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特開2022-74955リーブオン化粧品の使用感を向上する剤、リーブオン化粧品の製造方法およびリーブオン化粧品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074955
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】リーブオン化粧品の使用感を向上する剤、リーブオン化粧品の製造方法およびリーブオン化粧品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20220511BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q19/00
A61K8/60
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185410
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】西尾 洋美
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 愛耶香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC482
4C083AC532
4C083AD191
4C083AD192
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD38
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 処方設計の自由度を狭めることなく、簡便に、リーブオン化粧品の膜感、さっぱり感、あるいは、ブレーキ感といった使用感を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 下記(ア)~(ウ)のいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする、リーブオン化粧品の膜感向上剤;(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴(中糖化還元水飴)、(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、(ウ)デキストロース当量が41以下の水飴を還元してなる還元水飴(中~低糖化還元水飴)。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(ア)~(ウ)のいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする、リーブオン化粧品の膜感向上剤;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(ウ)デキストロース当量が41以下の水飴を還元してなる還元水飴。
【請求項2】
下記(イ)および/または(エ)の還元水飴を有効成分とする、リーブオン化粧品のさっぱり感向上剤;
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)デキストロース当量が30以下の水飴を還元してなる還元水飴。
【請求項3】
下記(ア)~(ウ)のいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする、リーブオン化粧品のブレーキ感向上剤;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(ウ)デキストロース当量が41以下の水飴を還元してなる還元水飴。
【請求項4】
前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~55質量%、三糖が3.9~25質量%、四糖が1~10質量%かつ五糖以上が5~90.2質量%である、請求項1または請求項3に記載の剤。
【請求項5】
前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~21質量%、三糖が3.9~16質量%、四糖が3.5~10質量%かつ五糖以上が51~90.2質量%である、請求項2に記載の剤。
【請求項6】
前記リーブオン化粧品を100質量%とした場合に、2.5質量%超20質量%以下の配合量で用いられることを特徴とする、請求項1に記載の剤。
【請求項7】
前記リーブオン化粧品を100質量%とした場合に、5質量%超15質量%未満の配合量で用いられることを特徴とする、請求項2に記載の剤。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の剤を原料として配合する工程を有する、リーブオン化粧品の製造方法。
【請求項9】
下記(イ)および/または(エ)の還元水飴を、5質量%超15質量%未満含有する、リーブオン化粧品;
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴、
(エ)デキストロース当量が30以下の水飴を還元してなる還元水飴。
【請求項10】
前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~21質量%、三糖が3.9~16質量%、四糖が3.5~10質量%かつ五糖以上が51~90.2質量%である、請求項9に記載のリーブオン化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の還元水飴を有効成分とする、リーブオン化粧品の使用感を向上する剤、これを用いるリーブオン化粧品の製造方法、および、リーブオン化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
リーブオン化粧品には、化粧水や化粧液、クリーム、乳液などのいわゆるスキンケア化粧品がある。これらは、主として皮膚に潤いを補給すること、あるいは、皮膚の潤いを保つことを目的とした製品であり、水、キレート剤、pH調整剤や保湿剤、油性原料などを配合した処方が一般的である。
【0003】
一方で、近年、これらのスキンケア化粧品には、潤いを付与ないし維持する本来の効果の他に、使用後のさっぱり感や膜感、使用時のブレーキ感などの高い使用感が求められている。
【0004】
そこで、使用感を高めたリーブオン化粧品が研究開発されており、例えば、特許文献1には、ニコチン酸アミドを多量に含有するにもかかわらず、べたつきが改善された水中油型乳化組成物が開示されている。また、特許文献2には、塗布時のぬめり感や、乾き際のべたつきがなく、肌へのなじみが良く、肌のハリ感、保湿感に優れ、保存安定性も良好な水中油型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-168105号公報
【特許文献2】特開2018-203634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、所定量のリン脂質、所定量のHLBが7以上のノニオン界面活性剤、所定量の多価アルコール、25℃で液状である油剤および水の組み合わせにより、ニコチン酸アミドに起因するべたつきを改善し、肌のハリ・弾力付与効果を達成している。すなわち、複数種の特定の原料を特定の量、配合する必要があることから、処方設計の自由度や簡便性に欠ける。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術でも、グリコシルトレハロースを含む多価アルコールと、N-アシル酸性アミノ酸ジエステル、液状の脂肪酸トリグリセリド、特定HLBのノニオン性界面活性剤、リン脂質及び水を併用することにより、塗布時のぬめり感や、乾き際のべたつきを抑制し、肌なじみやハリ感、保湿感の付与効果を達成している。すなわち、特許文献1と同様に、複数種の特定の原料を配合する必要があるため、処方設計の自由度や簡便性に欠ける。
【0008】
以上のとおり、係る特許文献を鑑みても、簡便に、リーブオン化粧品の使用感を向上させる技術は十分に供給されている状況ではない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、処方設計の自由度を狭めることなく、簡便に、リーブオン化粧品の膜感、さっぱり感、あるいは、ブレーキ感といった使用感を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、下記(i)~(v)の事項を見出した;
(i)中糖化還元水飴および/または低糖化還元水飴が、リーブオン化粧品の膜感を向上できること。
(ii)低糖化還元水飴が、リーブオン化粧品のべたつきを改善し、さっぱり感を向上できること。
(iii)中糖化還元水飴および/または低糖化還元水飴が、リーブオン化粧品のブレーキ感を向上できること。
(iv)中糖化還元水飴および/または低糖化還元水飴を原料として配合することにより、膜感、さっぱり感あるいはブレーキ感が向上したリーブオン化粧品を製造できること。
(v)低糖化還元水飴を5質量%超15質量%未満含有するリーブオン化粧品が、べたつきが少なく、高いさっぱり感、高い膜感および高いブレーキ感といった優れた使用感を備えること。
そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0010】
(1)本発明に係るリーブオン化粧品の膜感向上剤は、下記(ア)~(ウ)のいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴(中糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が41以下の水飴を還元してなる還元水飴(中~低糖化還元水飴)。
【0011】
(2)本発明に係るリーブオン化粧品のさっぱり感向上剤は、下記(イ)および/または(エ)の還元水飴を有効成分とする;
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が30以下の水飴を還元してなる還元水飴(低糖化還元水飴)。
【0012】
(3)本発明に係るリーブオン化粧品のブレーキ感向上剤は、下記(ア)~(ウ)のいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする;
(ア)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満の還元水飴(中糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が41以下の水飴を還元してなる還元水飴(中~低糖化還元水飴)。
【0013】
(4)本発明の剤において、上記(ア)、(イ)および/または(ウ)の還元水飴(中~低糖化還元水飴)の糖組成は、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~55質量%、三糖が3.9~25質量%、四糖が1~10質量%かつ五糖以上が5~90.2質量%であってもよい。
【0014】
(5)本発明の剤において、上記(イ)および/または(エ)(低糖化還元水飴)の還元水飴の糖組成は、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~21質量%、三糖が3.9~16質量%、四糖が3.5~10質量%かつ五糖以上が51~90.2質量%であってもよい。
【0015】
(6)本発明に係る膜感向上剤は、リーブオン化粧品を100質量%とした場合に、2.5質量%超20質量%以下の配合量で用いられてもよい。
【0016】
(7)本発明に係るさっぱり感向上剤は、リーブオン化粧品を100質量%とした場合に、5質量%超15質量%未満の配合量で用いられてもよい。
【0017】
(8)本発明に係るリーブオン化粧品の製造方法は、本発明の剤を原料として配合する工程を有する。
【0018】
(9)本発明に係るリーブオン化粧品は、下記(イ)および/または(エ)の還元水飴を、5質量%超15質量%未満含有する;
(イ)糖組成が、五糖以上が50質量%以上の還元水飴(低糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が30以下の水飴を還元してなる還元水飴(低糖化還元水飴)。
【0019】
(10)本発明に係るリーブオン化粧品において、上記(イ)および/または(エ)の還元水飴(低糖化還元水飴)の糖組成は、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~21質量%、三糖が3.9~16質量%、四糖が3.5~10質量%かつ五糖以上が51~90.2質量%であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リーブオン化粧品の使用後のさっぱり感や膜感、使用時のブレーキ感といった使用感を向上させることができる。本発明によれば、所定の還元水飴を原料として配合するという簡便な方法により、処方設計の自由度を狭めることなく、さっぱり感、膜感、ブレーキ感といった使用感を向上したリーブオン化粧品を製造することができる。また、本発明によれば、べたつきが少なく、高いさっぱり感、高い膜感および高いブレーキ感といった優れた使用感を備えるリーブオン化粧品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例において化粧水の製造に用いた原料を示す表である。
図2】グリセリンまたは各種還元水飴を含有する化粧水の組成を示す表である。
図3】各種還元水飴を含有する化粧水(No.2~6)に係る官能評価の採点結果を示す表である。
図4】No.2~6(各種還元水飴を含有する化粧水)に係る官能評価の採点結果の平均値を、試料(還元水飴の種類)毎に表したレーダーチャートである。点線は、No.1(グリセリンを含有する化粧水)に係る点数を、実線は、No.2~6(各種還元水飴を含有する化粧水)に係る点数を、それぞれ示す。
図5】No.2~6(各種還元水飴を含有する化粧水)に係る官能評価の採点結果の平均値を、評価項目毎に表した棒グラフである。
図6】(I)は往復動摩擦試験の測定条件を示す表である。(II)の左側は、往復動摩擦試験の試験機の様子を示す写真である。また、右側は、ボール圧子の摺動面側を拡大した写真である。
図7】No.1(グリセリンを含有する化粧水)またはNo.2(高糖化還元水飴を含有する化粧水)を摺動面に塗布した場合の、時間毎の摩擦抵抗力および動摩擦係数の変化を示す波形および試験後の人工皮革表面を示す図である。
図8】No.3(中糖化還元水飴を含有する化粧水)またはNo.4(低糖化還元水飴(A)を含有する化粧水)を摺動面に塗布した場合の、波形および試験後の人工皮革表面を示す図である。
図9】No.5(低糖化還元水飴(B)を含有する化粧水)またはNo.6(低糖化還元水飴(C)を含有する化粧水)を摺動面に塗布した場合の、波形および試験後の人工皮革表面を示す図である。
図10】No.1(グリセリンを含有する化粧水)またはNo.2~6(各種還元水飴を含有する化粧水)を摺動面に塗布した場合の、測定時間(0秒~1200秒)における最大動摩擦係数μk(max)を示す棒グラフである。
図11】低糖化還元水飴またはグリセリンの配合量を20%~2.5%に変化させて製造した化粧水の組成を示す表である。
図12】No.1~7(低糖化還元水飴の配合量を変化させた化粧水)に係る官能評価の採点結果を示す表である。
図13】No.1~7(低糖化還元水飴の配合量を変化させた化粧水)に係る官能評価の採点結果の平均値を、評価項目毎に表した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
「リーブオン化粧品」とは、生体の適用箇所(例えば肌や髪など)に付けた後に、洗い流さず、比較的長時間付けっ放しにする化粧品をいう。リーブオン化粧品として、具体的には、例えば、皮膚用化粧品(化粧水、化粧液、クリーム、乳液、日やけ、日やけ止めなど)、仕上用化粧品(ファンデーション、化粧下地、口紅、アイメークアップなど〕、頭髪用化粧品(整髪料、養毛料、頭皮料など)等を例示することができる。
【0024】
本発明において「膜感」とは、皮膚の上に一枚の膜ができたような、ハリのある感じをいい、ハリ感と表すこともできる。「リーブオン化粧品の膜感向上剤」とは、当該化粧品の使用時または使用後に使用者が感じる膜感を、向上させる剤をいう。
【0025】
本発明において「さっぱり感」とは、さっぱりした、あるいは、すっきりした、心地よい感じをいい、爽快感と表すこともできる。「リーブオン化粧品のさっぱり感向上剤」とは、当該化粧品の使用時または使用後に使用者が感じるさっぱり感を、向上させる剤をいう。
【0026】
本発明において「ブレーキ感」とは、肌への粘着性が高い感触をいう。すなわち、ブレーキ感が高いリーブオン化粧品では、当該化粧品を肌に塗布して指で伸ばした場合、指側の肌と、塗布した側の肌とが粘着して、肌上での指の滑りにブレーキがかかるような感じを覚えることができる。「リーブオン化粧品のブレーキ感向上剤」とは、当該化粧品の使用時、使用後あるいは乾き際に使用者が感じるブレーキ感を、向上させる剤をいう。
【0027】
本発明において「べたつき」とは、べたべたして気になるような好ましくない感じをいう。すなわち、「べたつく」とは、化粧品の使用時または使用後に、係る好ましくない感じが比較的強く感じられるこという。一方、「べたつかない」「べたつきが少ない」「べたつきが改善された」とは、化粧品の使用時または使用後において、係る好ましくない感じが無い、あるいは、比較的弱いことをいう。
【0028】
「還元水飴」は、水飴を還元して得られる糖アルコールの一種である。ここで、水飴は、デンプンを酸や酵素などで糖化して得られる物質であり、単糖(ブドウ糖)および多糖(オリゴ糖やデキストリンなど)の混合物である。よって、還元水飴もまた、単糖の糖アルコールおよび多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)の糖アルコールのうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。なお、重合度(Degree of Polymerization)の数により、単糖をDP1、二糖をDP2、三糖をDP3、四糖をDP4、五糖をDP5というように表記する場合がある。
【0029】
還元水飴は、一般に、糖化の程度により、高糖化還元水飴(糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~50質量%、かつ、三糖以上が25質量%以下である還元水飴)、中糖化還元水飴(糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である還元水飴)および低糖化還元水飴(糖組成が、五糖以上が50質量%以上である還元水飴)に分けられる場合がある。すなわち、上記の(ア)は中糖化還元水飴の一態様であり、(イ)は低糖化還元水飴の一態様である。
【0030】
なお、「糖組成」は、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。
【0031】
糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、還元水飴や水飴を試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;MCI GEL CK04S(10mm ID x 200mm)
溶離液;高純水
流速;0.4mL/分
注入量;20μL
カラム温度;65℃
検出;示差屈折率検出器RI-10A(島津製作所)
【0032】
「デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)」は、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)であり、水飴の糖化の程度を表す指標として用いられる。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。例えば、DEが41以下の水飴は、中糖化ないし低糖化水飴に該当し、これを還元してなる還元水飴は、中糖化ないし低糖化還元水飴に該当する。また、DEが30以下の水飴は、低糖化水飴に該当し、これを還元してなる還元水飴は、低糖化還元水飴に該当する。すなわち、上記の(ウ)は中~低糖化還元水飴の一態様であり、(エ)は低糖化還元水飴の一態様である。
【0033】
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDEを求める。
【0034】
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
【0035】
本発明は、リーブオン化粧品の膜感向上剤、リーブオン化粧品のさっぱり感向上剤、および、リーブオン化粧品のブレーキ感向上剤を提供する。本発明では、これら剤のいずれかまたはいずれもを指して、「本発明の剤」という場合がある。
【0036】
本発明の膜感向上剤およびブレーキ感向上剤は、還元水飴の中でも、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴のいずれか、またはいずれも(中~低糖化還元水飴)を有効成分としている。また、本発明のさっぱり感向上剤は、還元水飴の中でも、低糖化還元水飴を有効成分としている。
【0037】
また、本発明は、還元水飴の中でも低糖化還元水飴を、5質量%超15質量%未満含有するリーブオン化粧品も提供する。本発明に係るリーブオン化粧品は、低糖化還元水飴を5質量%超15質量%未満含有することにより、べたつきが少なく、高いさっぱり感、高い膜感および高いブレーキ感という優れた使用感を兼ね備える効果を達成している。
【0038】
本発明において、中~低糖化還元水飴の糖組成は、上記(ア)または(イ)の他、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~55質量%、三糖が3.9~25質量%、四糖が1~10質量%かつ五糖以上が5~90.2質量%であってもよい。
【0039】
また、本発明において、低糖化還元水飴の糖組成は、上記(イ)の他、単糖が1~10質量%、二糖が1.4~21質量%、三糖が3.9~16質量%、四糖が3.5~10質量%かつ五糖以上が51~90.2質量%であってもよい。
【0040】
本発明において、還元水飴は、市販されているものをそのまま用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。市販の中糖化還元水飴としては、例えば、「スイートOL」や「エスイー57」(以上、物産フードサイエンス)などを例示することができる。また、市販の低糖化還元水飴としては、例えば、「スイートNT」や「エスイー30」、「エスイー100」、「アクアオール #2」(以上、物産フードサイエンス)、「PO-10]「PO-20」(以上、三菱商事ライフサイエンス)などを例示することができる。
【0041】
還元水飴の公知の製造方法としては、原料となる水飴(原料糖)に水素を添加する還元反応を挙げることができる。水素添加による還元反応は、例えば、40~75質量%の原料糖水溶液を、還元触媒と併せて高圧反応器中に仕込み、反応器中の水素圧を4.9~19.6MPa、反応液温を70~180℃として、混合攪拌しながら、水素の吸収が認められなくなるまで反応を行なえばよい。その後、還元触媒を分離し、イオン交換樹脂処理、必要であれば活性炭処理等で脱色脱塩した後、所定の濃度まで濃縮すれば、高濃度の還元水飴を作ることができる。
【0042】
還元水飴は、リーブオン化粧品を製造する通常の工程において、他の成分(例えば、溶媒、分散媒、他の多価アルコール、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、ソルビトール等の他の糖類、界面活性剤、着色剤、動植物エキス、ビタミン類、無機塩類、有機塩類、可溶化剤、殺菌剤、保湿剤、酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、増粘剤、香料、カチオンポリマー、清涼剤、冷感剤など)と同様に、原料として配合して用いる。すなわち、本発明は、本発明の剤を原料として配合する工程を有する、リーブオン化粧品の製造方法も提供する。
【0043】
還元水飴を原料として配合する方法は、化粧品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて、適宜、当業者に公知の手法により行うことができる。還元水飴は多価アルコールであることから、グリセリンや1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール等の、化粧品に従来配合される他の多価アルコールと同様に扱って、リーブオン化粧品を製造することができる。
【0044】
リーブオン化粧品における還元水飴の配合量もまた、化粧品の種別、他の原料成分の種類や配合量、所望の使用感などに応じて適宜設定することができる。例えば、リーブオン化粧品の総質量を100質量%として、高い膜感を得る観点からは、還元水飴の下限は、2.5質量%超が好ましく、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上または5.0質量%以上がより好ましい。また、上限は、20質量%以下が好ましい。
【0045】
また、リーブオン化粧品の総質量を100質量%として、高いさっぱり感を得る観点からは、還元水飴の下限は、5質量%超が好ましく、5.5質量%以上、6.0質量%以上、6.5質量%以上、7.0質量%以上または7.5質量%以上がより好ましい。また、上限は、15質量%未満が好ましく、14.5質量%以下、14質量%以下、13.5質量%以下、13質量%以下、または12.5質量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明に係るリーブオン化粧品は、低糖化還元水飴を、最終濃度が5質量%超15質量%となるように原料として配合する他は、当業者に公知の手法により、つくることができる。
【0047】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0048】
<試験方法>本実施例では、特段の記載のない限り、百分率(%)は質量%を示す。試験は、特段の記載のない限り下記の方法により行った。
(1)使用原料
図1に示す原料(全て市販品)を用いて化粧水を製造した。高糖化還元水飴は製品名「エスイー600(物産フードサイエンス)」を、中糖化還元水飴は製品名「エスイー57(物産フードサイエンス)」を、それぞれ用いた。低糖化還元水飴は、糖組成の異なるA-Cの3種類(A:製品名「エスイー30(物産フードサイエンス)」、B:製品名「アクアオール #2(物産フードサイエンス)」、C:製品名「PO-10(三菱商事ライフサイエンス)」)を用いた。還元水飴については、その糖組成および原料糖のDE値も図1に示す。
【0049】
(2)化粧水の製造
以下〔1〕-〔4〕の手順で化粧水を製造した。
〔1〕1,3-ブチレングリコールに防腐剤を添加し、80℃に加温して溶解した。
〔2〕〔1〕に水を添加して攪拌した。
〔3〕〔2〕に多価アルコール(グリセリンまたは還元水飴)を添加して攪拌した。
〔4〕〔3〕にキレート剤およびpH調整剤を順次添加して攪拌した。必要に応じて水を添加することにより合計量を調整し、製造完了とした。
以下、グリセリンを含有する化粧水を「No.1(グリセリン)」、各種の還元水飴を含有する化粧水を「No.2(還元水飴)」というように略記する場合がある。
【0050】
(3)使用感の官能評価
化粧水について、4名(甲、乙、丙および丁)のパネルにより、以下〔1〕-〔5〕の手順で官能評価を行った。
〔1〕左右前腕内側を石鹸で洗浄しよく乾燥させる。
〔2〕1試料につき2滴の化粧水を片方の前腕内側に塗布し、乾くまで逆の手指ないし掌で伸ばすようにしてよくなじませる。
〔3〕〔2〕と逆の前腕内側に、別の試料2滴を塗布し、乾くまで逆の手指ないし掌で伸ばすようにしてよくなじませる。
〔4〕化粧水の肌への浸透時、乾く寸前、乾いた直後および乾いた後において、表1に示す評価基準により各試料を採点して回答用紙に記入する。採点は、グリセリンを用いた試料を基準(4点)とし、1~7点の7段階で行う。
〔5〕塗布した部分を石鹸で洗浄し、水分をふき取り、水っぽさを感じなくなるまで3分程度乾燥させた後、次の試料の評価へ移る。
【表1】
【0051】
<実施例1>還元水飴の種類の検討
多価アルコールとして、グリセリンまたは各種の還元水飴を10%含有する化粧水を製造し、No.1~6とした。No.1~6の組成を図2に示す。
【0052】
(1)官能評価
No.1(グリセリン)を基準とし、No.2~6の化粧水について官能評価を行った。4名のパネルの採点結果を図3に示す。また、試料(還元水飴の種類)毎に、採点結果の平均値をレーダーチャートに表したものを図4に示す。また、評価項目毎に、採点結果の平均値を棒グラフに表したものを図5に示す。
【0053】
図3~5に示すように、No.3(中糖化還元水飴)、No.4(低糖化還元水飴:A)、No.5(低糖化還元水飴:B)およびNo.6(低糖化還元水飴:C)はいずれも、膜感の点数が顕著に高かった。すなわち、中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を含有する化粧水は、膜感を顕著に感じさせることが明らかになった。この結果から、中糖化還元水飴または低糖化還元水飴は、リーブオン化粧品の膜感を顕著に向上させることが明らかになった。
【0054】
また、図3~5に示すように、No.4(低糖化還元水飴:A)、No.5(低糖化還元水飴:B)およびNo.6(低糖化還元水飴:C)はいずれも、しっとり感の点数が低く、かつ、べたつきのなさおよびさっぱり感の点数が顕著に高かった。すなわち、低糖化還元水飴を含有する化粧水は、べたつかず、さっぱりした、あるいは、さらっとした肌感触をもたらすことが明らかになった。この結果から、低糖化還元水飴は、リーブオン化粧品のさっぱり感ないしさらっと感を顕著に向上させることが明らかになった。
【0055】
また、図3~5に示すように、No.2(高糖化還元水飴)、No.3(中糖化還元水飴)、No.4(低糖化還元水飴:A)、No.5(低糖化還元水飴:B)およびNo.6(低糖化還元水飴:C)はいずれもブレーキ感の点数が高かった。特に、No.3、No.4、No.5およびNo.6はブレーキ感の点数が顕著に高かった。すなわち、還元水飴を含有する化粧水は、ブレーキ感を感じさせることが明らかになった。なかでも、中糖化還元水飴または低糖化還元水飴を含有する化粧水は、ブレーキ感を顕著に感じさせることが明らかになった。この結果から、中糖化還元水飴または低糖化還元水飴は、リーブオン化粧品のブレーキ感を顕著に向上させることが明らかになった。
【0056】
また、図3~5に示すように、No.4(低糖化還元水飴:A)、No.5(低糖化還元水飴:B)およびNo.6(低糖化還元水飴:C)はいずれも、好みの点数が高かった。すなわち、低糖化還元水飴を含有する化粧水は、好まれることが明らかになった。この結果から、低糖化還元水飴は、リーブオン化粧品に好ましい使用感を付与できることが明らかになった。
【0057】
(2)摩擦摩耗試験
No.1~6の化粧水について摩擦摩耗試験を行った。摩擦摩耗試験機「トライボギア TYPE:40(新東科学)」の摺動面に人工皮膚を、ボール圧子の材質に人工皮革を用いて、摺動面に化粧水を塗布し、往復動摩擦試験を行って、経時的に摩擦抵抗力(gf)を測定し、動摩擦係数を算出した。動摩擦係数は、「ボール圧子がスタート位置にある時間に動摩擦開始除外時間(100ミリ秒)を加えた時間」から「ボール圧子がエンド位置にある時間から動摩擦終了除外時間(100ミリ秒)を除した時間」の間の平均摩擦係数として算出した。測定条件および試験機の様子を図6に示す。また、試験後のボール圧子の人工皮革表面を目視にて観察し、膜形成および摩耗の有無を確認した。時間毎の摩擦抵抗力および動摩擦係数の変化を示す波形および人工皮革表面の観察結果を図7~9に示す。また、測定時間(0秒~1200秒)における最大動摩擦係数μk(max)を図10に示す。
【0058】
図7に示すように、No.1(グリセリン)の波形は試験時間中一定であり、測定後の人工皮革には、膜形成および摩耗のいずれも見られなかった。No.2(高糖化還元水飴)の波形は、時間の経過に伴い摩擦抵抗力および摩擦係数が大きくなることを示した。測定後の人工皮革には、わずかに固形分の残存が見られたが、膜形成および摩耗のいずれも見られなかった。
【0059】
図8に示すように、No.3(中糖化還元水飴)の波形は900秒付近から平坦となった。また、300秒付近から500秒にかけてスパイク状波形が多く見られたことから、摺動面に摩耗をもたらす剪断抵抗が発生していることが示唆された。測定後の人工皮革には、膜形成は見られず、摩耗が見られた。No.4(低糖化還元水飴:A)の波形は400秒付近から平坦となった。300秒付近にスパイク状の波形が見られたが、測定後の人工皮革にはやや膜形成が見られ、摩耗は無かった。
【0060】
図9に示すように、No.5(低糖化還元水飴:B)およびNo.6(低糖化還元水飴:C)の波形は、いずれも400秒付近から平坦となった。また、いずれもスパイク状の波形は見られず、測定後の人工皮革には膜形成が見られ、摩耗は無かった。
【0061】
これら図7~9の結果から、低糖化還元水飴を含有する化粧水は、塗布面に摩擦抵抗力の比較的小さい膜を形成しうることが明らかになった。すなわち、これらの結果から、低糖化還元水飴はリーブオン化粧品の膜感を向上させることが裏付けられた。
【0062】
また、図10に示すように、No.2(高糖化還元水飴)、No.3(中糖化還元水飴)、No.4(低糖化還元水飴:A)、No.5(低糖化還元水飴:B)およびNo.6(低糖化還元水飴:C)はいずれも、グリセリンと比較して最大動摩擦係数の値が顕著に大きかった。ここで、ブレーキ感は「肌への粘着性が高い感触」を指すことから、最大動摩擦係数とブレーキ感との間には正の相関関係があると考えられる。よって、この結果から、還元水飴はリーブオン化粧品のブレーキ感を向上させることが裏付けられた。
【0063】
<実施例2>還元水飴の配合量の検討
低糖化還元水飴(B)の配合量を20%~2.5%に変化させてNo.1~7の化粧水を製造した。同様に、グリセリンの配合量を20%~2.5%に変化させてNo.8~14の化粧水を製造した。No.1~14の組成を図11に示す。No.1~7について、同濃度のグリセリンを含有する化粧水(No.8~14)をそれぞれ基準(4点)として、官能評価を行った。評価は、高濃度の試料から低濃度の試料の順に行った。採点結果を図12に、採点結果の平均値を評価項目毎に棒グラフに表したものを図13に、それぞれ示す。
【0064】
図13に示すように、No.1(低糖化還元水飴20%)~No.6(低糖化還元水飴5%)はいずれも、膜感の点数が、同濃度のグリセリンを配合した化粧水よりも高かった。この結果から、還元水飴の配合量の下限は、高い膜感を得る観点から、2.5%超が好ましく、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上または5.0%以上がより好ましいことが明らかになった。また、還元水飴の配合量の上限は、高い膜感を得る観点から、20%以下が好ましいことが明らかになった。
【0065】
また、図13に示すように、No.1(低糖化還元水飴20%)~No.7(低糖化還元水飴2.5%)はいずれも、べたつきのなさの点数が、同濃度のグリセリンを配合した化粧水よりも高かった。この結果から、還元水飴は、その配合量の多少にかかわらず、リーブオン化粧品にべたつきを改善できることが明らかになった。
【0066】
また、図13に示すように、No.3(低糖化還元水飴12.5%)~No.5(低糖化還元水飴7.5%)は、同濃度のグリセリンを配合した化粧水よりもさっぱり感の点数が高く、かつ、しっとり感の点数が低かった。この結果から、還元水飴の配合量の下限は、高いさっぱり感を得る観点から、5%超が好ましく、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上または7.5%以上がより好ましいことが明らかになった。また、還元水飴の配合量の上限は、高いさっぱり感を得る観点から、15%未満が好ましく、14.5%以下、14%以下、13.5%以下、13%以下、または12.5%以下がより好ましいことが明らかになった。
【0067】
また、図13に示すように、No.1(低糖化還元水飴20%)~No.7(低糖化還元水飴2.5%)はいずれも、ブレーキ感の点数が、同濃度のグリセリンを配合した化粧水よりも高かった。この結果から、還元水飴は、その配合量の多少にかかわらず、リーブオン化粧品のブレーキ感を向上できることが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13