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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074953
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】光学機器
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20220511BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20220511BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/89
H04N5/225 430
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185408
(22)【出願日】2020-11-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】石川 智之
【テーマコード(参考)】
5C122
5J084
【Fターム(参考)】
5C122DA13
5C122EA02
5C122FH11
5C122GF04
5C122HA80
5C122HA81
5C122HA84
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB06
5J084AA04
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA02
5J084BA06
5J084BA39
5J084BA47
5J084BA49
5J084BB24
5J084BB28
5J084CA14
5J084CA23
5J084CA31
5J084CA34
5J084CA65
5J084EA17
(57)【要約】
【課題】周囲の明るさによらず結露の判定を行うこと。
【解決手段】制御部22は、レーザー投光部11による発光を開始させ(ステップS11)、自機の内部空間B1の空気の温度及び湿度と、投受光窓15の内面151の温度とを測定する(ステップS12)。測距部21は、測距値及び光量値を測定する(ステップS13)。制御部22は、測定された測距値及び光量値に基づき投受光窓15に結露があるか否かを判定する(ステップS14)。結露がないと判定した場合、制御部22は、結露指標を算出し、算出した結露指標が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS14で結露がある(YES)と判定した場合、及び、ステップS15で結露指標が閾値以上である(YES)と判定した場合、制御部22は、ヒータドライバ25を制御して投受光窓15を加熱させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸光学系の距離画像センサの測距値に基づき前記距離画像センサの投受光窓に結露があると判定した場合、前記投受光窓を加熱する
光学機器。
【請求項2】
所定範囲内の測距値が測定される場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
所定範囲内の測距値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項1に記載の光学機器。
【請求項4】
前記測距値に加え前記距離画像センサが測定する光量値に基づき前記投受光窓における結露の有無を判定する
請求項1から3のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項5】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が測定された画素の光量値が所定範囲内である場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項4に記載の光学機器。
【請求項6】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項4に記載の光学機器。
【請求項7】
前記距離画像センサの所定領域内の画素に関する測定値に基づき前記投受光窓における結露の有無を判定する
請求項1から6のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項8】
自機内の空気の温度と湿度の測定値と、前記投受光窓の温度の測定値に基づき算出した前記投受光窓における結露の発生のしやすさの指標が所定の閾値以上である場合に前記投受光窓を加熱する
請求項1から7のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項9】
前記投受光窓を加熱するヒータの抵抗値に基づき前記投受光窓の温度を測定する
請求項8に記載の光学機器。
【請求項10】
前記距離画像センサに対する電力供給の開始時刻からの経過時間に基づき前記投受光窓の温度を測定する
請求項8に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露を少なくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
結露を少なくする技術として、特許文献1には、カメラで撮影した窓の画像を解析して窓が曇る可能性が高い、又は窓が曇っている、と判定した場合に窓をヒータで加熱する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-004254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術のように撮影した窓の画像に基づいて結露の判定を行う場合、周囲が暗いと窓の画像も暗くなって結露の判定ができなくなることが起こり得る。
本発明は、上記の背景に鑑み、周囲の明るさによらず結露の判定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、同軸光学系の距離画像センサの測距値に基づき前記距離画像センサの投受光窓に結露があると判定した場合、前記投受光窓を加熱する光学機器を第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様の光学機器によれば、周囲の明るさによらず結露の判定を行うことができる。
【0007】
上記の第1の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定される場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様の光学機器によれば、距離画像に含まれる各画素の測距値だけがあれば結露の有無を判定することができる。
【0009】
上記の第1の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0010】
第3の態様の光学機器によれば、外乱等の影響で測距値に誤りが生じる場合の誤判定を抑制することができる。
【0011】
上記の第1乃至第3のいずれか1の態様の光学機器において、前記測距値に加え前記距離画像センサが測定する光量値に基づき前記投受光窓における結露の有無を判定する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0012】
第4の態様の光学機器によれば、測距値だけを用いて判定が行われる場合に比べて、結露の判定の精度を高めることができる。
【0013】
上記の第4の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が測定された画素の光量値が所定範囲内である場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0014】
第5の態様の光学機器によれば、測距値だけを用いて判定が行われる場合に比べて、結露の判定の精度を高めることができる。
【0015】
上記の第4の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0016】
第6の態様の光学機器によれば、外乱等の影響で画素単位で測距値又は光量値に誤りが生じる場合の誤判定を抑制することができる。
【0017】
上記の第1乃至第6いずれか1の態様の光学機器において、前記距離画像センサの所定領域内の画素に関する測定値に基づき前記投受光窓における結露の有無を判定する、という構成が第7態様として採用されてもよい。
【0018】
第7の態様の光学機器によれば、判定の処理の負荷を軽減することができる。
【0019】
上記の第1乃至第7いずれか1の態様の光学機器において、自機内の空気の温度と湿度の測定値と、前記投受光窓の温度の測定値に基づき算出した前記投受光窓における結露の発生のしやすさの指標が所定の閾値以上である場合に前記投受光窓を加熱する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0020】
第8の態様の光学機器によれば、予め透過部材を加熱して結露を予防することができる。
【0021】
上記の第8の態様の光学機器において、前記投受光窓を加熱するヒータの抵抗値に基づき前記投受光窓の温度を測定する、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0022】
第9の態様の光学機器によれば、電流及び電圧以外の値を測定しなくとも、投受光窓の温度を測定することができる。
【0023】
上記の第8の態様の光学機器において、前記距離画像センサに対する電力供給の開始時刻からの経過時間に基づき前記投受光窓の温度を測定する、という構成が第10の態様として採用されてもよい。
【0024】
第10の態様の光学機器によれば、投受光窓に何も設けなくとも、投受光窓の温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例に係る光学機器の構成を表す図
図2】測距値及び光量値の一例を表す図
図3】加熱処理における動作手順の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1]実施例
図1は実施例に係る光学機器1の構成を表す。光学機器1は、光を照射して、物体に反射して戻ってきた光に基づいて物体までの距離を測定する装置である。光学機器1は、レーザー投光部11と、レーザー受光部12と、ハーフミラー13と、可動ミラー14と、投受光窓15と、ヒータ16と、測距部21と、制御部22と、電源部23と、温度・湿度センサ24と、ヒータドライバ25とを備える。
【0027】
レーザー投光部11は、所定の光量の光を発する光源である。本実施例では、レーザー投光部11は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を主走査方向A11に1列に並べたLEDロッドである。主走査方向A11は、図1においては、図の奥行方向に沿った方向である。レーザー受光部12は、レーザー投光部11が照射した光の反射光を受光して電気信号に変換する複数の受光素子を1列に並べたイメージセンサである。レーザー受光部12は、レーザー投光部11が有するLEDと同じ数の受光素子を有する。
【0028】
レーザー受光部12が受光した光が変換された電気信号は、後述するように、光を反射した物体の画像を表すことになる。ハーフミラー13は、一方の面(透過面)に入射する光を透過し、反対側の面(反射面)に入射する光を全反射する。ハーフミラー13は、レーザー投光部11が照射した光が透過面に入射し、その光の入射光をレーザー受光部12に向けて全反射する位置に設けられている。
【0029】
可動ミラー14は、副走査方向A12に移動可能に設けられたミラーである。副走査方向A12とは、主走査方向A11に直交する方向のことであり、主走査方向A11への走査が行われたあと副走査方向A12に1列ずれて走査が行われることで矩形の画像が形成される。可動ミラー14は、副走査方向A12に移動しながら、ハーフミラー13を透過してきたレーザー投光部11の光を投受光窓15に向けて反射する。
【0030】
なお、本実施例では、上記のとおり可動ミラー14が副走査方向A12に沿った1軸の経路を移動したが、例えば、レーザー投光部11が、1つのLRDだけを有し、主走査方向A11及び副走査方向A12に沿った2軸の経路を移動することで2方向の走査を行ってもよい。投受光窓15は、自装置の内部空間B1と外部空間B2の境目に設けられた、レーザー投光部11が投光した光とレーザー受光部12が受光する光とを透過する透明な窓である。
【0031】
内部空間B1及び外部空間B2の気温差が大きくなると、外部空間B2の空気によって冷やされた投受光窓15の内部空間B1側の内面151付近の空気が冷やされて、内面151に水滴が付着する現象、いわゆる結露が生じることがある。結露が生じると、投受光窓15に入射した反射光が内面151から出射する際に水滴に当たって拡散し、レーザー受光部12が受光する光の光量が減少する。その結果、光を反射した物体の正確な画像が表されなくなる。
【0032】
ヒータ16は、以上のとおり画質を劣化させる原因となる結露を防止するために設けられた加熱用の器具である。ヒータ16は、電気を流すことで熱を発する発熱線を有し、その発熱線が投受光窓15の内面151に貼り付けられる。発熱線に電気が流されることで、ヒータ16は、投受光窓15の内面151側を加熱する。ヒータ16によって投受光窓15の内面151側が加熱されると、内面151付近の空気が冷やされなくなり、結露を防止することができる。
【0033】
図1では、レーザー投光部11からハーフミラー13までの光路A1と、ハーフミラー13から可動ミラー14及び投受光窓15を経由して光が往復する光路A2と、ハーフミラー13からレーザー受光部12までの光路A3とが表されている。ハーフミラー13より先の光路A2においては、照射光と反射光の光路が共通になっており、光学機器1は、反射光が投受光窓15に入射する方向と同じ方向から光が照射されるいわゆる同軸光学系となっている。
【0034】
測距部21は、レーザー受光部12が受光した光を反射した物体までの距離と、その反射光の光量とを測定する。測距部21には、レーザー投光部11から光の照射を開始したことが各LEDについて通知され、レーザー受光部12から反射光を受光したことが各受光素子について通知される。測距部21は、照射の開始時刻から反射光を受光した時刻までに光が進む距離の半分を物体までの距離として各画素について測定する。
【0035】
このように、測距部21は、光学機器1という同軸光学系の距離画像センサとして機能する。また、測距部21には、レーザー受光部12から受光した反射光の波形を示す電気信号が各受光素子について供給される。測距部21は、供給された波形に基づき、受光した反射光の光量を各画素について測定する。測距部21は、画素毎の距離及び光量の測定を所定の時間間隔で繰り返し行う。測距部21は、測定した測距の値(以下「測距値」と言う)及び光量の値(以下「光量値」と言う)を制御部22に供給する。
【0036】
制御部22は、自装置が備える各部を制御する。制御部22は、プロセッサ、メモリ及びストレージを備える。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、レジスタ及び周辺回路等を有する。メモリは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有する。ストレージは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等を有する。
【0037】
プロセッサは、RAMをワークエリアとして用いてROMやストレージに記憶されているプログラムを実行することで自装置の各部の動作を制御する。制御部22は、レーザー投光部11に対して光の出射の開始を指示する。また、制御部22は、可動ミラー14の副走査方向への移動を制御する。可動ミラー14は、副走査方向における現在の位置を示す信号を制御部22に供給する。
【0038】
制御部22には、測距部21から各画素について測定された物体までの距離値と光量値とが供給される。制御部22は、供給された可動ミラー14の位置を示す信号、画素毎の測距値及び光量値に基づいて、物体までの距離を画素毎に表した距離画像を生成する。制御部22は、測距値及び光量値の測定が行われるたびに1つの距離画像を生成する。こうして生成された1つの距離画像のことを「フレーム」とも言う。制御部22は、生成した距離画像(フレーム)を示す画像データを、例えばディスプレイを備える外部機器に送信する。
【0039】
電源部23は、外部電源と接続されており、自装置が備える各部に電力を供給する。温度・湿度センサ24は、自装置の内部に設けられ、内部空間B1の空気の温度及び湿度と、投受光窓15の内面151の温度とを測定する。温度・湿度センサ24は、例えば、投受光窓15を加熱するヒータ16の発熱線の抵抗値に基づき投受光窓15の温度を測定する。発熱線は、例えば、鉄、クロム、アルミ又はニッケル等の合金であり、温度によって抵抗値が変化する。
【0040】
温度・湿度センサ24は、発熱線の温度と抵抗値との関係を予め記憶しておくことで、発熱線の現在の抵抗値から発熱線の温度を算出する。発熱線の温度が上昇すると、少し遅れて投受光窓15の温度も上昇し、最終的には発熱線の温度と等しくなる。そこで、温度・湿度センサ24は、算出した発熱線の温度を投受光窓15の内面151の温度として測定する。
【0041】
発熱線の抵抗値は、発熱線を流れる電流及び電圧が分かれば算出可能である。このように、本実施例では、電流及び電圧以外の値を測定しなくとも、投受光窓15の内面151の温度を測定することができる。温度・湿度センサ24は、空気の温度及び湿度の測定値と内面151の温度の測定値とを制御部22に供給する。
【0042】
ヒータドライバ25は、制御部22によって制御されてヒータ16を駆動させ、投受光窓15の内面151側を加熱させる。制御部22は、測距部21から供給された物体までの距離(測距値)及び光量(光量値)に基づき投受光窓15に結露があるか否かを判定する。具体的には、制御部22は、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、その測距値が測定された画素の光量値が所定範囲内である場合に、投受光窓15に結露があると判定する。
【0043】
図2は測距値及び光量値の一例を表す。図2では、或る距離画像における或る画素のフレーム毎の測距値(mm:ミリメートル単位)及び光量値(digit単位)が表されている。図2の例では、測距値がおおよそ100mmから800mmまでの範囲に収まっている。なお、測距値にこれだけの幅があるのは、光学機器1においては、物体との距離が短いほど投光から受光までの時間が短くなり、測定時間のわずかな誤差が測距値を大きく変動させることになるためである。また、光量値はおおよそ0digitから70digitまでの範囲に収まっている。制御部22は、例えばこれらの範囲を所定範囲として結露の判定を行う。
【0044】
制御部22は、結露があると判定した場合、ヒータドライバ25を制御してヒータ16を駆動させ、投受光窓15の内面151側を加熱させる。その結果、内面151付近の空気の温度も上昇し、水滴が再び水蒸気となって空気中に含まれるようになり、結露が減少する。制御部22は、結露がないと判定するまでヒータ16に加熱を続けさせるようヒータドライバ25を制御する。
【0045】
また、制御部22は、結露がないと判定した場合でも、結露の発生の可能性が高い場合にはヒータ16による加熱の制御を行う。制御部22は、具体的には、自機(光学機器1)内の空気の温度と湿度の測定値と、投受光窓15の温度の測定値に基づき投受光窓15における結露の発生のしやすさの指標(以下「結露指標」と言う)を算出する。制御部22は、例えば、まず、空気の温度及び湿度の測定値から絶対湿度C1を算出する。
【0046】
また、制御部22には、前述したとおり温度・湿度センサ24から投受光窓15の内面151の温度の測定値T1が供給される。内面151の近辺の空気の温度は、内面151の温度、すなわち供給された測定値T1に近くなるので、制御部22は、測定値T1の空気における飽和水蒸気量D1を算出する。制御部22は、以上のとおり算出した絶対湿度C1及び飽和水蒸気量D1に基づいて、絶対湿度C1+α>飽和水蒸気量D1であるか否かを判断する。
【0047】
なお、αはマージンであり、例えば光学機器1の特性等に応じて定められる。絶対湿度C1+αは本発明の「指標」の一例である。制御部22は、絶対湿度C1+α>飽和水蒸気量D1である場合、結露が発生しやすい状況であると判断し、投受光窓15を加熱させる。このように、制御部22は、算出した結露指標(絶対湿度C1+α)が所定の閾値(飽和水蒸気量D1)以上である場合に投受光窓15を加熱させる。これにより、結露が発生しそうな状況において予め投受光窓15を加熱しておくことで結露を予防することができる。
【0048】
測距部21及び制御部22は、上記の構成に基づいて、結露に関する判定を行い、必要なら投受光窓15を加熱して結露を防ぐ加熱処理を行う。
図3は加熱処理における動作手順の一例を表す。まず、制御部22は、光源であるレーザー投光部11による発光を開始させる(ステップS11)。次に、制御部22は、自機の内部空間B1の空気の温度及び湿度と、投受光窓15の内面151の温度とを測定する(ステップS12)。
【0049】
続いて、測距部21は、測距値及び光量値を測定する(ステップS13)。次に、制御部22は、測距値及び光量値に基づき投受光窓15に結露があるか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14で結露がない(NO)と判定した場合、制御部22は、自機内の空気の温度と湿度の測定値と、投受光窓15の温度の測定値に基づき結露指標を算出し、算出した結露指標が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0050】
ステップS14で結露がある(YES)と判定した場合、及び、ステップS15で結露指標が閾値以上である(YES)と判定した場合、制御部22は、ヒータドライバ25を制御して投受光窓15を加熱させる(ステップS16)。制御部22は、ステップS16の後は、ステップS12に戻って動作を行う。ステップS15で結露指標が閾値以上でない(NO)と判定した場合、制御部22は、投受光窓15が加熱中であるか否かを判断する(ステップS17)。
【0051】
ステップS17で加熱中でない(NO)と判定した場合、制御部22は、ステップS12に戻って動作する。ステップS17で加熱中である(YES)と判定した場合、制御部22は、投受光窓15の加熱を中止する(ステップS18)。制御部22は、ステップS18の後は、ステップS12に戻って動作を行う。
【0052】
本実施例では、上記のとおり、測距値及び光量値の両方を用いて結露の判定が行われた。これにより、例えば、測距値だけを用いて結露の判定が行われる場合に比べて、結露の判定の精度を高めることができる。また、本実施例では、光学機器1自身が発する光に基づいて結露の判定が行われるので、周囲の明るさによらず(特に周囲が暗い場合でも)結露の判定を行うことができる。
【0053】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0054】
[2-1]結露の判定方法
制御部22は、光量値は用いずに、測距値だけを用いて、所定範囲内の測距値が測定される場合に投受光窓15に結露があると判定してもよい。測距値は、近くの物体と結露の水滴とで近い値になる場合があるが、その場合でも、投受光窓15に汚れが付着せず且つ遠くの物体だけを測距する環境下であれば、距離画像に含まれる各画素の測距値だけに基づいて結露の有無を判定することができる。
【0055】
また、制御部22は、反対に、測距値は用いずに、光量値だけを用いて、所定範囲内の光量値が測定される場合に投受光窓15に結露があると判定してもよい。光量値は、遠くの物体と結露の水滴とで近い値になる場合があるが、その場合でも、近くの物体だけを測距する環境下であれば、距離画像に含まれる各画素の光量値だけに基づいて結露の有無を判定することができる。また、いずれの場合も、測距値及び光量値の両方を用いる場合に比べて、結露の有無を判定する際の処理の負荷を軽減することができる。
【0056】
[2-2]測定エラー
測定値及び光量値の測定においては、外乱等の影響で、画素単位で測定値及び光量値に誤り(エラー)が生じる場合がある。このエラーが生じると、結露していないのに結露があるという誤判定が行われる場合がある。本変形例では、そのような誤判定を避けるための結露の判定が行われる。
【0057】
本変形例の制御部22は、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に投受光窓15に結露があると判定する。画素が方眼状に並んでいる場合、隣接する画素とは或る画素の上下左右に接する画素、又は、或る画素の斜め上又は斜め下に位置する画素のことである。また、近接する画素とは、例えば、或る画素から所定距離内で離れた画素のことである。
【0058】
所定距離及び所定数は、投受光窓15に付着し得る最小の水滴の距離画像における大きさに基づいて定められる。例えば、最小の水滴が3×3画素の大きさであった場合、3画素の長さが所定距離として定められ、9画素が所定数として定められる。なお、本変形例は、測距値だけを用いて結露の判定が行われる場合にも適用してよい。その場合、制御部22は、所定範囲内の測距値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に投受光窓15に結露があると判定する。
【0059】
また、本変形例は、光量値だけを用いて結露の判定が行われる場合にも適用してよい。その場合、制御部22は、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に投受光窓15に結露があると判定する。いずれの場合も、外乱等の影響で測距値又は光量値に誤りが生じる場合の誤判定を、水滴の大きさを考慮しない場合に比べて、抑制することができる。
【0060】
[2-3]結露しやすい領域
投受光窓15においては、結露しやすい領域が決まっている場合がある。例えば自機内に発熱する部材がある場合、その部材から遠い領域の方が外気によって冷えやすく、結露しやすい。そこで、本変形例では、制御部22は、測距部21の所定領域内の画素に関する測定値に基づき投受光窓15における結露の有無を判定する。
【0061】
所定領域としては、投受光窓15において結露しやすい領域が定められる。なお、所定領域は複数定められてもよいし、投受光窓15の全体よりも小さければどのような大きさの領域が定められてもよい。本変形例によれば、所定領域以外の画素については判定の処理に用いられないので、距離画像の全体の画素に関する測定値が用いられる場合に比べて、判定の処理の負荷を軽減することができる。
【0062】
[2-4]投受光窓の温度の測定方法
温度・湿度センサ24は、実施例では、ヒータ16の発熱線の抵抗値に基づき投受光窓15の温度を測定したが、投受光窓15の温度の測定方法はこれに限らない。本変形例では、例えば制御部22が、測距部21に対する電力供給の開始時刻からの経過時間に基づき投受光窓15の温度を測定する。
【0063】
本変形例では、電源部23が、最初に制御部22への電力供給を行い、その後に他の各部への電力供給を行う。また、電源部23は、測距部21に対する電力供給を開始すると、その旨を制御部22に通知する。制御部22は、この通知を受け取った時刻を測距部21に対する電力供給の開始時刻として記憶する。測距部21が稼働すると、測定のためレーザー投光部11及びレーザー受光部12も稼働し、それぞれ熱を発生させる。
【0064】
こうして発生した熱は、自機の筐体や空気を伝播して投受光窓15を暖める。制御部22は、測距部21に対する電力供給の開始時刻からの経過時間と投受光窓15の温度との相関関係を予め記憶しておく。制御部22は、上記の通知を受け取った時刻からの経過時間と相関関係にある温度を現在の投受光窓15の温度として特定する。本変形例によれば、投受光窓15又はヒータ16に何も設けなくとも投受光窓15の温度を測定することができる。
【0065】
[2-5]発明のカテゴリ
本発明は、光学機器1の他、光学機器1の測距部21及び制御部22が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、光学機器1を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…光学機器、11…レーザー投光部、12…レーザー受光部13…ハーフミラー、14…可動ミラー、15…投受光窓、16…ヒータ、21…測距部、22…制御部、23…電源部、24…湿度センサ、25…ヒータドライバ。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸光学系の距離画像センサにより所定範囲内の測距値が測定され、かつ、自機内の空気の温度と湿度の測定値と、前記距離画像センサに対する電力供給の開始時刻からの経過時間と、に基づき算出した前記距離画像センサの投受光窓における結露の発生のしやすさの指標が所定の閾値以上である場合に、前記投受光窓に結露があると判定し前記投受光窓を加熱する
光学機器。
【請求項2】
所定範囲内の測距値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が測定された画素の光量値が所定範囲内である場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項に記載の光学機器。
【請求項4】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項に記載の光学機器。
【請求項5】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が前記距離画像センサの所定領域内の画素に関する測距値である場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項1からのいずれか1項に記載の光学機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、同軸光学系の距離画像センサにより所定範囲内の測距値が測定され、かつ、自機内の空気の温度と湿度の測定値と、前記距離画像センサに対する電力供給の開始時刻からの経過時間と、に基づき算出した前記距離画像センサの投受光窓における結露の発生のしやすさの指標が所定の閾値以上である場合に、前記投受光窓に結露があると判定し前記投受光窓を加熱する光学機器を第1の態様として提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
第1の態様の光学機器によれば、周囲の明るさによらず結露の判定を行うことができる。また、第1の態様の光学機器によれば、投受光窓に何も設けなくとも、投受光窓の温度を測定することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の第1の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
の態様の光学機器によれば、外乱等の影響で測距値に誤りが生じる場合の誤判定を抑制することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記の第の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が測定された画素の光量値が所定範囲内である場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
の態様の光学機器によれば、測距値だけを用いて判定が行われる場合に比べて、結露の判定の精度を高めることができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記の第の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
の態様の光学機器によれば、外乱等の影響によって画素単位で測距値又は光量値に誤りが生じる場合の誤判定を抑制することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
上記の第1乃至第いずれか1の態様の光学機器において、所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が前記距離画像センサの所定領域内の画素に関する測距値である場合に前記投受光窓に結露があると判定する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
の態様の光学機器によれば、判定の処理の負荷を軽減することができる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2022-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸光学系の距離画像センサに対する電力供給の開始時刻からの経過時間に基づき該距離画像センサの投受光窓の温度を測定し、
測定された前記投受光窓の温度と、自機内の空気の温度と湿度の測定値と、に基づいて該投受光窓における結露の発生のしやすさの指標を算出し、
前記距離画像センサにより所定範囲内の測距値が測定され、かつ、前記指標が所定の閾値以上である場合に、前記投受光窓に結露があると判定し、前記投受光窓を加熱する
光学機器。
【請求項2】
所定範囲内の測距値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が測定された画素の光量値が所定範囲内である場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、所定範囲内の光量値が測定された画素が、所定距離内で所定数以上、隣接又は近接する場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項3に記載の光学機器。
【請求項5】
所定範囲内の測距値が測定され、かつ、当該測距値が前記距離画像センサの所定領域内の画素に関する測距値である場合に前記投受光窓に結露があると判定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、同軸光学系の距離画像センサに対する電力供給の開始時刻からの経過時間に基づき該距離画像センサの投受光窓の温度を測定し、測定された前記投受光窓の温度と、自機内の空気の温度と湿度の測定値と、に基づいて該投受光窓における結露の発生のしやすさの指標を算出し、前記距離画像センサにより所定範囲内の測距値が測定され、かつ、前記指標が所定の閾値以上である場合に、前記投受光窓に結露があると判定し、前記投受光窓を加熱する光学機器を第1の態様として提供する。