。燃料タンク13は、燃料タンクフレーム13aに取り付けバンドにより固定され、燃料タンクフレーム13aが、車体フレーム10の左端部にある第2所定取付部T2に対してボルトにより固定される。
【0028】
車体フレーム10の前部10aの右端部には、油圧ユニット16が配置され、車体フレーム10の前部10aの中央部には、作動油を収容する作動油タンク18が配置される。
【0029】
本実施形態において、空港用地上支援車両1は、エンジン駆動式に構成されるが、電動式車両への改造が行われる場合について説明する。
【0030】
まず、
図2~
図4に基づいて、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1について説明する。
【0031】
車体フレーム10の前端部には、エンジンフレーム30が搭載されている。エンジンフレーム30には、車両2をエンジン駆動式とするための部材(例えばエンジン32など)が一体に設けられている。
【0032】
図3は、車体フレーム10から取り外されたエンジンフレーム30を示し、
図4は、エンジンフレーム30が車体フレーム10に固定された状態を示している。
【0033】
エンジンフレーム30は、車両2の車体フレーム10の前端部にある第1所定取付部T1に配置された状態で、車体フレーム10に対して複数のボルト10tにより固定される。
【0034】
エンジンフレーム30は、
図3に示すように、第1所定取付部T1の幅と略同一の幅を有する矩形枠状の取付フレーム31を有している。取付フレーム31の内側には、車両2の幅方向に離れて配置された3つの支持フレーム31aが取り付けられている。2つの支持フレーム31aの上面には、エンジンマウント32aを介して、エンジン32が取り付けられる。エンジン32には、エンジン32への吸気が通過する吸気配管33aと、エンジン32からの排気が通過する排気配管33bが接続されるとともに、ピストンポンプ34が接続される。排気配管33bには、サイレンサ35aが取り付けられる。取付フレーム31の左端部には、ラジエータ35bが取り付けられ、取付フレーム31の前端部には、バッテリ35cが取り付けられる。
【0035】
エンジンフレーム30が車体フレーム10の第1所定取付部T1に搭載される際、取付フレーム31の幅方向両端部が、車体フレーム10の前端部の幅方向両端部下端から内側に向かって突出するようにそれぞれ形成された突出部上に配置される。そのとき、取付フレーム31の奥面に形成された穴部が、車体フレーム10の奥部に形成されたボス部に係止される。このように、取付フレーム31が幅方向両端部及び奥部の3か所で支持された状態で、取付フレーム31の両端部が車体フレーム10の下端部に固定されると、
図4に示すように、エンジン32及びピストンポンプ34が車両2の前端部に配置される。車体フレーム10の右端部には、油圧ユニット16が取り付けられており、油圧ユニット16は、エンジン32及びピストンポンプ34の横方向に配置される。エンジンフレーム30が車体フレーム10の第1所定取付部T1に配置された状態で、排気配管33bの先端部に取り付けられたエンドパイプ36が取り付けバンドにより車体フレーム10に接続される。
【0036】
エンジン駆動式の空港用地上支援車両1において、ピストンポンプ34は、第1配管51により油圧ユニット16に接続されるとともに、第2配管52により作動油タンク18に接続される。エンジン32は、第3配管53により燃料タンク13に接続される。油圧走行モータ12は、第4配管54により油圧ユニット16に接続されるとともに、第5配管55により作動油タンク18に接続される。
【0037】
エンジンフレーム30が搭載されたエンジン駆動式の車両2では、
図8に示すように、燃料タンク13から燃料がエンジン32に供給されてエンジン32が回転駆動される。すると、エンジン32の回転によりピストンポンプ34から油圧ユニット16に作動油が供給され、油圧ユニット16から油圧走行モータ12に作動油が供給されることにより、駆動輪11aを駆動させて走行することができる。また、油圧ユニット16からシリンダ5aに作動油が供給されることにより、前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4を昇降移動させることができる。さらに、油圧ユニット16は、プラットフォームに設置された搬送ローラ(図示省略)を回転させて、プラットフォーム上で貨物を移動させて貨物を搬送することができる。
【0038】
図5~
図7に基づいて、電動式に改造された空港用地上支援車両1について説明する。
【0039】
電動式に改造された空港用地上支援車両1では、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1においてエンジンフレーム30が搭載されていた車体フレーム10の前端部にある第1所定取付部T1には、バッテリフレーム60が搭載される。
【0040】
図6は、車体フレーム10から取り外されたバッテリフレーム60を示し、
図7は、バッテリフレーム60が車体フレーム10に固定された状態を示している。
【0041】
バッテリフレーム60には、車両2を電動式とするための部材(例えばバッテリ65など)が設けられている。電動式の車両に改造する際、車体フレーム10に搭載されるバッテリフレーム60には、通常、充電されたバッテリ65が使用されるが、バッテリフレーム60を車体フレーム10に搭載した後で充電してもよい。なお、電動式の車両に改造した後で、バッテリ65の充電がなくなった際に、そのバッテリ65を充電されたバッテリ65に交換される場合がある。
【0042】
バッテリフレーム60は、エンジンフレーム30と同様にして、車両2の車体フレーム10の前端部にある第1所定取付部T1に配置された状態で、車体フレーム10に対して複数のボルト10tにより固定される。
【0043】
バッテリフレーム60は、
図6に示すように、第1所定取付部T1の幅と略同一の幅を有する矩形枠状の取付フレーム61を有している。取付フレーム61は、上述した取付フレーム31と略同一の形状である。取付フレーム61の内側には、車両2の幅方向に離れて配置された1つの支持フレーム61aと2つのローラ列62とが取り付けられている。2つのローラ列62上には、直方体形状のバッテリ65が配置されている。ローラ列62は、奥行方向に複数配列されたローラ62aをそれぞれ有しており、複数のローラ62aを回転させることにより、バッテリフレーム60に載置されるバッテリ65を奥行方向に移動可能になっている。
【0044】
バッテリフレーム60が車体フレーム10の第1所定取付部T1に搭載される際、エンジンフレーム30が車体フレーム10の第1所定取付部T1に搭載される場合と同様に、取付フレーム61の幅方向両端部が、車体フレーム10の前端部の幅方向両端部下端から内側に向かって突出するようにそれぞれ形成された突出部上に配置される。そのとき、取付フレーム61の奥面に形成された穴部が、車体フレーム10の奥部に形成されたボス部に係止される。このように、取付フレーム61が幅方向両端部及び奥部の3か所で支持された状態で、取付フレーム61の両端部が車体フレーム10の下端部に固定されると、
図7に示すように、バッテリ65が車両2の前端部に配置される。車両2の車体フレーム10の左端部には、油圧ユニット16が取り付けられており、油圧ユニット16は、バッテリ65の左方に配置される。
【0045】
また、電動式に改造された空港用地上支援車両1では、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1において、燃料タンク13が搭載された車体フレーム10の後端部の第2所定取付部T2には、電動モータ132と、電動モータ132に接続されたピストンポンプ34が搭載される。ピストンポンプ34が接続された電動モータ132は、車体フレーム10の左端部にある第2所定取付部T2に配置された状態で、車体フレーム10に対してボルトにより固定される。
【0046】
電動式の空港用地上支援車両1において、ピストンポンプ34は、第6配管56により油圧ユニット16に接続されるとともに、第7配管57により作動油タンク18に接続される。電動モータ132は、配線58によりバッテリ65に接続される。油圧走行モータ12は、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1と同様に、第4配管54により油圧ユニット16に接続されるとともに、第5配管55により作動油タンク18に接続される。
【0047】
バッテリフレーム60が搭載された電動式の車両2では、
図8に示すように、バッテリ65から電力が電動モータ132に供給されて電動モータ132が回転駆動される。すると、電動モータ132の回転によりピストンポンプ34から油圧ユニット16に作動油が供給され、油圧ユニット16から油圧走行モータ12に作動油が供給されることにより、駆動輪11aを駆動させて走行することができる。また、油圧ユニット16からシリンダ5aに作動油が供給されることにより、前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4を昇降移動させることができる。さらに、油圧ユニット16は、プラットフォームに設置された搬送ローラ(図示省略)を回転させて、プラットフォーム上で貨物を移動させて貨物を搬送することができる。
【0048】
エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式の車両へ改造する際の手順について、
図9に基づいて説明する。
【0049】
(ステップS1)
エンジン駆動式の空港用地上支援車両1において、エンジン制御のための配線をエンジン32から取り外した後、ピストンポンプ34と油圧ユニット16とを接続する第1配管51を取り外す。
【0050】
(ステップS2)
ピストンポンプ34と作動油タンク18とを接続する第2配管52を取り外す。
【0051】
(ステップS3)
エンジン32と燃料タンク13とを接続する第3配管53を取り外す。
【0052】
(ステップS4)
燃料タンク13を車体フレーム10の第2所定取付部T2から取り外す。
【0053】
(ステップS5)
エンジン32に接続された排気配管33bの先端部に取り付けられたエンドパイプ36を車体フレーム10から取り外す。
【0054】
(ステップS6)
エンジンフレーム30を車体フレーム10の第1所定取付部T1から取り外した後、ピストンポンプ34をエンジン32から取り外す。
【0055】
(ステップS7)
ピストンポンプ34を電動モータ132に接続する。
【0056】
(ステップS8)
ピストンポンプ34を接続した電動モータ132を車体フレーム10の第2所定取付部T2に取り付ける。
【0057】
(ステップS9)
ピストンポンプ34と油圧ユニット16とを第6配管56により接続する。
【0058】
(ステップS10)
ピストンポンプ34と作動油タンク18とを第7配管57により接続する。
【0059】
(ステップS11)
バッテリフレーム60を車体フレーム10の第1所定取付部T1に取り付ける。
【0060】
(ステップS12)
バッテリ65と電動モータ132とを配線58により接続する。
【0061】
本実施形態の空港用地上支援車両1において、駆動輪11aは、油圧走行モータ12により駆動し、プラットホーム3、4はシリンダ5aにより駆動するが、油圧走行モータ12とシリンダ5aとそれらに作動油を供給する油圧ユニット16は、車体フレーム10に設けられている。
【0062】
エンジン駆動式の車両とする場合、燃料タンク13が車体フレーム10に搭載されるとともに、油圧ユニット16に作動油を供給するピストンポンプ34及びそれを駆動するエンジン32が設けられたエンジンフレーム30が車体フレーム10に搭載される。
【0063】
これに対して、電動式の車両とする場合、油圧ユニット16に作動油を供給するピストンポンプ34及びそれを駆動する電動モータ132が車体フレーム10に搭載されるとともに、バッテリ65が設けられたバッテリフレーム60が車体フレーム10に搭載される。
【0064】
このように、エンジン駆動式の車両及び電動式の車両の何れにも共通の部品を車体フレーム10に搭載し、エンジン駆動と電動駆動との車体フレーム10を共通化している。そのため、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式の車両へ改造する場合、
図10に示すように、エンジンフレーム30をバッテリフレーム60に取り替えるとともに、燃料タンク13を電動モータ132及びピストンポンプ34に取り替えると、電動式の車両に改造可能である。
【0065】
本実施形態では、エンジン駆動式及び電動式の両方に対応できる車体フレーム10を使用しており、例えばエンジン駆動式の車両として出荷した後においても、電動式の車両に容易に改造することが可能である。
【0066】
なお、エンジンフレーム30またはバッテリフレーム60を車体フレーム10にボルト10tにより固定される際、車体フレーム10に形成された共通の取り付け穴が使用される。燃料タンク13が取り付けられた燃料タンクフレーム13aまたはピストンポンプ34が接続された電動モータ132を車体フレーム10にボルトにより固定される際、車体フレーム10に形成された共通の取り付け穴が使用される。そのため、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式の車両へ改造する際に、車体フレーム10への追加加工をなくすことが可能であり、改造する際の設計工数や作業工数を抑えることが可能である。
【0067】
エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式の車両へ改造する場合、大容積のバッテリ65が必要となるため、バッテリ65を燃料タンク13が搭載されていた第2所定取付部T2に搭載するのが困難であり、エンジン32が搭載されていた第1所定取付部T1に搭載される。そのため、電動モータ132及びそれに駆動されるピストンポンプ34は、燃料タンク13が搭載されていた第2所定取付部T2に搭載される。これにより、エンジン駆動式の車両と電動式の車両とにおいて、ピストンポンプ34の位置が変わるが、ピストンポンプ34を油圧ユニット16に配管により接続することで、油圧ユニット16の共通化が可能である。
【0068】
以上のように、本実施形態の空港用地上支援車両1は、貨物を移動させるプラットホームを備える空港地上支援車両であって、駆動輪11a及びプラットホーム3、4が設けられた車体フレーム10と、車体フレーム10の第1所定取付部T1に対して着脱可能に構成されたエンジンフレーム30とを有しており、エンジンフレーム30は、駆動輪11a及びプラットホーム3、4を動作させるために使用されるエンジン32、エンジン32に接続される吸気配管33aと排気配管33b及びエンジン32により駆動されるピストンポンプ34が一体に設けられたエンジンユニットを構成する。
【0069】
これにより、本実施形態の空港用地上支援車両1では、エンジン駆動式車両で駆動輪11a及びプラットホーム3、4を動作させるために使用されるエンジン32などの部品が一体にユニット化されたエンジンフレーム30が、車体フレーム10に対して着脱可能に構成される。そのため、エンジン駆動式の空港用地上支援車両を電動式車両へと改造する際、及び、電動式の空港用地上支援車両をエンジン駆動式車両へと改造する際に、車体構造を大幅に変えるための切断や溶接などの作業が発生しないため、改造が容易である。
【0070】
本実施形態の空港用地上支援車両1において、第1所定取付部T1は、駆動輪11a及びプラットホーム3、4を動作させるために使用されるバッテリ65が設けられたバッテリフレーム60が着脱可能に構成されており、第1所定取付部T1に対してエンジンフレーム30が取り付けられた場合、車体フレーム10の第2所定取付部T2には、燃料タンク13が取り付けられるとともに、第1所定取付部T1に対してバッテリフレーム60が取り付けられた場合、第2所定取付部T2には、電動モータ132及び電動モータ132により駆動されるピストンポンプ34が取り付けられる。
【0071】
これにより、本実施形態の空港用地上支援車両1では、エンジン駆動式車両を電動式車両へ改造する場合、大容積のバッテリが必要となり、バッテリ65が設けられたバッテリフレーム60は、エンジンフレーム30が搭載されていた第1所定取付部T1に搭載されるが、その際、電動モータ132及びそれに駆動されるピストンポンプ34が、エンジン駆動式車両において燃料タンク13が搭載されていた第2所定取付部T2に搭載される。これにより、電動式の車両において、駆動輪11a及びプラットホーム3、4を適正に動作させることができる。
【0072】
本実施形態の空港用地上支援車両1において、車両2は、駆動輪11aを駆動するために使用される油圧走行モータ12と、プラットホーム3、4を昇降移動させるために使用されるシリンダ5aと、油圧走行モータ12及びシリンダ5aに対して作動油を供給する油圧ユニット16とを有する。
【0073】
これにより、本実施形態の空港用地上支援車両1では、駆動輪11a及びプラットホーム3、4が何れも油圧ユニット16から供給される作動油により駆動される。そのため、エンジン駆動式の空港用地上支援車両から電動式車両へ改造する際に、油圧ユニット16に対して作動油を供給するピストンポンプ34の位置が変わったとしても、ピストンポンプ34と油圧ユニット16とを配管で接続することにより油圧ユニット16を適正に駆動することが可能であるため、改造が容易である。
【0074】
本実施形態の空港用地上支援車両1において、バッテリフレーム60は、バッテリ65を移動させるために使用されるローラ62aを有している。
【0075】
これにより、本実施形態の空港用地上支援車両1では、大型のバッテリ65でもバッテリフレーム60上を移動させやすくなる。そのため、例えばバッテリフレーム60にある充電がなくなったバッテリ65を充電されたバッテリ65に容易に交換することができる。
【0076】
本実施形態の空港用地上支援車両1において、車体フレーム10の第1所定取付部T1は、車両2の前端部に設けられる。
【0077】
これにより、本実施形態の空港用地上支援車両1では、バッテリ65は日常的または稼働毎に点検が必要な機器であるが、バッテリフレーム60が車体フレーム10の前端部に対して取り付け及び取り外し可能に構成されているため、バッテリ65のメンテナンス作業をスムーズに行うことができる。また、バッテリ65の充電がなくなった際に、充電されたバッテリ65に容易に交換することができる。
【0078】
本実施形態の空港用地上支援車両1の改造方法は、貨物を移動させるプラットホームを備え、駆動輪11a及びプラットホーム3、4が設けられた車体フレーム10と、車体フレーム10の第1所定取付部T1に対して着脱可能に構成されたエンジンフレーム30とを有する空港地上支援車両の改造方法であって、車体フレーム10から、駆動輪11a及びプラットホーム3、4を動作させるために使用されるエンジン32、エンジン32に接続される吸気配管33aと排気配管33b及びエンジン32により駆動されるピストンポンプ34が一体に設けられたエンジンフレーム30を取り外す第1工程と、第1工程においてエンジンフレーム30が取り外された後、第1所定取付部T1に対して、駆動輪11a及びプラットホーム3、4を動作させるために使用されるバッテリ65が設けられたバッテリフレーム60を取り付ける第2工程とを備える。
【0079】
これにより、本実施形態の空港用地上支援車両1の改造方法では、エンジン駆動式車両で使用されるエンジン32、吸気配管33aと排気配管33b及びピストンポンプ34が一体にユニット化されたエンジンフレーム30を、車体フレーム10から取り外した後、電動式車両で使用されるバッテリ65が設けられたバッテリフレーム60を車体フレーム10に取り付けることにより、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式車両へと容易に改造することができる。
【0080】
なお、具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0081】
例えば、上記実施形態では、エンジンフレーム30またはバッテリフレーム60が搭載される第1所定取付位置T1が、空港用地上支援車両1の車両2の前端部に設けられるが、空港用地上支援車両1の車両2の前端部以外に設けられてよい。
【0082】
上記実施形態では、バッテリフレーム60が、バッテリ65を移動させるために使用されるローラ62aを有しているが、ローラ62aを有してなくてよい。
【0083】
上記実施形態では、エンジンフレーム30またはバッテリフレーム60が第1所定取付位置T1にボルトにより取り付けられ、燃料タンク13が取り付けられた燃料タンクフレーム13aまたは電動モータ132が第2所定取付位置T2にボルトにより取り付けられるが、ボルトにより取り付けられる方法に限られない。それらの部品を第1所定取付位置T1または第2所定取付位置T2へ取り付ける方法は、任意である。
【0084】
上記実施形態では、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式の車両へ改造する際に、エンジンフレーム30を車体フレーム10から取り外した後、ピストンポンプ34をエンジン32から取り外して、そのピストンポンプ34を電動モータ132に接続して電動式の車両に使用しているが、エンジン駆動式の空港用地上支援車両1を電動式の車両へ改造する際に、エンジン駆動式の車両から取り外したピストンポンプ34を使用しないで、エンジン駆動式の車両から取り外したピストンポンプ34とは異なる別のピストンポンプ34を電動式の車両に使用してもよい。
【0085】
上記実施形態では、エンジン駆動式の空港用地上支援車両を電動式車両へと改造する場合について説明したが、電動式の空港用地上支援車両をエンジン駆動式車両へと改造する場合についても同様である。その際の手順は、上記の手順と概略反対の手順であり、電動式の空港用地上支援車両1において、第6配管56、第7配管57及び配線58を取り外し、バッテリフレーム60を車体フレーム10の第1所定取付部T1から取り外した後で、エンジンフレーム30を車体フレーム10の第1所定取付部T1に取り付けて、第1配管51、第2配管52及び第3配管53を取り付けることにより、エンジン駆動式の車両へ改造を行うことができる。その場合も、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0086】
1 空港用地上支援車両
2 車両
3 プラットホーム
4 プラットホーム
5a シリンダ
10 車体フレーム
11a 駆動輪
12 油圧走行モータ
16 油圧ユニット
30 エンジンフレーム
32 エンジン
33a 吸気配管
33b 排気配管
34 ピストンポンプ
60 バッテリフレーム
62a ローラ
65 バッテリ