(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074957
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】自動車用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220511BHJP
G09F 21/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60R11/02 C
G09F21/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185415
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BC19
3D020BD01
3D020BD02
3D020BD05
(57)【要約】
【課題】衝突時の衝撃を緩和可能な自動車用表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の自動車用表示装置1は、自動車の車体に取り付けられる自動車用表示装置1であって、画像を表示する表示ユニット2と、表示ユニット2よりも車体外側に配置され、表示ユニット2の表示を透過する外側パネル3と、中空形状に成形され、外側パネル3を車体に取り付ける取付フレーム4と、を備え、取付フレーム4は、衝撃を受けた際に変形することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に取り付けられる自動車用表示装置において、
画像を表示する表示ユニットと、
前記表示ユニットよりも車体外側に配置され、表示を透過する外側パネルと、
中空形状に成形され、前記外側パネルを車体に取り付ける取付フレームと、
を備え、
前記取付フレームは、衝撃を受けた際に変形することを特徴とする自動車用表示装置。
【請求項2】
前記取付フレームは、長手方向が互いに対向するように対をなして配置され、
少なくとも一方の前記取付フレームは、他方の前記取付フレームに対向する側において、前記外側パネルと接合される内側接合部と、
前記内側接合部よりも外側において、前記外側パネルと接合される外側接合部と、を備え、
前記内側接合部は、前記外側接合部よりも接合強度が弱く、衝撃を受けた際に、前記内側接合部と前記外側パネルの接合が外れることを特徴とする請求項1に記載の自動車用表示装置。
【請求項3】
前記表示ユニットは、前記内側接合部において、前記取付フレームに固定されることを特徴とする請求項2に記載の自動車用表示装置。
【請求項4】
前記取付フレームは、2枚以上の金属部材を重ねて構成され、変形時のエネルギーピークが2回以上に分散することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の自動車用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の安全性を高める観点から、衝突時の衝撃を緩和することが求められてきた。このような要求に応えるため、車体のフレームやバンパー、グリル等には衝突時の衝撃によって変形する構造が広く採用されている。上記のような構造によれば、車体のフレームやバンパー、グリル等が衝突時の衝撃によって変形することにより、衝突のエネルギーを吸収することができる。
【0003】
一方、車両外部への注意喚起や情報表示、広告等の目的で、車両の前方、後方又は側方に表示機能を有するサイネージを配置することがある。近年、自動運転技術の発達や自動車の装飾目的から、特許文献1に記載されるように、サイネージ等の表示装置を前方、後方又は側方の大部分を占めるように配置することも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置が車体表面の大部分を占めるように配置された場合、フレームやバンパー、グリル等の占める割合が少なくなり、これらによる衝撃吸収効果が低下してしまうことが考えられる。そこで、大部分を占める表示装置によって衝撃を吸収することが効果的である。従来の表示装置は、例えば、バスの行き先表示のように、自動車の外装の限られた一部の範囲に用いられるのみであり、衝突時の衝撃吸収に寄与する割合が少なかった。そのため、自動車用表示装置自体の構造を、衝撃を吸収可能とする提案はこれまでほとんどされていないのが実情である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、衝突時の衝撃を緩和可能な自動車用表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動車用表示装置は、自動車の車体に取り付けられる自動車用表示装置であって、画像を表示する表示ユニットと、前記表示ユニットよりも車体外側に配置され、表示を透過する外側パネルと、中空形状に成形され、前記外側パネルを車体に取り付ける取付フレームと、を備え、前記取付フレームは、衝撃を受けた際に変形することを特徴とする。
【0008】
本発明の自動車用表示装置は、衝撃を受けた際に変形可能な取付フレームを備える。例えば、車両が衝突した際に、取付フレームが変形することにより、エネルギーを吸収し、衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の自動車用表示装置を示す斜視図である。
【
図2】取付フレームの断面を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の自動車用表示装置を自動車の車体に取り付けた状態を示す断面図である。
【
図4】
図3の自動車用表示装置が衝撃を受けた際の取付フレームの変形を示す断面図である。
【
図5】
図3の自動車用表示装置が衝撃を受けた際の取付フレームの変形を示す断面図である。
【
図6】取付フレームの変形例を示す拡大断面図である。
【
図7】取付フレームの変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動車用表示装置1について、図面を参照して説明する。
図1は、自動車用表示装置1の全体の構成を示す斜視図である。
【0011】
(自動車用表示装置1の全体構成)
自動車用表示装置1は、自動車の車体の前方、後方又は側方に取り付けられ、外部に向けて情報を表示する表示装置である。自動車用表示装置1は、画像等を表示する表示ユニット2と、表示ユニット2よりも車体外側に配置され、表示を透過する外側パネル3と、を備える。外側パネル3は、取付フレーム4を介して、車体のフレームFに固定される。自動車用表示装置1が車体のフレームFに取り付けられた状態において、外側パネル3の表面は車体外側を向く意匠面となり、外側パネル3の裏面に表示ユニット2及び取付フレーム4が配置される。
【0012】
表示ユニット2は、表示機能を有する表示素子21と、表示素子21を保持する基材22を備える。表示素子21としては、例えば、液晶表示素子、LED素子、有機EL素子、無機EL素子等が挙げられる。基材22としては、特に限定されないが、平板状に成形された樹脂製部材が好ましい。この樹脂材料としては、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ウレタンなどの樹脂が好ましく、これらの樹脂をガラス、カーボン、セルロースなどの繊維、又は、タルク、炭酸カルシウムなどの鉱物で強化した強化樹脂がより好ましい。表示素子21は、基材22に埋め込まれた状態で成形されてもよい。表示ユニット2は、外側パネル3の内面に直接貼り付けられてもよいが、本実施形態では、表示ユニット2は取付フレーム4に固定されている。詳しくは、表示ユニット2は、各取付フレーム4の後述する内側接合部44aにボルト23により固定されている。
【0013】
外側パネル3は、表示ユニット2の表示を車体外側へ透過し、表示ユニット2を保護する透明又は半透明の材料からなる板状の部材である。外側パネル3の材料としては、具体的には、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ABS等の樹脂材等が挙げられる。衝突時の破損が少なく、さらに、衝突時に変形することにより衝撃を緩和できる観点から、特に好ましい樹脂材としては、ポリカーボネートが挙げられる。
【0014】
取付フレーム4は、
図2に示すように、断面台形の中空形状(ハット型形状)の金属部材である。取付フレーム4は、平面状の頂部と、頂部の両端から外側に向かって傾斜して延出した側壁部43と、側壁部43から外側に延在し、頂部と平行な底部を備える。頂部は、取付フレーム4を自動車の車体フレームFに固定する取付部41となる。この取付部41には、ボルト等を挿通する取付孔42が設けられる。一方、底部は溶接や接着剤等により外側パネル3に接合される接合部44となる。取付部41と側壁部43、及び、接合部44に接合される外側パネル3によって断面台形の中空形状が形成される。取付フレーム4は、内部が中空形状となっているので、衝撃を受けた際に変形する。取付フレーム4は、衝撃により変形可能な金属板により形成される。具体的には、取付フレーム4は、鉄、アルミニウム、或いはこれらの合金により形成されることが好ましい。
【0015】
取付フレーム4は対をなし、長手方向を互いに対向させた状態で配置される。
図1においては、上下方向に離間して2つの取付フレーム4が対向するように配置される。取付フレーム4の配置は、上下方向に限定されない。取付フレーム4は、左右方向に離間して対向するように配置してもよい。各取付フレーム4は、外側パネル3の上下方向の端部に配置される。すなわち、上側の取付フレーム4は外側パネル3の上端部に配置され、下側の取付フレーム4は外側パネル3の下端部に配置される。
【0016】
取付フレーム4は、互いに対向する側の接合部44である内側接合部44aと、内側接合部44aよりも外側の接合部44である外側接合部44bにおいて、外側パネル3に接合される。このとき、対向する取付フレーム4の内、少なくとも一方の取付フレーム4において、内側接合部44aは、外側接合部44bよりも接合強度が弱いことが好ましい。内側接合部44aの接合強度が弱いと、衝撃を受けた際に、内側接合部44aと外側パネル3との接合が優先的、又は、選択的に外れる。内側接合部44a及び外側接合部44bの接合強度は、例えば、外側接合部44bを全面接合とするのに対して、内側接合部44aの接合を部分接合としたり、用いる接着剤の強さを変化させたりすることにより調節することができる。
【0017】
(取付フレーム4の変形)
自動車用表示装置1が衝撃を受けた際の取付フレーム4の変形について、
図3~
図5を参照して説明する。
図3~
図5は、外側パネル3の上端部に配置された上側の取付フレーム4を示す図である。
図3は衝撃を受けていない状態の自動車用表示装置1を示す断面図である。
図4、
図5は衝撃を受けた際の取付フレーム4の変形を示す断面図である。
【0018】
外側パネル3は、内側接合部44a及び外側接合部44bにおいて取付フレーム4に接合される。本実施形態では、上側の取付フレーム4及び下側の取付フレーム4の双方において、外側接合部44bは接着剤により全面接着され、一方、内側接合部44aは接着剤により部分接着されており、内側接合部44aは、外側接合部44bよりも弱く接合される。本実施形態において、内側接合部44aは、取付フレーム4の長手方向の長さに対して、5~85%程度の範囲で間欠的に接着されている。内側接合部44aの接着強度は、部分的に接着剤を塗布しないことにより、外側接合部44bの接着強度よりも弱くなる。表示ユニット2は、内側接合部44aにおいて、外側パネル3とは反対側の面にボルト23により固定される。取付フレーム4は、取付部41において、図示しないボルト等により、自動車の車体フレームFに固定される。すなわち、本実施形態において、表示ユニット2及び外側パネル3は、取付フレーム4を介して、自動車の車体フレームFに固定された状態となる。
【0019】
自動車が衝突するなどにより、自動車用表示装置1に衝撃が加えられると、最外面の外側パネル3が変形し、外側パネル3から取付フレーム4にエネルギーが伝えられ、
図4に示すように、取付フレーム4の側壁部43が座屈変形する。側壁部43が座屈変形する際に、衝突時のエネルギーが吸収され、衝撃が緩和される。
【0020】
自動車用表示装置1がさらに衝撃を受けると、
図5に示すように、接合強度の弱い内側接合部44aと外側パネル3との接合が外れる。内側接合部44aの接合が外れる際に、衝突によるエネルギーが吸収される。また、内側接合部44aが外れることにより、外側パネル3を保持する一対の取付フレーム4の支点間距離が大きくなり、外側パネル3の変形の制限が緩和され、外側パネル3が破損しにくくなる。
【0021】
さらに、内側接合部44aと外側パネル3との接合が外れた際に、内側接合部44aに表示ユニット2が固定された状態であると、表示ユニット2の基材22に引っ張り又は圧縮応力が掛かり、基材22が変形することで衝突のエネルギーを吸収し、衝撃を緩和することができる。
【0022】
(変形例)
図6、
図7は取付フレーム4の変形例を示す断面図である。
図6の取付フレーム40は、上記の実施形態と同様のハット型形状の外側フレーム45と、補強部材46と、蓋材47との3枚の金属部材を重ねて構成される。
【0023】
取付フレーム40は、外側フレーム45と、外側フレーム45の底部に接合される蓋材47により、断面台形の中空の空間を形成する。そして、中空空間には、外側フレーム45の頂部と蓋材47とにそれぞれ当接する一対の支持部46a、46bと、当該一対の支持部46a、46b間を接続する立板部46cとからなる略Z型の補強部材46が収容される。取付フレーム40は、補強部材46の厚みや立板部46cの角度等を適宜調整することにより、座屈強度を容易に調節することが可能である。
【0024】
取付フレーム40は、補強部材46を備えることにより、例えば、停車中や組付け作業中に人の手により加えられる小さな衝撃に対して、取付フレーム40が変形するのを防ぐとともに、所定値以上の衝撃を受けた際には取付フレーム40が変形するように設計することができる。また、取付フレーム40の強度を高くすることにより、座屈変形時に吸収するエネルギー量が大きくなり、衝撃の緩和効果に優れる。
【0025】
図7の取付フレーム400は、上記の実施形態と同様のハット型形状の外側フレーム45と、外側フレーム45より側壁部43が小さく、外側フレーム45の内側に配置される内側フレーム48の2枚の金属部材を重ねて構成される。外側フレーム45と内側フレーム48は、頂部が互いに離間して配置される。
【0026】
取付フレーム400が変形する場合、まず、外側フレーム45の側壁部43が変形する。外側フレーム45の頂部の内面が内側フレーム48の頂部の外面に当接した後、外側フレーム45と内側フレーム48が変形する。外側フレーム45のみが変形する間は、比較的小さなエネルギーで変形するが、外側フレーム45が内側フレーム48に当接した後は変形に必要なエネルギーが増大する。このような構成とすることにより、取付フレーム400の変形に係るエネルギーピークを2回に分散することができる。取付フレーム400は3枚以上の多重構造とし、エネルギーピークを3回以上に分散してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1:自動車用表示装置、 2:表示ユニット、 21:表示素子、 22:基材、 23:ボルト、3:外側パネル、 4、40、400:取付フレーム、 41:取付部、 42:取付孔、 43:側壁部、 44:接合部、 45:外側フレーム、 46:補強部材、 47:蓋材、 48:内側フレーム